(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240905BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20240905BHJP
H01G 2/06 20060101ALI20240905BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20240905BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20240905BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H01G2/02 101E
H01G2/06 C
H01G2/06 500
H01G2/10 M
H01G2/10 300
H05K1/16 Z
H05K1/18 J
H05K1/18 C
H05K1/18 H
(21)【出願番号】P 2020181804
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】増田 朗丈
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信弥
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-102191(JP,U)
【文献】特開昭60-140785(JP,A)
【文献】特開平08-008507(JP,A)
【文献】特開2005-072111(JP,A)
【文献】実開昭64-41123(JP,U)
【文献】特開平11-307385(JP,A)
【文献】特開2011-249534(JP,A)
【文献】特開平5-82918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 - 1/02
H01G 2/02 - 2/06
H01G 2/10
H01G 4/00 - 4/10
H01G 4/14 - 4/224
H01G 4/255- 4/40
H01G 13/00 -17/00
H05K 1/18
H05K 1/09
H05K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想の軸を囲むように曲げられるフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板に設けられる回路配線に接続される複数のチップ部品と、
前記回路配線に電気的に接続され、前記フレキシブル基板の外方に延びる複数の導電性支持体と、を有
し、
前記フレキシブル基板と別体で構成される複数の前記導電性支持体は、前記軸に沿って、前記フレキシブル基板から互いに同一方向に引き出される電子部品。
【請求項2】
前記フレキシブル基板の周囲を取り囲むカバーをさらに有する請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記カバーの内部には樹脂が充填されている請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記軸は、複数の前記導電性支持体が接続される基板の実装面に対して略垂直となるように延びている請求項1~3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記軸は、複数の前記導電性支持体が接続される基板の実装面に対して略平行となるように延びている請求項1~3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項6】
前記回路配線は、前記軸に沿って配置されたm(m≧2)個の前記チップ部品を接続可能に構成されるとともに、前記軸に略垂直な方向に沿って配置されたn(n≧2)個の前記チップ部品を接続可能に構成されている請求項1~
5のいずれかに記載の電子部品。
【請求項7】
前記回路配線は、内側接続線と外側接続線とを有し、
複数の前記チップ部品は、m行n列で配置され、
1列目~n列目の各列に属するm個の前記チップ部品は、前記内側接続線を介して直列に接続されており、
前記内側接続線を介して直列に接続されたm個の前記チップ部品からなるn個の直列接続体は、相互に、前記外側接続線を介して並列に接続されている請求項
6に記載の電子部品。
【請求項8】
前記回路配線は、内側接続線と外側接続線とを有し、
複数の前記チップ部品は、m行n列で配置され、
1列目~n列目の各列に属するm個の前記チップ部品は、前記内側接続線を介して直列に接続されており、
前記内側接続線を介して直列に接続されたm個の前記チップ部品からなるn個の直列接続体は、相互に、前記外側接続線を介して直列に接続されている請求項
6に記載の電子部品。
【請求項9】
仮想の軸を囲むように曲げられるフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板に設けられる回路配線に接続される複数のチップ部品と、
前記回路配線に電気的に接続され、前記フレキシブル基板の外方に延びる複数の導電性支持体と、
前記フレキシブル基板の周囲を取り囲むカバーと、を有し、
前記カバーの内部には樹脂が充填され、
複数の前記チップ部品は、前記樹脂によって全体が覆われており、
複数の前記チップ部品は、前記軸を囲むようにリング状に配置され、前記フレキシブル基板に取り付けられている全ての前記チップ部品が前記カバーの内周面と対向している電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、複数のチップ部品をフレキシブル基板に実装し、複数のチップ部品からなる電子部品モジュールを構成する技術が知られている。特許文献1に記載の技術では、フレキシブル基板の各端部が略U字状に折り曲げられており、実装対象への取付部として利用される。取付部を実装対象に直接取り付けることにより、取付部に位置する回路配線が実装対象に電気的に接続され、複数のチップ部品を実装対象にまとめて実装することが可能となっている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、略U字状に折り曲げられたフレキシブル基板の各端部の弾性により、取付部が実装対象に対して位置ずれするおそれがあり、フレキシブル基板に実装された複数のチップ部品を安定した状態で実装対象に取り付けることが困難である。また、取付部にはチップ部品を実装することができないため、取付部を設けた分だけ、フレキシブル基板の実装面積が小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、実装面積が小さく、多数のチップ部品を確実に実装することが可能な電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子部品は、
仮想の軸を囲むように曲げられるフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板に設けられる回路配線に接続される複数のチップ部品と、
前記回路配線に電気的に接続され、前記フレキシブル基板の外方に延びる複数の導電性支持体と、を有する。
【0007】
本発明に係る電子部品は、回路配線に電気的に接続され、フレキシブル基板の外方に延びる複数の導電性支持体を有する。そのため、複数の導電性支持体を介してフレキシブル基板を実装対象等に接続することが可能となり、従来技術とは異なり、実装対象等に接続するための手段である取付部をフレキシブル基板に具備させる必要がない。したがって、その分だけ、フレキシブル基板の実装面積を大きく確保することが可能となり、多数のチップ部品をフレキシブル基板に実装することができる。
