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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】運転支援装置および運転支援方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20240905BHJP
   B60W 40/076 20120101ALI20240905BHJP
   B60W 30/188 20120101ALI20240905BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W40/076
B60W30/188
G08G1/16 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021044032
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143498
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】関 淳志
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-091351(JP,A)
【文献】特開2013-049389(JP,A)
【文献】特開2020-015439(JP,A)
【文献】特開2017-013597(JP,A)
【文献】特開2004-050925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0146836(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向の障害物を検出する検出部と、
前記障害物が検出された場合に、前記車両の駆動力を制御して前記障害物への衝突回避制御を行う衝突回避制御部と、
前記衝突回避制御が開始された前記車両と前記障害物との間に存在する対象物を乗り越えたときの前記車両と前記障害物との距離に応じて、前記車両が前記対象物を乗り越えたときの駆動力の引き下げ量を算出する算出部と、
前記車両が前記対象物を乗り越えるときに、前記車両の車速が設定車速に到達するまで、運転者が操作したアクセルペダルのアクセル開度から定まる要求駆動力より小さい駆動力である初期駆動力から駆動力を徐々に引き上げ、前記車両の車速が設定車速に到達した後、駆動力を前記引き下げ量引き下げるように前記衝突回避制御部を制御する駆動力制御部と、
を備え
前記算出部は、
前記距離が短いほど大きい前記引き下げ量を算出する、
運転支援装置。
【請求項2】
車両の進行方向の障害物を検出する検出部と、
前記障害物が検出された場合に、前記車両の駆動力を制御して前記障害物への衝突回避制御を行う衝突回避制御部と、
前記衝突回避制御が開始された前記車両と前記障害物との間に存在する対象物を乗り越えたときの前記車両と前記障害物との距離に応じて、前記車両が前記対象物を乗り越えたときの駆動力の引き下げ量を算出する算出部と、
前記車両が前記対象物を乗り越えるときに、前記車両の車速が設定車速に到達するまで、運転者が操作したアクセルペダルのアクセル開度から定まる要求駆動力より小さい駆動力である初期駆動力から駆動力を徐々に引き上げ、前記車両の車速が設定車速に到達した後、駆動力を前記引き下げ量引き下げるように前記衝突回避制御部を制御する駆動力制御部と、
を備え、
前記算出部は、
前記車両の前記対象物への到達時の車速に応じて、前記初期駆動力からの駆動力の引き上げ率を算出し、
前記駆動力制御部は、
前記対象物を前記車両が乗り越える時に、前記設定車速に到達するまで、前記初期駆動力から駆動力を前記引き上げ率で徐々に引き上げるように、前記衝突回避制御部を制御する、
転支援装置。
【請求項3】
前記算出部は、
前記車両の前記対象物への到達時の車速が速いほど低い前記引き上げ率を算出する、
請求項に記載の運転支援装置。
【請求項4】
車両の進行方向の障害物を検出する検出部と、
前記障害物が検出された場合に、前記車両の駆動力を制御して前記障害物への衝突回避制御を行う衝突回避制御部と、
前記衝突回避制御が開始された前記車両と前記障害物との間に存在する対象物を乗り越えたときの前記車両と前記障害物との距離に応じて、前記車両が前記対象物を乗り越えたときの駆動力の引き下げ量を算出する算出部と、
前記車両が前記対象物を乗り越えるときに、前記車両の車速が設定車速に到達するまで、運転者が操作したアクセルペダルのアクセル開度から定まる要求駆動力より小さい駆動力である初期駆動力から駆動力を徐々に引き上げ、前記車両の車速が設定車速に到達した後、駆動力を前記引き下げ量引き下げるように前記衝突回避制御部を制御する駆動力制御部と、
を備え、
前記算出部は、
前記距離と、前記車両が前記障害物に至る路面の勾配率と、に応じて、前記引き下げ量を算出する、
転支援装置。
【請求項5】
前記算出部は、
前記距離が短いほど大きく、且つ、前記勾配率が大きいほど小さい、前記引き下げ量を算出する、
請求項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
車両の進行方向の障害物を検出する検出ステップと、
前記障害物が検出された場合に、前記車両の駆動力を制御して前記障害物への衝突回避制御を行う衝突回避制御ステップと、
前記衝突回避制御が開始された前記車両と前記障害物との間に存在する対象物を乗り越えたときの前記車両と前記障害物との距離に応じて、前記車両が前記対象物を乗り越えたときの駆動力の引き下げ量を算出する算出ステップと、
前記車両が前記対象物を乗り越えるときに、前記車両の車速が設定車速に到達するまで、運転者が操作したアクセルペダルのアクセル開度から定まる要求駆動力より小さい駆動力である初期駆動力から駆動力を徐々に引き上げ、前記車両の車速が設定車速に到達した後、駆動力を前記引き下げ量引き下げるように前記衝突回避制御ステップにおける前記車両の前記駆動力を制御する駆動力制御ステップと、
を含み、
前記算出ステップは、
前記距離が短いほど大きい前記引き下げ量を算出する、
運転支援方法。
【請求項7】
車両の進行方向の障害物を検出する検出ステップと、
前記障害物が検出された場合に、前記車両の駆動力を制御して前記障害物への衝突回避制御を行う衝突回避制御ステップと、
前記衝突回避制御が開始された前記車両と前記障害物との間に存在する対象物を乗り越えたときの前記車両と前記障害物との距離に応じて、前記車両が前記対象物を乗り越えたときの駆動力の引き下げ量を算出する算出ステップと、
前記車両が前記対象物を乗り越えるときに、前記車両の車速が設定車速に到達するまで、運転者が操作したアクセルペダルのアクセル開度から定まる要求駆動力より小さい駆動力である初期駆動力から駆動力を徐々に引き上げ、前記車両の車速が設定車速に到達した後、駆動力を前記引き下げ量引き下げるように、前記衝突回避制御ステップにおける前記車両の前記駆動力を制御する駆動力制御ステップと、
を含み、
前記算出ステップは、
前記車両の前記対象物への到達時の車速に応じて、前記初期駆動力からの駆動力の引き上げ率を算出し、
前記駆動力制御ステップは、
前記対象物を前記車両が乗り越える時に、前記設定車速に到達するまで、前記初期駆動力から駆動力を前記引き上げ率で徐々に引き上げるように制御する、
運転支援方法。
【請求項8】
前記算出ステップは、
前記車両の前記対象物への到達時の車速が速いほど低い前記引き上げ率を算出する、
請求項7に記載の運転支援方法。
【請求項9】
車両の進行方向の障害物を検出する検出ステップと、
前記障害物が検出された場合に、前記車両の駆動力を制御して前記障害物への衝突回避制御を行う衝突回避制御ステップと、
