(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】カーボンクレジット取引システム、カーボンクレジット取引方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0208 20230101AFI20240905BHJP
G06Q 30/06 20230101ALI20240905BHJP
【FI】
G06Q30/0208
G06Q30/06
(21)【出願番号】P 2024074262
(22)【出願日】2024-05-01
【審査請求日】2024-05-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524130445
【氏名又は名称】株式会社あしだ
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】芦田 拓弘
【審査官】山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-258849(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0045899(US,A1)
【文献】特開2023-103801(JP,A)
【文献】特開2005-115780(JP,A)
【文献】米国特許第08527335(US,B1)
【文献】韓国登録特許第10-2507766(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0081087(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0250356(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般の消費者が
カーボンクレジット保有者とカーボンクレジットの取引を行うカーボンクレジット取引システムであって、
前記消費者が保有する消費者側通信端末と、
前記カーボンクレジット保有者が保有し、前記消費者側通信端末と通信を行うサーバと、を備え、
前記サーバは、
前記消費者が企業又は自治体から購入した商品又はサービスの購入金額を把握する購入金額把握部と、
前記購入金額把握部が把握した前記購入金額に対し所定のインセンティブ割合に基づいて算出したインセンティブを前記消費者に付与するインセンティブ付与部と、
市場価格に基づいて算出したカーボンクレジットの評価額に相当する前記インセンティブを対価として、前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡する
とともに、該カーボンクレジットの保有権は当該サーバ内で消費者毎に管理する譲渡部と、
前記消費者側通信端末に対して、前記消費者毎にカーボンクレジットの保有権数と市場価格を表示する市場価格表示部と、
前記譲渡部が前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡した際に、市場価格に対して所定の運営割合に基づいて算出した運営費を前記カーボンクレジット保有者に付与するカーボンクレジット運営費付与部と、
を有したことを特徴とするカーボンクレジット取引システム。
【請求項2】
前記消費者が前記消費者側通信端末におけるカーボンオフセットボタンを押す操作をすることにより、前記消費者が保有するカーボンクレジットに基づいて、前記カーボンクレジット保有者自身のCO2排出権としてカーボンオフセットを行うカーボンオフセット部を有したことを特徴とする請求項1に記載のカーボンクレジット取引システム。
【請求項3】
前記消費者が保有権を有するカーボンクレジットによるCO2削減効果を前記消費者側通信端末に表示するCO2削減効果表示部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のカーボンクレジット取引システム。
【請求項4】
一般の消費者が
カーボンクレジット保有者とカーボンクレジットの取引を行うためにサーバが実施するカーボンクレジット取引方法であって
、
前記消費者が企業又は自治体から購入した商品又はサービスの購入金額を把握する購入金額把握工程と、
前記購入金額把握工程で把握した前記購入金額に対し所定のインセンティブ割合に基づいて算出したインセンティブを前記消費者に付与するインセンティブ付与工程と、
市場価格に基づいて算出したカーボンクレジットの評価額に相当する前記インセンティブを対価として、前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡する
とともに、該カーボンクレジットの保有権は当該サーバ内で消費者毎に管理する譲渡工程と、
