(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】シール構造及び開口部シール用アタッチメント
(51)【国際特許分類】
E06B 1/62 20060101AFI20240905BHJP
E04B 1/684 20060101ALI20240905BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
E06B1/62 Z
E04B1/684 B
F16J15/06 P
(21)【出願番号】P 2020176141
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 るり子
(72)【発明者】
【氏名】蜂谷 拓平
(72)【発明者】
【氏名】福井 直人
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-091898(JP,A)
【文献】実開昭57-172885(JP,U)
【文献】特開平09-296527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/62
E04B 1/684
F16J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体の開口部に取り付けられる開口部装置
を有する第1壁面と、前記第1壁面に交差して配置されるとともに外装材
が設けられる第2壁面と
、の間に形成される入隅部
をシールするシール構造であって、
前記入隅部に配置される開口部シール用アタッチメントと、
前記開口部シール用アタッチメントと前記外装材との隙間をシールするシール部材と、を有し、
前記開口部シール用アタッチメントは、前記
第1壁面に固定されるベース部材と、前記ベース部材の表面を覆うカバー部材と、を有して構成され、
前記シール部材は、前記開口部シール用アタッチメントの
前記ベース部材と前記カバー部材とのうちの前記カバー部材に接触している、シール構造。
【請求項2】
前記ベース部材は、前記隙間に向けて配置される外壁部を有し、
前記カバー部材は、前記ベース部材の前記外壁部に重なるように配置される被シール壁部を有し、
前記シール部材は、
前記ベース部材の前記外壁部と前記カバー部材の前記被シール壁部
とのうちの前記被シール壁部に接触している、請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
建物躯体の開口部に取り付けられる開口部装置
を有する第1壁面と、前記第1壁面に交差して配置されるとともに外装材
が設けられる第2壁面と
、の間に形成される入隅部に配置され、前記外装材との隙間にシール部材が設けられる開口部シール用アタッチメントであって、
前記
第1壁面に固定されるベース部材と、前記ベース部材の表面を覆うカバー部材と、を有して構成され、
前記ベース部材は、前記隙間に向けて配置される外壁部を有し、
前記カバー部材は、前記ベース部材の前記外壁部に重なるように配置され、前記シール部材が接触する被シール壁部を有する、開口部シール用アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シール構造及び開口部シール用アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物躯体の開口部に取り付けられる窓等の開口部装置と、その開口部装置の周囲に設けられる外装材との間に取付部材としてのアタッチメントを配置し、そのアタッチメントと外装材との隙間からの水の浸入を防止するために、軟質部材からなるシール部材によってシールするシール構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、アタッチメントは、建物躯体に対してネジによって固定される。アタッチメントは、ネジの周囲からの水の浸入を防ぐために、ネジ挿通部を被覆するカバー部材を有している。すなわち、アタッチメントは、建物躯体にネジによって固定されるベース部材と、そのベース部材のネジ挿通部を被覆するカバー部材との2部材によって構成される。
【0005】
このようなアタッチメントが、交差する2つの壁面によって形成される入隅部に配置される場合、アタッチメントと外装材との隙間をシール部材によってシールする際に、シール部材を、ベース部材とカバー部材との境界部に跨って設けることがある。ベース部材とカバー部材との間から水が毛管作用によって浸入することを防止するためである。
【0006】
しかしながら、このようなシール構造では、地震等による振動がアタッチメントに作用した際に、ベース部材とカバー部材とが異なる動きをすることによって、アタッチメントとシール部材との間に隙間が発生してシール切れを引き起こすおそれがある。
【0007】
そのため、発明者は、2部材によって構成されるアタッチメントに振動が作用した場合でも、シール切れを引き起こすことのないシール構造を提供する、という課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のシール構造は、建物躯体の開口部に取り付けられる開口部装置と外装材との間において交差する2つの壁面によって形成される入隅部に配置される開口部シール用アタッチメントと、前記開口部シール用アタッチメントと前記外装材との隙間をシールするシール部材と、を有し、前記開口部シール用アタッチメントは、前記建物躯体に固定されるベース部材と、前記ベース部材の表面を覆うカバー部材と、を有して構成され、前記シール部材は、前記開口部シール用アタッチメントの前記カバー部材のみに接触している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】開口部装置と外装材との間のシール構造を示す断面図である。
【