前記衝突回避制御が開始された前記車両と前記障害物との間に存在する対象物を乗り越えたときの前記車両と前記障害物との距離に応じて、前記車両が前記対象物を乗り越えたときの駆動力の引き下げ量を算出する算出ステップと、
前記車両が前記対象物を乗り越えるときに、前記車両の車速が設定車速に到達するまで、運転者が操作したアクセルペダルのアクセル開度から定まる要求駆動力より小さい駆動力である初期駆動力から駆動力を徐々に引き上げ、前記車両の車速が設定車速に到達した後、駆動力を前記引き下げ量引き下げるように、前記衝突回避制御ステップにおける前記車両の前記駆動力を制御する駆動力制御ステップと、
を備え、
前記算出ステップは、
前記距離と、前記車両が前記障害物に至る路面の勾配率と、に応じて、前記引き下げ量を算出する、
運転支援方法。
【請求項10】
前記算出ステップは、
前記距離が短いほど大きく、且つ、前記勾配率が大きいほど小さい、前記引き下げ量を算出する、
請求項9に記載の運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転支援装置および運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両周辺の障害物との衝突を回避する衝突回避制御が知られている。また、衝突回避制御において、路面状態に応じて駆動力を調整する技術が開示されている。
【0003】
例えば、障害物を検出した場合に車両の加速を制限し、障害物と車両との間に段差がある場合には加速制限を徐々に緩めて段差を乗り越え、乗り越え後に再び加速制限を実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-91351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術では、段差などの対象物を乗り越えた後の障害物までの距離によって、加速制限がきつすぎて障害物に十分に接近できなくなる場合や、加速制限が緩すぎて障害物へ接触してしまう場合があった。このため、従来技術では、良好な車両走行支援を行うことが困難な場合があった。
【0006】
本開示が解決しようとする課題は、良好な車両走行支援を行うことができる、運転支援装置および運転支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる運転支援装置は、検出部と、衝突回避制御部と、算出部と、駆動力制御部と、を備える。検出部は、車両の進行方向の障害物を検出する。衝突回避制御部は、前記障害物が検出された場合に、前記車両の駆動力を制御して前記障害物への衝突回避制御を行う。算出部は、前記衝突回避制御が開始された前記車両と前記障害物との間に存在する対象物を乗り越えたときの前記車両と前記障害物との距離に応じて、前記車両が前記対象物を乗り越えたときの駆動力の引き下げ量を算出する。駆動力制御部は、前記車両が前記対象物を乗り越えるときに、前記車両の車速が設定車速に到達するまで、運転者が操作したアクセルペダルのアクセル開度から定まる要求駆動力より小さい駆動力である初期駆動力から駆動力を徐々に引き上げ、前記車両の車速が設定車速に到達した後、駆動力を前記引き下げ量引き下げるように前記衝突回避制御部を制御する。前記算出部は、前記距離が短いほど大きい前記引き下げ量を算出する。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる運転支援装置および運転支援方法によれば、良好な車両走行支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の運転支援装置を搭載した車両の一例の模式図である。
図2図2は、車両の機能的構成のブロック図である。
図3図3は、ハードウェア構成図である。
図4A図4Aは、衝突回避制御の一例の説明図である。
図4B図4Bは、衝突回避制御の一例の説明図である。
図5図5は、車両と障害物との間に対象物が存在する説明図である。
図6A図6Aは、衝突回避制御の一例の説明図である。
図6B図6Bは、衝突回避制御の一例の説明図である。
図6C図6Cは、衝突回避制御の一例の説明図である。
図7A図7Aは、対象物乗り越えの一例の説明図である。
図7B図7Bは、対象物乗り越えの一例の説明図である。
図7C図7Cは、対象物乗り越えの一例の説明図である。
図8A図8Aは、車両と障害物との距離の説明図である。
図8B図8Bは、衝突回避制御の一例の説明図である。
図9図9は、路面に勾配がある場合の説明図である。
図10A図10Aは、衝突回避制御の一例の説明図である。
図10B図10Bは、衝突回避制御の一例の説明図である。
図11図11は、情報処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本開示に係る運転支援装置および運転支援方法の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の運転支援装置10を搭載した車両1の一例の模式図である。
【0012】
運転支援装置10は、車両1の周辺の検知結果情報を用いて、障害物に対する衝突回避制御を行う情報処理装置である。本実施形態では、運転支援装置10は、車両1に搭載された形態を一例として説明する。
【0013】
車両1には、複数のセンサ12が設けられている。センサ12は、車両1の周辺の物体を検知するセンサである。本実施形態では、センサ12は、例えば、数cm~数mの検知距離であり、比較的近距離の物体の有無および物体までの距離を検知可能である。本実施形態では、センサ12が、超音波センサである形態を一例として説明する。超音波センサは、20kHz~100kHzの超音波を送信波として照射する照射機能と、物体で反射した超音波を反射波として受信する受信機能と、を有する。
【0014】
本実施形態では、車両1は、センサ12として、センサ12A~センサ12Dを備える。センサ12Aおよびセンサ12Bは、車両1の車幅方向に直交する全長方向の一方に設けられている。具体的には、センサ12Aおよびセンサ12Bは、例えば、車両1のフロントバンパー部分に設けられている。センサ12Cおよびセンサ12Dは、車両1の全長方向の他方に設けられている。センサ12Cおよびセンサ12Dは、例えば、車両1のリアバンパーに設けられている。
【0015】
なお、車両1に設けられるセンサ12の個数および配置は、上記形態に限定されるものではない。例えば、車両1のフロント部分に1個または3個以上、車両1のリア部分に1個または3個以上、車両1のサイド部分に1個以上、のセンサ12を設けた構成であってもよい。
【0016】
センサ12A~センサ12Dの各々は、各々の検知範囲において物体を検知し、物体の検知情報を運転支援装置10へ出力する。
【0017】
次に、車両1の機能的構成について詳細に説明する。
【0018】
図2は、車両1の機能的構成のブロック図である。車両1は、センサ12と、センサECU(Engine Control Unit)14と、Gセンサ16と、舵角センサ18と、走行制御部20と、操作部22と、メータコンピュータ24と、記憶部26と、運転支援装置10と、を備える。
【0019】
センサECU14、Gセンサ16、舵角センサ18、走行制御部20、メータコンピュータ24、記憶部26、および運転支援装置10は、バス29を介して通信可能に接続されている。走行制御部20は、操作部22および運転支援装置10と通信可能に接続されている。
【0020】
センサECU14は、センサ12と通信可能に接続されている。センサECU14は、物体の検知情報をセンサ12から受信する。センサECU14は、検知情報から、物体までの距離を算出し、算出した距離の情報を含む検知結果情報を、運転支援装置10へ出力する。物体までの距離は、物標距離、と称される場合がある。
