(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】油剤回収装置、糸処理機構及び紡糸引取装置
(51)【国際特許分類】
D02J 1/00 20060101AFI20240905BHJP
D02J 11/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
D02J1/00 A
D02J11/00
(21)【出願番号】P 2020153516
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】米倉 踏青
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-002474(JP,U)
【文献】特開2017-218706(JP,A)
【文献】特開2002-212827(JP,A)
【文献】特公昭48-023095(JP,B1)
【文献】特開平11-323681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02J 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油剤が付与された糸が走行する糸走行空間に流体を噴射することで前記糸に所定の処理を施す糸処理装置から飛散する油剤ミストを回収する油剤回収装置であって、
前記糸処理装置を収容し、吸引口
及び前記糸が通過する開口部が形成されている筐体と、
前記筐体の内部に
おいて前記開口部から離れて配置されており、前記流体の噴射によって生じる前記糸走行空間からの噴流を前記吸引口へ導く案内部材と、
を備えることを特徴とする油剤回収装置。
【請求項2】
前記案内部材は、前記噴流を取り入れる導入口と、前記噴流を前記吸引口に向かって排出する排出口とを有するダクト部材であることを特徴とする請求項1に記載の油剤回収装置。
【請求項3】
前記ダクト部材のうち前記排出口を含む前記排出口側の一部は、前記排出口側に向かうほど流路面積が徐々に小さくなることを特徴とする請求項2に記載の油剤回収装置。
【請求項4】
前記ダクト部材は、前記糸走行空間の延設方向に交差する向きで配置された案内面を有しており、
前記案内面の前記導入口側の端部は、前記延設方向において前記糸走行空間の外側に位置することを特徴とする請求項2又は3に記載の油剤回収装置。
【請求項5】
前記案内面のうち前記導入口側の端部を含む前記導入口側の一部は、前記排出口側に向かうほど前記延設方向において前記糸走行空間の外側に広がることを特徴とする請求項4に記載の油剤回収装置。
【請求項6】
前記案内面は、前記導入口側の端部から前記排出口側の端部にわたって湾曲していることを特徴とする請求項4又は5に記載の油剤回収装置。
【請求項7】
前記案内面は、前記延設方向において前記糸走行空間の両側に一対設けられており、前記一対の案内面は、前記延設方向における前記糸走行空間の中心に関して面対称であることを特徴とする請求項4~6の何れか1項に記載の油剤回収装置。
【請求項8】
前記筐体の内面と前記ダクト部材の外面との間に、前記吸引口と連通する吸引流路が形成されていることを特徴とする請求項2~7の何れか1項に記載の油剤回収装置。
【請求項9】
前記ダクト部材は、前記糸処理装置から離れた離間位置と、前記離間位置よりも前記糸処理装置に近い近接位置との間で移動可能であることを特徴とする請求項2~8の何れか1項に記載の油剤回収装置。
【請求項10】
前記開口部の開口面積を変更可能な開閉部材が設けられていることを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の油剤回収装置。
【請求項11】
油剤が付与された糸が走行する糸走行空間に流体を噴射することで前記糸に所定の処理を施す糸処理装置と、
請求項1~10の何れか1項に記載の油剤回収装置と、
を備えることを特徴とする糸処理機構。
【請求項12】
前記糸処理装置は、
前記糸走行空間が形成されている糸処理部と、
前記糸処理部を支持する支持部材と、
前記糸走行空間の延設方向において前記糸処理部の外側に配置された噴流案内部材と、
を有しており、
前記噴流案内部材は、前記支持部材から前記案内部材に向かって立ち上がっていることを特徴とする請求項11に記載の糸処理機構。
【請求項13】
前記噴流案内部材は、前記支持部材から前記延設方向における前記糸走行空間の外側に傾斜しつつ立ち上がっていることを特徴とする請求項12に記載の糸処理機構。
【請求項14】
前記噴流案内部材に、前記糸が挿入されるガイド溝が形成されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の糸処理機構。
【請求項15】
糸に油剤を付与する油剤付与装置と、
糸走行方向において前記油剤付与装置の下流側に配置された請求項11~14の何れか1項に記載の糸処理機構と、
