(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】少なくともCD3及びHSAを標的とするヘテロ二量体多重特異性抗体フォーマット
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20240905BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240905BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240905BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240905BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240905BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240905BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240905BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
A61K39/395 N
A61P29/00
A61P35/00
A61P37/06
C07K16/28
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2019567350
(86)(22)【出願日】2018-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2018064633
(87)【国際公開番号】W WO2018224443
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-03-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515310984
【氏名又は名称】ヌマブ セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ダービト ユーレヒ
(72)【発明者】
【氏名】テーア グンデ
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン マイアー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヘス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル シモナン
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】田中 耕一郎
【審判官】中村 浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/202457(WO,A1)
【文献】特表2015-509951(JP,A)
【文献】国際公開第2016/187594(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/172800(WO,A1)
【文献】Egan, T. J. et al.,MAbs,2017年,Vol. 9,pp. 68-84,Published online: 2016 Oct 27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の一本鎖タンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質であって、ここで、前記第1の一本鎖タンパク質は(N末端からC末端へ)
(ia)第1のVLドメイン、
(iia)第1のポリペプチドリンカー、及び
(iiia)第2のVLドメイン
からなる第1のアミノ酸配列を含み、ならびに
ここで、前記第2の一本鎖タンパク質は(N末端からC末端へ)
(ib)第1のVHドメイン、
(iib)第2のポリペプチドリンカー、及び
(iiib)第2のVHドメイン
からなる第2のアミノ酸配列を含み、
ここで、前記第1のVLドメインは、前記第1又は前記第2のVHドメインのいずれかと第1の標的抗原に特異性を有する可変ドメインの第1の同族対を形成し、前記第2のVLドメインは、前記VHドメインの他のものと第2の標的抗原に特異性を有する可変ドメインの第2の同族対を形成し、前記標的抗原の1つがヒト血清アルブミンであり、他の前記標的抗原がヒトCD3であり、
前記第1又は前記第2の一本鎖タンパク質の少なくとも1つは、さらに(iv)第3のポリペプチドリンカーを介して前記第1又は前記第2のアミノ酸配列に融合される第3の機能的ドメインとしての少なくとも1つの追加ドメインを含み、前記機能的ドメインは、所定の機能、特に酵素活性又は同族リガンドへの特異的結合の機能を有するタンパク質性ドメインであり、
ここで、各ポリペプチドリンカーは、ペプチド結合により連結されたアミノ酸残基の鎖からなり、
前記第1又は前記第2の一本鎖タンパク質は免疫グロブリン定常ドメインを含まない、上記ヘテロ二量体タンパク質。
【請求項2】
(v)第4のポリペプチドリンカーを介して前記第1又は前記第2のアミノ酸配列に融合される第4の機能的ドメイン;(vi)第4及び第5のポリペプチドリンカーを介して、それぞれ第1及び/又は第2のアミノ酸配列に融合された第4及び第5の機能的ドメイン;又は(vi)第4、第5及び第6のポリペプチドリンカーを介してそれぞれ第1及び第2のアミノ酸配列に融合される第4、第5及び第6の機能的ドメインをさらに含む、請求項1又は2に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項3】
前記第1のポリペプチドリンカーが、5~20個のアミノ酸残基、特に6~15個のアミノ酸残基からなる、請求項1又は2に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項4】
前記第1の一本鎖タンパク質及び前記第2の一本鎖タンパク質が、パラレル配向でヘテロ二量体化する、請求項1~3のいずれか1項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項5】
前記第1の一本鎖タンパク質及び前記第2の一本鎖タンパク質がアンチパラレル配向でヘテロ二量体化する、請求項1~4のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項6】
前記第1及び前記第2のポリペプチドリンカーがそれぞれ、40~60%の荷電残基を含む10~20個のアミノ酸残基、特に50%の荷電残基を含む12~16個のアミノ酸残基からなり、いずれの場合も、2つのリンカーが正及び負に荷電した残基の鎖間対を形成することにより相互作用することができ、特に、第1及び第2のリンカーの一方の荷電残基は専ら正に荷電した残基であり、第1及び第2のリンカーの他方の荷電残基は専ら負に荷電した残基であり、特に第1及び第2のリンカーは配列番号16及び17から選択される、請求項5に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項7】
(a)前記第1のVLドメイン(ia)及び前記第1のVHドメイン(ib)がヒト血清アルブミンに対する特異性を有する可変ドメインの第1の同族対を形成し、前記第2のVLドメイン(iia)及び前記第2のVHドメイン(iib)が、ヒトCD3に対する特異性を有する可変ドメインの第2の同族対を形成し;又は(b)前記第1のVLドメイン(ia)及び第2のVHドメイン(iib)がヒトCD3に特異的な可変ドメインの第1の同族対を形成し、前記第2のVLドメイン(iia)及び第1のVHドメイン(ib)がヒト血清アルブミンに特異性を有する可変ドメインの第2の同族対を形成する、請求項1~6のいずれか1項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項8】
前記第3、第4、第5、及び/又は第6の機能的ドメインが、以下のリスト:結合ドメイン、毒素、酵素、ホルモン、及びシグナル伝達タンパク質から独立して選択され;特に、前記第3、第4、第5及び/又は第6の機能的ドメインは、結合ドメインから独立して選択され;特に、前記結合ドメインは、抗体ベースの結合ドメイン、及び代替骨格に基づく結合ドメインから独立して選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項9】
前記抗体ベースの結合ドメインが、scFvフラグメント、Fabフラグメント及び単一抗体可変ドメインから独立して選択される、請求項8に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項10】
前記代替骨格に基づく結合ドメインが、アンキリンベースのドメイン、フィノマー(fynomer)、アビマー、アンチカリン、及び抗体の定常領域に組み込まれている結合部位から独立して選択される、請求項8に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項11】
前記抗体可変ドメインの少なくとも1つが、親ウサギ抗体に由来するCDR領域を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項12】
前記抗体可変ドメインの少なくとも1つがヒトフレームワーク領域を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項13】
前記第1の一本鎖タンパク質及び前記第2の一本鎖タンパク質が、少なくとも1つのジスルフィド結合により架橋されている、請求項1~12のいずれか1項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項14】
前記ジスルフィド結合が、前記第1又は前記第2のVLドメインに隣接する第1のシステイン残基と、前記第1又は前記第2のVHドメインに隣接する第2のシステイン残基との間に形成される、請求項13に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項15】
前記ジスルフィド結合が、前記第1又は前記第2のVLドメインのフレームワーク領域に含まれる第1のシステイン残基と、前記第1又は前記第2のVHドメインのフレームワーク領域に含まれる第2のシステイン残基との間に形成される、請求項13に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項16】
前記第1のシステイン残基が前記第1又は前記第2のVLドメインのAHoナンバリングに従う位置141に位置し、前記第2のシステイン残基が前記第1又は前記第2のVHドメインのAHoナンバリングに従う位置51に位置する、請求項14に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項17】
前記ヒト血清アルブミンに対する特異性を有する可変ドメインの同族対が、ヒト抗体VLフレームワークにおける配列番号10、12、及び14から選択されるVLタンパク質配列の1つに存在する3つのVL CDRを含み、ここで、VLフレームワークは、VKフレームワークFR1、FR2及びFR3を含み、特にVK1フレームワーク、及びフレームワークFR4を含み、これは、VK FR4、特にVK1 FR4、及びVAフレームワーク4から選択され、3つのVH CDRは、ヒト抗体VHフレームワーク、特にVH3フレームワークにおいて配列番号11、13、及び15から選択されるVHタンパク質の1つに存在する、請求項1~16のいずれか1項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項18】
ヒト血清アルブミンに対する特異性を有する可変ドメインの同族対が、配列番号10、12、及び14から選択されるタンパク質配列のAHoナンバリングに従う少なくとも位置5~140、特にAHoナンバリングに従う少なくとも位置3~145を含むVLドメイン、及び配列番号11、13、及び15から選択されるタンパク質配列のAHoナンバリングに従う少なくとも位置5~140、特にAHoナンバリングに従う少なくとも位置3~145を含むVHドメインを含み、特にヒト血清アルブミンに対する特異性を有する可変ドメインの同族対は、配列番号
11、
13、及び
15から選択されるVLドメイン、及び配列番号10、12、及び14から選択されるVHドメインを含む、請求項16に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項19】
ヒトCD3に対する特異性を有する可変ドメインの同族対が、ヒト抗体VLフレームワークにおいて配列番号2、4、6、及び8から選択されるVLタンパク質配列の1つに存在する3つのVL CDRを含み、ここで、VLフレームワークは、VKフレームワークFR1、FR2及びFR3を含み、特にVK1フレームワーク、及びフレームワークFR4を含み、これは、VK FR4、特にVK1 FR4、及びVAフレームワーク4から選択され、3つのVH CDRは、ヒト抗体VHフレームワーク、特にVH3フレームワークにおいて配列番号3、5、7及び9から選択されるVHタンパク質の1つに存在する、請求項1~18のいずれか1項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項20】
前記ヒトCD3に対する特異性を有する可変ドメインの同族対が、配列番号2、4、6、及び8から選択されるタンパク質配列のAHoナンバリングに従う少なくとも位置5~140、特にAHoナンバリングに従う少なくとも位置3~145を含むVLドメイン、及び配列番号3、5、7及び9から選択されるタンパク質配列のAHoナンバリングに従う少なくとも位置5~140、特にAHoナンバリングに従う少なくとも位置3~145を含むVHドメインを含み、特にヒト血清アルブミンに対する特異性を有する可変ドメインの同族対は、配列番号2、4、6及び8から選択されるVLドメイン、及び配列番号3、5、7及び9から選択されるVHドメインを含む、請求項19に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載のヘテロ二量体タンパク質の第1及び第2の一本鎖タンパク質をコードする核酸又は2つの核酸。
【請求項22】
請求項21に記載の核酸配列又は2つの核酸を含むベクター又は2つのベクター。
【請求項23】
請求項22に記載のベクター又は2つのベクターを含む宿主細胞。
【請求項24】
請求項1~19のいずれか1項に記載のヘテロ二量体タンパク質、又は前記ヘテロ二量体タンパク質の第1及び第2の一本鎖タンパク質を製造する方法であって、(i)請求項21に記載の核酸又は2つの核酸、又は請求項22に記載のベクター又は2つのベクターを提供し、前記核酸若しくは
2つの核酸、又はベクター若しくは