【0021】
センサECU14は、センサ12から照射された超音波が物体で反射し、反射波が戻るまでの時間を計測することによって、物体までの距離を測定する。なお、センサ12の検知角度が例えば90°などの広範囲の場合には、単一のセンサ12による検知情報のみでは物体の方向がわからない。このため、センサECU14は、複数のセンサ12によって検知された物体までの距離の情報を用いて、物体の位置を特定する。物体の位置は、例えば、車両1からの距離および方向によって表される。また、センサECU14は、複数のセンサ12による検知情報を用いることで、検知された物体が壁のような形状なのか電柱のような形状なのか、などの形状も判断することができる。
【0022】
本実施形態では、センサECU14は、センサ12によって検知された物体の物体情報と、物体までの距離を表す距離情報と、を含む検知結果情報を、運転支援装置10へ出力する。
【0023】
物体とは、センサ12によって検知可能な物である。すなわち、本実施形態では、物体とは、センサ12から照射された超音波を反射し、反射波の生じる物である。本実施形態では、物体には、障害物および対象物が含まれる。
【0024】
障害物とは、車両1が乗り越えて走行することの困難な物体である。また、障害物とは、車両1が接触を回避する対象の物体である。例えば、障害物は、壁、電柱、などであるが、これらに限定されない。
【0025】
対象物とは、車両1が乗り越えて走行することの可能な物体である。例えば、対象物は、段差、縁石、フラップ、などであるが、これらに限定されない。
【0026】
物体情報は、検知された物体が障害物であることを表す障害物情報、および、検知された物体が対象物であることを表す対象物情報、の少なくとも一方を含む。
【0027】
センサECU14は、障害物の形状や高さなどの特長を表す障害物特徴情報を予め記憶する。また、センサECU14は、車両1の車高などに応じて、段差などである対象物の形状や高さなどの特長を表す対象物特徴情報を予め記憶する。そして、センサECU14は、センサ12による検知情報によって特定される物体の形状情報に対応する障害物特徴情報または対象物特徴情報を検索する。これらの処理により、センサECU14は、センサ12によって検知された物体が障害物であるか対象物であるかを特定すればよい。
【0028】
そして、センサECU14は、物体の物体情報と、物体までの距離を表す距離情報と、を含む検知結果情報を、運転支援装置10へ出力すればよい。なお、センサECU14による処理の少なくとも一部は、運転支援装置10またはセンサ12で実行してもよい。
【0029】
Gセンサ16は、車両1の加速度を計測し、測定結果を運転支援装置10へ出力する。本実施形態では、Gセンサ16は、車両1の前後方向の加速度、および、車両1の上下方向の加速度、の各々の計測結果を、運転支援装置10へ出力する形態を一例として説明する。前後方向は、車両1の車幅方向に直交する全長方向に一致する。車両1の上下方向は、車両1の車幅方向および全長方向の双方に直交する方向である。例えば、車両1の上下方向は、車両1の車幅方向および全長方向によって形成される面が水平面と一致する場合、鉛直方向に一致する。
【0030】
Gセンサ16は、車両1の車輪速度から算出される加速度と、車両1の走行する路面の傾斜である車両1の傾きによる重力加速度と、の合計値を、車両1の前後方向の加速度の計測結果情報として運転支援装置10へ出力する。
【0031】
舵角センサ18は、車両1に設けられたステアリングホイールの操舵角を検出し、舵角情報として運転支援装置10へ出力する。
【0032】
走行制御部20は、車両1の走行を制御するECUである。走行制御部20は、エンジンECU20Aと、ブレーキECU20Bと、を含む。
【0033】
エンジンECU20Aは、車両1のエンジンやモータ等の駆動装置の制御、および、車両1のトランスミッション等の伝達系装置の制御を実行する。例えば、エンジンECU20Aは、車両1に設けられたスロットルアクチュエータやトランスミッションギアの制御を行う。また、エンジンECU20Aは、アクセルペダル22Aの駆動を通じて運転者に情報を伝達するアクセルアクチュエータの制御を行う。
【0034】
また、エンジンECU20Aは、操作部22と通信可能に接続されている。エンジンECU20Aは、操作部22から受付けたユーザによる操作情報を運転支援装置10へ送信する。
【0035】
操作部22は、ユーザである運転者によって操作される。操作部22は、例えば、アクセルペダル22A、ブレーキペダル22B、シフトレバー22Cなどを含む。なお、車両1に搭載された操作部22は、これらに限定されない。
【0036】
エンジンECU20Aは、アクセルペダル22Aのアクセルペダル操作情報、および、シフトレバー22Cのシフト位置情報、を含む操作情報を、運転支援装置10へ出力する。
【0037】
アクセルペダル操作情報とは、アクセルペダル22Aの操作状態を表す情報であり、アクセルペダル22Aのアクセル開度を表す情報である。アクセル開度は、例えば、アクセルペダル22Aに接続された開度率センサによって検出される。
【0038】
シフト位置情報は、シフトレバー22Cの位置を表す情報である。シフト位置情報は、例えば、駐車、後退、ニュートラル、通常走行、などのシフト位置を表す情報である。なお、シフト位置情報は、車両1の走行モードおよびコントロール状態を表す情報を更に含んでいてもよい。例えば、シフト位置情報は、スポーツモード、スノーモードなどの走行モード、および、クルーズコントロールの使用状況、などの情報を含んでいてもよい。
【0039】
ブレーキECU20Bは、車両1の制動系の制御を行う。例えば、ブレーキECU20Bは、車両1の車輪に配置された油圧式ブレーキ装置を作動させるブレーキアクチュエータの制御を行う。また、ブレーキECU20Bは、ブレーキペダル22Bの駆動を通じて運転者に情報を伝達するために、ブレーキアクチュエータの制御を行う。ブレーキECU20Bは、運転支援装置10に対して、ブレーキペダル22Bの操作情報、および、車両1の車輪速度の情報を出力する。車輪速度の情報は、例えば、車両1の各車輪の各々に備えられた車輪速センサからの信号である。車輪速度とは、車両1の車輪の回転速度である。
【0040】
メータコンピュータ24は、運転者に対する情報報知機能を備える。情報報知機能は、情報を表示する表示機能、情報を表す音を出力する音出力機能、などである。表示機能は、例えば運転者に対して表示による報知を行うコンビネーションメータ装置である。音出力機能は、例えば、ブザーや音声による報知を行う報知音発生装置である。
【0041】
記憶部26は、各種のデータを記憶する。記憶部26は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。なお、記憶部26は、記憶媒体であってもよい。具体的には、記憶媒体は、プログラムまたは各種の情報を、LAN(Local Area Network)およびインターネットなどを介してダウンロードして記憶または一時記憶したものであってもよい。また、記憶部26を、複数の記憶媒体から構成してもよい。
【0042】
次に、運転支援装置10について詳細に説明する。
【0043】
図3は、運転支援装置10のハードウェア構成図の一例である。
【0044】
運転支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)11A、ROM(Read Only Memory)11B、RAM11C、およびI/F11D等がバス11Eにより相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0045】