を備えることを特徴とする紡糸引取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油剤が付与された糸が走行する糸走行空間に流体を噴射することで糸に所定の処理を施す糸処理装置から飛散する油剤ミストを回収する油剤回収装置、並びに、当該油剤回収装置を備える糸処理機構及び紡糸引取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、摩擦低減、静電気抑制、パッケージ形状向上、糸加熱の均一性向上等を目的として、糸に油剤が付与されることがある。油剤が付与された糸が走行する糸走行空間に流体を噴射することで糸に所定の処理を施す糸処理装置においては、流体の噴射によって、糸に付着している油剤の一部が吹き飛ばされ油剤ミストとなる。このような油剤ミストが糸処理装置から飛散すると、樹脂部品に付着してその樹脂部品を劣化させたり、油滴化したものが糸やパッケージに付着して糸品質を低下させたり、あるいは、周辺が白く霧がかかったようになることで現場環境を悪化させるおそれがあった。上述のような糸処理装置として、例えば、交絡装置やマイグレーションノズル等が知られている。交絡装置は、流体を噴射することによって、糸に交絡を付与する装置である。マイグレーションノズルは、糸に付与された油剤を均一化する装置である。
【0003】
上記問題を解決するため、例えば特許文献1では、交絡装置の糸走行空間から噴出される噴流をダクト体に導き、ダクト体の内部に設けられたフィルタで油剤ミストを油滴化し回収する技術が開示されている。また、特許文献2には、交絡装置で発生する油剤ミストなどの浮遊成分を吸引する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-218706号公報
【文献】特開2017-509810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように交絡装置の近くにダクト体を配置するだけでは、ダクト体に流入しない油剤ミストも多く存在し、油剤ミストを効率的に回収することは困難であった。また、特許文献2のように吸引によって油剤ミストを回収する場合、油剤ミストをどれだけ回収できるかは、吸引装置の能力に大きく依存することになる。しかしながら、吸引装置は工場等に配設されているものをそのまま使用することが多く、能力の増強にも限界がある。また、吸引装置の能力を増強させようとすると、多大なコストがかかるという課題があった。
【0006】
以上の課題に鑑みて、本発明は、糸処理装置から飛散する油剤ミストを低コストで効果的に回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る油剤回収装置は、油剤が付与された糸が走行する糸走行空間に流体を噴射することで前記糸に所定の処理を施す糸処理装置から飛散する油剤ミストを回収する油剤回収装置であって、前記糸処理装置を収容し、吸引口が形成されている筐体と、前記筐体の内部に配置されており、前記流体の噴射によって生じる前記糸走行空間からの噴流を前記吸引口へ導く案内部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、糸処理装置を収容する筐体に吸引口が形成されており、糸処理装置から飛散した油剤ミストは吸引口を介して回収される。しかしながら、単に筐体を設けるだけだと、吸引装置の吸引力が不足する場合、筐体内に油剤ミストが滞留する。糸の周辺に滞留した油剤ミストは、随伴流に連れられて筐体外部へ漏れ出てしまう。一方、油剤ミストの漏出を抑制するために吸引装置の能力を増強すると、大幅なコストアップにつながりかねない。そこで、本発明では、糸走行空間からの噴流を吸引口へ導く案内部材を設けている。こうすることで、糸走行空間から排出される噴流の勢いを利用して油剤ミストを吸引口に導くことができ、油剤ミストを低コストで効果的に回収することができる。
【0009】
本発明において、前記案内部材は、前記噴流を取り入れる導入口と、前記噴流を前記吸引口に向かって排出する排出口とを有するダクト部材であるとよい。
【0010】
このような構成であれば、噴流をダクト部材によって確実に吸引口に導くことができるので、油剤ミストをより効果的に回収することができる。また、ダクト部材の排出口からの流体の吹き出しを、筐体の吸引口での吸引のアシストとして利用できる。
【0011】
本発明において、前記ダクト部材のうち前記排出口を含む前記排出口側の一部は、前記排出口側に向かうほど流路面積が徐々に小さくなるとよい。
【0012】
このような構成であれば、排出口に向かう流体の圧力が高められるため、糸走行空間からの噴出時の勢いをある程度維持したまま流体を排出口から排出できる。したがって、ダクト部材からの流体の吹き出しによる吸引アシスト効果を向上させることができ、ひいては、油剤ミストをより効果的に回収することができる。
【0013】
本発明において、前記ダクト部材は、前記糸走行空間の延設方向に交差する向きで配置された案内面を有しており、前記案内面の前記導入口側の端部は、前記延設方向において前記糸走行空間の外側に位置するとよい。
【0014】
このような構成であれば、糸走行空間の両端から噴出される噴流をダクト部材の内部に取り込みやすくなる。
【0015】
