(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】両面焼きグリル用の火力調節弁
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20240905BHJP
F24C 3/02 20210101ALI20240905BHJP
F24C 3/12 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A47J37/06 366
F24C3/02 F
F24C3/12 A
(21)【出願番号】P 2020185210
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】片岡 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀幸
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-223361(JP,A)
【文献】特開2019-032124(JP,A)
【文献】特開2019-017766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0345767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
F24C 3/02
F24C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上火バーナと下火バーナとを備える両面焼きグリル用の火力調節弁であって、
固定板と、固定板の片面に接した状態でモータにより回転駆動される円板状の弁板とを備え、固定板の弁板が接する円形領域を第1と第2の2つの半円領域に2分し、上火バーナと下火バーナとの一方を第1バーナ、他方を第2バーナとして、第1と第2の各半円領域に、第1と第2の各バーナに連なる弱火用の通路孔と強火用の通路孔とが形成され、これら通路孔のうち弁板に形成した弁孔に重なって開放される孔が弁板の回転で切換えられて第1と第2の各バーナの火力が切換えられるようにしたものにおいて、
固定板の第1半円領域に、第1と第2の両半円領域の境界線から周方向一方に所定の第1角度離れた放射線上に位置させて、第1バーナに連なる第1弱火用通路孔と、第1弱火用通路孔から径方向に位置をずらして、第1バーナに連なる第1強火用通路孔とが形成され、固定板の第2半円領域に、第1と第2の両半円領域の境界線から周方向他方に前記第1角度離れた放射線上に位置させて、第2バーナに連なる第2弱火用通路孔と、第2弱火用通路孔から径方向に位置をずらして、第2バーナに連なる第2強火用通路孔とが形成され、第1と第2の両弱火用通路孔は、弁板の回転中心と同心の第1の円周上に位置し、第1と第2の両強火用通路孔は、弁板の回転中心と同心で第1の円周とは異なる径の第2の円周上に位置し、
弁板に、弁孔として、第1の円周と同心同径の円周上に位置し、中心角が前記第1角度の2倍よりも大きな所定の第2角度の円弧状の第1弁孔と、第2の円周と同心同径の円周上に位置し、第1弁孔の周方向中心から周方向一方に第1角度より大きく前記第2角度の半分より小さな所定の第3角度離れた箇所から周方向他方にのびる、中心角が前記第1角度以上で前記第3角度より小さな所定の第4角度の円弧状の第2弁孔と、第2の円周と同心同径の円周上で、第1弁孔の周方向中心から周方向他方に前記第3角度離れた箇所又はその近傍に位置する第3弁孔とが形成され、