CPU11Aは、本実施形態の運転支援装置10を制御する演算装置である。ROM11Bは、CPU11Aによる各種の処理を実現するプログラム等を記憶する。RAM11Cは、CPU11Aによる各種の処理に必要なデータを記憶する。I/F11Dは、データを送受信するためのインターフェースである。
【0046】
本実施形態の運転支援装置10で実行される情報処理を実行するためのプログラムは、ROM11B等に予め組み込んで提供される。なお、本実施形態の運転支援装置10で実行されるプログラムは、運転支援装置10にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供するように構成してもよい。
【0047】
図2に戻り説明を続ける。
【0048】
運転支援装置10は、処理部30を備える。処理部30は、各種の情報処理を実行する。例えば、CPU11Aが、ROM11BからプログラムをRAM11C上に読み出して実行することにより、処理部30の後述する各機能部がコンピュータ上で実現される。プログラムは、例えば、ICS(Intelligent Clarence Sonar)アプリケーションに実装されたプログラムなどであるが、これに限定されない。ICSアプリケーションとは、運転支援装置10で動作するソフトウェアの一例である。
【0049】
処理部30は、受付部30Aと、検出部30Bと、衝突回避制御部30Cと、対象物判定部30Dと、算出部30Eと、駆動力制御部30Fと、を備える。受付部30A、検出部30B、衝突回避制御部30C、対象物判定部30D、算出部30E、および、駆動力制御部30F、の一部または全ては、例えば、CPU11Aなどの処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)などのハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。また、受付部30A、検出部30B、衝突回避制御部30C、対象物判定部30D、算出部30E、および、駆動力制御部30Fの少なくとも1つを、ネットワークなどを介して運転支援装置10と通信可能に接続された外部の情報処理装置に搭載した構成としてもよい。
【0050】
受付部30Aは、センサECU14、Gセンサ16、舵角センサ18、エンジンECU20A、およびブレーキECU20B、の各々から各種の情報を受付ける。
【0051】
本実施形態では、受付部30Aは、センサECU14から検知結果情報を受付ける。また、受付部30Aは、Gセンサ16から車両1の加速度の計測結果情報を受付ける。また、受付部30Aは、舵角センサ18から、舵角情報を受付ける。また、受付部30Aは、エンジンECU20Aから、アクセルペダル22Aのアクセルペダル操作情報、および、シフトレバー22Cのシフト位置情報、を含む操作情報を受付ける。また、受付部30Aは、ブレーキECU20Bから、ブレーキペダル22Bの操作情報、および、車両1の車輪速度の情報を受付ける。
【0052】
検出部30Bは、車両1の進行方向の障害物を検出する。例えば、検出部30Bは、Gセンサ16によって検出された加速度の方向などから、車両1の進行方向を特定する。そして、例えば、検出部30Bは、受付部30AでセンサECU14から受付けた検知結果情報に含まれる物体情報に、特定した進行方向に存在する障害物を示す障害物情報が含まれるか否かを判断する。物体情報に、検知された物体が障害物であることを表す障害物情報が含まれる場合、検出部30Bは、車両1の進行方向の障害物を検出する。すなわち、検出部30Bは、車両1の進行方向に障害物が存在することを検出する。
【0053】
衝突回避制御部30Cは、障害物が検出された場合に、車両1の駆動力を制御して障害物への衝突回避制御を行う。衝突回避制御とは、運転者が操作したアクセルペダル22Aのアクセル開度から定まる要求駆動力より小さい駆動力に、車両1の駆動力を制限する制御である。
【0054】
図4Aおよび図4Bは、衝突回避制御の一例の説明図である。図4Aは、車両1と障害物Bとの位置関係の一例の説明図である。例えば、車両1が進行方向Xに走行しており、この進行方向Xの下流側に障害物Bが存在する場面を想定する。車両1の検出部30Bが障害物Bを検出すると、衝突回避制御部30Cは、障害物Bへの衝突回避制御を実行する。衝突回避制御部30Cは、車両1の駆動力を制御することで、衝突回避制御を実行する。
【0055】
図4Bは、衝突回避制御部30Cによる衝突回避制御の一例の説明図である。図4B中、横軸は、車両1から障害物Bまでの距離を示す。図4B中、Bの地点が、障害物Bの位置、すなわち、障害物Bまでの距離が0の地点である。図4B中、縦軸は、車両1の駆動力を示す。
【0056】
障害物Bが検出されると、衝突回避制御部30Cは、運転者が操作したアクセルペダル22Aのアクセル開度から定まる要求駆動力f10より小さい駆動力となるように車両1の駆動力を制御し、障害物Bまでの距離が短くなるほどより小さい駆動力となるように、走行制御部20を制御する。
【0057】
例えば、衝突回避制御部30Cは、図4Bの線図40によって表されるように、障害物Bに近づくほど駆動力ゼロに向かって徐々に駆動力が低下し、障害物Bから予め定めた距離の時点で駆動力がゼロとなるように、走行制御部20を制御する。具体的には、衝突回避制御部30Cは、要求駆動力f10未満であり且つ障害物Bに近づくほど低い駆動力を、車両1と障害物Bとの距離に応じて算出する。そして、衝突回避制御部30Cは、距離に応じて算出した駆動力を、制限された要求駆動力である制限要求駆動力として、走行制御部20へ順次出力する。走行制御部20に含まれるエンジンECU20AおよびブレーキECU20Bは、受付けた制限要求駆動力で駆動するように車両1を制御する。このため、衝突回避制御部30Cによる衝突回避制御によって、車両1は制限要求駆動力の駆動力で駆動し、障害物Bへの衝突が回避される。
【0058】
図2に戻り説明を続ける。なお、車両1と障害物Bとの間に、対象物が存在する場合がある。対象物は、上述したように、段差、縁石、フラップ、などの車両1が乗り越え可能な物である。
【0059】
対象物判定部30Dは、衝突回避制御部30Cによって衝突回避制御が開示された車両1と障害物Bとの間に、対象物が存在するか否かを判定する。
【0060】
対象物判定部30Dは、例えば、受付部30AでセンサECU14から受付けた検知結果情報に含まれる物体情報に、対象物情報が含まれるか否かを判断する。物体情報に、検知された物体が段差などの対象物であることを表す対象物情報が含まれる場合、対象物判定部30Dは、車両1と障害物Bとの間に対象物が存在すると判定する。なお、対象物判定部30Dは、センサ12による検知結果情報に基づいて対象物を判定する形態に限定されない。
【0061】
例えば、対象物判定部30Dは、車両1の駆動力に対する車速の異常を判定することで、対象物の存在を判定してもよい。駆動力に対する車速の異常とは、運転者がアクセルペダル22Aに対してアクセル操作をすることで生じた駆動力に対して、車両1に予想される車速が生じていない場合である。車速は、車両1の速度である。
【0062】
図5は、車両1と障害物Bとの間に対象物Tが存在する場合の一例の説明図である。例えば、障害物Bが検出された状態で運転者がアクセルペダル22Aを踏むと、車両1の駆動力は、衝突回避制御によって制限された状態であっても、制限要求駆動力に応じて車両1が加速されるはずである。しかし、例えば、図5に示すような対象物Tである段差に車輪が接しているときには、車両1は、停止した状態、または、所定の車速に達しない状態となる場合がある。このような場合、対象物判定部30Dは、車両1と障害物Bとの間に対象物Tが存在すると判定してもよい。
【0063】