本発明において、前記案内面のうち前記導入口側の端部を含む前記導入口側の一部は、前記排出口側に向かうほど前記延設方向において前記糸走行空間の外側に広がるとよい。
【0016】
このような構成であれば、糸走行空間からの噴流が案内面によって排出口側へと案内されやすくなり、案内面にぶつかることによって流れが乱れるのを抑えることができる。
【0017】
本発明において、前記案内面は、前記導入口側の端部から前記排出口側の端部にわたって湾曲しているとよい。
【0018】
案内面に角があるとそこで流体の流れが乱れやすくなる。この点、案内面を湾曲面とすることによって、流体の流れを円滑にすることができる。
【0019】
本発明において、前記案内面は、前記延設方向において前記糸走行空間の両側に一対設けられており、前記一対の案内面は、前記延設方向における前記糸走行空間の中心に関して面対称であるとよい。
【0020】
このような構成であれば、ダクト部材の内部における流体の流れも対称となりやすく、流れが乱れにくくなる。
【0021】
本発明において、前記筐体の内面と前記ダクト部材の外面との間に、前記吸引口と連通する吸引流路が形成されているとよい。
【0022】
このような構成であれば、ダクト部材に取り込まれなかった油剤ミストも、吸引流路を経由して吸引口から吸引されるので、油剤ミストをより効果的に回収することができる。
【0023】
本発明において、前記ダクト部材は、前記糸処理装置から離れた離間位置と、前記離間位置よりも前記糸処理装置に近い近接位置との間で移動可能であるとよい。
【0024】
ダクト部材が糸処理装置の近くに配置されるほど、より多くの油剤ミストを回収できるようになる。しかしながら、そうすると、糸処理装置への糸掛け作業の際にダクト部材が邪魔となる。そこで、上述のように、ダクト部材を可動式に構成することで、油剤ミストの回収効率と糸掛け作業の作業性とを両立することができる。
【0025】
本発明において、前記筐体に、前記糸が通過する開口部が形成されており、前記開口部の開口面積を変更可能な開閉部材が設けられているとよい。
【0026】
筐体に形成された開口部が小さいほど、油剤ミストが筐体から漏れ出す量を減らすことができる。しかしながら、そうすると、糸処理装置への糸掛け作業の際に開口部に糸を通すのが困難となる。そこで、上述のように、開口部に開閉部材を設けることで、油剤ミストの漏れ低減と糸掛け作業の作業性とを両立することができる。
【0027】
本発明に係る糸処理機構は、油剤が付与された糸が走行する糸走行空間に流体を噴射することで前記糸に所定の処理を施す糸処理装置と、上記何れかの油剤回収装置と、を備えることを特徴とする。
【0028】
このような糸処理機構であれば、すでに説明したように、糸処理装置から飛散する油剤ミストを低コストで効果的に回収することができる。
【0029】
本発明において、前記糸処理装置は、前記糸走行空間が形成されている糸処理部と、前記糸処理部を支持する支持部材と、前記糸走行空間の延設方向において前記糸処理部の外側に配置された噴流案内部材と、を有しており、前記噴流案内部材は、前記支持部材から前記案内部材に向かって立ち上がっているとよい。
【0030】
このような構成であれば、糸走行空間からの噴流を噴流案内部材によって案内部材へ導くことができ、ひいては、油剤ミストをより効果的に回収することができる。
【0031】
本発明において、前記噴流案内部材は、前記支持部材から前記延設方向における前記糸走行空間の外側に傾斜しつつ立ち上がっているとよい。
【0032】
このような構成であれば、糸走行空間からの噴流が噴流案内部材によって案内部材へと案内されやすくなり、噴流案内部材にぶつかることによって流れが乱れるのを抑えることができる。
【0033】
本発明において、前記噴流案内部材に、前記糸が挿入されるガイド溝が形成されているとよい。
【0034】
このような構成であれば、噴流案内部材を糸ガイド部材としても利用できるので、部品点数の増加を抑えることができる。
【0035】
本発明に係る紡糸引取装置は、糸に油剤を付与する油剤付与装置と、糸走行方向において前記油剤付与装置の下流側に配置された上記何れかの糸処理機構と、を備えることを特徴とする。
【0036】
このような紡糸引取装置であれば、すでに説明したように、糸処理装置から飛散する油剤ミストを低コストで効果的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本実施形態に係る交絡付与機構を備える紡糸引取装置の模式図である。
【
図3】油剤回収装置を備えた交絡付与機構の断面図である。
【
図4】油剤回収装置を備えた交絡付与機構の断面図である。
【
図6】交絡付与機構における空気の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(紡糸引取装置)
本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る交絡付与機構を備える紡糸引取装置の模式図である。
図1に示される上下前後の方向を、それぞれ、紡糸引取装置1の上下前後の方向と定義する。
【0039】