2つのベクターを発現させ、又は発現系から前記ヘテロ二量体タンパク質を回収すること、又は(ii)請求項23に記載の前記宿主細胞
を培養し、細胞培養物から前記第1及び第2の一本鎖タンパク質、又は前記ヘテロ二量体タンパク質を回収することを含み、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~20のいずれか1項に記載のヘテロ二量体タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項26】
癌、炎症性疾患及び自己免疫疾患から選択されるヒト疾患の治療に使用される、請求項1~20のいずれか1項に記載のヘテロ二量体タンパク質であって、前記第3、第4、第5、又は第6の機能的ドメインは、対応する疾患における治療関連の標的と特異的に相互作用することができるヘテロ二量体タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変軽ドメイン及び2つの同族可変重ドメインの両方がそれぞれ2つの別個のタンパク質鎖上にタンデムに位置する2つのスプリット可変ドメイン対のコアを含む複数の抗体可変ドメインの新規なヘテロ二量体多重特異的フォーマットに関する。
【背景技術】
【0002】
最初のモノクローナル抗体の開発[R17]以来、過去40年間で、抗体は研究、診断、治療の目的でますます重要なクラスの生体分子になった。
【0003】
治療薬としての抗体は、より合理的に設計された機能性へと進化しているため、固有の特性が改善及び拡大している。例には、糖鎖工学によるエフェクター機能の最適化[R18]、血液脳関門を越えた移動のような特定の局在化[R19]、又は例えばFcRnへの結合の増加[R20]が挙げられる。
【0004】
抗体の機能化の補完的なアプローチは、1分子内の異なる標的特異性の組み合わせであり、二重又は多重特異性抗体又は抗体フラグメントを生成するため、二重特異性抗体ブリナツモマブ又は三重特異性抗体カツマキソマブによって例示されるように、T細胞の再標的化のような代替の作用機序が可能になる。
【0005】
これまでに開発された多数の異なる多重特異性抗体フォーマット[R21]にもかかわらず、二重特異性及び多重特異性抗体フォーマットの現在のレパートリーは依然として、かなりの技術的課題とわずかな柔軟性しか業界に残しておらず、三重特異性及び多重特異性結合を可能にするわずかなフォーマットであり、ヘテロ二量体タンパク質の形成をサポートするフォーマットはさらに少ない。
【0006】
過去に様々な複数のフォーマットが提示されている。概念的に、これらのフォーマットは3つのカテゴリに分類できる:a)単一の遺伝子から発現される単一のタンパク質鎖上に異なる標的結合ドメインがすべて存在する単一鎖の多重特異性フォーマット、b)ホモ-二重及びホモ-多量体フォーマット、異なる標的結合ドメインが、多量体化ドメインの使用により組み立てられる同一のタンパク質鎖上に位置し、二価/多価及びさらに任意で多重特異的複合体を生じさせる、ならびにc)ヘテロ二量体標的結合ドメインが異なるタンパク質鎖上にあり、2つのタンパク質鎖のアセンブリがヘテロ二量体化ドメインによって駆動されるフォーマット。
【0007】
ヘテロ二量体の多重特異性フォーマットは、原則として、2つのヘテロ二量体化タンパク質鎖の単純な順列により、異なる特異性と親和性を持つ結合ドメインを様々な組み合わせで簡単にテストできるという利点があり、それにより、面倒なクローニングを必要とせずに、最終フォーマットで特異性と直接の親和性の最適な組み合わせをスクリーニングすることができる。
【0008】
最終製品フォーマットでのこのようなスクリーニングは、二重特異性タンパク質の最適な効力を達成し、同時に不特定の効果のリスクを最小限に抑えるために、様々なドメインの結合特性及び/又は効力を慎重に一致させる必要がある場合に必要である。臨床状況では、これは副作用のリスクを最小限に抑えた最適な効果につながる。そのような最適な組み合わせが必要な状況は、例えば、疾患の過程で異なる濃度で産生される2つの疾患駆動性サイトカインの同時遮断であり得る。この状況では、治療用二重特異性タンパク質は、1つの同じ治療用量で両方のサイトカインを効果的にブロックできるはずである。
【0009】
多特異性分子の標的結合ドメインの特性を調整しなければならない別の例は、腫瘍細胞の2つの細胞表面標的を標的とする細胞傷害性抗体による癌の治療である。この状況での抗体の2つの細胞表面標的は、がん細胞でのみ共発現される可能性があるが、様々な健康な組織で個別に発現される可能性がある。腫瘍治療における有害な副作用のリスクを最小限に抑えて最高の効果を達成するために、細胞傷害性抗体は、両方の標的が共発現される場合に優先的に細胞に結合する必要があるが、2つの標的の一方のみを発現する組織には結合するべきではない。これを達成するには、2つの標的結合ドメインの親和性を調整して、一方では個々のドメインの標的に対する親和性が弱すぎて細胞溶解が生じないようにし、他方では協調的な親和性を癌細胞上の両方の標的への二重特異性分子の同時結合は、細胞溶解を誘発するのに十分である。細胞表面に固定化された異なる高分子への同時結合に起因する幾何学的制約のため、最大の協同的結合を達成するためのドメインの組み合わせは、親和性だけでなくエピトープの関数であり、異なるドメインの組み合わせをテストすることによってのみ、実際の製品フォーマットで識別することができる。
【0010】
ネイティブIgGタイプの抗体は、ホモ二量体フォーマットと見なすことができる。
【0011】
足場として古典的なIgGアーキテクチャを採用したホモ二量体抗体フォーマットの特異性の数を増やすために、一本鎖Fvs[R15]、Fvs[R16]、単一ドメイン[例えば、ナノボディ:Huang et al., Expert Rev Mol Diagn. 10 (2010):777-85]又は代替の足場[例えば、Fynomers: Schlatter et al., MAbs. 4 (2012) 497-508]などの追加の結合部分は、重鎖と軽鎖の両方のアミノ末端又はカルボキシル末端に付加できる。このアプローチの利点の1つは、従来のIgGをコアドメインとして使用して、二重特異性から三重特異性の構築物を生成できることである。これにより、従来のIgGで確立された製造及び修飾技術のほとんどを活用できる。しかしながら、従来のFc領域のホモ二量体の性質により、このアプローチは常に分子あたり少なくとも2つの同一の結合ドメインをもたらし、その結果、特定の標的への二価結合をもたらす。これは必ずしも必要ではない。特に、(a)2つの標的への協調的結合のみが望ましい効果をもたらす場合、又は(b)分子量をさらに増加させない場合はそうではない。さらに、このアプローチは、多くの場合、付加された結合部分の不十分なドメイン安定性に苦しみ、それらを医薬品開発に不適切にする。
【0012】
さらに結合ドメインを融合して特異性を高めるという概念は、Fabフラグメント[R14]又はIgGの他の抗原結合フラグメント[R23]にも適用できる。重鎖と軽鎖からなるFabのヘテロ二量体の性質により、Fabフラグメントはヘテロ二量体化ドメインとして使用できる。Fabフラグメントは、例えば、いわゆるトリボディを設計するために使用されてきた。このフォーマットでは、scFvフラグメントはFabの軽鎖と重鎖の両方のカルボキシル末端に融合し、真にヘテロ二量体の三特異的分子をもたらす。Fabの軽鎖と重鎖の結合は、主にCL-CH1間の相互作用によって駆動され、CL-CH1はさらに共有ジスルフィド結合[R2]を介して接続される。このフォーマットの課題は、(a)最も安定性の低いコンポーネント(おそらくscFvが追加される)への安定性の制限、及び(b)最大3つの標的特異性への制限である。
【0013】
ホモ二量体の二重特異性フォーマットの限界を解決するアプローチとして、ヘテロ二量体のIgGが導入された[R31]。1つの細胞からの2つの異なるmAbの単純な共発現は、2つの異なる重鎖が互いにペアリングし、2つの異なる軽鎖が対応する重鎖とペアリングするヘテロ二量体二重特異性IgGのアセンブリに非常に低い確率でつながる[R24]しかし、それはまた、A)異なる特異性を持つ重鎖と軽鎖のミスマッチ、及びB)単一及び二重特異的変異体をもたらす異なる重鎖の組み合わせの混合物をもたらす。これらの困難に対処するために、分子に人工的な非対称性を作り出すいくつかのアプローチが実施されている。「ノブイントゥーホール」のコンセプト[R3、R4]は、重鎖/重鎖又は重鎖/軽鎖のインターフェースのエンジニアリングを使用して、共発現された鎖の結合を望ましい構成に向ける。別のアプローチでは、CrossMab方法論[R5]により、操作された軽鎖/重鎖対の選択的ペアリングが可能になる。これらの方法論の欠点は、不一致分子の残留画分を生成物から分離するのが非常に難しいことである。したがって、他の手法は、単一及び二重特異性バインダー[R22]の異なる結合特性を設計することにより分離問題に焦点を当て、一方で、変異体の確率分布によって生じる収量の損失を許容する。
【0014】
IgGベースのヘテロ二量体フォーマットのさらなる制限は、それらがすべてFcエフェクタードメインを必ず含むことである。ヘテロ二量体化が、選択された任意の標的に向けられた標的結合ドメインによって駆動されるフォーマットにより、同じ又はより低い分子量で特異性/機能性の数を増やすことができる。低分子量の分子は、標的組織(固形癌など)により効率的に浸透するため、同じ用量又はより低い用量で有効性が向上する可能性がある。しかし、小さなフォーマットでは、血清半減期が短いという欠点がある。
【0015】
別のアプローチでは、非抗体融合タンパク質を使用して、例えば、scFv部分に所望の多重特異性を付与する。そのような融合タンパク質の例は、Dock-and-Lock[R25]、barnase-barstar[R26]、jun-fos[R27]、TNF[R28]、又はHSA[R29]である。これらの概念には、ヘテロ二量体の様式で相互作用して、二重特異性又は多重特異性の結合ドメインを結合するドメインの少なくとも1つの対が追加されるという共通点がある。これらのヘテロ二量体化ドメインは標的結合に直接関与していないが、それでもタンパク質の分子量を増加させる-Tribodyフォーマットの定常領域1(C1)と同様である。さらに、非ヒトのエピトープと配列を組み込むことにより、免疫原性が高まるリスクが生じる可能性がある。
【0016】
上記のCLとCH1の相互作用とは対照的に、パラトープ形成VL-VHドメインの結合は一般に弱いと見なされる。しかしながら、抗体可変ドメインのみで構成されるヘテロ二量体抗体フラグメントの概念がいくつかある。ダイアボディ[R6]、DART[R10]、Tandab[R7、R8]などのアプローチは、とりわけ、ホモ及びヘテロ二量体の二重特異性及び二価から四価のアセンブリを作成するためのエレガントでミニマルなアプローチを提供する。これらのフォーマット戦略の最も重要な制限は、(a)融合によるさらなる特異性の追加ダイアボディ又はDARTの鎖のアミノ末端又はカルボキシル末端へのscFvにより、可変軽及び可変重ドメインの鎖内ペアリングが生じ、それにより2つのタンパク質鎖のヘテロ二量体化が非常に困難になる、(b)過去にしばしば観察された可変軽鎖と可変重鎖の間の弱いドメイン界面結合により、これらのフォーマットはモノマー安定性が低く、生産性が低いため、VL/VHインターフェースを安定させるために、ドメイン間ジスルフィド結合の導入などのさらなるエンジニアリング[R12]が必要であると見なされた。
【0017】
Kipriyanovら[R30]は、多重特異性一本鎖タンデムFv抗体の構築を目指して、それぞれVL-(リンカー1)-VH-(リンカー2)-VL-(リンカー3)-VHの順序で配置された2つの分割Fvドメインで構成される2つのタンパク質鎖を含む設計を提案した。ヘテロ二量体の四重特異的タンパク質の構築のために、ヘテロ二量体は次の構造を持つ2つのタンパク質鎖で構成される。鎖1:VLA-(リンカー1)-VHA-(リンカー2)-VLB-(リンカー3)-VHC、及び鎖B:VLD-(リンカー1)-VHD-(リンカー2)-VLC-(リンカー3)-VHB、FvBとFvCの組み合わせは、2つの鎖のヘテロ二量体化を促進する(WO2016/202457の
図10Aを参照)。タンデム一本鎖Fv(scFv2)のようなフォーマットをもたらす鎖内アセンブリを防止し、2つの単量体タンパク質鎖のヘテロ二量体化を促進するために、最大10アミノ酸の位置「Nnker3」の短縮リンカーが提案されている(EP1293514A1)。少なくとも15アミノ酸のリンカー2を持つ2つのスプリット可変ドメインの提案された組織は、2番目の可変ドメインがN末端ドメインにフォールドバックし、一本鎖につながる可能性があるダイアボディ(scDb)のような、一致しないVH/VL対で構成されるフォーマットで、結果として標的をバインドできない可能性がある。さらに、タンパク質鎖1のすべての可変重鎖及び軽鎖がそれぞれタンパク質鎖2の可変軽鎖及び重鎖と対になるヘテロ二量体の形成の可能性もあり、それにより、末端scFv(scFvA及びscFvD)の結果を阻止し、及び非同種の可変ドメインとペアリングする。タンデムscFv(scFv2)又はscDbタイプの副産物が、多量体化されていないタンパク質鎖の見かけの分子量で非常に高い割合のタンパク質が観察される理由がある[R30]。
【0018】
理論的には、上記のアプローチにおけるscDbのような構造の形成は、2つのスプリット可変ドメイン間の2番目のリンカー(リンカー2)も短縮することでさらに減らすことができる。しかし、これは構築物の柔軟性を制限し、多くの場合、2つの標的の同時結合を可能にするアクセス可能なエピトープの範囲に悪影響を及ぼす。これらの幾何学的制約は、2つの膜タンパク質を同時に結合する場合に特に制限される。
【0019】
さらには及び最も重要なことは、両方のモノマーがホモ二量体フラグメントを形成する可能性があるため(WO2016/202457の
図10Bを参照)、統計的に二量体生成物の3分の2までが2つのホモ二量体からなり、一方、3分の1だけが所望のヘテロ二量体からなる。
【0020】
要約すると、最終フォーマットでの異なる結合ドメインの単純な順列とその後の特性化を可能にするヘテロ二量体多重特異性フォーマットに対する業界の明確なニーズがある。このようなフォーマットの主な課題は、(a)特定のヘテロ二量体化の効率が比較的低いため、生産収率が最適化されないこと、及び(b)非標的結合タンパク質をヘテロ二量体化ドメイン又は操作されたヘテロ二量体Fcエフェクタードメインとして使用する必要があることであった。これは、血清半減期の調整に柔軟性が乏しく、分子量を増加させずに新しい機能を追加する柔軟性を制限する。
【0021】