【0008】
また、複数の導電性支持体にフレキシブル基板を支持させることにより、フレキシブル基板を安定した状態で実装対象等に固定することが可能となる。したがって、フレキシブル基板が実装対象等に対して位置ずれすることを防止し、フレキシブル基板に実装された複数のチップ部品を実装対象等に確実に実装することができる。
【0009】
また、複数の導電性支持体は、回路配線に電気的に接続されており、複数のチップ部品からなる電気回路の入出力端子として機能する。そのため、複数の導電性支持体を介してフレキシブル基板と実装対象等とを接続することにより、フレキシブル基板に実装された複数のチップ部品を実装対象等に対して電気的に接続し、複数のチップ部品からなる電気回路を機能させることができる。
【0010】
また、本発明に係る電子部品は、仮想の軸を囲むように曲げられるフレキシブル基板を有する。そのため、その曲げ分だけフレキシブル基板の全体形状をコンパクトにすることが可能となり、実装対象等に対する電子部品の実装面積を小さくすることができる。
【0011】
好ましくは、前記フレキシブル基板の周囲を取り囲むカバーをさらに有する。このような構成とすることにより、カバーによって、フレキシブル基板およびこれに実装された複数のチップ部品を外力等から有効に保護することができる。
【0012】
好ましくは、前記カバーの内部には樹脂が充填されている。このような構成とすることにより、樹脂を介して複数のチップ部品から発生する熱を効果的に外部に放熱させることが可能となり、放熱性能を十分に確保しつつ、フレキシブル基板に多数のチップ部品を実装することができる。
【0013】
前記軸は、複数の前記導電性支持体が接続される基板の実装面に対して略垂直となるように延びていてもよい。このような構成とすることにより、仮想の軸を囲むようにフレキシブル基板を曲げたときに、基板の実装面に略平行な方向に関して、フレキシブル基板の広がりを抑えることが可能となり、実装対象等に対する電子部品の実装面積を小さくすることができる。
【0014】
好ましくは、複数の前記導電性支持体は、前記軸に沿って、前記フレキシブル基板から互いに同一方向に引き出される。このような構成とすることにより、特に仮想の軸が基板の実装面に対して略垂直となるようにフレキシブル基板が配置される場合において、複数の導電性支持体を基板の実装面に向けて引き出すときに、基板の実装面に略平行な方向に沿った複数の導電性支持体の広がりを抑えることが可能となり、実装対象等に対する電子部品の実装面積を小さくすることができる。
【0015】
前記軸は、複数の前記導電性支持体が接続される基板の実装面に対して略平行となるように延びていてもよい。このような構成とすることにより、仮想の軸を囲むようにフレキシブル基板を曲げたときに、基板の実装面に略垂直な方向に関して、フレキシブル基板の広がり(高さ)を抑えることが可能となり、電子部品の低背化を実現することができる。
【0016】
好ましくは、複数の前記導電性支持体は、前記軸に沿って、前記フレキシブル基板から互いに反対方向に引き出される。このような構成とすることにより、特に仮想の軸が基板の実装面に対して略平行となるようにフレキシブル基板が配置される場合において、複数の導電性支持体を基板の実装面に向けて引き出すときに、基板の実装面に略垂直な方向に沿った複数の導電性支持体の広がり(高さ)を抑えることが可能となり、電子部品の低背化を実現することができる。
【0017】
好ましくは、前記回路配線は、前記軸に沿って配置されたm(m≧2)個の前記チップ部品を接続可能に構成されるとともに、前記軸に略垂直な方向に沿って配置されたn(n≧2)個の前記チップ部品を接続可能に構成されている。例えば、m行n列で配置された複数のチップ部品について、n個の列の各々に属するm個のチップ部品を仮想の軸に沿って回路配線で直列に接続することにより、m個のチップ部品からなる直列回路をn個形成することができる。また、これらn個の直列回路の各々において、仮想の軸に略垂直な方向に沿って、先頭のチップ部品同士を接続し、さらには最後尾のチップ部品同士を接続することにより、m行n列で配置された複数のチップ部品からなる並列回路を形成することができる。
【0018】
前記回路配線は、内側接続線と外側接続線とを有し、
複数の前記チップ部品は、m行n列で配置され、
1列目~n列目の各列に属するm個の前記チップ部品は、前記内側接続線を介して直列に接続されており、
前記内側接続線を介して直列に接続されたm個の前記チップ部品からなるn個の直列接続体は、相互に、前記外側接続線を介して並列に接続されていてもよい。
【0019】
このような構成とすることにより、m個のチップ部品からなる直列回路をn個含んだ並列回路(m直列n並列回路)を構成することができる。
【0020】
前記回路配線は、内側接続線と外側接続線とを有し、
複数の前記チップ部品は、m行n列で配置され、
1列目~n列目の各列に属するm個の前記チップ部品は、前記内側接続線を介して直列に接続されており、
前記内側接続線を介して直列に接続されたm個の前記チップ部品からなるn個の直列接続体は、相互に、前記外側接続線を介して直列に接続されていてもよい。
【0021】
このような構成とすることにより、m個のチップ部品からなる直列回路をn個含んだ直列回路、換言すればm×n個のチップ部品を直列に接続した直列回路を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は本発明の第1実施形態に係る電子部品の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は
図1に示す電子部品からカバーを省略したときの斜視図である。
【
図3】
図3は
図1に示す電子部品の内部構成を示す断面図である。
【
図4A】
図4Aはフレキシブル基板上に設けられた複数のチップ部品を回路配線で接続するときの接続例を示す図である。
【
図4B】
図4Bはフレキシブル基板上に設けられた複数のチップ部品を回路配線で接続するときの他の接続例を示す図である。
【
図5】
図5は
図2に示す曲げ形状が付与されたフレキシブル基板の変形例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は本発明の第2実施形態に係る電子部品の構成を示す斜視図である。
【
図7】
図7は
図6に示す電子部品の内部構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は本発明の第3実施形態に係る電子部品の構成を示す斜視図である。
【
図9】
図9は
図8に示す電子部品からカバーを省略したときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0024】
第1実施形態
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る電子部品10は、略円柱形状を有し、例えば車載用部品(ノイズフィルタ等)として用いられる。
図1および
図2に示すように、電子部品10は、フレキシブル基板(FPC(Flexible printed circuits))20と、複数のコンデンサチップ30と、複数(図示の例では2本)の導電性支持体40a,40bと、カバー50と、回路配線60(