紡糸引取装置1は、紡糸装置100から紡出される複数の合成繊維糸Yを引き取り、複数のボビンBに巻き取って複数のパッケージPを形成する。紡糸引取装置1は、油剤ガイド2(本発明の油剤付与装置に相当)、延伸装置3、第1引取ローラ4、交絡付与機構5(本発明の糸処理機構に相当)、第2引取ローラ6、巻取装置7を有する。紡糸装置100においては、ギヤポンプ等からなるポリマー供給装置(図示省略)から供給されたポリマーが、不図示の紡糸口金を介して下方に押し出される。
【0040】
紡糸装置100から紡出された複数の糸Yは、
図1の紙面垂直方向に並んだ状態で、油剤ガイド2、延伸装置3、第1引取ローラ4、交絡付与機構5、第2引取ローラ6に沿った糸道を走行する。さらに、複数の糸Yは、第2引取ローラ6から前後方向に分配され、巻取装置7において複数のボビンBにそれぞれ巻き取られる。
【0041】
紡糸装置100から紡出された複数の糸Yは、油剤ガイド2によって油剤が付与された後、延伸装置3に送られる。本実施形態の油剤ガイド2は、糸走行方向において紡糸装置100と延伸装置3との間に配置されているが、油剤ガイド2は、糸走行方向において後述の交絡装置20よりも上流側の任意の位置に配置可能である。延伸装置3は、不図示の複数の加熱ローラが保温ボックスに収容された構成となっている。延伸装置3は、複数の加熱ローラにより、紡糸装置100から紡出された複数の糸Yをそれぞれ加熱しつつ延伸する。
【0042】
延伸装置3で延伸された複数の糸Yは、第1引取ローラ4及び第2引取ローラ6によって巻取装置7に送られる。第1引取ローラ4と第2引取ローラ6との間には、糸Yを構成する多数のフィラメントを絡ませて交絡を付与する交絡装置20(本発明の糸処理装置に相当)を有する交絡付与機構5が配置されている。なお、交絡付与機構5は、糸走行方向において油剤ガイド2よりも下流側の任意の位置に配置可能である。例えば、
図1の破線で示すように、延伸装置3と第1引取ローラ4との間に交絡付与機構5が配置されてもよい。交絡装置20及び交絡付与機構5については、後で詳細に説明する。
【0043】
巻取装置7は、機台11、ターレット12、2本のボビンホルダ13、支持枠体14、接触ローラ15、トラバース装置16を有する。巻取装置7は、ボビンホルダ13を回転させることによって、第2引取ローラ6から送られてきた複数の糸Yを、複数のボビンBに同時に巻き取り、複数のパッケージPを形成する。
【0044】
機台11には、円板状のターレット12が取り付けられている。ターレット12は、不図示のモータによって回転駆動される。ターレット12には、円筒状の2本のボビンホルダ13が、前後方向に延びる姿勢で片持ち支持されている。各ボビンホルダ13には、その軸方向(前後方向)に複数のボビンBが並んだ状態で装着される。ターレット12が回転することにより、2本のボビンホルダ13が、上側の巻取位置と下側の退避位置との間で移動可能となっている。
【0045】
支持枠体14は、前後方向に延びる部材であり、その後端部が機台11に固定されている。支持枠体14の下部には、前後方向に延びるローラ支持部材17が、支持枠体14に対して上下に移動可能に取り付けられている。ローラ支持部材17には、前後方向に延びる接触ローラ15が回転自在に支持されている。この接触ローラ15によってパッケージPに所定の接圧が付与されることにより、パッケージPの形状が整えられる。
【0046】
ローラ支持部材17には、トラバース装置16が配置されている。トラバース装置16は、前後方向に並んだ複数のトラバースガイド16aを有する。複数のトラバースガイド16aは、不図示のモータによって駆動されて、前後方向に往復移動する。糸Yが掛けられた状態でトラバースガイド16aが往復移動することにより、糸Yは、支点ガイド18を中心に前後に綾振りされながら、対応するボビンBに巻き取られる。
【0047】
(交絡装置)
図2は、交絡装置20の斜視図である。
図2における延設方向とは、後述の糸走行空間24aが延設されている方向を指す。配列方向とは、複数の糸Yが並んでいる方向を指し、延設方向に直交する方向である。高さ方向とは、延設方向及び配列方向の両方に直交する方向を指す。本明細書では、便宜的に高さ方向の一方側(
図2の上側)を上側、他方側(
図2の下側)を下側と呼ぶ。しかし、高さ方向の上側及び下側は、必ずしも鉛直方向の上側及び下側(
図1に示す上側及び下側)と一致しなくてもよい。
【0048】
交絡装置20は、圧縮空気(本発明における流体の一例)によって糸Yに交絡を付与する。交絡装置20は、支持部材21と、交絡部22(本発明の糸処理部に相当)と、2つの糸ガイド部材23(本発明の噴流案内部材に相当)とを有する。支持部材21は、交絡部22及び2つの糸ガイド部材23を支持する。交絡部22を構成する複数の交絡片24及び2つの糸ガイド部材23は、高さ方向において支持部材21から同じ側(上側)に立ち上がっている。
【0049】
交絡部22は、複数の交絡片24が配列方向に並べられた構成を有する。各交絡片24においては糸走行空間24aが延設方向に貫通しており、この糸走行空間24aを糸Yが走行する。互いに隣接する交絡片24の間の上部には、糸走行空間24aに糸Yを挿入するための糸挿入路24bが形成されている。延設方向における交絡片24の中央部には、糸走行空間24aに向かって圧縮空気を噴射する噴射口(図示省略)が形成されている。糸走行空間24aを走行している糸Yは、噴射口から噴射される圧縮空気の作用を受けることで交絡が付与される。噴射された圧縮空気は、糸走行空間24aの両端から噴流となって噴出される。