ここで、運転者が、もう少し障害物Bに接近させて車両1を停車させることを所望する場合がある。このような場合、車両1の進行方向Xへの駆動力を制限する衝突回避制御が行われると、段差などの対象物Tの影響などにより、車両1の走行に必要な駆動力を得ることが出来ない場合がある。
【0064】
そこで、衝突回避制御部30Cでは、車両1が対象物Tを乗り越えるときに、車両1の車速が設定車速に到達するまで、要求駆動力f10より小さい駆動力である初期駆動力から駆動力を徐々に引き上げる。そして、衝突回避制御部30Cは、車両1の車速が設定車速に到達すると、駆動力を引き下げる、衝突回避制御を実行する。
【0065】
設定車速には、例えば、車両1が対象物Tを乗り越えるために最低限必要な車速を予め定めればよい。なお、設定車速は、ユーザによるメータコンピュータ24などを介した操作指示などに応じて、適宜変更可能としてもよい。
【0066】
図6A図6Cは、車両1と障害物Bとの間に対象物Tが存在する場合の、衝突回避制御の一例の説明図である。
【0067】
図6Aは、対象物Tを乗り越えるときの、時間と障害物Bまでの距離との関係の説明図である。図6A中、横軸は時間を表し、縦軸は車両1から障害物Bまでの距離を表す。図6Bは、対象物Tを乗り越えるときの車両1の駆動力の一例の説明図である。図6B中、横軸は時間を表し、縦軸は駆動力を表す。図6Cは、時間と車速との関係の説明図である。図6C中、横軸は時間を表し、縦軸は車両1の車速を表す。
【0068】
障害物Bが検出されると、衝突回避制御部30Cは、運転者が操作したアクセルペダル22Aのアクセル開度から定まる要求駆動力f10より小さい駆動力となるように車両1の駆動力を制御し、障害物Bまでの距離が短くなるほどより小さい駆動力となるように、走行制御部20を制御する。
【0069】
このとき、車両1と障害物Bとの間に対象物Tが存在する場合を想定する。例えば、タイミングt1の時点で、車両1の進行方向の下流側の車輪が対象物Tに到達したと想定する。このタイミングt1時点で運転者がアクセルペダル22Aを踏んでも、車両1の駆動力は、初期駆動力fiに制限されている。
【0070】
初期駆動力fiは、例えば、車両1と障害物Bとの間に対象物Tが存在しない場合の駆動力の制御時の、障害物Bまでの距離に対応する駆動力である。具体的には、初期駆動力fiは、図4Bの線図40によって表される駆動力の制御が行われた時の、障害物Bまでの距離に対応する駆動力である。なお、初期駆動力fiには、運転者が操作したアクセルペダル22Aのアクセル開度から定まる要求駆動力f10より小さい駆動力であればよく、線図40によって表される駆動力に限定されない。
【0071】
図6A図6Cに戻り説明を続ける。車両1の駆動力が初期駆動力fiに制限されているため、車両1は段差などの対象物Tを乗り越えることができない。そこで、図6Bの線図42および図6Cの線図43に示すように、衝突回避制御部30Cは、車両1が対象物Tを乗り越えるときに、車両1の車速が設定車速に到達するまで、初期駆動力fiから駆動力を徐々に引き上げる。ここで「駆動力を徐々に引き上げる」とは、車速の検出結果を基に駆動力を経時的に引き上げていくという意味であり、駆動力の引き上げ速度の絶対値を規定するものではない。
【0072】
具体的には、図6Bのタイミングt1からタイミングt2に示すように、衝突回避制御部30Cは、駆動力の制限を徐々に解除する。駆動力を徐々に引き上げられた車両1は、対象物Tを登り始め、車速が出始める。また、車両1から障害物Bまでの距離は、距離LT1から距離LT2へと減少していく。
【0073】
衝突回避制御部30Cは、車両1の車速が設定車速に到達すると、対象物Tを乗り越えたと判断し、駆動力を引き下げる。図6A図6Cに示す例では、衝突回避制御部30Cは、タイミングt2の時点で、車両1が対象物Tを乗り越えたと判断する。そして、衝突回避制御部30Cは、タイミングt2の時点の車両1から障害物Bまでの距離LT2に応じた駆動力f0まで、駆動力を引き下げる。
【0074】
車両1は、タイミングt2からタイミングt3の期間、衝突回避制御部30Cによって制御された駆動力となるまで加速する。しかし、障害物Bまでの距離が減少していくため、車両1の駆動力および加速度は低下していく。タイミングt3の時点では、駆動力がゼロとなり、車両1の加速が禁止される。このため、車両1は等速で障害物Bへ接近する。そして、タイミングt4の時点で、ブレーキ制御が発動し、障害物Bとの距離が予め定めた距離となるまでに車両1は停止する。
【0075】
このため、衝突回避制御の駆動力の推移を示す線図42は、対象物Tの乗り越えに相当する位置にピークPを有するものとなる。このピークPの引き上げ領域PAの部分が、初期駆動力fiから駆動力を徐々に引き上げる引き上げ部分に相当する。また、このピークPの引き下げ領域PBの部分が、車両1の車速が設定車速に到達した後に障害物Bまでの距離に応じて駆動力を引き下げる引き下げ部分に相当する。なお、衝突回避制御部30Cは、ピークPの最大値の駆動力が、要求駆動力f10未満の最大駆動力fmax以下となるように駆動力を調整する。
【0076】
なお、図6A図6Cは、対象物Tに到達したときに車両1が停止状態であった場合を想定して示す。そして、対象物Tの乗り越えのためにアクセルペダル22Aが操作された場面を一例として説明している。この場合、設定車速は、例えば、車両1が動き出し且つ対象物Tを乗り越え可能な車速に予め設定されていればよい。また、設定車速は、車両1の状態などに応じて適宜再設定可能としてもよい。
【0077】
衝突回避制御部30Cは、受付部30Aで受付ける車輪速度の情報をモニタすることで、車速の変化を検出し、駆動力の制御に用いればよい。詳細には、衝突回避制御部30Cは、受付部30AでブレーキECU20Bから受付けた車輪速度の情報から、車両1の車速を算出すればよい。
【0078】
なお、図6Bには、駆動力を徐々に引き上げる例示として、駆動力を連続的に引き上げる例を示した。しかし、駆動力の引き上げは、階段状の引き上げであってもよく、連続的なの引き上げに限定されない。
【0079】
衝突回避制御部30Cによる駆動力の制御によって、車両1は、対象物Tを乗り越え且つ障害物Bへの衝突を回避することができる。
【0080】
図7A図7Cは、対象物T乗り越えの一例の説明図である。衝突回避制御部30Cによる駆動力の制御によって、車両1は、図7Aに示す対象物Tに到達した状態から、図7Bおよび図7Cに示すように、対象物Tを乗り越えて障害物Bの手前で停止することが可能となる。
【0081】
ここで、対象物Tを乗り越えた後の車両1と障害物Bとの距離によっては、衝突回避制御部30Cによる駆動力の制限が厳しすぎて、障害物Bに十分に寄って停止することが困難となる場合がある。また、駆動力の制限が緩すぎて、車両1が障害物Bに接触してしまう場合がある。
【0082】
図2に戻り説明を続ける。そこで、本実施形態では、算出部30Eは、衝突回避制御が開始された車両1と障害物Bとの間に存在する対象物Tを乗り越えたときの、車両1と障害物Bとの距離に応じて、車両1が対象物Tを乗り越えたときの駆動力の引き下げ量を算出する。
【0083】
車両1が対象物Tを乗り越えたとき、とは、車両1が対象物Tを乗り越えた時点を意味する。詳細には、車両1が対象物Tを乗り越えたとき、とは、車両1の車輪が対象物Tに乗り上げた後に該車輪が対象物T上から外れたとき、を意味する。
【0084】
具体的には、車両1が進行し、対象物Tである段差を乗り越える場合を想定する。この場合、対象物Tを乗り越えたとき、とは、車両1が進行することで車両1の進行方向の下流側の車輪が対象物Tである段差に乗り上げた後に、該車輪が対象物Tである段差上から外れた状態となったとき、を意味する。車輪が対象物Tである段差上から外れた状態とは、対象物Tの形状によって異なる。例えば、対象物Tが段差である場合には、車輪が対象物Tから外れた状態となったときとは、段差を形成する頂点部分を車輪が超えた状態を意味する。また、対象物Tがフラップである場合には、車輪が対象物Tから外れた状態となったときとは、車輪が対象物Tに乗り上げた後に対象物Tから降りたときを意味する。
