(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】トランスグルタミナーゼ酵素複合ケラチン/アミノ酸の生物学的ヘアケア修復液
(51)【国際特許分類】
A61K 8/65 20060101AFI20240905BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240905BHJP
A61K 8/66 20060101ALI20240905BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K8/65
A61K8/44
A61K8/66
A61Q5/12
(21)【出願番号】P 2023526290
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(86)【国際出願番号】 CN2021097351
(87)【国際公開番号】W WO2022088670
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】202011171973.3
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520063990
【氏名又は名称】斉魯工業大学
【氏名又は名称原語表記】QILU UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.3501, Daxue Road, ChangQing District,Jinan City, Shandong Province 250353 China
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】肖 静
(72)【発明者】
【氏名】李 子源
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-110647(JP,A)
【文献】特開2006-298851(JP,A)
【文献】特開2004-075591(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0324750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、原料は、
大分子加水分解ケラチン0.6%、小分子加水分解ケラチン0.4%、
トランスグルタミナーゼ酵素0.5%、L-リジン0.7%および残りの脱イオン水からなり、
前記大分子加水分解ケラチンおよび小分子加水分解ケラチンは、羊毛から抽出したケラチンを加水分解して得られたものであり、
前記
トランスグルタミナーゼ酵素活性は5U/mLであり、
前記大分子加水分解ケラチンの分子量は20KDa~30KDaであり、前記小分子加水分解ケラチンの分子量は0.8KDa~1.2KDaである
ことを特徴とする生物学的ヘアケア修復液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアケアの技術分野に関し、特に、トランスグルタミナーゼ(以下、TGという)酵素複合ケラチン/アミノ酸の生物学的ヘアケア修復液に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活において、社会環境の変化、大気汚染、放射線の悪化、頻繁なパーマ、自分に合わないシャンプーの使用などは、程度の差こそあれ、髪にダメージを与え、特にパーマは髪質に深刻なダメージを与える可能性がある。
【0003】
髪が傷む主な原因は、髪の中のタンパク質同士の結合が切れることで、髪の性質が変化し、外力によって切れやすくなることである。パーマをかける際にアルカリ溶液や還元剤を使用すると、ケラチンを破壊するジスルフィドの重量を減り、上記のような従来のヘアケア製品は、ある程度髪質を改善することはできるが、ダメージを根本的に修復することはできない。
【0004】
したがって、毛髪の強靭性、耐損傷性を著しく向上させ、良好な修復効果を達成し、安定した長持ち効果を有する生物学的ヘアケア修復液を提供することは、ヘアケア分野における緊急の技術的課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の先行技術における問題を解決し、毛髪の強靭性、耐損傷性を著しく向上させ、良好な修復効果を達成するTG酵素複合ケラチン/アミノ酸の生物学的ヘアケア修復液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を提供する。
【0007】
本発明が提供する生物学的ヘアケア修復液は質量%で、原料が、
大分子加水分解ケラチン0.5~0.8%、小分子加水分解ケラチン0.2~0.6%、TG酵素0.1~0.5%、アミノ酸0.5~1.0%および残りの脱イオン水からなり、
さらに、前記大分子加水分解ケラチンおよび小分子加水分解ケラチンは、羊毛から抽出したケラチンを加水分解して得られたものである。
さらに、前記TG酵素活性は4700~4800U/gである。
