(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】車両用灯具およびランプコントロールモジュール
(51)【国際特許分類】
H05B 45/10 20200101AFI20240905BHJP
H05B 45/48 20200101ALI20240905BHJP
H05B 45/38 20200101ALI20240905BHJP
H05B 45/375 20200101ALI20240905BHJP
B60Q 1/34 20060101ALI20240905BHJP
B60Q 1/38 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H05B45/10
H05B45/48
H05B45/38
H05B45/375
B60Q1/34 A
B60Q1/38 B
(21)【出願番号】P 2020155749
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】宮下 雄一
【審査官】谷口 東虎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-106153(JP,A)
【文献】特表2018-510093(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208545(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/10
H05B 45/48
H05B 45/38
H05B 45/375
B60Q 1/34
B60Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立に点消灯が制御可能な複数の発光素子を含むターンランプと、
前記複数の発光素子の制御に関するパラメータを格納する不揮発性メモリと、
ソフトウェアプログラムを実行することにより、前記パラメータにもとづいて、各時刻における前記複数の発光素子の点灯状態を指示する複数の点灯指令を生成する信号処理装置と、
前記複数の点灯指令にもとづいて、前記複数の発光素子それぞれを駆動する駆動回路と、
を備え、
前記パラメータは、前記複数の発光素子の輝度が0から目標値に達するまでの調光時間を規定する第2データを含み、
前記信号処理装置は、各時刻における前記複数の発光素子の輝度を指示する前記複数の点灯指令を生成することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
独立に点消灯が制御可能な複数の発光素子を含むターンランプと、
前記複数の発光素子の制御に関するパラメータを格納する不揮発性メモリと、
ソフトウェアプログラムを実行することにより、前記パラメータにもとづいて、各時刻における前記複数の発光素子の点灯状態を指示する複数の点灯指令を生成する信号処理装置と、
前記複数の点灯指令にもとづいて、前記複数の発光素子それぞれを駆動する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、Nチャンネル(N≧2)の出力を有し、
前記パラメータは、前記複数の発光素子の個数m(≦N)を規定する第3データを含むことを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
独立に点消灯が制御可能な複数の発光素子を含むターンランプと、
前記複数の発光素子の制御に関するパラメータを格納する不揮発性メモリと、
ソフトウェアプログラムを実行することにより、前記パラメータにもとづいて、各時刻における前記複数の発光素子の点灯状態を指示する複数の点灯指令を生成する信号処理装置と、
前記複数の点灯指令にもとづいて、前記複数の発光素子それぞれを駆動する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、Nチャンネル(N≧2)の出力を有し、
前記
信号処理装置は、第1チャンネルから第Nチャンネルに向かって順に点灯する第1モードと、第Nチャンネルから第1チャンネルに向かって順に点灯する第2モードと、が切りかえ可能であり、
前記パラメータは、前記第1モードと前記第2モードを指定する第4データを含むことを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
前記パラメータは、前記複数の発光素子それぞれの点灯タイミングを、基準時刻からの経過時間として規定する複数の第1データを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記複数の発光素子は直列に接続され、
前記駆動回路は、
前記複数の発光素子の直列接続回路に駆動電流を供給する定電流回路と、
