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特許7549965溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板及びその製造方法、並びに、塗装鋼板及びその製造方法
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  • 特許-溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板及びその製造方法、並びに、塗装鋼板及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板及びその製造方法、並びに、塗装鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/12 20060101AFI20240905BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20240905BHJP
   C22C 21/10 20060101ALI20240905BHJP
   C22C 18/04 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C23C2/12
C23C28/00 A
C22C21/10
C22C18/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020034099
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2020143370
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2019038000
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】大居 利彦
(72)【発明者】
【氏名】岩野 純久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】菅野 史嵩
(72)【発明者】
【氏名】三宅 英徳
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-012959(JP,A)
【文献】特開2016-166414(JP,A)
【文献】特開2007-284718(JP,A)
【文献】国際公開第2011/102434(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/140370(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/12
C23C 28/00
C22C 21/10
C22C 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき層が、Al:45~65質量%、Si:1.2~4質量%、Mg:1~6質量%及びSr:0.01~0.2質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有し、
走査型電子顕微鏡を用いてエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)によって、前記めっき層の表面の2000μm2以上の視野範囲において観察される各Mg2Si粒子の面積が、平均100μm2以下であり、且つ、前記めっき層の表面において観察される全てのMg 2 Si粒子の面積の合計(Mg 2 Si粒子の面積率)は、10%未満であることを特徴とする、溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板。
【請求項2】
前記めっき層が、合計で0.01~10質量%の、Cr、Mn、V、Mo、Ti、Ca、Ni、Co、Sb及びBのうちから選択される一種又は二種以上を、さらに含有することを特徴とする、請求項1に記載の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板のめっき層上に、直接又は中間層を介して、塗膜が形成されたことを特徴とする、塗装鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な表面外観性を有するとともに、耐食性に優れた溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板及びその製造方法、並びに、塗装鋼板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融Al-Zn系めっき鋼板は、Znの犠牲防食性とAlの高い耐食性とが両立できているため、溶融亜鉛めっき鋼板の中でも高い耐食性を示す。例えば、特許文献1には、めっき層中にAlを25~75質量%含有する溶融Al-Zn系めっき鋼板が開示されている。そして、溶融Al-Znめっき鋼板は、その優れた耐食性から、長期間屋外に曝される屋根や壁等の建材分野、ガードレール、配線配管、防音壁等の土木建築分野を中心に近年需要が伸びている。
【0003】
溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層は、主層及び下地鋼板と主層との界面に存在する合金層からなり、主層は、主としてZnを過飽和に含有しAlがデンドライト凝固した部分(α-Al相のデンドライト部分)と、残りのデンドライト間隙の部分(インターデンドライト)とから構成され、α-Al相がめっき層の膜厚方向に複数積層した構造を有する。このような特徴的な皮膜構造により、表面からの腐食進行経路が複雑になるため、腐食が容易に下地鋼板に到達しにくくなり、溶融Al-Zn系めっき鋼板はめっき層厚が同一の溶融亜鉛めっき鋼板に比べ優れた耐食性を実現できる。
【0004】
また、溶融Al-Zn系めっきのめっき層中にMgを含有させることで、耐食性のさらなる向上を目的とした技術が知られている。Mgを含有する溶融Al-Zn系めっき鋼板(溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板)に関する技術として、例えば特許文献2には、めっき層にMgを含むAl-Zn-Si合金を含み、該Al-Zn-Si合金が、45~60重量%の元素アルミニウム、37~46重量%の元素亜鉛及び1.2~2.3重量%の元素ケイ素を含有する合金であり、該Mgの濃度が1~5重量%である、Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板が開示されている。
【0005】
また、めっき層中にMgを含有させる技術として、特許文献3には、めっき層に一定量のMg及びCaを含有させることで、耐食性及び下地鋼板が露出した後の保護作用を高めることを目的とした溶融Al-Zn系めっき鋼板が開示されている。
さらに、特許文献4には、質量%で、Mg:1~15%、Si:2~15%、Zn:11~25%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる被覆層を形成し、めっき層中に存在するMg2Si相の大きさを規定することで、平板及び端面の耐食性の改善を図ったAl系めっき鋼板が開示されている。
【0006】
ただし、特許文献1や2に開示された溶融Al-Zn系めっき鋼板については、優れた耐食性を有するものの、めっき層の表面に生成される酸化物層に起因したシワ状の欠陥(以下、「シワ状欠陥」という。)が発生しやすくなり、めっき層表面の外観を損ねるという問題があった。
そのため、例えば特許文献5には、溶融Al-Zn-Mg系めっき鋼板について、めっき層中にSrを含有させることによって、表面外観性の向上を図る技術が開示されている。
また、特許文献6には、溶融Al-Zn-Mg系めっき鋼板について、めっき層中にSrを含有させることによって、加工性の向上を図る技術が開示されている。
また、特許文献7には、Al-Zn-Si-Mg合金を含むめっき浴に少なくとも250ppmのSrを添加することによって、めっき層中のMg2Si粒子の含有量を低減させ、結果として表面外観の改善を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公昭46-7161号公報
【文献】特許5020228号公報
【文献】特許5000039号公報
【文献】特開2002-12959号公報
【文献】特許3983932号公報
【文献】特許6368730号公報
【文献】特表2011-514934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、特許文献5~7のSrを含有する溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板では、表面外観性の向上が可能となっている。
しかしながら、特許文献5~7のSrを含有する溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板のようにめっき層中にSrを含有させた場合、該めっき層の表面近傍に存在するMg2Siの含有量が減少し、その結果として耐食性が低下するおそれがあった。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑み、良好な表面外観性を有するとともに、耐食性に優れた溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板及び塗装鋼板、並びに、良好な表面外観性を有するとともに、耐食性に優れた溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板及び塗装鋼板の製造方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく検討を行った結果、めっき層中にMgを含有させることによる耐食性向上効果は、めっき層の腐食時、めっき層中に存在するMg2Siが優先的に溶解し、めっき層表面に生成される腐食生成物中に溶解したMgが濃化することによって発現するため、めっき層の表面近傍に存在するMg2Siがより重要であること、並びに、Mgは電気化学的に卑な金属であることから、粒径の大きい場合には、腐食時にMgが過剰に溶出し、上述した腐食生成物の外へと流出するため、腐食生成物中のMgを濃化させることが難しいことに着目した。そして、さらに鋭意研究を重ねた結果、めっき層の表面近傍に含有されるMg2Si粒子の大きさを小さくすることによって、表面近傍に含有するMg2Si粒子からMgが過度に溶出することを抑え、腐食生成物中のMgを濃化させることが可能となること、それによって優れた耐食性についても実現できること、を見出した。
