(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240905BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240905BHJP
H01L 21/673 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/68 N
H01L21/68 U
(21)【出願番号】P 2020194879
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】墨 周武
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-207076(JP,A)
【文献】特開2007-036109(JP,A)
【文献】特開2008-073611(JP,A)
【文献】特開2018-147945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/683
H01L 21/673
B08B 3/04
B08B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理空間に収容する処理容器と、
前記処理空間に超臨界処理用の処理流体を供給する流体供給部と、
前記処理容器内で前記処理空間と連通して形成される排気流路を経由して前記処理空間から前記処理流体を排出する流体排出部と、
前記排気流路の整流位置に設けられる整流部と、を備え、
前記排気流路は、
前記処理空間から前記排気流路に前記処理流体が流れる第1方向に対して直交する第2方向において第1幅にわたって設けられる上流領域と、
前記第2方向において前記第1幅よりも狭い第2幅を有し、前記流体排出部と接続されて前記上流領域を介して流れ込む前記処理流体を前記流体排出部に流通させる下流領域とを有し、
前記整流部は、前記流体排出部による前記処理流体の排出時において前記整流位置に流れ込む前記処理流体を整流することで、
前記第2方向において前記下流領域以外の領域に対応する弱排気範囲での前記処理流体の流量が、前記第2方向において前記下流領域に対応する強排気範囲での前記処理流体の流量よりも高くなるように、調整する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の基板処理装置であって、
前記整流部は、前記第2方向に延設して設けられ、前記強排気範囲において前記排気流路に沿って流れる前記処理流体に向かって突出して設けられる凸部位と、前記弱排気範囲において前記排気流路に沿って流れる前記処理流体から後退して設けられる凹部位と、を有する基板処理装置。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の基板処理装置であって、
前記排気流路は、前記上流領域と前記下流領域との間に設けられ、前記上流領域を前記第1方向に流れる前記処理流体の流れ方向を前記第1方向および前記第2方向の両方と直交する第3方向に変化させながら前記下流領域に案内する中間領域をさらに有し、
前記整流部は、前記上流領域と前記中間領域との間で前記処理流体を整流する基板処理装置。
【請求項4】
請求項
1または2に記載の基板処理装置であって、
前記整流部は、前記上流領域で前記処理流体を整流する基板処理装置。
【請求項5】
請求項
1ないし4のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記基板を支持しながら前記処理空間に収容可能な支持トレイをさらに備え、
前記処理容器は、前記処理空間および前記処理空間に連通し前記支持トレイを通過させるための開口部が設けられた容器本体と、前記開口部を閉塞可能な蓋部とを有し、
上記上流領域は、前記容器本体の前記処理空間に前記第1方向から前記支持トレイが収容されて前記容器本体と前記支持トレイとの間に形成される空間であり、
前記整流部は、前記容器本体のうち前記支持トレイと対向しながら前記第1方向側の端部に設けられる基板処理装置。
【請求項6】
処理容器の処理空間に超臨界処理用の処理流体を供給して前記処理空間に収容される基板を超臨界処理する供給工程と、
前記処理容器内で前記処理空間と連通して形成される排気流路を経由して流体排出部により前記処理空間から前記処理流体を排出する排出工程と、を備え、
前記排気流路は、
前記処理空間から前記排気流路に前記処理流体が流れる第1方向に対して直交する第2方向において第1幅にわたって設けられる上流領域と、
前記第2方向において前記第1幅よりも狭い第2幅を有し、前記流体排出部と接続されて前記上流領域を介して流れ込む前記処理流体を前記流体排出部に流通させる下流領域とを有し、
前記排出工程では、整流部を前記排気流路の整流位置に設けて前記整流位置に流れ込む前記処理流体を整流することで、
前記第2方向において前記下流領域以外の領域に対応する弱排気範囲での前記処理流体の流量が、前記第2方向において前記下流領域に対応する強排気範囲での前記処理流体の流量よりも高くなるように、調整する