図4A参照)と、樹脂70(
図3参照)とを有する。電子部品10は、そのz軸方向の一端から導電性支持体40a,40bが引き出されるいわゆるラジアル型の電子部品を構成している。以下において、カバー50で覆われている部分(カバー50の内側に配置される構成を含む)を電子部品10の本体部10aと呼ぶ。
【0025】
複数のコンデンサチップ30の各々は、略直方体形状からなり、互いに略同一の形状およびサイズを有している。
図3に示すように、複数のコンデンサチップ30の各々は、複数の内部電極層33と複数の誘電体層34とが積層された素子本体を有する。素子本体の長手方向に対向する両端面には、それぞれ第1端子電極31および第2端子電極32が形成されている。例えば、最上層の内部電極層33は第1端子電極31に接続され、その下の層の内部電極層33は第2端子電極32に接続され、その下の層の内部電極層33は第1端子電極31に接続され、・・・、最下層の内部電極層33は第2端子電極32に接続される。
【0026】
誘電体層34は、特に限定されるものではないが、例えばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムまたはこれらの混合物などの誘電体材料で構成される。誘電体層34の厚みは、特に限定されるものではなく、1μm~数百μmが一般的である。本実施形態では、誘電体層34の厚みは、好ましくは1.0~5.0μmである。
【0027】
内部電極層33に含有される導電体材料としては、特に限定されるものではないが、誘電体層34の構成材料が耐還元性を有する場合には、比較的安価な卑金属を用いることができる。卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn、Cr、CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。また、内部電極層33は、市販の電極用ペーストを使用することにより形成されてもよい。内部電極層33の厚みは用途等に応じて適宜決定することができる。
【0028】
端子電極31,32の材質は特に限定されるものではなく、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金等を用いてもよい。端子電極31,32の厚みも特に限定されないが、通常10~50μm程度である。なお、端子電極31,32の表面には、Ni、Cu、Sn等から選ばれる少なくとも1種の金属被膜が形成されていてもよい。
【0029】
コンデンサチップ30の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。コンデンサチップ30は、たとえば、縦(長手方向の寸法)1.0~6.5mm×横0.5~5.5mm×高さ0.5~5.5mm程度である。なお、全てのコンデンサチップ30の形状、大きさあるいは種別が同一である必要はなく、形状、大きさあるいは種別の異なるコンデンサチップ30が含まれていてもよい。
【0030】
図2に示すように、フレキシブル基板20は可撓性を有する材料で構成され、曲折可能に構成されている。フレキシブル基板20は、例えば、ポリイミド等の絶縁体からなる薄膜状のベース材の一方側の面に、接着層を介して、銅箔等からなる導体箔を貼り合わせた構成を有する。この導体箔は、
図4A等に示す回路配線60となり、複数のコンデンサチップ30を接続可能に構成されている。図示の例では、フレキシブル基板20として片面構造のものが用いられているが、ベース材の両側の面に導体箔を貼り合わせた両面構造のものを用いてもよく、あるいは多層構造のものを用いてもよい。
【0031】
フレキシブル基板20は、三次元空間に設定した仮想の軸cを囲むように曲げられており、上下が開口した略筒形状を呈している。図示の例では、フレキシブル基板20は、仮想の軸cを巻回軸として巻かれている。
図2には、説明の便宜のため、(z,r,θ)の円筒座標系を示している。z座標は、円筒座標の軸方向を示しており、仮想の軸cに沿う方向に対応している。r座標は、仮想の軸cから垂直方向に延びる座標である。以下において、仮想の軸cから離れる方向を径方向と呼ぶ場合がある。θ座標は、仮想の軸c回りの方向を示しており、当該方向を周方向あるいはフレキシブル基板20の曲げ方向と呼ぶ場合がある。
【0032】
フレキシブル基板20は、上述したような曲げ加工を施す前においては、
図4Aに示すように平板形状を有しており、X軸方向およびZ軸方向の各々に所定の長さを有するとともに、Y軸方向に所定の厚みを有する。なお、図中に示す(X,Y,Z)の直交座標系において、Z軸は、前述の円筒座標系のz軸に対応している。
【0033】
図4Aに示すように、X軸方向に沿って複数箇所に設けられる第1の屈曲部20a~第5の屈曲部20eにおいて屈曲させつつ、仮想の軸c(
図2)を囲むように、フレキシブル基板20を丸めることにより、略筒体からなるフレキシブル基板20が得られる。
図2に示す例では、フレキシブル基板20は、θ方向に沿って、約1周(約1巻)するように曲げられている。
【0034】
仮想の軸cは、略筒体からなるフレキシブル基板20の中心軸(軸心)に対して略平行となるように設定されている。
図3に示すように、電子部品10は導電性支持体40a,40bを介して実装対象80に実装されるが、本実施形態では、仮想の軸cは実装対象80の表面(実装面)81に対して略垂直となるように設定されている。それ故、
図2に示すように、フレキシブル基板20は、その曲げ方向(θ方向)が実装対象の表面81に対して略平行となるような態様で、仮想の軸cを囲むように曲げられる。また、フレキシブル基板20は、その中心軸が実装対象80の表面81に対して垂直方向を向くように縦向きに配置され、略筒体からなるフレキシブル基板20の延びる方向(軸心方向)はz軸方向(仮想の軸cに沿う方向)となっている。
【0035】
フレキシブル基板20のX軸方向の一端および他端にはそれぞれ第1端部21および第2端部22が具備されているが(
図4A参照)、フレキシブル基板20を仮想の軸cを囲むように曲げた状態において、第1端部21と第2端部22とが近接して配置される。なお、第1端部21と第2端部22とは接していてもよい。
【0036】
フレキシブル基板20は、複数のコンデンサチップ30が実装される実装側面23がr方向(径方向)の外側を向くように曲げられる。フレキシブル基板20には、θ方向(周方向あるいは曲げ方向)に沿って、第1の屈曲部20a~第5の屈曲部20eの各々が所定の間隔で形成される。これら5つの屈曲部20a~20eがフレキシブル基板20に具備されることにより、仮想の軸cに沿う方向から見たときに、フレキシブル基板20は略六角形状あるいはリング状を呈することになる。
【0037】
なお、屈曲部の数は5つに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。例えば、屈曲部20a,20c,20eを省略して屈曲部の数を2つとする場合、仮想の軸cを囲むようにフレキシブル基板20を曲げたとき、仮想の軸cに沿う方向から見てフレキシブル基板20の形状は略三角形状となる。また、フレキシブル基板20に無数の屈曲部を形成する場合(屈曲部の数N=∞)、仮想の軸cを囲むようにフレキシブル基板20を曲げたとき、仮想の軸cに沿う方向から見てフレキシブル基板20の形状は略円形状となる。
【0038】