【0011】
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
1.めっき層が、Al:45~65質量%、Si:1.2~4質量%、Mg:1~6質量%及びSr:0.01~0.2質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有し、前記めっき層の表面において観察される各Mg2Si粒子の面積が、平均100μm2以下であることを特徴とする、溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板。
【0012】
2.前前記めっき層が、合計で0.01~10質量%の、Cr、Mn、V、Mo、Ti、Ca、Ni、Co、Sb及びBのうちから選択される一種又は二種以上を、さらに含有することを特徴とする、前記1に記載の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板。
【0013】
3.前記1又は2に記載の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板のめっき層上に、直接又は中間層を介して、塗膜が形成されたことを特徴とする、塗装鋼板。
【0014】
4.Al:45~65質量%、Si:1.2~4質量%、Mg:1~6質量%及びSr:0.01~0.2質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有するめっき浴に、下地鋼板を浸漬させる工程を備え、
前記めっき浴の浴温が、以下の式(1)を満足することを特徴とする、溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の製造方法。
めっき浴温(℃)≦600-4.5MMg-5.5MSi ・・・(1)
MMg:めっき浴中のMgの含有量(質量%)、MSi:めっき浴中のSiの含有量(質量%)
【0015】
5.前記めっき浴が、合計で0.01~10質量%の、Cr、Mn、V、Mo、Ti、Ca、Ni、Co、Sb及びBのうちから選択される一種又は二種以上を、さらに含有することを特徴とする、前記4に記載の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の製造方法。
【0016】
6.前記4又は5に記載の製造方法によって得られた溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の上に、直接又は中間層を介して、塗膜を形成する工程を備えることを特徴とする、塗装鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、良好な表面外観性を有するとともに、耐食性に優れた溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板及び塗装鋼板、並びに、良好な表面外観性を有するとともに、耐食性に優れた溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板及び塗装鋼板の製造方法、を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は、本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板について腐食前後の状態の一例を模式的に示した図であり、(b)は、従来の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板について腐食前後の状態を示した図である。
図2】(a)は、本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の、めっき層表面を走査電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)によって観察した際のMg2Siの状態を示した図であり、従来の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の、めっき層表面を走査電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)によって観察した際のMg2Siの状態を示したものである。
図3】デンドライトアーム間距離の測定方法を説明するための図である。
図4】日本自動車規格の複合サイクル試験(JASO-CCT)の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板)