前記消費者が保有する消費者側通信端末に対して、前記消費者毎にカーボンクレジットの保有権数と市場価格を表示する市場価格表示工程と、
前記譲渡工程が前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡した際に、市場価格に対して所定の運営割合に基づいて算出した運営費を前記カーボンクレジット保有者に付与するカーボンクレジット運営費付与工程と、
を
実施することを特徴とするカーボンクレジット取引方法。
【請求項5】
前記消費者が保有権を有するカーボンクレジットによるCO2削減効果を前記消費者側通信端末に表示するCO2削減効果表示工程を
実施することを特徴とする請求項4に記載のカーボンクレジット取引方法。
【請求項6】
一般の消費者が
カーボンクレジット保有者とカーボンクレジットの取引を行うカーボンクレジット取引システムにおける
サーバに実施させるためのプログラムであって、
前記消費者が企業又は自治体から購入した商品又はサービスの購入金額を把握する購入金額把握
工程と、
前記購入金額把握
工程が把握した前記購入金額に対し所定のインセンティブ割合に基づいて算出したインセンティブを前記消費者に付与するインセンティブ付与
工程と、
市場価格に基づいて算出したカーボンクレジットの評価額に相当する前記インセンティブを対価として、前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡する
とともに、該カーボンクレジットの保有権は当該サーバ内で消費者毎に管理する譲渡工程と、
前記
消費者が保有する消費者側通信端末に対して、前記消費者毎にカーボンクレジットの保有権数と市場価格を表示する市場価格表示
工程と、
前記譲渡工程が前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡した際に、市場価格に対して所定の運営割合に基づいて算出した運営費を前記カーボンクレジット保有者に付与するカーボンクレジット運営費付与工程と、
を
サーバに実施させるためのプログラム。
【請求項7】
前記消費者が保有権を有するカーボンクレジットによるCO2削減効果を前記
消費者が保有する消費者側通信端末に表示するCO2削減効果表示
工程をサーバ
に実施させるための請求項
6に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、政府が推進するカーボンオフセットの事業に一般の消費者が参加することで温室効果ガス削減を推進するカーボンクレジット取引システム、カーボンクレジット取引方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
排出権を保有する者が、温室効果ガスを発生させる企業などに対してJ-クレジット等のカーボンクレジットを販売することで、排出権保有者が排出権を拡大維持するための運営費を取得するとともに、温室効果ガスを発生させる企業などがカーボンクレジットを購入してカーボンオフセットを実現しようとする排出権取引の事業を政府が推進している。
【0003】
森林所有者は森林が効果的にCO2を吸収できるようにするためには、植林、草刈、間伐等の林業サイクルを長年にわたって継続していかねばならず、その運営費用を適切に得ることが望まれている。
【0004】
特許文献1には、商品やサービスの決裁時にカーボンオフセットに参加するか否かを問い、参加する場合には決済金額に加えて、J-クレジット等のカーボンクレジットの価値を算出してその価値金額を徴収する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:特開2022-150704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、一般の消費者が商品又はサービスの決済を行う場合にカーボンクレジットを購入するという動機に至ることがまれであるから、排出権を保有する者の運営費取得やカーボンオフセット制度の推進は期待できないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決して、一般の消費者の日常生活に関連して、市場価格でカーボンクレジットの保有権を譲渡することやカーボンオフセットを可能とすることで、カーボンオフセット制度を推進することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、一般の消費者がカーボンクレジット保有者とカーボンクレジットの取引を行うカーボンクレジット取引システムであって、
前記消費者が保有する消費者側通信端末と、
前記カーボンクレジット保有者が保有し、前記消費者側通信端末と通信を行うサーバと、を備え、
前記サーバは、
前記消費者が企業又は自治体から購入した商品又はサービスの購入金額を把握する購入金額把握部と、
