(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】尿素処理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/76 20230101AFI20240905BHJP
【FI】
C02F1/76 Z
(21)【出願番号】P 2020193011
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】桃谷 尚憲
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一重
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 吉昭
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-063768(JP,A)
【文献】特開2019-100781(JP,A)
【文献】特開平09-094585(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0318237(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/50、76
G01N21/00-83、27/26-49、31/00-22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素を含む被処理水に臭化物塩と塩素系酸化剤を添加することにより次亜臭素酸イオンを生成させて被処理水中の尿素を分解して処理水を得る尿素処理方法であって、
a)前記処理水中の残留遊離臭素濃度及び残留遊離塩素濃度をそれぞれ求める工程と、
b)前記残留遊離臭素濃度及び前記残留遊離塩素濃度に基づいて前記臭化物塩と前記塩素系酸化剤の添加量を制御する工程と
を含
み、
前記工程aが、
a1)前記処理水から採取した試料を残留塩素計で測定する工程と、
a2’)臭化物塩の被処理水への添加量に0.5~0.7の範囲内の所定の値を乗じた値を前記試料中の残留遊離臭素濃度として算出する工程と、
a3)前記工程a1で得た残留塩素計の測定値と、前記工程a2’で算出した残留遊離臭素濃度との差から、残留遊離塩素濃度を算出する工程と、を含み、
前記工程bが、
b1)あらかじめ設定した目標尿素濃度と目標反応時間とを達成するために必要な処理水の必要残留遊離臭素濃度と必要残留遊離塩素濃度を求める工程と、
b2)前記工程a2’で求めた残留遊離臭素濃度と前記工程b1で求めた必要残留遊離臭素濃度との差の分だけ臭化物塩の添加量を増減させる工程と、
b3)前記工程a3で求めた残留遊離塩素濃度と前記工程b1で求めた必要残留遊離塩素濃度との差の分だけ塩素系酸化剤の添加量を増減させる工程と、を含む、
尿素処理方法。
【請求項2】
尿素を含む被処理水に臭化物塩と塩素系酸化剤を添加することにより次亜臭素酸イオンを生成させて被処理水中の尿素を分解して処理水を得る尿素処理方法であって、
a)前記処理水中の残留遊離臭素濃度及び残留遊離塩素濃度をそれぞれ求める工程と、
b)前記残留遊離臭素濃度及び前記残留遊離塩素濃度に基づいて前記臭化物塩と前記塩素系酸化剤の添加量を制御する工程と
を含み、
前記工程aが、
a1)前記処理水から採取した試料を残留塩素計で測定する工程と、
a2)前記処理水から採取した試料に、アミノ基を有し且つ遊離塩素を結合塩素に変換する作用を有する化合物を添加して、得られた試料を残留塩素計で測定することで、前記得られた試料中の残留遊離臭素濃度を得る工程と、
a3)前記工程a1で得た残留塩素計の測定値と、前記工程a2で得た残留遊離臭素濃度との差から、残留遊離塩素濃度を算出する工程と、を含み、
前記工程bが、
b1)あらかじめ設定した目標尿素濃度と目標反応時間とを達成するために必要な処理水の必要残留遊離臭素濃度と必要残留遊離塩素濃度を求める工程と、
b2)前記工程a2で求めた残留遊離臭素濃度と前記工程b1で求めた必要残留遊離臭素濃度との差の分だけ臭化物塩の添加量を増減させる工程と、
b3)前記工程a3で求めた残留遊離塩素濃度と前記工程b1で求めた必要残留遊離塩素濃度との差の分だけ塩素系酸化剤の添加量を増減させる工程と、を含み、
前記工程aより前に、被処理水への臭化物塩の添加量と塩素系酸化剤の添加量をパラメータとして変化させて尿素を分解する複数の予備試験により、尿素分解反応の反応速度定数を算出することで、被処理水中の残留遊離塩素濃度、残留遊離臭素濃度、および尿素分解反応の反応速度定数との間の相関を求めておき、
前記工程b1が、