したがって、最適なヘテロ二量体多重特異的フォーマットは、もっぱら標的結合ドメインのみで構成され、例えば、相互作用パートナー(標的)によって定義される幾何学的制約に対応するために異なる結合ドメイン間でリンカーの長さを自由に変更することにより、分子の幾何学を調整できることが示唆された。その課題の解決策として、WO2015/058861及びEgan et al., MAbs 9 (2017) 68-84は、2つの分割可変ドメインのコアを含む複数の抗体可変ドメインの新規なヘテロ二量体多重特異的フォーマットの開発を報告している。ここで、可変軽ドメインと2つの同族可変重ドメインの両方は、それぞれ2つの別々のタンパク質鎖上にタンデムに配置され、それにより2つのタンパク質鎖のヘテロ二量体化を駆動する。このフォーマットは、「同種ヘテロ二量体化による多重特異性抗体ベースの治療法(MATCH)」と呼ばれている。最大2つの追加の結合ドメイン、特にscFvフラグメントなどの抗体ベースの結合ドメインは、いずれかのタンパク質鎖のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端に融合され、最大6重特異的なヘテロ二量体タンパク質をもたらす。
【0022】
しかしながら、基礎となる原理により、ヒトCD3に対する結合特異性を有する可変ドメイン対と、治療標的に対する結合特異性を有する可変ドメイン対を含むコアに基づいて、そのようなヘテロ二量体多重特異性タンパク質を生成できることが成功裏に示されたが、WO2015/058861及びEganらでテストされたMATCH構築物などの構築物は、場合によっては、適切なVL及びVHドメインフレームワーク、適切なリンカー、及び必要に応じて、鎖間ジスルフィド結合の形成のためのシステイン残基の位置に適切なリンカーを識別することなどにより、ヘテロ二量体多重特異性タンパク質の特性の微調整が必要になることが予想され得る。そのような微調整は、新規可変ドメイン対を含むそのようなヘテロ二量体多重特異性タンパク質のヘテロ二量化傾向を完全に予測することは不可能であるため、必要であると考えられている。さらに、CD3結合ドメインと、標的細胞に発現する抗原に結合する少なくとも1つのドメインを含む、このような種類の多重特異性分子の作用機序は、免疫学的シナプス時の標的細胞の溶解に基づくことが知られている。標的細胞膜上の腫瘍関連抗原(TAA)との相互作用によるT細胞上のCD3受容体の架橋とクラスター化は、T細胞の活性化と、その後のシナプスへのサイトカイン及び細胞毒性剤の放出をもたらす。理論に拘束されることを望まないが、そのような免疫学的シナプスの形成は、多重特異性タンパク質の幾何学及びそれぞれの結合ドメインのエピトープによって駆動されるか、少なくとも根本的に影響を受けることが予想されるため、そうではない上記のコアを形成する可変ドメイン対の新しい組み合わせが計画どおりに機能することは予測できる。したがって、そのようなヘテロ二量体の多重特異性タンパク質を確実に生成するためのより堅牢な方法を特定する必要性は未だに満たされていない。
【0023】
さらに、本発明者らは、標的細胞溶解の特異性を高めるために、T細胞結合分子が、CD3結合ドメインに加えて、標的細胞の表面に発現する抗原に付随して結合する少なくとも2つのドメインを含み得ることを認識した。MATCH複合体の2つのタンパク質鎖のいずれかをコードする発現プラスミドの組み合わせを並べ替えることにより、標的細胞に最適な選択性で結合する2つの結合ドメインを効率的に特定するには、2つのドメインをそれぞれ、ヘテロ二量体MATCH複合体のタンパク質鎖の異なる場所に配置する必要がある。したがって、標的細胞の結合に関与しないドメインを含む2つの鎖のヘテロ二量体化を促進するコアドメインを特定する必要があった。
【0024】
この課題の解決策、つまり、1つ又は複数の追加のターゲティング部分を、一本鎖の一方又は両方のN及び/又はC末端に融合することによって拡張できる2つの固定可変ドメイン対の定義済みコアの識別タンパク質は、従来技術においてこれまで示されておらず、示唆もされていない。
【発明の概要】
【0025】
本発明は、2つの分割可変ドメイン対のコアを含む複数の抗体可変ドメインの新規ヘテロ二量体多重特異的フォーマットに関する。ここで、可変軽ドメイン及び2つの同族可変重ドメインの両方がそれぞれ2つの別個のタンパク質鎖上にタンデムに位置する。それにより、2つのタンパク質鎖のヘテロ二量体化を促進する。ここで、コアは、ヒトCD3に特異的な第1可変ドメイン対とヒト血清アルブミンに特異的な第2可変ドメイン対によって形成される。最大2つの追加の結合ドメイン、特にscFvフラグメントなどの抗体ベースの結合ドメインは、いずれかのタンパク質鎖のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端に融合され、最大で6種までのヘテロ二量体タンパク質をもたらす。安定で十分に発現され、血漿中の長い半減期を示すことが期待される構築物を形成することに加えて、驚くべきことに、そのような構築物は、標的細胞に発現する標的抗原に結合する同一のCD3結合ドメイン及びそれに結合する同じドメインを含む一本鎖ダイアボディ(scDb)フォーマットと比較した場合、最大標的細胞溶解能力を損なうことなく、より遅いT細胞活性化動態及び減少したサイトカイン放出を示すことにより異なる薬力学的プロファイルを提示することが示され得た。匹敵する効果サイズでのそのようなサイトカイン放出の減少は、サイトカイン放出による副作用の減少、したがって有利なリスク対利益プロファイルの見込みを保持している。
【0026】
したがって、第1の態様では、本発明は、第1及び第2の一本鎖タンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質に関し、ここで、前記第1の一本鎖タンパク質は、(N-からC-末端に):
(ia)第1のVLドメイン、
(iia)第1のポリペプチドリンカー、及び
(iiia)第2のVLドメイン、ここで、前記第2の一本鎖タンパク質は、(N末端からC末端に)以下からなる第2のアミノ酸配列を含む:
(ib)第1のVHドメイン、
(iib)第2のポリペプチドリンカー、及び
(iiib)第2番のVHドメイン、
ここで、前記第1のVLドメインは、前記第1又は前記第2のVHドメインのいずれかと第1の標的抗原に特異性を有する可変ドメインの第1の同族対を形成し、前記第2のVLドメインは、第2の標的抗原に特異性を有する可変ドメインの第2の同族対を形成する。ここで、前記標的抗原の1つがヒト血清アルブミンであり、他の前記標的抗原がヒトCD3であり、前記第1又は前記第2の一本鎖タンパク質の少なくとも1つが、さらに(iv)第3のポリペプチドリンカーを介して前記第1又は前記第2のアミノ酸配列に融合される第3の機能的ドメインとしての少なくとも1つの追加ドメインを含む。
【0027】
第2の態様では、本発明は、前記第1及び第2の一本鎖タンパク質をコードする1つ又は2つの核酸配列に関する。
【0028】
第3の態様では、本発明は、前記1つ又は2つの核酸配列を含む1つ又は2つのベクターに関する。
【0029】
第4の態様では、本発明は、前記1つ又は2つのベクターを含む1つ又は複数の宿主細胞に関する。
【0030】
第4の態様では、本発明は、本発明の第1及び第2の一本鎖タンパク質、又はヘテロ二量体タンパク質の製造方法に関する。これは、(i)本発明による核酸又は複数の核酸、本発明のベクター又は複数のベクターを提供し、核酸又はベクターを発現させ、発現系から第1及び第2の一本鎖タンパク質、又はヘテロ二量体タンパク質を回収し、あるいは(ii)本発明の宿主細胞を提供し、前記宿主細胞を培養し、細胞培養物から前記第1及び第2の一本鎖タンパク質、又は前記ヘテロ二量体タンパク質を回収することを含む。
【0031】
第5の態様では、本発明は、本発明のヘテロ二量体タンパク質と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0032】
第6の態様では、本発明は、疾患、特にヒト疾患、より具体的には癌、炎症性疾患及び自己免疫疾患から選択されるヒト疾患の治療に使用するための本発明のヘテロ二量体タンパク質に関する。前記第3、第4、第5、又は第6の機能的ドメインの少なくとも1つは、対応する疾患における治療関連の標的と特異的に相互作用することができる。
【0033】
第7の態様では、本発明は、有効量の本発明のヘテロ二量体タンパク質を被験体に投与することを含む、疾患、特にヒト疾患、より具体的には癌、炎症性疾患及び自己免疫疾患から選択されるヒト疾患を患う患者を治療する方法に関する。前記第3、第4、第5、又は第6の機能的ドメインの少なくとも1つが、対応する疾患における治療関連の標的と特異的に相互作用することができる。
【0034】
本発明の特定の実施形態は、添付の従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、表2に記載されているMATCH構築物の還元及び非還元条件下でのSDS-PAGE分析を示す。
【
図2】
図2は、異なる濃度のMATCH及び参照scDb分子の標的細胞の存在下でのT細胞活性化の用量反応を示す。生理的濃度のヒト血清アルブミンを、5時間及び30時間のインキュベーション後に細胞培養に加えた。
【
図3】
図3は、異なる濃度のMATCH及び参照scDb分子のコントロール細胞の存在下でのT細胞活性化の用量反応を示す。
【
図4】
図4は、MATCHと5時間でのscDbの信号振幅に対して正規化されたscDb参照分子によって誘導されたT細胞の最大活性化のプロットを示す。
【
図5】
図5は、試験期間中の試験分子の効力のプロットを示す。
【
図6】
図6は、ELISAによる様々な時点でのNFAT活性化アッセイのIL-2濃度の測定を示す。
【
図7】
図7は、MATCHと2つの参照scDbの細胞溶解の用量反応プロットを示す。左側のパネルはIL23R発現標的細胞の特異的な溶解を示し、右側のパネルはIL23R陰性細胞の特異的な溶解を示していない。
【
図8】
図8は、活性化T細胞の割合の用量反応プロットを示す。左パネルはIL23R発現標的細胞の存在下での活性化T細胞の割合を示し、右パネルはIL23R陰性細胞の存在下での活性化T細胞を示す。
【
図9】
図9は、T細胞活性化により誘導された細胞毒アッセイの各ウェルにおけるIL-2濃度の用量反応を示す。左のパネルはIL23R発現標的細胞の存在下で誘導されたIL-2の濃度を示し、右のパネルはIL23R陰性細胞の存在下で誘導されたIL-2のIL-2濃度を示す。
【
図10】
図10に、抗CD3/抗HSAヘテロ二量体コアアセンブリとMATCHを使用した二重標的の概要を示す。
【
図11A】
図11は、2つの四重特異的MATCHアセンブリ(PR0821及びPR0824)の細胞溶解の用量反応プロットを示す。左上のパネルはII23R発現標的細胞の特異的な溶解を示し、右上のパネルはHer2陽性細胞の特異的な溶解を示している。下のパネルでは、抗原陰性細胞の特異的な溶解が描かれている。
【
図11B】
図11は、2つの四重特異的MATCHアセンブリ(PR0821及びPR0824)の細胞溶解の用量反応プロットを示す。左上のパネルはII23R発現標的細胞の特異的な溶解を示し、右上のパネルはHer2陽性細胞の特異的な溶解を示している。下のパネルでは、抗原陰性細胞の特異的な溶解が描かれている。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書では、複数の抗体可変ドメインを含む2つのタンパク質鎖の定量的ヘテロ二量体アセンブリを示す新しいフォーマットを提示する。このフォーマットは、2つの分割可変ドメイン対(2つのFvフラグメント)のコアで構成され、可変軽ドメインと可変重ドメインの両方がそれぞれ別々のタンパク質鎖に配置され、2つのタンパク質鎖のヘテロ二量体化を駆動する。VL及びVHドメインの一対はヒト血清アルブミンに特異的であり、もう1つはヒトCD3に特異的である。ドメイン内及びドメイン間の安定性の高いscFvフォーマットなどの最大2つの追加の結合ドメインが、いずれかのペプチド鎖のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端に融合され、最大で6つの特異的ヘテロ二量体タンパク質が生じる。
【0037】
したがって、第1の態様では、本発明は、第1及び第2の一本鎖タンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質に関し、ここで、前記第1の一本鎖タンパク質は、(N-からC-末端に):
(ia)第1のVLドメイン、
(iia)第1のポリペプチドリンカー、及び
(iiia)第2のVLドメイン
からなる第1のアミノ酸配列を含み、ここで、前記第2の一本鎖タンパク質は、(N末端からC末端に):
(ib)第1のVHドメイン、
(iib)第2のポリペプチドリンカー、及び
(iiib)第2のVHドメイン
からなる第2のアミノ酸配列を含む。
ここで、前記第1のVLドメインは、前記第1又は前記第2のVHドメインのいずれかと第1の標的抗原に特異性を有する可変ドメインの第1の同族対を形成し、前記第2のVLドメインは、第2の標的抗原に特異性を有する可変ドメインの第2の同族対を形成し、前記標的抗原の1つがヒト血清アルブミンであり、他の前記標的抗原がヒトCD3であり、前記第1又は前記第2の一本鎖タンパク質の少なくとも1つがさらに、
(iv)第3のポリペプチドリンカーを介して前記第1又は前記第2のアミノ酸配列に融合される第3の機能的ドメインとしての少なくとも1つの追加ドメインを含む。
【0038】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通して、文脈がそうでないことを必要としない限り、「含む(comprise)」という用語、及び「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変形は、述べられた整数、組成又はステップ又はグループを包含することを意味すると理解され、一方、任意の追加の整数、組成若しくはステップ、又は整数、組成若しくはステップのグループは、同様に任意に存在し得、任意の追加の整数、組成若しくはステップ、又は整数、組成又はステップのグループが存在しない実施形態を含む。したがって、このような後者の実施形態に関して、用語「含む」は、より狭い用語「からなる」を含む。
【0039】
本明細書の本文全体でいくつかの文書が引用されている。ここで引用された各文書(すべての特許、特許出願、科学刊行物、製造業者の仕様、説明書、GenBankアクセッション番号の配列の提出などを含む)は、上記又は下記にかかわらず、可能な範囲でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなるものも、本発明が先行発明のおかげでそのような開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0040】