【0050】
2つの糸ガイド部材23は、延設方向において交絡部22の両側に交絡部22と間隔を空けてそれぞれ配置されている。糸ガイド部材23は、支持部材21から立ち上がり、且つ、配列方向に延びる壁状の形状を有する。糸ガイド部材23は、支持部材21から真上に向かってではなく、支持部材21から延設方向において交絡部22の外側に傾斜しつつ立ち上がっている。糸ガイド部材23には、複数のガイド溝23aが配列方向に等間隔で形成されている。ガイド溝23aは、上向きに開放されたスリット形状である。複数の糸Yが対応するガイド溝23aに挿入されることで、交絡装置20における複数の糸Yの糸道が規定される。
【0051】
なお、
図2では図示を省略しているが、交絡装置20には、糸掛け作業の際に利用される糸掛け補助部材25(
図3及び
図4参照)が設けられている。糸掛け補助部材25は、配列方向に延びる丸棒状の部材である。糸掛け補助部材25は、その一端部がアーム26に固定されており、アーム26を介して支持部材21に取り付けられている。本実施形態では、糸掛け補助部材25は片持ち支持されているが、両持ち支持される構成でもよい。アーム26は、支点27を中心に揺動可能である。これによって、糸掛け補助部材25は、
図3に示す下側位置と、
図4に示す上側位置との間で移動可能となっている。
【0052】
(油剤回収装置)
上述のように構成された交絡装置20では、圧縮空気が噴射されることによって糸Yに付着している油剤の一部が吹き飛ばされ油剤ミストとなる。このような油剤ミストが糸走行空間24aからの噴流とともに交絡装置20から飛散すると、樹脂部品に付着してその樹脂部品を劣化させたり、糸YやパッケージPに付着して糸品質を低下させたりするおそれがある。そこで、交絡付与機構5には、交絡装置20から飛散する油剤ミストを回収するための油剤回収装置30が設けられている。
【0053】
図3及び
図4は、油剤回収装置30を備えた交絡付与機構5の断面図であり、詳しくは配列方向に直交する断面における断面図である。
図3は、後述のダクト部材32が交絡装置20に近接した近接位置にある状態を示しており、
図4は、ダクト部材32が交絡装置20から離れた離間位置にある状態を示している。
図5は、ダクト部材32の斜視図である。
【0054】
図3及び
図4に示すように、油剤回収装置30は、筐体31とダクト部材32(本発明の案内部材に相当)とを有する。筐体31は、交絡装置20及びダクト部材32を収容する箱状の部材である。筐体31の上端部には、吸引装置101に接続された吸引口31aが形成されている。吸引口31aは、高さ方向に延びるノズルであり、上向きの吸引力が発生している。筐体31の下部には交絡装置20が配置されており、交絡装置20の上側にダクト部材32が配置されている。交絡装置20は固定されているが、ダクト部材32は後述するように高さ方向に移動可能である。筐体31の内面とダクト部材32の外面との間には、吸引口31aと連通する吸引流路49が形成されている。油剤回収装置30は、交絡装置20から飛散した油剤ミストを、ダクト部材32又は吸引流路49を介して吸引口31aから吸引して回収する。
【0055】
筐体31には、複数の糸Yを筐体31内に導入する開口部31bと、複数の糸Yを筐体31外に導出する開口部31cと、が形成されている。開口部31b、31cには、開口部31b、31cの開口面積を変更可能な開閉部材33、34が設けられている。
【0056】
ダクト部材32は、交絡装置20の糸走行空間24aからの噴流を吸引口31aへ導く役割を有し、交絡装置20を覆うように配置されている。
図5に示すように、ダクト部材32は、4つの側面35~38からなる中空部材であり、高さ方向に延びている。ダクト部材32の下端に噴流を取り入れる導入口32aが形成され、上端に噴流を吸引口31aに向かって排出する排出口32bが形成されている。導入口32aは、高さ方向から見て交絡装置20を完全に含んでいる。排出口32bは、吸引口31aに対向する位置に形成されており、その開口面積は導入口32aよりも小さい。
【0057】
延設方向において互いに対向している一対の側面35、36は、本発明の案内面に相当する。以降、案内面35、36と言う。案内面35、36は、糸走行空間24aの延設方向に交差する向きで配置されている。配列方向において互いに対向している一対の側面37、38は、配列方向に直交する面と平行な平面である。
図5に示すように、側面38には、スライダー39が固定されている。筐体31の内面には、高さ方向に延びるレール部材40が固定されており、スライダー39は、レール部材40にスライド可能に係合している。これによって、ダクト部材32は、近接位置(
図3に示す位置)と離間位置(
図4に示す位置)との間で、高さ方向に移動可能となっている。ダクト部材32の移動は作業者によって手動で行われてもよいし、ダクト部材32を移動させる駆動装置が設けられてもよい。