b1-1)臭化物塩と塩素系酸化剤を添加する前の被処理水の尿素濃度と、前記目標尿素濃度と前記目標反応時間とに基づいて、これら目標尿素濃度と目標反応時間とを達成するために必要な反応速度定数を求める工程と、
b1-2)前記工程b1-1で求めた反応速度定数と、前記工程aで求めた残留遊離臭素濃度とから、前記相関を用いて、前記必要な処理水の残留遊離塩素濃度を求める工程と
、を含
む、
尿素処理方法。
【請求項3】
尿素を含む被処理水に臭化物塩と塩素系酸化剤を添加することにより次亜臭素酸イオンを生成させて被処理水中の尿素を分解して処理水を得る尿素処理方法であって、
a)前記処理水中の残留遊離臭素濃度及び残留遊離塩素濃度をそれぞれ求める工程と、
b)前記残留遊離臭素濃度及び前記残留遊離塩素濃度に基づいて前記臭化物塩と前記塩素系酸化剤の添加量を制御する工程と
を含み、
前記工程aが、
a1)前記処理水から採取した試料を残留塩素計で測定する工程と、
a2)前記処理水から採取した試料に、アミノ基を有し且つ遊離塩素を結合塩素に変換する作用を有する化合物を添加して、得られた試料を残留塩素計で測定することで、前記得られた試料中の残留遊離臭素濃度を得る工程と、
a3)前記工程a1で得た残留塩素計の測定値と、前記工程a2で得た残留遊離臭素濃度との差から、残留遊離塩素濃度を算出する工程と、を含み、
前記工程bが、
b1)あらかじめ設定した目標尿素濃度と目標反応時間とを達成するために必要な処理水の必要残留遊離臭素濃度と必要残留遊離塩素濃度を求める工程と、
b2)前記工程a2で求めた残留遊離臭素濃度と前記工程b1で求めた必要残留遊離臭素濃度との差の分だけ臭化物塩の添加量を増減させる工程と、
b3)前記工程a3で求めた残留遊離塩素濃度と前記工程b1で求めた必要残留遊離塩素濃度との差の分だけ塩素系酸化剤の添加量を増減させる工程と、を含み、
前記工程aより前に、被処理水への臭化物塩の添加量を一定とし、塩素系酸化剤の添加量をパラメータとして変化させて尿素を分解する複数の予備試験により、尿素分解反応の反応速度定数を算出することで、被処理水中の残留遊離塩素濃度、残留遊離臭素濃度、および尿素分解反応の反応速度定数との間の相関を求めておき、
前記工程b1が、
b1-1)臭化物塩と塩素系酸化剤を添加する前の被処理水の尿素濃度と、前記目標尿素濃度と前記目標反応時間とに基づいて、これら目標尿素濃度と目標反応時間とを達成するために必要な反応速度定数を求める工程と、
b1-2)前記工程b1-1で求めた反応速度定数と、前記工程aで求めた残留遊離臭素濃度とから、前記相関を用いて、前記必要な処理水の残留遊離塩素濃度を求める工程と
、を含
む、
尿素処理方法。
【請求項4】
前記アミノ基を有し且つ遊離塩素を結合塩素に変換する作用を有する化合物が、アミノ酸またはアミノアルキルスルホン酸である、請求項2又は3に記載の尿素処理方法。
【請求項5】
前記アミノ基を有し且つ遊離塩素を結合塩素に変換する作用を有する化合物が、グリシン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、リシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、又はタウリンである、請求項2又は3に記載の尿素処理方法。
【請求項6】
前記アミノ基を有し且つ遊離塩素を結合塩素に変換する作用を有する化合物が、グリシンである、請求項2又は3に記載の尿素処理方法。
【請求項7】
尿素を含む被処理水に臭化物塩を添加する臭化物塩添加手段と、
前記被処理水に塩素系酸化剤を添加する塩素系酸化剤添加手段と、
前記被処理水
に前記臭化物塩及び前記塩素系酸化剤
を添加して反応させて処理水を得る尿素分解槽と、
前記処理水の残留塩素を測定する残留塩素計と、
を有し、
前記処理水から得られる試料を前記残留塩素計で測定した第1の測定値と、前記試料に
アミノ基を有し且つ遊離塩素を結合塩素に変換する作用を有する化合物を添加した後に、前記残留塩素計で測定した第2の測定値とから、前記試料中の残留遊離塩素濃度を算出し、前記第1の測定値、前記第2の測定値、及び前記残留遊離塩素濃度に基づいて、前記臭化物塩添加手段による前記臭化物塩の添加量及び前記塩素系酸化剤添加手段による前記塩素系酸化剤の添加量の少なくとも一方を制御する制御装置を有
し、
前記制御装置は、
あらかじめ設定した目標尿素濃度と目標反応時間とを達成するために必要な処理水の必要残留遊離臭素濃度と必要残留遊離塩素濃度を求め、前記第2の測定値と前記必要残留遊離臭素濃度との差の分だけ臭化物塩の添加量を増減させ、前記残留遊離塩素濃度と前記必要残留遊離塩素濃度との差の分だけ塩素系酸化剤の添加量を増減させ、
さらに前記制御装置は、
