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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】パンフォーカス眼鏡およびXRグラス
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/02 20060101AFI20240905BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20240905BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20240905BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20240905BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G02C7/02
G02B27/02 Z
G02C11/00
G02B5/00 Z
G02B3/00 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2024002461
(22)【出願日】2024-01-11
【審査請求日】2024-07-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518271743
【氏名又は名称】アルディーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120640
【弁理士】
【氏名又は名称】森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 元伸
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0244907(US,A1)
【文献】国際公開第2022/193880(WO,A1)
【文献】特開2022-046404(JP,A)
【文献】特開2022-144598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0103650(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0064526(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0146854(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0393678(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/02
G02B 27/02
G02C 11/00
G02B 5/00
G02B 3/00
G09F 9/33
H10K 59/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと一体に設けられた透明な左目用筐体および右目用筐体と、
上記左目用筐体および上記右目用筐体の内部に移動可能にそれぞれ収納された透明柱集合体と、
上記左目用筐体および上記右目用筐体にそれぞれ少なくとも一つ取り付けられたアイトラッキングセンサーと、
を有し、
上記透明柱集合体は、入射する光に対して、透過率50%以上の放射角度が5度以内である、コリメーターとなる透明柱が複数配列され、各透明柱を透過した光が収束点に収束するように構成され、
上記アイトラッキングセンサーにより使用者の目の瞳孔の位置を検出した結果に応じて上記左目用筐体および上記右目用筐体の内部で上記透明柱集合体を瞳孔に対向し、かつ上記収束点が角膜の表面または内部、瞳孔、水晶体の表面または内部および眼球の内部のいずれかに位置するように移動させる機能を有するパンフォーカス眼鏡。
【請求項2】
上記左目用筐体および上記右目用筐体の内部に上記透明柱の屈折率と同等の屈折率を有する液体が充填され、当該液体の内部に上記透明柱集合体が浮遊している請求項1記載のパンフォーカス眼鏡。
【請求項3】
上記透明柱集合体は磁力または電気力により移動可能に構成されている請求項1記載のパンフォーカス眼鏡。
【請求項4】
上記透明柱集合体の複数箇所に微小磁石が取り付けられているとともに、上記左目用筐体および上記右目用筐体の前面および後面の少なくとも一方に複数の微小コイルが互いに独立駆動可能に取り付けられている請求項3記載のパンフォーカス眼鏡。
【請求項5】
上記複数の微小コイルは二次元アレイ状に配列されている請求項4記載のパンフォーカス眼鏡。
【請求項6】
上記微小磁石は上記透明柱集合体の少なくとも3箇所に取り付けられている請求項記載のパンフォーカス眼鏡。
【請求項7】
上記アイトラッキングセンサーは上記左目用筐体および上記右目用筐体の四隅に取り付けられている請求項1記載のパンフォーカス眼鏡。
【請求項8】
フレームと一体に設けられた透明な左目用筐体および右目用筐体と、
上記左目用筐体および上記右目用筐体の内部に移動可能にそれぞれ収納された透明柱集合体と、
上記左目用筐体および上記右目用筐体にそれぞれ少なくとも一つ取り付けられたアイトラッキングセンサーと、
上記左目用筐体および上記右目用筐体の前面にそれぞれ設けられた不透明または半透明の左目用ディスプレイおよび右目用ディスプレイと、
を有し、
上記透明柱集合体は、入射する光に対して、透過率50%以上の放射角度が5度以内である、コリメーターとなる透明柱が複数配列され、各透明柱を透過した光が収束点に収束するように構成され、
上記アイトラッキングセンサーにより使用者の目の瞳孔の位置を検出した結果に応じて上記左目用筐体および上記右目用筐体の内部で上記透明柱集合体を瞳孔に対向し、かつ上記収束点が角膜の表面または内部、瞳孔、水晶体の表面または内部および眼球の内部のいずれかに位置するように移動させる機能を有するXRグラス。
【請求項9】