ことを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理容器内で基板を処理流体によって処理する基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、表示装置用ガラス基板等の各種基板の処理工程には、基板の表面を各種の処理流体によって処理するものが含まれる。処理流体として薬液やリンス液などの液体を用いる処理は従来から広く行われているが、近年では超臨界流体を用いた処理も実用化されている。特に、表面に微細パターンが形成された基板の処理においては、液体に比べて表面張力が低い超臨界流体はパターンの隙間の奥まで入り込むため効率よく処理を行うことが可能であり、また乾燥時において表面張力に起因するパターン倒壊の発生リスクを低減することができる。
【0003】
例えば特許文献1には、超臨界流体を用いて基板の乾燥処理を行う基板処理装置が記載されている。この装置では、2つの板状部材が対向配置されてその隙間が処理空間として機能する処理容器が構成されている。処理空間の一方端部から薄板状の保持板に載置されたウエハ(基板)が搬入され、他方端部から超臨界状態の二酸化炭素が導入される。また、処理容器内には、流体排出ヘッダーが設けられる。この流体排出ヘッダーには、排出ポートが接続されており、流体排出ヘッダーおよび排出ポートを介して処理空間から超臨界流体が処理容器の外に排出される。なお、処理空間から超臨界流体を排出する構成については、特許文献2、特許文献3および特許文献4などにも、詳しく記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-082043号公報
【文献】特開2013-033963号公報
【文献】特開2017-157745号公報
【文献】特開2019-091772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流体排出ヘッダーおよび排出ポートは処理空間からの超臨界流体の排気流路を形成しているが、排気流路において排気のバランスが取れておらず、次のような問題が発生することがあった。つまり、排気流路のインレット側では、流体排出ヘッダーが基板の幅方向に延設されており、幅方向において比較的広い範囲から超臨界流体が流体排出ヘッダーに流入する。これに対し、排気流路のアウトレット側では、流体排出ヘッダーの内部を流通する超臨界流体が流体排出ヘッダーの一部から処理容器の外に排出される。例えば特許文献1に記載の装置では、流体排出ヘッダーの両端部に接続された排出ポートから処理容器の外に排出される。このため、排気流路のインレット側とアウトレット側とで排気がアンバランスとなり、特に排気流路のインレット側で処理空間への超臨界流体の逆流が発生することがあった。その結果、処理済の超臨界流体に溶出した成分やパーティクルなどが基板に再付着し、基板の汚染を引き起こすことがあった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、処理容器の処理空間で基板を処理流体によって処理する基板処理技術において、処理済の処理流体が処理空間に逆流して基板を汚染するのを効果的に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の態様は、基板処理装置であって、基板を処理空間に収容する処理容器と、
処理空間に超臨界処理用の処理流体を供給する流体供給部と、処理容器内で処理空間と連通して形成される排気流路を経由して処理空間から処理流体を排出する流体排出部と、排気流路の整流位置に設けられる整流部と、を備え、排気流路は、処理空間から排気流路に処理流体が流れる第1方向に対して直交する第2方向において第1幅にわたって設けられる上流領域と、第2方向において第1幅よりも狭い第2幅を有し、流体排出部と接続されて上流領域を介して流れ込む処理流体を流体排出部に流通させる下流領域とを有し、整流部は、流体排出部による処理流体の排出時において整流位置に流れ込む処理流体を整流することで、第2方向において下流領域以外の領域に対応する弱排気範囲での処理流体の流量が、第2方向において下流領域に対応する強排気範囲での処理流体の流量よりも高くなるように、調整することを特徴としている。
【0008】
また、この発明の他の態様は、基板処理方法であって、処理容器の処理空間に超臨界処理用の処理流体を供給して処理空間に収容される基板を超臨界処理する供給工程と、処理容器内で処理空間と連通して形成される排気流路を経由して流体排出部により処理空間から処理流体を排出する排出工程と、を備え、排気流路は、処理空間から排気流路に処理流体が流れる第1方向に対して直交する第2方向において第1幅にわたって設けられる上流領域と、第2方向において第1幅よりも狭い第2幅を有し、流体排出部と接続されて上流領域を介して流れ込む処理流体を流体排出部に流通させる下流領域とを有し、排出工程では、整流部を排気流路の整流位置に設けて整流位置に流れ込む処理流体を整流することで、第2方向において下流領域以外の領域に対応する弱排気範囲での処理流体の流量が、第2方向において下流領域に対応する強排気範囲での処理流体の流量よりも高くなるように、調整することを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、流体排出部により処理空間内の処理流体が排気流路を経由して装置外部に排出されるが、排気流路のインレット側(処理空間側)と、アウトレット側(流体排出部側)とで排気のバランスが崩れると、排気流路から処理空間への処理流体の逆流が発生することがある。そこで、本発明では、排気流路に整流部が設けられ、流体排出部による処理流体の排出時において整流位置に流れ込む処理流体を整流される。その結果、整流位置に対する処理空間側(排気流路のインレット側)での処理流体の流れと、整流位置に対する流体排出部側(排気流路のアウトレット側)での処理流体の流れとのバランスが調整される。
