(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】車載用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20240905BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240905BHJP
H01Q 1/32 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01Q1/22 B
B60R11/02 A
H01Q1/32 Z
(21)【出願番号】P 2020030341
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】小野 元久
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 聖
(72)【発明者】
【氏名】寺下 典孝
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-048175(JP,A)
【文献】特開2007-043648(JP,A)
【文献】特開平01-144702(JP,A)
【文献】特開2011-250108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
B60R 11/02
H01Q 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手を有するアンテナベースと、
前記アンテナベースの上面側に設けられた第1アンテナ部と、
前記アンテナベースに設けられ、前記アンテナベースの下面側から下方に向けて突出し、前記アンテナベースを車両に固定する固定部位と、
を備え、
前記第1アンテナ部は、前記長手の方向に平行な仮想面に対して直交する直交方向にずれて配置されており、
前記仮想面に対して直交する面と平行に前記第1アンテナ部及び前記固定部位を切断すると、切断面に前記第1アンテナ部の少なくとも一部と前記固定部位の少なくとも一部の両方が存在する、車載用アンテナ装置。
【請求項2】
前記仮想面は、前記アンテナベースの中心を通過する、請求項1に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナベースの上面側に設けられた第2アンテナ部をさらに備え、
前記仮想面は、前記第2アンテナ部を通過する、請求項1又は2に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項4】
前記仮想面は、前記固定部位を通過する、請求項1~3のいずれか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項5】
前記第1アンテナ部は、前記第1アンテナ部の少なくとも一部が、前記直交方向に平行で前記固定部位のいずれかの部分を通過する仮想線と重なるように配置されている、請求項4に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項6】
前記仮想線は、前記仮想面に直交する、請求項5に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項7】
前記第1アンテナ部は、前記直交方向にずれた位置であって、前記固定部位の近傍に配置されている、請求項4~6のいずれか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項8】
前記第1アンテナ部は、衛星からの電波を受信する衛星アンテナである、請求項1~7のいずれか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項9】
前記第1アンテナ部は、第1衛星アンテナと、第2衛星アンテナとを備え、
前記第1衛星アンテナ及び前記第2衛星アンテナは、前記アンテナベースの上面側に設けられ、前記直交方向にずれて配置されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項10】
前記アンテナベースの上面側に設けられた容量装荷素子をさらに備え、
前記第1アンテナ部は、前記容量装荷素子を前記アンテナベースに投影した領域外に配置されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項11】
長手を有するアンテナベースと、
前記アンテナベースの上面側に設けられた第1アンテナ部と、
前記アンテナベースの上面側に設けられた容量装荷素子と、
前記アンテナベースに設けられ、前記アンテナベースの下面側から下方に向けて突出し、前記アンテナベースを車両に固定する固定部位と、
を備え、
前記第1アンテナ部は、前記長手の方向に平行な仮想面に対して交わる方向にずれて配置されており、
前記第1アンテナ部は、前記容量装荷素子を前記アンテナベースに投影した領域外に配置されている、車載用アンテナ装置。
【請求項12】
アンテナベースと、
前記アンテナベースに設けられた第1アンテナ部と、
前記アンテナベースに設けられ、前記アンテナベースの下面側から下方に向けて突出し、前記アンテナベースを車両に固定する固定部位と、
を備え、
前記第1アンテナ部は、その中心が、前記アンテナベースの上方視において前記アンテナベースの前後方向に沿った中心線に対して左右方向にずれて配置されており、
前記中心線を垂線とする面と平行に前記第1アンテナ部及び前記固定部位を切断すると、切断面に前記第1アンテナ部の少なくとも一部と前記固定部位の少なくとも一部の両方が存在する、車載用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車載用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のルーフに取り付けられる様々な車載用アンテナ装置が開発されている。例えば特許文献1に記載の車載用アンテナ装置では、アンテナケースをシャークフィン形状で構成した低背型のアンテナ装置が開示されている。この低背型のアンテナ装置では、アンテナベースの前方側にパッチアンテナが搭載されている。パッチアンテナは、例えばGPS(Global Positioning System)波帯の電波又はSDARS(Satellite Digital Audio Radio Service)波帯の電波を受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的の一例は、自動車のルーフに搭載されるアンテナの特性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の一態様は、