本発明の文脈において、「VLドメイン」及び「VHドメイン」という用語は、抗体の可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインをそれぞれ指す。本発明の文脈において、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子、すなわち少なくとも抗原-抗体の結合フラグメントが含まれる。
【0041】
本発明の文脈において、抗体、又は一般的な任意の結合分子は、一般的に、それが100μΜ以下、好ましくは50μΜ以下、好ましくは30μΜ以下、好ましくは20μΜ以下、好ましくは10μM以下、好ましくは5μΜ以下、より好ましくは1μΜ以下、より好ましくは900nM以下、より好ましくは800nM以下、より好ましくは700nM以下、より好ましくは600nM以下、より好ましくは500nM以下、より好ましくは400nM以下、より好ましくは300nM以下、より好ましくは200nM以下、さらにより好ましくは100nM以下、さらにより好ましくは90nM以下、さらにより好ましくは80nM以下、さらにより好ましくは70nM以下、さらにより好ましくは60nM以下、さらにより好ましくは50nM以下、さらにより好ましくは40nM以下、さらにより好ましくは30nM以下、さらにより好ましくは20nM以下、さらにより好ましくは10nM以下の標的として、抗原/同族結合パートナーに対する解離定数KDを有する場合、抗原(抗体の場合)に、又は同族結合パートナー(一般的に結合分子の場合)に「特異的に結合する」とみなされる。
【0042】
本発明の文脈において、「機能的ドメイン」という用語は、酵素活性又は同族リガンドへの特異的結合などの所定の機能を有するタンパク質性ドメインを指し、前記タンパク質性ドメインは、少なくとも二次構造エレメントを有する構造化ドメインである。X線結晶学、円偏光二色性(CD)、振動円偏光二色性(VCD)、NMR、又はFT-IRなどのポリペプチド又はタンパク質の二次構造の存在を判定する方法、又はポリペプチド内の二次構造の存在を予測する方法(PEP-FOLDなど)(Shen et al., J. Chem. Theor. Comput. 10 (2014) 4745-4758)は、当業者に周知である。特定の実施形態では、前記タンパク質性ドメインは、三次構造を有する構造化ドメインである。特定の実施形態では、前記タンパク質性ドメインは、少なくとも約20個のアミノ酸残基(Heitz et al., Biochemistry 38 (1999) 10615-25を参照)、特に少なくとも約50個のアミノ酸残基、より特に少なくとも約100個のアミノ酸残基を含む。特定の実施形態では、機能的ドメインは、同族リガンドに特異的に結合するタンパク質性ドメインである。特定の実施形態では、機能的ドメインは、抗原に特異的に結合する抗体又は抗体の免疫学的に活性な部分である。
【0043】
本発明の文脈において、「ポリペプチドリンカー」という用語は、それぞれがリンカーの一端に結合している2つのドメインを接続しているペプチド結合により連結されたアミノ酸残基の鎖からなるリンカーを指す。特定の実施形態では、ポリペプチドリンカーは、2~30個(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30のアミノ酸残基)のアミノ酸残基の連続鎖を有する。特定の実施形態では、ポリペプチドリンカーは非構造化ポリペプチドである。上記のように、X線結晶学、円二色性(CD)、振動円二色性(VCD)、NMR、又はFT-IRなどのポリペプチドの二次構造の存在を決定する方法、又はポリペプチドの二次構造の存在を予測する方法(PEP-FOLDなど)(Shen et al., J. Chem. Theor. Comput. 10 (2014) 4745-4758)は、当業者に周知である。特定の実施形態では、リンカーは、グリシン及びセリン残基から選択されるアミノ酸残基からなる。
【0044】
本発明は、以下によって特徴付けられる:
・抗体可変ドメインを使用してヘテロ二量体フォーマットを作成る。少なくとも2つのVLドメインが1つのタンパク質鎖に配置され、対応するVHドメインが2番目のタンパク質鎖に配置される。
・ヘテロ二量体コアドメインにより、結合ドメインなどの追加の機能ドメインを追加して、トリ、テトラ、ペンタ、又はヘキサ特異的エンティティを作成することができる。
・ヘテロ二量体コアアセンブリの非常に効率的なペアリングの複数の例。
・共通のヘテロ二量体コアドメインを共有する複数の結合ドメインプールの組み合わせスクリーニングのシンプルなソリューション。
【0045】
特定の実施形態では、本発明は、前記第1又は前記第2の一本鎖タンパク質がさらに
(v)第4のポリペプチドリンカーを介して前記第1又は前記第2のアミノ酸配列に融合される第4の機能的ドメイン
を含むヘテロ二量体タンパク質に関する。
【0046】
特定の実施形態では、本発明は、前記第1又は前記第2の一本鎖タンパク質がさらに
(vi)第5のポリペプチドリンカーを介して前記第1又は前記第2のアミノ酸配列に融合される第5の機能的ドメイン
を含むヘテロ二量体タンパク質に関する。
【0047】
特定の実施形態では、本発明は、前記第1又は前記第2の一本鎖タンパク質がさらに
(vii)第6のポリペプチドリンカーを介して前記第1又は前記第2のアミノ酸配列に融合される第6の機能的ドメイン
含むヘテロ二量体タンパク質に関する。
【0048】
特定の実施形態では、前記ヘテロ二量体タンパク質は、前記第3及び第4の機能的ドメインを含む。そのような実施形態では、前記ヘテロ二量体タンパク質は四価であり、特定の実施形態では、前記ヘテロ二量体タンパク質は四特異性である。
【0049】
特定の実施形態では、前記ヘテロ二量体タンパク質は、前記第3、前記第4、前記第5及び前記第6の機能的ドメインを含む。そのような実施形態において、前記ヘテロ二量体タンパク質は6価であり、特定の実施形態において、前記ヘテロ二量体タンパク質は6特異性である。
【0050】
特定の実施形態では、前記ヘテロ二量体タンパク質は、第1及び第2免疫グロブリン定常ドメインの同族対を含まない。ここで、前記第1免疫グロブリン定常ドメインは、前記第1一本鎖タンパク質に含まれ、前記第2免疫グロブリン定常ドメインは、第2の一本鎖タンパク質に含まれる。特定の実施形態において、前記第1及び前記第2の一本鎖タンパク質の少なくとも一方は、免疫グロブリン定常ドメインを含まない。特定の実施形態では、前記第1及び第2の一本鎖タンパク質の両方が免疫グロブリン定常ドメインを含まない。
【0051】
特定の実施形態では、前記ヘテロ二量体タンパク質は、(i)第1のVLドメイン及び第1のVHドメインと(ii)第2のVLドメイン及び第2のVHドメインの同族対以外に、前記第1の一本鎖タンパク質に含まれる第1のタンパク質性相互作用ドメインと、前記の第2の一本鎖タンパク質に含まれる第2のタンパク質性相互作用ドメインの同族対を含まない。
【0052】
特定の実施形態において、前記第3、前記第4、前記第五及び前記第6の機能的ドメインの少なくとも1つが標的細胞の表面に発現する標的抗原に結合する前記ヘテロ二量体タンパク質は、類似のT細胞活性化の時間点で、サイトカインレベルの低下を誘発する生理的濃度のHSAの存在下でNFATの制御下でルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するJurkat T細胞のルシフェラーゼ活性を、同じ標的抗原結合ドメインと同じCD3結合ドメインを含む一本鎖ダイアボディ(scDb)と比較して測定することにより評価される。特定の実施形態では、前記サイトカインは、IL-2、IL-10、IL-6、TNF-α及び/又はインターフェロン-γ、好ましくはIL-2などのサイトカイン放出症候群に関連するT細胞由来サイトカインである。特定の実施形態では、前記サイトカインレベルは、scDbと比較して、少なくとも2倍、好ましくは3倍、より好ましくは4倍、最も好ましくは5倍低い。特定の実施形態において、ルシフェラーゼ活性及びサイトカインレベルの決定は、実施例に記載されるように実施される。
【0053】
特定の実施形態では、前記第3、前記第4、前記第五及び前記第6の機能的ドメインの少なくとも一つが標的細胞の表面に発現する標的抗原に結合する前記ヘテロ二量体タンパク質は、同様に到達するためのより遅い動力学を示す同じ標的抗原-T細胞活性化結合ドメインと同じCD3結合ドメインを含む一本鎖ダイアボディ(scDb)と比較した場合、HSAの生理的濃度の存在下でin vitroでNFATの制御下でルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するJurkat T細胞のルシフェラーゼ活性を測定することにより評価される。特定の実施形態では、前記動態は、scDbと比較して少なくとも2倍、好ましくは3倍、最も好ましくは4倍遅い。特定の実施形態において、ルシフェラーゼ活性及びサイトカインレベルの決定は、実施例に記載されるように実施される。
【0054】
特定の実施形態では、前記第3、前記第4、前記第5及び前記第6の機能的ドメインの少なくとも1つが標的細胞の表面に発現する標的抗原に結合する前記ヘテロ二量体タンパク質は、同じ標的抗原-結合ドメイン及び同じCD3結合ドメインを含む一本鎖ダイアボディ(scDb)と比較した場合、HSAの生理的濃度の存在下でのin vitroでのCD69発現により評価される同様のT細胞活性化の時点でサイトカインレベルの低下をもたらす。特定の実施形態では、前記サイトカインは、IL-2、IL-10、IL-6、TNF-α及び/又はインターフェロン-γ、好ましくはIL-2などのサイトカイン放出症候群に関連するT細胞由来サイトカインである。特定の実施形態では、前記サイトカインレベルは、scDbと比較して、少なくとも2倍、好ましくは3倍、より好ましくは4倍、最も好ましくは5倍低い。特定の実施形態において、CD69発現及びサイトカインレベルの決定は、実施例に記載されるように実施される。特定の実施形態では、前記第3、前記第4、前記第五及び前記第六の機能的ドメインの少なくとも一つが標的細胞の表面に発現する標的抗原に結合する前記ヘテロ二量体タンパク質は、同じ標的抗原結合ドメインと同じCD3結合ドメインを含む一本鎖ダイアボディ(scDb)と比較した場合に、生理的濃度のHSAの存在下でのin vitroでの標的細胞溶解の類似の程度の時点でサイトカインレベルの低下をもたらす。特定の実施形態では、前記サイトカインは、IL-2、IL-10、IL-6、TNF-α及び/又はインターフェロン-γ、好ましくはIL-2などのサイトカイン放出症候群に関連するT細胞由来サイトカインである。特定の実施形態では、前記サイトカインレベルは、scDbと比較した場合、少なくとも2倍、好ましくは3倍、より好ましくは4倍、最も好ましくは5倍低い。特定の実施形態において、サイトカインレベルの決定は、実施例に記載されるように実施される。
【0055】
特定の実施形態では、前記第3、前記第4、前記第五及び前記第六の機能的ドメインの少なくとも一つが標的細胞の表面に発現する標的抗原に結合する前記ヘテロ二量体タンパク質は、同じ標的抗原結合ドメインと同じCD3結合ドメインを含む一本鎖ダイアボディ(scDb)と比較した場合、生理学的濃度のHSAの存在下でのin vitroでの標的細胞溶解の程度に同様に到達するためのより遅い動力学を示す。特定の実施形態において、前記動態は、scDbと比較して少なくとも2倍、好ましくは3倍、最も好ましくは4倍遅い。特定の実施形態において、標的細胞溶解の動態の決定は、実施例に記載されるように実施される。
【0056】
特定の実施形態では、前記第3、前記第4、前記第5及び前記第6の機能的ドメインの少なくとも一つが標的細胞の表面に発現する標的抗原に結合する前記ヘテロ二量体タンパク質は、同じ標的抗原結合ドメインと同じCD3結合ドメインを含む一本鎖ダイアボディ(scDb)と比較した場合、同様の最大値の標的細胞溶解に達する能力を有する。特定の実施形態において、標的細胞溶解の決定は、実施例に記載されるように実施される。
【0057】
特定の実施形態では、前記第1のポリペプチドリンカーは、5~20個のアミノ酸残基、特に6~15個のアミノ酸残基からなる。特定の実施形態では、前記ポリペプチドリンカーは配列(GmS)nを有する。mは2、3、及び4から独立して選択される。及びnは1、2、3、4、及び5から選択される。
【0058】
特定の他の実施形態では、前記第1のポリペプチドリンカーは、11個から20個のアミノ酸残基、特に11個から15個のアミノ酸残基からなる。特定の実施形態では、前記ポリペプチドリンカーは配列(GmS)nを有する。mは2、3、及び4から独立して選択される。nは3、4、5から選択される。
【0059】
特定の実施形態では、前記第2のポリペプチドリンカーは、5~20個のアミノ酸残基、特に6~15個のアミノ酸残基からなる。特定の実施形態では、前記ポリペプチドリンカーは配列(GmS)nを有する。mは2、3、及び4から独立して選択される。及びnは1、2、3、4、及び5から選択される。
【0060】
特定の他の実施形態では、前記第2のポリペプチドリンカーは、11個から20個のアミノ酸残基、特に11個から15個のアミノ酸残基からなる。特定の実施形態では、前記ポリペプチドリンカーは配列(GmS)nを有する。mは2、3、及び4から独立して選択される。nは3、4、5から選択される。
【0061】
特定の実施形態では、前記第3、第4、第5及び/又は第6のポリペプチドリンカーは、独立して8から20個のアミノ酸残基、特に10から15個のアミノ酸残基からなる。特定の実施形態では、前記ポリペプチドリンカーは独立して配列(GmS)nを有する。mは2、3、及び4、特に4から独立して選択され、及びnは、1、2、3、4、及び5、特に2及び3から選択される。
【0062】
特定の実施形態では、前記第1のVLドメイン(ia)及び前記第1のVHドメイン(ib)は、第1の標的抗原に対して特異性を有する可変ドメインの第1の同族対を形成し、前記第2のVLドメイン(iia)及び前記第2のVHドメイン(iib)は、第2の標的抗原に対する特異性を有する可変ドメインの第2の同族対を形成する。そのような実施形態では、前記第1及び前記第2の一本鎖タンパク質は、前記一本鎖タンパク質のパラレル配置で前記ヘテロ二量体タンパク質を形成する(
図15を参照)。
【0063】
特定のそのような実施形態では、前記第1のポリペプチドリンカーは、10~20個のアミノ酸残基、特に12~17個のアミノ酸残基、特に15個のアミノ酸残基からなる。特定の実施形態では、前記ポリペプチドリンカーは配列(GmS)nを有する。mは2、3、及び4、特に4から独立して選択され、及びnは、1、2、3、4、及び5、特に3から選択される。
【0064】
特定のそのような実施形態では、前記第2のポリペプチドリンカーは、10から20個のアミノ酸残基、特に12から17個のアミノ酸残基、特に15個のアミノ酸残基からなる。特定の実施形態では、前記ポリペプチドリンカーは配列(GmS)nを有する。mは2、3、及び4、特に4から独立して選択され、及びnは、1、2、3、4、及び5、特に3から選択される。