前記購入金額把握部が把握した前記購入金額に対し所定のインセンティブ割合に基づいて算出したインセンティブを前記消費者に付与するインセンティブ付与部と、
市場価格に基づいて算出したカーボンクレジットの評価額に相当する前記インセンティブを対価として、前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡するとともに、該カーボンクレジットの保有権は当該サーバ内で消費者毎に管理する譲渡部と、
前記消費者側通信端末に対して、前記消費者毎にカーボンクレジットの保有権数と市場価格を表示する市場価格表示部と、
前記譲渡部が前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡した際に、市場価格に対して所定の運営割合に基づいて算出した運営費を前記カーボンクレジット保有者に付与するカーボンクレジット運営費付与部と、
を有したことを特徴とするカーボンクレジット取引システムを提供するものである。
【0009】
この構成により、一般の消費者が市場価格でカーボンクレジットの保有権を取得することができ、消費者が株取引と同様に資産形成の可能性を有するとともに、一般の消費者のCO2削減への意識が高まり、カーボンオフセット制度を推進することができる。
【0010】
カーボンクレジット取引システムであって、前記消費者が前記消費者側通信端末におけるカーボンオフセットボタンを押す操作をすることにより、前記消費者が保有するカーボンクレジットに基づいて、前記カーボンクレジット保有者自身のCO2排出権としてカーボンオフセットを行うカーボンオフセット部を有した構成としてもよい。
【0011】
この構成により、一般の消費者が簡単な操作でカーボンオフセットを行うことができてCO2削減に貢献でき、カーボンオフセット制度を推進することができる。
【0012】
カーボンクレジット取引システムであって、前記消費者が保有権を有するカーボンクレジットによるCO2削減効果を前記消費者側通信端末に表示するCO2削減効果表示部を備えた構成としてもよい。
【0013】
この構成により、一般の消費者に対してCO2削減の効果が伝わり、益々カーボンオフセット制度を支援しようとして、さらなる当該企業又は自治体からの商品又はサービスの購入が期待できる。
【0014】
さらに、上記課題を解決するために本発明は、一般の消費者がカーボンクレジット保有者とカーボンクレジットの取引を行うためにサーバが実施するカーボンクレジット取引方法であって、
前記消費者が企業又は自治体から購入した商品又はサービスの購入金額を把握する購入金額把握工程と、
前記購入金額把握工程で把握した前記購入金額に対し所定のインセンティブ割合に基づいて算出したインセンティブを前記消費者に付与するインセンティブ付与工程と、
市場価格に基づいて算出したカーボンクレジットの評価額に相当する前記インセンティブを対価として、前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡するとともに、該カーボンクレジットの保有権は当該サーバ内で消費者毎に管理する譲渡工程と、
前記消費者が保有する消費者側通信端末に対して、前記消費者毎にカーボンクレジットの保有権数と市場価格を表示する市場価格表示工程と、
前記譲渡工程が前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡した際に、市場価格に対して所定の運営割合に基づいて算出した運営費を前記カーボンクレジット保有者に付与するカーボンクレジット運営費付与工程と、
を実施することを特徴とするカーボンクレジット取引方法を提供するものである。
【0015】
この構成により、一般の消費者が市場価格でカーボンクレジットの保有権を取得することができ、消費者が株取引と同様に資産形成の可能性を有するとともに、一般の消費者のCO2削減への意識が高まり、カーボンオフセット制度を推進することができる。
【0016】
カーボンクレジット取引方法であって、前記消費者が保有権を有するカーボンクレジットによるCO2削減効果を前記消費者側通信端末に表示するCO2削減効果表示工程を実施する構成としてもよい。
【0017】
この構成により、一般の消費者に対してCO2削減の効果が伝わり、益々カーボンオフセット制度を支援しようとして、さらなる当該企業又は自治体からの商品又はサービスの購入が期待できる。
【0018】
さらに、上記課題を解決するために本発明は、一般の消費者がカーボンクレジット保有者とカーボンクレジットの取引を行うカーボンクレジット取引システムにおけるサーバに実施させるためのプログラムであって、
前記消費者が企業又は自治体から購入した商品又はサービスの購入金額を把握する購入金額把握工程と、
前記購入金額把握工程が把握した前記購入金額に対し所定のインセンティブ割合に基づいて算出したインセンティブを前記消費者に付与するインセンティブ付与工程と、