上記左目用筐体および上記右目用筐体の内部に上記透明柱の屈折率と同等の屈折率を有する液体が充填され、当該液体の内部に上記透明柱集合体が浮遊している請求項8記載のXRグラス。
【請求項10】
上記透明柱集合体は磁力または電気力により移動可能に構成されている請求項8記載のXRグラス。
【請求項11】
上記透明柱集合体の複数箇所に微小磁石が取り付けられているとともに、上記左目用筐体および上記右目用筐体の前面および後面の少なくとも一方に複数の微小コイルが互いに独立駆動可能に取り付けられている請求項8記載のXRグラス。
【請求項12】
上記複数の微小コイルは二次元アレイ状に配列されている請求項11記載のXRグラス。
【請求項13】
上記微小磁石は上記透明柱集合体の少なくとも3箇所に取り付けられている請求項11記載のXRグラス。
【請求項14】
上記アイトラッキングセンサーは上記左目用筐体および上記右目用筐体の四隅に取り付けられている請求項8記載のXRグラス。
【請求項15】
上記左目用ディスプレイおよび上記右目用ディスプレイは液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイまたはマイクロ発光ダイオードディスプレイである請求項8記載のXRグラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パンフォーカス(Pan-focus)眼鏡およびXR(Cross Reality)グラスに関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡では使用者の視力に応じて適切なレンズ度数を選ぶ必要がある。また、遠視の使用者と近視の使用者とでは使用するレンズの形状が異なる。遠近両用眼鏡ではフレーム内に互いに異なるレンズが設置され、対象物の遠近に応じて見る位置を変える必要がある。また、使用者の視力変化によりレンズを変える必要もある。
【0003】
一方、イメージセンサーで捉えた現実の映像とバーチャル映像とを組み合わせて、目の前の近接ディスプレイに映すVR(Virtual Reality)グラスやMR(Mixed Reality)グラスなどのXRグラスでは、使用者の目の焦点を近接ディスプレイに合わせるためにレンズを必要とすることから、ディスプレイと目との間の距離をある程度確保する必要がある。一般的には通常の凸レンズをフレネルレンズやパンケーキ型レンズにして薄型化しているが、未だにスキーのゴーグルのような嵩張った形状のものが多く、通常使用するには不便であるため、更なる薄型化が望まれる。
【0004】
近年、電子ビューファインダーの光路中に角度選択型透過素子を配置したヘッドマウントディスプレイが提案されている(特許文献1参照)。角度選択型透過素子はアイポイントに対向する場所に設けられ、光の通過方向を所定範囲に制限する制限手段として複数の開口部を有する。角度選択型透過素子では、少なくとも二つの領域で光の通過方向の制限角度範囲が異なり、アイポイント以外の方向からの光を制限または遮断することが可能である。しかしながら、このヘッドマウントディスプレイは、近接ディスプレイの映像に焦点を合わせるために凸レンズを使用しており、上記のVRグラスやMRグラスなどと同様な問題を有する。また、このヘッドマウントディスプレイは、十分に広いアイボックスを確保することも容易でない構成となっている。ヘッドマウントディスプレイとしては、表示素子と、装着時に想定される両眼の瞳の位置と大きさをもつ瞳想定領域と前記表示素子との間に複数の光学的な局部開口を介在させ、当該局部開口の位置を時間とともに高速に切り換えるシャッタ機構と、前記表示素子の表示面における部分的な画像の表示位置を前記シャッタ機構の前記局部開口の位置に同期して高速に切り替える表示制御部と、を有するものも提案されている(特許文献2参照)。特許文献2では、ピンホールによるパンフォーカス化により目の輻輳角と焦点距離の矛盾の問題を軽減できることが記述されている。しかしながら、このヘッドマウントディスプレイは、薄型軽量化は容易でない構成となっており、使用環境(条件) は限定的である。XRグラスの場合、眼鏡やサングラスのように薄型軽量のデバイスでなければ広く普及させることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-46404号公報
【文献】特開2011-145607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、通常の眼鏡レンズの代わりに、一定の放射角度以内の光のみを通す透明柱集合体を通して外界を見ることによって、光の混合割合を激減させ、遠距離から超近距離まで、ぼやけが少ない鮮明な視界が得られるパンフォーカス眼鏡を提供することである。
【0007】
この発明が解決しようとする他の課題は、近接ディスプレイの映像を、一定の放射角度以内の光のみを通す透明柱集合体を通して見ることによって、従来の光学系に比べ圧倒的な近距離で画像認識ができるようになり、通常の眼鏡と大差ない厚さで嵩張らない形状のVRグラスやMRグラスなどを実現することができるXRグラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は、
フレームと一体に設けられた透明な左目用筐体および右目用筐体と、
上記左目用筐体および上記右目用筐体の内部に移動可能にそれぞれ収納された透明柱集合体と、
上記左目用筐体および上記右目用筐体にそれぞれ少なくとも一つ取り付けられたアイトラッキングセンサーと、
を有し、
上記透明柱集合体は、入射する光に対して、透過率50%以上の放射角度が5度以内である、コリメーターとなる透明柱が複数配列され、各透明柱を透過した光が収束点に収束するように構成され、
上記アイトラッキングセンサーにより使用者の目の瞳孔の位置を検出した結果に応じて上記左目用筐体および上記右目用筐体の内部で上記透明柱集合体を瞳孔に対向し、かつ上記収束点が角膜の表面または内部、瞳孔、水晶体の表面または内部および眼球の内部のいずれかに位置するように移動させる機能を有するパンフォーカス眼鏡である。