前記複数の発光素子と並列に接続される複数のバイパススイッチと、
前記複数の点灯指令に応じて前記複数のバイパススイッチを駆動するコントローラと、
を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項6】
独立に点消灯が制御可能な複数の発光素子を含むターンランプを備える車両用灯具に使用されるランプコントロールモジュールであって、
前記複数の発光素子の制御に関するパラメータを格納する不揮発性メモリと、
ソフトウェアプログラムを実行することにより、前記パラメータにもとづいて、各時刻における前記複数の発光素子の点灯状態を指示する複数の点灯指令を生成する信号処理装置と、
前記複数の点灯指令にもとづいて、前記複数の発光素子それぞれを駆動する駆動回路と、
を備え、
前記パラメータは、前記複数の発光素子の輝度が0から目標値に達するまでの調光時間を規定する第2データを含み、
前記信号処理装置は、各時刻における前記複数の発光素子の輝度を指示する前記複数の点灯指令を生成することを特徴とするランプコントロールモジュール。
【請求項7】
独立に点消灯が制御可能な複数の発光素子を含むターンランプを備える車両用灯具に使用されるランプコントロールモジュールであって、
前記複数の発光素子の制御に関するパラメータを格納する不揮発性メモリと、
ソフトウェアプログラムを実行することにより、前記パラメータにもとづいて、各時刻における前記複数の発光素子の点灯状態を指示する複数の点灯指令を生成する信号処理装置と、
前記複数の点灯指令にもとづいて、前記複数の発光素子それぞれを駆動する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、Nチャンネル(N≧2)の出力を有し、
前記パラメータは、前記複数の発光素子の個数m(≦N)を規定する第3データを含むことを特徴とするランプコントロールモジュール。
【請求項8】
独立に点消灯が制御可能な複数の発光素子を含むターンランプを備える車両用灯具に使用されるランプコントロールモジュールであって、
前記複数の発光素子の制御に関するパラメータを格納する不揮発性メモリと、
ソフトウェアプログラムを実行することにより、前記パラメータにもとづいて、各時刻における前記複数の発光素子の点灯状態を指示する複数の点灯指令を生成する信号処理装置と、
前記複数の点灯指令にもとづいて、前記複数の発光素子それぞれを駆動する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、Nチャンネル(N≧2)の出力を有し、
前記車両用灯具は、第1チャンネルから第Nチャンネルに向かって順に点灯する第1モードと、第Nチャンネルから第1チャンネルに向かって順に点灯する第2モードと、が切りかえ可能であり、
前記パラメータは、前記第1モードと前記第2モードを指定する第4データを含むことを特徴とするランプコントロールモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車などの車両に用いられる灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用灯具の高機能化が進められており、ヘッドランプには、ロービーム、ハイビーム、ターンシグナルランプ、ポジションランプ、デイタイムランニングランプなど、役割が異なる複数のランプが設けられ、車両からの制御信号に応じて、複数のランプの光源を適切な輝度で発光させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、いくつかの車両に、一方向に流れるように順に点灯していくターンシグナルランプ(以下、シーケンシャルターンランプという)が搭載されはじめている。ターンシグナルランプの点灯パターンの仕様は、車両ごとに規定されるため、ランプメーカは、要求仕様に応じて、ランプの制御システムを設計する必要があった。
【0005】
本開示はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ターンシグナルランプのさまざまな点灯パターンに対応可能な車両用灯具の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様は、車両用灯具に関する。車両用灯具は、独立に点消灯が制御可能な複数の発光素子を含むターンランプと、複数の発光素子の制御に関するパラメータを格納する不揮発性メモリと、ソフトウェアプログラムを実行することにより、パラメータにもとづいて、各時刻における複数の発光素子の点灯状態を指示する複数の点灯指令を生成する信号処理装置と、複数の点灯指令にもとづいて、複数の発光素子それぞれを駆動する駆動回路と、を備える。