前記臭化物塩及び前記塩素系酸化剤を添加する前の被処理水の尿素濃度と、前記目標尿素濃度と前記目標反応時間とに基づいて、これら目標尿素濃度と目標反応時間とを達成するために必要な反応速度定数を求め、
あらかじめ求めておいた、被処理水中の残留遊離塩素濃度、残留遊離臭素濃度、および尿素分解反応の反応速度定数との間の相関を用いて、
前記の必要な反応速度定数と、残留遊離臭素濃度を示す前記第2の測定値とから、前記必要残留遊離塩素濃度を求める、
尿素処理装置。
【請求項8】
前記アミノ基を有し且つ遊離塩素を結合塩素に変換する作用を有する化合物が、アミノ酸またはアミノアルキルスルホン酸である、請求項7に記載の尿素処理装置。
【請求項9】
前記アミノ基を有し且つ遊離塩素を結合塩素に変換する作用を有する化合物が、グリシン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、リシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、又はタウリンである、請求項7に記載の尿素処理装置。
【請求項10】
前記アミノ基を有し且つ遊離塩素を結合塩素に変換する作用を有する化合物が、グリシンである、請求項7に記載の尿素処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水中の尿素を分解して処理水を得る尿素処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超純水は、一般に、工業用水、市水、井水等の原水を、前処理システムで処理した後、一次純水システムで処理して純水(一次純水)を得、それを二次純水システム(サブシステム)で処理することにより製造する。超純水を製造するにあたって、被処理水に臭化ナトリウム(NaBr)と次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)とを添加し、生成した次亜臭素酸イオンにより被処理水中の尿素を分解する方法が知られている。
【0003】
このような方法に関して、特許文献1には、尿素分解工程の流出水中の遊離残留塩素濃度を測定し、この測定値に基づいて次亜塩素酸塩の添加量を制御することが開示される。この方法は、被処理水中にアンモニア等の反応阻害物質が含まれる場合であっても尿素の分解に必要な薬剤を過不足なく添加して、処理のコストアップを招くことなく、尿素を安定かつ確実に分解除去することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、残留塩素計によって「遊離残留塩素濃度」を測定した旨、記載している。しかし、残留塩素計で得られる測定値(残留塩素計の指示値)には、実際には、遊離塩素濃度だけでなく遊離臭素濃度も含まれる。よって、特許文献1に開示される、残留塩素計の指示値に基づいてNaClO添加量を決定する方法では、正確な遊離塩素濃度が測定されないため、適切なNaClOの添加がなされない場合がある。
【0006】
本発明の目的は、尿素分解に必要なNaClOなどの塩素系酸化剤の添加量を最適化することができる、尿素処理方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、尿素を含む被処理水に臭化物塩と塩素系酸化剤を添加することにより次亜臭素酸イオンを生成させて被処理水中の尿素を分解して処理水を得る尿素処理方法であって、
a)前記処理水中の残留遊離臭素濃度及び残留遊離塩素濃度をそれぞれ求める工程と、
b)前記残留遊離臭素濃度及び前記残留遊離塩素濃度に基づいて前記臭化物塩と前記塩素系酸化剤の添加量を制御する工程と
を含む、尿素処理方法が提供される。
【0008】
また、本発明の別の態様によれば、尿素を含む被処理水に臭化物塩を添加する臭化物塩添加手段と、前記被処理水に塩素系酸化剤を添加する塩素系酸化剤添加手段と、前記被処理水が前記臭化物塩及び前記塩素系酸化剤と反応させて処理水を得る尿素分解槽と、前記処理水の残留塩素を測定する残留塩素計と、を有し、
前記処理水から得られる試料を前記残留塩素計で測定した第1の測定値と、前記試料にグリシンを添加した後に、前記残留塩素計で測定した第2の測定値とから、前記試料中の残留遊離塩素濃度を算出し、前記第1の測定値、前記第2の測定値、及び前記残留遊離塩素濃度に基づいて、前記臭化物塩添加手段による前記臭化物塩の添加量及び前記塩素系酸化剤添加手段による前記塩素系酸化剤の添加量の少なくとも一方を制御する制御装置を有する、尿素処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