図示の例では、フレキシブル基板20は仮想の軸cを囲むようにθ方向に沿って1周するように曲げられているが、フレキシブル基板20の曲げの程度については、1周よりも小さくてもよく、あるいは1周よりも大きくてもよい。例えば、仮想の軸cを囲むようにフレキシブル基板20をθ方向に沿って0.5周(0.5巻き)するように曲げた場合、フレキシブル基板20の形状は仮想の軸cに沿う方向から見て略C字形状あるいは略L字形状等となる。
【0039】
また、例えば、仮想の軸cを囲むようにフレキシブル基板20をθ方向に沿って1.5周(1.5巻き)するように曲げた場合、
図5に示すように、フレキシブル基板20の形状は仮想の軸cに沿う方向から見て螺旋形状あるいは渦巻き形状となる。この場合、フレキシブル基板20には、その一部およびこれとは異なる他の一部がr方向に沿って重複して配置される重複部分が形成され、多層構造が具備される。また、このフレキシブル基板20の重複部分では、複数のコンデンサチップ30もr方向に沿って多層で配置される。フレキシブル基板20をθ方向に沿って複数周(複数巻き)するように曲げることにより、フレキシブル基板20の径を小さくし、r方向に関してフレキシブル基板20をコンパクトに圧縮することが可能となる。
【0040】
図2および
図4Aに示すように、フレキシブル基板20の実装側面23には、複数のコンデンサチップ30が設けられており、各コンデンサチップ30は回路配線60に接続されている。
図4Aに示す例では、複数のコンデンサチップ30は、フレキシブル基板20の実装側面23にm行n列(m,nは自然数であり、図示の例ではm=3,n=6)で整列して配置されている。なお、フレキシブル基板20の非実装側面24にはコンデンサチップ30は設けられていないが、フレキシブル基板20として両面構造のものを用いる等して、非実装側面24にコンデンサチップ30を設けてもよい。
【0041】
各コンデンサチップ30は、その第1端子電極31および第2端子電極32がそれぞれZ軸方向(仮想の軸c)に沿って配列されるようにフレキシブル基板20に設けられている。1列目に属する3つのコンデンサチップ30の各々はZ軸に沿って所定の間隔で配置されており、2列目に属する3つのコンデンサチップ30の各々はZ軸に沿って所定の間隔で配置されており、・・・、n列目に属する3つのコンデンサチップ30の各々はZ軸に沿って所定の間隔で配置されている。
【0042】
フレキシブル基板20が仮想の軸cを囲むように曲げられた状態では、複数のコンデンサチップ30は、仮想の軸cを囲むようにリング状に配置され、略筒体からなるフレキシブル基板20の外周面(実装側面23)に配置される。1行目~m行目の各々に属する6つのコンデンサチップ30は、θ方向に沿って所定の間隔で整列して配置されており、θ方向に沿って円を描くような軌跡(回転軌跡)で配置されている。
【0043】
1列目~n列目の各々に属する3つのコンデンサチップ30の配列方向は、略筒体からなるフレキシブル基板20の軸心方向と同一となっている。これら3つのコンデンサチップ部30の各々は、その隣の列に属する3つのコンデンサチップ30の各々に対して、θ方向に略120度(フレキシブル基板20が呈する略六角形の内角に略等しい角度)程度傾斜して配置されており、θ方向の各位置において各コンデンサチップ30の向きは揃ってはいない。
【0044】
図4Aに示すように、回路配線60は、複数の外側接続線61a,61bと、複数の内側接続線62とで構成されている。外側接続線61aはフレキシブル基板20のZ軸方向の一方側に形成されており、外側接続線61bはフレキシブル基板20のZ軸方向の他方側に形成されている。
【0045】
外側接続線61aは、フレキシブル基板20のX軸方向に沿って延びており、m行n列(図示の例では、m=3,n=6)で配置された複数のコンデンサチップ30のうち、最上位に位置するn個のコンデンサチップ30の第1端子電極31同士を接続している。外側接続線61bは、フレキシブル基板20のX軸方向に沿って延びており、m行n列で配置された複数のコンデンサチップ30のうち、最下位に位置するn個のコンデンサチップ30の第2端子電極32同士を接続している。詳細については後述するが、外側接続線61a,61bには、導電性支持体40a,40bが接続される。
【0046】
複数の内側接続線62の各々は、Z軸方向に隣接して配置された一方のコンデンサチップ30の第1端子電31と他方のコンデンサチップ30の第2端子電極32とを接続している。1列目~n列目の各々に属するm個のコンデンサチップ30をZ軸方向(仮想の軸c)に沿って(m-1)個の内側接続線62で直列に接続することにより、m個のコンデンサチップ30からなる直列回路をn個形成することができる。
【0047】
また、これらn個の直列回路の各々において、X軸方向に沿って、最上位のコンデンサチップ30の各々の第1端子電極31同士は外側接続線61aで接続され、最下位のコンデンサチップ30の各々の第2端子電極32同士は外側接続線61bで接続されているため、これらn個の直列回路は並列に接続され、m直列n並列からなる回路を形成することができる。
【0048】
より具体的に説明すると、
図4Aに示す例では、1列目に属する3個のコンデンサチップ30が2つの内側接続線62を介して直列に接続され、3個のコンデンサチップ30からなる第1の直列接続体30Aが形成されている。また、2列目に属する3個のコンデンサチップ30が2つの内側接続線62を介して直列に接続され、3個のコンデンサチップ30からなる第2の直列接続体30Bが形成されている。また、3列目に属する3個のコンデンサチップ30が2つの内側接続線62を介して直列に接続され、3個のコンデンサチップ30からなる第3の直列接続体30Cが形成されている。また、4列目に属する3個のコンデンサチップ30が2つの内側接続線62を介して直列に接続され、3個のコンデンサチップ30からなる第4の直列接続体30Dが形成されている。また、5列目に属する3個のコンデンサチップ30が2つの内側接続線62を介して直列に接続され、3個のコンデンサチップ30からなる第5の直列接続体30Eが形成されている。また、6列目に属する3個のコンデンサチップ30が2つの内側接続線62を介して直列に接続され、3個のコンデンサチップ30からなる第6の直列接続体30Fが形成されている。
【0049】
これら第1の直列接続体30A~第6の直列接続体30Fの各々において、1行目に属する各コンデンサチップ30の各第1端子電極31は、外側接続線61aを介して相互に接続されている。また、3行目に属する各コンデンサチップ30の各第2端子電極32は、外側接続線61bを介して相互に接続されている。これにより、第1の直列接続体30A~第6の直列接続体30Fは、相互に、外側接続線61a,61bを介して並列に接続され、3個のコンデンサチップ30からなる直列接続体を6個含んだ並列回路(3直列6並列回路)を構成することができる。
【0050】
なお、回路配線60の態様は図示の例に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。例えば、
図4Bに示す例では、回路配線60は、複数の外側接続線61c,61d,61eと、複数の内側接続線62とを有している。
【0051】
