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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】排ガス脱硝装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20240905BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240905BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20240905BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N3/24 C
F01N5/02 Z
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 400
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020059391
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021156250
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小玉 哲男
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-503729(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0360170(US,A1)
【文献】特開2017-47404(JP,A)
【文献】特開2014-66219(JP,A)
【文献】特開2013-181467(JP,A)
【文献】特表2013-531166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0152767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の容器と、
前記容器内を前記容器の軸心方向と直交する方向に2つに区画したうちの一方が、前記容器の前記軸心方向の一端側から前記軸心方向の途中まで延びてなり、エンジンの複数の排気ポートから延びる複数の通路が接続されてエンジンの排ガスが流入する複数の流入部が前記軸心方向に並んで設けられ、触媒が配置されておらず、前記流入部から流入する排ガスと還元剤とが混合される混合室と、
前記2つに区画したうちの他方が、前記容器の前記軸心方向の一端側から前記軸心方向の途中まで延びてなり、前記混合室から流入した排ガスが通過する触媒が設けられた前段側反応室と、
前記容器内の前記軸心方向の他端側に形成され、前記軸心方向と直交する断面の面積が、前記前段側反応室の前記軸心方向と直交する断面の面積よりも大きく形成され、前記前段側反応室から流入した排ガスが通過する触媒が設けられた後段側反応室とを備えている
ことを特徴とする排ガス脱硝装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス脱硝装置において、
前記後段側反応室は、前記前段側反応室の前記軸心方向の他端側と連通しており、
前記前段側反応室の前記他端側は、前記後段側反応室にいくに従って漸次拡がっている
ことを特徴とする排ガス脱硝装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排ガス脱硝装置において、
前記前段側反応室の触媒は、前記軸心方向に所定の間隔を置いて複数配置されている
ことを特徴とする排ガス脱硝装置。
【請求項4】
請求項1に記載の排ガス脱硝装置において、
前記後段側反応室の触媒は、前記容器における前記軸心方向と直交する断面の略全体に設けられている
ことを特徴とする排ガス脱硝装置。
【請求項5】
筒状の容器と、
前記容器内を前記容器の軸心方向と直交する方向に2つに区画したうちの一方が、前記容器の前記軸心方向の一端側から前記軸心方向の途中まで延びてなり、エンジンの排ガスが流入し還元剤と混合される混合室と、
前記2つに区画したうちの他方が、前記容器の前記軸心方向の一端側から前記軸心方向の途中まで延びてなり、前記混合室から流入した排ガスが通過する触媒が設けられた前段側反応室と、