第1及び第2の弱火用通路孔と第1及び第2の強火用通路孔との何れにも第1乃至第3の弁孔が重ならず、第1と第2の両バーナが消火される閉止状態から弁板を周方向一方に回転させることにより、第1弁孔が第2弱火用通路孔に重なって、第2バーナのみが弱火で燃焼する状態と、第1弁孔が第2弱火用通路孔に重なると共に第2弁孔が第2強火用通路孔に重なって、第2バーナのみが強火で燃焼する状態と、第1弁孔が第1と第2の両弱火用通路孔に重なると共に第2弁孔が第2強火用通路孔に重なって、第2バーナが強火で燃焼すると共に第1バーナが弱火で燃焼する状態と、第1弁孔が第1と第2の両弱火用通路孔に重なると共に第2弁孔が第2強火用通路孔から離れて第1強火用通路孔に重なって、第2バーナが弱火で燃焼すると共に第1バーナが強火で燃焼する状態と、第1弁孔が第1と第2の両弱火用通路孔に重なると共に第2弁孔が第1強火用通路孔に重なり、更に、第3弁孔が第2強火用通路孔に重なって、第1と第2の両バーナが強火で燃焼する状態と、第1弁孔が第1と第2の両弱火用通路孔に重なると共に第2弁孔と第3弁孔とが夫々第1強火用通路孔と第2強火用通路孔とから離れて、第1と第2の両バーナが弱火で燃焼する状態と、第1弁孔が第2弱火用通路孔から離れて第1弱火用通路孔のみに重なると共に第3弁孔が第1強火用通路孔に重なって、第1バーナのみが強火で燃焼する状態と、第1弁孔が第1弱火用通路孔のみに重なると共に第3弁孔が第1強火用通路孔から離れて、第1バーナのみが弱火で燃焼する状態と、前記閉止状態とに順に切換えられることを特徴とする両面焼きグリル用の火力調節弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上火バーナと下火バーナとを備える両面焼きグリル用の火力調節弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の火力調節弁として、固定板と、固定板の片面に接した状態でモータにより回転駆動される円板状の弁板とを備え、固定板の弁板が接する円形領域を第1と第2の2つの半円領域に2分し、上火バーナと下火バーナとの一方を第1バーナ、他方を第2バーナとして、第1と第2の各半円領域に、第1と第2の各バーナに連なる弱火用の通路孔と強火用の通路孔とが形成され、これら通路孔のうち弁板に形成した弁孔に重なって開放される孔が弁板の回転で切換えられて第1と第2の各バーナの火力が切換えられるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
ここで、上記従来例の火力調節弁は、グリル使用中に消火できるのが第1と第2の両バーナのうちの一方のみとなり、第1と第2の両バーナの消火を含めた火力の組み合わせが7通りに切換え可能であった。然し、調理の幅を広げるには、第1と第2の両バーナの火力の組み合わせを、第1と第2の各バーナの火力を夫々消火、弱火、強火の3通りに切換え可能として、最大である3×3の9通りに切換え可能とすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-223361号公報
【文献】特開2019-17766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、第1と第2の両バーナの火力の組み合わせを最大の9通りに切換え可能とすることができるようにした両面焼きグリル用の火力調節弁を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、上火バーナと下火バーナとを備える両面焼きグリル用の火力調節弁であって、固定板と、固定板の片面に接した状態でモータにより回転駆動される円板状の弁板とを備え、固定板の弁板が接する円形領域を第1と第2の2つの半円領域に2分し、上火バーナと下火バーナとの一方を第1バーナ、他方を第2バーナとして、第1と第2の各半円領域に、第1と第2の各バーナに連なる強火用の通路孔と弱火用の通路孔とが形成され、これら通路孔のうち弁板に形成した弁孔に重なって開放される孔が弁板の回転で切換えられて第1と第2の各バーナの火力が切換えられるようにしたものにおいて、固定板の第1半円領域に、第1と第2の両半円領域の境界線から周方向一方に所定の第1角度離れた放射線上に位置させて、第1バーナに連なる第1弱火用通路孔と、第1弱火用通路孔から径方向に位置をずらして、第1バーナに連なる第1強火用通路孔とが形成され、固定板の第2半円領域に、第1と第2の両半円領域の境界