本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板は、鋼板表面にめっき層を有する。なお、該めっき層は、下地鋼板との界面に存在する界面合金層と該合金層の上に存在する主層(以後、「めっき主層」又は「主層」ということもある。)とからなる。また、前記めっき層は、Al:45~65質量%、Si:1.2~4質量%、Mg:1~6質量%及びSr:0.01~0.2質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有する。前記溶融めっき鋼板のめっき層が、上述した組成を有することによって、良好な表面外観性及び耐食性を確保できる。
【0020】
前記めっき層中のAl含有量は、耐食性と操業面のバランスから、45~65質量%とし、好ましくは50~60質量%である。前記めっき層の主層のAl含有量が少なくとも45質量%あれば、Alのデンドライト凝固が十分に起こる。これにより、前記主層は主としてZnを過飽和に含有し、Alがデンドライト凝固した部分(α-Al相のデンドライト部分)と残りのデンドライト間隙の部分(インターデンドライト部分)からなり且つ該デンドライト部分がめっき層の膜厚方向に積層した耐食性に優れる構造を実現できる。またこのα-Al相のデンドライト部分が、多く積層するほど、腐食進行経路が複雑になり、腐食が容易に下地鋼板に到達しにくくなるので、耐食性が向上する。一方、前記めっき層中のAl含有量が65質量%を超えると、Feに対して犠牲防食作用をもつZnの含有量が少なくなり、耐食性が劣化する。このため、前記めっき層中のAl含有量は65質量%以下とする。また、前記めっき層中のAl含有量が60質量%以下であれば、めっきの付着量が少なくなり、下地鋼板が露出しやすくなった場合にもFeに対して犠牲防食作用を有し、十分な耐食性が得られる。そのため、めっき主層のAl含有量は60質量%以下とすることが好ましい。
【0021】
前記めっき層中のSiは、下地鋼板との界面に生成する界面合金層の成長を抑制する目的で、耐食性や加工性の向上を目的にめっき浴中に添加され、必然的に前記主層に含有される。本発明の溶融めっき鋼板の場合、めっき浴中にSiを含有させて溶融めっき処理を行うと、下地鋼板がめっき浴中に浸漬されると同時に、鋼板表面のFeと浴中のAlやSiが合金化反応し、Fe-Al系及び/又はFe-Al-Si系の化合物からなる合金を生成する。このFe-Al-Si系界面合金層の生成によって、界面合金層の成長を抑制することができる。そして、前記めっき層中のSi含有量が1.2質量%以上の場合には、前記界面合金層の成長を十分に抑制できる。一方、めっき層のSi含有量が、4質量%を超えた場合、めっき層において、加工性を低下させ、カソードサイトとなるSi相が析出し易くなる。このSi相の析出は、Mg含有量を増やすことで抑制できるが、その場合、製造コストの上昇や、Mg2Siの量が多くなることに起因した加工性の低下を招き、まためっき浴の組成管理をより困難にしてしまう。このため、めっき層中のSi含有量は4質量%以下とする。さらにまた、界面合金層の成長及びSi相の析出をより確実に抑制できる点や、Mg2SiとしてSiが消費された場合に対応できるという点を考慮すると、前記めっき層中のSi含有量を2~4質量%とすることが好ましく、2.3~3.5質量%とすることがより好ましい。
【0022】
前記めっき層は、Mgを1~6質量%含有する。前記めっき層の主層が腐食した際、腐食生成物中にMgが含まれることとなり、腐食生成物の安定性が向上し、腐食の進行が遅延する結果、耐食性が向上するという効果が得られる。より具体的には、前記めっき層の主層中に存在するMgは上述したSiと結合し、Mg2Siを生成する。このMg2Siは、めっき鋼板が腐食した際、初期に溶解するためMgが腐食生成物に含まれる。この腐食生成物中に含まれるMgは、腐食生成物を緻密化させる効果があり、腐食生成物の安定性及び外来腐食因子に対するバリア性を向上できる。
ここで、前記めっき層のMg含有量を1質量%以上としたのは、前記めっき層が、上述した濃度範囲でSiを含有した場合、Mg濃度を1質量%以上とすることで、Mg2Siを生成できるようになり、腐食遅延効果を得ることができるからである。同様の観点から、前記めっき層のMg含有量は、2.5質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。一方、前記めっき層のMgの含有量を6質量%以下としたのは、前記めっき層のMgの含有量が6%を超える場合、耐食性の向上効果の飽和に加え、製造コストの上昇とめっき浴の組成管理が難しくなるためである。同様の観点から、前記めっき層のMg含有量は、5質量%以下であることが好ましい。
【0023】
また、前記めっき層中のMg含有量を3質量%以上とすることで、塗装後耐食性の改善も可能となる。Mgを含まない従来の溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層が大気に触れると、α-Al相の周囲に緻密且つ安定なAl2O3の酸化膜が直ぐに形成され、この酸化膜による保護作用によってα-Al相の溶解性はインターデンドライト中のZnリッチ相の溶解性に比べ非常に低くなる。この結果、従来のAl-Zn系めっき鋼板を下地に用いた塗装鋼板は、塗膜に損傷が生じた場合、傷部を起点に塗膜/めっき界面でZnリッチ相の選択腐食を起こし、塗装健全部の奥深くに向けて進行して大きな塗膜膨れを起こすことから、塗装後耐食性が劣る。そのため、優れた塗装後耐食性を得る観点からは、前記めっき層中のMg含有量を3質量%以上とすることが好ましい。
