(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】浴室用パネル
(51)【国際特許分類】
E04C 2/26 20060101AFI20240905BHJP
E04C 2/38 20060101ALI20240905BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20240905BHJP
E04B 1/66 20060101ALI20240905BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
E04C2/26 Z
E04C2/38 P
E04B1/94 T
E04B1/66 A
E04B1/94 V
E04H1/12 301
(21)【出願番号】P 2020153662
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安沢 智明
(72)【発明者】
【氏名】永井 雄介
【審査官】齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-135667(JP,A)
【文献】特開平11-117432(JP,A)
【文献】特開2002-309752(JP,A)
【文献】特開2003-119932(JP,A)
【文献】特開2005-105654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/00 ー 2/54
E04B 1/62 ー 1/99
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿性を有する下地板と、
前記下地板の表面に貼り付けられ、防水性を有する表面材と、
前記下地板の裏面に貼り付けられ、前記下地板の吸湿を抑制する樹脂シートと、
前記下地板の外周縁に設けられたフレームと、を備え、
前記樹脂シートは、前記下地板よりも一回り小さく、
前記樹脂シートの周端は、前記下地板の周端面よりも前記下地板の中央側に位置して、前記下地板と前記フレームの間に挟み込まれている浴室用パネル。
【請求項2】
前記樹脂シートは、自己消火性を有している請求項1に記載の浴室用パネル。
【請求項3】
前記樹脂シートは、前記下地板の割れによる破片の飛散を抑制する請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の浴室用パネル。
【請求項4】
前記樹脂シート及び前記フレームは、前記下地板の裏面を覆っている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の浴室用パネル。
【請求項5】
前記下地板はセメントボードであり、
前記樹脂シートは二酸化炭素の透過を抑制する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の浴室用パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浴室用パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バスルームユニット、シャワールームユニット等に用いられる壁面パネルが開示されている。第二壁面パネルは、セメント板等の基材と、基材の表面に形成されたベースコート層及びトップコート層と、基材の裏面に形成されたバックコート層を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基材は、吸湿によって膨張し、水蒸気の放散によって収縮しうる。基材の膨張及び収縮は、壁面パネルの反り及び割れの一因となる。特許文献1に開示のように、塗布して形成されたバックコート層は、気泡や、塗布漏れによる孔を生じやすく、基材の吸湿を抑制するという点において改善が望まれる。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、下地板の吸湿に起因する浴室用パネルの反り及び割れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の浴室用パネルは、吸湿性を有する下地板と、前記下地板の表面に貼り付けられ、防水性を有する表面材と、前記下地板の裏面に貼り付けられ、前記下地板の吸湿を抑制する樹脂シートと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る浴室であって、浴槽、洗い場、柱部材、天井つなぎ部材、及び壁面パネルを組み付けた状態を示す斜視図である。