【0085】
算出部30Eは、車両1が対象物Tを乗り越えたか否か判断する。車両1が対象物Tを乗り越えたか否かの判断は、例えば、以下の方法で実行すればよい。
【0086】
例えば、算出部30Eは、衝突回避制御部30Cによって衝突回避制御されている車両1の車速が、初期駆動力fiから駆動力を徐々に引き上げられて設定車速に到達したときに、車両1が対象物Tを乗り越えたと判断すればよい。
【0087】
なお、算出部30Eは、他の方法で、車両1が対象物Tを乗り越えたと判断してもよい。例えば、算出部30Eは、センサECU14から受付けた検知結果情報に対象物Tを表す対象物情報が含まれる状態から、含まれない状態へと切り替わったときに、車両1が対象物Tを乗り越えたと判断する。また、例えば、算出部30Eは、Gセンサ16で計測された車両1の上下方向および前後方向の加速度が、対象物Tを乗り越えたときの所定の加速度のパターンを示す場合に、対象物Tを乗り越えたと判断してもよい。対象物Tを乗り越えたときの加速度のパターンは、例えば、対象物Tの形状などの特長を表す情報に対応付けて、予め記憶部26へ記憶しておけばよい。そして、算出部30Eは、センサECU14によって検出された対象物Tの形状などの特長を表す情報に対応するパターンを記憶部26から検索する。そして、算出部30Eは、対象物Tを乗り越えたときの加速度のパターンに一致する、該対象物Tの形状に対応するパターンが記憶部26に存在する場合に、対象物Tを乗り越えたと判断すればよい。
【0088】
本実施形態では、算出部30Eは、衝突回避制御されている車両1の車速が初期駆動力fiから駆動力を徐々に引き上げられて設定車速に到達したときに、車両1が対象物Tを乗り越えたと判断する形態を一例として説明する。
【0089】
そして、算出部30Eは、車両1が対象物Tを乗り越えたときの車両1と障害物Bとの距離に応じて、車両1が対象物Tを乗り越えたときの駆動力の引き下げ量を算出する。
【0090】
対象物Tを乗り越えたときの駆動力の引き下げ量とは、図6で説明した線図42に含まれるピークPの引き下げ領域PBにおける駆動力の引き下げ量を意味する。すなわち、引き下げ量は、対象物Tの乗り越え時に車両1の車速が設定車速に到達したときに引き下げる、駆動力の引き下げ量である。
【0091】
算出部30Eは、車両1が対象物Tを乗り越えたときの、車両1と障害物Bとの距離が短いほど、大きい引き下げ量を算出する。また、算出部30Eは、車両1が対象物Tを乗り越えたときの、車両1と障害物Bとの距離が長いほど、小さい引き下げ量を算出する。
【0092】
算出部30Eは、車両1が対象物Tを乗り越えた時点で検出された検出結果情報に含まれる、車両1と対象物Tとの距離を用いて、引き下げ量を算出すればよい。
【0093】
なお、算出部30Eは、車両1が対象物Tを乗り越える前のタイミングで、引き下げ量を推定してもよい。
【0094】
この場合、算出部30Eは、対象物Tまでの距離情報、障害物Bまでの距離情報、車両1の車輪速度の情報、車両1の車輪速度から算出される加速度、車両1の走行する路面の傾斜、などの情報を受付部30Aから受付ける。そして、算出部30Eは、これらの情報を用いて、車両1が対象物Tを乗り越えたときの車両1と障害物Bとの距離を公知の方法で推定してもよい。
【0095】
駆動力制御部30Fは、車両1が対象物Tを乗り越えるときに、車両1の車速が設定車速に到達するまで、運転者が操作したアクセルペダル22Aのアクセル開度から定まる要求駆動力f10より小さい駆動力である初期駆動力fiから駆動力を徐々に引き上げる。そして、駆動力制御部30Fは、車両1の車速が設定車速に到達すると、駆動力を、算出部30Eで算出された引き下げ量引き下げるように、衝突回避制御部30Cを制御する。
【0096】
図8Aおよび図8Bは、対象物Tを乗り越えたときの車両1と障害物Bとの距離Lが、距離Lbである場合の一例の説明図である。図8B中、横軸は、車両1から障害物Bまでの距離を示す。図8B中、Bの地点が、障害物Bの位置、すなわち、障害物Bまでの距離が0の地点である。また、図8B中、LT1は、車両1が対象物Tに到達した時点の車両1と障害物Bとの距離である。また、図8B中、LT2は、車両1が対象物Tを乗り越えたときの車両1と障害物との距離Lbである。図8B中、縦軸は、車両1の駆動力を示す。
【0097】
図6Bを用いて説明した線図42と同様に、障害物Bが検出された場合の衝突回避制御部30Cによる駆動力の制御によって、衝突回避制御の駆動力の推移を示す線図46は、対象物Tの乗り越えに相当する位置にピークPを有するものとなる。
【0098】
そして、本実施形態では、衝突回避制御部30Cは、車両1の車速が設定車速に到達すると、駆動力制御部30Fの制御によって、算出部30Eで算出された距離Lbに応じた引き下げ量C、駆動力を引き下げる。引き下げ量Cは、距離Lが短いほど大きい量である。
【0099】
このため、車両1が対象物Tを乗り越えたときの距離Lが短いほど、ピークPにおける引き下げ領域PBの駆動力の引き下げ量C、すなわち、ピークPの頂点からの駆動力の引き下げ量Cが大きくなる。図8Bには、ピークPの頂点の時点の駆動力f7から、駆動力f2まで、駆動力を引き下げ量C、引き下げた例を示す。
【0100】
このため、車両1が対象物Tを乗り越えたときの障害物Bとの距離Lが短いほど、駆動力は強くまたは厳しく抑制されることとなる。よって、対象物Tを乗り越えた後の車両1が、障害物Bに接触することが抑制される。
【0101】
また、車両1が対象物Tを乗り越えたときの距離Lが長いほど、ピークPにおける引き下げ領域PBの駆動力の引き下げ量C、すなわち、ピークPの頂点からの駆動力の引き下げ量Cが小さくなる。
【0102】
このため、車両1が対象物Tを乗り越えたときの障害物Bとの距離Lが長いほど、駆動力は弱くまたは緩く抑制されることとなる。よって、対象物Tを乗り越えた後の車両1が、障害物Bから大きく離れた位置で停止することが抑制される。すなわち、車両1が対象物Tを乗り越えたときの障害物Bとの距離Lが長い場合であっても、車両1が障害物Bに十分に寄って停止することが可能となる。また、障害物Bから大きく離れた位置で車両1が停止することによって、運転者に違和感を与えることを抑制することができる。
【0103】
なお、車両1が障害物Bに至る路面に勾配がある場合がある。
【0104】
図9は、車両1が障害物Bに至る路面Rに勾配がある場合の説明図である。路面に勾配がある場合、衝突回避制御部30Cによる駆動力の制限が厳しすぎて、障害物Bに十分に寄って停止することが困難となる場合がある。また、駆動力の制限が緩すぎて、障害物Bに接触してしまう場合がある。
【0105】
そこで、算出部30Eは、対象物Tを乗り越えたときの車両1と障害物Bとの距離Lと、車両1が障害物Bに至る路面Rの勾配率と、に応じて、引き下げ量Cを算出してもよい。路面Rの勾配率とは、水平方向に対する車両1の車体の傾きを意味する。図9では、勾配率を、S%として示した。
【0106】
図2に戻り説明を続ける。上述したように、Gセンサ16から受付ける加速度の計測結果情報は、車両1の車輪速度から算出される加速度と、車両1の走行する路面Rの傾斜である車両1の傾きによる重力加速度と、の合計値である。このため、算出部30Eは、Gセンサ16で計測された車両1の前後方向の加速度の計測結果情報から、車輪速度によって算出される加速度を減算することで、車両1の傾きである路面Rの傾斜を算出できる。そして、算出部30Eは、算出した路面Rの傾斜を、勾配率として算出すればよい。