一方、前記めっき層中にMgを含有した溶融Al-Zn系めっき鋼板を用いた塗装鋼板の場合、インターデンドライト中に析出するMg2Si相やMg-Zn化合物(MgZn2、Mg32(Al,Zn)49等)が腐食の初期段階で溶け出し、腐食生成物中にMgが取込まれる。Mgを含有した腐食生成物は非常に安定であり、これにより腐食が初期段階で抑制されるため、従来のAl-Zn系めっき鋼板を下地に用いた塗装鋼板の場合に問題となるZnリッチ相の選択腐食による大きな塗膜膨れを抑制できる。その結果、めっき層にMgを含有させた溶融Al-Zn系めっき鋼板は優れた塗装後耐食性を示す。前記めっき層中のMgが3質量%未満の場合には、腐食時に溶け出すMgの量が少なく、塗装後耐食性が向上しないおそれがある。なお、前記めっき層中のMg含有量が6質量%を超える場合には、効果が飽和するだけでなく、Mg化合物の腐食が激しく起こり、めっき層全体の溶解性が過度に上昇する結果、腐食生成物を安定化させても、その溶解速度が大きくなるため、大きな膨れ幅を生じ、塗装後耐食性が劣化するおそれがある。そのため、優れた塗装後耐食性を安定的に得るためには、前記めっき層中のMg含有量を6質量%以下とする。
【0024】
また、前記めっき層は、0.01~0.2質量%のSrを含有する。前記めっき層がSrを含有することで、シワ状欠陥の発生を抑制し、前記溶融めっき鋼板の表面外観性を向上させることができる。
前記シワ状欠陥とは、前記めっき層の表面に形成されたシワ状の凹凸になった欠陥であり、前記めっき層表面において白っぽい筋として観察される。このようなシワ状欠陥は、前記めっき層中にMgを多く添加した場合に、発生しやすくなる。そのため、前記溶融めっき鋼板では、前記めっき層中にSrを含有させることによって、前記めっき層表層においてSrをMgよりも優先的に酸化させ、Mgの酸化反応を抑制することで、前記シワ状欠陥の発生を抑えることが可能となる。
【0025】
前記めっき層中のSr含有量については、0.01質量%以上であることを要する。上述したスジ状欠陥の発生を抑制する効果を得るためである。同様の観点から、前記めっき層中のSr含有量は、0.05質量%以上であることが好ましい。一方、前記めっき層中のSr含有量については、0.2質量%以下であることを要する。Srの含有量が多くなりすぎると、シワ状欠陥発生の抑制効果が飽和するため、コスト的に不利になるためである。同様の観点から、前記めっき層中のSr含有量は、0.15質量%以下であることが好ましい。
【0026】
また、前記めっき層は、上述したMgと同様に腐食生成物の安定性を向上させ、腐食の進行を遅延させる効果を奏することができる点から、合計で0.01~10質量%の、Cr、Mn、V、Mo、Ti、Ca、Ni、Co、Sb及びBのうちから選択される一種又は二種以上を、さらに含有することが好ましい。上述した成分の合計含有量を0.01~10質量%としたのは、十分な腐食遅延効果を得ることができるとともに、効果が飽和することもないためである。
【0027】
なお、前記めっき層は、めっき処理中にめっき浴と下地鋼板の反応でめっき中に取り込まれる下地鋼板成分や、めっき浴中の不可避的不純物が含まれる。前記めっき中に取り込まれる下地鋼板成分としては、Feが数%程度含まれることがある。めっき浴中の不可避的不純物の種類としては、例えば、Fe、Cu、Zr等が挙げられる。前記めっき層中のFeについては下地鋼板から取り込まれるものと、めっき浴中にあるものとを区別して定量することはできない。不可避的不純物の総含有量は特に限定はしないが、めっきの耐食性と均一な溶解性を維持するという観点から、Feを除いた不可避的不純物量は合計で1質量%以下であることが好ましい。
【0028】
なお、前記めっき層中の界面合金層については、下地鋼板との界面に存在する層であり、上述したように、鋼板表面のFeと浴中のAlやSiが合金化反応して必然的に生成するFe-Al系及び/又はFe-Al-Si系の化合物である。この界面合金層は、硬くて脆いため、厚く成長すると加工時のクラック発生の起点となることから、本発明では、できるだけ薄くすることが好ましい。
【0029】
そして、本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板では、前記めっき層の表面において観察される各Mg2Si粒子の面積が、平均100μm2以下であることを特徴とする。
上記構成によって、表面外観性と耐食性とを、高いレベルで両立できる。
【0030】
ここで、図1(a)及び(b)は、本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板及び従来技術の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板について、それぞれの腐食前後の状態の一例を模式的に示した図である。
上述したように、前記めっき層中にMgを含有させることによる耐食性向上効果は、めっき層の腐食時、めっき層中に存在するMg2Siが優先的に溶解し、めっき層表面に生成される腐食生成物中に溶解したMgが濃化することによって発現するが、Mgは電気化学的に卑な金属であることから、表面近傍にあるMg2Si粒子が大きい場合には、腐食時にMgが過剰に溶出し、上述した腐食生成物の外へと流出するため、腐食生成物中のMgを濃化させることが困難になる。