【
図4】
図2における矢視A-A断面に対応する左パネルの断面図である。
【
図5】
図2における矢視B-B断面に対応する左パネルの断面図である。
【
図7】フレームに第1嵌合部を嵌合する態様を表す図である。
【
図8】第2嵌合部にフレームを嵌合する態様を表す図である。
【
図9】第2嵌合部とフレームの嵌合状態を解除する態様を表す図である。
【
図11】第3嵌合部に補強部材を嵌合する態様を表す図である。
【
図12】柱連結部材にフレームを嵌合する態様を表す図である。
【
図13】柱連結部材とフレームの嵌合状態を表す図である。
【
図14】実施形態2に係る柱連結部材とフレームの嵌合状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
実施形態1の浴室10は、
図1に示すように、浴槽11、洗い場床12、柱部材13A,13B,13C,13D、天井つなぎ部材14、及び壁面パネル20等の部材を組み立てることにより形成されるユニットである。以下、浴室10の設置状態における鉛直方向を上下方向とし、浴室10の室内側から壁面パネル20を見て手前側を前方、奥側を後方とし、左側を左方、右側を右方として説明する。各図において、上下方向を矢印UP及びDWで示し、前後方向を矢印FR及びBWで示し、左右方向を矢印L及びRで示す。
【0009】
柱部材13A,13B,13C,13Dは浴室10の躯体を構成するものである。柱部材13A,13B,13C,13Dの各々は、鋼板に折り曲げ加工を施して形成されている(
図13参照)。柱部材13A,13B,13C,13Dの各々は、左方を向く左壁と、後方を向く後壁と、前方を向く前壁と、右方を向く右壁と、を有している。柱部材13A,13B,13C,13Dは、浴室10の4つのコーナーにそれぞれ設けられている。
【0010】
天井つなぎ部材14は、金属製であり、一方向に延びて形成されている。天井つなぎ部材14は、4つの柱部材13A,13B,13C,13Dのうち隣り合う部材同士をつないでいる。
【0011】
壁面パネル20は、浴槽11及び洗い場床12を囲うように配置されて、浴室10の壁面を構成している。
図1において、柱部材13B,13C間と、柱部材13C,13D間と、柱部材13D,13A間に配置された壁面パネルは図示されていない。壁面パネル20は、浴槽11、及び洗い場床12の周縁に設けられた壁載置部に載置されている。壁面パネル20には、図示しない水栓等の機能部品が壁面パネル20を貫通する形態で取り付けられている。
【0012】
壁面パネル20は、
図2に示すように、左側に配置された左パネル21と、右側に配置された右パネル22と、左パネル21と右パネル22を連結するパネル連結部材60と、を備えている。左パネル21は浴室用パネルの一例であり、右パネル22は浴室用パネルの他の例である。左パネル21及び右パネル22の各々は、左右の寸法よりも高さ寸法が大きい長方形状である。左パネル21及び右パネル22は、左右に並んで設置されて一の壁面を構成している。左パネル21と右パネル22で共通する構成については、左パネル21について説明し、右パネル22についての説明を省略する。左パネル21と右パネル22で共通する各部の構成において、左パネル21の構成には添え字「A」を付して、右パネル22の構成には添え字「B」を付す。
【0013】
左パネル21は、
図3に示すように、下地板31A、樹脂シート36A、フレーム40A、表面材37Aを備えている。左パネル21は、表面材37A、下地板31A、樹脂シート36Aがこの順に積層して、外周縁にフレーム40Aが設けられた複合パネルである。左パネル21の表面、すなわち浴室10の室内側の面は、表面材37Aによって構成されている。
【0014】