【0007】
本開示の別の態様は、独立に点消灯が制御可能な複数の発光素子を含むターンランプを備える車両用灯具に使用されるランプコントロールモジュールに関する。ランプコントロールモジュールは、複数の発光素子の制御に関するパラメータを格納する不揮発性メモリと、ソフトウェアプログラムを実行することにより、パラメータにもとづいて、各時刻における複数の発光素子の点灯状態を指示する複数の点灯指令を生成する信号処理装置と、複数の点灯指令にもとづいて、複数の発光素子それぞれを駆動する駆動回路と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示のある態様によれば、ハードウェア/ソフトウェアプログラムを変更せずに、ターンシグナルランプをさまざまな態様で点滅させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る灯具システムのブロック図である。
【
図2】ターンシグナルランプの点滅を説明する図である。
【
図4】
図4(a)~(e)は、調光時間τ
0を説明する図である。
【
図5】車両用灯具の具体的な構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6(a)、(b)は、設定例1を示す図である。
【
図7】m<Nであるときの車両用灯具の構成例を示す回路図である。
【
図8】
図8(a)、(b)は、設定例2を示す図である。
【
図9】
図9(a)、(b)は、設定例3を示す図である。
【
図11】設定例4に対応する車両用灯具の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態または複数の実施形態を指すものとして用いる場合がある。
【0012】
一実施形態に係る車両用灯具は、独立に点消灯が制御可能な複数の発光素子を含むターンランプと、ランプコントロールモジュールを備える。ランプコントロールモジュールは、複数の発光素子の制御に関するパラメータを格納する不揮発性メモリと、ソフトウェアプログラムを実行することにより、パラメータにもとづいて、各時刻における複数の発光素子の点灯状態を指示する複数の点灯指令を生成する信号処理装置と、複数の点灯指令にもとづいて、複数の発光素子それぞれを駆動する駆動回路と、を備える。
【0013】
この構成によれば、ソフトウェアプログラムおよびハードウェアを大きく変更することなく、不揮発性メモリのパラメータに応じて、さまざまな点灯パターンを実現できる。
【0014】
一実施形態において、パラメータは、複数の発光素子それぞれの点灯タイミングを、基準時刻からの経過時間として規定する複数の第1データを含んでもよい。これにより、複数の発光素子の点灯順序と点灯する時間差を任意に設定できるようになる。
【0015】
一実施形態において、パラメータは、複数の発光素子の輝度が0から目標値に達するまでの調光時間を規定する第2データをさらに含んでもよい。信号処理装置は、各時刻における複数の発光素子の輝度を指示する複数の点灯指令を生成してもよい。これにより、各発光素子を徐々に点灯させたり、短時間で点灯させるなどの制御が可能となる。
【0016】
一実施形態において、駆動回路は、Nチャンネル(N≧2)の出力を有してもよい。パラメータは、複数の発光素子の個数m(≦N)を規定する第3データを含んでもよい。これにより、Nチャンネルのうち、mチャンネルを使用し、残りを不使用チャンネルに設定できるようになり、ランプコントロールモジュールを、発光素子の個数が異なる車両用灯具で汎用的に使用できるようになる。
【0017】
一実施形態において、駆動回路は、Nチャンネル(N≧2)の出力を有してもよい。ランプコントロールモジュールは、第1チャンネルから第Nチャンネルに向かって順に点灯する第1モードと、第Nチャンネルから第1チャンネルに向かって順に点灯する第2モードと、が切りかえ可能であってもよい。パラメータは、第1モードと第2モードを指定する第4データをさらに含んでもよい。
【0018】
一実施形態において、複数の発光素子は直列に接続されてもよい。駆動回路は、複数の発光素子の直列接続回路に駆動電流を供給する定電流回路と、複数の発光素子と並列に接続される複数のバイパススイッチと、複数の点灯指令に応じて複数のバイパススイッチを駆動するコントローラと、を含んでもよい。
【0019】
(実施形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0021】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