前記容器内の前記軸心方向の他端側に形成され、前記軸心方向と直交する断面の面積が、前記前段側反応室の前記軸心方向と直交する断面の面積よりも大きく形成され、前記前段側反応室から流入した排ガスが通過する触媒が設けられた後段側反応室と、
前記混合室よりも前記軸心方向の他端側に配置され、前記混合室と連通し、隔壁を介して前記後段側反応室と仕切られた予熱空間とを備え、
前記後段側反応室における前記触媒は、前記隔壁に隣接して配置され、前記予熱空間の排ガスによって予熱される
ことを特徴とする排ガス脱硝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、排ガスを脱硝する排ガス脱硝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に開示されているように、ディーゼルエンジンから排出された排ガス中の窒素酸化物(NOx)を無害化する技術が提案されている。この特許文献1に開示のものは、排気管(排気ガス受け)と、排気管の下流側に設けられたSCRリアクターと、排気管内に還元剤を噴霧する噴射弁とを備えている。この特許文献1に開示のものでは、エンジンの排ガスが排気管に集合し、還元剤と混合される。還元剤と混合された排ガスは、排気管から排出され、SCRリアクターに流入する。SCRリアクターでは、脱硝触媒下で、排ガス中のNOxが還元剤と反応(脱硝反応)して還元除去される。これにより、NOxは無害化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5878860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示のものでは、排気管、SCRリアクターおよびこれらを接続する接続配管を含む排ガス脱硝装置全体をエンジン室内で引き回すため、設置スペースが嵩張ってしまうことから、特に狭いエンジン室においては配置が困難になる場合がある。この配置の困難性を緩和するために、接続配管の管径を小さくして容積を減少させることが考えられるが、その場合は、排ガス脱硝装置全体の圧力損失が増加してしまい、エンジンの運転に制限や支障を来す虞がある。
【0005】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、排ガス脱硝装置全体の圧力損失増加を生じさせることなく、設置スペースを削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の排ガス脱硝装置は、容器と、混合室と、前段側反応室と、後段側反応室とを備えている。前記容器は、筒状のものである。前記混合室は、前記容器内を前記容器の軸心方向と直交する方向に2つに区画したうちの一方が、前記容器の前記軸心方向の一端側から前記軸心方向の途中まで延びてなるものである。前記混合室は、エンジンの排ガスが流入し還元剤と混合されるものである。前記前段側反応室は、前記2つに区画したうちの他方が、前記容器の前記軸心方向の一端側から前記軸心方向の途中まで延びてなるものである。前記前段側反応室は、前記混合室から流入した排ガスが通過する触媒が設けられているものである。前記後段側反応室は、前記容器内の前記軸心方向の他端側に形成され、前記軸心方向と直交する断面の面積が、前記前段側反応室の前記軸心方向と直交する断面の面積よりも大きく形成されている。前記後段側反応室は、前記前段側反応室から流入した排ガスが通過する触媒が設けられているものである。
【発明の効果】
【0007】
本願の排ガス脱硝装置によれば、装置全体の圧力損失増加を生じさせることなく、設置スペースを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る排ガス脱硝装置が設けられた舶用ディーゼルエンジンの設備の概略構成を示す配管系統図である。
図2図2は、実施形態に係る排ガス脱硝装置の概略構成を示す図である。
図3図3は、図2におけるA-A線の断面図である。
図4図4は、図2におけるB-B線の断面図である。
図5図5は、実施形態の変形例に係る排ガス脱硝装置の概略構成を示す図である。
図6図6は、図5におけるC-C線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0010】