長手方向を有するアンテナベースと、
前記アンテナベース上に設けられた第1アンテナ部と、
を備え、
前記第1アンテナ部は、前記長手方向に平行な仮想面に対して交わる方向にずれて配置されている、車載用アンテナ装置である。
【発明の効果】
【0006】
本実施形態の上記態様によれば、自動車のルーフに搭載されるアンテナの特性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る車載用アンテナ装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る車載用アンテナ装置の一例を示す分解斜視図である。
【
図3】実施形態に係る車載用アンテナ装置から、インナーケースの左側部分と、アンテナケースの左側部分と、を取り除いた状態の一例を示した左側面図である。
【
図4】実施形態に係る車載用アンテナ装置から、インナーケースの左側部分と、容量装荷素子と、アンテナケースの左側部分と、を取り除いた状態の一例を示した斜視図である。
【
図5】車両のルーフの前後方向に沿った一断面を模式的に示した図である。
【
図6】車両のルーフの左右方向に沿った一断面を模式的に示した図である。
【
図7】ルーフから衛星アンテナと取り付け面までの高さが変動した時の天頂方向利得の変化量の一例を示す図である。
【
図8】変形例に係る車載用アンテナ装置の一例を示す模式前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0009】
本明細書において、「第1」、「第2」、「第3」等の序数詞は、特に断りのない限り、同様の名称が付された構成を単に区別するために付されたものであり、構成の特定の特徴(例えば、順番又は重要度)を意味するものではない。
【0010】
図1は、実施形態に係る車載用アンテナ装置10の斜視図である。
図2は、実施形態に係る車載用アンテナ装置10の一例を示す分解斜視図である。
図3は、実施形態に係る車載用アンテナ装置10から、インナーケース400の左側部分と、アンテナケース600の左側部分と、を取り除いた状態の一例を示した左側面図である。
図4は、実施形態に係る車載用アンテナ装置10から、インナーケース400の左側部分と、容量装荷素子510と、アンテナケース600の左側部分と、を取り除いた状態の一例を示した斜視図である。
【0011】
図1から
図4において、第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zは、それぞれ、車載用アンテナ装置10の前後方向、左右方向及び上下方向を示している。詳細には、第1方向Xを示す矢印の方向である第1方向Xの正方向は、車載用アンテナ装置10の前方向を示している。第1方向Xを示す矢印の反対方向である第1方向Xの負方向は、車載用アンテナ装置10の後方向を示している。第2方向Yを示す矢印の方向である第2方向Yの正方向は、車載用アンテナ装置10の左方向を示している。第2方向Yを示す矢印の反対方向の第2方向Yの負方向は、車載用アンテナ装置10の右方向を示している。なお、
図3において第2方向Yを示す黒点付き白丸は、第2方向Yの正方向が
図3の紙面の奥から手前に向かう方向であり、第2方向Yの負方向が
図3の紙面の手前から奥に向かう方向であることを示している。第3方向Zを示す矢印の方向である第3方向Zの正方向は、車載用アンテナ装置10の上方向を示している。第3方向Zを示す矢印の反対方向の第3方向Zの負方向は、車載用アンテナ装置10の下方向を示している。ここでいう「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」は、車載用アンテナ装置10が搭載される自動車によって決定される。すなわち、前方向とは、自動車の前進方向であり、後方向とは、自動車の後進方向である。また、左方向とは、自動車の後側から前側に向けて見たときの左方向であり、右方向とは、自動車の後側から前側に向けて見たときの右方向である。また、上方向とは、自動車の上方向であり、下方向とは、自動車の下方向である。
【0012】
以下、必要に応じて、第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zを、それぞれ、車載用アンテナ装置10、又はアンテナベース100、インナーケース400、アンテナケース600等の車載用アンテナ装置10を構成する部材の前後方向、左右方向及び上下方向として称する。また、必要に応じて、第1方向Xの正方向、第1方向Xの負方向、第2方向Yの正方向、第2方向Yの負方向、第3方向Zの正方向及び第3方向Zの負方向を、それぞれ、車載用アンテナ装置10、又はアンテナベース100、インナーケース400、アンテナケース600等の車載用アンテナ装置10を構成する部材の前方向、後方向、左方向、右方向、上方向及び下方向として称する。
【0013】
図2から
図4に示すように、車載用アンテナ装置10は、アンテナベース100、第1基板120、パッド130、第1衛星アンテナ210、第2衛星アンテナ220、第1アンテナ310、第2アンテナ320、インナーケース400、第3アンテナ500、アンテナケース600及びアンテナ取付部700を備えている。なお、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220は第1アンテナ部の一例であり、第1アンテナ310、第2アンテナ320、インナーケース400及び第3アンテナ500は、第2アンテナ部の一例である。
【0014】
アンテナケース600は、車載用アンテナ装置10を構成する部材を覆う部材で、非透光性と電波透過性を有する合成樹脂などで形成された樹脂成型品である。アンテナケース600は、例えば、第1方向X前方が第1方向X後方よりも低くなるように傾斜し、両側面が内側に湾曲したシャークフィン形状を有する。アンテナケース600は、下面が開口し、インナーケース400等を第3方向Z上方から覆う。アンテナケース600とアンテナベース100とで形成された空間内には、例えば、第1衛星アンテナ210、第2衛星アンテナ220、第1アンテナ310、第2アンテナ320、インナーケース400、第3アンテナ500が収納される。
【0015】