【0009】
典型的には、左目用筐体および右目用筐体の内部に透明柱の屈折率と同等の屈折率を有する液体が充填され、当該液体の内部に透明柱集合体が浮遊している。左目用筐体および右目用筐体の内部に充填する液体は、透明柱集合体を構成する透明柱の材料などを考慮して必要に応じて選択されるが、例えば、シリコーンオイル(屈折率1.4~1.58、粘度1~数万mPa・s)、油浸オイル(屈折率~1.5、粘度150~数万mPa・s)、水(屈折率1.33、粘度~1mPa・s)、アルコール(屈折率~1.4、粘度0.5~0.8mPa・s)などである。典型的には、透明柱集合体は、例えば、正六角錐台状の透明柱を多数、互いに側面同士が密着するように蜂の巣状に、湾曲面上に配列させた透明柱集合体により構成することができる。各透明柱の側面には光吸収膜が設けられる。透明柱の材料は必要に応じて選択されるが、例えば、熱可塑性のアクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などである。これらの材料の屈折率は1.4~1.6である。透明柱は空気からなる空洞であってもよい。光吸収膜の材料は必要に応じて選択されるが、例えば、ブラックレジストなどである。
【0010】
透明柱集合体は、磁力または電気力により移動可能に構成することができる。磁力により透明柱集合体を移動する場合は、例えば、透明柱集合体の複数箇所に微小磁石が取り付けられるとともに、左目用筐体および右目用筐体の前面および後面の少なくとも一方に複数の微小コイルが互いに独立駆動可能に取り付けられる。典型的には、複数の微小コイルは二次元アレイ状に配列される。微小磁石は、典型的には、透明柱集合体の少なくとも3箇所に取り付けられる。微小磁石は必要に応じて選択されるが、小型化するためには、好適には、ネオジム系磁石などの強力磁石が用いられる。典型的には、透明柱集合体の複数箇所に微小磁石が取り付けられるとともに、左目用筐体および右目用筐体の前面および後面の少なくとも一方に複数の微小コイルが互いに独立駆動可能に取り付けられる。これらの複数の微小コイルは、典型的には二次元アレイ状に配列されるが、これに限定されるものではない。透明柱集合体は、機械的に位置や角度を変更させることで移動可能に構成してもよい。例えば、ピエゾアクチュエーターやモーターと透明柱集合体とを連結させる。
【0011】
アイトラッキングセンサーとしては、典型的には、近赤外線センサーが用いられる。アイトラッキングセンサーは、典型的には、左目用筐体および右目用筐体の四隅に取り付けられる。アイトラッキングセンサーにより使用者の瞳孔を検出し、それによって眼球の動きを検出し、その結果に応じて透明柱集合体を移動させる。
【0012】
ここで、上記の放射角度とは、光の強度が最大となる出射方向から、その強度が2分の1になるまでの角度範囲を表し、光の放射角度が5度以内とは、光の強度が最大となる出射方向を基準(0度)として、光の強度が2分の1になるまでの角度範囲が±2.5度以内、レンジで5度以内であることを意味する。
【0013】
また、この発明は、
フレームと一体に設けられた透明な左目用筐体および右目用筐体と、
上記左目用筐体および上記右目用筐体の内部に移動可能にそれぞれ収納された透明柱集合体と、
上記左目用筐体および上記右目用筐体にそれぞれ少なくとも一つ取り付けられたアイトラッキングセンサーと、
上記左目用筐体および上記右目用筐体の前面にそれぞれ設けられた不透明または半透明の左目用ディスプレイおよび右目用ディスプレイと、
を有し、
上記透明柱集合体は、入射する光に対して、透過率50%以上の放射角度が5度以内である、コリメーターとなる透明柱が複数配列され、各透明柱を透過した光が収束点に収束するように構成され、
上記アイトラッキングセンサーにより使用者の目の瞳孔の位置を検出した結果に応じて上記左目用筐体および上記右目用筐体の内部で上記透明柱集合体を瞳孔に対向し、かつ上記収束点が角膜の表面または内部、瞳孔、水晶体の表面または内部および眼球の内部のいずれかに位置するように移動させる機能を有するXRグラスである。
【0014】
XRグラスは、VR、AR(Augmented Reality)、MR、SR(Substitutional Reality) などの技術、これらの技術の中間的な技術(例えば、ARとMRとの間に位置付けられる技術)などを用いたグラスの総称であり、現実と仮想の世界とを融合して疑似体験を提供する空間を創り出す映像表示装置である。ARは現実空間に仮想世界を重ねて投影して見せる技術、MRは現実空間と仮想空間とを融合させて見せる技術、SRは過去の映像を現実空間に重ね合わせて見せることで、過去にあった出来事があたかも今目の前で行っているかのように見せる技術である。
【0015】
近接ディスプレイとしての左目用ディスプレイおよび右目用ディスプレイは、例えば、液晶(LCD)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、マイクロ発光ダイオード(LED)ディスプレイなどである。
【0016】
このXRグラスの発明においては、上記以外のことは、上記のパンフォーカス眼鏡の発明に関連して説明したことが成立する。
【0017】
また、この発明は、
フレームと一体に設けられた左目用レンズおよび右目用レンズと、
上記左目用レンズの後面および上記右目用レンズの後面にそれぞれ設けられた透明柱集合体と、
を有し、
上記透明柱集合体は、入射する光に対して、透過率50%以上の放射角度が5度以内である、コリメーターとなる透明柱が複数配列され、各透明柱を透過した光が収束点に収束するように構成され、
上記収束点が角膜の表面または内部、瞳孔、水晶体の表面または内部および眼球の内部のいずれかに位置するパンフォーカス眼鏡である。
【0018】
左目用レンズおよび右目用レンズは凸レンズであっても凹レンズであってもよく、度付きであっても度なしであってもよい。