本実施形態の排ガス脱硝装置10は、例えば4気筒の2ストローク舶用ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという。)の設備に設けられている。排ガス脱硝装置10は、エンジン1から排出された排ガス中の窒素酸化物(以下、「NOx」という。)を、脱硝触媒下で還元剤と脱硝反応させて無害化するものである。
【0011】
図1に示すように、エンジン1(舶用ディーゼルエンジン)は、各気筒(シリンダ)で発生した排ガスが排出される4つの排気ポート1aを有している。排気ポート1aには、排気通路2が接続されており、排気通路2に本実施形態の排ガス脱硝装置10が設けられている。具体的に、4つの排気ポート1aにはそれぞれ、排気通路2の一部を構成する上流側通路3が接続されている。
【0012】
なお、エンジン1の気筒の数量および排気ポート1aの数量は上述したものに限られない。
【0013】
排ガス脱硝装置10には、4つの上流側通路3が接続されている。つまり、エンジン1の排気ポート1aと排ガス脱硝装置10とは4つの上流側通路3を介して接続されている。また、排ガス脱硝装置10には、排気通路2の一部を構成する下流側通路4が接続されている。下流側通路4には、ターボチャージャー5が設けられている。
【0014】
ターボチャージャー5は、タービン6およびコンプレッサ7を有している。タービン6には上述した下流側通路4が接続されており、コンプレッサ7には給気通路8が接続されている。コンプレッサ7は、下流側通路4(排気通路2)の排ガスがタービン6に流れることによって回転駆動される。コンプレッサ7は、回転駆動されることにより、給気通路8から供給された空気を圧縮する。こうして圧縮された空気は、給気通路8を介してエンジン1の4つの給気ポート(図示省略)に供給される。
【0015】
〈排ガス脱硝装置〉
本実施形態の排ガス脱硝装置10の構成について、図2図4も参照しながら詳細に説明する。排ガス脱硝装置10は、容器11と、容器11内に設けられる混合室20および反応室25とを備えている。排ガス脱硝装置10は、排ガスを還元剤と混合させる部分と、還元剤と混合した排ガスを脱硝する部分とを一つの容器11内に設けたものである。
【0016】
図2に示すように、容器11は、耐圧容器であり、両端が閉塞された筒状に形成されている。容器11は、例えばエンジン1の上に設けられており、軸心Xが水平方向に延びる状態で設けられている。つまり、容器11は、水平方向に延びる円筒状に形成されている。なお、容器11は、軸心Xが鉛直方向に延びる状態で設けられてもよい。
【0017】
容器11には、複数(本実施形態では、4つ)の流入部12と、1つの排出部13とが設けられている。流入部12は、上流側通路3が接続されており、エンジンの排ガスが容器11内(混合室20)に流入するものである。排出部13は、下流側通路4が接続されており、容器11内(反応室25)の排ガスが下流側通路4に排出されるものである。
【0018】
混合室20は、容器11内を容器11の軸心X方向と直交する方向(即ち、容器11の径方向)に2つに区画したうちの一方が、容器11の軸心X方向の一端側(図2において左側の端部)から軸心X方向の途中まで延びてなる空間である。混合室20は、エンジンの排ガスが流入し還元剤と混合される空間である。
【0019】
反応室25は、互いに連通する前段側反応室26および後段側反応室27を有している。
【0020】
前段側反応室26は、容器11内を容器11の軸心X方向と直交する方向(即ち、容器11の径方向)に2つに区画したうちの他方が、容器11の軸心X方向の一端側(図2において左側の端部、以下、容器11の一端側ともいう)から軸心X方向の途中まで延びてなる空間である。前段側反応室26は、混合室20から流入した排ガスが通過する触媒28が設けられた空間である。
【0021】
後段側反応室27は、容器11内の軸心X方向の他端側(図2において右側の端部、以下、容器11の他端側ともいう)に形成された空間である。後段側反応室27は、横断面(軸心X方向と直交する断面)の面積が、前段側反応室26の横断面の面積よりも大きく形成されている。後段側反応室27は、前段側反応室26から流入した排ガスが通過する触媒29が設けられた空間である。
【0022】
具体的には、容器11の内部は、隔壁15,16によって混合室20と反応室25(前段側反応室26、後段側反応室27)とに区画されている。混合室20、前段側反応室26および後段側反応室27は、排ガスが順に通過する排ガスの通路として構成されている。