図1は、実施形態に係る灯具システム100のブロック図である。灯具システム100は、車両110と、車両用灯具(ヘッドランプ)200とを備える。車両110には、車両側のECU(Electronic Control Unit)やバッテリ、各ランプのスイッチなどが含まれる。
【0023】
車両用灯具200は、ロービーム(Lo)、ハイビーム(Hi)、デイタイムランニングランプ(DRL)、ポジションランプ(POS)、ターンシグナルランプ(TURN)などの機能を備える。
図1には、そのうち、ターンシグナルランプTURNに関連する構成のみを示す。
【0024】
車両用灯具200は、複数の発光素子203_1~203_N(N≧2)およびランプコントロールモジュール300を備える。ターンシグナルランプ用の光源202は、複数の発光素子203_1~203_Nを含む。
【0025】
発光素子203_1~203_Nは、LED(発光ダイオード)あるいはLD(レーザダイオード)などの半導体発光素子である。
【0026】
半導体発光素子としては、白色LED(発光ダイオード)や、レーザダイオード、有機EL(Electro Luminescence)素子などが例示される。発光素子203の個数Nは、ターンシグナルランプ用光源202に要求される明るさや意匠を考慮して定めればよく、特に限定されない。
【0027】
車両用灯具200には、車両110から電源ライン102を介して電源電圧+Bが供給される。
【0028】
また車両用灯具200には、車両110からジカ線104を介してターンシグナルランプ201の点灯指令であるターン同期信号TURN_SYNCが入力される。ターン同期信号TURN_SYNCは、ターンシグナルランプ201の点滅を指示する信号であり、ターンシグナルランプ201の点滅時には、ハイレベルとローレベルを所定の周期で交互に繰り返すパルス信号となり、ハイ区間が点灯、ロー区間が消灯に対応付けられる。ターンシグナルランプ201の非点滅状態(消灯状態)において、ターン同期信号TURN_SYNCはローに固定される。
【0029】
ランプコントロールモジュール300は、不揮発性メモリ308、入力インタフェース回路310、駆動回路330、信号処理装置400を備える。ランプコントロールモジュール300の主要な構成部品は、ひとつの筐体内に収容され、モジュール化されている。
【0030】
入力インタフェース回路310は、ターン同期信号TURN_SYNCを受信する。たとえば入力インタフェース回路310は、単なるバッファで構成してもよい。
【0031】
信号処理装置400は、ソフトウェアプログラムを実行可能なプロセッサを含む。信号処理装置400は、マイクロコントローラやCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などで構成することができる。
【0032】
不揮発性メモリ308は、ターンシグナルランプ201を構成する複数の発光素子203_1~203_Nの制御に関するパラメータPARAMを格納する。
【0033】
信号処理装置400は、ソフトウェアプログラムを実行することにより、パラメータPARAMにもとづいて、各時刻(制御周期)における複数の発光素子203_1~203_Nの点灯状態を指示する複数の点灯指令S1~SNを生成し、駆動回路330に供給する。
【0034】
駆動回路330は、複数の点灯指令S1~SNにもとづいて、複数の発光素子203_1~203_Nを駆動する。i番目の点灯指令Siは、各時刻における発光素子203_iのオン、オフを示す。i番目の点灯指令Siは、各時刻における発光素子203_iのオン状態における輝度を示してもよい。
【0035】
パラメータについて説明する。パラメータPARAMは、複数の発光素子203_1~203_Nそれぞれの点灯タイミングを、基準時刻tREFからの経過時間τ1~τNとして規定する複数の第1データD1_1~D1_Nを含む。基準時刻tREFは、ターン同期信号TURN_SYNCのポジティブエッジの時刻と一致していてもよいし、ポジティブエッジから所定時間経過後であってもよい。
【0036】
i<jに対して、τi≦τjなる関係を制約条件として課してもよい。これにより点灯指令S1~SNが変化する順序が入れ替わることはないため、信号処理装置400が実行するソフトウェアプログラムを簡素化できる。
【0037】
さらにパラメータPARAMは、複数の発光素子203_1~203_Nの輝度が、0から目標値に達するまでの調光時間τ0を規定する第2データD2をさらに含むことができる。この場合、複数の点灯指令S1~SNは、各時刻における複数の発光素子203_1~203_Nの輝度を示す。以下では、消灯時の輝度を0%、点灯時の輝度を100%として説明する。
【0038】
以上が灯具システム100の構成である。続いて灯具システム100の動作を説明する。
【0039】