【0019】
このパンフォーカス眼鏡の発明においては、上記以外のことは、上記のパンフォーカス眼鏡の発明に関連して説明したことが成立する。
【発明の効果】
【0020】
この発明によるパンフォーカス眼鏡によれば、通常の眼鏡レンズの代わりに、一定の放射角度以内の光のみを通す透明柱集合体を通して外界を見ることができるため、光の混合割合を激減させることができ、それによって、遠距離から超近距離まで、ぼやけが少ない鮮明な視界を得ることができる。
【0021】
この発明によるXRグラスによれば、近接ディスプレイの映像を、一定の放射角度以内の光のみを通す透明柱集合体を通して見ることによって、従来の光学系に比べ圧倒的な近距離で画像認識ができるようになり、通常の眼鏡と大差ない厚さで嵩張らない形状のVRグラスやMRグラスなどを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡を示す左側面図である。
図2】この発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡の左目用筐体を示す正面図である。
図3A】この発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡の左目用筐体の内部に含まれる透明柱集合体を示す平面図である。
図3B】この発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡の左目用筐体の内部に含まれる透明柱集合体を示す断面図である。
図3C】この発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡の左目用筐体の内部に含まれる透明柱集合体を構成する透明柱を示す平面図である。
図3D】この発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡の左目用筐体の内部に含まれる透明柱集合体を構成する透明柱を示す側面図である。
図4A】この発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡の左目用筐体の内部に含まれる透明柱集合体の製造方法を説明するための断面図である。
図4B】この発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡の左目用筐体の内部に含まれる透明柱集合体の製造方法を説明するための断面図である。
図4C】この発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡の左目用筐体の内部に含まれる透明柱集合体の製造方法を説明するための断面図である。
図4D】この発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡の左目用筐体の内部に含まれる透明柱集合体の製造方法を説明するための断面図である。
図4E】この発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡の左目用筐体の内部に含まれる透明柱集合体の製造方法を説明するための断面図である。
図5】この発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡の左目用筐体の前面および後面に設けられた磁場発生用のコイルアレイ基板の微小コイルアレイの配線例を示す略線図である。
図6】この発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡を使用者が掛けた状態を示す略線図である。
図7】この発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡を使用者が掛けた状態において視線が下向きになって眼球が回転した状態を示す略線図である。
図8図7に示す状態におけるこの発明の第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡の左目用筐体を示す正面図である。
図9】この発明の第2の実施の形態によるXRグラスを示す左側面図である。
図10】この発明の第2の実施の形態によるXRグラスを使用者が掛けた状態を示す略線図である。
図11】この発明の第3の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡を示す左側面図である。
図12】この発明の第3の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡を使用者が掛けた状態を示す略線図である。
図13】この発明の第4の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡を示す左側面図である。
図14】この発明の第4の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡を使用者が掛けた状態を示す略線図である。
図15】この発明の第5の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡を示す左側面図である。
図16】この発明の第5の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡を使用者が掛けた状態を示す略線図である。
図17】この発明の第5の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡を使用者が掛けた状態において視線が下向きになって眼球が回転した状態を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という)について説明する。
【0024】
〈第1の実施の形態〉
[パンフォーカス眼鏡]