【0065】
特定のこのような実施形態において、前記第3、第4、第5及び/又は第6ポリペプチドリンカーは、独立して10から20個のアミノ酸残基、特に12から17個のアミノ酸残基、特に15個のアミノ酸残基からなる。特定の実施形態では、前記ポリペプチドリンカーは配列(GmS)nを有する。mは2、3、及び4、特に4から独立して選択され、及びnは、1、2、3、4、及び5、特に3から選択される。
【0066】
特定の他の実施形態では、前記第1のVLドメイン(ia)及び前記第2のVHドメイン(iib)は、第1の標的抗原に対する特異性を有する可変ドメインの第1の同族対を形成し、前記第2のVLドメイン(iia)及び前記第1のVHドメイン(ib)は、第2の標的抗原に対する特異性を持つ可変ドメインの第2の同族対を形成する。そのような実施形態において、前記第1及び前記第2の一本鎖タンパク質は、前記一本鎖タンパク質のアンチパラレル配列で前記ヘテロ二量体タンパク質を形成する(
図12から14を参照)。
【0067】
特定のそのような実施形態では、前記第1のポリペプチドリンカーは、5から12個のアミノ酸残基、特に5から10個のアミノ酸残基、特に6個のアミノ酸残基からなる。特定の実施形態では、前記ポリペプチドリンカーは配列(GmS)nを有する。mは2、3、及び4、特に2から独立して選択され、及びnは、1、2、3、4、及び5、特に2から選択される。
【0068】
特定のそのような実施形態では、前記第2のポリペプチドリンカーは、5から12個のアミノ酸残基、特に6から10個のアミノ酸残基、特に8個のアミノ酸残基からなる。特定の実施形態では、前記ポリペプチドリンカーは配列(GmS)nを有する。mは2、3、及び4、特に3から独立して選択され、特定のこのような実施形態では、前記第3、第4、第5、及び/又は第6のポリペプチドリンカーは、独立して、10~20個のアミノ酸残基、特に8~12アミノ酸残基、特に10アミノ酸残基からなる。特定の実施形態では、前記ポリペプチドリンカーは配列(GmS)nを有する。mは2、3、及び4、特に4から独立して選択され、及びnは、1、2、3、4、及び5、特に2から選択される。
【0069】
アンチパラレル配列の別の特定の実施形態において、前記第1及び前記第2ポリペプチドリンカーはそれぞれ、40~60%荷電残基を含む10~20アミノ酸残基、特に50%荷電残基を含む12~16アミノ酸残基からなる。各場合において、2つのリンカーが正及び負に帯電した残基の鎖間対を形成することにより相互作用することができる。特定の実施形態では、前記第1及び第2のリンカーの一方の荷電残基は、正に荷電した残基のみであり、前記第1及び第2のリンカーの他方の荷電残基は、負に荷電した残基のみであり、特に前記第1及び第2のリンカーは配列番号16及び17から選択される。
【0070】
特定の実施形態において、前記第3、第4、第5及び/又は第6の機能的ドメインは、結合ドメイン、毒素、酵素、ホルモン、及びシグナル伝達タンパク質のリストから独立して選択される。
【0071】
特定の実施形態では、前記第3、第4、第5及び/又は第6の機能的ドメインは、結合ドメインから独立して選択される。
【0072】
特定のそのような実施形態では、結合ドメインは、scFv、Fab及び単一抗体可変ドメイン、サメからのVNAR構造に基づく単一ドメイン抗体、及びに代替の足場に基づく結合ドメインを含むがこれらに限定されない抗体ベースの結合ドメインのリストから独立して選択される。アンキリンベースのドメイン、ファイノマー、アビマー、アンチカリン、フィブロネクチン、及び抗体の定常領域に組み込まれている結合部位を含むが、これらに限定されない(例えば、f-star技術について、Wozniak-Knopp et al., Protein Eng. Des. Sel. 23 (2010) 289-297)。
【0073】
特定のそのような実施形態では、前記結合ドメインは、一本鎖Fvフラグメント及び単一抗体可変ドメインから選択される抗体ベースの結合ドメインである。特定のそのような実施形態では、そのような一本鎖Fvフラグメントにおける可変ドメインの順序は、(N末端からC末端まで)VL-(リンカー)-VH及びVH-(リンカー)-VLから選択される。特定の実施形態では、可変ドメインの順序は、ヘテロ二量体タンパク質に含まれるすべての一本鎖Fvフラグメントについて同じである。特定の実施形態では、例えば、VL-(リンカー)-VHの順序の一本鎖Fvフラグメントの場合、3つのVLドメインは、それぞれ第1のポリペプチドリンカー及び第3、第4、及び第5のポリペプチドリンカーの1つによって互いに連結されている前記第1のアミノ酸配列からのC末端である。特定の実施形態では、例えば、VL-(リンカー)-VHの順序の一本鎖Fvフラグメントが第2のアミノ酸配列のN末端である場合、それぞれ、前記第2ポリペプチドリンカー及び前記第3、第4及び第5ポリペプチドリンカーの1つによって3つのVHドメインが互いに連結される(
図12、13及び15を参照)。したがって、特定の実施形態において、前記第1及び前記第2の一本鎖タンパク質の少なくとも1つは、2つのポリペプチドリンカーにより連結された3つのVLドメイン又は3つのVHドメインからそれぞれなるアミノ酸配列を含む。
【0074】
特定の他の実施形態では、対応するリンカーを介して前記第1又は第2のアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に直接連結されるそのような抗体ベースの結合ドメインの可変ドメインは、(a)VHドメインであるそれが前記第1のアミノ酸配列に融合される場合、及び(b)それが前記第2のアミノ酸配列に融合される場合、VLドメインである。したがって、VHドメインはVLリンカー-VLコア領域のN末端及び/又はC末端に融合され、VLドメインはVHリンカー-VHコア領域のN末端及び/又はC末端に融合される(例えば、
図14を参照)。
【0075】
特定の実施形態では、前記第3、第4、第5及び/又は第6の結合ドメインは一本鎖Fvフラグメントである。
【0076】
特定のそのような実施形態では、前記一本鎖Fvフラグメントの可変ドメインを接続するポリペプチドリンカーは、15~25アミノ酸残基、特に20アミノ酸残基からなる。特定の実施形態では、前記ポリペプチドリンカーは配列(GGGGS)nを有し、nは3、4、及び5、特に4から選択される。
【0077】
特定の実施形態では、ウサギCDRに固有の特定のパターンによって証明されるように、前記抗体可変ドメインの少なくとも1つは、親ウサギ抗体に由来するCDR領域を含む。特定の実施形態では、前記抗体可変ドメインの少なくとも1つはヒトフレームワーク領域を含む。
【0078】
特定の実施形態では、前記第1の一本鎖タンパク質及び前記第2の一本鎖タンパク質は、少なくとも1つのジスルフィド結合により架橋されている。
【0079】
特定の実施形態では、前記ジスルフィド結合は、前記第1又は前記第2のVLドメインに隣接する第1のシステイン残基と、前記第1又は前記第2のVHドメインに隣接する第2のシステイン残基との間に形成される。
【0080】
特定の実施形態では、ジスルフィド結合は、第1又は第2のVLドメインのフレームワーク領域に含まれる第1のシステイン残基と、第1又は第2のVHドメインのフレームワーク領域に含まれる第2のシステイン残基との間に形成される。
【0081】
特定の実施形態では、前記第1システイン残基は前記第1又は前記第2VLドメインの位置141に位置し、前記第2システイン残基は前記第1又は前記第2VHドメインの位置51に位置する。
【0082】
本発明の文脈において、抗体可変ドメインに使用される番号付けシステムは、Honegger及びPluckthun(A. Honegger & A. Pluckthun. "Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains: An automatic modeling and analysis tool". J. Mol. Biol, 309 (2001 )657-670)によるナンバリングシステム(AHoナンバリング)に基づく。
【0083】
特定の実施形態では、ヒト血清アルブミンに特異性を有する可変ドメインの同族対は、ヒト抗体VLフレームワークの配列番号10、1、2、及び14から選択されるVLタンパク質配列の1つに存在する3つのVL CDRを含み、ここで、VLフレームワークは、VKフレームワークFR1、FR2、FR3、特にVK1フレームワーク、及びVK FR4、特にVK1 FR4、VAフレームワーク4から選択されるフレームワークFR4、及びVHタンパク質配列の1つに存在する3つのVH CDRは、ヒト抗体VHフレームワーク、特にVH3フレームワークの配列番号11、13、及び15から選択される。
【0084】
本発明の文脈において、VK、νλ及び/又はVHフレームワークへの割り当ては、WO97/08320に示されるヒト抗体の配列とのアラインメントにより実施される。フレームワークとCDRの定義は、Honegger & Pluckthun, loc. citに従って使用される。
【0085】
特定のそのような実施形態では、前記VLドメインの少なくとも1つは、(i)ヒトVKフレームワーク領域FR1~FR3、特にヒトVK1フレームワーク領域FR1~FR3;(ii)CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3;ならびに(iii)フレームワーク領域IVを含み、
a.フレームワーク領域IVのヒトVA生殖系列配列、特に配列番号24~30(WO2014/206561による配列番号16~22)のリストから選択されたVA生殖系列配列;
b.(bi)フレームワーク領域IVのヒトVA生殖系列配列、特に配列番号25(WO2014/206561による配列番号17)からのコンセンサスVA配列であるVAベースの配列;又は(bii)フレームワーク領域IVの再構成ヒトVA配列からのコンセンサスVA配列、特に配列番号24及び25(WO2014/206561による配列番号16及び17)から選択されるVAコンセンサス配列;
c.フレームワーク領域IVの最も近いヒトVA生殖系列配列と比較して、1つ又は2つの突然変異、特に1つの突然変異を有するVAベースの配列
から選択される。
【0086】
特定の実施形態では、ヒト血清アルブミンに対する特異性を有する可変ドメインの同族対は、(i)配列番号10又は配列番号12又は配列番号14によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン;及び/又は(ii)配列番号11又は配列番号13又は配列番号15によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示すVHドメインを含む。
【0087】
特定の実施形態では、ヒト血清アルブミンに対する特異性を有する可変ドメインの同族対は、(i)配列番号10によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン、及び配列番号11によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVHドメイン;又は(ii)配列番号12によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン、及び配列番号13によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVHドメイン;又は(iii)配列番号14によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン、及び配列番号15によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVHドメインを含む。
【0088】
より特定の実施形態では、ヒト血清アルブミンに対する特異性を有する可変ドメインの同族対は、
(i)配列番号10によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン(ここで、VLドメインは、配列番号10によるVL配列から得られるCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む)、及び配列番号11によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVHドメイン(ここで、VHドメインは、配列番号11によるVH配列から得られるCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む);又は
(ii)配列番号12によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン(ここで、VLドメインは、配列番号12によるVL配列から得られるCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む)、及び配列番号13によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVHドメイン(ここで、VHドメインは、配列番号13によるVH配列から得られるCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む)
を含み、好ましくは、VLドメインはK50Q及びA51P(AHoナンバリング)を含み、VHドメインはW54Y、V103T及びY105F(AHoナンバリング)を含む。
【0089】
より特定の実施形態において、ヒト血清アルブミンに対する特異性を有する可変ドメインの同族対は、配列番号14によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン(ここで、VLドメインは、配列番号14によるVL配列から取られるCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む)、及び配列番号15によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示すVHドメイン(ここで、VHドメインは、配列番号15によるVH配列から得られたCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む)を含み、好ましくは、VLドメインは、I2V、Q3V、K50Q及びA51P(AHoナンバリング)を含み、VHドメインはI55V、V103T、Y105F(AHoナンバリング)を含む。
【0090】