外側接続線61cは、フレキシブル基板20のZ軸方向の一方側において、X軸方向の一方側または他方側に配置されたコンデンサチップ30の第1端子電極31に接続される。外側接続線61c,61cには、導電性支持体40a,40bが接続される。外側接続線61dは、フレキシブル基板20のZ軸方向の一方側において、X軸方向に隣接する一対のコンデンサチップ30,30の各々の第1端子電極31同士を接続する。外側接続線61eは、フレキシブル基板20のZ軸方向の他方側において、X軸方向に隣接する一対のコンデンサチップ30,30の各々の第2端子電極32同士を接続する。これらの接続線61c,61d,61eによって、複数のコンデンサチップ30を接続することにより、フレキシブル基板20の実装側面23に、複数(m×n個)のコンデンサチップ30からなる直列回路を形成することができる。
【0052】
より具体的に説明すると、
図4Bに示す例では、第1の直列接続体30Aの3行目に属するコンデンサチップ30の第2端子電極32は、外側接続線61eを介して、第2の直列接続体30Bの3行目に属するコンデンサチップ30の第2の端子電極32に接続されている。また、第2の直列接続体30Bの1行目に属するコンデンサチップ30の第1端子電極31は、外側接続線61dを介して、第3の直列接続体30Cの1行目に属するコンデンサチップ30の第1端子電極31に接続されている。また、第3の直列接続体30Cの3行目に属するコンデンサチップ30の第2端子電極32は、外側接続線61eを介して、第4の直列接続体30Dの3行目に属するコンデンサチップ30の第2端子電極32に接続されている。また、第4の直列接続体30Dの1行目に属するコンデンサチップ30の第1端子電極31は、外側接続線61dを介して、第5の直列接続体30Eの1行目に属するコンデンサチップ30の第1端子電極31に接続されている。また、第5の直列接続体30の3行目に属するコンデンサチップ30の第2端子電極32は、外側接続線61eを介して、第6の直列接続体30Fの3行目に属するコンデンサチップ30の第2端子電極32に接続されている。
【0053】
これにより、第1の直列接続体30A~第6の直列接続体30Fは、相互に、2つの外側接続線61dおよび3つの外側接続線61eを介して直列に接続され、3個のコンデンサチップ30からなる直列接続体を6個含んだ直列回路、換言すれば18個のコンデンサチップ30を直列に接続した直列回路(18直列回路)を構成することができる。
【0054】
図2および
図4Aに示すように、複数の導電性支持体40a,40bは、回路配線60に電気的に接続されており、フレキシブル基板20のz軸方向の外方に延びている。導電性支持体40a,40bは、導電性の棒状部材あるいはワイヤ状部材で形成されており、例えばすずめっき線やエナメル線等の金属線(リード線)からなる。導電性支持体40a,40bは、直線形状を有し、仮想の軸cに沿って、フレキシブル基板20のz軸方向の一方側から互いに同一方向に引き出される。導電性支持体40a,40bはそれぞれ略平行に配置されており、導電性支持体40aの長さは導電性支持体40bの長さよりも長くなっている。なお、導電性支持体40a,40bの形状は、直線形状に限定されるものではなく、曲がっていてもよい。
【0055】
導電性支持体40a,40bは、略筒体からなるフレキシブル基板20の内周側に配置され、非実装側面24に沿って配置される。非実装側面24において、導電性支持体40a,40bを配置する位置は図示の位置に限定されるものではなく適宜変更してもよい。導電性支持体40a,40bの一方側の端部は、非実装側面24において、回路配線60に電気的に接続される。より詳細には、導電性支持体40aの一方側の端部は、回路配線60の外側接続線61aに電気的に接続され、導電性支持体40bの一方側の端部は回路配線60の外側接続線61bに電気的に接続される。
【0056】
導電性支持体40aは、複数のコンデンサチップ30で形成されたm直列n並列からなる回路の入力端(または出力端)として機能し、導電性支持体40bは当該回路の出力端(または入力端)として機能する。実装対象80から供給される電力は、導電性支持体40a(40b)を介して複数のコンデンサチップ30からなる電気回路に入力され、導電性支持体40b(40a)を介して当該電気回路から出力される。
【0057】
導電性支持体40a,40bと外側接続線61a,61bとを電気的に接続する具体的手段としては、周知の技術を用いることができる。例えば、実装側面23の外側接続線61a(61b)に対してスルーホールを介して電気的に接続される導体パターン(ランド)を非実装側面24に形成しておき、この導体パターンに導電性支持体40a(40b)をハンダや導電性接着剤等の各種接続部材で接続してもよい。なお、導電性支持体40a,40bを実装側面23に沿って配置することにより、実装側面23の外側接続線61a,61bに直接接続してもよい。この場合、実装側面23に設けられた複数のコンデンサチップ30とのショート不良を防止するために、導電性支持体40a,40bの表面には絶縁性の被膜を形成しておくことが好ましい。
【0058】
図4Bに示す例では、導電性支持体40aはX軸方向の一方の外側接続線61cに電気的に接続され、導電性支持体40bはX軸方向の他方の外側接続線61cに電気的に接続される。導電性支持体40aは、複数のコンデンサチップ30で形成された直列回路の入力端(または出力端)として機能し、導電性支持体40bは当該直列回路の出力端(または入力端)として機能する。
【0059】
図3に示すように、導電性支持体40a,40bの他端は、実装対象80に接続される。図示の例では、導電性支持体40a,40bは、実装対象80の内部に差し込まれているが、その接続態様は特に限定されるものではない。詳細な図示は省略するが、実装対象80の表面81に導体パターン(ランド)を設けておき、この導体パターンに導電性支持体40a,40bをハンダや導電性接着剤等の各種接続部材で接続してもよい。また、導電性支持体40a,40bを実装対象80に設けられる電極等に絡げることにより、導電性支持体40a,40bを実装対象80に接続してもよい。
【0060】
導電性支持体40a,40bにはある程度の剛性(固さ)が備わっており、導電性支持体40a,40bを実装対象80に接続した状態では、フレキシブル基板20およびその周囲を取り囲むカバー50等からなる電子部品10の本体部10aは、自立した状態で実装対象80に対して固定される。例えば、本体部10aはフィルムコンデンサのような態様で実装対象80に固定される。
【0061】
導電性支持体40a,40bは、実装対象80の表面81に対して略垂直となるよう、実装対象80に対して直線的に延びている。これにより、導電性支持体40a,40bを実装対象80に向けて最短距離で引き出すことが可能となり、導電性支持体40a,40bの抵抗成分を低減することができる。本体部10aは、実装対象80の表面81に対して傾斜することなく配置されているが、導電性支持体40a,40bを折り曲げる等して、本体部10aを実装対象80の表面81に対して傾斜させてもよい。
【0062】
本体部10a(カバー50)のz軸方向の下端と実装対象80の表面81との間には、距離hからなる隙間が形成されている。距離hについては、電子部品10の実装環境に合わせて適宜変更することが可能であり、hを実質的に0としてもよい。
【0063】
図1および
図3に示すように、カバー(ケース)50は、略円筒形状を有し、フレキシブル基板20の周囲を取り囲んでいる。カバー50の形状は図示の形状に限定されるものではなく、例えば多角筒形状であってもよい。カバー50は、例えばセラミック、ガラスまたは樹脂等の絶縁体、あるいはアルミ等の金属材等で構成される。
【0064】
カバー50は、カバー本体部51と蓋部52とを有し、これらは別体で構成されている。カバー本体部51は、有底筒形状を有し、側部510と上部511と開口部512とを有する。側部510と上部511とは、一体に形成されており、略筒体からなるフレキシブル基板20の外周形状(