線から周方向他方に前記第1角度離れた放射線上に位置させて、第2バーナに連なる第2弱火用通路孔と、第2弱火用通路孔から径方向に位置をずらして、第2バーナに連なる第2強火用通路孔とが形成され、第1と第2の両弱火用通路孔は、弁板の回転中心と同心の第1の円周上に位置し、第1と第2の両強火用通路孔は、弁板の回転中心と同心で第1の円周とは異なる径の第2の円周上に位置し、弁板に、弁孔として、第1の円周と同心同径の円周上に位置し、中心角が前記第1角度の2倍よりも大きな所定の第2角度の円弧状の第1弁孔と、第2の円周と同心同径の円周上に位置し、第1弁孔の周方向中心から周方向一方に第1角度より大きく前記第2角度の半分より小さな所定の第3角度離れた箇所から周方向他方にのびる、中心角が前記第1角度以上で前記第3角度より小さな所定の第4角度の円弧状の第2弁孔と、第2の円周と同心同径の円周上で、第1弁孔の周方向中心から周方向他方に前記第3角度離れた箇所又はその近傍に位置する第3弁孔とが形成され、第1及び第2の弱火用通路孔と第1及び第2の強火用通路孔との何れにも第1乃至第3の弁孔が重ならず、第1と第2の両バーナが消火される閉止状態から弁板を周方向一方に回転させることにより、第1弁孔が第2弱火用通路孔に重なって、第2バーナのみが弱火で燃焼する状態と、第1弁孔が第2弱火用通路孔に重なると共に第2弁孔が第2強火用通路孔に重なって、第2バーナのみが強火で燃焼する状態と、第1弁孔が第1と第2の両弱火用通路孔に重なると共に第2弁孔が第2強火用通路孔に重なって、第2バーナが強火で燃焼すると共に第1バーナが弱火で燃焼する状態と、第1弁孔が第1と第2の両弱火用通路孔に重なると共に第2弁孔が第2強火用通路孔から離れて第1強火用通路孔に重なって、第2バーナが弱火で燃焼すると共に第1バーナが強火で燃焼する状態と、第1弁孔が第1と第2の両弱火用通路孔に重なると共に第2弁孔が第1強火用通路孔に重なり、更に、第3弁孔が第2強火用通路孔に重なって、第1と第2の両バーナが強火で燃焼する状態と、第1弁孔が第1と第2の両弱火用通路孔に重なると共に第2弁孔と第3弁孔とが夫々第1強火用通路孔と第2強火用通路孔とから離れて、第1と第2の両バーナが弱火で燃焼する状態と、第1弁孔が第2弱火用通路孔から離れて第1弱火用通路孔のみに重なると共に第3弁孔が第1強火用通路孔に重なって、第1バーナのみが強火で燃焼する状態と、第1弁孔が第1弱火用通路孔のみに重なると共に第3弁孔が第1強火用通路孔から離れて、第1バーナのみが弱火で燃焼する状態と、前記閉止状態とに順に切換えられることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1と第2の両バーナの火力の組み合わせを最大の9通りに切換え可能であり、調理の幅を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態の火力調節弁を適用する両面焼きグリルの一例の切断側面図。
【
図3】(a)グリル皿上にグリルプレートを支持した状態の斜視図、(b)グリル皿上に焼網を支持した状態の斜視図。
【
図4】本発明の実施形態の火力調節弁が組み込まれたバルブユニットの斜視図。
【
図6】(a)
図5のVI-VI線で切断した電磁安全弁の強制開弁装置を示す切断平面図、(b)強制開弁装置の作動状態を示す切断平面図。
【
図8】本発明の実施形態の火力調節弁の上に設けられるパッキン及び上蓋部の斜め下方から見た斜視図。
【
図9】本発明の実施形態の火力調節弁が具備する固定板と弁板の斜め上方から見た斜視図。
【
図11】弁板の回転による火力の切換えを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1、
図2を参照して、100は、図示省略したガスコンロに組み込む両面焼きグリルを示している。このグリル100は、コンロ本体(図示せず)内に設置されるグリル庫101と、グリル庫101の前面開口を開閉するグリル扉102とを備えている。グリル庫101内には、グリル皿103と共に、被調理物の載置具として