インナーケース400は、電波透過性を有する合成樹脂製などで形成された樹脂成型品であり、下面が開口し、アンテナベース100等を第3方向Z上方から覆う。インナーケース400とアンテナベース100とで形成された空間内には、例えば、第1衛星アンテナ210、第2衛星アンテナ220、第1アンテナ310、第2アンテナ320が収納される。
【0016】
アンテナベース100は、金属ベース110を有している。金属ベース110及び第1基板120は、第1方向Xに長手方向を有している。また、金属ベース110及び第1基板120は、第2方向Yに短手方向を有している。つまり、アンテナベース100の第1方向Xにおける長さは、アンテナベース100の第2方向Yにおける長さより長くなっている。また、金属ベース110及び第1基板120は、第3方向Zに厚みを有している。
【0017】
第1基板120の下面にはコネクタ122が設けられている。第1基板120は、金属ベース110の上面上に搭載されている。金属ベース110には、コネクタ122が通過可能な孔114が形成されている。第1基板120が金属ベース110に取り付けられた場合、コネクタ122は、金属ベース110の孔114を貫通して金属ベース110の下面より下方に向けて突出する。パッド130は、金属ベース110上に配置されており、第1基板120の外周に位置する。このパッド130は、金属ベース110とインナーケース400との間を埋めて防水する。
【0018】
アンテナベース100は、シール部材140を介して自動車のルーフ上に搭載され、アンテナ取付部700によって自動車のルーフに固定される。シール部材140は、エラストマーやウレタンやゴム等の環状の弾性部材であり、アンテナベース100の下面と車載用アンテナ装置10の取り付け先の車体(例えば車両ルーフ)との間に挟持され、両者の間を水密封止する。
【0019】
具体的には、金属ベース110の下面には下方(第3方向Zの負方向)に向けて突出する固定部位112が設けられている。この固定部位112は、導電性であり、例えば金属ブロック等の導電性ブロックである。なお、アンテナベース100は、固定部位112が導電性であれば、一部に絶縁性部材を含んで構成されていてもよいし、アンテナベース100全体が導電性部材で構成されていてもよい。固定部位112の先端面(第3方向Zの負方向側の面)には、ねじ穴が形成されている。
【0020】
アンテナ取付部700によってアンテナベース100を固定する方法の一例は次のようになる。まず、アンテナ取付部700のワッシャ720及びホルダ730をアンテナベース100の固定部位112に取り付ける。次いで、アンテナ取付部700のボルト710をアンテナベース100の固定部位112の下面に形成されたねじ穴に差し込む。これによって、ボルト710、ワッシャ720及びホルダ730をアンテナベース100の固定部位112に仮止めする。次いで、シール部材140を介してルーフの上面上にアンテナベース100を搭載させる。この時、ルーフの上面から、ルーフに形成された取付孔に、アンテナベース100の固定部位112と、固定部位112に仮止めされたアンテナ取付部700と、を通して、ホルダ730によってルーフに車載用アンテナ装置10が仮止めされる。次いで、ボルト710を増し締めすることで、ワッシャ720の爪部をルーフの下面に接触させて、アンテナベース100をルーフに固定する。
【0021】
第1基板120の上面上には、第1衛星アンテナ210、第2衛星アンテナ220、第1アンテナ310、第2アンテナ320及び第2基板522が設けられている。第1衛星アンテナ210、第2衛星アンテナ220、第1アンテナ310、第2アンテナ320及び第2基板522は、インナーケース400によって覆われている。インナーケース400には、容量装荷素子510が取り付けられている。インナーケース400及び第3アンテナ500は、アンテナケース600によって覆われている。
【0022】
第1アンテナ310は、例えば、V2X(Vehicle-to-Everything)アンテナである。なお、第1アンテナ310は、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)とV2Xの共用アンテナとしてもよく、また、他の周波数帯で動作する他のアンテナとV2Xの共用アンテナとしてもよい。このように第1アンテナ310を共用アンテナとした場合には、車載用アンテナ装置10はさらに小型化され得る。なお、第1アンテナ310は、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)とV2Xの共用アンテナとしても良く、また、TELとV2Xの共用アンテナとしてもよい。このように第1アンテナ310を共用アンテナとした場合には更なる小型化が可能になる。第1アンテナ310は、アンテナベース100の後部側に位置している。すなわち、第1アンテナ310は、第1方向Xにおいてアンテナベース100の中心より第1方向Xの負方向側に位置している。第1アンテナ310はインナーケース400によって覆われている。このため、第1アンテナ310の第3方向Zにおける高さはインナーケース400の第3方向Zにおける高さによって制限される。また、アンテナベース100の後部側におけるインナーケース400の高さは、アンテナベース100の前部側におけるインナーケース400の高さより高くなっている。したがって、第1アンテナ310がアンテナベース100の前部側に位置する場合と比較して、第1アンテナ310の高さを高くすることができる。この結果、第1アンテナ310を所望のアンテナ性能に調整するための自由度が高くなる。
【0023】
第2アンテナ320は、例えば、TEL(Telephone)アンテナである。第2アンテナ320は、第1方向Xにおいて、アンテナベース100の中心より第1方向Xの負方向側、かつ第1アンテナ310より第1方向Xの正方向側に位置している。また、第2アンテナ320は、第2方向Yにおいて、第1衛星アンテナ210と第2衛星アンテナ220との間に配置されている。第2アンテナ320はインナーケース400によって覆われている。このため、第2アンテナ320の第3方向Zにおける高さはインナーケース400の第3方向Zにおける高さによって制限される。また、アンテナベース100の後部側におけるインナーケース400の高さは、アンテナベース100の前部側におけるインナーケース400の高さより高くなっている。したがって、第2アンテナ320がアンテナベース100の前部側に位置する場合と比較して、第2アンテナ320の高さを高くすることができる。この結果、第2アンテナ320を所望のアンテナ性能に調整するための自由度が高くなる。