【0058】
ダクト部材32を近接位置と離間位置で位置決めする位置決め手段が設けられていると好適である。例えば、近接位置での位置決めは、交絡装置20に設けられた不図示のストッパとダクト部材32の下端との当接によって行われるようにするとよい。離間位置での位置決めは、ラッチ等の係合手段による筐体31とダクト部材32との係合によって行われるようにするとよい。もちろん、他の位置決め手段の構成を採用することも可能である。
【0059】
一対の案内面35、36は、配列方向から見て湾曲した湾曲面となっており、延設方向における交絡装置20(糸走行空間24a)の中心に関して面対称である。案内面35、36の下端部は、延設方向から見た場合に、その一部が糸ガイド部材23と重複している。詳細には、高さ方向において、案内面35、36の下端は、糸ガイド部材23の上端よりも下側で、且つ、ガイド溝23aの下端よりも上側に位置する。案内面35、36の下端部は、延設方向において糸走行空間24aよりも外側、さらには、糸ガイド部材23の上端部よりも外側に位置している。このため、糸走行空間24aからの噴流をダクト部材32の内部に取り込みやすい。
【0060】
案内面35、36のうち下端部を含む下側(導入口32a側)の一部は、上側(排出口32b側)に向かうほど延設方向において交絡部22の外側に広がる第1湾曲部35a、36aである。第1湾曲部35a、36aは、延設方向の外側に膨らむように湾曲している。案内面35、36のうち上端部を含む上側の一部は、上側に向かうほど互いに近づく第2湾曲部35b、36bである。第2湾曲部35b、36bは、延設方向の内側に凹むように湾曲している。第1湾曲部35aと第2湾曲部35bとは連続しており、第1湾曲部36aと第2湾曲部36bとは連続している。
【0061】
ダクト部材32は、第1湾曲部35a、36aによって、途中までは上側に向かうほど流路面積(高さ方向に直交する断面におけるダクト部材32内の面積)が徐々に大きくなる。また、ダクト部材32は、第2湾曲部35b、36bによって、途中から上側に向かうほど流路面積が徐々に小さくなる。なお、第1湾曲部35a、36aの下端部における接線方向は、糸ガイド部材23の傾きと略同じとされている。
【0062】
(糸掛け作業)
筐体31に収容された交絡装置20に糸掛け作業を行うときの手順について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3及び
図4における筐体31の手前側の面は開閉可能な扉(図示省略)となっており、この扉を開くことによって、交絡装置20への糸掛け作業が可能となる。
【0063】
糸掛け作業を始める際には、
図4に示すように、ダクト部材32を交絡装置20から離れた離間位置に移動する。そして、開閉部材33、34を開くとともに、糸掛け補助部材25を上側位置に移動する。開閉部材33、34を開けば、開口部31b、31cの開口面積が最大となり、糸掛け作業の際に複数の糸Yを開口部31b、31cに通すのが容易となる。
【0064】
次に、不図示のサクションガンを用いて、複数の糸Yを第1引取ローラ4(
図1参照)に巻き掛けた後、開口部31bから筐体31の内部に導入する。そして、複数の糸Yを糸掛け補助部材25に掛け、開口部31cから筐体31の外部に導出して、第2引取ローラ6に巻き掛ける。この状態で、糸掛け補助部材25を下側位置に下ろすと、
図3に示すように、複数の糸Yが糸ガイド部材23の各ガイド溝23aに挿入される。
【0065】
続けて、ダクト部材32を交絡装置20に近接する近接位置に下ろし、ダクト部材32で交絡装置20を覆う。最後に、開閉部材33、34を閉じることによって、交絡装置20への糸掛け作業が完了する。開閉部材33、34を閉じれば、開口部31b、31cの開口面積は複数の糸Yが通過するのに必要最小限の面積となり、油剤ミストの漏れを抑えることができる。
【0066】
(空気の流れ)
図6は、交絡付与機構5における空気の流れを示す図であり、空気の主な流れを矢印で示している。交絡装置20の糸走行空間24aの両端から噴出された噴流は、そのまま延設方向に沿って流れ、糸ガイド部材23にぶつかる。糸ガイド部材23にぶつかった噴流は、支持部材21が存在するため下側には流れることができず、大部分は上側へと流れ、導入口32aからダクト部材32の内部に流れ込む。このとき、糸ガイド部材23が斜め上外側に傾いているため、糸ガイド部材23にぶつかった噴流は上側へと案内されやすく、糸ガイド部材23にぶつかることによって流れが乱れるのを抑えることができる。
【0067】
ダクト部材32の内部に流れ込んだ噴流は、主に案内面35、36に沿って流れる。第1湾曲部35a、36aは外側に広がっているため、糸ガイド部材23に沿って斜め上外側に向かっている流れを、円滑に上側へと向かわせることができる。第2湾曲部35b、36bは、互いの間隔が排出口32bに向かって徐々に狭まっていくため、ダクト部材32の内部の流路面積は徐々に小さくなる。このため、排出口32bに向かう空気の圧力が高められるため、糸走行空間24aからの噴出時の勢いをある程度維持することができ、排出口32bから吸引口31aに向かって勢いよく空気が排出される。このようなダクト部材32の排出口32bからの空気の吹き出しを、筐体31の吸引口31aでの吸引のアシストとして利用できるので、油剤ミストを効率的に回収することができる。