特定の実施形態では、ヒト血清アルブミンに対する特異性を有する前記可変ドメインの同族対は、配列番号10、12、12から選択されるタンパク質配列の少なくとも位置5から140、特に少なくとも位置3から145(Honegger&Pluckthun,loc.citによる位置)を含むVLドメイン;及び配列番号11、13、及び15から選択されるタンパク質配列の少なくとも位置5から140、特に少なくとも位置3から145を含むVHドメインを含む。特に、ヒト血清アルブミンに対する特異性を有する可変ドメインの同族対は、配列番号10、12、及び14から選択されるVLドメイン、及び配列番号10、12、及び14から選択されるVHドメインを含む。
【0091】
特定の実施形態では、ヒトCD3に対する特異性を有する可変ドメインの同族対は、ヒト抗体VLフレームワークの配列番号2、4、6及び8から選択されるVLタンパク質配列の1つに存在する3つのVL CDRを含み、ここで、VLフレームワークは、VKフレームワークFR1、FR2、FR3、特にVK1フレームワーク、及びVK FR4、特にVK1 FR4、VAフレームワーク4、VHタンパク質の1つに存在する3つのVH CDRから選択されるフレームワークFR4を含み、VHタンパク質配列の1つに存在する3つのVH CDRは、ヒト抗体VHフレームワーク、特にVH3フレームワークの配列番号3、5、7及び9から選択される。
【0092】
特定のそのような実施形態では、VLドメインの少なくとも1つは、(i)ヒトVKフレームワーク領域FR1~FR3、特にヒトVK1フレームワーク領域FR1~FR3;(ii)CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3;ならびに(iii)フレームワーク領域IVを含み、
a.フレームワーク領域IVのヒトVA生殖系列配列、特に配列番号24~30(WO 2014/206561による配列番号16~22)のリストから選択されたVA生殖系列配列;
b.(bi)フレームワーク領域IVのヒトVA生殖系列配列、特に配列番号25(WO2014/206561による配列番号17)からのコンセンサスVA配列であるか、又は(bii)フレームワーク領域IVの再構成ヒトVA配列、特に配列番号24及び25(WO2014/206561による配列番号16及び17)のリストから選択されるVAコンセンサス配列であるVAベースの配列;ならびに
c.フレームワーク領域IVの最も近いヒトVA生殖系列配列と比較して、1つ又は2つの突然変異、特に1つの突然変異を有するVAベースの配列
から選択される。
【0093】
特定の実施形態では、ヒトCD3に対する特異性を有する可変ドメインの同族対は、(i)配列番号2、4、6、及び8から選択される配列によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン、及び/又は(ii)配列番号3、5、7及びから選択される配列によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVHドメインを含む。
【0094】
特定の実施形態では、ヒトCD3に対する特異性を有する可変ドメインの同族対は、(i)配列番号2によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン、及び配列番号3によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVHドメイン;又は(ii)配列番号4によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン、及び配列番号5によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVHドメイン;又は(ii)配列番号6によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン、及び配列番号7によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVHドメイン;又は(iv)配列番号8によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン、及び配列番号9によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVHドメインを含む。
【0095】
より特定の実施形態では、ヒトCD3に対する特異性を有する可変ドメインの同族対は、
(i)配列番号2によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン(ここで、VLドメインは、配列番号2によるVL配列から得られるCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む)、及び配列番号3によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVHドメイン(ここで、VHドメインは、配列番号3によるVH配列から得られるCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む)、好ましくは、VLドメインはY44F、K50Q、A51S及びL54R(AHoナンバリング)を含み、VHドメインはE53A、V103T及びY105F(AHoナンバリング)を含む、又は
(ii)配列番号4によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン(ここで、VLドメインは、配列番号4によるVL配列から得られるCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む)、及び配列番号5によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVHドメイン(ここで、VHドメインは、配列番号5によるVH配列から得られるCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む)、好ましくは、VLドメインはY44F、K50Q、A51S及びL54R(AHoナンバリング)を含み、VHドメインはE53A、V103T及びY105F(AHoナンバリング)を含む、又は
(iii)配列番号6によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン(ここで、VLドメインは、配列番号6によるVL配列から得られるCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む)、及び配列番号7によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVHドメイン(ここで、VHドメインは、配列番号7によるVH配列から得られるCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む)、好ましくは、VLドメインはY44F、K50Q、A51S及びL54R(AHoナンバリング)を含み、VHドメインはE53A、V103T及びY105F(AHoナンバリング)を含む、又は
(iv)配列番号8によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVLドメイン(ここで、VLドメインは、配列番号8によるVL配列から得られるCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む)、及び配列番号9によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示すVHドメイン(ここで、VHドメインは、配列番号9によるVH配列から得られるCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む)、好ましくは、VLドメインはY44F、K50Q、A51S及びL54R(AHoナンバリング)を含み、VHドメインはE53A、V103T及びY105F(AHoナンバリング)を含む
を含む。
【0096】
特定の実施形態では、ヒトCD3に特異性を有する可変ドメインの同族対は、配列番号2、4、6及び8から選択されるタンパク質配列の少なくとも位置5から140、特に少なくとも位置3から145を含むVLドメイン、ならびに配列番号3、5、7及び9から選択されるタンパク質配列の少なくとも位置5から140、特に少なくとも位置3から145を含むVHドメイン(Honegger & Pluckthun, loc. citによる位置決め)を含み、特に、ヒトCD3に特異性を有する可変ドメインの同族対は、配列番号2、4、6及び8から選択されるVLドメイン、ならびに配列番号3、5、7及び9から選択されるVHドメインを含む。
【0097】
特定のそのような実施形態では、第3、第4、第5及び/又は第6の結合ドメインは、癌標的、及び免疫エフェクター細胞上に存在する標的のリストから選択される標的に対する特異性を有する一本鎖Fvフラグメントである。
【0098】
本出願の文脈において、「標的」という用語は、そのような結合ドメインによって特異的に結合される抗体の抗原などの結合ドメインの同族結合パートナーを指す。
【0099】
特定の実施形態では、前記標的は、癌標的であり、特に、非腫瘍細胞の表面と比較して、濃度が増加した及び/又は異なる立体配置の1つ以上の腫瘍細胞型又は腫瘍関連細胞の表面に存在する抗原又はエピトープである。特に、前記癌標的は、1つ以上の腫瘍又は腫瘍間質細胞型の表面上に存在するが、非腫瘍細胞の表面上には存在しない。
【0100】
他の特定の実施形態では、前記標的は、自己免疫疾患に関与する細胞で優先的に発現される抗原又はエピトープである。他の実施形態では、前記抗原又はエピトープは、炎症性疾患に関与する細胞上で優先的に発現される。
【0101】
特定の実施形態では、第1及び第2の一本鎖タンパク質は、以下のリストから選択される。ここで、VLA、VLB、VHA、及びVHBは、それぞれ、第1及び第2のVL及びVHドメインに対応し、VLC、VLD、VLE、VLF、VHC、VHD、VHE、及びVHFはそれぞれ、第3、第4、第5、及び/又は第6の機能ドメインに対応するリンカーを有する一本鎖フラグメントの一部であり、第3、第4、第5、及び/又は第6のリンカー(LINKER3、LINKER4、LINKER5、及びLINKER6)を介して、コアドメイン(太字)に連結されている;すべての構築物は、N末端からC末端の方向に記述される。
【0102】
A(パラレル、6Fvs):
鎖1:VLC-(リンカー)-VHC-(LINKER3)-VLA-(LINKER1)-VLB-(LINKER4)-VLD-(リンカー)-VHD
鎖2:VLE-(リンカー)-VHE-(LINKER5)-VHA-(LINKER2)-VHB-(LINKER6)-VLF-(リンカー)-VHF
【0103】
B(アンチパラレル6Fv):
鎖1:VLC-(リンカー)-VHC-(LINKER3)-VLA-(LINKER1)-VLB-(LINKER4)-VLD-(リンカー)-VHD
鎖2:VLE-(リンカー)-VHE-(LINKER5)-VHB-(LINKER2)-VHA-(LINKER6)-VLF-(リンカー)-VHF
【0104】
C1(アンチパラレル4Fv)(
図12を参照):
鎖1:VLC-(リンカー)-VHC-(LINKER3)-VLA-(LINKER1)-VLB
鎖2:VLD-(リンカー)-VHD-(LINKER4)-VHB-(LINKER2)-VHA
【0105】
C2(アンチパラレル4Fv)(
図14を参照):
鎖1:VLC-(リンカー)-VHC-(LINKER3)-VLA-(LINKER1)-VLB
鎖2:VHB-(LINKER2)-VHA-(LINKER4)-VLD-(リンカー)-VHD
【0106】
C3(アンチパラレル4Fv):
鎖1:VLA-(LINKER1)-VLB-(LINKER3)-VLC-(リンカー)-VHC
鎖2:VLD-(リンカー)-VHD-(LINKER4)-VHB-(LINKER2)-VHA
【0107】
C4(アンチパラレル4Fv):
鎖1:VLA-(LINKER1)-VLB-(LINKER3)-VLC-(リンカー)-VHC
鎖2:VHB-(LINKER2)-VHA-(LINKER4)-VLD-(リンカー)-VHD
【0108】
D1(パラレル4Fv)(
図15を参照):
鎖1:VLC-(リンカー)-VHC-(LINKER3)-VLA-(LINKER1)-VLB
鎖2:VLD-(リンカー)-VHD-(LINKER4)-VHA-(LINKER2)-VHB
【0109】
D2(パラレル4Fv):
鎖1:VLC-(リンカー)-VHC-(LINKER3)-VLA-(LINKER1)-VLB
鎖2:VHA-(LINKER2)-VHB-(LINKER4)-VLD-(リンカー)-VHD
【0110】
D3(パラレル4Fv):
鎖1:VLA-(LINKER1)-VLB-(LINKER3)-VLC-(リンカー)-VHC
鎖2:VLD-(リンカー)-VHD-(LINKER4)-VHA-(LINKER2)-VHB
【0111】
D4(パラレル4Fv):
鎖1:VLA-(LINKER1)-VLB-(LINKER3)-VLC-(リンカー)-VHC
鎖2:VHA-(LINKER2)-VHB-(LINKER4)-VLD-(リンカー)-VHD
【0112】
特定の実施形態では、ヘテロ二量体フォーマットA、B、C1からC4、又はD1からD4による構築物に含まれる1つ以上のscFvフラグメントにおけるVH及びVLドメインの順序は逆の順序である(例えば、構築物Aの鎖1におけるVHC-(リンカー)-VLC-(LINKER3)-VLA-(LINKER1)-VLB-(LINKER4)-VHD-(リンカー)-VLD)。
【0113】
これらのフォーマットでは、1つのタンパク質鎖上の2つの分割可変重ドメインVHA及びVHBと、他のタンパク質鎖上の2つの対応する可変軽鎖ドメインVLA及びVLB(VH-VH/VL-VL)の局在化は、鎖内ドメイン対の形成を妨げて、不活性な一本鎖ダイアボディ(scDb)様構造をもたらす。これは、従来のダイアボディのVH-VL/VH-VL配向(Kipriyanovらによって提案された設計と同様である)が使用されて、ヘテロ二量体化を駆動している場合であるからである。対照的に、VH-VH/VL-VL配向は、ヘテロ二量体の2~6特異的タンパク質のみの形成を強制する。
【0114】
VHA-VHB/VLA-VLBコアドメインに結合する標的A及びBのVH/VLドメインペアリングは、VHA-VLB及びVHB-VLA対をもたらすVHAとVLB、及びVHBとVLAの不適切なペアリングにより、非アクティブなコアドメインになるという理論上の可能性がある。意外にも驚くべきことに、そのような非アクティブなバリアントはこれまでのところ観察されていない。理論に縛られることを望まないが、二量化は、一致しないペアリングで発生する潜在的なパッキング干渉とは対照的に、同族対のCDRのより効率的なパッキングにより、同族ペアリングに向かって駆動することができる。
【0115】