【0024】
第1アンテナ310及び第2アンテナ320は、第1方向Xに沿って延伸する同一直線上に位置している。しかしながら、第1アンテナ310及び第2アンテナ320は、第2方向Yにおいてずれて配置されていてもよい。
【0025】
インナーケース400のうち第1アンテナ310を覆う部分の第2方向Yにおける幅は、第1アンテナ310の第2方向Yにおける幅に近似しており、例えば、第1アンテナ310の第2方向Yにおける幅の100%超110%以下となっている。インナーケース400の内面と第1アンテナ310との間に一定の大きさの隙間が存在すると、インナーケース400を構成する樹脂等の材料によって第1アンテナ310の電波が反射されるおそれがある。本実施形態では、インナーケース400の内面と第1アンテナ310との間の隙間の大きさを一定の大きさより小さくすることで、第1アンテナ310の電波の反射を抑制することができる。このため、インナーケース400の内面と第1アンテナ310との間に一定の大きさの隙間が存在する場合と比較して、第1アンテナ310の指向性を均一にすることができる。
【0026】
第3アンテナ500は、例えば、AM/FM(Amplitude Modulation/Frequency Modulation)ラジオアンテナである。第3アンテナ500は、容量装荷素子510及びヘリカルエレメント520を有している。容量装荷素子510及びヘリカルエレメント520により、第3アンテナ500は、AM/FM放送の受信が可能となる。容量装荷素子510は、第1エレメント510a及び第2エレメント510bを含んでいる。第1エレメント510aは、インナーケース400の左側面に取り付けられている。第2エレメント510bは、インナーケース400の右側面に取り付けられている。第1エレメント510aと第2エレメント510bとが連結部材512に介して電気的に接続される。ヘリカルエレメント520は、第2基板522上に配置されている。容量装荷素子510とヘリカルエレメント520とが電気的に接続されている。より具体的には、連結部材512は接続部材514に接続され、接続部材514がヘリカルエレメント520に接続される。
【0027】
容量装荷素子510の第1エレメント510a及び第2エレメント510bの各々は、ミアンダ形状となっている。ここで、容量装荷素子510の各エレメントは、縦方向に折り返し構造を有する縦ミアンダ形状を有する。このような形状によって容量装荷素子510の電気長を調整することで、第1衛星アンテナ210と第3アンテナ500との電気的な干渉と、第2衛星アンテナ220と第3アンテナ500との電気的な干渉と、を抑制することができる。なお、ここで言う電気的な干渉には、電波の干渉やインピーダンスへの干渉を含む。また、容量装荷素子510の下方には第2アンテナ320が配置されている。ミアンダ形状を有する2つのエレメントに容量装荷素子510を分割することで、第2アンテナ320との電波の干渉を抑制することができる。
【0028】
第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220は、容量装荷素子510をアンテナベース100に投影した領域外に配置されている。言い換えると、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220は、第3方向Zにおいて重なっていない。より詳細には、第3方向Zから見て、第1衛星アンテナ210は、第1エレメント510a、具体的には第1エレメント510aの後部に対して、第2方向Yの正方向側に向けてずれて配置されている。また、第3方向Zから見て、第2衛星アンテナ220は、第2エレメント510b、具体的には第2エレメント510bの後部に対して、第2方向Yの負方向側に向けてずれて配置されている。この場合、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220が、容量装荷素子510をアンテナベース100に投影した領域内に配置される場合と比較して、容量装荷素子510と、第1衛星アンテナ210又は第2衛星アンテナ220との電気的な干渉を低減することができる。
【0029】
容量装荷素子510は、インナーケース400の前側部分に設けられている。インナーケース400の前側部分の第3方向Zにおける高さは、インナーケース400の後側部分の第3方向Zにおける高さより低くなっている。このため、容量装荷素子510の第3方向Zにおける長さがインナーケース400の第3方向Zにおける高さの制限を受ける。ここで、容量装荷素子510と金属ベース110との距離を大きくできないと、第3アンテナ500の性能が低下する場合がある。そこで本実施形態では、第3方向Zにおける高さの制限を受ける代わりに容量装荷素子510の下側部分の幅を広くすることで、第3アンテナ500の性能が大きく低下しないようになっている。より具体的には、対向する2つのエレメントにおいて、第1エレメント510aの下側部分と第2エレメント510bの下側部分との間隔は、第1エレメント510aの上側部分と第2エレメント510bの上側部分との間隔より広くなっている。
【0030】
第1衛星アンテナ210は、GNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ、具体的にはGPSアンテナである。しかしながら、第1衛星アンテナ210は、GNSSアンテナと異なる衛星アンテナであってもよい。第1衛星アンテナ210は、パッチアンテナとなっている。具体的には、第1衛星アンテナ210は、第3方向Zに厚みを有している。また、第3方向Zから見て、第1衛星アンテナ210は、四角形、具体的には略長方形又は略正方形となっている。ここで、略長方形とは、厳密な長方形だけでなく、例えば角が丸まった長方形、角が切り取られた長方形等、厳密な長方形に類似する形状も意味する。略正方形についても同様である。第1衛星アンテナ210の当該長方形又は正方形は、第1方向Xに延伸する一対の辺と、第2方向Yに延伸する他の一対の辺と、を有している。しかしながら、第1衛星アンテナ210の当該長方形又は正方形の当該一対の辺及び当該他の一対の辺は、それぞれ、第1方向X及び第2方向Yに対して、一定の角度、例えば45度傾いていてもよい。当該一定の角度は、様々な要因に応じて決定される。第1衛星アンテナ210は第3アンテナ500の位置の影響を受けることから、当該要因としては、例えば、第1衛星アンテナ210の位置と第3アンテナ500の位置との関係が挙げられる。
【0031】