【0107】
そして、算出部30Eは、距離Lが短いほど大きく、且つ、勾配率が大きいほど小さい、引き下げ量Cを算出する。詳細には、例えば、算出部30Eは、距離Lが短いほど大きい引き下げ量Cを算出する。そして、算出部30Eは、算出した引き下げ量Cを、勾配率が大きいほど小さい値となるように補正することで、駆動力の制御に用いる引き下げ量Cを算出すればよい。
【0108】
そして、衝突回避制御部30Cは、対象物Tの乗り越え時に車両1の車速が設定車速に到達すると、駆動力制御部30Fの制御によって、算出部30Eで算出された距離Laおよび勾配率に応じた引き下げ量C、駆動力を引き下げる。
【0109】
このため、車両1の駆動力は、車両1が対象物Tを乗り越えたときの障害物Bとの距離が長いほど弱くまたは緩く、且つ、路面Rの勾配率が大きいほど弱くまたは緩く抑制されることとなる。よって、対象物Tを乗り越えた後の車両1が、障害物Bから大きく離れた位置で停止することが抑制される。すなわち、障害物Bに十分に寄って車両1を停止させることが可能となる。また、障害物Bから大きく離れた位置で車両1が停止することによって、運転者に違和感を与えることを抑制することができる。
【0110】
なお、図6A図6Cには、対象物Tに到達したときに車両1が停止状態であった場合を想定して説明した。しかし、車両1が対象物Tへの到達時の車速はゼロとは限られない。例えば、車両1が移動を継続しながら対象物Tを乗り越える場合がある。すなわち、車両1の対象物Tへの到達時の車速が高速である場合や、低速である場合など、様々な場合がある。
【0111】
そこで、算出部30Eは、車両1の対象物Tへの到達時の車速に応じて、初期駆動力fiからの駆動力の引き上げ率を算出する。初期駆動力fiからの駆動力の引き上げ率とは、上述したピークPの引き上げ領域PAにおける、駆動力の引き上げ率を意味する。駆動力の引き上げ率は、単位時間あたりの駆動力の引き上げ率、単位距離あたりの駆動力の引き上げ率、の何れであってもよい。
【0112】
算出部30Eは、車両1の対象物Tへの到達時の車速を導出する。
【0113】
例えば、算出部30Eは、車両1が対象物Tへ到達したときの車両1の車速を、ブレーキECU20Bから受付けた車輪速度の情報から算出する。車両1が対象物Tへ到達したタイミングの判断は、例えば、受付部30Aで受付けた計測結果情報に、物体が対象物Tであることを示す対象物情報が含まれ、且つ、対象物Tとの距離がゼロである情報が含まれる場合に、車両1が対象物Tへ到達したと判断すればよい。また、算出部30Eは、他の方法で、車両1が対象物Tへ到達したと判断してもよい。例えば、算出部30Eは、衝突回避制御されている車両1の車速が、走行制御部20へ出力されている制限要求駆動力に対応する車速から該車速未満へと切り替わったときに、対象物Tへ到達したと判断してもよい。
【0114】
なお、算出部30Eは、車両1が対象物Tへ到達する前に、車両1が対象物Tへ到達したときの車両1の車速を推定してもよい。この場合、算出部30Eは、対象物Tまでの距離情報、障害物Bまでの距離情報、車両1の車輪速度の情報、車両1の車輪速度から算出される加速度、車両1の走行する路面Rの傾斜、などの情報を受付部30Aから受付ける。そして、算出部30Eは、これらの情報を用いて、車両1が対象物Tに到達したときの車両1の車速を、公知の方法で推定すればよい。
【0115】
そして、算出部30Eは、車両1が対象物Tへ到達したときの車両1の車速に応じて、ピークPにおける、初期駆動力fiからの引き上げ率を算出する。
【0116】
算出部30Eは、車両1の対象物Tへの到達時の車速が速いほど、低い引き上げ率を算出する。すなわち、算出部30Eは、車両1の対象物Tへの到達時の車速が速いほど、上記ピークPの引き上げ領域PAにおける駆動力の引き上げ率として、低い引き上げ率を算出する。
【0117】
そして、駆動力制御部30Fは、対象物Tを車両1が乗り越えるときに、設定車速に到達するまで、算出された引き上げ率で初期駆動力fiから駆動力を徐々に引き上げるように、衝突回避制御部30Cを制御する。
【0118】
図10Aは、対象物Tに到達したときの車両1の車速が速い場合の、衝突回避制御の一例の説明図である。図10A中、横軸は、車両1から障害物Bまでの距離を示す。図10A中、Bの地点が、障害物Bの位置、すなわち、障害物Bまでの距離が0の地点である。また、図10A中、LT1は、車両1が対象物Tに到達した時点の車両1と障害物Bとの距離Lである。また、図10A中、LT2は、車両1が対象物Tを乗り越えたときの車両1と障害物との距離Lである。図10A中、縦軸は、車両1の駆動力を示す。
【0119】
図6Bを用いて説明した線図42と同様に、障害物Bが検出された場合の衝突回避制御部30Cによる駆動力の制御によって、衝突回避制御の駆動力の推移を示す線図46は、対象物Tの乗り越えに相当する位置にピークPを有するものとなる。
【0120】
車両1が対象物Tに到達すると、衝突回避制御部30Cは、駆動力制御部30Fの制御によって、算出部30Eで算出された引き上げ率αaで、駆動力を引き上げる。そして、衝突回避制御部30Cは、車両1の車速が設定車速に到達すると、駆動力制御部30Fの制御によって、算出部30Eで算出された距離Lに応じた引き下げ量C、駆動力を引き下げる。
【0121】
このため、車両1が対象物Tに到達したときの車速が速いほど、駆動力は緩くまたは弱く引き上げられることとなる。このため、車両1が対象物Tに到達したときの車速が速い場合、車両1は自車両の慣性を活用して対象物Tを乗り越えることが可能となる。また、対象物Tを乗り越えた後の駆動力の抑制との差分を減らし、急減速を抑制することができる。このため、運転者の違和感の低減を図ることができる。
【0122】
図10Bは、対象物Tに到達したときの車両1の車速が図10Aに示す例より遅い場合の、衝突回避制御の一例の説明図である。図10B中、横軸は、車両1から障害物Bまでの距離を示す。図10B中、Bの地点が、障害物Bの位置、すなわち、障害物Bまでの距離が0の地点である。また、図10B中、LT1は、車両1が対象物Tに到達した時点の車両1と障害物Bとの距離Lである。また、図10B中、LT2は、車両1が対象物Tを乗り越えたときの車両1と障害物との距離Lである。図10B中、縦軸は、車両1の駆動力を示す。
【0123】
図6Bを用いて説明した線図42と同様に、障害物Bが検出された場合の衝突回避制御部30Cによる駆動力の制御によって、衝突回避制御の駆動力の推移を示す線図48は、対象物Tの乗り越えに相当する位置にピークPを有するものとなる。
【0124】
車両1が対象物Tに到達すると、衝突回避制御部30Cは、駆動力制御部30Fの制御によって、算出部30Eで算出された引き上げ率αbで、駆動力を引き上げる。この例では、図10Aに示す例よりも遅い車速で車両1が対象物Tに到達した場合を想定する。この場合、算出部30Eで算出される引き上げ率αbは、図10Aを用いて説明した引き上げ率αaより大きい。そして、衝突回避制御部30Cは、車両1の車速が設定車速に到達すると、駆動力制御部30Fの制御によって、算出部30Eで算出された距離Lに応じた引き下げ量C、駆動力を引き下げる。
【0125】
このため、車両1が対象物Tに到達したときの車速が遅いほど、駆動力は強くまたは大きく引き上げられることとなる。このため、車両1が対象物Tに到達したときの車速が遅い場合であっても、車両1は自車両の慣性を活用して対象物Tを乗り越えることが可能となる。また、対象物Tを乗り越えた後の駆動力の抑制との差分を減らし、急減速を抑制することができる。このため、運転者の違和感の低減を図ることができる。
【0126】