市場価格に基づいて算出したカーボンクレジットの評価額に相当する前記インセンティブを対価として、前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡するとともに、該カーボンクレジットの保有権は当該サーバ内で消費者毎に管理する譲渡工程と、
前記消費者が保有する消費者側通信端末に対して、前記消費者毎にカーボンクレジットの保有権数と市場価格を表示する市場価格表示工程と、
前記譲渡工程が前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡した際に、市場価格に対して所定の運営割合に基づいて算出した運営費を前記カーボンクレジット保有者に付与するカーボンクレジット運営費付与工程と、
をサーバに実施させるためのプログラムを提供するものである。
【0019】
この構成により、一般の消費者が市場価格でカーボンクレジットの保有権を取得することができ、消費者が株取引と同様に資産形成の可能性を有するとともに、一般の消費者のCO2削減への意識が高まり、カーボンオフセット制度を推進することができる。
【0020】
プログラムであって、前記消費者が保有権を有するカーボンクレジットによるCO2削減効果を前記消費者が保有する消費者側通信端末に表示するCO2削減効果表示工程をサーバに実施させる構成としてもよい。
【0021】
この構成により、一般の消費者に対してCO2削減の効果が伝わり、益々カーボンオフセット制度を支援しようとして、さらなる当該企業又は自治体からの商品又はサービスの購入が期待できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のカーボンクレジット取引システム、カーボンクレジット取引方法、及びプログラムにより、一般の消費者に対して、市場価格でカーボンクレジットの保有権を譲渡することやカーボンオフセットを可能とすることで、カーボンオフセット制度を推進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例1におけるカーボンクレジット取引システムの構成を説明する図である。
【
図2】本発明の実施例1におけるプログラムを説明する図である。
【
図3】本発明の実施例1におけるカーボンクレジット取引方法を説明する図である。
【
図4】本発明の実施例1におけるCO2削減効果表示の例を説明する図である。
【
図5】本発明の実施例1におけるカーボンオフセット操作画面の例を説明する図である。
【
図6】本発明の実施例1におけるカーボンオフセットに対する貢献ランキング表示の例を説明する図である。
【
図7】本発明の実施例1における企業等のカーボンオフセット貢献を表示する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1におけるカーボンクレジット取引システム、カーボンクレジット取引方法、及びプログラムについて、
図1―
図5を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1におけるカーボンクレジット取引システムの構成を説明する図である。
図2は、本発明の実施例1におけるプログラムを説明する図である。
図3は、本発明の実施例1におけるカーボンクレジット取引方法を説明する図である。
図4は、本発明の実施例1におけるCO2削減効果表示の例を説明する図である。
図5は、本発明の実施例1におけるカーボンオフセット操作画面の例を説明する図である。
図6は、本発明の実施例1におけるカーボンオフセットに対する貢献ランキング表示の例を説明する図である。
図7は、本発明の実施例1における企業等のカーボンオフセット貢献を表示する例を説明する図である。
【0025】
(カーボンクレジット取引システム) 本発明の実施例1におけるカーボンクレジット取引システム100は、
図1に示すように、一般の消費者が保有する携帯電話、スマートフォン、タブレット、又はパソコンなどの消費者側通信端末20(20a、20b、20c)と、企業又は自治体が保有する携帯電話、スマートフォン、タブレット、又はパソコンなどの企業等側通信端末30(30a、30b、30c)と、森林所有者、風力発電事業者、又は太陽光発電事業者などのカーボンクレジット保有者が保有し、消費者側通信端末20及び企業等側通信端末30とインターネットを介して通信を行うサーバ10と、を備えている。また、政府のカーボンクレジット管理コンピュータ40のJ-クレジット登録簿システム等を介して、カーボンクレジットの売買又はカーボンオフセットの申請を行うことができる。
【0026】