下地板31Aは、吸湿性を有している。下地板31Aは、膨張及び収縮の少なくとも一方をする板材である。下地板31Aが膨張したり収縮したりする要因は特に限定されない。例えば、下地板31Aは、温度に応じて膨張及び収縮しうる。下地板31Aは、吸湿によって膨張し、水蒸気の放散によって膨張しうる。その他にも、下地板31は、クリープ変形に伴って膨張及び収縮の少なくとも一方をしうる。下地板31Aの厚みは、好ましくは1.0mm以上20mm以下であり、より好ましくは2.0mm以上15mm以下であり、さらに好ましくは3.0mm以上9.5mm以下である。下地板31Aは、例えば、素地材料としてセメントを含むセメントボードであってもよい。セメントボードは、薄くても強度を確保できるという観点で好ましい。下地板31Aがセメントボードの場合には、下地板31Aの厚みは、好ましくは3.0mm以上6.0mm以下であり、より好ましくは4.0mm以上5.0mm以下である。本開示において、セメントボードは、セメントを含んでいればよく、素地材料はモルタル、コンクリート、繊維補強セメント等であってもよい。
【0015】
樹脂シート36Aは、
図4及び
図5に示すように、下地板31Aの裏面33Aに貼り付けられている。樹脂シート36Aは、図示しない粘着層を介して下地板31Aの裏面33Aに接着されている。粘着層は樹脂シート36Aの全面に設けられている。樹脂シート36Aは、下地板31Aよりも一回り小さい粘着層付きシートによって構成されている。
【0016】
樹脂シート36Aは、下地板31Aの吸湿を抑制する。樹脂シート36Aは、低透水性であり、外部の水蒸気や水が後側から下地板31A側に透過することを抑える。樹脂シート36Aは、弾性を有し、下地板31Aの割れによる破片の飛散を抑制する。樹脂シート36Aは、樹脂シート36A自身よりも割れ等の脆性的な破壊を生じやすい下地板31Aに対して、下地板31Aの略全面に亘って粘着している。樹脂シート36Aは、自己消火性を有している。「樹脂シートの自己消火性」は、火源を取り除くと、樹脂シート単独では燃焼が継続しない性質を指す。
【0017】
樹脂シート36Aは二酸化炭素の透過を抑制する。樹脂シート36Aの厚さは特に限定されない。樹脂シート36Aは、例えば、100μmの厚さで測った場合の二酸化炭素透過度が、2000cc/(m2・24hr・1atm)以下である樹脂材料によって形成することが好ましい。上記二酸化炭素透過度は、JIS K7126に準拠し、差圧法にて、25℃、ドライ条件下で測定した値である。下地板31Aがセメントボードである場合、セメントと空気中の二酸化炭素が反応して、下地板31Aが収縮したり、下地板31Aの靭性が低下したりする懸念がある。樹脂シート36Aは、空気中の二酸化炭素の透過を抑えて下地板31Aの裏面33Aから二酸化炭素が吸収されること抑制する。
【0018】
樹脂シート36Aの材質は特に限定されない。樹脂シート36Aは、上述の種々の観点から、ポリエチレンテレフタラート(PET)シートであることが好ましい。
【0019】
樹脂シート36Aは、下地板31Aの裏面33Aにおいて裏側に露出した部分を覆っている。換言すれば、左パネル21を裏側から見た場合に、フレーム40Aの裏面及び樹脂シート36Aの裏面が見えて、下地板31Aの裏面33Aは直接見えない。下地板31Aの外周縁34Aは、裏側からフレーム40Aによって覆われている。樹脂シート36Aは、下地板31Aの裏面33Aにおいてフレーム40Aによって覆われない領域、すなわちフレーム40Aに囲まれた領域を少なくとも覆っている。すなわち、樹脂シート36A及びフレーム40Aは、下地板31Aの裏面を覆っている。樹脂シート36Aの周端は、下地板31Aとフレーム40Aの間に挟み込まれている。樹脂シート36Aの周端は、下地板31Aの周端面35Aよりも下地板31Aの中央側に位置している。
【0020】
フレーム40Aは、
図3に示すように、上枠41A、下枠42A、左枠43A、右枠44Aを備えている。枠41A,42A,43A,44Aは、クリップ45A等を用いて長方形の枠状に組み付けられている。各枠41A,42A,43A,44Aは、金属板材を曲げ加工して形成されている。上枠41Aと下枠42Aは鏡面対称に構成されている。左枠43Aと右枠44Bは鏡面対称に構成されている。
【0021】
フレーム40Aは、
図4及び