図3(a)に示す板状のグリルプレート104又は
図3(b)に示す焼網105が収納される。グリル皿103は、グリル扉102に連結される皿支持枠106に支持されており、この皿支持枠106の前後に、グリルプレート104及び焼網105を支持する支持枠107が立設されている。そして、グリル扉102を前方に開くことで、グリル皿103とグリルプレート104又は焼網105が一緒にグリル庫101の前方に引き出されるようにしている。
【0010】
グリル庫101の天井部101aには、上火バーナ108が設けられている。上火バーナ108は、多数の炎孔(図示省略)を形成したセラミックス製の燃焼板108aを有する表面燃焼式バーナで構成され、燃焼板108aを下向きにした姿勢でグリル庫101の天井部101aに装着されている。上火バーナ108には、図示省略した点火電極と火炎検知のための熱電対とが付設されている。
【0011】
グリル庫101の横方向両側部の下部(グリルプレート104及び焼網105よりも低い部分)には、横方向内方に向けて開口する炎口109aを有する前後方向に長手の下火バーナ109が配置されている。下火バーナ109の後部には、点火電極110に対向するターゲット部110aが設けられており、点火電極110とターゲット部110aとの間の火花放電により下火バーナ109に点火される。また、下火バーナ109の失火検知のために、下火バーナ109の前部の炎口109aに臨ませて熱電対111を配置している。
【0012】
グリル庫101の横方向両側の各側壁101bの内面には、下火バーナ109の上方位置で横方向内方に張出す二次空気案内板112と、下火バーナ109の下方位置で横方向内方に張出す、グリル皿103の加熱を抑制する遮熱板113とが設けられている。また、グリル庫101の後端上部から後方にのびる排気通路114と、グリルプレート104より下の庫内温度を検出する温度センサ115とが設けられている。更に、排気通路114の下面には、燃焼排ガス中に含まれる油煙を焼き切るアフターバーナ116が配置されている。アフターバーナ116は、多数の炎孔(図示省略)を形成したセラミックス製の燃焼板116aを有する表面燃焼式バーナで構成され、燃焼板116aを上向きにした姿勢で排気通路114の下面に装着されている。
【0013】
上火と下火の両バーナ108,109及びアフターバーナ116には、
図4以下に示すバルブユニット1を介して燃料ガスが供給される。バルブユニット1は、ガス流入口21と、上火バーナ用ガス流出口22と、下火バーナ用ガス流出口23と、アフターバーナ用ガス流出口24とを有するバルブケーシング2内に組み込んだ上流側の電磁安全弁3と、下流側の火力調節弁4とを備えている。
【0014】
図5を参照して、電磁安全弁3は、ガス流入口21に連通するバブルケーシング2内の弁室25の下流端に位置する弁座31に着座可能な弁室25内の弁体32と、弁体32に、弁座31と反対方向にのびる弁軸33を介して連結される吸着片34と、吸着片34に対向する電磁石35と、弁体32を弁座31に着座する閉弁位置に付勢する弁バネ36とを備えている。尚、吸着片34は、弁軸33に対し僅かに軸方向に傾き得るように連結されている。また、バルブケーシング2内には、弁座31を形成した弁座部材31aが装着されている。
【0015】
電磁安全弁3は、グリル100の点火操作を行ったときに、強制開弁装置5によって強制的に開弁される。強制開弁装置5は、弁体32に弁座31側から当接可能な押圧ロッド6と、モータ7と、モータ7の回転運動を押圧ロッド6の軸方向の直線運動に変換するカム機構8とを備えている。そして、押圧ロッド6の軸方向一方(
図5で右方)の端部を弁体32に当接させて、弁体32を閉弁位置から吸着片34が電磁石35に当接する開弁位置まで押動させ、この状態で電磁石35に通電して、弁体32を開弁位置に吸着保持するようにしている。
【0016】