第2衛星アンテナ220は、SXM(Sirius XM)アンテナである。しかしながら、第2衛星アンテナ220は、SXMアンテナと異なる衛星アンテナであってもよい。第2衛星アンテナ220は、パッチアンテナとなっている。具体的には、第2衛星アンテナ220は、第3方向Zに厚みを有している。また、第3方向Zから見て、第2衛星アンテナ220は、四角形、具体的には長方形又は正方形となっている。ここで、略長方形とは、厳密な長方形だけでなく、例えば角が丸まった長方形、角が切り取られた長方形等、厳密な長方形に類似する形状も意味する。略正方形についても同様である。第2衛星アンテナ220の当該長方形又は正方形は、第1方向Xに延伸する一対の辺と、第2方向Yに延伸する他の一対の辺と、を有している。しかしながら、第2衛星アンテナ220の当該長方形又は正方形の当該一対の辺及び当該他の一対の辺は、それぞれ、第1方向X及び第2方向Yに対して、一定の角度、例えば45度傾いていてもよい。当該一定の角度は、様々な要因に応じて決定される。第2衛星アンテナ220は第3アンテナ500の位置の影響を受けることから、当該要因としては、例えば、第2衛星アンテナ220の位置と第3アンテナ500の位置との関係が挙げられる。なお、インナーケース400の内側において第2衛星アンテナ220と対向する領域には無給電素子222が配置される。この無給電素子222により、第2衛星アンテナ220のアンテナ性能を向上させることが可能になる。なお、無給電素子222は、インナーケース400の外側であって、第2衛星アンテナ220と対向する領域に配置されてもよい。
【0032】
本実施形態において、第1衛星アンテナ210のサイズ及び第2衛星アンテナ220のサイズは、実質的に同一となっている。しかしながら、第1衛星アンテナ210のサイズ及び第2衛星アンテナ220のサイズは、互いに異なっていてもよい。
【0033】
このように構成される車載用アンテナ装置10は、多メディア複合アンテナとして動作する。ところで、車載用アンテナ装置では、より多くのアンテナを収容することが望まれる場合があるが、シャークフィン形状を有するため高さや幅の制限を受ける。このため、より多くのアンテナを収容するには、例えば前後方向にアンテナを配列することが考えられる。しかしながら、前後方向に複数のアンテナを配列する場合、前後方向の長さが長くなってしまう。
【0034】
このようなことから、本実施形態では、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220は、第2方向Yに互いにずれて配置されている。具体的には、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220は、第1方向Xに沿ってアンテナベース100の中心Cを通過する仮想面P1(以下、「仮想面」と称す)に関して対称に配置されている。これによって、第1衛星アンテナ210は、当該仮想面に対して第2方向Yの正方向にずれて配置されており、第2衛星アンテナ220は、当該仮想面に対して第2方向Yの負方向にずれて配置されている。しかしながら、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220は、当該仮想面に関して非対称に配置されていてもよい。また、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220の一方が当該仮想面上に位置していてもよい。
【0035】
本実施形態において、第1方向Xに沿ってアンテナベース100の中心を通過する仮想面は、固定部位112、第1アンテナ310及び第2アンテナ320を通過している。したがって、本実施形態では、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220は、第1方向Xに沿って、固定部位112、第1アンテナ310又は第2アンテナ320を通過する仮想面に対して、第2方向Yにずれて配置されているということもできる。この場合、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220は、第1方向Xに沿って固定部位112の中心を通過する仮想面に対して第2方向Yにずれて配置されているということもできる。また、第1衛星アンテナ210は、アンテナベース100の固定部位112に対して、第2方向Yの正方向にずれて配置されている。同様にして、第2衛星アンテナ220は、アンテナベース100の固定部位112に対して、第2方向Yの負方向にずれて配置されている。高さの低い第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220を第2方向Yにずれて配置することで、X方向の長さを維持したまた、より多くのアンテナを搭載できる。且つ、ケース上部のY方向のサイズ(幅)を小さい設定とすることを維持でき、アンテナの見栄えを維持することができる。
【0036】
ここで、
図5及び
図6を用いて、自動車のルーフの前後方向の曲率と自動車のルーフの左右方向の曲率との関係の一例を説明する。
図5は、車両のルーフの前後方向に沿った一断面を模式的に示した図である。
図6は、車両のルーフの左右方向に沿った一断面を模式的に示した図である。
図5において、実線は自動車のルーフを示しており、一点鎖線は自動車の前後方向に平行な方向を示している。
図6において、実線は自動車のルーフを示しており、一点鎖線は自動車の左右方向に平行な方向を示している。
【0037】
図5及び
図6に示すように、一般に、自動車のルーフは、自動車の前後方向と自動車の左右方向とに曲率を有している。また、
図5及び
図6に示すように、自動車のルーフの前後方向における曲率半径は、自動車のルーフの左右方向における曲率半径より概して小さくなっている。すなわち、本実施形態において、車載用アンテナ装置10が搭載される自動車のルーフの第1方向Xにおける曲率半径は、このルーフの第2方向Yにおける曲率半径より小さくなっている場合がある。また、アンテナベース100は、固定部位112において第3方向Zにおけるルーフとの距離が最も近接し、固定部位112から第1方向X及び第2方向Yに離れるほど、第3方向Zにおけるルーフとの距離が離れる。したがって、本実施形態においては、第1衛星アンテナ210が、第1方向Xに沿って固定部位112を通過する仮想面上に位置する場合と比較して、第1衛星アンテナ210とルーフとの間の距離を短くすることができる。
【0038】
ここで、