さらに、前記TG酵素活性は5~25U/mLである。
さらに、大分子加水分解ケラチンの分子量は20KDa~30KDaであり、小分子加水分解ケラチンの分子量は0.8KDa~1.2KDaである。
さらに、前記アミノ酸はL-リジンである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以下の技術的効果を有する。
【0009】
本発明は、TG酵素の効率的な触媒特性を利用して、付加的なケラチンによる多くのジスルフィドの形成に基づいて、ケラチンがより多くのアミド共有結合架橋を受けるように標的化された触媒作用により、より多くの共有結合をもたらす同時に、本発明は、従来の小分子ケラチンの外来添加に、加水分解された大分子ケラチンを加え、この異なる分子量のケラチンにより、外来ケラチンと損傷した毛髪の露出したタンパク質部分との間の適切な架橋が保証され、さらに、アミノ酸の存在下で、TG酵素は、上記成分が架橋されたタンパク質のネットワークを形成することも可能にし、その結果、毛髪の強靭性、耐損傷性を向上させ、マイルドな長持ち効果を有する。
【0010】
本発明は、成分の組成と含有量を決定し、分子量の異なる加水分解ケラチンの比率を調節することにより、損傷した毛髪の良好な修復効果を達成し、製品は加工が簡単で、幅広い応用価値を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の実施例または従来技術における技術的解決策をより明確に説明するために、以下実施例において使用される必要のある図面を簡単に説明するが、明らかに、以下で説明される図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者は、創造的な労働をすることなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】本発明の損傷毛髪サンプル、実施例3と比較例6、7の修復毛髪サンプルの赤外線スペクトルを示す図である。
【
図2】本発明の損傷毛髪サンプル、実施例3の修復毛髪サンプルを示す走査電子顕微鏡の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の様々な例示的な実施形態を詳細に説明するが、この詳細な説明は本発明を限定するものではなく、本発明の特定の側面、特性および実施形態のさらなる詳細な説明として理解されたい。
【0013】
本発明に記載の用語は、特定の実施形態のみを説明するために使用され、本発明を限定するものではない。さらに、本発明における値の範囲に関して、この範囲の上限値と下限値間の各中間値も具体的に開示されることを理解されたい。明記された値または範囲内の中間値、および明記された任意の他の値または前記範囲内の中間値間の各小さな範囲も、本発明内に含まれる。これらの小さな範囲の上限値と下限値は独立して含まれるか、または範囲から除外され得る。
【0014】
特に断らない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明に記載の分野の通常の技術者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明は、好ましい方法および材料のみを説明するが、本発明の実施または試験において本文の記載と類似または同等の任意の方法および材料も使用することができる。本明細書で言及されるすべての文献は、前記文献に関連する方法および/または材料を開示および説明するために、参照によって本文に組み込まれる。組み込まれた文献と矛盾が生じた場合、本明細書の内容が優先されるものとする。
【0015】
本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明の明細書の具体的な実施形態に対して様々な改良および変更がなされ得ることは、当業者にとって明らかである。本発明の明細書で得られた他の実施形態は当業者にとって明らかである。本出願の明細書および実施例は例示的なものに過ぎない。
【0016】
本文で使用される「包含」、「含む」、「有する」、「含有」などの用語は、開放用語であり、つまり含むがこれに限定されないことを意味する。
【0017】
本発明における「部」は、特に断らない限り質量部によるものである。
【0018】
本発明では、大分子加水分解ケラチンおよび小分子加水分解ケラチンは、羊毛から抽出したケラチンを加水分解して得られたものである。
【0019】
実施例1
10mLの5%(w/v)大分子加水分解ケラチン溶液(分子量20KDa~30KDa)と、10mLの5%(w/v)小分子加水分解ケラチン溶液(分子量0.8KDa~1.2KDa)を精密に量り、次に0.3gのTG酵素粉(4700U/g)と0.5gのL-リジンを加えて混合し、100mLに定量して、TG酵素複合ケラチン/アミノ酸の生物学的ヘアケア修復液を得る。
【0020】
上記TG酵素複合ケラチン/アミノ酸の生物学的ヘアケア修復液のレシピ組成は表1に示され、
【表1】
【0021】
実施例2