【0023】
隔壁15は、容器11内における径方向中央に設けられ、軸心Xに沿って延びる板状のものである。隔壁15は、容器11の軸心X方向の一端側から軸心X方向の途中まで延びている。
【0024】
隔壁15は、容器11の内部を、軸芯X方向と直交する方向(容器11の径方向)において混合室20と前段側反応室26とに区画している。より詳しくは、隔壁15は、容器11における軸心X方向の一端側から軸心X方向の途中までの内部を上下に区画している。隔壁15によって区画された上側の空間は混合室20となっており、下側の空間は前段側反応室26となっている。
【0025】
隔壁16は、軸心X方向の途中まで延びた隔壁15の端部(図2において右側の端部)から上方へ向かって延びる板状のものである。隔壁16は、容器11の内周面(容器11の円筒部の内面)に接するまで延びている。隔壁16は、混合室20の一端(上流端)を閉塞している。
【0026】
こうして区画された混合室20は、容器11の一端側から水平方向に延びて形成されている。混合室20は、図2において右側の端部が上流端であり、図2において左側の端部が下流端である。混合室20の下流端は、連通路22を介して前段側反応室26と連通している。連通路22は、隔壁15を容器11の一端側の内面と所定の間隔を置いて設けることで形成されている。
【0027】
混合室20には、4つの流入部12が位置している。4つの流入部12は、容器11の側部に設けられており、軸心X方向に沿って順に配列されている。つまり、流入部12は、混合室20が延びる方向に配列されている。混合室20では、流入部12から排ガスが流入する。
【0028】
図3に示すように、流入部12は、管状に形成され、容器11を貫通している。流入部12は、径が内方端にいくに従って大きくなる円錐形状に形成されている。流入部12は、内方端の開口軸X1が水平に延びる状態で設けられている。
【0029】
排ガス脱硝装置10は、混合室20に設けられるノズル21を備えている。ノズル21は、混合室20の排ガス中に、還元剤および還元剤前駆体の少なくとも一方を噴霧するものである。具体的に、ノズル21は、混合室20における上流端の近傍に設けられ、下流端側へ向かって還元剤等を噴霧する。
【0030】
ノズル21は、反応室25において脱硝反応が行われるために必要なアンモニア等の還元剤を、混合室20の排ガス中に供給する役割を有している。しかしながら、アンモニア水は慎重な管理が要求される。そのため、本実施形態では、ノズル21に供給管を介して接続されたタンク(図示省略)に、還元剤前駆体としての尿素が水溶液の状態で貯蔵されている。
【0031】
そして、本実施形態では、ノズル21によって尿素水を混合室20の排ガス中に噴霧し、排ガスの高温熱を利用して尿素を加水分解しアンモニアを発生させるようにしている。つまり、本実施形態のノズル21は還元剤前駆体である尿素の水溶液を噴霧する。こうして、混合室20では、排ガスが還元剤(アンモニア)と混合される。
【0032】
隔壁15によって区画された前段側反応室26は、混合室20と同様、容器11の一端側から水平方向に延びて形成されている。前段側反応室26は、図2において左側の端部が上流端であり、図2において右側の端部が下流端である。前段側反応室26の一端側(上流端)は、連通路22を介して混合室20と連通している。
【0033】
前段側反応室26には、ユニット化された複数の触媒28が設けられている。複数の触媒28は、前段側反応室26が延びる方向に順に配置されている。つまり、複数の触媒28は、軸心X方向に所定の間隔を置いて配置されている。触媒28は、前段側反応室26における横断面の略全体に亘って設けられている(図3参照)。
【0034】
触媒28には、脱硝触媒および加水分解触媒の少なくとも一方が用いられる。つまり、複数の触媒28は、全てが脱硝触媒であってもよいし、全てが加水分解触媒であってもよいし、または、脱硝触媒と加水分解触媒とが混在していてもよい。脱硝触媒と加水分解触媒とが混在する場合、上流側の触媒28には加水分解触媒が用いられ、下流側の触媒28には脱硝触媒が用いられる。
【0035】
前段側反応室26は、混合室20からの排ガスが脱硝触媒を通過することで、主として、排ガスの脱硝反応が行われるように構成されている。つまり、前段側反応室26の脱硝触媒下では、排ガス中のNOxが還元剤と反応して還元除去される。
【0036】