そのため、本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板では、図1(a)に示すように、めっき層の表面近傍のMg2Si粒子を小さくする(前記めっき層の表面を観察した際の面積にして平均100μm2以下に抑える)ことによって、表面近傍のMg2SiからMgが過度に溶出することを抑え、前記腐食生成物中に含有されるMgを濃化させることが可能となる。その結果、優れた耐食性を実現できる。
一方、一般的なAl-Zn-Mg-Si系めっき層を用いた塗装鋼板では、図1(b)に示すように、腐食時にMgが過剰に溶出し、上述した腐食生成物の外へと流出する結果、腐食生成物中のMgを濃化させることができず、所望の耐食性を得ることができない。
【0031】
なお、前記めっき層の表面において観察される各Mg2Si粒子の面積は、表面外観性と耐食性とを高いレベルで両立させる観点から、平均100μm2以下とする必要があるが、同様の観点から、80μm2以下とすることが好ましい。また、前記各Mg2Si粒子の面積は、上述した腐食生成物中に溶解したMgをより確実に濃化させる観点からは、40μm2以上とすることが好ましく、50μm2以上とすることがより好ましい。
さらに、前記めっき層の表面において観察される全てのMg2Si粒子の面積の合計(Mg2Si粒子の面積率)は、10%未満であることが好ましい。
【0032】
なお、上述したMg2Siの面積(前記めっき層の表面において観察される各Mg2Si粒子の面積)の測定は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いてエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)を用いて行うことができる。
また、上述したMg2Siの面積の平均については、前記めっき層の表面を観察し、図2(a)及び(b)に示すように、SEM-EDX によってMg2Siの各粒子の状態を得ることができる。そして、観察される全てのMg2Siの粒子についてそれぞれ面積を測定し、それらの面積の平均を算出することで導出することができる。前記めっき層の表面の観察については、各Mg2Si粒子の面積の平均をより精度よく算出する観点からは、少なくとも2000μm2以上の視野で行い、さらに、任意に選択した3視野以上の平均とすることが好ましい。
【0033】
ここで、前記めっき層の主層や前記界面合金層を、走査型電子顕微鏡によって観察する際には、めっき層の断面を、研磨及び/又はエッチングした後に観察を行う。断面の研磨方法やエッチング方法はいくつか種類があるが、一般的にめっき層断面を観察する際に用いられる方法であれば特に限定はされない。また、走査型電子顕微鏡での観察及び分析の条件としては、例えば、加速電圧5~20kVで、2次電子像または反射電子像にて500~5000倍程度の倍率で行うことができる。
【0034】
また、前記めっき層の主層は、α-Al相のデンドライト部分を有し、該デンドライト部分の平均デンドライトアーム間距離と、前記めっき層の厚さとが、以下の式(1)を満足することが好ましい。
t/d≧1.5 ・・・(1)
t:めっき層の厚さ(μm)、d:平均デンドライトアーム間距離(μm)
上記(1)式を満足することで、上述したα-Al相からなるデンドライト部分のアームを相対的に小さくでき、優先的に腐食されるインターデンドライトの経路を長く確保することにより、耐食性をより向上させることができる。
【0035】
なお、前記デンドライト部分のデンドライトアーム間距離とは、隣接するデンドライトアーム間の中心距離(デンドライトアームスペーシング)のことを意味する。本発明では、例えば、図3に示すように、研磨及び/又はエッチングしためっき層主層の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて拡大観察し(例えば200倍で観察し)、無作為に選択した視野の中で、2番目に間隔の広いデンドライトアーム(2次デンドライトアーム)の間隔を以下のとおり測定する。2次デンドライトアームが3本以上整列している部分を選択し(図3では、A-B間の3本を選択している。)、アームが整列している方向に沿って距離(図3では、距離L)を測定する。その後、測定した距離をデンドライトアームの本数で除して(図3では、L/3)、デンドライトアーム間距離を算出する。当該デンドライトアーム間距離は、1つの視野の中で、3箇所以上測定し、それぞれ得られたデンドライトアーム間距離の平均を算出したものを平均デンドライトアーム間距離とする。
【0036】
なお、前記めっき層の膜厚は、加工性と耐食性とを高いレベルで両立させる観点から、10~30μmであることが好ましく、20~25μmであることがより好ましい。前記めっき層が10μm以上の場合には十分な耐食性を確保でき、前記めっき層が30μm以下の場合には加工性を十分に確保できるためである。
【0037】
(塗装鋼板)
本発明の塗装鋼板は、上述した本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板のめっき層上に、直接又は中間層を介して、塗膜が形成されたことを特徴とする。