【発明の効果】
【0010】
上記のように、本発明によれば、排気流路における排気バランスが調整されるため、処理済の処理流体が処理空間に逆流して基板を汚染するのを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の概略構成を示す図である。
【
図2A】処理流体の流路の輪郭を示す模式図である。
【
図3A】処理チャンバの開口部周辺の構造および整流部を例示する図である。
【
図3B】処理チャンバの開口部周辺の構造および整流部を例示する図である。
【
図4】処理チャンバの開口部周辺における処理流体の流れを模式的に示す図である。
【
図5A】隔壁の切欠部位近傍での処理流体の流れを模式的に示す断面図である。
【
図5B】隔壁のX方向端部近傍での処理流体の流れを模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明に係る基板処理装置の第2実施形態における処理チャンバの開口部周辺の構造および整流部を例示する図である。
【
図7A】本発明に係る基板処理装置の第3実施形態における処理チャンバの開口部周辺の構造および整流部を例示する図である。
【
図7B】本発明に係る基板処理装置の第4実施形態における処理チャンバの開口部周辺の構造および整流部を例示する図である。
【
図8A】本発明に係る基板処理装置の第5実施形態における処理流体の流路の平面図である。
【
図8B】第5実施形態において用いられる整流部の一例を示す斜視図である。
【
図9A】幅方向中央部近傍での処理流体の流れを模式的に示す断面図である。
【
図9B】幅方向端部近傍での処理流体の流れを模式的に示す断面図である。
【
図10】本発明に係る基板処理装置の第6実施形態における処理チャンバの開口部周辺の構造および整流部を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の概略構成を示す図である。この基板処理装置1は、例えば半導体基板のような各種基板の表面を超臨界流体により処理するための装置である。以下の各図における方向を統一的に示すために、
図1に示すようにXYZ直交座標系を設定する。ここで、XY平面は水平面であり、Z方向は鉛直方向を表す。より具体的には、(-Z)方向が鉛直下向きを表す。
【0013】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0014】
基板処理装置1は、処理ユニット10、供給ユニット50および制御ユニット90を備えている。処理ユニット10は、超臨界乾燥処理の実行主体となるものであり、供給ユニット50は、処理に必要な化学物質および動力を処理ユニット10に供給する。
【0015】
制御ユニット90は、これら装置の各部を制御して所定の処理を実現する。この目的のために、制御ユニット90には、各種の制御プログラムを実行するCPU91、処理データを一時的に記憶するメモリ92、CPU91が実行する制御プログラムを記憶するストレージ93、およびユーザや外部装置と情報交換を行うためのインターフェース94などを備えている。後述する装置の動作は、CPU91が予めストレージ93に書き込まれた制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
【0016】
処理ユニット10は、処理チャンバ100を備えている。処理チャンバ100は、それぞれ金属ブロックにより形成された第1部材11、第2部材12および第3部材13を備えている。第1部材11と第2部材12とが図示しない結合部材により上下方向に結合され、その(+Y)側側面に、図示しない結合部材により第3部材13が結合されて、内部が空洞となった構造の処理チャンバ100が構成される。この空洞の内部空間が、基板Sに対する処理が実行される処理空間SPとなっている。処理対象の基板Sは処理空間SP内に搬入されて処理を受ける。処理チャンバ100の(-Y)側側面には、X方向に細長く延びるスリット状の開口部101が形成されており、開口部101を介して処理空間SPと外部空間とが連通している。
【0017】
処理チャンバ100の(-Y)側側面には、開口部101を閉塞するように蓋部材14が設けられている。蓋部材14の(+Y)側側面には平板状の支持トレイ15が水平姿勢で取り付けられており、支持トレイ15の上面は基板Sを載置可能な支持面となっている。より具体的には、支持トレイ15は、略平坦な上面151に基板Sの平面サイズより少し大きく形成された凹部152が設けられた構造を有している。この凹部152に基板Sが収容されることで、基板Sは支持トレイ15上で所定位置に保持される。基板Sは、処理対象となる表面(以下、単に「基板表面」ということがある)Saを上向きにして保持される。このとき、支持トレイ15の上面151と基板表面Saとが同一平面をなしていることが好ましい。