また、前段側反応室26は、混合室20からの排ガスが加水分解触媒を通過することで、主として、尿素(還元剤前駆体)の加水分解反応が行われるように構成されている。つまり、前段側反応室26の加水分解触媒下では、混合室20および連通路22において加水分解し切れなかった尿素が加水分解されてアンモニア(還元剤)になる。
【0037】
後段側反応室27は、容器11の他端側に形成されている。後段側反応室27は、容器11の横断面(軸心X方向と直交する断面)の全体に亘って形成されている。つまり、後段側反応室27の通路断面積は、前段側反応室26の通路断面積よりも大きい。後段側反応室27は、前段側反応室26の他端側(下流端)と連通している。
【0038】
後段側反応室27には、ユニット化された触媒29が設けられている。この触媒29は、図4に示すように、後段側反応室27における横断面の略全体に亘って設けられている。触媒29には、脱硝触媒が用いられる。
【0039】
後段側反応室27には、排出部13が位置している。排出部13は、容器11の他端に設けられており、後段側反応室27に開口する排出口である。排出部13は、軸心Xと同軸に設けられている。
【0040】
後段側反応室27は、前段側反応室26からの排ガスが脱硝触媒を通過することで、排ガスの脱硝反応が行われ、その後、排ガスが排出部13から排出されるように構成されている。つまり、後段側反応室27では、排ガス中のNOxが還元剤と反応して還元除去され、その後の排ガスが排出される。
【0041】
また、前段側反応室26の他端側(下流端)は、後段側反応室27にいくに従って漸次拡がっている。具体的には、隔壁16は、隔壁15の端部から容器11の内周面にいくに従って、容器11の他端側へ傾く傾斜壁となっている。こうすることで、前段側反応室26からの排ガスを、後段側反応室27における上部へ案内される。つまり、前段側反応室26からの排ガスが後段側反応室27の通路全体(即ち、触媒29の全体)に満遍なく流れる。
【0042】
脱硝触媒としては、SCR(Selective Catalytic Reduction:選択触媒還元)触媒が用いられている。SCR触媒は、排ガス中のNOxを還元剤と選択的に還元反応させる。SCR触媒としては、例えばアルミナ、ジルコニア、バナジア等の金属酸化物系触媒やゼオライト系触媒など所望の触媒を使用することができ、これらの触媒を組み合わせてもよい。
【0043】
〈動作〉
上記のように構成された排ガス脱硝装置10の動作について説明する。排ガス脱硝装置10では、エンジン1の各排気ポート1aから排出された排ガスが、上流側通路3および流入部12を介して容器11内の混合室20に流入(集合)する。その際、流入部12は内方端にいくに従って径が大きくなる円錐形状に形成されているため、排ガスは混合室20の広範にわたって流入する。
【0044】
流入部12から混合室20に流入した排ガスは、ノズル21から噴霧された尿素水と混合される。そして、尿素水は、排ガスの高温熱を利用して、下記の式(1)に示すように加水分解され、還元剤としてのアンモニアガス(NH)が発生する。
(NHCO + HO → 2NH + CO ・・・・式(1)
【0045】
混合室20で発生したアンモニアガスは排ガスと共に、混合室20から連通路22を介して、前段側反応室26および後段側反応室27の順に通過する(図2に示す太線の矢印参照)。前段側反応室26および後段側反応室27の脱硝触媒下では、排ガス中のNOxがアンモニアガスと反応して還元除去される。具体的には、排ガス中のNOxとアンモニアガスとの間に下記の式(2)および式(3)に示すような脱硝反応が行われ、NOxは窒素と水に分解されて無害化される。
4NH + 4NO + O → 4N + 6HO ・・・・式(2)
2NH + NO + NO → 2N + 3HO ・・・・式(3)
【0046】
なお、前段側反応室26に加水分解触媒が設けられている場合、その加水分解触媒下で、上記の式(1)に示すように、尿素水が加水分解される。
【0047】
こうして、反応室25(前段側反応室26および後段側反応室27)においてNOxが除去された排ガスは、排出部13から下流側通路4に排出され、タービン6に供給される。
【0048】
以上のように、上記実施形態の排ガス脱硝装置10では、混合室20と反応室25(前段側反応室26および後段側反応室27)とが1つの容器11内に設けられている。そのため、排気管とSCRリアクターとを接続配管によって接続する従来の形態に比べて、装置全体の小型化を図ることができ、設置スペースを削減することができる。