なお、実施例1においては、サーバ10はインターネットを介して、消費者側通信端末20、企業等側通信端末30、及び政府のカーボンクレジット管理コンピュータ40と通信を行う構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、電話回線等の有線通信やトランシーバー等の無線通信で通信を行ってもよい。また、企業等側通信端末30、及び政府のカーボンクレジット管理コンピュータ40を備える構成としたが、必ずしも必須ではなく、備えていなくてもよい。
【0027】
サーバ10は、
図2に示すような構成を有しており、これらはコンピュータのプログラムで構成されている。つまり、一般の消費者が企業又は自治体から購入した商品又はサービスの購入金額を把握する購入金額把握部11と、購入金額把握部11が把握した購入金額に対し所定のインセンティブ割合に基づいて算出したインセンティブを当該消費者に付与するインセンティブ付与部12と、この購入金額に対し所定の付与割合に基づいて算出したカーボンクレジットを消費者が商品又はサービスを購入した当該企業又は自治体に付与するカーボンクレジット付与部15と、を有している。
【0028】
ここで、本願におけるインセンティブとは、一般の消費者が企業又は自治体から商品又はサービスを購入した購入金額に応じて付与するもので、将来のさらなる購買意欲に対する刺激や動機を与えるものである。具体的には、カーボンクレジットを取得するための対価に充当可能なポイント、割引クーポン、又はアップグレードサービス等である。
【0029】
また、サーバ10は、購入金額に基づいて企業又は自治体に付与したカーボンクレジットによるCO2削減効果、及び後述のカーボンクレジット譲渡による消費者が保有権を有するカーボンクレジットによるCO2削減効果を消費者側通信端末20に表示するCO2削減効果表示部13、購入金額に対して所定の運営割合に基づいて算出した運営費を前記カーボンクレジット保有者のカーボンクレジット運営費として付与するカーボンクレジット運営費付与部16、及び消費者側通信端末20に対して当該企業又は自治体の基本情報、セール情報、又はイベント情報を消費者側通信端末20に表示する企業等情報表示部14を有している。
【0030】
また、市場価格に基づいて一般の消費者が保有するインセンティブを対価としてカーボンクレジットを譲渡する譲渡部17を有するとともに、カーボンクレジットの市場価格を消費者側通信端末20に表示する市場価格表示部18を有している。譲渡部17が消費者にカーボンクレジットを譲渡した際、カーボンクレジット運営費付与部16は市場価格に対して所定の運営割合に基づいて算出した運営費を前記カーボンクレジット保有者のカーボンクレジット運営費として付与する。これにより、一般の消費者が政府のカーボンクレジット口座を保有せずにカーボンクレジットを入手できる。
【0031】
なお、実施例1においては、一般の消費者が保有するインセンティブを対価としてカーボンクレジットを譲渡するように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、市場価格に基づいて現金で消費者に譲渡するようにしてもよい。また、一般の消費者だけでなく、政府のカーボンクレジット口座を持たない企業や自治体に対して、現金又はインセンティブを対価としてカーボンクレジットを譲渡するようにしてもよい。これにより、政府のカーボンクレジット口座を保有しない消費者又は企業等がカーボンクレジットを保有することができる。
【0032】
なお、企業等情報表示部14、及びカーボンクレジット付与部15は、必ずしも必須ではなく、備えていなくてもよい。
【0033】
一般の消費者が入手したカーボンクレジットは、サーバ10内で消費者毎に管理されている。そして、一般の消費者が保有するカーボンクレジットを市場価格で換金することができる。この際もカーボンクレジット運営費付与部16は換金額に対して所定の運営割合に基づいて算出した運営費をカーボンクレジット保有者のカーボンクレジット運営費として付与する。これにより、カーボンクレジット保有者は運営費が得られるとともに、消費者は株式等と同様に自身の資金を投資することが可能となる。また、一般の消費者が保有するカーボンクレジットを市場価格でインセンティブと交換することも可能である。
【0034】
サーバ10はさらに、カーボンオフセット部19を有している。カーボンオフセット部19は、政府のカーボンクレジット口座を保有していない消費者からのカーボンオフセットを受け付けることができる。消費者は、カーボンオフセットするカーボンクレジットの量を決めた上で、消費者側通信端末20のカーボンオフセットボタンを押す操作をすることでカーボンオフセットすることができる。この際、サーバ10では、カーボンオフセット操作されたカーボンクレジットをカーボンクレジット保有者自身のCO2排出権として確保する。
【0035】