図3】開口部シール用アタッチメントを拡大して示す断面図である。
【
図4】開口部シール用アタッチメントを示す斜視図である。
【
図5】開口部シール用アタッチメントのベース部材のみを使用したシール構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示のシール構造の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、建物躯体100の入隅部200を、入隅部200の延び方向と直交する面で切断した断面を示す。入隅部200は、建物躯体100の第1壁面110と第2壁面120との2つの壁面が交差することによって形成される。本実施形態の第1壁面110と第2壁面120とは、略直交するように配置されている。
図1中のX1は、建物躯体100の外側を示し、X2は、建物躯体100の内側を示す。
【0011】
建物躯体100の第1壁面110には、開口部111が設けられる。開口部111には、開口部装置が取り付けられる。開口部装置は、例えば、窓、ドア等の建具であり、本実施形態では開口部111にサッシ窓300が取り付けられている。サッシ窓300は、枠体310の内側に、障子320及び網戸330を有する。
【0012】
建物躯体100の第2壁面120の表面には、外装材130が設けられる。入隅部200側に配置される外装材130の端部131は、第1壁面110に近接している。
【0013】
入隅部200には、サッシ窓300の枠体310のうちの入隅部200側に配置される枠部311と外装材130の端部131との間に、開口部シール用アタッチメント1(以下、単に「アタッチメント1」という。)が配置されている。
【0014】
アタッチメント1について、さらに
図2、
図3及び
図4を用いて説明する。アタッチメント1は、第1壁面110に固定されるベース部材2と、ベース部材2の表面を覆うカバー部材3と、を有して構成される。
【0015】
ベース部材2は、アルミ等の金属材料もしくは樹脂材料を用いて押出し成形された型材であり、入隅部200の延び方向のほぼ全長に亘って延びている。ベース部材2は、第1壁面110に沿うように配置される固定面部21と、固定面部21の表面から略直角に立ち上がる一対の立壁部22,23を有する。立壁部22,23は、
図2に示すよう、枠体310の枠部311に対して略平行に配置され、ベース部材2の延び方向に沿って設けられている。
【0016】
一対の立壁部22,23の間には、ネジ挿通溝24が形成される。ベース部材2は、
図2に示すように、ネジ挿通溝24内に配置されて固定面部21を貫通するネジ112によって、第1壁面110に固定される。
【0017】
枠部311から遠い側に配置される立壁部23の先端には、外壁部25が設けられる。外壁部25は、立壁部23の先端から固定面部21と略平行に外側に向かうとともに、立壁部23に対して略45°の角度で斜めに傾斜し、入隅部200の奥に向けて延びている。これによって、外壁部25は、
図2に示すように、アタッチメント1が第1壁面110に固定された際に、入隅部200に配置される外装材130の端部131に、隙間Sを介して対面するように配置される。
【0018】
カバー部材3は、ベース部材2と同様のアルミ等の金属材料もしくは樹脂材料を用いて押出し成形された型材であり、ベース部材2と同様に、入隅部200の延び方向のほぼ全長に亘って延びている。カバー部材3は、ベース部材2のネジ挿通溝24を塞ぐように設けられるカバー部材本体31と、カバー部材本体31における枠部311から遠い側に配置される被シール壁部32と、を有する。
【0019】
カバー部材本体31は、ベース部材2の外面全体をほぼ覆う程度の幅を有する。カバー部材本体31の裏面には、ベース部材2のネジ挿通溝24に沿って嵌合する一対の取付脚部33,33を有する。ネジ挿通溝24に嵌合した取付脚部33,33は、立壁部22,23からネジ挿通溝24内にそれぞれ対向するように突設される凸条部26,26に係合する。これによって、カバー部材3は、ベース部材2に対して着脱可能に取り付けられ、ネジ挿通溝24を被蓋する。
【0020】
被シール壁部32は、カバー部材本体31から外側に向けて延びている。被シール壁部32は、ベース部材2の外壁部25と同様に、ベース部材2の立壁部23に対して略45°の角度で斜めに傾斜し、入隅部200の奥に向けて延びている。カバー部材3は、第1壁面110にベース部材2が固定された後に、取付脚部33,33をベース部材2のネジ挿通溝24に嵌合することによって取り付けられる。これによって、カバー部材3の被シール壁部32は、
図2及び
図3に示すように、ベース部材2の外壁部25の外面のほぼ全面に対して重なるように配置される。
【0021】
図4に示すように、アタッチメント1の長手方向の両端部には、それぞれ端板4,4が配置される。端板4,4は、ベース部材2に設けられるタッピングホール27に螺合する取付ネジ41,41によって、シール板42,42を挟んで、アタッチメント1に固定される。
【0022】
図1及び
図2に示すように、アタッチメント1とサッシ窓300の枠部311との間は、第1シール部材210によってシールされる。本実施形態の第1シール部材210は、ゴム等の固体弾性材料によって形成される乾式のシール部材である。第1シール部材210は、ベース部材2の立壁部22の外側、且つ、ベース部材2の固定面部21とカバー部材3との間の空間に配置され、アタッチメント1の全長に亘って延びている。
【0023】
図3に示すように、ベース部材2が第1壁面110に固定される前において、第1シール部材210は、アタッチメント1の外側にはみ出す程度の大きさを有している。ベース部材2は、第1シール部材210を、サッシ窓300の枠部311と立壁部22との間で圧縮した状態で第1壁面110に固定される。圧縮された第1シール部材210は、枠部311と立壁部22との間で復元することによって、アタッチメント1とサッシ窓300の枠部311との間に弾性的に密接してシールする。