図2参照)に沿うような形状を有する。開口部512は、側部510のz軸方向の端部に形成されており、上部511とはz軸方向の反対側に位置する。
【0065】
蓋部52は、略円板形状を有し、側部510のz軸方向の端部に取り付けられて開口部512を塞いでいる。蓋部52は、実装対象80の表面81に対して対向して配置される。この点は、上部511についても同様である。蓋部52には2つの挿通孔520が形成されており、一方の挿通孔520には導電性支持体40aが挿通され、他方の挿通孔520には導電性支持体40bが挿通される。挿通孔520,520の内部に導電性支持体40a,40bを挿通させた状態において、カバー50の内部は密閉された状態(液密)となっている。例えば、挿通孔520,520の内部に接着剤等を充填させることにより、カバー50の内部の密閉性を高めるとともに、導電性支持体40a,40bを挿通孔520,520の内部に強固に固定することができる。
【0066】
カバー50で密閉された円筒空間内には樹脂70が充填されている。樹脂70はポッティング樹脂等の放熱性に優れた樹脂からなり、樹脂70を介して、フレキシブル基板20に設けられた複数のコンデンサチップ30から発生する熱を効果的に放熱させることが可能となっている。本実施形態では、樹脂70として、粘性を有するシリコーンオイル(シリコーン樹脂)が用いられている。ただし、樹脂70はこれに限定されるものではなく、例えばウレタン系樹脂やエポキシ系樹脂等を用いてもよい。また、放熱性を高めるために、樹脂70中には、熱伝導性の高いフィラーを充填させてもよい。あるいは、カバー50の内部に不活性液体(例えば、フッ素系の不活性液体)を充填してもよい。
【0067】
カバー50の内部において、樹脂70は略筒体からなるフレキシブル基板20の外周側(実装側面23とカバー50の内壁面との間の空間)および内周側(非実装側面24によって囲まれた空間)に充填されており、フレキシブル基板20およびこれに設けられた複数のコンデンサチップ30は樹脂70によって全体が覆われている。また、カバー50の内部に位置する導電性支持体40a,40bの一部も樹脂70によって覆われている。樹脂70は、カバー50の内部において液体状または固体状で存在している。
【0068】
次に、電子部品10の製造方法について説明する。まず、
図1および
図2に示す各種部材を準備する。次いで、回路配線60が設けられたフレキシブル基板20の実装側面23に複数のコンデンサチップ30を実装し、これら複数のコンデンサチップ30からなる電気回路を形成する。フレキシブル基板20に設けられる回路配線60の構成については、複数のコンデンサチップ30によって実現しようとする電気回路の構成に応じて適宜決定すればよい(
図4A,4B参照)。複数のコンデンサチップ30の実装時においては、フレキシブル基板20には
図2に示すような曲げ形状が付与されていないことが好ましい。
【0069】
次いで、導電性支持体40a,40bをフレキシブル基板20に固定する。より詳細には、導電性支持体40a,40bをフレキシブル基板20の非実装側面24に沿うように配置するとともに、例えば
図4Aに示すように、導電性支持体40a,40bの一端を外側接続線61a,61bに接続し、導電性支持体40a,40bを回路配線60に電気的に接続する。
【0070】
次いで、
図2に示すように、仮想の軸cを囲むように、フレキシブル基板20を曲げ、屈曲体あるいは湾曲体を構成する。フレキシブル基板20に対する曲げ加工は、その実装側面23が外側に配置され、非実装側面24が内側(仮想の軸cを向く側)に配置されるように行う。図示の例では、フレキシブル基板20の形状は仮想の軸cに沿う方向から見て略六角形状となっているが、仮想の軸cに沿う方向から見て曲がっていれば、その形状はいかなる形状であってもよい。例えば、フレキシブル基板20の形状として、C字形状、L字形状、リング状、円形状、半円状、弧状あるいは螺旋形状等を採用してもよい。なお、前述の導電性支持体40a,40bをフレキシブル基板20に取り付ける工程については、上述した曲げ工程を行った後に実施してもよい。
【0071】
次いで、
図1および
図3に示すように、フレキシブル基板20をカバー50の内部に収容する。より詳細には、導電性支持体40a,40bの先端側の一部が外側に飛び出すように、フレキシブル基板20の全体をカバー本体部51の内部に収容する。次いで、その状態で、カバー本体部51の内部にシリコーンオイル等からなる樹脂70を充填し、複数のコンデンサチップ30ごとフレキシブル基板20を樹脂70で覆う。
【0072】
次いで、カバー本体部51に蓋52を取り付け、開口部512を塞ぐ。蓋52の取付は、カバー本体部51の外側に向けて突出する導電性支持体40a,40bを挿通孔520,520の内部に挿通させつつ行う。カバー本体部51のz軸方向の端部と蓋52との接合部については、接着剤等で接着固定しておくことが好ましい。また、挿通孔520,520と導電性支持体40a,40bとの間に隙間が形成されないよう、挿通孔520,520の内部に接着剤等を充填し、カバー50の内部の液密性を高めておくことが好ましい。以上の工程を実施することにより、
図1に示す電子部品10を得ることができる。
【0073】
以上、本実施形態に係る電子部品10は、
図2および
図3に示すように、回路配線60(
図4A)に電気的に接続され、フレキシブル基板20のz軸方向の外方に延びる導電性支持体40a,40bを有する。そのため、導電性支持体40a,40bを介してフレキシブル基板20を実装対象80に接続することが可能となり、従来技術とは異なり、フレキシブル基板の両端部を曲げてこれを実装対象に接続する必要がない。したがって、その分だけ、フレキシブル基板20の実装面積を大きく確保することが可能となり、多数のコンデンサチップ30をフレキシブル基板20に実装することができる。また、多数のコンデンサチップ30によって並列回路を構成することにより、大容量からなる電子部品10を構成することができる。また、多数のコンデンサチップ30によって直列回路を構成することにより、電子部品10の安全性を向上させることができる。
【0074】
また、導電性支持体40a,40bにフレキシブル基板20を支持させることにより、フレキシブル基板20を安定した状態で実装対象80に固定することが可能となる。したがって、フレキシブル基板20が実装対象80に対して位置ずれすることを防止し、フレキシブル基板20に実装された複数のコンデンサチップ30を実装対象80に確実に実装することができる。
【0075】
また、
図4Aおよび
図4Bに示すように、導電性支持体40a,40bは、回路配線60に電気的に接続されており、複数のコンデンサチップ30からなる電気回路の入出力端子として機能する。そのため、導電性支持体40a,40bを介してフレキシブル基板20と実装対象80とを接続することにより、フレキシブル基板20に実装された複数のコンデンサチップ30を実装対象80に対して電気的に接続し、複数のコンデンサチップ30からなる電気回路を機能させることができる。
【0076】
また、本実施形態に係る電子部品10は、
図2および
図3に示すように、仮想の軸cを囲むように曲げられるフレキシブル基板20を有するため、その曲げ分だけフレキシブル基板20の全体形状をコンパクトにすることが可能となり、実装対象80に対する電子部品10の実装面積を小さくすることができる。
【0077】