図2は、ターンシグナルランプの点滅を説明する図である。ターン同期信号TURN_SYNCは、所定の周期でハイとローを交互に繰り返す。
【0040】
ターン同期信号TURN_SYNCがハイに遷移すると、車両用灯具200は、パラメータPARAMに応じて、複数の点灯指令S1~SNを生成し、発光素子203_1~203_Nを点灯させる。この例では、複数の発光素子203_1~203_Nが順に点灯する様子が示される。
【0041】
続いてターン同期信号TURN_SYNCがローに遷移すると、車両用灯具200は、複数の点灯指令S1~SNを一斉に、オフ状態に切りかえ、発光素子203_1~203_Nを消灯させる。
【0042】
図3は、パラメータPARAMを説明する図である。たとえば経過時間τ
1~τ
Nは、0~200msの範囲で、5msステップで指定可能である。この5msを制御周期と称する。また調光時間τ
0は0~20msの間で、Δt=5msステップで指定可能である。基準時刻t
REFは、ターン同期信号TURN_SYNCのポジティブエッジのタイミングと一致してもよい。
【0043】
この例では、点灯指令S1~SNは、輝度を表している。i番目の点灯指令Siは、基準時刻tREFから、第1データD1_iが示す時間τiの経過後までの間、0(すなわち消灯)である。基準時刻tREFから、時間τiの経過後に、点灯指令Siは0%から増加し始め、第2データD2が指定する調光時間τ0の経過後に最大値100%となる。そして、点灯指令Siは、ターン同期信号TURN_SYNCがローに遷移すると0%に戻る。
【0044】
図4(a)~(e)は、調光時間τ
0を説明する図である。
図4(a)~(e)はそれぞれ、調光時間τ
0=0ms,5ms,10ms,15ms,20msのときの点灯指令S
iを示す。m=τ
0/Δtとするとき、点灯指令S
iは、Δt経過ごとに、Δx=100/m(%)ずつ増加する。
【0045】
信号処理装置400はソフトウェアプログラムを実行し、以下の処理により点灯指令Siを生成してもよい。
【0046】
ターン同期信号TURN_SYNCのポジティブエッジをトリガーとして、時間とともにカウントアップするカウント値cntを生成する。
【0047】
カウント値cntが、時間τiより小さい間、Si=0である。
カウント値cntが、時間τiより大きく、τi+τ0より小さい間、点灯指令Siは、Δt経過ごとに、Δxずつ増加する。
【0048】
カウント値cntが、τi+τ0に達すると、それ以降、点灯指令Siは100%に固定される。そして、ターン同期信号TURN_SYNCのネガティブエッジをトリガとして、Siは0%にリセットされる。
【0049】
ランプコントロールモジュール300は、強制点灯機能を備えてもよい。ランプコントロールモジュール300は、所定時間τMAX(たとえば200ms)の経過後に、点灯指令S1~SNを、強制的に最大輝度値(100%)に設定する。この所定時間τMAXは、ソフトウェアプログラム内の定数として規定されるが、パラメータPARAMのひとつとして変更可能としてもよい。
【0050】
以上が車両用灯具200の動作である。この車両用灯具200によれば、ソフトウェアプログラムおよびハードウェアを大きく変更することなく、不揮発性メモリ308のパラメータPARAMに応じて、さまざまな点灯パターンを実現できる。
【0051】
続いて、車両用灯具200のより具体的な構成例を説明する。
【0052】
図5は、車両用灯具200Cの具体的な構成例を示すブロック図である。車両用灯具200Cは、ランプコントロールモジュール300Cと、ターンシグナルランプ用の光源202を備える。
【0053】
電源回路302は、電圧VBUを受け、5V程度の電源電圧VDDを生成する。電源電圧VDDは、マイクロコントローラ390やその他の回路に供給される。
【0054】
保護回路305は、逆接防止用のダイオードや、サージ対策用のツェナーダイオードなどを含み、主電源電圧+BLCMから、車両用灯具200Cを保護する。
【0055】
電源回路304は、昇圧型DC/DCコンバータであり、車両からの電源電圧+BLCMを昇圧し、たとえば60V程度の高電源電圧VDDHを発生する。
【0056】
マイクロコントローラ390は、上述の信号処理装置400と不揮発性メモリ308を内蔵する。
【0057】
ランプコントロールモジュール300は、Nチャンネル(N≧2)の出力を有し、N個の第1発光素子203_1~203_Nを駆動可能に構成される。
【0058】
駆動回路330は、降圧コンバータ332、複数のバイパススイッチSW1~SWNおよびコントローラ334を備える。コントローラ334は、バイパススイッチSW1~SWNを制御るASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。
【0059】