VH-VH/VL-VLコアドメインでのヘテロ二量体化を活性なペアリングに向けてさらに駆動するために、ノブイントゥーホール又は同様の技術を、VH-VH/VL-VLコアドメインの1つ又は(相互に適用する場合は)両方のVL/VH対に適用することができる。したがって、特定の実施形態では、前記ヘテロ二量体タンパク質のVH-VH/VL-VLコアドメインにおける活性なペアリングは、以下から選択される技術によってさらに支持される:ノブイントゥーホール(Zhu et al., "Remodeling domain interfaces to enhance heterodimer formation", Protein Sci 1997 Apr; 6(4): 781-788)、及び鎖間システインブリッジ。
【0116】
第2の態様では、本発明は、前記第1及び第2の一本鎖タンパク質をコードする1つ又は2つの核酸配列に関する。
【0117】
第3の態様では、本発明は、前記1つ又は2つの核酸配列を含む1つ又は2つのベクターに関する。
【0118】
第4の態様では、本発明は、前記1つ又は2つのベクターを含む1つ又は複数の宿主細胞に関する。
【0119】
第4の態様では、本発明は、本発明の第1及び第2の一本鎖タンパク質、又はヘテロ二量体タンパク質を製造する方法に関し、(i)本発明に係る核酸若しくは複数の核酸、又は本発明に係るベクター若しくは複数のベクターを提供し、前記核酸若しくは複数の核酸、又は前記ベクター若しくは複数のベクターを発現させ、発現系から第1及び第2の一本鎖タンパク質、又はヘテロ二量体タンパク質を収集するステップ、あるいは(ii)本発明に係る宿主細胞若しくは複数の宿主細胞を提供し、前記宿主細胞若しくは複数の宿主細胞を培養し、細胞培養物から第1及び第2の一本鎖タンパク質、又は前記ヘテロ二量体タンパク質を収集するステップを含む。
【0120】
第5の態様では、本発明は、本発明のヘテロ二量体タンパク質と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。薬学的に許容される担体は、組成物を強化又は安定化するか、又は組成物の調製を促進する。薬学的に許容される担体には、生理学的に適合する溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。
【0121】
第6の態様では、本発明は、疾患、特にヒト疾患、より具体的には癌、炎症性疾患及び自己免疫疾患から選択されるヒト疾患の治療に使用するための本発明のヘテロ二量体タンパク質に関する。特定の実施形態では、前記第3、第4、第5、又は第6の機能的ドメインの少なくとも1つは、対応する疾患の治療関連の標的と特異的に相互作用することができる。
【0122】
本明細書で使用される「治療」、「治療している」、「治療する」、「治療した」などの用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患の部分的又は完全な治癒及び/又は疾患に起因する有害作用、又は疾患の進行を遅らせることの観点から治療的であり得る。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物、例えばヒトにおける疾患のあらゆる治療を包含し、以下:(a)疾患の阻害、例えば、その発症の阻止;及び(c)疾患の緩和、例えば、疾患の退行を引き起こすことを含む。
【0123】
第7の態様では、本発明は、疾患、特にヒト疾患、より詳細には癌、炎症性疾患及び自己免疫疾患から選択されるヒト疾患の治療方法に関し、本発明のヘテロ二量体タンパク質を投与するステップを含み、ここで、前記第3、第4、第5、又は第6の機能的ドメインの少なくとも1つは、対応する疾患における治療関連の標的と特異的に相互作用することができる。特に、本発明は、癌、炎症性疾患及び自己免疫疾患から選択される疾患に罹患している対象を治療する方法に関し、有効量の本発明のヘテロ二量体タンパク質を対象に投与することを含み、前記第3、第4、第5、又は第6の機能的ドメインのうちの少なくとも1つは、対応する疾患における治療関連の標的と特異的に相互作用することができる。
【0124】
「対象」という用語には、ヒト及び非ヒト動物が含まれる。非ヒト動物には、すべての脊椎動物、例えば、哺乳動物、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、トリ、両生類、爬虫類などの非哺乳類が含まれる。特に明記しない限り、「患者」又は「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。「有効量」又は「治療有効量」又は「有効な量」という用語は、疾患を治療するために哺乳動物又は他の対象に投与された場合、そのような疾患の治療を行うのに十分な薬剤の量を指す。「治療的有効量」は、薬剤、疾患及びその重症度、及び治療される対象の年齢、体重などに応じて異なる。
【0125】
第8の態様では、本発明は、疾患、特にヒト疾患、より具体的には癌、炎症性及び自己免疫疾患から選択されるヒト疾患の治療に使用するための医薬の製造における本発明のヘテロ二量体タンパク質の使用に関する。ここで、VL及びVHドメインの同族対の、又は第3、第4、第5、若しくは第6の機能的ドメインの少なくとも1つが、対応する疾患における治療関連の標的と特異的に相互作用することができる。
【0126】
第9の態様では、本発明は、疾患、特にヒト疾患、より具体的には癌、炎症性疾患及び自己免疫疾患から選択されるヒト疾患の治療における本発明のヘテロ二量体タンパク質の使用に関する。ここで、VL及びVHドメインの同族対の、又は第3、第4、第5、若しくは第6の機能的ドメインの少なくとも1つは、対応する疾患における治療関連の標的と特異的に相互作用することができる。
【0127】
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【実施例】
【0135】
実施例1:多重仕様フォーマットの構築
方法及び結果
構築物設計、発現及び精製
ヘテロ二量体MATCH分子は、ヘテロ二量体コアアセンブリの分割可変ドメインにCD3E及びHSAに対する特異性を含むように設計された。IL23R結合scFvは、各ヘテロ二量体化ドメインのN末端に結合した。MATCHの2つのペプチド鎖を共有結合させ、ヘテロ二量体化コアの対応するドメインの正しいアセンブリを確認するために、鎖間ジスルフィド([11]に記載)が抗CD3又は抗HSAドメインのいずれかのVL/VHインターフェースに導入された。
【0136】
多数の様々な実施形態は、MATCH配置(パラレル又はアンチパラレル)、使用されるCD3結合ドメイン(クローン28-21-D09又は09-24-H09)、使用されるHSA結合ドメイン(クローン19-01-H04又は23-13-A01)及び異なるコアリンカー(配列番号16-20)のようなパラメータを変動させて生じさせた。MATCHフォーマットの2つの可能な配置(パラレル又はアンチパラレル)について詳しく説明されている(WO2016202457)、アンチパラレル配置(ap):鎖A(VL1-VH1-VH2-VH3)及び鎖B(VL4-VH4-VL3-VL2);パラレル配置(p):鎖A(VL1-VH1-VH2-VH3)及び鎖B(VL4-VH4-VL2-VL3)。配列のバリエーション以外にも、コアドメインの様々な選択肢、表1及び表2に示されるscFvモジュール及びコアリンカーが試験されている。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
上記で概説した構築物を生成するために、Fvドメイン及びリンカーのアミノ酸配列を、対応する核酸配列に逆翻訳し、それをデノボで合成した。コード配列を組み立て、標準的な分子生物学技術(例えば、Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual)により、組換えタンパク質分泌に適した発現ベクター(例えば、pcDNA3.1、Invitrogen)にクローニングした。
【0142】
MATCHタンパク質は、供給元のプロトコルに従ってCHOgro発現キット(Mirus Bio LLC)を使用した一過性トランスフェクションにより、CHO-S細胞(Thermo Fisher)で生産された。タンパク質画分をCHO-S上清から精製し、細胞生存率が80%未満に低下するとすぐに遠心分離により回収した(37℃及び8%CO2での軌道振とうによる6日間のインキュベーション後)。精製はプロテインLアフィニティ精製によって行われ、AKTA Pure FPLCシステム(GE Healthcare)に固定されたカラムでCapto L樹脂(GE Healthcare)で可変ドメインを捕捉し、0.1Mクエン酸、pH 2.0で溶出した後、迅速に1/3(v/v)2M Tris-HCl、pH 7.5の添加によりサンプルpHを調整した。その後、透析膜(3.5kDa MWCO、Spectrum Laboratories,Inc.)を使用してタンパク質溶液を1×PBS pH7.4(300mMアルギニンを補充)とバッファー交換し、最後にVivaspin Protein Concentrator Spin Column(5kDa MWCO、GE Healthcare)を使用して濃縮した。
【0143】
一本鎖ダイアボディ(scDb)フォーマットの参照タンパク質は、以前に説明されているように設計された[10]。要するに、表1にリストされている可変ドメインは、VLA-S1-VHB-L1-VLB-S2-VHA方式で配置された。この場合、S1とS2は短いGS4リンカーであり、L1は長い(GS)リンカーである。参照目的で生成された分子には、MATCH構築物と同じFvフラグメントが含まれていた。
【0144】
試験したすべてのタンパク質を、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)及びドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析し、タンパク質含量をUV/Vis分光法で分析した。MATCH構築物の場合、2つのヘテロ二量体の定量的ジスルフィド結合は、非還元SDS-PAGEによって確認された。
【0145】
結果
MATCH構築物バリアントのSDS-PAGE分析では、非還元条件下ではタンパク質バンドの共有結合ヘテロ二量体へのほぼ定量的なシフトが観察されることが
図1に示されている。しかしながら、還元条件下では、個々の鎖のサイズで二重帯域が観察される。
【0146】
→VL/VH対の界面における指定された鎖間ジスルフィドブリッジの位置により、特にSPR実験におけるコアドメインの保存された親和性と組み合わせて、鎖の誤対合は非常に起こりにくい。
【0147】
表面プラズモン共鳴(SPR)による親和性測定
一本鎖Fv(scFv)フォーマットの個々の標的結合ドメイン及び精製されたヘテロ二量体MATCH構築物の、組換え標的タンパク質であるヒトIL-23受容体ECD(IL23R)、ヒトCD3ガンマ-イプシロン一本鎖(CD3)及びヒト血清アルブミン(HSA)への結合親和性は、Biacore T200(General Electric)又はMASS-1(Sierra Sensors)デバイスを使用した表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定された。簡単に説明すると、組換えタンパク質は、CM5(Biacore、General Electric)又は大容量センサーチップ(Sierra Sensors)のアミンカップリング化学によって直接固定化された。様々な濃度の標的結合ドメインを分析物として注入し、結合応答(応答単位、RU)を測定した。各注入後、再生手順が実行された。得られた結合データを二重減算(分析対象物注入なし、参照フローチャネル)し、それぞれのソフトウェアパッケージを使用して分析した。
【0148】
結果
【0149】
【0150】
【0151】
標的のそれぞれに対するヘテロ二量体MATCH構築物の親和性は、一般にscFv又はscDbフォーマットで測定された個々の結合ドメインの親和性と非常に類似した。特に、MATC構築物のIL23Rへの見かけの親和性はscDb参照分子と比較して増加しているようである。これは、各MATCH分子への2つのIL23R結合ドメインの取り込みに起因する結合力効果によって説明することができる。
【0152】
これらのデータは、MATCH構築物の各可変ドメインの維持された結合活性を示し、コアリンカーの選択、鎖間ジスルフィドの位置、抗CD3、使用されるHSAドメイン、又は結合されるscFvモジュールに関係なく、同族可変ドメイン対の正しいアセンブリを確認する。
【0153】
コアドメインの標的への親和性の特定の違いは、様々な構築物で観察された。CD3ドメインのVL/VH界面にジスルフィド結合を含む構築物の場合、PR0746で使用される荷電コアリンカーの組み合わせ(配列番号16及び配列番号17を含む)が最高の親和性を示した。
【0154】
NFATレポーター遺伝子アッセイによるT細胞活性化
NFATアッセイ
CMVプロモーターの制御下でヒトIL23R IL12Rベータ1ヘテロ二量体を安定して発現するCHO-K1細胞株は、親のCHO-K1細胞株のレンチウイルス形質導入によって生成された。これらの細胞をNFAtレポーター遺伝子アッセイの標的細胞として使用し、一方、親CHO-K1細胞株を対照として使用した。25g/Lのヒト血清アルブミン(HSA)を含む50μlアッセイ培地(RPMI 1640、10%FCS)で希釈した25,000個の生存可能な標的細胞を、白い平底の96ウェルプレートに播種した。次に、HSA(25g/L)を含むアッセイ培地で希釈した4倍濃縮試験タンパク質25μlを適切なウェルに加えた。最後に、50000Jurkat細胞を含むHSAを含む25μlのアッセイ培地を各ウェルに添加し、プレートを室温で10分間穏やかに撹拌しながらインキュベートした。37℃、5%CO2でのインキュベーション時間に対応する5時間、22時間又は30時間などの各時点で1枚のプレートを作成した。ルシフェラーゼ活性を検出するために、製造業者の指示に従って、一段階ルシフェラーゼアッセイキット(Amsbio)を使用した。簡単に言えば、インキュベーション時間の終わりに、ルシフェラーゼ試薬基質をルシフェラーゼ試薬緩衝液と混合し、50μlを各ウェルに加え、プレートを室温にて暗所で15分間インキュベートした。TopCount(PekinElmer)でプレートを読み取った。50μlのアッセイ培地(RPMI1640、10%FCS)で希釈した25000個の生存可能な標的細胞を、白色の平底96ウェルプレートに播種した。次に、アッセイ培地で希釈した4倍濃縮試験タンパク質25μlを適切なウェルに加えた。最後に、50000個のJurkat細胞を含む25μlのアッセイ培地を各ウェルに加え、プレートを室温で10分間穏やかに撹拌しながらインキュベートした。生理的濃度のヒト血清アルブミンを含む又は含まない37℃、5%CO2でのインキュベーション時間に対応する5時間、22時間又は30時間などの各時点で1枚のプレートを作成した。ルシフェラーゼ活性を検出するために、製造業者の指示に従って、一段階ルシフェラーゼアッセイキット(Amsbio)を使用した。簡単に言えば、インキュベーション時間の終わりに、ルシフェラーゼ試薬基質をルシフェラーゼ試薬緩衝液と混合し、50μlを各ウェルに加え、プレートを室温にて暗所で15分間インキュベートした。プレートはTopCount(PekinElmer)で読み取った。