また、フレキシブル基板20の周囲はカバー50によって取り囲まれているため、カバー50によって、フレキシブル基板20およびこれに実装された複数のコンデンサチップ30を外力等から有効に保護することができる。
【0078】
また、カバー50の内部には樹脂70が充填されているため、樹脂70を介して複数のコンデンサチップ30から発生する熱を効果的に外部に放熱させることが可能となり、放熱性能を十分に確保しつつ、フレキシブル基板20に多数のコンデンサチップ30を実装することができる。
【0079】
また、仮想の軸cは、導電性支持体40a,40bが接続される実装対象80の表面81に対して略垂直となるように延びている。そのため、仮想の軸cを囲むようにフレキシブル基板20を曲げたときに、実装対象80の表面81に略平行な方向(r方向)に関して、フレキシブル基板20の広がりを抑えることが可能となり、実装対象80に対する電子部品10の実装面積を小さくすることができる。
【0080】
また、導電性支持体40a,40bは、仮想の軸cに沿って、フレキシブル基板20から互いに同一方向に引き出されている。そのため、特に仮想の軸cが実装対象80の表面81に対して略垂直となるようにフレキシブル基板20が配置される場合において、導電性支持体40a,40bを表面81に向けて引き出すときに、表面81に略平行な方向(r方向)に沿った導電性支持体40a,40bの広がりを抑えることが可能となり、実装対象80に対する電子部品10の実装面積を小さくすることができる。
【0081】
第2実施形態
図6および
図7に示す本発明の第2実施形態に係る電子部品110は、以下に示す点を除いて、第1実施形態に係る電子部品10と同様な構成を有し、同様な作用効果を奏する。図面において、第1実施形態の電子部品10における各部材と共通する部材には、共通の符号を付し、その説明については省略する。
【0082】
本実施形態では、フレキシブル基板20に対する支持構造が、第1実施形態とは異なっている。電子部品110は、導電性支持体40a,40bに代えて導電性支持体140a,140bを有するという点において、
図1に示す電子部品10とは異なっている。導電性支持体140a,140bは、リードフレームによって構成されている。リードフレームは、導電性の板体によって構成され、例えば鉄、ニッケル、銅、銀等あるいはこれらを含む合金で形成された金属板からなる。導電性支持体140a,140bは、
図1に示す導電性支持体40a,40bに比べて、高い剛性(固さ)を有するとともに、低い柔軟性を有する。
【0083】
図6および
図7に示すように、導電性支持体140a,140bは、支持本体部141a,141bと、基板係合部142a,142bと、係合溝143a,143bと、実装部144,144と、貫通孔145,145とを有する。
【0084】
図7に示すように、支持本体部141a,141bは、カバー50の内側から、蓋52を貫通して、カバー50の外側に向かって突出している。支持本体部141a,141bは、仮想の軸cに沿って、実装対象80の表面81に対して略垂直方向に延びている。支持本体部141aは表面81からフレキシブル基板20の下端部まで延びており、支持本体部141bは表面81からフレキシブル基板20の上端部まで延びている。支持本体部141bのz軸方向の長さは、支持本体部141aのz軸方向の長さよりも、フレキシブル基板20のz軸方向の長さ分だけ長くなっている。
【0085】
実装部144,144は、それぞれ支持本体部141a,141bのz軸方向の端部に一体的に接続され、支持本体部141a,141bに対して略垂直方向に屈曲している。実装部144,144を介して、実装対象80の表面81に支持部140a,140bをハンダや導電性接着剤等の各種接続部材によって接続することが可能となっている。
【0086】
実装部144,144には、貫通穴145,145が形成されている。貫通孔145,145は、例えばボルト孔である。貫通穴145,145に留め具(例えばボルト)を挿通し、これを貫通穴145,145に対応する位置に形成された実装対象80の挿通孔(図示略)に嵌め込むことにより、支持部140a,140bを実装対象80に固定(螺合)してもよい。
【0087】
基板係合部142aは、鉤形状あるいは断面略C字形状を有する。基板係合部142aには係合溝143aが形成されており、係合溝143aにフレキシブル基板20のz軸方向の下端部が係合することにより、フレキシブル基板20のz軸方向の下端部が基板係合部142aに固定される。
【0088】
詳細な図示は省略するが、基板係合部142aにフレキシブル基板20が係合した状態において、導電性支持体140aは回路配線60(
図4A参照)に電気的に接続される。例えば、実装側面23において、基板係合部142aの一部が外側接続線61bに接触することにより、導電性支持体140aは回路配線60に電気的に接続される。あるいは、非実装側面24において、スルーホールを介して、基板係合部142aが外側接続線61bに電気的に接続されることにより、導電性支持体140aは回路配線60に電気的に接続される。
【0089】
基板係合部142bは、鉤形状あるいは断面略C字形状を有する。基板係合部142bには係合溝143bが形成されており、係合溝143bにフレキシブル基板20のz軸方向の上端部が係合することにより、フレキシブル基板20のz軸方向の上端部が基板係合部142bに固定される。
【0090】
詳細な図示は省略するが、基板係合部142bにフレキシブル基板20が係合した状態において、導電性支持体140bは回路配線60(
図4A参照)に電気的に接続される。例えば、実装側面23において、基板係合部142bの一部が外側接続線61aに接触することにより、導電性支持体140bは回路配線60に電気的に接続される。あるいは、非実装側面24において、スルーホールを介して、基板係合部142bあるいは支持本体部141bが外側接続線61aに電気的に接続されることにより、導電性支持体140bは回路配線60に電気的に接続される。
【0091】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。加えて、本実施形態では、支持部140a,140bがリードフレームで構成されているため、導電性支持体140a,140bに高い強度が具備され、実装対象80に対して、電子部品110を強固に固定することができる。また、本実施形態では、支持部140a,140bに実装部144,144が具備されているため、実装部144,144を介して、導電性支持体140a,140bを実装対象80の表面81にハンダ等によって容易に接続することができる。
【0092】
第3実施形態
図8および
図9に示す本発明の第3実施形態に係る電子部品210は、以下に示す点を除いて、第1実施形態に係る電子部品10と同様な構成を有し、同様な作用効果を奏する。図面において、第1実施形態の電子部品10における各部材と共通する部材には、共通の符号を付し、その説明については省略する。
【0093】
図1と
図8とを対比すれば明らかなように、本実施形態では、フレキシブル基板20およびその周囲を取り囲むカバー50等からなる電子部品210の本体部210aの構成については、第1実施形態における電子部品10の本体部10aの構成と同様となっている。
【0094】
一方で、本実施形態の電子部品210は、
図9に示すように、仮想の軸cが実装対象80の表面81に対して略平行となるように設定されているという点において、第1実施形態における電子部品10とは異なっている。電子部品210の本体部210aは、電子部品10の本体部10aとは略90度だけ異なる角度で実装対象80上に配置されている。