降圧コンバータ332は、定電流出力型であり、駆動電流ILEDを生成する。降圧DC/DCコンバータ332には、信号処理装置400から制御信号CNT1が入力される。制御信号CNT1は、降圧コンバータ332の動作/停止を指定するイネーブル信号EN1_BUCKを含んでもよい。また、制御信号CNT1は、駆動電流ILEDの目標量を指定する調光信号CURRENT_PWM1を含んでもよい。降圧DC/DCコンバータ332は、イネーブル信号EN_BUCK1がアサート(たとえばハイ)のときに動作状態となり、調光信号CURRENT_PWM1に応じた電流量の駆動電流ILED1を生成する。たとえば調光信号CURRENT_PWM1は、PWM信号であり、降圧DC/DCコンバータ332のコントローラICは、調光信号CURRENT_PWM1のデューティサイクルを検出し、デューティサイクルに応じて駆動電流ILED1の電流量を変化させる(アナログ調光)。信号処理装置400は、パルス状のターン同期信号TURN_SYNCが入力される期間、イネーブル信号EN_BUCK1をアサートする。
【0060】
複数のバイパススイッチSW1~SWNは、複数の発光素子203_1~203_Nと並列に接続される。駆動回路330は、信号処理装置400が生成する複数の点灯指令S1~SNにもとづいて、バイパススイッチSW1~SWNを制御する。
【0061】
バイパススイッチSWiがオンの期間は、駆動電流ILEDは、バイパススイッチSWiに迂回するため、それと並列な発光素子203_iは消灯する。バイパススイッチSWiがオフの期間は、駆動電流ILEDは、それと並列な発光素子203_iに流れるため、発光素子203_iは点灯する。発光素子203_iの輝度は、バイパススイッチSWiのデューティサイクルに応じて、PWM調光によって制御される。点灯指令Siが0~100%であるとき、バイパススイッチSWiは、点灯指令Siの補数に相当するデューティサイクル(100-Si)%で制御される。
【0062】
信号処理装置400とコントローラ334の間は、CAN(Controller Area Network)などのビークルバスを介して接続されており、点灯指令S1~SNはCAN信号としてコントローラ334に入力される。点灯指令S1~SNはそれぞれ、PWM制御の点灯期間に1、消灯期間に0となるデータであってもよい。この場合、コントローラ334は、受信した点灯指令Siが1のとき、バイパススイッチSWiをオフ、点灯指令Siが0のとき、バイパススイッチSWiをオンすればよい。
【0063】
続いて
図5の車両用灯具200Cの動作を説明する。続いて
図5の車両用灯具200Cにおけるパラメータの設定例を説明する。以下の説明ではN=12であるとする。
【0064】
図6(a)、(b)は、設定例1を示す図である。
図6(a)には、パラメータの値が示されている。
図6(b)には、
図6(a)のパラメータにもとづく点灯パターンが示される。t=0msが基準時刻を表す。
【0065】
この設定例では、τ0=15msであり、複数の点灯指令S1~S12が20msの時間差で徐々に変化していく。上述の強制点灯機能によって、基準時刻から200msの経過後に、S11およびS12は強制的に100%に設定される。
【0066】
このように、車両用灯具200Cによれば、複数の発光素子203_1~203_Nをシーケンシャルに点灯させることができる。
【0067】
ランプコントロールモジュール300Cによって、チャンネル数Nよりも少ない個数(mとする)の発光素子203_1~203_mを駆動可能であれば、ランプコントロールモジュール300Cの汎用性がさらに高まる。
【0068】
そこでパラメータPARAMは、実際に駆動対象となる複数の発光素子203の個数mを規定する第3データD3を含むことができる。
図7は、m<Nであるときの車両用灯具200Cの構成例を示す回路図である。全チャンネルCH1~CHNのうち、チャンネルCH1~CHmに、m個の発光素子203_1~203_mが接続され、残りのチャンネルCH(m+1)~CHNは不使用チャンネルとされる。
【0069】
信号処理装置400は、不使用チャンネルの点灯指令Sm+1~SNについてはオフに対応する値(0%)に固定する。これにより、不使用チャンネルのバイパススイッチSW(m+1)~SWNを固定的にオンとなる。
【0070】
図8(a)、(b)は、設定例2を示す図である。この設定例では、第3データD3により、灯数mが10に指定される。τ
0=20msであり、複数の点灯指令S
1~S
9が20msの時間差で徐々に変化していく。
【0071】
複数の点灯タイミングτi,τjを等しく設定してもよく、この場合、複数の発光素子203_i,203_jを同時に点灯させることができる。設定例2ではτ9=τ10とされており、点灯指令S