図1は第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡を示し、左側面図である。このパンフォーカス眼鏡は左右対称に構成されているため、以下においては、左目側の構成について説明する。
【0025】
図1に示すように、このパンフォーカス眼鏡においては、フレーム10に一体化された透明な左目用筐体20の内部に透明柱集合体30が移動可能に収納されている。左目用筐体20は全体として前方が凸となった湾曲した形状を有する。左目用筐体20の内部には液体40が充填され、この液体40中に透明柱集合体30が浮遊している。液体40は透明柱集合体30の透明材料と同等の屈折率を有するものが用いられ、例えば、先に挙げたものの中から必要に応じて選択される。左目用筐体20の後面、すなわちこのパンフォーカス眼鏡を使用者が掛けたときに顔側から見た正面図の一例を図2に示す。図2に示すように、左目用筐体20は正面から見たとき、四隅が丸い長方形の形状を有する。この状態では、透明柱集合体30は左目用筐体20のほぼ中央に位置している。左目用筐体20の厚さtは必要に応じて選択されるが、例えば3~5mmである。図1および図2に示すように、左目用筐体20の後面の四隅にそれぞれアイトラッキングセンサー50が取り付けられている。アイトラッキングセンサー50は近赤外線センサーであり、瞳孔の位置を検出することができる。
【0026】
図3A図3B図3Cおよび図3Dは透明柱集合体30を示し、図3Aおよび図3Bはそれぞれ透明柱集合体30の平面図および断面図、図3Cおよび図3Dはそれぞれ透明柱集合体30のコリメーターとしての透明柱31を示す平面図および側面図である。
【0027】
図3Aおよび図3Bに示すように、透明柱集合体30は全体として椀状に湾曲した円形の形状を有する。透明柱集合体30の外周部は透明柱31と同じ材料で構成されており、この外周部の四箇所にそれぞれ微小磁石32が貫通して取り付けられている。図3Bでは、微小磁石32の磁極は、湾曲した凸面側がN極、凹面側がS極となっているが、これに限定されるものではなく、逆の極性であってもよい。透明柱集合体30の直径は例えば12~22mm、厚さLは例えば0.1~0.5mmであるが、これに限定されるものではない。
【0028】
透明柱集合体30は、図3Cおよび図3Dに示すような正六角錐台状の透明柱31が多数、互いに側面を密着させて蜂の巣状に配列されて形成されている。透明柱集合体30の湾曲した外面および内面は滑らかに形成されている。透明柱31の外面における対角長をDOuter 、内面における対角長をDInner とすると、DOuter >DInner である。
【0029】
図3Bに示すように、この透明柱集合体30を構成する各透明柱31を通り抜ける光は一点(収束点)に収束するように構成されている。各透明柱31を透過した光が収束する収束点は、このパンフォーカス眼鏡を使用者が掛けた場合、角膜の表面または内部、瞳孔、水晶体の表面または内部および眼球の内部のいずれかに位置するようにする。
【0030】
透明柱集合体30を構成する各透明柱310は各透明柱31からの光の放射角度が5度以内になるように構成されている。図3Cおよび図3Dに示すように、透明柱31の長さをL、放射角度の半分をθ/2とする。透明柱31の設計条件は、典型的には、L/DOuter ≧23かつDOuter >DInner である。この条件でのコリメート角度θは5度以内であり、Lの範囲は例えば0.046~0.5mm、DOuter およびDInner の範囲は例えば2~22μmである。
【0031】
光の放射角度が5度の条件は、瞳孔の直径を8mmとしたとき、約92mm先の光源から瞳孔に入射する光の放射角度に相当する。これは人によっては水晶体により網膜上に焦点を合わせることができる範囲であるが、一般的に人が無理なく、網膜上に焦点を合わせられる距離は約230mmであり、この場合、瞳孔の直径を8mmとして、瞳孔に入射する光の放射角度は約2度である。それ故、透明柱集合体30の各透明柱31の設計条件は、より好適には、θ≦2.0度となる条件、すなわち、L/DOuter ≧57.3である。透過する光の放射角度θを狭めるほどパンフォーカス性は向上する。しかし、光の放射角度を狭めるほど透過光量の減少を伴うため、各透明柱31を通り抜ける光の放射角度θは0.1度以上が望ましい。
【0032】
透明柱集合体30の透明材料は、例えば、熱可塑性のアクリル樹脂(PMMA)やポリカーボネート(PC)樹脂などであり、透明柱31の側面の光吸収膜の材料は、例えば、ブラックレジストや熱可塑性樹脂にカーボンブラックを混合した材料などである。
【0033】
透明柱集合体30の製造方法について説明する。放射角度5度以内を実現するには、コリメーターとなる透明柱31のアスペクト比を約23以上に大きくする必要があり、一括形成は困難である。そのため、例えば、図4Aに示すように、側壁が光吸収膜(図示せず)で形成された正六角柱状の透明柱31からなる透明柱集合体を有する平坦で伸縮性を有する透明層60を形成し、これを図4Bに示すように複数層(この例では3層)重ねて、放射角度を5度以内にできる十分な厚さのコリメート機能を持った透明柱集合体の厚膜を形成する。その厚膜を適切な大きさの円盤型に切断し、加熱成型して湾曲させる。この状態を図4Cに示す。この工程により、透明柱集合体の面積は湾曲面の外側が広く、内側が狭い形状となる。この時の湾曲の曲率半径によって、透明柱集合体を透過する光の収束点を調整できる。曲率半径は収束点をどの位置にするかに応じて選択されるが、典型的には約12~30mmである。次に、図4Dに示すように、厚膜の内側湾曲面および外側湾曲面の余分な部分の研削を行う。必要に応じて、図4Eに示すように、透明柱集合体30の外周部の面取りを行う。この後、透明柱集合体30の外周部の四箇所に貫通孔を形成し、これらの貫通孔に微小磁石32を挿入固定する。こうして、目的とする透明柱集合体30が製造される。
【0034】