ところで、従来のカム機構は、モータ7により回転駆動されるカム体で構成され、カム体の外周面に形成した径方向の凸部が押圧ロッド6の軸方向他方の端部に当接することで、押圧ロッド6が軸方向一方に押動されるようにしている。然し、このものでは、押圧ロッド6の軸方向他方の端部にその径方向一方から凸部が当接するために、当該端部に径方向他方に向かうへの押圧力が作用して、押圧ロッド6が摺動クリアランス分だけ径方向に傾き、弁軸33も僅かながら径方向に傾いてしまうことがある。そして、弁体32を開弁位置に吸着保持した後、押圧ロッド6による弁体32の押圧を解除すると、弁バネ36の付勢力で弁軸33の径方向の傾きが矯正される際に、吸着片34に径方向の抉り力が作用して、吸着片34が電磁石35から剥離したり、吸着片34と電磁石35との吸着面の摩耗が促進されたりしてしまうことがある。
【0017】
そこで、本実施形態では、かかる不具合を生じないように、カム機構8を以下の如く構成している。即ち、本実施形態において、カム機構8は、モータ7により回転駆動される回転体81と、押圧ロッド6の軸方向に移動自在で、押圧ロッド6の軸方向他方(
図5で左方)の端部に当接するロッド当接部821を有するカム体82とで構成されている。
【0018】
図6、
図7も参照して、回転体81の回転中心には、モータ7の出力軸71に連結される回転軸72が嵌合する非円形の嵌合孔811が形成されており、モータ7の回転により出力軸71及び回転軸72を介して回転体81が回転駆動される。また、回転体81には、その回転中心に対し偏心したクランクピン812が設けられている。
【0019】
押圧ロッド6の軸方向をX軸方向、押圧ロッド6の軸方向に直交する水平方向をY軸方向として、カム体82は、バルブケーシング2内の火力調節弁4の直下部の部分に形成した、電磁安全弁3の下流側のガス室26に、X軸方向に移動自在に収納されている。即ち、ガス室26のY軸方向両側の側壁にX軸方向に平行なガイド面261を形成すると共に、カム体82のY軸方向両側の側面822をX軸方向に平行な面に形成し、カム体82がガイド面261に案内されてX軸方向に移動するようにしている。
【0020】
また、カム体82には、X軸方向一方の端縁に位置させて、起立壁823が立設されている。そして、起立壁823のX軸方向一方を向く面のY軸方向中央部に、X軸方向一方に凸の円弧状に形成されたロッド当接部821を設けている。ロッド当接部821をこのような円弧状に形成すれば、カム体82が摺動クリアランス分傾いても、押圧ロッド6の押しストロークを一定に保つことができる。
【0021】
起立壁823のX軸方向他方を向く面には、押圧ロッド6の軸線と回転体81の回転中心とを含む面よりもY軸方向一方側に位置させて、クランクピン812が当接するカム部824が設けられている。このカム部824は、回転体81の一方向(
図6で反時計回り方向)への回転に伴うクランクピン812の一方向への旋回でカム体82をX軸方向一方に移動させる形状に形成されている。そして、クランクピン812を
図6(a)に示す位置から一方向に旋回させて、クランクピン812が
図6(b)に示す如く押圧ロッド6の軸線と回転体81の回転中心とを含む面に合致する位置に到達したときに、押圧ロッド6がX軸方向一方のストローク端位置まで押動され、このストローク端位置よりも若干手前で電磁安全弁3の弁体32が開弁位置に到達するようにしている。
【0022】
また、起立壁823のX軸方向他方を向く面には、上記カム部824に加えて、押圧ロッド6の軸線と回転体81の回転中心とを含む面に対しカム部824と対称形状の第2のカム部824´が設けられている。そのため、回転体81を他方向(
図6で時計回り方向)に回転させても、クランクピン812を第2のカム部824´に当接させて、カム体82をX軸方向一方に移動させることができる。尚、弁体32を開弁位置に吸着保持した後は、クランクピン812を
図6(b)に示す位置から一方向又は他方向に旋回させて、押圧ロッド6による弁体32の押圧を解除する。
【0023】