図7を用いて、衛星アンテナとルーフとの間の距離による、衛星アンテナのアンテナ性能の変化について説明する。
図7は、ルーフから衛星アンテナ取り付け面までの高さが変動した時の天頂方向利得の変化量の一例を示す図である。
図7では、X軸は固定部位112から衛星アンテナまでの距離を示し、Y軸は衛星アンテナの天頂方向利得を示す。
図7では、第1方向X又は第2方向Yに対して平行に衛星アンテナを移動させた場合のSXM波帯の天頂方向利得の変化を示す。なお、
図7では第1方向Xの半径は900mm、第2方向Yの半径は10000mmである場合を例にする。すなわち、
図7の場合、第1方向Xにおける曲率半径は、第2方向Yにおける曲率半径より小さくなっている。
図7に示すように、衛星アンテナを第1方向Xに平行移動して配置した場合、衛星アンテナと固定部位112との距離が長くなるに従って天頂方向の利得が低下する。一方、衛星アンテナを第2方向Yに平行移動して配置した場合、衛星アンテナと固定部位112との距離が長くなっても天頂方向の利得はほぼ変化しない。言い換えると、ルーフから衛星アンテナ取り付け面までの高さが高くなるほど衛星アンテナの高仰角のアンテナ性能が低下する。すなわち、曲率によりルーフから衛星アンテナ取り付け面までの高さが上がると利得が低下していく。上述したように、自動車のルーフの前後方向における曲率半径は、自動車のルーフの左右方向における曲率半径より概して小さくなっている。すなわち、固定部位112からの距離が同じでも、自動車のルーフの前後方向に沿って離れる場合、自動車のルーフの左右方向に沿って離れる場合に比べて、ルーフから衛星アンテナ取り付け面までの高さが高くなり、利得がより低下する。したがって、本実施形態によれば、第1衛星アンテナ210が、第1方向Xに沿って固定部位112を通過する仮想面上に位置する場合と比較して、第1衛星アンテナ210の特性を良好にすることができる。同様にして、第2衛星アンテナ220が、第1方向Xに沿って固定部位112を通過する仮想面上に位置する場合と比較して、第2衛星アンテナ220の特性を良好にすることができる。
【0039】
上述した説明より、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220の各々のアンテナ性能を考慮すると、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220は、上記仮想面に対して第2方向Yにずれた位置であって、固定部位112の近傍に配置されていることが好ましい。第1衛星アンテナ210についての固定部位112の近傍とは、例えば、第3方向Zから見て、第1衛星アンテナ210の少なくとも一部分が、第2方向Yに沿って上記仮想面に対してずれた位置であって、固定部位112の中心から100mm以内の領域内に位置していることを意味する。第2衛星アンテナ220についての固定部位112の近傍についても同様である。
【0040】
また、上述した説明より、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220は、第1方向Xにおいて、固定部位112からあまりずれていないことが好ましい。例えば、第3方向Zから見て、第1衛星アンテナ210は、第1衛星アンテナ210の少なくとも一部分が、第2方向Yに沿って固定部位112のいずれかの部分、好ましくは中心部分を通過する仮想線L1(以下、「仮想線」と称す)と重なるように、第1衛星アンテナ210が配置されていることが好ましい。なお、仮想線は、第1方向Xに沿う上記仮想面に交わる、好ましくは直交する仮想線である。言い換えると、仮想線は、車両前後方向と交わる、好ましくは直交する仮想線である。第2衛星アンテナ220についても同様である。
【0041】
本実施形態では、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220は、アンテナベース100の固定部位112に対して、第2方向Yに等距離だけずれて配置されている。しかしながら、第1衛星アンテナ210と固定部位112との間の第2方向Yにおける距離と、第2衛星アンテナ220と固定部位112との間の第2方向Yにおける距離とは、互いに異なっていてもよい。例えば、第1衛星アンテナ210又は第2衛星アンテナ220の特性に応じて、第1衛星アンテナ210と固定部位112との間の第2方向Yにおける最適な距離と、第2衛星アンテナ220と固定部位112との間の第2方向Yにおける最適な距離とは、互いに独立して決定される。その結果、第1衛星アンテナ210と固定部位112の間の第2方向Yにおける距離と、第2衛星アンテナ220と固定部位112との間の第2方向Yにおける距離と、が互いに異なることがある。
【0042】
第3方向Zから見て、固定部位112の中心と第1衛星アンテナ210の中心とは、第2方向Yに沿って延伸する同一直線上に位置している必要はない。例えば、第3方向Zから見て、固定部位112及び第1衛星アンテナ210の一方を第2方向Yに沿って通過する仮想面が、固定部位112及び第1衛星アンテナ210の他方のいずれかの部分を通過すればよい。同様にして、第3方向Zから見て、固定部位112の中心と第2衛星アンテナ220の中心とは、第2方向Yに沿って延伸する同一直線上に位置している必要はない。例えば、第3方向Zから見て、固定部位112及び第2衛星アンテナ220のいずれかの部分を第2方向Yに沿って通過する仮想面が、固定部位112及び第2衛星アンテナ220の他方のいずれかの部分を通過すればよい。
【0043】
第3方向Zから見て、第1衛星アンテナ210の中心と第2衛星アンテナ220の中心とは、第2方向Yに沿って延伸する同一直線上に位置している。しかしながら、第1衛星アンテナ210の中心と第2衛星アンテナ220の中心とは、第2方向Yに沿って延伸する同一直線上に位置してなくてもよい。例えば、第3方向Zから見て、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220の一方のいずれかの部分を第2方向Yに沿って通過する仮想面が、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220の他方のいずれかの部分を通過すればよい。
【0044】
第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220は、第3方向Zにおいて金属ベース110と重なっている。したがって、金属ベース110は、外部ノイズから第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220のLNA(Low Noise Amplifier)を遮蔽するシールドカバーとして機能することができる。