図5に示すように、下地板31Aの外周縁34Aを咥え込んで取り付けられている。フレーム40Aにおいて、下地板31Aの外周縁34Aを咥え込む部分は、表面片部51A、裏面片部52A、外周片部53Aを有し断面略U字状に形成されている。表面片部51Aは、下地板31Aの表面32Aに接触している。裏面片部52Aは、下地板31Aの裏面33Aに樹脂シート36Aを介して接触している。裏面片部52Aは、樹脂シート36Aとの間に隙間を有して近接していてもよい。外周片部53Aは、下地板31Aの周端面35Aと対向している。裏面片部52Aの幅寸法は、表面片部51Aの幅寸法よりも大きい。表面片部51Aと裏面片部52Aは、下地板31Aの外周縁34Aを挟み込んで、フレーム40Aに対して下地板31Aの前後の位置を規定している。
【0022】
下地板31Aは、膨張及び収縮の少なくとも一方に伴ってフレーム40Aに対して摺動する。換言すれば、下地板31Aは、表面片部51Aと裏面片部52Aの間において膨張及び収縮が許容されている。下地板31Aの周端面35Aと、外周片部53Aの内面54Aとの間には、隙間55Aが形成されている。外周片部53Aの内面54Aは、「フレーム40Aのうち周端面35Aと対向する面」に対応する。下地板31Aの外周縁34Aの厚さ寸法は、表面片部51Aと裏面片部52Aの間の寸法と同じか、表面片部51Aと裏面片部52Aの間の寸法に対してわずかなクリアランスを有する寸法である。
【0023】
左枠43Aは、
図5に示すように、下地板31Aの外周側から下地板31Aの中央側に向かって凹んだ形状をなす内凹み部56Aを有している。右枠44Aも同様に内凹み部56Aを有している(
図6参照)。下地板31Aの中央側は、下地板31Aの板面方向における中央側であり、左枠43A及び右枠44Aにおいて左右方向の内側である。内凹み部56Aは、裏面片部52A、内周片部57A、後片部58Aを有し断面略U字状に形成されている。内凹み部56Aは、下地板31Aの外周側に向けて開いた形状をなしている。内周片部57Aは、裏面片部52Aの内周端から後方に向けて延びている。後片部58Aは、内周片部57Aの後端から下地板31Aの外周側に向けて延びている。つまり、左枠43A及び右枠44Aは、下地板31Aの外周側に向けて開いた形状をなす内凹み部56Aと、下地板31Aの中央側に向けて開いた形状をなして下地板31Aを咥え込む部分とによって、断面略S字状に形成されている。
【0024】
後片部58Aは、下地板31Aの外周側の端部に折り返し部59Aを有している。左枠43Aの折り返し部59Aは、内凹み部56A内に向けて折り返されて、柱部材13Aに固定された柱連結部材80(
図2参照)に接触する。右枠44Aの折り返し部59Aは、内凹み部56A内に向けて折り返されて、パネル連結部材60に接触する(
図6参照)。
【0025】
図3に示す表面材37Aは、防水性を有している。本開示において、「防水性」は厳密な防水に限られず、例えば、陶器質を有するタイル等において少し吸水する場合も含みうる。表面材37Aは、低透水性であり、浴室10の室内の水蒸気や水が浴室10の室内側から下地板31A側に透過することを抑える。表面材37Aは、下地板31Aよりも膨張しにくくかつ下地板31Aよりも収縮しにくい部材である。例えば、壁面パネル20の使用環境下において、温度変化、吸湿、及びクリープ変形に起因して生じうる表面材37Aの膨張収縮量は、下地板31Aの膨張収縮量よりも小さい。表面材37Aは、タイル、石板等の無機質の板材や、鋼板製のパネル等が例示される。表面材37Aは、仕上材とも称される。タイル用の下地板31Aとしては、強度が高いセメントボードが好適である。表面材37Aは下地板31Aの表面32Aに複数の配置されている。隣り合う表面材37Aの間には目地材39A(
図4参照)が充填されている。
【0026】
表面材37Aは、
図4及び
図5に示すように、下地板31Aの表面32Aに貼り付けられている。表面材37Aは、弾性及び粘着性を有する接着部38Aを介して下地板31A及びフレーム40Aの表面32A,46Aに接着されている。接着部38Aは、合成樹脂製の弾性接着剤によって形成されている。接着部38Aは表面材37Aとフレーム40Aを接着するとともに、表面材37Aと下地板31Aを接着している。下地板31Aとフレーム40Aの間には、接着部38Aが形成されていない。すなわち、下地板31Aとフレーム40Aは、直接接着されておらず、表面材37Aを介して接着されている。下地板31Aとフレーム40Aの膨張及び収縮の差は、下地板31Aと表面材37Aの間の接着部38Aが弾性変形するとともに、表面材37Aとフレーム40Aとの間の接着部38Aが弾性変形することによって吸収される。