これにより、政府のカーボンクレジット口座を保有していない消費者がカーボンオフセットすることができるようになり、一般消費者の意識が高まり、カーボンオフセット制度を強力に推進することができる。なお、政府のカーボンクレジット口座を保有していない企業又は自治体も同様にカーボンオフセットをすることができる。
【0036】
また、カーボンオフセット部19によるカーボンオフセットの効果を示すために、消費者側通信端末20に対して、
図6に示すようなカーボンオフセット貢献ランキングや
図7に示すような特定の企業等のカーボンオフセット貢献を表示することができる。
【0037】
サーバ10における購入金額把握部11、インセンティブ付与部12、CO2削減効果表示部13、企業等情報表示部14、カーボンクレジット付与部15、カーボンクレジット運営費付与部16、譲渡部17、市場価格表示部18、及びカーボンオフセット部19は、Webアプリのプログラムとして構成されている。
【0038】
なお、実施例1においては、サーバ10における購入金額把握部11、インセンティブ付与部12、CO2削減効果表示部13、企業等情報表示部14、カーボンクレジット付与部15、カーボンクレジット運営費付与部16、譲渡部17、市場価格表示部18、及びカーボンオフセット部19をWebアプリのプログラムとして構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、消費者側通信端末20におけるアプリのプログラム、及び企業側通信端末30におけるアプリのプログラムとして構成してもよい。
【0039】
(カーボンクレジット取引方法) カーボンクレジット取引方法について
図3を参照して説明する。 予め、森林所有者等のカーボンクレジット保有者は、商店、コンビニ、スーパー、ガソリンスタンド等のカーボンクレジット購入者である企業や自治体を自らの事業ネットワークに加盟させて、サーバ10が企業等側通信端末30と通信が行える環境を整
備しておく。
【0040】
また、消費者はカーボンクレジット保有者が主導する事業ネットワークに加盟してサーバ10が消費者側通信端末20と通信が行える環境を整備しておく。
【0041】
事業ネットワークに加盟した企業又は自治体は、企業等側通信端末30からサーバ10に、企業又は自治体における基本情報、クーポン情報、又はセール情報等の消費者が興味を持つような企業等情報を通知する企業等情報表示工程61を実施する。サーバ10は、受けとった企業等情報を事業ネットワークに加盟した消費者の消費者側通信端末20に表示する。また、
図7に示すような後述するカーボンオフセットの貢献を表示する情報を表示してもよい。
【0042】
なお、実施例1においては、企業等情報を事業ネットワークに加盟した消費者の消費者側通信端末20に表示する企業等情報表示工程61を実施するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、企業等情報表示工程61を実施せずに、ダイレクトメールを郵送して企業等情報を紹介してもよい。
【0043】
企業又は自治体における基本情報、クーポン情報、又はセール情報を受けとった消費者は、興味を引かれたスーパーなどの企業又は自治体にて商品又はサービスを購入する。そうすると、企業等側通信端末30又は消費者側通信端末20から商品又はサービスの購入金額をサーバ10に通知してサーバ10が購入金額を把握する購入金額把握工程62が実施される。把握する購入金額は消費税込みであっても消費税抜きであってもよい。また、企業又は自治体が消費税込みか消費税抜きかを決定するようにしてもよい。
【0044】
次に、把握した購入金額に対し、所定のインセンティブ割合に基づいて算出したインセンティブを前記消費者に付与するともに、所定の付与割合に基づいて算出したカーボンクレジットを企業又は自治体に付与するインセンティブ及びカーボンクレジット付与工程63を実施する。
【0045】
実施例1におけるインセンティブはポイントであり、インセンティブ割合は、購入金額の1%である。つまり、購入金額の1%をポイントとして付与する。このポイントは、サーバ10を管轄するカーボンクレジット保有者が主導する事業ネットワークに加盟したすべての企業や自治体が発行するクーポン、割引券、商品、又はカーボンクレジット等と交換できるし、また後述するようにカーボンクレジットを取得する対価として使用できる。付与したポイントは消費者側通信端末20に表示される。
【0046】
なお、実施例1においては、インセンティブとしてポイントを付与するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、直接、カーボンクレジット購入券、割引クーポン、又はアップグレードサービスを付与するようにしてもよく、消費者にインセンティブを与えるものであれば任意のものを付与できる。
【0047】