【0045】
(変形例)
図8は、変形例に係る車載用アンテナ装置10の一例を示す模式前面図である。本変形例に係る車載用アンテナ装置10は、以下の点を除いて、実施形態に係る車載用アンテナ装置10と同様である。すなわち、車載用アンテナ装置10は、第2衛星アンテナ220を備えていない。代わりに、車載用アンテナ装置10は、実施形態において第2衛星アンテナ220が設けられていた位置に、第2アンテナ320を備えている。本変形例において、第2アンテナ320は、TELアンテナである。なお、
図8では、説明の便宜上、インナーケース400、第3アンテナ500及びアンテナケース600の図示が省略されている。また、
図8において第1方向Xを示す黒点付き白丸は、第1方向Xの正方向が
図3の紙面の奥から手前に向かう方向であり、第1方向Xの負方向が
図3の紙面の手前から奥に向かう方向であることを示している。
【0046】
第2アンテナ320の上部は、
図2に示したインナーケース400の形状に即して、第3方向Zに対して斜めに傾いている。したがって、第2アンテナ320の上部が斜めに傾いていない場合と比較して、第2アンテナ320を低背のアンテナにすることができる。なお、第2アンテナ320を斜めに傾ける場合、第2アンテナ320の上部を斜めに傾けるだけではなく、第2アンテナ320全体をインナーケース400の形状に即して傾けてもよい。
【0047】
また、第2アンテナ320の使用周波数帯を高周波帯域に限定する場合には、第2アンテナ320のアンテナ長を短くすることができる。このように使用周波数帯を高周波帯域に限定する場合、低背型の第2アンテナ320を配置してもよい。例えば、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナ220の少なくとも一方を配置させずに空き地を設け、低背型の第2アンテナ320をこの空き地に配置してもよい。
【0048】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0049】
例えば、本実施形態では、アンテナベース100上に2つの衛星アンテナが設けられている。しかしながら、アンテナベース100上に設けられる衛星アンテナの数は1つのみであってもよいし、又は3つ以上であってもよい。衛星アンテナを1つ設ける場合、衛星アンテナは、上記仮想面から左右方向のいずれか一方にずらして配置される。また、衛星アンテナを3つ設ける場合、3つの衛星アンテナを上記仮想面から左右方向にずらして配置してもよい。或いは、2つの衛星アンテナを左右方向にずらして配置し、かつ、1つの衛星アンテナを固定部位112の近傍で上記仮想面から左右方向にずらさないで配置したり、固定部位112の前方で上記仮想面から左右方向にずらさないで配置したりしてもよい。同様に、衛星アンテナを2つ設ける場合、2つの衛星アンテナを左右方向にずらして配置してもよい。或いは、1つの衛星アンテナを上記仮想面から左右方向のいずれか一方にずらして配置し、かつ、1つの衛星アンテナを固定部位112の近傍で上記仮想面から左右方向にずらさないで配置したり、固定部位112の前方で上記仮想面から左右方向にずらさないで配置したりしてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、アンテナベース100上には、第1衛星アンテナ210、第2衛星アンテナ220等の衛星アンテナだけでなく、第1アンテナ310、第2アンテナ320、第3アンテナ500等、衛星アンテナと異なるアンテナも設けられている。しかしながら、アンテナベース100上には、衛星アンテナのみが設けられていてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、車載用アンテナ装置10が有するアンテナの一例として第1アンテナ310、第2アンテナ320及び第3アンテナ500について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、車載用アンテナ装置10が有するアンテナの種別は任意に変更可能である。より具体的には、車載用アンテナ装置10は、同一の周波数帯で動作する複数のアンテナを有してもよい。同様に、車載用アンテナ装置10において、第1衛星アンテナ210及び第2衛星アンテナは、同一の周波数帯で動作するアンテナであってもよい。例えば、少なくとも一部で同じ周波数帯で動作するTELアンテナを複数本搭載しMIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)としてもよい。また、動作する周波数帯の異なるGNSSアンテナを複数配置してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、容量装荷素子510の各エレメントは、縦方向に折り返し構造を有する縦ミアンダ形状を有している。しかしながら、当該各エレメントは、横方向に折り返し構造を有する横ミアンダ形状を有していてもよい。或いは、当該各エレメントは、縦ミアンダ形状及び横ミアンダ形状の双方を有していてもよい。さらに、当該各エレメントは、スリットを有していてもよい。さらに、当該各エレメントは、ミアンダ、スリット等の形状を有さず、板状であってもよい。
【0053】
本実施形態では、容量装荷素子510の下方には第2アンテナ320が配置されているものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、容量装荷素子510の下方に第1アンテナ310が配置されてもよい。或いは、車載用アンテナ装置10において、第1アンテナ310Aの上方に他の周波数帯で動作する第4アンテナ340が配置されてもよい。
図9に示す例では、車載用アンテナ装置10において第4アンテナ340の下方に第1アンテナ310Aが配置される。
図9は、
図3の第1の変形例を示す図である。ここで、第4アンテナ340は、容量装荷素子342とヘリカルエレメント344とを有し、DAB(Digital Audio Broadcast)波帯で動作するDABアンテナである。なお、第1アンテナ310Aは、基板上にパターンで形成される。さらに、DABアンテナの一部にV2Xアンテナの反射器となる機能を持たせてもよい。
【0054】
本実施形態では、第1アンテナ310を1つ配置する場合について説明したが実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、