【0027】
図6を参照して、左パネル21と右パネル22の連結に係る構成について説明する。フレーム40Aは、右パネル22に連結するための連結構造として内凹み部56Aを有している。右パネル22は、左パネル21に隣接する部材に対応する。フレーム40Bは、左パネル21に連結するための連結構造として内凹み部56Bを有している。左パネル21は、右パネル22に隣接する部材に対応する。
【0028】
左パネル21と右パネル22は、パネル連結部材60によって連結されている。パネル連結部材60は、左パネル21の右縁と右パネル22の左縁において、上下に間隔を空けて複数設けられている(
図1参照)。複数のパネル連結部材60には、補強部材70が取り付けられている。
図1及び
図2においては補強部材70を省略している。
【0029】
パネル連結部材60は、合成樹脂製の押出成形体である。パネル連結部材60は、第1嵌合部61、第2嵌合部62、第3嵌合部63、後壁部64、中間壁部65を有している。後壁部64は、フレーム40A,40Bの後方に配置されている。中間壁部65は、フレーム40A,40Bの間に配置されている。
【0030】
第1嵌合部61は、フレーム40Aと嵌合している。第1嵌合部61は、中間壁部65から左方に突出して、内凹み部56A内に挿入されている。第1嵌合部61は、裏面片部52Aと折り返し部59Aの間に嵌り込んで、パネル連結部材60に対するフレーム40Aの前後の位置を規定している。第1嵌合部61は、内周片部57Aの右面に接触して、パネル連結部材60が左方へ移動することを規制している。パネル連結部材60は、第1嵌合部61がフレーム40Aに嵌合した状態において、上下に移動自在である。このため、壁面パネル20においてパネル連結部材60の位置を調整しやすい。
【0031】
第2嵌合部62は、フレーム40Bと嵌合している。第2嵌合部62は、中間壁部65の前端部から右後方に向かって延びて、折り返し部59Bに近接している。第2嵌合部62は、折り返し部59Bに接触していてもよい。第2嵌合部62の前端は、第1嵌合部61の前端よりも後方に位置している。第2嵌合部62の前端と裏面片部52Bの裏面との間には、図示しない隙詰め部材を挿入するための隙間が設定されている。このような構成により、左パネル21及び右パネル22の反りや厚さ寸法のばらつきに応じて隙詰め部材の有無や厚さを変更して、左パネル21に対して右パネル22の前後の位置を調整できる。第2嵌合部62は、裏面片部52Bと折り返し部59Bの間に嵌り込んで、パネル連結部材60に対するフレーム40Bの前後の位置を規定している。
【0032】
後壁部64の左端部には、爪部66が設けられている。爪部66は内周片部57Aの左面に引っ掛かることによって、パネル連結部材60が右方へ移動することを規制している。後壁部64の右端部には、ガイド部67が設けられている。ガイド部67は、後壁部64の右端から前方に向かって延びている。ガイド部67は、フレーム40Bの第2嵌合部62への嵌合を案内する。ガイド部67の前端は、右側に曲がった形状であり、後片部58Aを第2嵌合部62内に誘いこむとともに、嵌合状態を解除する際にはフレーム40Aとガイド部67とが干渉しないように形成されている。
【0033】
補強部材70は、
図10及び
図11に示すように、複数の第3嵌合部63と対応する位置に複数のスリット71が形成されている。各スリット71の下側には、第3嵌合部63を挿入するための挿入孔72が形成されている。補強部材70は、左パネル21の右縁と右パネル22の左縁において、上下に延びた溝型に形成されている。補強部材70は、複数のパネル連結部材60に跨って取り付けられて、壁面パネル20の剛性を向上する。
【0034】
第3嵌合部63は、補強部材70と嵌合している。補強部材70は、フレーム40A及びフレーム40B以外の部材の一例である。第3嵌合部63は、
図11に示すように、後壁部64の裏面から突出している。第3嵌合部63は、掛け止め部68と挟み込み部69を有して、断面T字状に形成されている。掛け止め部68は、スリット71に通されて、補強部材70を掛け止めしている。挟み込み部69は、後壁部64との間でスリット71の左右の縁部を挟み込んでいる。
【0035】
図12及び