尿素分解に必要な塩素系酸化剤の添加量を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る尿素処理装置の概略構成例を示すプロセスフロー図である。
【
図2】本発明に係る尿素処理装置を備えた超純水製造システムの概略構成例を示すプロセスフロー図である。
【
図3】残留遊離塩素濃度と、残留遊離臭素濃度及び反応速度定数との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一態様は、尿素を含む被処理水に臭化物塩と塩素系酸化剤を添加して次亜臭素酸イオンを生成することで被処理水中の尿素を分解して処理水を得る尿素処理方法に関する。
【0012】
図1は、本発明に係る尿素分解方法における尿素処理装置の概略構成例を示すプロセスフロー図である。
尿素処理装置1は、尿素を含む被処理水に臭化物塩を添加する臭化物塩添加手段11と、前記被処理水に塩素系酸化剤を添加する塩素系酸化剤添加手段12と、前記臭化物塩および前記塩素系酸化剤が添加された被処理水を貯留して被処理水中の尿素と前記臭化物塩及び前記塩素系酸化剤とを反応させて処理水を得る尿素分解槽2と、前記反応により得られた処理水の残留塩素濃度を測定する残留塩素計3と、残留塩素計3による測定値に基づいて臭化物塩及び塩素系酸化剤の添加量を制御する制御手段4と、を備えている。
図1では、ラインL1中の尿素を含む被処理水は、臭化物塩添加手段11により臭化物塩、塩素系酸化剤添加手段12により塩素系酸化剤が添加され、尿素分解槽2に供給されている。尿素分解槽2内の被処理水は、前記臭化物塩及び前記塩素系酸化剤と反応して尿素が分解され、処理水としてラインL4から排出される。ラインL4には処理水中の塩素濃度(残留塩素濃度)を測定する残留塩素計3が接続されている。制御手段4は、残留塩素計3の測定値から算出される残留遊離臭素濃度及び残留遊離塩素濃度に基づき臭化物塩添加手段11による臭化物塩の添加量及び塩素系酸化剤添加手段12による塩素系酸化剤の添加量を制御する。
【0013】
被処理水としては、尿素を含む水を適宜用いることができ、例えば工業用水、市水、井水等の超純水製造用の原水を適宜用いることができる。被処理水中に尿素は、例えば10~200μg/L程度含まれる。尿素処理によって、得られる処理水中の尿素濃度は、例えば1μg/L程度以下である。
【0014】
添加する臭化物塩としては、臭化ナトリウム(NaBr)、臭化カリウム(KBr)等がある。また、塩素系酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、次亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO)2)等がある。以下、尿素分解反応としてNaBrとNaClOを用いた場合を代表して説明する。
【0015】
一般に、残留塩素計は遊離塩素濃度を測定する(指示値として表示される)と言われているが、本発明者らは、尿素を含む被処理水に臭化物塩と塩素系酸化剤を添加して次亜臭素酸イオンを生成することで被処理水中の尿素を分解して処理水を得る場合には、処理水中に遊離臭素が含まれている。残留塩素計は遊離臭素濃度と遊離塩素濃度の合計値を残留塩素濃度として表示するため、遊離塩素の正確な濃度を示していないことになる。よって、残留塩素計の測定値(指示値)に基づいてNaClOの添加量を制御すると、適切な量のNaClOの添加ができない場合があり、その結果、NaBrも適切な量の添加がなされず、尿素分解反応に時間がかかる等の影響を及ぼすおそれがあることを見出した。そこで、本発明においては、残留塩素計の測定値(指示値)から遊離臭素濃度と遊離塩素濃度を算出し、得られた遊離臭素濃度と遊離塩素濃度に基づきNaBr及びNaClOの添加量を制御する。
【0016】
なお、本発明において、「残留塩素濃度」とは、残留塩素計で測定した値(残留塩素計の指示値)をいい、「残留遊離塩素濃度」とは、残留塩素計で測定した値(残留塩素計の指示値、すなわち、特許文献1でいう「遊離残留塩素濃度」)から残留遊離臭素濃度を差し引いた値をいう。
【0017】
次に、本発明に係るNaBr及びNaClOの添加量の制御について説明する。
NaBrとNaClOから次亜臭素酸イオンが生じ、次亜臭素酸イオンにより尿素が分解される。
NaBrとNaClOから次亜臭素酸イオン(BrO-)が生じる反応は次式に従うと考えられる。
NaBr + NaClO → 2Na+ + BrO-+ Cl- (式1)
次亜臭素酸イオンによる尿素分解反応は次式に従うと考えられる。
(NH2)2CO + 3BrO- → N2 + CO2 + 2H2O + 3Br- (式2)
式1および式2から、次式が導かれる。