【0068】
一方、交絡装置20から飛散した油剤ミストの一部は、糸ガイド部材23とダクト部材32との隙間、又は、糸ガイド部材23のガイド溝23aから、ダクト部材32の外部へと漏れ出す。しかしながら、筐体31とダクト部材32との間に吸引流路49が形成されているので、ダクト部材32に取り込まれなかった油剤ミストも、吸引流路49における空気の流れとともに吸引口31aに導かれて回収される。このとき、上述のように排出口32bから勢いよく空気が排出されることで、負圧によって吸引流路49の空気を吸引することができるので、吸引流路49に浮遊する油剤ミストを良好に回収することができる。
【0069】
(効果)
本実施形態では、交絡装置20を収容する筐体31に吸引口31aが形成されており、交絡装置20から飛散した油剤ミストは吸引口31aを介して回収される。しかしながら、単に筐体31を設けるだけだと、吸引装置101の吸引力が不足する場合、筐体31内に油剤ミストが滞留する。糸Yの周辺に滞留した油剤ミストは、随伴流に連れられて筐体31外部へ漏れ出てしまう。油剤ミストの漏出を抑制するために吸引装置101の能力を増強すると、大幅なコストアップにつながりかねない。そこで、本実施形態では、糸走行空間24aからの噴流を吸引口31aへ導く案内部材(ダクト部材32)を設けている。こうすることで、糸走行空間24aから排出される噴流の勢いを利用して油剤ミストを吸引口31aに導くことができ、油剤ミストを低コストで効果的に回収することができる。
【0070】
本実施形態では、上記案内部材は、噴流を取り入れる導入口32aと、噴流を吸引口31aに向かって排出する排出口32bとを有するダクト部材32である。このような構成であれば、噴流をダクト部材32によって確実に吸引口31aに導くことができるので、油剤ミストをより効果的に回収することができる。また、ダクト部材32の排出口32bからの空気の吹き出しを、筐体31の吸引口31aでの吸引のアシストとして利用できる。
【0071】
本実施形態では、ダクト部材32のうち排出口32bを含む排出口32b側の一部は、排出口32b側に向かうほど流路面積が徐々に小さくなる。このような構成であれば、排出口32bに向かう空気の圧力が高められるため、糸走行空間24aからの噴出時の勢いをある程度維持したまま空気を排出口32bから排出できる。したがって、ダクト部材32からの空気の吹き出しによる吸引アシスト効果を向上させることができ、ひいては、油剤ミストをより効果的に回収することができる。
【0072】
本実施形態では、ダクト部材32は、糸走行空間24aの延設方向に交差する向きで配置された案内面35、36を有しており、案内面35、36の導入口32a側の端部は、延設方向において糸走行空間24aの外側に位置する。このような構成であれば、糸走行空間24aの両端から噴出される噴流をダクト部材32の内部に取り込みやすくなる。
【0073】
本実施形態では、案内面35、36のうち導入口32a側の端部を含む導入口32a側の一部は、排出口32b側に向かうほど延設方向において糸走行空間24aの外側に広がる。このような構成であれば、糸走行空間24aからの噴流が案内面35、36によって排出口32b側へと案内されやすくなり、案内面35、36にぶつかることによって流れが乱れるのを抑えることができる。
【0074】
本実施形態では、案内面35、36は、導入口32a側の端部から排出口32b側の端部にわたって湾曲している。案内面35、36に角があるとそこで空気の流れが乱れやすくなる。この点、案内面35、36を湾曲面とすることによって、空気の流れを円滑にすることができる。
【0075】
本実施形態では、一対の案内面35、36は、延設方向における糸走行空間24aの中心に関して面対称である。このような構成であれば、ダクト部材32の内部における空気の流れも対称となりやすく、流れが乱れにくくなる。
【0076】
本実施形態では、筐体31の内面とダクト部材32の外面との間に、吸引口31aと連通する吸引流路49が形成されている。このような構成であれば、ダクト部材32に取り込まれなかった油剤ミストも、吸引流路49を経由して吸引口31aから吸引されるので、油剤ミストをより効果的に回収することができる。
【0077】
本実施形態では、ダクト部材32は、交絡装置20から離れた離間位置と、離間位置よりも交絡装置20に近い近接位置との間で移動可能である。ダクト部材32が交絡装置20の近くに配置されるほど、より多くの油剤ミストを回収できるようになる。しかしながら、そうすると、交絡装置20への糸掛け作業の際にダクト部材32が邪魔となる。そこで、上述のように、ダクト部材32を可動式に構成することで、油剤ミストの回収効率と糸掛け作業の作業性とを両立することができる。
【0078】