本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板を用いることで、良好なめっき層の表面外観性を有するとともに、耐食性の向上を図ることができる。
【0038】
なお、前記塗膜の種類や、塗膜を形成する方法については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、ロールコーター塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装等の形成方法が挙げられる。有機樹脂を含有する塗料を塗装した後、熱風乾燥、赤外線加熱、誘導加熱等の手段により加熱乾燥して塗膜を形成することが可能である。
【0039】
また、前記中間層については、溶融めっき鋼板のめっき層と前記塗膜との間に形成される層であれば特に限定はされない。例えば、化成処理皮膜や、接着層等のプライマーが挙げられる。前記化成処理皮膜については、例えば、クロメート処理液又はクロムフリー化成処理液を塗布し、水洗することなく、鋼板温度として80~300℃となる乾燥処理を行うクロメート処理又はクロムフリー化成処理により形成することが可能である。これら化成処理皮膜は単層でも複層でもよく、複層の場合には複数の化成処理を順次行えばよい。
【0040】
(溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の製造方法)
次に、本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の製造方法について説明する。
本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の製造方法は、Al:45~65質量%、Si:1.2~4質量%、Mg:1~6質量%及びSr:0.01~0.2質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有するめっき浴に、下地鋼板を浸漬させる工程を備え、
前記めっき浴の浴温が、以下の式(1)を満足することを特徴とする。
めっき浴温(℃)≦600-4.5MMg-5.5MSi ・・・(1)
上述した製造方法によって得られた溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板は、良好な耐食性を有するとともに、耐食性に優れる。
【0041】
なお、本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の製造方法では、特に限定はされないが、製造効率や品質の安定性の観点から、連続式溶融めっき設備が通常採用される。
なお、本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板に用いられる下地鋼板の種類については、特に限定はされない。例えば、酸洗脱スケールした熱延鋼板若しくは鋼帯、又は、それらを冷間圧延して得られた冷延鋼板若しくは鋼帯を用いることができる。また、前記前処理工程及び焼鈍工程の条件についても特に限定はされず、任意の方法を採用することができる。
【0042】
本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の製造方法では、前記めっき浴が、Al:45~65質量%、Si:1.2~4質量%、Mg:1~6質量%及びSr:0.01~0.2質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有する。
これによって、所望の組成の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板を得ることができる。なお、前記めっき浴中に含有される各元素の種類や、含有量、作用については、上述した本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の中で説明されている。
【0043】
なお、本発明の製造方法により得られた溶融めっき鋼板は、全体としてはめっき浴の組成とほぼ同等となる。そのため、前記主層の組成の制御は、めっき浴組成を制御することにより精度良く行うことができる。
【0044】
本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の製造方法では、前記めっき浴に下地鋼板を浸漬させる工程を備え、前記めっき浴の浴温が、以下の式(1)を満足することを特徴とする。
めっき浴温(℃)≦600-4.5MMg-5.5MSi ・・・(1)
【0045】
上述したように、めっき層の表面外観性及び耐食性を高いレベルで両立させるためには、シワ状欠陥の発生を抑制しつつ、めっき層の表面近傍のMg2Si粒子の大きさを小さくする(具体的には、前記めっき層の表面において観察される各Mg2Si粒子の面積を平均100μm2以下とする)ことが重要である。そのため、本発明の製造方法では、溶融めっきに用いるめっき浴の組成について適正化を図るとともに、浴温について、上記式(1)を満足させることによって、凝固までに要する時間が短縮し、Mg2Siが大粒径となることを抑制できるため、前記めっき層の表面において観察される各Mg2Si粒子の面積を平均100μm2以下とすることが可能となる。その結果、シワ状欠陥の発生を抑えることができるとともに、耐食性を高いレベルで維持できる。