本実施形態のカム機構8では、カム体82のX軸方向一方への移動により、ロッド当接部821を介して押圧ロッド6がX軸方向一方に押動されるため、押圧ロッド6にこれを径方向に傾けるような力が作用せず、押圧ロッド6の径方向の傾きで弁軸33が径方向に傾くことがない。従って、押圧ロッド6による弁体32の押圧解除時に、吸着片34に径方向の抉り力が作用することはなく、この抉り力に起因して吸着片34が電磁石35から剥離したり、吸着片34と電磁石35との吸着面の摩耗が促進されたりするといった上記不具合は生じない。
【0024】
尚、押圧ロッド6は、カム体82のロッド当接部821が当接可能な第1ロッド部61と、弁体32に当接可能な第2ロッド部62と、第1と第2の両ロッド部61,62間に介設したクッションバネ63とで構成されている。第1ロッド部61は、電磁安全弁3とガス室26とを接続するバルブケーシング2内の通路27に形成した段差部271にX軸方向一方から当接可能な周方向3箇所のストッパ部611と、ストッパ部611の近傍に位置する周方向3箇所の爪受け部612とを有している。そして、第1ロッド部61を弁座部材31aとの間に介設した戻しバネ64により、ストッパ部611が段差部271に当接するX軸方向他方のストローク端位置に付勢している。また、第2ロッド部62には、X軸方向他方にのびる周方向3箇所の爪片621が設けられている。第2ロッド部62は、爪片621の先端の爪部が第1ロッド部61の爪受け部612に係合する状態にクッションバネ63の付勢力で付勢保持される。
【0025】
ここで、クッションバネ63の付勢力は、戻しバネ64及び弁バネ36の付勢力の合力よりも大きい。そのため、カム体82のX軸方向一方への移動でロッド当接部821を介して第1ロッド部61がX軸方向一方に押動されると、第2ロッド部62も第1ロッド部61と一緒にX軸方向一方に移動する。そして、弁体32が開弁位置に到達して、第2ロッド部62がそれ以上X軸方向一方に移動不能となった後の更なるカム体82のX軸方向一方への移動で、
図6(b)に示す如く、第1ロッド部61がクッションバネ63を圧縮しつつX軸方向一方のストローク端位置まで押動されるようにしている。
【0026】
次に、
図8乃至
図10も参照して、火力調節弁4について説明する。火力調節弁4は、バルブケーシング2内に固定した固定板41と、固定板41の片面たる下面に接した状態でモータ6により回転駆動される、ガス室26に面する円板状の弁板42とを備えている。固定板41は、上火バーナ用ガス流出口22と下火バーナ用ガス流出口23とアフターバーナ用ガス流出口24とを形成したバルブケーシング2の上蓋部28の下面にパッキン43を介して接している。
【0027】
固定板41の弁板42が接する円形領域を第1と第2の2つの半円領域41a,41bに2分して、第1半円領域41aに、第1バーナたる上火バーナ108に連なる弱火用と強火用の通路孔4111,4121を形成し、第2半円領域41bに、第2バーナたる下火バーナ109に連なる弱火用と強火用の通路孔4112,4122を形成している。具体的は、固定板41の第1半円領域41aに、第1と第2の両半円領域41a,41bの境界線から周方向一方(上方から見て時計回り方向)に所定の第1角度θ1離れた放射線上に位置させて、上火バーナ108に連なる第1弱火用通路孔4111と、第1弱火用通路孔4111から径方向に位置をずらして、上火バーナ108に連なる第1強火用通路孔4121とを形成し、固定板41の第2半円領域41bに、第1と第2の両半円領域41a,41bの境界線から周方向他方(上方から見て反時計回り方向)に上記第1角度θ1離れた放射線上に位置させて、下火バーナ109に連なる第2弱火用通路孔4112と、第2弱火用通路孔4112から径方向に位置をずらして、下火バーナ109に連なる第2強火用通路孔4122とを形成している。第1と第2の両弱火用通路孔4111,4112は、弁板42の回転中心と同心の第1の円周S1上に位置し、第1と第2の両強火用通路孔4121,4122は、弁板42の回転中心と同心で第1の円周S1よりも大きな径の第2の円周S2上に位置する(図10参照)。