図13を参照して、右パネル22と柱部材13Bの連結に係る構成について説明する。左パネル21と柱部材13Aの連結に係る構成は、右パネル22と柱部材13Bの固定に係る構成と左右対称でありその説明を省略する。
【0036】
フレーム40Bは、下地板31Bの外周縁34Bに取り付けられている。フレーム40Bは、ねじ81によって柱部材13Bに固定された柱連結部材80を介して柱部材13Bに連結されている。ねじ81は、固定部に対応する。柱部材13Bは、右パネル22に隣接する部材に対応する。フレーム40Bは、柱部材13Bに連結するための連結構造として内凹み部56Bを有している。
【0037】
柱連結部材80は、金属板材を曲げ加工して形成されている。柱連結部材80は、後板部83、被固定部84、抜け止め部85を有している。後板部83は、柱部材13Bの後方に配置され、柱部材13Bの後壁に接触している。被固定部84は、後板部83の左端から前方に延びて、柱部材13Bの左壁に接触している。被固定部84は、ねじ穴を有し、ねじ81によって柱部材13Bの左壁にねじ止めされている。抜け止め部85は、被固定部84と上下に並んで設けられている。抜け止め部85は、山型に曲がった形状であり、ねじ81の頭部82よりも左方に突出している。抜け止め部85は、後片部58Bにおける折り返し部59Bに前方から接触することによって、フレーム40Bの前方への移動を規制している。
【0038】
フレーム40Bが柱部材13Bに連結された状態において、内凹み部56B内にねじ81の頭部82が配置される。ねじ81の頭部82は、固定部の少なくとも一部に対応する。フレーム40Bは、柱部材13Bに連結された状態においてねじ81よりも後方に位置する後片部58Bを有している。後片部58Bにおける折り返し部59Bは、柱連結部材80の抜け止め部85に接触している。
【0039】
後片部58Bは、右パネル22の周端面23よりも内周側に控えて位置している。周端面23は、右パネル22において最も外周側に位置する部材の端面であり、
図12に示す外周片部53Bの右面である。周端面23は、フレーム40Bが柱部材13Bに連結された状態において、シール材86を介して柱連結部材80に接触する。フレーム40Bが柱部材13Bに連結された状態において、後片部58Bと柱部材13Bの左面との間に隙間が形成されている。後片部58Bが柱部材13Bの左面から離れた距離L1は、ねじ81の頭部82が柱部材13Bの左面から突出する高さより大きい。後片部58Bが柱部材13Bの左面から離れた距離L1は、抜け止め部85が柱部材13Bの左面から突出する高さより小さい。
【0040】
壁面パネル20の設置方法の一例について説明する。壁面パネル20の設置に先立って、浴槽11、洗い場床12、柱部材13A,13B,13C,13D、天井つなぎ部材14が設置されている。複数の柱連結部材80が柱部材13A,13Bにねじ止めされている。
【0041】
まず、作業者は、左パネル21を設置する。作業者は、左パネル21を所定の位置に移動させて、浴槽11の壁載置部に載置する。この際、左枠43Aにおける後片部58Aは、柱部材13Aに固定された柱連結部材80の抜け止め部85よりも後方に配置される。
【0042】
次に、作業者は、パネル連結部材60を左パネル21の右縁に取り付ける。
図7に示すように、第1嵌合部61は、フレーム40Aに対して左右方向(下地板31Aの板面に平行な方向)に沿って嵌合する。作業者は、第1嵌合部61を右枠44Aの内凹み部56Aに右方から嵌合させて、パネル連結部材60を左パネル21の右縁に取り付ける。
【0043】
次に、作業者は、複数のパネル連結部材60に補強部材70を取り付ける。作業者は、
図11に示すように、補強部材70の挿入孔72に第3嵌合部63を挿入して、補強部材70をパネル連結部材60に対して下方にスライドさせる。すると、挟み込み部69と後壁部64との間に、スリット71の左右の縁部が進入して、掛け止め部68がスリット71の上縁に接触する。このように、右パネル22を設置する前に補強部材70を取り付けることによって、作業者はパネル連結部材60の後側に回ることなく補強部材70を取り付けることができる。
【0044】
次に、作業者は、右パネル22を設置する。
図8に示すように、フレーム40Bは、第2嵌合部62に対して前方(浴室10の室内側)から嵌合する。