次に、本実施形態の運転支援装置10で実行する情報処理の一例を説明する。
【0127】
図11は、運転支援装置10で実行される情報処理の一例を示すフローチャートである。なお、受付部30Aは、センサECU14、Gセンサ16、舵角センサ18、エンジンECU20Aから、およびブレーキECU20Bの各々から、上述した各種の情報を順次受付けているものとする。
【0128】
検出部30Bは、車両1の進行方向に障害物Bが検出されたか否かを判断する(ステップS100)。ステップS100で否定判断すると(ステップS100:No)、本ルーチンを終了する。ステップS100で肯定判断すると(ステップS100:Yes)、ステップS102へ進む。
【0129】
ステップS102では、衝突回避制御部30Cが、車両1の駆動力を制御して障害物Bへの衝突を回避する衝突回避制御を開始する(ステップS102)。
【0130】
次に、対象物判定部30Dが、車両1と障害物Bとの間に対象物Tが存在するか否かを判断する(ステップS104)。対象物Tが存在しないと判断した場合(ステップS104)、本ルーチンを終了する。すなわち、対象物Tが存在しない場合には、図4Bの線図40によって表される駆動力の制御が行われる。
【0131】
対象物Tが存在すると判断した場合(ステップS104:Yes)、ステップS106へ進む。ステップS106では、算出部30Eが、車両1の対象物Tへの到達時の車速を導出する(ステップS106)。
【0132】
そして、算出部30Eは、ステップS106で導出した車速に応じて、初期駆動力fiからの駆動力の引き上げ率を算出する(ステップS108)。算出部30Eは、ステップS106で導出された車速が速いほど、低い引き上げ率を算出する。
【0133】
駆動力制御部30Fは、車両1が対象物Tを乗り越えるときに、ステップS108で算出された引き上げ率で初期駆動力fiから駆動力を徐々に引き上げるように、衝突回避制御部30Cを制御する(ステップS110)。
【0134】
駆動力制御部30Fは、車両1の車速が設定車速に到達したか否かを判断する(ステップS112)。駆動力制御部30Fは、車両1の車速が設定車速に到達したと判断するまで否定判断(ステップS112:No)を繰り返す。そして、駆動力制御部30Fは、車両1の車速が設定車速に到達したと判断すると(ステップS112:Yes)、ステップS114へ進む。
【0135】
ステップS114では、算出部30Eは、車両1と障害物Bとの距離Lを取得する(ステップS114)。上述したように、本実施形態では、算出部30Eは、駆動力が初期駆動力fiから徐々に引き上げられて車両1の車速が設定車速に到達したときに、車両1が対象物Tを乗り越えたと判断する。このため、ステップS114で肯定判断されたときに、車両1と障害物Bとの距離を取得することで、算出部30Eは、衝突回避制御が開始された車両1と障害物Bとの間に存在する対象物Tを車両1が乗り越えたときの、車両1と障害物Bとの距離Lを取得する。
【0136】
次に、算出部30Eは、車両1が障害物Bへ至る路面Rの勾配率を特定する(ステップS116)。算出部30Eは、例えば、Gセンサ16で計測された車両1の前後方向の加速度の計測結果情報から、車輪速度によって算出される加速度を減算することで、車両1の傾きである路面Rの傾斜を算出する。そして、算出部30Eは、算出した路面Rの傾斜を、勾配率として特定する。
【0137】
次に、算出部30Eは、ステップS114で取得した距離Lが短いほど大きく、且つ、ステップS116で特定した勾配率が大きいほど小さい、引き下げ量Cを算出する(ステップS118)。
【0138】
駆動力制御部30Fは、対象物Tの乗り越え時に車両1の車速が設定車速に到達すると、ステップS118で算出された引き下げ量C、駆動力を引き下げるように衝突回避制御部30Cを制御する(ステップS120)。
【0139】
次に、衝突回避制御部30Cは、車両1と障害物Bとの距離が目標距離に到達したか否かを判断する(ステップS122)。目標距離は、予め定めればよい。また、ユーザによるメータコンピュータ24などの操作指示によって、適宜変更可能としてもよい。衝突回避制御部30Cは、肯定判断(ステップS122:Yes)するまで否定判断(ステップS122:No)を繰り返す。ステップS122で肯定判断すると(ステップS122:Yes)、本ルーチンを終了する。
【0140】
以上説明したように、本実施形態の運転支援装置10は、検出部30Bと、衝突回避制御部30Cと、算出部30Eと、駆動力制御部30Fと、を備える。検出部30Bは、車両1の進行方向の障害物Bを検出する。衝突回避制御部30Cは、障害物Bが検出された場合に、車両1の駆動力を制御して障害物Bへの衝突回避制御を行う。算出部30Eは、衝突回避制御が開始された車両1と障害物Bとの間に存在する対象物Tを乗り越えたときの車両1と障害物Bとの距離に応じて、車両1が対象物Tを乗り越えたときの駆動力の引き下げ量Cを算出する。駆動力制御部30Fは、車両1が対象物Tを乗り越えるときに、車両1の車速が設定車速に到達するまで、運転者が操作したアクセルペダル22Aのアクセル開度から定まる要求駆動力f10より小さい駆動力である初期駆動力fiから駆動力を徐々に引き上げ、車両1の車速が設定車速に到達すると、駆動力を引き下げ量C引き下げるように衝突回避制御部30Cを制御する。
【0141】
このように、本実施形態の運転支援装置10は、車両1と障害物Bとの間に存在する対象物Tを乗り越えたときの車両1と障害物Bとの距離に応じて、車両1が対象物Tを乗り越えたときの駆動力の引き下げ量Cを算出する。そして、運転支援装置10では、車両1が対象物Tを乗り越えるときに、車両1の車速が設定車速に到達すると、駆動力を引き下げ量C引き下げるように衝突回避制御部30Cを制御する。
【0142】
このため、対象物Tを乗り越えたときの車両1と障害物Bとの距離に応じて、車両1が対象物Tを乗り越えたときの駆動力の弱め方または緩め方が調整されることとなる。よって、対象物Tを乗り越えた後の車両1が、障害物Bから大きく離れた位置で停止することが抑制される。すなわち、車両1が対象物Tを乗り越えたときの障害物Bとの距離が長い場合であっても、障害物Bに十分に寄って停止することが可能となる。また、障害物Bから大きく離れた位置で車両1が停止することによって、運転者に違和感を与えることを抑制することができる。また、対象物Tを乗り越えた後の車両1が、障害物Bに接触することが抑制される。
【0143】
従って、本実施形態の運転支援装置10は、良好な車両走行支援を行うことができる。
【0144】
なお、本実施形態では、運転支援装置10は、車両1に搭載された形態を一例として説明した。しかし、運転支援装置10は、車両1の外部に搭載された構成であってもよい。運転支援装置10は、車両1に設けられたセンサECU14、Gセンサ16、舵角センサ18、走行制御部20、メータコンピュータ24、および、記憶部26、などの各種の電子機器と通信可能に接続されていればよい。このため、運転支援装置10は、車両1の外部に設けられた情報処理装置に搭載された形態であってもよい。この場合、運転支援装置10の搭載された情報処理装置と、上記各種の電子機器とを、ネットワークなどを介して通信可能に構成すればよい。
【0145】
なお、上記には、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲または要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0146】
1 車両
10 運転支援装置
30B 検出部
30C 衝突回避制御部
30D 対象物判定部
30E 算出部
30F 駆動力制御部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11