図1および図2に示すように、左目用筐体20の前面および後面の液体40側にはそれぞれコイルアレイ基板70が設けられている。コイルアレイ基板70は、例えば透明フィルムなどの透明基板上に磁場発生用の微小コイル71が二次元マトリクス状に多数配列されたものである。図5にコイルアレイ基板70のコイルアレイおよびそのアクティブ駆動回路の詳細を示す。図5に示すように、透明基板上には、列方向に延在した電源線72と行方向に延在した走査線73とが縦横に多数設けられている。微小コイル71の間隔a、bはそれぞれ例えば10~100μmである。アクティブ駆動回路はスイッチングトランジスタTからなる。スイッチングトランジスタTは一般的には多結晶またはアモルファスSi薄膜などの半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタにより構成される。スイッチングトランジスタTのソースは電源線72に接続され、ドレインは微小コイル71の一端に接続され、ゲートは走査線73に接続されている。微小コイル71の他端は接地されている。走査線73と電源線72との選択により一つまたは複数の微小コイル71が選択される。選択された微小コイル71にはスイッチングトランジスタTを通して電源線72から電流が流れ、走査線73に印加するゲート電圧により電流値を制御することにより微小コイル71を貫通する磁場を制御する。図1に微小コイル71を貫通する磁力線を模式的に示す。この微小コイル71により発生した磁場と透明柱集合体30の四隅に取り付けられた微小磁石32との間に生じる引力または斥力により、透明柱集合体30を液体40中で移動させることができ、位置や角度などを調整することができる。こうして、微小コイル71の選択により透明柱集合体30に四つの微小磁石32に働く磁力を制御することにより、透明柱集合体30を所望の位置および方位に容易に移動させることができる。
【0035】
図6にこのパンフォーカス眼鏡を使用者が掛けた時の様子を示す。図6においては、左目100は眼球110、水晶体120、角膜130、虹彩140、瞳孔150、網膜160を有する。眼球110を球体と仮定した場合の直径は~24mmである。水晶体120の直径は~9mm、厚さは~3.6mm(最大調節時は4.0mm)である。網膜160は30~40mmの長さに亘って広がっている。透明柱集合体30の各透明柱31の外面(前面)から各透明柱31を透過した光の収束点までの距離は、収束点が角膜130の表面付近の場合は例えば12mm、収束点が瞳孔150の表面付近の場合は例えば16mm、収束点が水晶体120の中心付近の場合は例えば18mm、収束点が眼球110の中心付近の場合は例えば30mmである。
【0036】
フレーム10の左側の耳掛け部には、コイルアレイ基板70の動作、従って透明柱集合体30の動作を制御するための制御回路部80が設けられている。制御回路部80には必要に応じて無線通信部を併設してもよい。図示は省略するが、耳掛け部を含むフレーム10の側面にはコイルアレイ基板70およびアイトラッキングセンサー50と制御回路部80との間を配線するフレキシブル配線が設けられている。電源として用いられるバッテリー(リチウムイオン電池など)はフレーム10の何れかの部位(例えば耳掛け部など)に取り付けられる。図示は省略するが、フレーム10の鼻側の部分には鼻パッドが設けられている。
【0037】
[パンフォーカス眼鏡の動作]
図6に示すように、左目用筐体20の前面を通って入射する外界からの光は、透明柱集合体30に入射すると各透明柱31で放射角度が実質的に5度以内に狭められ、収束点を通った後、網膜160上で結像する。図7図6に比べて視線が下向きになって眼球110が回転した状態を示す。図7に示すように、視線が下向きになって眼球110が回転しても、この回転に応じて左目用筐体20の液体40の内部で透明柱集合体30を磁力により移動させることにより、透明柱集合体30を透過した光が確実に瞳孔150を通るようにすることができる。より詳細には、アイトラッキングセンサー50により瞳孔150を検出することにより眼球110の動きを検出し、その検出信号を制御回路部80に送る。制御回路部80では、この検出信号に応じた制御信号をコイルアレイ基板70に送り、このコイルアレイ基板70により選択された微小コイル71に選択された電流を流す。これによって、透明柱集合体30を所望の位置および方位に移動させる。この状態における図2に対応する正面図を図8に示す。図8に示すように、図2の状態では中央付近にあった透明柱集合体30は右下方に移動していることが分かる。このように、眼球110の動きに応じて透明柱集合体30を最適な位置および方位に移動させることができることにより、広いアイボックス(見える範囲)を維持することができる。
【0038】
以上のように、第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡によれば、通常の眼鏡レンズの代わりに、外界からの光の放射角度を実質的に5度以内に狭めることができる透明柱集合体30を通して外界を見ることができるため、光の混合割合を激減させることができ、それによって、遠距離から超近距離まで、十分な解像度でぼやけが少ない鮮明な視界を得ることができ、広いアイボックスを維持することもできる。また、このパンフォーカス眼鏡の厚さは通常の眼鏡と同様な厚さにすることができる。
【0039】
〈第2の実施の形態〉
[XRグラス]
図9は第2の実施の形態によるXRグラスを示し、左側面図である。このXRグラスは左右対称に構成されているため、以下においては、左目側の構成について説明する。
【0040】