さらに、本発明の製造方法では、めっき浴の浴面近傍の酸化物(トップドロス)及びめっき浴の浴中又は底部に偏在する鉄を含んだ金属間化合物(ボトムドロス)は、めっき浴の浴温が高い程発生しやすい傾向にあることから、めっき浴の浴音について上記式(1)を満足させることによって、前記トップドロス及び前記ボトムドロスの発生を抑えることが可能となり、これらのドロスに起因した欠陥の発生についても抑制が可能となり、外観表面性をより高めることができる。
【0046】
さらに、前記めっき浴の浴温は、得られた溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の表面外観性及び耐食性をより高いレベルで両立させる観点から、以下の式(2)を満たすことが好ましい。
めっき浴温(℃)≦580-4.5MMg-5.5MSi ・・・(2)
なお、前記めっき浴の浴温は、含有成分の融点に10℃加算した温度(めっき浴の融点+10℃)であることが好ましい。含有成分の溶融状態を確実に保持し、形成された溶融めっき層の表面外観性を高いレベルで維持するためである。
(塗装鋼板の製造方法)
本発明の塗装鋼板の製造方法は、上述した本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の製造方法によって得られた溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板の上に、直接又は中間層を介して、塗膜を形成する工程を備えることを特徴とする。
本発明の溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板を用いることで、良好なめっき層の表面外観性を有するとともに、耐食性を向上できる。
【0047】
なお、本発明の製造方法では、得られた溶融めっき鋼板上に、直接又は中間層を介して、厚さが20μm以下の塗膜を形成する工程をさらに備える。
なお、前記塗膜を形成する方法については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、ロールコーター塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装等の形成方法が挙げられる。有機樹脂を含有する塗料を塗装した後、熱風乾燥、赤外線加熱、誘導加熱等の手段により加熱乾燥して塗膜を形成することが可能である。
【0048】
また、前記中間層については、溶融めっき鋼板のめっき層と前記塗膜との間に形成される層であれば特に限定はされない。前記中間層の種類や形成方法については、本発明の塗装鋼板の中で説明した内容と同様である。
【実施例
【0049】
(サンプル1~48)
常法で製造した板厚0.5mmの冷延鋼板を下地鋼板として用い、連続式溶融めっき設備において、溶融めっき鋼板のサンプル1~48を製造した。なお、製造に用いためっき浴の組成については表1に示す各サンプルのめっき層の組成とほぼ同じであり、測定されためっき浴の浴温、算出された式(1)の右辺(600-4.5MMg-5.5MSi)の値、並びに、得られためっき層の表面において観察される各Mg2Si粒子の面積の平均値については表1に示す。
【0050】
(評価)
上記のように得られた溶融めっき鋼板及び塗装の各サンプルについて、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0051】
(1)耐食性評価
得られた溶融めっき鋼板の各サンプルについて、日本自動車規格の複合サイクル試験(JASO-CCT)を行った。JASO-CCTについては、図4に示すように、特定の条件で、塩水噴霧、乾燥及び湿潤を1サイクルとした試験である。
各サンプルに赤錆が発生するまでのサイクル数を測定し、以下の基準に従って評価した。
◎:赤錆発生サイクル数≧600サイクル
○:赤錆発生サイクル数≧400サイクル
△:300サイクル≦赤錆発生サイクル数<400サイクル
×:赤錆発生サイクル数<300サイクル
【0052】
(2)表面外観性
得られた溶融めっき鋼板の各サンプル(長さ650mm×幅914mm)について、目視によって、めっき層の表面(各サンプルの両面)を観察した。
そして、観察結果を、以下の基準に従って評価した。
○:表面及び裏面のいずれについても、シワ状欠陥が全く観察されなかった
△:表面及び裏面のうちの少なくとも一方に、不明瞭なシワ状欠陥が観察された
×:表面及び裏面のうちの少なくとも一方に、明瞭なシワ状欠陥が観察された
【0053】
【表1】
【0054】
表1の結果から、本発明例の各サンプルは、比較例の各サンプルに比べて、耐食性及びめっき層の表面外観性のいずれについてもバランスよく優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、良好な表面外観性を有するとともに、耐食性に優れた溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板及び塗装鋼板、並びに、良好な表面外観性を有するとともに、耐食性に優れた溶融Al-Zn-Mg-Si系めっき鋼板及び塗装鋼板の製造方法、を提供できる。
図1
図2
図3
図4