(NH2)2CO + 3NaClO → N2 + CO2 + 2H2O + 3Na+ + 3Cl- (式3)
尿素分解反応の前後でBrO-濃度は変化せず、実質的に一定であると考えられる。
【0018】
尿素を含む被処理水にNaBr及びNaClOを添加して反応させて、得られた処理水の一部を採取して、サンプル水として残留塩素計で測定した場合、その測定値(指示値)は、遊離臭素濃度と遊離塩素濃度との合計値として得られる。一方、サンプル水に所定の化合物(アミノ基を有する化合物)を添加して、サンプル水中の遊離塩素を結合塩素に変化させる。残留塩素計は測定値として結合塩素を検出できないため、所定の化合物を添加したサンプル水を残留塩素計で測定した値(指示値)は遊離臭素濃度となる。よって、所定の化合物を添加する前のサンプル水の残留塩素計による測定値A(遊離臭素濃度と遊離塩素濃度との合計値)とアミノ基を有する化合物を添加した後のサンプル水の残留塩素計による測定値B(遊離臭素濃度)との差(A-B)が、処理水中の遊離塩素濃度となる。
【0019】
所定の化合物は、遊離塩素を結合塩素に変化させるものであれば、特に限定されないが、例えば、アミノ基を有する化合物が挙げられる。アミノ基を有する化合物としては、分子構造中にアミノ基を有する有機化合物であればよく、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、テアニン、トリオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等のアミノ酸や、タウリン等のアミノアルキルスルホン酸等が挙げられる。これらのうち、次亜塩素酸またはその塩との反応性が高い点から、グリシン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、リシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリンを用いることが好ましく、特に入手がし易く、取扱いが容易であるグリシンを用いることがより好ましい。共存させるアンモニウム塩またはアミノ基を有する化合物は、水溶液等の溶液状であっても固体状あるいは粉末状であっても構わない。
【0020】
具体的な方法としては、特開2019-100781号公報に記載された方法などが使用できる。
【0021】
また、残留遊離臭素濃度は、例えば、ハンナ インスツルメンツ製ポータブル臭素測定器HI96716等の臭素測定装置を用いて測定することで求めてもよい。
【0022】
本発明では、このようにして求めた遊離臭素濃度及び遊離塩素濃度に基づいて、NaBr及びNaClOの添加量を制御する。
【0023】
NaBr及びNaClOの添加量を制御するに際し、まず、被処理水へのNaBrの添加量とNaClOの添加量をパラメータとして変化させて尿素を分解する複数の予備試験を行う。各予備試験において尿素濃度の経時変化から尿素分解反応の反応速度定数を算出する。反応速度定数は一般的な方法で算出すればよいが、例えば、次式から算出できる。
C=C0 e-kt (式4)
ここで、
t:尿素分解反応の反応時間
C:反応時間tにおける被処理水(反応液)中の尿素濃度
C0:被処理水の初期尿素濃度(反応時間t=0における尿素濃度)
k:尿素分解反応の反応速度定数
である。
ただし、被処理水へのNaBrとNaClOの添加量が変われば、反応速度定数kも変わる。換言すれば、NaBrとNaClOの添加量に応じて、反応速度定数kが決まる。
式4より算出した反応速度定数、並びに、上述した方法により求めた遊離臭素濃度及び遊離塩素濃度の関係(例えばグラフや数式として)を求めておく。
【0024】
また、目標とする処理水の尿素濃度(目標尿素濃度)と目標とする反応時間(目標反応時間)を設定し、被処理水の尿素濃度から目標反応時間で目標尿素濃度に到達させるための反応速度定数(目標反応速度定数)を算出する。算出した目標反応速度定数における処理水の残留遊離臭素濃度(目標残留遊離臭素濃度)及び残留遊離塩素濃度(目標残留遊離塩素濃度)を上記関係から求める。
したがって、処理水中の残留遊離臭素濃度及び残留遊離塩素濃度が、それぞれ目標残留遊離臭素濃度及び目標残留遊離塩素濃度となるようにNaBr及びNaClOを添加すればよい。
【0025】
具体的には、残留塩素計の測定値(指示値)から求めた処理水中の残留遊離臭素濃度と目標残留遊離臭素濃度との差の分だけ、NaBrの添加量を増減させる。そして、NaBrの添加量を増減させた後の目標残留遊離塩素濃度とするための必要遊離塩素添加量と初期遊離塩素添加量との差の分だけ、NaClOの添加量を増減させる。
【0026】
目標残留遊離臭素濃度は、上述した反応速度定数、遊離臭素濃度及び遊離塩素濃度の関係から設定することができる。