図9に示すように、このXRグラスにおいては、第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡と同様な左目用筐体20の前面に近接ディスプレイ200が設けられている。近接ディスプレイ200は左目用筐体20に倣うように湾曲していても平面状であってもよい。近接ディスプレイ200は不透明または半透明である。近接ディスプレイ200においては、不透明または半透明の基板210上に、それぞれ赤色発光の発光部位220、緑色発光の発光部位230および青色発光の発光部位240からなる3つの副画素により構成された画素の二次元アレイが設けられている。1画素のサイズは例えば4~6μmである。これらの発光部位220、230、240は、マイクロ発光ダイオードディスプレイではマイクロ発光ダイオード、有機ELディスプレイでは有機EL素子、液晶ディスプレイでは基板上に形成された透明導電膜、配向膜、液晶、カラーフィルターなどの積層構造体である。1画素のサイズは必要に応じて選択されるが、例えば、4~6μmである。フレーム10の側面または前面には制御回路部80に隣接して左目用センサー部170が設けられている。左目用センサー部170は、例えば、撮像素子(CMOSイメージセンサーやCCDなど)、LiDAR、照度センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー、地磁気センサー、赤外線センサーなどのいずれか1つ以上を含む。赤外線センサーを用いた場合には暗所でも見える。また、必要に応じてフレーム10の耳の近くにはスピーカや骨伝導イヤホンなどの音響機器も設置される。
【0041】
このXRグラスの場合、透明柱集合体30の透明柱31の設計条件は、好適には、θ≦2.0度となる条件、すなわち、L/DOuter ≧57.3である。角度θが狭いほどパンフォーカス性は高まり、VRグラスなどでしばしば問題となる輻輳角と焦点距離の矛盾の問題を軽減できる。但し、角度θを狭めると透明柱31を透過する光量も減少するため、角度θは0.1度以上が望ましい。
【0042】
このXRグラスの上記以外のことは第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡と同様である。
【0043】
図10にこのXRグラスを使用者が掛けた時の様子を示す。
【0044】
[XRグラスの動作]
図10に示すように、近接ディスプレイ200の画素から発せられて透明柱集合体30に入射する光は、各透明柱31で放射角度が実質的に5度以内(好適には、2.0度以内)に狭められ、収束点を通った後、網膜160上で結像する。このXRグラスにおいても、図7と同様に、図10に比べて視線が下向きになって眼球410が回転した状態でも、左目用筐体20の液体40の内部で透明柱集合体30を磁力により移動させることにより、透明柱集合体30を透過した光が確実に瞳孔150を通るようにすることができる。このため、広いアイボックスを維持することができる。
【0045】
第2の実施の形態によるXRグラスによれば、近接ディスプレイ200の映像を、入射する光の放射角度を実質的に5度以内に狭めることができる透明柱集合体30を通して見ることによって、従来の光学系に比べ圧倒的な近距離で画像認識ができるようになり、通常の眼鏡と大差ない厚さで嵩張らない形状のVRグラスやMRグラス、更にはARグラスやSRグラスなどを実現することができる。
【0046】
〈第3の実施の形態〉
[パンフォーカス眼鏡]
図11は第3の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡を示し、左側面図である。このパンフォーカス眼鏡は左右対称に構成されているため、以下においては、左目側の構成について説明する。
【0047】
図11に示すように、このパンフォーカス眼鏡においては、第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡と同様な左目用筐体20の前面にこの左目用筐体20に倣うように湾曲した凹レンズ300が設けられている。透明柱集合体30を除き、このパンフォーカス眼鏡の上記以外のことは第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡と同様である。
【0048】
図12にこのパンフォーカス眼鏡を使用者が掛けた時の様子を示す。図12に示すように、このパンフォーカス眼鏡においては、収束点から透明柱集合体30を見込む角度の範囲の視野領域は透明柱集合体30がカバーし、その外側の視野領域は凹レンズ300がカバーするように構成されている。視力が正常な人の片目の視野角は、上方は60度、下方70度、鼻側60度、耳側100度の範囲であるが、形や色などが鮮明に認識することができる中心視の領域はごくわずかであるため、透明柱集合体30がカバーする領域を例えば±10度程度に収め、それより広い範囲を通常の凹レンズ300でカバーする。
【0049】
[パンフォーカス眼鏡の動作]
このパンフォーカス眼鏡の動作は、収束点から透明柱集合体30を見込む角度の範囲の視野領域は透明柱集合体30がカバーし、その外側の視野領域は凹レンズ300がカバーすることを除いて、第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡と同様である。
【0050】
第3の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡によれば、透明柱集合体30を有する左目用筐体20および右目用筐体と凹レンズ300との組み合わせにより、第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡と同等の性能を得ることができる。
【0051】
〈第4の実施の形態〉
[パンフォーカス眼鏡]
図13は第4の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡を示し、左側面図である。このパンフォーカス眼鏡は左右対称に構成されているため、以下においては、左目側の構成について説明する。
【0052】
図13に示すように、このパンフォーカス眼鏡においては、第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡と同様な左目用筐体20の前面にこの左目用筐体20に倣うように湾曲した凸レンズ400が設けられている。透明柱集合体30を除き、このパンフォーカス眼鏡の上記以外のことは第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡と同様である。