【0028】
尚、
図8に示す如く、パッキン43には、第1の弱火用と強火用の通路孔411
1,412
1に連通する径方向に長手の第1の長孔431と、第2の弱火用と強火用の通路孔411
2,412
2に連通する径方向に長手の第2の長孔432とが形成されている。また、上蓋部28の下面のパッキン43に接する部分には、第1の長孔431に連通する第1の凹部281と、第2の長孔432に連通する第2の凹部282とが形成されている。そして、第1の凹部281に連通するように上火バーナ用ガス流出口22とアフターバーナ用ガス流出口24とを設け、第2の凹部282に連通するように下火バーナ用ガス流出口23を設けている。
【0029】
弁板42の下面には、回転軸72の非円形断面部が嵌合するボス部42aが突設されており、モータ7により出力軸71と回転軸72とを介して弁板42が回転駆動される。また、弁板42は、回転体81との間に介設したバネ44により固定板41に接するように上方に付勢されている。
【0030】
図9、
図10を参照して、弁板42には、弁孔として、第1の円周S1と同心同径の円周上に位置し、中心角が上記第1角度θ1の2倍よりも大きな所定の第2角度θ2の円弧状の第1弁孔421と、第2の円周S2と同心同径の円周上に位置し、第1弁孔421の周方向中心から周方向一方(
図10で時計回り方向)に第1角度θ1より大きく上記第2角度θ2の半分より小さな所定の第3角度θ3離れた箇所から周方向他方(
図10で反時計回り方向)にのびる、中心角が上記第1角度θ1以上で上記第3角度θ3より小さな所定の第4角度θ4の円弧状の第2弁孔422と、第2の円周S2と同心同径の円周上で、第1弁孔421の周方向中心から周方向他方に上記第3角度θ3離れた箇所又はその近傍に位置する第3弁孔423とが形成されている。尚、本実施形態において、第3弁孔423は、第1弁孔421の周方向中心から周方向他方に第3角度θ3離れた箇所から周方向一方に僅かにのびる長孔状に形成されているが、丸孔であってもよい。
【0031】
弁板42を、第1及び第2の弱火用通路孔411
1,411
2と第1及び第2の強火用通路孔412
1,412
2との何れにも第1乃至第3の弁孔421,422,423が重ならず、上火と下火の両バーナ108,109が消火される
図11(a)に示す閉止状態から周方向一方(
図11で時計回り方向)に回転させることにより、先ず、第1弁孔421が第2弱火用通路孔411
2に重なって、下火バーナ109のみが弱火で燃焼する
図11(b)に示す状態に切換えられる。次に、第1弁孔421が第2弱火用通路孔411
2に重なると共に第2弁孔422が第2強火用通路孔412
2に重なって、下火バーナ109のみが強火で燃焼する
図11(c)に示す状態に切換えられる。次に、第1弁孔421が第1と第2の両弱火用通路孔411
1,411
2に重なると共に第2弁孔422が第2強火用通路孔412
2に重なって、下火バーナ109が強火で燃焼すると共に上火バーナ108が弱火で燃焼する
図11(d)に示す状態に切換えられる。次に、第1弁孔421が第1と第2の両弱火用通路孔411
1,411
2に重なると共に第2弁孔422が第2強火用通路孔412
2から離れて第1強火用通路孔412
1に重なって、下火バーナ109が弱火で燃焼すると共に上火バーナ108が強火で燃焼する
図11(e)に示す状態に切換えられる。次に、第1弁孔421が第1と第2の両弱火用通路孔411
1,411
2に重なると共に第2弁孔422が第1強火用通路孔412
1に重なり、更に、第3弁孔423が第2強火用通路孔412
2に重なって、上火と下火の両バーナ108,109が強火で燃焼する
図11(f)に示す状態に切換えられる。次に、第1弁孔421が第1と第2の両弱火用通路孔411
1,411
2に重なると共に第2弁孔422と第3弁孔423とが夫々第1強火用通路孔412
1と第2強火用通路孔412
2とから離れて、上火と下火の両バーナ108,109が弱火で燃焼する