【0027】
このとき、必要遊離塩素添加量は、目標残留遊離臭素濃度に1.2~1.4(Br-換算の場合は1.54~1.80)の範囲内の所定の値を乗じて求めた値と目標残留遊離塩素濃度との和から求めることができ、初期遊離塩素添加量はNaBr添加量変更前の処理水中の残留遊離臭素濃度に1.2~1.4の範囲内の所定の値を乗じて求めた値とこのときの残留遊離塩素濃度との和から求めることができる。
これにより、処理水中の正確な残留遊離臭素濃度及び残留遊離塩素濃度が把握でき、尿素分解に適切な量のNaBr(臭化物塩)及びNaClO(塩素系酸化剤)を添加することができる。
【0028】
前述のとおり、尿素分解反応の前後において、BrO-濃度は理論上変化しないため、実質的に一定であるとして、被処理水へのNaBrの添加量を一定にしてもよい。この場合、NaBrの添加量は、尿素分解反応促進の観点から、例えば0.5mg/L以上が好ましく、1mg/L以上がより好ましく、2mg/L以上がさらに好ましい。また、NaBrの添加量は、3mg/L以下が好ましい。3mg/Lを超えても、尿素分解促進効果があまり増大しない。
【0029】
そして、NaBrの被処理水への添加濃度に0.5~0.7(Br-換算の場合は0.64~0.90)の範囲内の所定の値を乗じた値を、処理水中の残留遊離臭素濃度として採用することができる。
【0030】
尿素分解反応の際のpHは5~6.5が好ましい。pHが中性である場合よりも、尿素分解速度が速い傾向がある。また、pHが例えば9程度のアルカリ性である場合も、中性の場合と比べて尿素分解速度が速い傾向があるが、この場合、尿素処理の後段の処理(例えば凝集処理)のために、pHを中性に再調整する必要が生じることがある。尿素分解をpH5~6.5程度で行えば、アルカリ性で行う場合よりもpHを中性にするためのpH再調整を容易に行い得るか、あるいはpH再調整の必要がない。尿素分解を所望のpHで行うために、必要に応じて適宜のpH調整剤を被処理水に添加することができる。
尿素分解反応は、常温(例えば20℃程度)、常圧(例えば1気圧程度)で行うことができる。
【0031】
本発明に係る尿素処理装置は、例えば、
図2で示すように、超純水製造システムの前処理として用いることができる。
図2で示す超純水製造システムは、前処理システム、一次純水システム、サブシステムで構成される。前処理システムでは、凝集ろ過装置により凝集ろ過が行われる。一次純水システムでは、前処理されたろ過水が活性炭装置によりTOCや残塩が除去された後、イオン交換装置によりイオンが除去され脱塩水が生成され、逆浸透膜装置によりイオンやTOCが除去されRO水が生成される。その後、イオン交換装置によりさらにイオンが除去された後、膜脱気装置により溶存酸素が除去され、一次純水が製造される。サブシステムでは、一次純水を紫外線(UV)酸化装置によるTOCを分解、カートリッジポリッシャー(CP:非再生式イオン交換装置)によるイオン除去、膜脱気装置による溶存酸素の除去、限外ろ過膜(UF)装置による微粒子除去を経て、超純水が製造され、ユースポイントへ送られる。
【0032】
図2における超純水製造システムにおいて、尿素処理装置は、前処理システムの凝集ろ過装置の前段に設置されているが、一次純水システムやサブシステムに設けてもよい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されない。
〔実施例1〕
相模原市の水道水に尿素濃度が100μg/Lとなるように尿素を添加し、被処理水として使用した。なお、以下において、特に断りのない限り、尿素分解反応の際、温度は20℃であり、圧力はほぼ大気圧であり、pHは6とした。pH調整剤としては塩酸を適宜添加した。
【0034】
・予備試験
予備試験として、被処理水にNaBr添加量およびNaClO添加量をパラメータとして変えつつ、複数回の反応試験を行った。
各反応試験において、被処理水中の尿素濃度Cの経時変化を調べ、反応速度定数kを算出した。なお、経時変化の初期時点は、NaBrとNaClOを添加した時点(反応時間t=0)である。尿素濃度の測定には、尿素計(LC:GL Science製 LC800、MSMS:AB SCIEX製 3200 Q TRAP) を用いた。また、反応後の処理水の残留遊離塩素濃度は残留塩素計(商品名:ポータブルデジタル残留塩素計HI96711C、ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社製)を用いた。また、処理水の残留遊離臭素濃度を測定する際には、被測定水に、グリシン濃度が1g/Lとなるようにグリシン(グリシン10gを水100mLに溶解した水溶液)を加え、1分間攪拌した。