また、把握した購入金額に対し、所定の付与割合に基づいて算出したカーボンクレジットを前記企業又は自治体に付与する。実施例1における付与割合は、購入金額の0.01%としている。この付与されたカーボンクレジットを貯めることで、企業又は自治体は、カーボンオフセットを行って、自身が排出したCO2の排出量をキャンセルすることができる。
【0048】
そして、購入金額に基づいて企業又は自治体に付与したカーボンクレジットによるCO2削減効果、及び後述の消費者が保有するカーボンクレジットによるCO2削減効果を消費者側通信端末20に対して表示するCO2削減効果表示工程64を実施する。CO2削減効果表示は累積表示も可能でその一例を
図4に示す。
図4の例では、累積で1527トンのCO2削減効果に相当する貢献があったことを示している。消費者はこの表示を見ることで、カーボンオフセット制度に貢献していると認識することができ、さらなる購買意欲につながることが期待できる。
【0049】
なお、実施例1においては、CO2削減効果表示工程64を実施するように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、CO2削減効果表示工程64を実施しなくてもよいし、また、ダイレクトメールを郵送してCO2削減効果に相当する貢献があったことを紹介してもよい。
【0050】
また、実施例1においては、インセンティブ割合を購入金額の1%とし、カーボンクレジットの付与割合を購入金額の0.01%としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、インセンティブ割合を購入金額の2%とし、カーボンクレジットの付与割合を購入金額の0.05%としてもよく、任意のインセンティブ割合、及び付与割合を設定することができる。
【0051】
譲渡工程65にて、市場価格に基づいて算出したカーボンクレジットの評価額に相当するインセンティブを対価としてカーボンクレジットの保有権を譲渡することができる。この際、譲渡したカーボンクレジットの譲渡価格に対して所定の運営割合に基づいて算出した運営費をカーボンクレジット保有者のカーボンクレジット運営費として付与する。これにより、消費者が政府のカーボンクレジット口座を保有せずにカーボンクレジットを入手できるとともに、カーボンクレジット保有者は所定の運営費を取得することができる。
【0052】
カーボンクレジットの市場価格を東京証券取引所等から把握して、消費者側通信端末20又は企業等側通信端末30に表示する市場価格表示工程66を実施する。これにより、消費者又は企業等は、少なくとも前日終値の市場価格を知ることができ、換金するかどうかの判断を行うことが可能となる。
【0053】
さらに、カーボンオフセット工程67を実施することができる。カーボンオフセット工程67は、政府のカーボンクレジット口座を保有していない消費者からのカーボンオフセットを受け付ける。消費者は、カーボンオフセットするカーボンクレジットの量を決めた上で、
図5に示す消費者側通信端末20に必要事項を記入して「カーボンオフセット申請」ボタンを押す操作をすることでサーバ10はカーボンオフセット工程67を実施する。これにより、カーボンクレジット保有者は、カーボンオフセットされたカーボンクレジットを自身のCO2排出権として確保する。
【0054】
これにより、政府のカーボンクレジット口座を保有していない消費者がカーボンオフセットすることができるようになり、一般消費者の意識が高まり、カーボンオフセット制度を強力に推進することができる。なお、政府のカーボンクレジット口座を保有していない企業又は自治体も同様にカーボンオフセットをすることができる。
【0055】
また、カーボンオフセット工程67によるカーボンオフセットの効果を示すために、消費者側通信端末20に対して、
図6に示すようなカーボンオフセット貢献ランキングや
図7に示すような特定の企業等のカーボンオフセット貢献を表示することができる。
【0056】
なお、実施例1においては、カーボンオフセット工程67を実施するように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、カーボンオフセット工程67を実施しなくてもよい。
【0057】