図11(g)に示す状態に切換えられる。次に、第1弁孔421が第2弱火用通路孔411
2から離れて第1弱火用通路孔411
1のみに重なると共に第3弁孔423が第1強火用通路孔412
1に重なって、上火バーナ108のみが強火で燃焼する
図11(h)に示す状態に切換えられる。次に、第1弁孔421が第1弱火用通路孔411
1のみに重なると共に第3弁孔423が第1強火用通路孔412
1から離れて、上火バーナ108のみが弱火で燃焼する
図11(i)に示す状態に切換えられる。次に、第1弁孔421が第1弱火用通路孔411
1から離れて、
図11(j)に示す閉止状態に切換えられる。
【0032】
本実施形態の火力調節弁4によれば、上火と下火の両バーナ108,109の火力の組み合わせを、上火と下火の各バーナ108,109の火力を夫々消火、弱火、強火の3通りに切換え可能として、最大である3×3の9通り切換え可能である。これにより、調理の幅を広げることができる。
【0033】
尚、クランクピン812がカム体82を介して押圧ロッド6をX軸方向一方のストローク端位置まで押動させる
図6(b)に示す位置に旋回したとき、弁板42は、
図11(a)に示す閉止状態と
図11(j)に示す閉止状態との中間の閉止状態に存する。従って、電磁安全弁3の弁体32を開弁位置まで押動させた状態でモータ6が停止する等の異常を生じても、上火と下火の両バーナ108,109にはガスが供給されず、生ガスが放出されることはない。
【0034】
また、グリル消火時は、弁板42を
図11(a)に示す閉止状態と
図11(j)に示す閉止状態とのうち消火前の状態に近い方の閉止状態、例えば、消火前の状態が
図11(c)の状態であれば
図11(a)の閉止状態にして、次のグリル点火時まで待機する。そして、弁板42が
図11(a)に示す状態で待機している場合は、次のグリル点火時に、弁板42が
図11(a)に示す閉止状態から上記中間の閉止状態になるようにモータ7を
図11で反時計回り方向に回転させ、弁板42が
図11(j)に示す状態で待機している場合は、次のグリル点火時に、弁板42が
図11(j)に示す閉止状態から上記中間の閉止状態になるようにモータ7を
図11で時計回り方向に回転させる。ここで、カム体82には、上記の如くカム部824とこれと対称の第2のカム部824´とが設けられているため、モータ7が反時計回り方向と時計回り方向の何れの方向に回転しても、カム体82がX軸方向一方に移動して、電磁安全弁3が強制開弁される。
【0035】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、第1の弱火用と強火用の通路孔4111、4121を介してガス供給される第1バーナを上火バーナ108、第2の弱火用と強火用の通路孔4112、4122を介してガス供給される第2バーナを下火バーナ109としているが、第1バーナを下火バーナ109、第2バーナを上火バーナ108とすることも可能である。また、上記実施形態では、第1と第2の弱火用通路孔4111,4112を配置する第1の円周S1を比較的小径、第1と第2の強火用通路孔4121,4122を配置する第2の円周S2を比較的大径としているが、第1の円周S1を比較的大径、第2の円周S2を比較的小径にしてもよい。更に、上記実施形態の両面焼きグリル100は、アフターバーナ116を備えているが、アフターバーナを具備しない両面焼きグリルの火力調節弁としても同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0036】
100…両面焼きグリル、108…上火バーナ、109…下火バーナ、4…火力調節弁、41…固定板、41a…第1半円領域、41b…第2半円領域、4111…第1弱火用通路孔、4112…第2弱火用通路孔、4121…第1強火用通路孔、4122…第2強火用通路孔、42…弁板、421…第1弁孔、422…第2弁孔、423…第3弁孔、7…モータ、S1…第1の円周、S2…第2の円周、θ1…第1角度、θ2…第2角度、θ3…第3角度、θ4…第4角度。