予備試験で得られた残留塩素濃度および残留遊離臭素濃度と反応速度定数の関係を
図3に示す。
【0035】
図3によると、残留遊離臭素濃度は1.2mg/L以上において反応速度定数は一定である。即ち、尿素の分解速度に影響しない。よって、その最小値である1.2mg/Lを目標残留遊離臭素濃度と設定することができる。また、本予備試験の過程において、被処理水へのNaBrの添加濃度に0.5~0.7(Br
-換算の場合は0.64~0.90)の範囲内の所定の値を乗じた値を処理水中の残留臭素濃度として採用できることが確認できた。
【0036】
・尿素分解処理実験
水槽に収容された被処理水(尿素濃度100μg/L、0.6L)に、NaBr及びNaClOを被処理水中の濃度がそれぞれ1mg/Lになるように添加して、3分間撹拌した。反応後の処理水を残留塩素計(商品名:ポータブルデジタル残留塩素計HI96711C、ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社製)で測定したところ、残留塩素計の指示値は0.8mg/Lであった。
次に、処理水にグリシン(関東化学株式会社製)1g/Lを加えて、1分間攪拌した後、残留塩素計で処理水を測定したところ、残留塩素計の指示値は0.6mg/Lであった。よって、処理水中の残留遊離臭素濃度は0.6mg/Lである。処理水中の残留遊離臭素濃度と残留遊離塩素濃度の合計値は0.8mg/Lであるから、処理水中の残留遊離塩素濃度は0.8-0.6=0.2mg/Lである。
【0037】
ここで、3時間で尿素濃度が100μg/Lから1μg/Lになるように尿素を分解するためには、式4(C=C
0e
-kt)から、反応速度定数kが1.54h
-1であることが必要である。そして、
図3のカーブC1のグラフによると、残留遊離臭素濃度は1.2mg/L以上において反応速度定数は一定(即ち、尿素の分解速度に影響しない)であるため、その最小値である1.2mg/Lを目標残留遊離臭素濃度と設定した場合、反応速度定数k=1.54h
-1のときの目標残留遊離塩素濃度は0.9mg/Lである。よって、処理水中の遊離臭素濃度は0.6mg/L、遊離塩素濃度は0.2mg/Lであるから、3時間で尿素濃度が100μg/Lから1μg/Lになるように尿素を分解するためには、処理水の遊離臭素濃度を1.2-0.6=0.6mg/L、遊離塩素濃度を0.9-0.2=0.7mg/L増加させる分だけNaBr及びNaClOを添加する必要があることがわかる。
【0038】
また、添加するNaBrの量を抑えたい場合は、
図3のカーブC2のグラフにより、残留遊離臭素濃度を0.6mg/Lと設定した場合、反応速度定数k=1.54h
-1のときの残留遊離塩素濃度は3.3mg/Lである。よって、処理水中の遊離臭素濃度は0.6mg/L、遊離塩素濃度は0.2mg/Lであるから、3時間で尿素濃度が100μg/Lから1μg/Lになるように尿素を分解するためには、処理水の遊離臭素濃度を1-0.6=0.4mg/L、遊離塩素濃度を3.5-0.2=4.8mg/L増加させる分だけNaBr及びNaClOを添加する必要があることがわかる。
【0039】
次に、最初に添加したNaBr 1mg/L及びNaClO 1mg/Lに、上記で求めた処理水の残留遊離臭素濃度が0.6mg/L、残留遊離塩素濃度が0.7mg/Lだけ増加するようにNaBr及びNaClOの添加量を増やした。その結果、被処理水中の尿素濃度100μg/Lが1μg/Lまで分解されるのに2.9時間であった。また、同様に、上記で求めた処理水の残留遊離臭素濃度が0.4mg/L、残留遊離塩素濃度が4.8mg/Lだけ増加するようにNaBr及びNaClOの添加量を増やした。その結果、被処理水中の尿素濃度100μg/Lが1μg/Lまで分解されるのに3.0時間であった。
【0040】
〔実施例2〕
実施例1と同様に、相模原市の水道水に尿素濃度100μg/Lとなるように尿素を添加して被処理水とし、水槽に収容された被処理水(尿素濃度100μg/L、0.6L)に、NaBrを6mg/L及びNaClOを6mg/L添加して、3分間撹拌した。反応後の処理水を残留塩素計(商品名:ポータブルデジタル残留塩素計HI96711C、ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社製)で測定したところ、残留塩素計の指示値は4.8mg/Lであった。
次に、処理水にグリシン濃度が1g/Lとなるようにグリシン(関東化学株式会社製)を加えて、1分間攪拌した後、残留塩素計で処理水を測定したところ、残留塩素計の指示値は3.6mg/Lであった。よって、処理水中の残留遊離臭素濃度は3.6mg/Lである。処理水中の残留遊離臭素濃度と残留遊離塩素濃度の合計値は4.8mg/Lであるから、処理水中の残留遊離塩素濃度は4.8-3.6=1.2mg/Lである。