本実施形態では、筐体31に、糸Yが通過する開口部31b、31cが形成されており、開口部31b、31cの開口面積を変更可能な開閉部材33、34が設けられている。筐体31に形成された開口部31b、31cが小さいほど、油剤ミストが筐体31から漏れ出す量を減らすことができる。しかしながら、そうすると、交絡装置20への糸掛け作業の際に開口部31b、31cに糸Yを通すのが困難となる。そこで、上述のように、開口部31b、31cに開閉部材33、34を設けることで、油剤ミストの漏れ低減と糸掛け作業の作業性とを両立することができる。
【0079】
本実施形態では、交絡装置20は、糸走行空間24aが形成されている交絡部22と、交絡部22を支持する支持部材21と、糸走行空間24aの延設方向において交絡部22の外側に配置された噴流案内部材(糸ガイド部材23)と、を有しており、糸ガイド部材23は、支持部材21から案内部材(ダクト部材32)に向かって立ち上がっている。このような構成であれば、糸走行空間24aからの噴流を噴流案内部材(糸ガイド部材23)によって案内部材(ダクト部材32)へ導くことができ、ひいては、油剤ミストをより効果的に回収することができる。
【0080】
本実施形態では、噴流案内部材(糸ガイド部材23)は、支持部材21から延設方向における糸走行空間24aの外側に傾斜しつつ立ち上がっている。このような構成であれば、糸走行空間24aからの噴流が噴流案内部材(糸ガイド部材23)によって案内部材(ダクト部材32)へと案内されやすくなり、噴流案内部材(糸ガイド部材23)にぶつかることによって流れが乱れるのを抑えることができる。
【0081】
本実施形態では、噴流案内部材(糸ガイド部材23)に、糸Yが挿入されるガイド溝23aが形成されている。このような構成であれば、噴流案内部材を糸ガイド部材としても利用できるので、部品点数の増加を抑えることができる。
【0082】
(他の実施形態)
上記実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0083】
上記実施形態の筐体31の具体的な構成は、適宜変更が可能である。例えば、吸引口31aは筐体31の上端部以外に形成されていてもよい。また、吸引口31aが複数形成されていてもよい。また、開口部31b、31cに開閉部材33、34を設けることは必須ではない。
【0084】
上記実施形態のダクト部材32の具体的な構成は、適宜変更が可能である。例えば、ダクト部材32の案内面35、36が湾曲していることは必須ではなく、平面や屈曲面であってもよい。また、ダクト部材32の側面37、38が湾曲面であってもよい。さらには、ダクト部材32は、まっすぐな円筒形や角筒形でもよいし、円錐台や角形台で内部が中空の部材でもよいし、途中で屈曲するパイプのような形状でもよい。ダクト部材32が延びる方向も適宜変更可能である。また、ダクト部材32における排出口32bの配置は適宜変更可能であるが、排出口32bは筐体31の吸引口31aに対向配置されることが好ましい。
【0085】
上記実施形態では、ダクト部材32が可動式であるものとしたが、交絡装置20への糸掛け作業が可能であれば、ダクト部材32が可動式であることは必須ではない。また、ダクト部材32は、複数個に分割して設けられていてもよいし、導入口32a側又は排出口32b側の一部が複数経路に分岐していてもよい。
【0086】
上記実施形態では、本発明の案内部材がダクト部材32であるものとしたが、案内部材は他の形態もとり得る。例えば、単数又は複数のガイド板(案内面35、36のようなもの)によって、案内部材が構成されていてもよい。
【0087】
上記実施形態では、交絡装置20の糸ガイド部材23が斜めに立ち上がっているものとしたが、支持部材21から高さ方向にまっすぐ立ち上がっていてもよい。また、糸ガイド部材23は、板状部材に限られず、支持部材21から立ち上がる種々の突出形状を取り得る。
【0088】
上記実施形態では、紡糸引取装置1が延伸装置3を備えるものとした。しかしながら、本発明を、延伸装置3を備えない紡糸引取装置に適用することも可能である。
【0089】
上記実施形態では、本発明の糸処理装置が交絡装置20である場合について説明した。しかしながら、他の糸処理装置に本発明に係る油剤回収装置を適用してもよい。他の糸処理装置としては、例えば、糸に付与された油剤を均一化するマイグレーションノズルが挙げられる。また、上記実施形態では、糸走行空間24aの両端から流体が噴出される例について説明したが、本発明の糸処理装置は、糸走行空間24aの一端から流体が噴出されるものであってもよい。その場合、本発明の案内面および噴流案内部材は、糸走行空間24aから流体が噴出される側のみに設けられてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1:紡糸引取装置
2:油剤ガイド(油剤付与装置)
5:交絡付与機構(糸処理機構)
20:交絡装置(糸処理装置)
21:支持部材
22:交絡部(糸処理部)
23:糸ガイド部材(噴流案内部材)
23a:ガイド溝
24a:糸走行空間
30:油剤回収装置
31:筐体
31a:吸引口
31b、31c:開口部
33、34:開閉部材
32:ダクト部材(案内部材)
32a:導入口
32b:排出口
35、36:案内面
49:吸引流路
Y:糸