【0049】
さらに、上記実施形態の反応室25は、容器11内を容器11の軸心X方向と直交する方向(容器11の径方向)に2つに区画したうちの一方が容器11の軸心X方向の一端側から軸心X方向の途中まで延びてなる前段側反応室26に加え、容器11内の軸心X方向の他端側において横断面が前段側反応室26よりも大きい後段側反応室27を有している。
【0050】
上記の構成によれば、反応室25の一部として、排ガスの通路断面積が大きい後段側反応室27を設けることができる。つまり、排ガスの圧力損失を低減し得る後段側反応室27を設けることができる。そのため、通路断面積をそれ程大きく稼げない前段側反応室26において圧力損失が増加するものの、反応室25全体としての圧力損失は従来形態の同等以下に抑えることができる。
【0051】
このように、上記実施形態の排ガス脱硝装置10によれば、装置全体として、圧力損失の増加を生じさせることなく、設置スペースを削減することができる。
【0052】
また、上記実施形態の排ガス脱硝装置10において、前段側反応室26の他端側(下流端)は、後段側反応室27にいくに従って漸次拡がっている。
【0053】
上記の構成によれば、前段側反応室26の他端側は後段側反応室27の下部に連通しているところ、前段側反応室26からの排ガスを後段側反応室27の全体(即ち、触媒29の全体)に満遍なく流すことができる。そのため、後段側反応室27における脱硝反応を効果的に行うことができる。
【0054】
また、上記実施形態の排ガス脱硝装置10において、前段側反応室26の触媒28は、容器11の軸心X方向に所定の間隔を置いて複数配置されている。
【0055】
上記の構成によれば、脱硝触媒28のメンテナンス時に、脱硝触媒28を軸心X方向に取り出しおよび取り付けが容易となる。
【0056】
また、上記実施形態の排ガス脱硝装置10において、後段側反応室27の触媒29は、容器11における軸心X方向と直交する断面の略全体に設けられている。
【0057】
上記の構成によれば、後段側反応室27において触媒29の量を稼ぐことができるので、その分、前段側反応室26における触媒28の量を低減することができる。そうすると、前段側反応室26において、触媒28を通過することによって生じる圧力損失を低減することができる。
【0058】
(実施形態の変形例)
本変形例の排ガス脱硝装置10は、上記実施形態において混合室および後段側反応室の構成を図5および図6に示すように変更したものである。ここでは、上記実施形態と異なる点について説明する。
【0059】
容器11の内部は、隔壁15,17,18によって混合室20と反応室25(前段側反応室26、後段側反応室31)とに区画されている。
【0060】
本変形例の混合室20は、上記実施形態の混合室において、予熱空間20aが追加されたものである。つまり、予熱空間20aは混合室20の一部として形成されている。予熱空間20aは、後述する後段側反応室31の触媒32を予熱するための空間である。
【0061】
予熱空間20aは、上記実施形態の混合室の上流端から容器11の他端側(即ち、後段側反応室31側)へ張り出した空間である。予熱空間20aは、後段側反応室31の上部に位置し、軸心Xに沿って延びている。予熱空間20aは、後段側反応室31の軸心X方向に亘って形成されている。予熱空間20aの横断面(軸心X方向と直交する断面)の面積は、上記実施形態の混合室の横断面の面積よりも小さい。
【0062】
本変形例の後段側反応室31は、上記実施形態と同様、容器11内の軸心X方向の他端側(図5において右側の端部)に形成され、横断面(軸心X方向と直交する断面)の面積が、前段側反応室26の横断面の面積よりも大きい。後段側反応室31には、上記実施形態と同様、ユニット化された脱硝触媒である触媒32が設けられている。この触媒32は、図6に示すように、後段側反応室31における横断面の略全体に亘って設けられている。
【0063】
隔壁15は、上記実施形態と同様である。隔壁17は、軸心X方向の途中まで延びた隔壁15の端部(図5において右側の端部)から上方へ向かって延びる板状のものである。隔壁17は、容器11の内周面の手前まで延びており、容器11の内周面とは接していない。隔壁17は、上記実施形態と同様、隔壁15の端部から容器11の内周面にいくに従って、容器11の他端側(図5において右側の端部)へ傾く傾斜壁となっている。