図12に示すように、フレーム40Bは、抜け止め部85に対して前方(浴室10の室内側)から嵌合する。つまり、フレーム40Bの左枠43Bと右枠44Bは、それぞれパネル連結部材60と柱連結部材80に対して前方から嵌合する。作業者は、右パネル22を左パネル21と柱部材13Bの間に前方から移動させて、洗い場床12の壁載置部に載置する。この過程で、作業者は、左枠43Bの内凹み部56Bをパネル連結部材60における第2嵌合部62に嵌合させ、右枠44Bの内凹み部56Bを柱連結部材80における抜け止め部85に嵌合させる。右枠44Bの後片部58Bは、周端面23よりも内周側に控えて位置している。このため、内凹み部56Bを抜け止め部85に嵌合させる際に、後片部58Bとねじ81の頭部82との干渉を避けることができる。このようにして、壁面パネル20の設置が完了する。
【0045】
壁面パネル20を取り外す場合には、作業者は、まず右パネル22を取り外す。
図9に示すように、フレーム40Bは、第2嵌合部62への嵌合方向と平行ではない方向に移動させることによって嵌合状態が解除される。作業者は、フレーム40Bと柱連結部材80の嵌合状態を解除してから、右パネル22を、左縁を軸として回転させながら右前方に移動させる。すると、後片部58Bが第2嵌合部62から右前方に抜けて、フレーム40Bと第2嵌合部62の嵌合状態が解除される。このようにして、右パネル22をパネル連結部材60から取り外すことができる。次に、右パネル22が配置されていた空間を利用しつつ、左パネル21を取り外して、壁面パネル20の取り外しが完了する。
【0046】
続いて、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0047】
本実施形態の左パネル(浴室用パネル)21Aは、吸湿性を有する下地板31Aと、下地板31Aの表面32Aに貼り付けられ、防水性を有する表面材37Aと、下地板31Aの裏面33Aに貼り付けられ、下地板31Aの吸湿を抑制する樹脂シート36Aと、を備えている。
【0048】
本実施形態の左パネル21によれば、樹脂シート36Aによって下地板31Aの吸湿が抑制されるから、吸湿よって生じる下地板31Aの膨張及び水蒸気の放散によって生じる下地板31Aの収縮を低減できる。この結果、下地板31Aの膨張及び収縮に起因する壁面パネル20反り及び割れを抑制できる。
【0049】
以下、本実施形態とは異なり下地板31Aの裏面33Aに塗布されたシーラーを備える構成と比較しつつ、本実施形態の作用及び効果を具体的に説明する。塗布する形態のシーラーは、気泡や、塗布漏れによる孔を生じやすく、下地板31Aの吸湿を抑制する機能が損なわれやすい。本実施形態では、樹脂シート36Aを貼り付けるから、気泡や、塗布漏れによる孔の問題が生じず、下地板31Aの吸湿を抑制する機能を十分に確保できる。
【0050】
さらに、塗布する形態のシーラーは、原料に有機溶剤が使用され、有害性が課題である。本実施形態では、樹脂シート36Aを貼り付ける際に、有機溶剤を扱うことによる有害性等の課題が生じない。
【0051】
さらに、塗布する形態のシーラーは、ダマや塗布ムラに起因して、壁面パネルの裏面に凹凸を生じやすい。壁面パネルの裏面に凹凸を生じると、水栓等の機能部品や補強部材をうまく取り付けることができない場合がある。本実施形態では、下地板31Aの裏面33Aに樹脂シート36Aが貼り付けられている構成上、ダマや塗布ムラの問題が生じず、壁面パネル20の裏面を平坦にできる。この結果、壁面パネル20の裏面に、機能部品や補強部材等を好適に取り付けることができる。
【0052】
本実施形態において、樹脂シート36Aは、下地板31Aの割れによる破片の飛散を抑制する。この構成によれば、例えば、使用者が倒れて左パネル21にぶつかる等して、左パネル21に不意に過大な外力が加えられた際に、樹脂シート36Aによって左パネル21が割れて飛び散ることを抑制できる。
【0053】
本実施形態において、樹脂シート36Aは、自己消火性を有している。この構成によれば、樹脂シート36Aを貼り付けたことに起因して、壁面パネル20の耐火性が損なわれにくい。
【0054】