このように、実施例1においては、一般の消費者が参加可能なカーボンクレジット取引システムであって、 前記消費者が保有する消費者側通信端末と、 カーボンクレジット保有者が保有し、前記消費者側通信端末と通信を行うサーバと、を備え、 前記サーバは 前記消費者が企業又は自治体から購入した商品又はサービスの購入金額を把握する購入金額把握部と、 前記購入金額把握部が把握した前記購入金額に対し所定のインセンティブ割合に基づいて算出したインセンティブを前記消費者に付与するインセンティブ付与部と、 市場価格に基づいて算出したカーボンクレジットの評価額に相当する前記インセンティブを対価として、前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡する譲渡部と、 前記消費者側通信端末に対して、前記消費者毎にカーボンクレジットの保有権数と市場価格を表示する市場価格表示部と、を有したことを特徴とするカーボンクレジット取引システムにより、一般の消費者が市場価格でカーボンクレジットの保有権を取得することで、消費者が株取引と同様に資産形成の可能性を有するとともに、一般の消費者のCO2削減への意識が高まり、カーボンオフセット制度を推進することができる。
【0058】
また、実施例1においては、一般の消費者が参加可能なカーボンクレジット取引方法であって、
前記消費者が保有する消費者側通信端末と、
カーボンクレジット保有者が保有し、前記消費者側通信端末と通信を行うサーバと、を備え、
前記サーバは
前記消費者が企業又は自治体から購入した商品又はサービスの購入金額を把握する購入金額把握工程と、
前記購入金額把握工程で把握した前記購入金額に対し所定のインセンティブ割合に基づいて算出したインセンティブを前記消費者に付与するインセンティブ付与工程と、
市場価格に基づいて算出したカーボンクレジットの評価額に相当する前記インセンティブを対価として、前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡する譲渡工程と、
前記消費者側通信端末に対して、前記消費者毎にカーボンクレジットの保有権数と市場価格を表示する市場価格表示工程と、
を有したことを特徴とするカーボンクレジット取引方法により、一般の消費者が市場価格でカーボンクレジットの保有権を取得することで、消費者が株取引と同様に資産形成の可能性を有するとともに、一般の消費者のCO2削減への意識が高まり、カーボンオフセット制度を推進することができる。
【0059】
さらに、実施例1においては、一般の消費者がカーボンクレジットを取引可能なカーボンクレジット取引システムにおけるプログラムであって、 前記消費者が企業又は自治体から購入した商品又はサービスの購入金額を把握する購入金額把握部と、 前記購入金額把握部が把握した前記購入金額に対し所定のインセンティブ割合に基づいて算出したインセンティブを前記消費者に付与するインセンティブ付与部と、 市場価格に基づいて算出したカーボンクレジットの評価額に相当する前記インセンティブを対価として、前記消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡する譲渡部と、 前記消費者側通信端末に対して、前記消費者毎にカーボンクレジットの保有権数と市場価格を表示する市場価格表示部と、を備えたことを特徴とするプログラムにより、一般の消費者が市場価格でカーボンクレジットの保有権を取得することで、消費者が株取引と同様に資産形成の可能性を有するとともに、一般の消費者のCO2削減への意識が高まり、カーボンオフセット制度を推進することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明におけるカーボンクレジット取引システム、カーボンクレジット取引方法、及びプログラムは、温室効果ガスの排出権取引の分野に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10:サーバ 12:インセンティブ付与部 13:CO2削減効果表示部 14:企業等情報表示部 15:カーボンクレジット付与部 16:カーボンクレジット運営費付与部 17:譲渡部 18:市場価格表示部 19:カーボンオフセット部 20(20a、20b、20c):消費者側通信端末 30(30a、30b、30c):企業等側通信端末 40:カーボンクレジット管理コンピュータ
【要約】 (修正有)
【課題】一般の消費者が市場価格でカーボンクレジットの保有権を取得することでカーボンオフセット制度を推進するカーボンクレジット取引システム、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】サーバがインターネットを介して、複数の消費者側通信端末、複数の企業等側通信端末及び政府のカーボンクレジット管理コンピュータと通信を行うシステムであって、サーバ10は、消費者が企業又は自治体から購入した商品又はサービスの購入金額を把握する購入金額把握部、購入金額把握部が把握した購入金額に対し所定のインセンティブ割合に基づいて算出したインセンティブを消費者に付与するインセンティブ付与部、カーボンクレジットの市場価格に相当するインセンティブに基づいて、消費者に対してカーボンクレジットの保有権を譲渡する譲渡部及び消費者側通信端末に対して、消費者毎にカーボンクレジットの保有数と市場価格を表示する市場価格表示部を有する。
【選択図】
図2