【0064】
隔壁18は、容器11の内周面の手前まで延びた隔壁17の端部(図5において上側の端部)から容器11の他端側へ向かって延びる板状のものである。隔壁18は、軸心Xに沿って延びている。隔壁18は、容器11の内部を、軸芯X方向と直交する方向(容器11の径方向)において予熱空間20aと後段側反応室31とに区画している。
【0065】
こうして区画された後段側反応室31では、例えばエンジン1の運転開始時に、予熱空間20aに流入した排ガスの高温熱によって触媒32が予熱される。つまり、触媒32は、隔壁18を介して予熱空間20aと接しているので、予熱空間20aの排ガスの高温熱によって効果的に加熱される。そのため、触媒32を脱硝反応に最適な温度まで速やかに昇温することができる。これにより、運転開始時に、後段側反応室31における脱硝反応を促進することができる。
【0066】
(その他の実施形態)
なお、本願に開示の技術は、上記実施形態およびその変形例において以下のような構成としてもよい。
【0067】
例えば、上記実施形態および変形例において、混合室20と前段側反応室26の位置を逆にしてもよい。つまり、容器11内を上下に区画したうちの上側の空間を前段側反応室26とし、下側の空間を混合室20としてもよい。
【0068】
また、上記実施形態および変形例では、容器11内を上下に区画して混合室20および前段側反応室26を形成するようにしたが、本願に開示の技術はこれに限らず、例えば、容器11内を軸心X方向に視て左右に区画して形成するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態および変形例において、還元剤前駆体(尿素水)の加水分解を促進するための加水分解触媒を、混合室20または連通路22に設けるようにしてもよい。そうすることで、還元剤前駆体(尿素水)が前段側反応室26に流入するまでに還元剤(アンモニアガス)を十分に発生させることができる。これにより、反応室25(前段側反応室26および後段側反応室27,31)における脱硝反応を促進することができる。
【0070】
また、上記実施形態および変形例では、ノズル21から還元剤前駆体として尿素水を噴霧する構成について説明したが、本願に開示の技術はこれに限らず、例えば、高濃度の尿素と低濃度のアンモニアガスの混合水溶液を還元剤前駆体として用いるようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態および変形例において、流入部12は上述した数量に限らず、1つ、または4つ以外の複数であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態および変形例では、ノズルは混合室20の排ガス中に還元剤等を噴霧するものとしたが、本願に開示の技術はこれに限らず、ノズルは容器11内(混合室20)に流入する前の排ガス中に還元剤等を噴霧する構成としてもよい。
【0073】
また、上記実施形態の変形例において、容器11は、円筒状以外に、例えば、角形や楕円形の筒状に形成されたものでもよいし、または、これらを組み合わせた断面形状の筒状に形成されたものでもよい。
【0074】
また、上記実施形態および変形例において、容器11内に、排ガスを触媒28,29,32の全体に満遍なく通過させるための整流板を設けるようにしてもよい。整流板は、例えば、連通路22、前段側反応室26の上流端、前段側反応室26と後段側反応室27,31との間に設けられる。
【0075】
また、上記実施形態では、排ガス脱硝装置10を舶用ディーゼルエンジンに適用した構成について説明したが、本願の排ガス脱硝装置はこれに限らず、その他のエンジンについても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本願に開示の技術は、排ガス脱硝装置について有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 舶用ディーゼルエンジン
10 排ガス脱硝装置
11 容器
20 混合室
26 前段側反応室(反応室)
27 後段側反応室(反応室)
28 触媒
29 触媒
31 後段側反応室(反応室)
32 触媒
X 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6