図10に示すように、車載用アンテナ装置10において、V2Xアンテナが前方側と後方側とに配置されてもよい。
図10は、
図3の第2の変形例を示す図である。より具体的には、車載用アンテナ装置10において、V2Xアンテナとしての第1アンテナ310が後方側に配置され、V2Xアンテナとしての第1アンテナ310Bが前方側に配置される。なお、第1アンテナ310Bは、基板上にパターンで形成される。なお。第1アンテナ310Bは、V2Xアンテナとしてではなく、インターネット周波数帯(Wi-Fi(登録商標))で動作するアンテナとして配置されてもよい。
【0055】
また、
図11に示すように、TELアンテナとしての第2アンテナ320Bがさらに基板上に形成されてもよい。
図11は、
図3の第3の変形例を示す図である。すなわち、車載用アンテナ装置10は、2つのTELを有するように構成されてもよい。なお、車載用アンテナ装置10は、2つのTELアンテナを有する場合、
図11に示すように、板金で形成された第2アンテナ320と板金で形成された第2アンテナ320Bとを有するように構成されてもよい。
【0056】
本明細書によれば、以下の態様が提供される。
(態様1)
態様1は、
長手方向を有するアンテナベースと、
前記アンテナベース上に設けられた第1アンテナ部と、
を備え、
前記第1アンテナ部は、前記長手方向に平行な仮想面に対して交わる方向にずれて配置されている、車載用アンテナ装置である。
自動車のルーフの前後方向における曲率半径は、自動車のルーフの左右方向における曲率半径より概して小さくなっている。態様1では、第1アンテナ部は、長手方向に平行な仮想面に対して交わる方向にずれて配置されている。言い換えると、第1アンテナ部は、前後方向よりも曲率半径の大きい左右方向に配置されている。このため、態様1によれば、第1アンテナ部が長手方向にずれて配置される場合と比較して、第1アンテナ部とルーフとの間の距離の変化を小さくすることができる。したがって、第1アンテナ部の特性を良好にすることができる。
(態様2)
態様2は、
前記仮想面は、前記アンテナベースの中心を通過する、態様1に記載の車載用アンテナ装置である。
態様2によれば、第1アンテナ部が長手方向にずれて配置される場合と比較して、第1アンテナ部とルーフとの間の距離の変化を小さくすることができる。したがって、第1アンテナ部の特性を良好にすることができる。
(態様3)
態様3は、
前記アンテナベース上に設けられた第2アンテナ部をさらに備え、
前記仮想面は、前記第2アンテナ部を通過する、態様1又は2に記載の車載用アンテナ装置である。
態様3によれば、第1アンテナ部が長手方向にずれて配置される場合と比較して、第1アンテナ部とルーフとの間の距離の変化を小さくすることができる。したがって、第1アンテナ部の特性を良好にすることができる。
(態様4)
態様4は、
前記仮想面は、前記アンテナベースに設けられた固定部位であって前記アンテナベースを車両に固定する固定部位を通過する、態様1~3のいずれか一に記載の車載用アンテナ装置である。
態様4によれば、第1アンテナ部が固定部位から長手方向にずれて配置される場合と比較して、第1アンテナ部とルーフとの間の距離の変化を小さくすることができる。したがって、第1アンテナ部の特性を良好にすることができる。
(態様5)
態様5は、
前記第1アンテナ部は、前記第1アンテナ部の少なくとも一部が、前記交わる方向に平行で前記固定部位のいずれかの部分を通過する仮想線と重なるように配置されている、態様4に記載の車載用アンテナ装置である。
態様5によれば、第1アンテナ部のいずれの部分も上記仮想線と重ならない場合と比較して、第1アンテナ部の特性を良好にすることができる。
(態様6)
態様6は、
前記仮想線は、前記仮想面に直交する、態様5に記載の車載用アンテナ装置である。
態様6によれば、上記仮想線が上記仮想面に斜交する場合と比較して、第1アンテナ部の特性を良好にすることができる。
(態様7)
態様7は、
前記第1アンテナ部は、前記仮想面に対して前記交わる方向にずれた位置であって、前記固定部位の近傍に配置されている、態様4~6のいずれか一に記載の車載用アンテナ装置である。
態様7によれば、第1アンテナ部が固定部位の遠方にある場合と比較して、第1アンテナ部の特性を良好にすることができる。
(態様8)
態様8は、
前記第1アンテナ部は、衛星からの電波を受信する衛星アンテナである、態様1~7のいずれか一に記載の車載用アンテナ装置である。
態様8によれば、衛星アンテナの特性を良好にすることができる。
(態様9)
態様9は、
前記第1アンテナ部は、第1衛星アンテナと、第2衛星アンテナとを備え、
前記第1衛星アンテナ及び前記第2衛星アンテナは、前記アンテナベース上に設けられ、前記仮想面に対して前記交わる方向にずれて配置されている、態様1~8のいずれか一に記載の車載用アンテナ装置である。
態様9によれば、第1衛星アンテナ及び第2衛星アンテナの双方の特性を良好にすることができる。
(態様10)
態様10は、
前記アンテナベース上に設けられた容量装荷素子をさらに備え、
前記第1アンテナ部は、前記容量装荷素子を前記アンテナベースに投影した領域外に配置されている、態様1~9のいずれか一に記載の車載用アンテナ装置である。
態様10によれば、第1アンテナ部が、容量装荷素子をアンテナベースに投影した領域内に配置される場合と比較して、第1アンテナ部と容量装荷素子との電気的な干渉を抑制することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 車載用アンテナ装置
100 アンテナベース
110 金属ベース
112 固定部位
114 孔
120 第1基板
122 コネクタ
130 パッド
140 シール部材
210 第1衛星アンテナ
220 第2衛星アンテナ
222 無給電素子
310 第1アンテナ
310A 第1アンテナ
310B 第1アンテナ
320 第2アンテナ
320A 第2アンテナ
320B 第2アンテナ
340 第4アンテナ
342 容量装荷素子
344 ヘリカルエレメント
400 インナーケース
500 第3アンテナ
510 容量装荷素子
510a 第1エレメント
510b 第2エレメント
512 連結部材
514 接続部材
520 ヘリカルエレメント
522 第2基板
600 アンテナケース
700 アンテナ取付部
710 ボルト
720 ワッシャ
730 ホルダ
X 第1方向
Y 第2方向
Z 第3方向