【0155】
ELISAによるIL-2の定量化
250nMの試験分子を含むウェルから、NFATレポーター遺伝子アッセイ中の様々な時点で100μlの上清を収集した。IL-2定量は、製造元の指示に従ってIL-2 ELISA MAX標準キット(Biolegend)を使用して行った。簡単に説明すると、希釈バッファー(PBS、1%BSA、0.2%Tween 20)で希釈した100μlの捕捉抗体を96ウェルプレートMaxisorb(Nunc)に4℃で一晩コーティングした。翌日、プレートを洗浄バッファー(PBS、0.005%Tween 20)で3回洗浄した。ウェルを300μlの希釈緩衝液でRTにて1時間ブロックした後、洗浄緩衝液で3回洗浄した。次に、試験試料の100μlの上清と標準曲線の各濃度100μlを適切なウェルに加え、プレートを振とうしながら室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した後、振盪しながら室温で1時間、検出抗体とインキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で再度3回洗浄し、100μlのアビジン-HRPを各ウェルに加え、振とうしながら室温で30分間インキュベートした。100μlのTMB基質溶液を加える前に、3回の最終洗浄を実施した。プレートを暗所で15分間インキュベートし、100μlの停止溶液を各ウェルに加えることにより反応を停止させた。450nm及び570nmで吸光度を読み取った。450nmの吸光度から570nmの吸光度を差し引いた。
【0156】
結果
【0157】
【0158】
5時間のインキュベーション後のNFATレポーター遺伝子アッセイでのMATCH構築物バリアントの機能分析により、T細胞を活性化する能力が示された。異なるプレート間で比較するために、データはプレート上の参照に対して正規化された。
【0159】
さらに詳細な特性評価のために、T細胞を活性化するための最良の効力も示した最高親和性のMATCH構築物(CD3用)PR0746を使用した。さらに、構築物PR0821及びPR0824を使用して、a)異なるターゲティングドメインとの関連でHSA/CD3コアドメインの機能的活性を評価し(この場合は抗Her2)、及びb)抗CD3ドメインの代わりに、HSA結合ドメインのジスルフィド結合の代替の位置決めを評価した。
【0160】
抗原保有標的細胞及び生理学的濃度のヒト血清アルブミン(HSA)の存在下でT細胞を活性化する分子の効力は、複数の時点及び分子濃度にわたって決定された(
図2参照)。ヘテロ二量体MATCH(PR0746)は、CD3E及びII23Rに特異性を持つ二重特異性scDb(PR0624)と、陰性対照としてMATCHヘテロ二量体化コア(CD3E及びHSA)に存在する特異性を組み合わせた二重特異性scDb(PR0811)と比較された。データは、陰性対照がT細胞の活性化をほとんど示さないのに対し、scDb PR0624は、初期及び後期の両方の時点でIL23Rを発現する標的細胞の存在下でT細胞の強力な活性化を示すことを示す。シグナル振幅は両方の時点で飽和に達し、EC50は5~30時間のインキュベーション(141.8pMから19.8pM)で約7倍改善する。興味深いことに、5~30時間のインキュベーションで約5倍になる。興味深いことに、MATC分子であるPR0746は、T細胞の活性化に顕著な時間依存性を示している。5時間の応答は低い信号振幅のみを示すが、MATCH-4の応答は、30時間後にscDbのscDbと非常に類似した信号振幅に達する。EC50は、すべての時点でscDbよりも約5倍高いままである(5時間後の266.3pM及び30時間後の102.2pM)(ポイントを参照(
図4を参照))。したがって、2つのフォーマットは主に、最大活性化の可能性というよりはむしろ、T細胞活性化の速度が異なる(
図3も参照)。
【0161】
標的タンパク質のない細胞の存在下での異なる分子のT細胞活性化のプロット(
図3)は、標的細胞の存在下でのT細胞活性化のEC50をはるかに超える濃度でも、T細胞の活性化がほとんどないことを示している。これは、PR0811でのT細胞活性化の欠如とともに、HSA/CD3コアドメインを含む分子のT細胞活性化のための標的細胞結合の必要性を確認する。T細胞の非特異的活性化の欠如は、T細胞動員療法による望ましくない副作用を回避するための前提条件である。
【0162】
異なる時点での用量反応シグナルのプラトー値のプロット(
図4)は、参照scDb(PR0624)が5時間のインキュベーションでほぼ最大のシグナル振幅を誘導することを示している。一方、MATCH分子によって誘導される信号振幅はscDbの値の20%未満で始まるが、時間の経過とともに着実に増加し、30時間のインキュベーション後に最終的に同じレベルのT細胞活性化に達する。
【0163】
scDb及びMATCH分子の用量反応曲線のEC50値のプロット(
図5)は、時間の経過に伴ってEC50の改善を示すが、しかしながら、興味深いことに、EC50の改善は両方の分子で非常に類似したパターンに従い、曲線は互いに並行して走っている。したがって、効力の動態(EC50)は、小さいscDbとHSA結合ドメインを含む大きいMATCHの両方で類似している。しかしながら、最大T細胞活性化の動態は、MATCHがより遅い活性化を示すという点で大きく異なる。
【0164】
T細胞活性化マーカーIL-2の放出は、分子PRO624(scDb)及びPRO746(MATCH)のNFATレポーター遺伝子アッセイのサンプルについて定量された(
図6参照)。scDb参照分子の場合、30時間のインキュベーション中にIL-2濃度の強い増加が観察される。興味深いことに、MATCH分子を含むウェルに存在するIL-2の量は、対応するT細胞活性化シグナルがほぼ同一である30時間後でも、すべての時点でかなり低かった。
【0165】
要約すると、HSA/CD3コアドメインを含むMATCHフォーマットは、T細胞を活性化する能力が同じであり、活性化の速度が遅いことを示している。これは、他のT細胞が関与する二重特異性物質(例えば、ブリナツモマブ/ブリンサイト)によるサイトカイン放出に関連する副作用が投薬の初期に最も強いという事実に照らして興味深いものである。実際、治療開始時には低用量のブリナツモマブ/ブリンサイトのみが許容されているが、その後はかなり高い用量が許容される。これについてのもっともな説明は、いわゆるサイトカイン放出症候群(CRS)につながる可能性のある投薬直後に発生する強いサイトカインバーストである。したがって、ここで提示されるMATCHは、T細胞の活性化の速度が遅く、結果としてサイトカイン放出が減少するため、毒性が低下する可能性があるが、経時的に同じレベルのT細胞活性化に達する能力がある。さらに、T細胞活性化のレベルが同じでもサイトカイン放出の減少はPR0746のさらに驚くべき特徴であり、これはT細胞動員療法に関連して頻繁に観察されるサイトカイン放出症候群の発生を減らすことを示唆している。
【0166】
サイトトックスアッセイ(T細胞駆動型標的細胞枯渇)
血球分画
末梢血単核細胞(PBMC)は、製造元の指示に従ってリンパ球分離培地Lymphoprep(Stemcell technology)を使用して、健康なボランティアの新鮮な血液から分離された。簡単に説明すると、50ml遠心分離チューブ(PBS、2%FCS、2mM EDTA)の分離バッファーで血液を1:1に希釈し、推奨量のLymphoprep培地を含むLeucosepチューブに適用した。LeucoSepチューブをRTでブレーキをかけずに800gで30分間遠心分離した。次に、PBMCを含む細胞層を収集し、分離バッファーで2回洗浄し、赤血球溶解バッファーを使用して室温で5分間赤血球を溶解した。次いで、細胞を単離緩衝液で1回及びアッセイ培地(RPMI-1640、10%FCS)で1回洗浄した。血小板除去後、単離されたPBMCを、25g/mlのHSAを含むアッセイ培地に、1mlあたり3×106個の生存細胞の密度で再懸濁した。
【0167】
フローサイトメトリーベースのインビトロ細胞毒性アッセイ及びCD8+T細胞活性化
CMVプロモーターの制御下でヒトIL23R IL12Rbeta 1ヘテロ二量体を安定して発現するCHO-K1細胞株は、親のCHO-K1細胞株のレンチウイルス形質導入によって生成された。これらの細胞は細胞毒性アッセイで標的細胞として使用されたが、親CHO-K1細胞株は対照として使用された。さらに、ヒトHER2を安定して発現するCHO-K1細胞株は、完全長HER2 cDNAを使用した親CHO-K1細胞のレンチウイルス形質導入によっても生成された。HER2とIL23Rの発現レベルは、フローサイトメトリーによって決定された。細胞表面のHER2レベルは、IL23Rレベルと比較してはるかに高くなっている。前もってPKH67で標識し、25g/Lのヒト血清アルブミン(HSA)を含む75μlのアッセイ培地(RPMI-1640、10%FCS)で希釈した5,000個の生存可能な標的細胞を96ウェルプレートに加えた。次に、HSAを含むアッセイ培地で希釈した6倍濃縮試験タンパク質25μlを適切なウェルに加えた。次に、30:1のE:T比を得るために、HSAを含む50μlのアッセイ培地で希釈した15,000個の生存エフェクター細胞(PBMC)を各ウェルに加え、プレートは、37℃、5%CO2でインキュベーションする前に、室温で転頭ミキサー上で混合した。16時間後、細胞をトリプシン処理し、染色バッファー(PBS、2%BCS、2mM EDTA)に再懸濁し、非結合プレートに移した。
【0168】
細胞は、CD69、CD8、CD4、CD11c、及びアネキシン-Vなどの様々なマーカーで染色された。分析のために、焦点はアポトーシス及び死んだ標的細胞と活性化されたCD8+T細胞にある。それにより、標的細胞は緑色蛍光(PKH67)によって識別され、その生存率はアネキシンV APCによって分析される。エフェクター細胞(CD8+細胞)は、その表面でCD8を検出することにより同定された(抗CD8 PerCP-Cy5.5)。CD8+T細胞の活性化は、最終的にCD69発現の定量化によって検出される(抗CD69 PE)。CD4は、CD8+及びCD4+T細胞をよりよく識別するために使用される。CD11cは単球と樹状細胞をマークし、それらを除外するために使用される。アネキシン-V抗体を除く各マーカーについて、穏やかに撹拌しながら室温で30分間インキュベートする。細胞を染色バッファーで1回洗浄し、アネキシン結合バッファーで1回洗浄し、アネキシン-V染色を撹拌しながら室温で30分間続ける。細胞をAnnexin-V結合バッファーで1回洗浄し、Novocyte Flow Cytometerでフローサイトメトリー分析を行った。
【0169】
特定の標的細胞溶解の割合は、次の式に従って計算される。
【0170】
【0171】
活性化CD8+T細胞の割合は、CD69+CD8+T細胞の割合に対応する。
【0172】
フローサイトメトリーによるIL-2の定量上清中のIL-2の定量は、サイトメトリービーズアレイヒトTh1/Th2サイトカインキットII(BD biosciences)を製造元のプロトコルに従って使用して実施した。簡単に言えば、50μlの混合キャプチャビーズを分析した各上清とIL-2標準希釈液に加えた。暗所で室温で3時間インキュベートした後、ビーズを洗浄バッファーで3回洗浄し、ノボサイト機器でフローサイトメトリーにより分析した。
【0173】
結果
細胞溶解データは、PR0746(MATCH-4抗TAA2xCD3xHSA)とPR0624(scDb;抗TAAxCD3)の両方の分子の特異的な効力と特異性を示し、標的を有する細胞の枯渇を誘発するが、陰性コントロールPR0811(scDb;抗CD3xHSA)は、標的細胞の溶解を誘導できない(
図7を参照)。上記のNFATアッセイと一致して、MATC分子での応答のEC50はscDbと比較してわずかに高い濃度にシフトするが、16時間のインキュベーション後に同様の割合の標的細胞が溶解する。
【0174】
3つの分子の用量反応におけるT細胞活性化の定量化は、細胞溶解の観察結果と一致している(
図8を参照)。この読み出しにより、CD3/IL23R scDb(PR0624)では、標的発現細胞の非存在下で、非特異的なT細胞活性化のシグナルが見られる。一方、MATCHは、試験した最高濃度まで非特異的なT細胞活性化の兆候を示さない。
【0175】
ウェル内のIL-2の濃度を測定した(
図9)。IL-2の最大濃度は両方の分子で著しく異なり、MATCHによりIL-2のプラトーがかなり低くなる。標的陰性細胞株を含むウェルの定量化では、CD3/IL23R scDbのみが、最高の試験濃度のscDbでIL-2濃度の増加をもたらす。上記のNFATレポーター遺伝子アッセイで示されたデータに沿って、
図8のデータは、scDb(PR0624)と比較した場合、HSAの存在下でCD3/HSAコアドメインを含むMATCH(PR0746)でのサイトカイン放出の減少を確認する。重要なことに、両方の分子は標的細胞の溶解を誘発する能力が類似しているが、最大の標的細胞の溶解能力は類似している。テトラスペクティブアセンブリは、異なる発現プロファイルの腫瘍関連抗原の2つの抗原特異性を組み合わせるために使用されるCD3/HSAヘテロ二量体化コアを備えたMATCHアセンブリの可能性を示すために生成された(
図10を参照)。
【0176】
データは、CD3/HSAコアドメインに結合した「周辺」scFvの両方の特異性を利用して、1つの分子による2つの異なる標的細胞集団のT細胞媒介性枯渇を効率的に駆動できることを示している(
図11を参照)。また、観察された用量反応曲線に対する異なる標的発現の影響も示している。つまり、
図6に示すように、低発現標的の多価結合を提供することにより、低濃度の標的発現は反応を高濃度にシフトする。一方、標的の発現は、すでに一価の抗原結合により、非常に強力な標的細胞の枯渇をもたらす。そのようなデュアルターゲティングは、2つの標的の1つを排他的に発現する細胞ではなく、2つの細胞表面標的を共発現する細胞への分子の優先的ターゲティングにより、作用メカニズムの特異性を高めるためにさらに活用できる。これを達成するために、2つの標的のいずれかとの親和性が異なる一連のバインダーを、本明細書に示すCD3/HSAコアドメインを含むMATCHフォーマットを使用して、可能な限りすべての組み合わせでテストし、細胞溶解における最適な特異性を用いて1つの組み合わせを選択することができる(Egan et al.mAbs.2016参照)。
【配列表】