【0041】
ここで、2.5時間で尿素濃度が100μg/Lから1μg/Lになるように尿素を分解するためには、式4(C=C
0e
-kt)から、反応速度定数kが1.84h
-1であることが必要である。そして、
図3のカーブC1のグラフによると、残留遊離臭素濃度は1.2mg/L以上において反応速度定数は一定(即ち、尿素の分解速度に影響しない)であるため、その最小値である1.2mg/Lと設定した場合、反応速度定数k=1.84h
-1のときの残留遊離塩素濃度は2.1mg/Lである。よって、処理水中の残留遊離臭素濃度は3.6mg/L、残留遊離塩素濃度は1.2mg/Lであるから、2.5時間で尿素濃度が100μg/Lから1μg/Lになるように尿素を分解するためには、処理水の遊離臭素濃度を1.2-3.6=-2.4mg/L、つまり、2.4mg/L減少させる分だけNaBrの添加量を減らし、遊離塩素濃度を2.1-1.2=0.9mg/L増加させる分だけNaClOを添加する必要があることがわかる。
次に、最初に添加したNaBr 6mg/L及びNaClO 6mg/Lに、上記で求めた処理水の残留遊離臭素濃度が2.4mg/L減少するように、また、残留遊離塩素濃度が0.9mg/Lだけ増加するようにNaBrおよびNaClOの添加量を増減させた。その結果、被処理水中の尿素濃度100μg/Lが1μg/Lまで分解されるのに2.4時間であった。
【0042】
〔実施例3〕
実施例1と同様に、相模原市の水道水に尿素濃度100μg/Lとなるように尿素を添加して被処理水とし、水槽に収容された被処理水(尿素濃度100μg/L、0.6L)に、NaBrを1mg/L及びNaClOを1mg/L添加して、3分間撹拌した。反応後の処理水を残留塩素計(商品名:ポータブルデジタル残留塩素計HI96711C、ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社製)で測定したところ、残留塩素計の指示値は0.8mg/Lであった。
【0043】
ここで、NaBrの被処理水への添加濃度に0.5~0.7(Br-換算の場合は0.64~0.90)の範囲内の所定の値を乗じた値を、処理水中の残留遊離臭素濃度として採用することができるので、例えば、NaBrの被処理水への添加濃度に0.6を乗じた値を、処理水中の残留遊離臭素濃度とした場合、処理水中の残留遊離臭素濃度は0.6mg/Lであり、残留遊離塩素濃度は、0.8-0.6=0.2mg/Lとなる。
【0044】
ここで、3時間で尿素濃度が100μg/Lから1μg/Lになるように尿素を分解するためには、式4(C=C
0e
-kt)から、反応速度定数kが1.54h
-1であることが必要である。そして、
図3のカーブC1のグラフによると、残留遊離臭素濃度は1.2mg/L以上において反応速度定数は一定(即ち、尿素の分解速度に影響しない)であるため、その最小値である1.2mg/Lを目標残留臭素濃度と設定した場合、反応速度定数k=1.54h
-1のときの目標残留遊離塩素濃度は0.9mg/Lである。よって、処理水中の遊離臭素濃度は0.6mg/L、遊離塩素濃度は0.2mg/Lであるから、3時間で尿素濃度が100μg/Lから1μg/Lになるように尿素を分解するためには、処理水の遊離臭素濃度を1.2-0.6=0.6mg/L、遊離塩素濃度を0.9-0.2=0.7mg/L増加させる分だけNaBr及びNaClOを添加する必要があることがわかる。
【0045】
〔比較例1〕
水槽に収容された被処理水(尿素濃度100μg/L、0.6L)に、NaBrを9mg/L及びNaClOを3mg/L添加して、3分間撹拌した。反応後の処理水を残留塩素計(商品名:ポータブルデジタル残留塩素計HI96711C、ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社製)で測定したところ、残留塩素計の指示値は1.8mg/Lであった。このとき、被処理水中の尿素を100μg/Lから1μg/Lまで分解するのに4.5時間を要した。これによると、処理水の残留塩素計の指示値では、尿素の分解に必要な塩素が十分存在していると判断されることになるが、実際には残留塩素計の指示値は、遊離臭素濃度1.8mg/L、遊離塩素濃度0mg/Lの合計値として表されていたため、NaClOの量が足りず、尿素分解に時間がかかったものと思われる。
【符号の説明】
【0046】
1 尿素処理装置
2 尿素分解槽
3 残留塩素計
4 制御手段
11 臭化物塩添加手段
12 塩素系酸化剤添加手段