10mLの8%(w/v)大分子加水分解ケラチン溶液(分子量20KDa~30KDa)と、10mLの2%(w/v)小分子加水分解ケラチン溶液(分子量0.8KDa~1.2KDa)を精密に量り、次に0.1gのTG酵素粉(4700U/g)と1gのD-リジンを加えて混合し、100mLに定量して、TG酵素複合ケラチン/アミノ酸の生物学的ヘアケア修復液を得る。
【0022】
上記TG酵素複合ケラチン/アミノ酸の生物学的ヘアケア修復液のレシピ組成は、表2に示され、
【表2】
【0023】
実施例3
10mLの6%(w/v)大分子加水分解ケラチン溶液(分子量20KDa~30KDa)と、10mLの4%(w/v)小分子加水分解ケラチン溶液(分子量0.8KDa~1.2KDa)を精密に量り、次に0.5gのTG酵素粉(5U/ml)と0.7gのD-リジンを加えて混合して、100mLに定量して、TG酵素複合ケラチン/アミノ酸の生物学的ヘアケア修復液を得る。
【0024】
上記TG酵素複合ケラチン/アミノ酸の生物学的ヘアケア修復液のレシピ組成は、表3に示され、
【表3】
【0025】
実施例4
10mLの7%(w/v)大分子加水分解ケラチン溶液(分子量20KDa~30KDa)と、10mLの6%(w/v)小分子加水分解ケラチン溶液(分子量0.8KDa~1.2KDa)を精密に量り、次に0.4gのTG酵素粉(25U/ml)と0.8gのL-リジンを加えて混合し、100mLに定量して、TG酵素複合ケラチン/アミノ酸の生物学的ヘアケア修復液を得る。
【0026】
上記TG酵素複合ケラチン/アミノ酸の生物学的ヘアケア修復液のレシピ組成は、表4に示され、
【表4】
【0027】
比較例1
実施例3とは異なり、レシピ成分に大分子加水分解ケラチンが含まない。
比較例2
実施例3とは異なり、レシピ成分に小分子加水分解ケラチンが含まない。
比較例3
実施例3とは異なり、レシピにアミノ酸が含まない。
比較例4
実施例3とは異なり、添加した小分子加水分解ケラチンの分子量は0.2KDa~0.6KDaである。
比較例5
実施例3とは異なり、リジンの添加量は1.2%である。
比較例6
実施例3とは異なり、レシピ成分にTG酵素と脱イオン水のみが含まれる。
比較例7
実施例3とは異なり、レシピ成分に大分子加水分解ケラチン、小分子加水分解ケラチンと脱イオン水のみが含まれる。
【0028】
効果の検証:
1.修復毛髪のアルカリ溶解性試験
実施例1~4および比較例1~7のヘアケア修復液で修復した乾燥定重量の毛髪試料0.100gを精密に量り、0.2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液100 mLで65℃、1時間濾過した後、蒸留水および10mLの希酢酸で中性まで洗浄し、65℃で定重量乾燥し、元の損傷毛髪サンプルを対照としてアルカリ溶解性を算出する。
アルカリ溶解性(α)の算出式は以下のとおりであり、
【0029】
【数1】
ここで、Gは含水率であり、単位は%であり、
Wはアルカリ処理後の残留試料の質量であり、単位はgである。
【0030】
【0031】
2.修復毛髪の破断応力試験
電子繊維強度試験機(FZ/T 01030-1993規格を参照)を用いて実施する。各組の毛髪サンプルについて、50個の平行試料をランダムに選択して試験し、元の損傷した毛髪を対照組とし、得られたデータから最大値と最小値を10個ずつ取り除き、残りの30個のデータの平均値をこの組の毛髪サンプルの破断応力と破断歪みとし、結果は表6に示される。
【0032】
【0033】
表4および表5のデータから分かるように、本発明のTG酵素複合ケラチン/アミノ酸の生物学的ヘアケア修復液は、損傷した毛髪に対して良好な修復効果を有する。
【0034】
本発明の損傷毛髪サンプル、実施例3と比較例6、7の修復毛髪サンプルの赤外線スペクトルを示す図は、
図1に示され、
1は損傷毛髪サンプルであり、2は比較例7の単一タンパク質修復サンプルであり、3は比較例6のTG酵素修復サンプルであり、4は実施例3のTG酵素-ケラチン/アミノ酸複合修復サンプルである。
【0035】
本発明の損傷毛髪サンプル、実施例3の修復毛髪サンプルの走査電子顕微鏡の写真は、
図2に示され、
図2では、aは損傷毛髪サンプルであり、bは実施例3の修復毛髪サンプルである。
図2から分かるように、損傷毛髪サンプルの損傷部位で鱗片が座屈し、修復後の毛髪サンプルの鱗片は閉じている。
【0036】
以上説明した実施例は、本発明の好ましい態様を説明したものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の設計および精神から逸脱することなく、当業者は本発明の技術的解決策に加えられた様々な変更および改良は、すべて本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0037】
1 損傷毛髪サンプル
2 比較例7の単一タンパク質修復サンプル
3 比較例6のTG酵素修復サンプル
4 実施例3のTG酵素-ケラチン/アミノ酸複合修復毛髪サンプル
a 損傷毛髪サンプル
b 実施例3の修復毛髪サンプル