【0095】
フレキシブル基板20は、その曲げ方向(θ方向)に略平行な面(r軸に略平行な面)が実装対象80の表面81に対して略垂直となるような態様で、仮想の軸cを囲むように曲げられる。フレキシブル基板20は、その中心軸が実装対象80の表面81に対して略平行となるように横向きに配置され、略筒体からなるフレキシブル基板20の延びる方向(軸心方向)はz軸方向(仮想の軸cに沿う方向)となる。
【0096】
電子部品210は、複数の導電性支持体240a,240bを有し、導電性支持体240a,240bは、仮想の軸cに沿って、フレキシブル基板20から互いに反対方向に引き出される。導電性支持体240aは、フレキシブル基板20のz軸方向の一端から、z軸方向の一方側に向かって引き出される。導電性支持体240bは、フレキシブル基板20のz軸方向の他端から、z軸方向の他方側に向かって引き出される。電子部品210は、そのz軸方向の両端から導電性支持体240a,240bが引き出されるいわゆるアキシャル型の電子部品を構成している。導電性支持体240a,240bの一方は、例えば
図4Aに示す回路配線60の外側接続線61aに接続され、他方は回路配線60の外側接続線61bに接続される。
【0097】
導電性支持体240a,240bは、屈曲形状からなる屈曲部246,246を有し、z軸に沿って所定長だけ引き出される部分と、r軸に沿って所定長だけ引き出される部分とを有する。導電性支持体240bの屈曲部246から先の部分は、導電性支持体240aの屈曲部246から先の部分よりも長くなっている。
【0098】
導電性支持体240a,240bの屈曲部246,246から先の部分は、互いに同一方向に延びており、略平行となっている。また、導電性支持体240a,240bの屈曲部246,246から先の部分は、実装対象80の表面81に対して略垂直となるように、実装対象80に対して直線的に延びている。導電性支持体240a,240bの屈曲部246,246から先の部分を実装対象80に接続することにより、電子部品210を実装対象80に実装することが可能となっている。
【0099】
図8に示すように、導電性支持体240a,240bを実装対象80に接続した状態では、フレキシブル基板20およびその周囲を取り囲むカバー50等からなる電子部品210の本体部210aは、自立した状態で実装対象80に対して固定される。カバー50の蓋部52および上部511は、実装対象80の表面81に対して略垂直となるように配置される。なお、詳細な図示は省略するが、カバー50の上部511には、導電性支持体240bを挿通させるための挿通孔が形成されている。
【0100】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。加えて、本実施形態では、仮想の軸cが、導電性支持体240a,240bが接続される実装対象80に対して略平行となるように延びている。そのため、仮想の軸cを囲むようにフレキシブル基板20を曲げたときに、実装対象80の表面81に略垂直な方向に関して、フレキシブル基板20の広がり(高さ)を抑えることが可能となり、電子部品210の低背化を実現することができる。
【0101】
また、本実施形態では、導電性支持体240a,240bの屈曲部246,246よりも手前の部分が、仮想の軸cに沿って、フレキシブル基板20から互いに反対方向に引き出される。そのため、図示のように仮想の軸cが実装対象80の表面81に対して略平行となるようにフレキシブル基板20が配置される場合において、導電性支持体240a,240bを実装対象80に向けて引き出すときに、実装対象80の表面81に略垂直な方向に沿った導電性支持体240a,240bの広がり(高さ)を抑えることが可能となり、電子部品210の低背化を実現することができる。
【0102】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0103】
上記各実施形態では、チップ部品の一例としてコンデンサチップ30を例示したが、コンデンサチップ30以外のチップ部品(例えば、チップ抵抗やチップインダクタ等)を用いてもよい。また、フレキシブル基板20に実装するチップ部品の数は適宜変更してもよい。
【0104】
上記各実施形態において、コンデンサチップ30の数は図示の例に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。また、
図4Aおよび
図4Bに示すように、複数のコンデンサチップ30はm行n列(図示の例では、m=3,n=6)で整然と配置されている必要はなく、ランダムに配置されていてもよい。また、複数のコンデンサチップ30によって形成される回路は、
図4Aおよび
図4Bに示す回路に限定されるものではなく適宜変更してもよい。また、コンデンサチップ30の向きは、第1端子電極31および第2端子電極32がそれぞれX軸方向に沿って配列されるような向きであってもよい。
【0105】
上記各実施形態において、カバー50およびその内部に充填する樹脂70については必須ではなく、省略してもよい。
【0106】
上記第1実施形態では、電子部品10には2本の導電性支持体40a,40bが具備されていたが、導電性支持体の数はこれに限定されるものではなく、3本以上でもよい。上記第2実施形態および第3実施形態についても同様である。
【0107】
上記各実施形態において、フレキシブル基板20に付与する曲げ形状については適宜変更してもよい。また、
図2に示す例では、フレキシブル基板20の全体が仮想の軸cを囲むように曲げられていたが、フレキシブル基板20の一部のみが仮想の軸cを囲むように曲げられていてもよい。この場合において、フレキシブル基板20は、例えばつづら折りされることにより、折り畳まれるように(波状あるいはジグザグに)曲げられていてもよい。
【0108】
上記各実施形態において、カバー50の形状については適宜変更してもよい。例えば、
図1に示すカバー50をz軸方向に沿って半分に分割した半割れ体で構成してもよい。あるいは、カバー50をr軸方向に沿って半分に分割した半割れ体で構成してもよい。
【0109】
上記第3実施形態に上記第2実施形態に示す技術を適用し、導電性支持体240a,240bをリードフレームで形成してもよい。
【0110】
上記第2実施形態において、導電性支持体140a,140bの実装部144,144は、支持本体部141a,141bに対して、径方向の外側に向かって略L字形状となるように屈曲していたが、径方向の内側に向かって略L字形状となるように屈曲していてもよい。
【符号の説明】
【0111】
10,110,210…電子部品
10a,210a…本体部
20…フレキシブル基板
20a~20e…屈曲部
21…第1端部
22…第2端部
23…実装側面
24…非実装側面
30…コンデンサチップ
30A~30F…第1の直列接続体~第6の直列接続体
31…第1端子電極
32…第2端子電極
33…内部電極層
34…誘電体層
40a,40b,140a,140b,240a,240b…導電性支持体
141a,141b…支持本体部
142a,142b…基板係合部
143a,143b…係合溝
144…実装部
145…貫通孔
246…屈曲部
50…カバー
51…カバー本体部
510…側部
511…上部
512…開口部
52…蓋部
520…挿通孔
60…回路配線
61a,61b,61c,61d,61e…外側接続線
62…内側接続線
70…樹脂
80…実装対象
81…表面