(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】アルミニウム建材
(51)【国際特許分類】
C25D 11/20 20060101AFI20240905BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240905BHJP
B32B 15/01 20060101ALI20240905BHJP
E04B 1/92 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C25D11/20 304B
B32B9/00 A
B32B15/01 F
E04B1/92
(21)【出願番号】P 2020045174
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】大室 傑
【審査官】黒木 花菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-007158(JP,A)
【文献】特開2016-060890(JP,A)
【文献】特開2007-246932(JP,A)
【文献】国際公開第2005/019358(WO,A1)
【文献】特開2011-214055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/92
B32B 15/01
B32B 9/00
C25D 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム素地と、
前記アルミニウム素地の表面に形成された陽極酸化皮膜と、
前記陽極酸化皮膜の上に形成された、白色顔料を含有する電着塗膜と、を有し、
前記電着塗膜は、厚みが20~30μmであり、含有する前記白色顔料の濃度が30~40phrであり、
明度のL値が92以上であ
り、
前記白色顔料は、主要処理剤がAl,Si,Znである硫酸法ルチル型酸化チタンであることを特徴とするアルミニウム建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム建材に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量で強度が高く、耐食性にも優れるアルミニウムは、住宅の窓枠やエクステリア等の建材に広く使用されている。また、アルミニウムの表面に塗料を塗布することで、意匠性を高めた建材も多く使用されている。例えば、陽極酸化処理したアルミニウムに着色を施す塗料として、白色艶消し電着塗料組成物が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、商品性向上の観点から、白色系の新たな外観が付与されたアルミニウム建材が求められている。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、白色系の新たな外観が付与されたアルミニウム建材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のアルミニウム建材は、アルミニウム素地と、アルミニウム素地の表面に形成された陽極酸化皮膜と、陽極酸化皮膜の上に形成された、白色顔料を含有する電着塗膜と、を有する。電着塗膜は、厚みが20~30μmであり、含有する白色顔料の濃度が30~40phrである。アルミニウム建材は、明度のL値が92以上である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施の形態に係るアルミニウム建材の縦断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0009】
図1は、本実施の形態に係るアルミニウム建材の縦断面を模式的に示した図である。
図1に示すアルミニウム建材10は、アルミニウム素地12と、アルミニウム素地12の表面に形成された陽極酸化皮膜14と、陽極酸化皮膜14の上に電着塗装により形成された電着塗膜16と、を有する。電着塗膜16は、白色顔料18である酸化チタンが分散された樹脂層20である。
【0010】
陽極酸化皮膜14は、アルミニウム素地を陽極として硫酸浴中で電気分解をすることで、アルミニウム素地表面から酸素が発生すると同時に、アルミニウムが酸素と結びつき、生成された酸化アルミニウムの膜である。陽極酸化処理で生成した皮膜は、1~20nm程度の微細な孔を持つ多孔質皮膜である。
【0011】
電着塗膜16は、陽極酸化皮膜14が生成されたアルミニウム材を電着塗料槽内に浸漬し、電圧を印加して、電気泳動現象によりアルミニウム材表面に塗料樹脂を析出させる方法である。これにより、艶消しのホワイト色を有するアルミニウム建材を実現できる。
【0012】
電着塗膜16の厚みは、アルミニウム建材10を加工(例えば、絞り加工、曲げ加工)する際の加工性の観点から30μm以下の薄い膜が好ましい。一方、電着塗膜16が薄いと、含有する白色顔料18の量が制限され、高い明度が得られない。そのため、電着塗膜16の厚みは、少なくとも14μm以上、より好ましくは16μm以上、更により好ましくは20μm以上であるとよい。
【0013】
樹脂層20の組成は、電着塗装が可能な樹脂であって、白色顔料を含有できる透明樹脂が好ましい。例えば、アクリル樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等であってもよい。
【0014】
(明度)
表1は、電着塗膜の厚み及び白色顔料濃度と、明度との関係を示している。なお、明度は、色彩色差計CR-400(コニカミノルタ製)によって測定した結果であり、表1の「A」はL値92以上、「B」はL値90以上、「C」はL値90未満を意味する。
【0015】
【0016】
表1に示すように、顔料濃度が高ければ高いほど、厚みが厚ければ厚いほど、L値が大きくなる傾向にある。特に、電着塗膜16の厚みが20~30μm、含有する白色顔料としての酸化チタンの濃度が30~40phrであれば、L値が92以上の明度が得られる。
【0017】
(耐候性)
次に、顔料種と顔料濃度が耐候性に与える影響について説明する。表2は、顔料種及び顔料濃度と、耐候性との関係を示している。耐候性は、促進耐候性及び耐チョーキングの2つの手法で評価した。
【0018】
(促進耐候性)
促進耐候性の試験は、サンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機(SWOM)を用い、JIS B 7753に記載された手法、条件に則り、試験経過1500時間の光沢を測定した。使用した光沢計は、村上色彩技術研究所製のGMX-102である。判定基準は、試験経過後のサンプルの光沢が試験前のサンプルの光沢の75%以上を保持した場合、表2に「A」と示す。一方、試験経過後のサンプルの光沢が試験前のサンプルの光沢の75%未満の場合、表2に「C」と示す。
【0019】
(耐チョーキング(白亜化度)性能)
耐チョーキング性能の試験は、塗膜を沖縄(宮古島)にて2年暴露し、JIS-K5600-8-6の手法に則って評価した。粘着テープの一片を塗膜の上に貼り、強く押しつけた後、テープを塗膜表面と垂直に剥がし、テープに付着している付着物(白亜化物)の量を所定の標準図版と比較して評価した。判定基準は、白亜化度3未満のものを表2に「A」と示し、白亜化度3以上のものを表2に「C」と示す。
【0020】
【0021】
なお、表2に示す顔料種Xは、硫酸法酸化チタン(ルチル型)であるタイペックR-820(石原産業株式会社製)であり、主要処理剤がAl,Si,Znである。また、顔料種Yは、硫酸法酸化チタン(ルチル型)であるタイペックR-550(石原産業株式会社製)であり、主要処理剤がAl,Siである。
【0022】
表2に示すように、顔料種X、顔料濃度が30~40phrである実施例1,2に係る電着塗膜は、促進耐候性及び耐チョーキング性能のいずれも「A」であり、耐候性が良好であることがわかる。
【0023】
一方、顔料種X、顔料濃度が50phrである比較例1に係る電着塗膜は、促進耐候性及び耐チョーキング性能のいずれも「C」であり、顔料濃度が所定値よりも高いと所望の耐候性が得られないことがわかる。また、顔料種Y、顔料濃度が20phrである比較例2に係る電着塗膜は、促進耐候性は「A」であるものの、耐チョーキング性能は「C」であり、実施例1,2よりも耐候性が劣る。また、顔料濃度が低すぎると所定の明度が得られない。
【0024】
顔料種Y、顔料濃度が30phrである比較例3に係る電着塗膜は、促進耐候性及び耐チョーキング性能のいずれも「C」であり、顔料濃度が実施例1と同等でも、顔料種が異なることで、所望の耐候性が得られないことがわかる。
【0025】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0026】
10 アルミニウム建材、 12 アルミニウム素地、 14 陽極酸化皮膜、 16 電着塗膜、 18 白色顔料、 20 樹脂層。