9
とS
10
は同じ波形を有しており、発光素子203_9と203_10が同時に点灯する。
【0072】
ランプコントロールモジュール300Cは、第1チャンネルCH1を始点として第NチャンネルCHNに向かって順に点灯させる第1モードと第NチャンネルCHNを始点として第1チャンネルCH1に向かって順に点灯させる第2モードが切りかえ可能であってもよい。パラメータPARAMは、第1モードと第2モードを指定する第4データD4を含むことができる。第4データD4は、第1値(たとえば0)のとき第1モード、第2値(たとえば1)のとき第2モードを指定する。
【0073】
第4データD4が第1値のときは、上述の説明の通りであり、複数の第1データD1_1~D1_m(すなわち点灯タイミングτ1~τm)は、第1チャンネルCH1~第mチャンネルの点灯指令S1~Smと順に対応付けられる。i番目の第1データD1_iすなわち点灯タイミングτiは、第iチャンネルの点灯指令Siの生成に利用される。
【0074】
第4データD4が第2値のときは、複数の第1データD1_1~D1_m(すなわち点灯タイミングτ1~τm)は、第NチャンネルCHN~第(M-n+1)チャンネルの点灯指令SN~SM-n+1と順に対応付けられる。第1チャンネルCH1~第(M-n)チャンネルCH(M-n)に関しては不使用チャンネルとなる。i番目の第1データD1_iすなわち点灯タイミングτiは、第(N-i+1)チャンネルの点灯指令SN-i+1の生成に利用される。
【0075】
図9(a)、(b)は、設定例3を示す図である。第1データD1に関しては設定例3と設定例1は同じであるが、新たに付加された第4データD4は第2値である。この場合、複数の点灯指令S
1~S
12は、
図6(b)に示す設定例1とは逆順で変化していき、第12チャンネルCH12の発光素子203_12が最初に点灯し、第1チャンネルCH1の発光素子203_1が最後に点灯する。
【0076】
図10(a)、(b)は、設定例4を示す図である。第1データD1~第3データD3に関しては、設定例4と設定例2は同じであるが、新たに付加された第4データD4は第2値である。
【0077】
図11は、設定例4に対応する車両用灯具200Cの回路図である。m=10個の発光素子203_1~203_10は、第3チャンネルCH3~第12チャンネルCH12に接続される。
【0078】
図10(b)に示すように、この場合、複数の点灯指令S
3~S
12は、
図6(b)に示す設定例2とは逆順で変化していき、第12チャンネルCHNの発光素子203_
12が最初に点灯し、第3チャンネルCH3の発光素子203_
3が最後に点灯する。第1チャンネルCH1および第2チャンネルCH2は不使用チャンネルであり、点灯指令S
1,S
2は0に固定される。
【0079】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0080】
図5の車両用灯具200Cにおいて、電源回路304を省略して、DC/DCコンバータ332を昇圧コンバータで構成してもよい。
【0081】
(変形例1)
調光時間τ0は、全光源で共通としたがその限りでなく、個別に設定できるようにしてもよい。この場合、パラメータPARAMは、チャンネル数分のN個の第2データD2_1~D2_Nを含む。i番目の第2データD2_iは、第iチャンネルCHiの点灯タイミングを規定する(第1モード)。
【0082】
(変形例2)
実施形態では、i<jに対して、τi≦τjなる関係を前提としたが、その限りでない。この場合、第1チャンネルCH1~第Nチャンネルの点灯指令を任意の順序で変化させることが可能となる。
【0083】
(変形例3)
図5の構成では、いわゆるバイパス方式で複数の発光素子203の点消灯および輝度を制御したが、本開示に係る技術はそれに限定されない。たとえば複数の発光素子203を並列に接続し、各発光素子203と直列に電流源を接続し、電流源が生成する電
流を変化させてもよい。
【0084】
実施形態では、ランプコントロールモジュール300の構成要素を同一筐体に収容してモジュール化したが、それに限定されず、複数の筐体、パッケージ、モジュール、基板に分割して構成されてもよい。
【0085】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0086】
100 灯具システム
102 電源ライン
104 ジカ線
110 車両
200 車両用灯具
202 光源
203 発光素子
300 ランプコントロールモジュール
302,304 電源回路
305 保護回路
308 不揮発性メモリ
310 入力インタフェース回路
330 駆動回路
332 降圧コンバータ
334 コントローラ
390 マイクロコントローラ
400 信号処理装置