【0053】
図14にこのパンフォーカス眼鏡を使用者が掛けた時の様子を示す。図14に示すように、このパンフォーカス眼鏡においては、収束点から透明柱集合体30を見込む角度の範囲の視野領域は透明柱集合体30がカバーし、その外側の視野領域は凸レンズ400がカバーする。透明柱集合体30がカバーする領域を例えば±10度程度に収め、それより広い範囲を通常の凸レンズ400でカバーする。
【0054】
[パンフォーカス眼鏡の動作]
このパンフォーカス眼鏡の動作は、収束点から透明柱集合体30を見込む角度の範囲の視野領域は透明柱集合体30がカバーし、その外側の視野領域は凸レンズ400がカバーすることを除いて、第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡と同様である。
【0055】
第4の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡によれば、透明柱集合体30を有する左目用筐体20および右目用筐体と凸レンズ400との組み合わせにより、第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡と同等の性能を得ることができる。
【0056】
〈第5の実施の形態〉
[パンフォーカス眼鏡]
図15は第5の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡を示し、左側面図である。このパンフォーカス眼鏡は左右対称に構成されているため、以下においては、左目側の構成について説明する。
【0057】
図15に示すように、このパンフォーカス眼鏡においては、フレーム10と一体に設けられたレンズ500の後面にこのレンズ500に倣うように湾曲した透明柱集合体30が設けられている。レンズ500は凸レンズであっても凹レンズであってもよく、度付きであっても度なしであってもよい。図15においては、レンズ500が凹レンズである場合が示されている。このパンフォーカス眼鏡においては、第1の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡と異なり、左目用筐体20はなく、透明柱集合体30の移動機能がないだけでなく、アイトラッキングセンサーを用いていない。
【0058】
図16にこのパンフォーカス眼鏡を使用者が掛けた時の様子を示す。図16に示すように、このパンフォーカス眼鏡においては、収束点から透明柱集合体30を見込む角度の範囲の視野領域は透明柱集合体30がカバーし、その外側の視野領域はレンズ500がカバーする。
【0059】
[パンフォーカス眼鏡の動作]
このパンフォーカス眼鏡では、収束点から透明柱集合体30を見込む角度の範囲の視野領域は透明柱集合体30がカバーし、その外側の視野領域はレンズ500がカバーする。図17に示すように、視線が下向きになって眼球100が回転すると、透明柱集合体30を透過した光が網膜160に到達する領域は図16の場合に比べて狭まる。
【0060】
第5の実施の形態によるパンフォーカス眼鏡によれば、次のような利点を得ることができる。すなわち、図16に示すように、透明柱集合体30を使用者が正面から見たときの中心位置に固定した場合、使用者が視線(瞳孔150)をわずかに動かしても、本来視界に入るべき光が透明柱集合体30により遮られて見えなくなる領域が発生する。しかしながら、使用者が激しい運動やゲームなどをするときのように眼球100を激しく動かす必要のない日常生活(ゆっくりと本や新聞を読むときなど)においては、瞳孔150をあまり動かさず頭や首を動かして、正視に近い状態で対象物(物や文字など)を見ることで対応する使い方もできる。その場合は、アイトラッキングセンサーを使った透明柱集合体30の移動機能を省くことが可能であり、パンフォーカス眼鏡を安価に実現することができる。
【0061】
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0062】
例えば、上述の実施の形態において挙げた数値、構成、形状、材料、方法などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構成、形状、材料、方法などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…フレーム、20…左目用筐体、30…透明柱集合体、31…透明柱、32…微小磁石、40…液体、50…アイトラッキングセンサー、60…透明層、70…コイルアレイ基板、71…微小コイル、80…制御回路部、170…左目用センサー部、200…近接ディスプレイ、210…基板、220…赤色発光の発光部位、230…緑色発光の発光部位、240…青色発光の発光部位、300…凹レンズ、400…凸レンズ、500…レンズ
【要約】
【課題】一定の放射角度以内の光のみを通す透明柱集合体を通して外界を見ることによって、光の混合割合を激減させ、遠距離から超近距離まで、ぼやけが少ない鮮明な視界が得られるパンフォーカス眼鏡を提供する。
【解決手段】パンフォーカス眼鏡は、フレーム(10)と一体の透明な左目用筐体および右目用筐体(20)と、これらの筐体の内部に移動可能に収納された透明柱集合体(30)と、これらの筐体に取り付けられたアイトラッキングセンサー(50)とを有する。透明柱集合体は、入射する光に対して、透過率50%以上の放射角度が5度以内である透明柱(31)が複数配列され、各透明柱を透過した光が収束点に収束するように構成される。アイトラッキングセンサーにより使用者の目の瞳孔の位置を検出した結果に応じて透明柱集合体を瞳孔に対向し、かつ収束点が角膜の表面または内部、眼球の内部等のいずれかに位置するように移動させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17