本実施形態の左パネル21は、下地板31Aの外周縁34Aに設けられたフレーム40Aを備えている。フレーム40Aは、樹脂シート36Aに対して裏面側から重なっている。この構成によれば、フレーム40Aによって、下地板31Aと樹脂シート36Aとの間に水分が進入することを抑制できる。フレーム40Aによって、樹脂シート36Aが剥がれることを抑制できる。これらの結果、樹脂シート36Aによって下地板31Aの吸湿をより一層抑制でき、下地板31Aの膨張及び収縮に起因する壁面パネル20反り及び割れをより一層抑制できる。
【0055】
本実施形態において、樹脂シート36A及びフレーム40Aは、下地板31Aの裏面33Aを覆っている。この構成によれば、下地板31Aの裏面33Aにおいて裏側に露出した部分がある構成に比して、下地板31Aの吸湿をより一層抑制できる。この結果、下地板31Aの膨張及び収縮に起因する壁面パネル20の反り及び割れをより一層抑制できる。
【0056】
本実施形態において、下地板31Aはセメントボードであり、樹脂シート36Aは二酸化炭素の透過を抑制する。この構成によれば、下地板31Aが空気中の二酸化炭素を吸収して、下地板31Aの成分であるセメントが炭酸化することを抑制できる。この結果、セメントの炭酸化によって生じる下地板31Aの収縮及び靭性低下を抑制でき、下地板31Aの耐久性を向上できる。
【0057】
<実施形態2>
実施形態2の壁面パネル20は、柱連結部材180が実施形態1と相違する。柱連結部材180は、
図14に示すように、柱部材13Aの後壁に接触する後板部83を有しておらず、被固定部84と抜け止め部85によって構成されている。
【0058】
柱連結部材180が柱部材13Bに固定された状態において、被固定部84と抜け止め部85は、柱部材13Bの後壁よりも前方に位置している。被固定部84と抜け止め部85は、フレーム40Bの内凹み部56Bと柱部材13Bの間に全体が収まっている。
【0059】
本実施形態では、フレーム40Bが柱部材13Bに連結された状態において、柱連結部材180及び柱部材13Bは、フレーム40Bの後面47Bよりも前方に位置している。この構成によれば、フレーム40Bと柱部材13Bの連結構造を、フレーム40Bよりも前方の空間に配置することができる。このため、フレーム40Bの後方に柱連結部材180及び柱部材13Bを配置するための空間を確保しなくてもよく、浴室10の設置スペースをコンパクトにできる。
【0060】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0061】
(1)浴室用パネルは天井パネルであってもよい。浴室用パネルの位置は浴槽側の柱部材と洗い場側の柱部材の間に限定されない。浴室用パネルの位置は、浴槽側の柱部材の間、洗い場側の柱部材の間であってもよい。
【0062】
(2)壁面パネルは、一枚のパネルによって構成されていてもよく、三枚以上のパネルによって構成されていてもよい。
【0063】
(3)下地板はセメントボードに限定されず、素地材料として石膏を含む石膏ボード、合成樹脂製発泡板等、種々の材質のボードを使用できる。
【0064】
(4)樹脂シートが下地板の裏面を覆う位置は限定されない。例えば、下地板の裏面において一部が樹脂シートに覆われず裏面側に露出していてもよい。
【0065】
(5)樹脂シートの材質、物性、サイズ、貼り付け態様は適宜変更可能である。樹脂シートは、下地板の裏面に熱溶着されていてもよい。
【0066】
(6)フレームの形状、配置は適宜変更可能である。フレームは下地板の外周縁を咥え込んでおらず、裏面に固定されていてもよい。フレームは、樹脂シートと重なっていなくてもよい。
【0067】
(7)柱部材の形状及び構成は限定されない。柱部材は、断面C字状に限られず、断面矩形状であってもよい。柱部材は、浴室パネルの周端面に対向する壁部を有していれば、その他の壁部を有していなくてもよく、その他の壁部の位置及び形状が変更されてもよい。例えば、
図12から
図14に示す柱部材13Bにおいて、後壁が左壁の後端から左方に曲がった形状であってもよく、右壁が前壁の右端から前方に曲がった形状であってもよい。
【0068】
(8)各部の材質、形状、成形方法、組み付け態様は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0069】
21…左パネル(浴室用パネル)、31A…下地板、32A…表面、33A…裏面、36A…樹脂シート、37A…表面材、40A…フレーム