【0024】
図1及び
図2に示すように、入隅部200においてアタッチメント1と外装材130の端部131との間に形成される隙間Sは、第2シール部材220によってシールされる。本実施形態の第2シール部材220は、軟質樹脂材料からなる湿式のシール部材である。第2シール部材220は、第1壁面110に固定されたアタッチメント1の外面に配置される被シール壁部32と外装材130の端部131との間に充填され、隙間Sをシールする。被シール壁部32は、ベース部材2の外壁部25の外面のほぼ全面に対して重なるように配置されるため、
図2に示すように、第2シール部材220は、カバー部材3の被シール壁部32の1部材のみに接触している。
【0025】
次に、本実施形態のシール構造の効果について説明する。以上説明したように、本実施形態のシール構造は、建物躯体100の開口部111に取り付けられる開口部装置であるサッシ窓300と外装材130との間において交差する第1壁面110と第2壁面120によって形成される入隅部200に配置されるアタッチメント1と、アタッチメント1と外装材130との隙間Sをシールする第2シール部材220と、を有する。アタッチメント1は、建物躯体100に固定されるベース部材2と、ベース部材2の表面を覆うカバー部材3と、を有して構成され、第2シール部材220は、アタッチメント1のカバー部材3のみに接触している。これによれば、第2シール部材220は、アタッチメント1に対してベース部材2とカバー部材3との2部材に跨ってシールされない。そのため、アタッチメント1に地震等の振動が作用することによってベース部材2とカバー部材3とが異なる動きをするようなことがあっても、シール切れを引き起こすことはない。
【0026】
ベース部材2とカバー部材3との境界部は、第1シール部材210及び第2シール部材220によって確実にシールされる。そのため、建物躯体100の外側から境界部を通ってネジ挿通溝24内に水が浸入するおそれはない。しかも、建物躯体100の外側からベース部材2とカバー部材3との境界部が視認されることがないため、シール部位の見栄えも向上する。
【0027】
本実施形態において、ベース部材2は、隙間Sに向けて配置される外壁部25を有し、カバー部材3は、ベース部材2の外壁部25に重なるように配置される被シール壁部32を有する。第2シール部材220は、カバー部材3の被シール壁部32のみに接触している。これによれば、第2シール部材220を確実にカバー部材3の1部材のみに接触させることができる。
【0028】
本実施形態のアタッチメント1は、建物躯体100の開口部111に取り付けられる開口部装置であるサッシ窓300と外装材130との間において交差する第1壁面110と第2壁面120によって形成される入隅部200に配置され、外装材130との隙間Sに第2シール部材220が設けられる。アタッチメント1は、建物躯体100の第1壁面110に固定されるベース部材2と、ベース部材2の表面を覆うカバー部材3と、を有して構成される。ベース部材2は、隙間Sに向けて配置される外壁部25を有する。カバー部材3は、ベース部材2の外壁部25に重なるように配置され、第2シール部材220が接触する被シール壁部32を有する。これによれば、第2シール部材220を確実にカバー部材3の1部材のみに接触させることができるアタッチメントを提供することができる。
【0029】
本実施形態のアタッチメント1におけるベース部材2は、カバー部材3の被シール壁部32に重なり合う外壁部25を有するため、この外壁部25を被シール壁部として利用することもできる。すなわち、
図5に示すように、アタッチメント1Aは、上記のカバー部材3を使用せずに、ベース部材2によってシール構造を構築することが可能である。
【0030】
図5に示すシール構造において、第1シール部材211は、軟質樹脂材料からなる湿式のシール部材によって構成され、第2シール部材221は、固体樹脂材料によって形成される乾式のシール部材によって構成されている。第1シール部材211は、ベース部材2がネジ112によって第1壁面110に固定された後に、ベース部材2の立壁部22とサッシ窓300の枠部311との間に充填される。第2シール部材221は、ベース部材2の外壁部25と外装材130の端部131との隙間Sに圧入される。ベース部材2のネジ挿通溝24には、キャップ部材30が取り付けられ、ネジ挿通溝24の部位のみを被蓋している。
【0031】
このアタッチメント1Aは、第1シール部材が湿式のシール部材の場合に適用可能である。上記のアタッチメント1のようにベース部材2の外面全体を覆うカバー部材3を使用しないため、低コストのシール構造を構築することができる。
【0032】
以上の実施形態において、アタッチメント1,1Aは、交差する第1壁面110及び第2壁面120の2つの壁面によって形成される入隅部200に配置されている。しかし、アタッチメント1,1Aを使用したシール構造は、入隅部に限定されない。このようなシール構造は、ベース部材2の外壁部25及びカバー部材3の被シール壁部32の傾斜角度を適宜設定することによって、例えば、開口部装置と外装材とが同一面上に配置される場合のシール構造にも適用可能である。
【0033】
アタッチメント1を使用するシール構造において、第1シール部材210は、湿式のシール部材であってもよく、第2シール部材220は、乾式のシール部材であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 開口部シール用アタッチメント、 2 ベース部材、 25 外壁部、 3 カバー部材、 32 被シール壁部、 100 建物躯体、 110 第1壁面、 111 開口部、 120 第2壁面、 130 外装材、 200 入隅部、 220 第2シール部材、 300 サッシ窓(開口部装置)、 S 隙間