【0018】
蓋部材14は図示を省略する支持機構により、Y方向に水平移動自在に支持されている。また、蓋部材14は、供給ユニット50に設けられた進退機構53により、処理チャンバ100に対して進退移動可能となっている。具体的には、進退機構53は、例えばリニアモータ、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダ等の直動機構を有しており、このような直動機構が蓋部材14をY方向に移動させる。進退機構53は制御ユニット90からの制御指令に応じて動作する。
【0019】
蓋部材14が(-Y)方向に移動することにより、支持トレイ15が処理空間SPから開口部101を介して外部へ引き出されると、外部から支持トレイ15へのアクセスが可能となる。すなわち、支持トレイ15への基板Sの載置、および支持トレイ15に載置されている基板Sの取り出しが可能となる。一方、蓋部材14が(+Y)方向に移動することにより、支持トレイ15は処理空間SP内へ収容される。支持トレイ15に基板Sが載置されている場合、基板Sは支持トレイ15とともに処理空間SPに搬入される。
【0020】
液体の表面張力に起因するパターン倒壊を防止しつつ基板を乾燥させることを主たる目的とする超臨界乾燥処理においては、基板Sは、その表面Saが露出してパターン倒壊が発生するのを防止するために、表面Saが液膜で覆われた状態で搬入される。液膜を構成する液体としては、例えばイソプロピルアルコール(IPA)、アセトン等の表面張力が比較的低い有機溶剤を好適に用いることができる。
【0021】
蓋部材14が(+Y)方向に移動し開口部101を塞ぐことにより、処理空間SPが密閉される。蓋部材14の(+Y)側側面と処理チャンバ100の(-Y)側側面との間にはシール部材16が設けられ、処理空間SPの気密状態が保持される。シール部材16としては、弾性樹脂材料、例えばゴムにより形成された環状のものを用いることができる。また、図示しないロック機構により、蓋部材14は処理チャンバ100に対して固定される。このようにして処理空間SPの気密状態が確保された状態で、処理空間SP内で基板Sに対する処理が実行される。
【0022】
この実施形態では、供給ユニット50に設けられた流体供給部57から、超臨界処理に利用可能な物質の流体、例えば二酸化炭素が、気体または液体の状態で処理ユニット10に供給される。二酸化炭素は比較的低温、低圧で超臨界状態となり、また基板処理に多用される有機溶剤をよく溶かす性質を有するという点で、超臨界乾燥処理に好適な化学物質である。
【0023】
より具体的には、流体供給部57は、基板Sを処理する処理流体として、超臨界状態の流体、または、ガス状もしくは液状で供給され所定の温度・圧力が与えられることで事後的に超臨界状態となる流体を出力する。例えば、ガス状もしくは液状の二酸化炭素が加圧状態で出力される。流体は配管571およびその途中に介挿されたバルブ572、573を介して、処理チャンバ100の(+Y)側側面に設けられた入力ポート102、103に圧送される。すなわち、制御ユニット90からの制御指令に応じてバルブ572、573が開成されることで、流体は流体供給部57から処理チャンバ100へ送られる(供給工程)。
【0024】
図2Aおよび
図2Bは処理流体の流路を模式的に示す図である。より具体的には、
図2Aは流路の輪郭を示す模式図であり、
図2Bはその平面図である。以下、
図1、
図2Aおよび
図2Bを参照しながら、処理流体の流路の構造について説明する。
【0025】
入力ポート102、103から処理空間SPに至る流体の流路17は、流体供給部57から供給される処理流体を処理空間SPに導入する導入流路として機能する。具体的には、入力ポート102には、流路171が接続されている。入力ポート102とは反対側の流路171の端部には、流路断面積が急激に拡大するように形成されたバッファ空間172が設けられている。
【0026】
バッファ空間172と処理空間SPとを接続するように、流路173がさらに設けられている。流路173は、上下方向(Z方向)に狭く、水平方向(X方向)に長い幅広の断面形状を有しており、その断面形状は、処理流体の流通方向において略一定である。バッファ空間172とは反対側の流路171の端部は、処理空間SPに臨んで開口する吐出口174となっており、この吐出口174から処理流体が処理空間SP内に導入される。
【0027】
望ましくは、流路173の高さは、支持トレイ15が処理空間SPに収容された状態で、処理空間SPの天井面と基板表面Saとの距離と等しい。そして、吐出口174は、処理空間SPの天井面と支持トレイ15の上面151との間のギャップに臨んで開口している。例えば、流路173の天井面と処理空間SPの天井面とが同一平面をなすようにすることができる。このように、吐出口174は、処理空間SPに臨んで水平方向に細長いスリット状に開口している。
【0028】
支持トレイ15の下方にも同様にして処理流体の流路が形成される。具体的には、入力ポート103には流路175が接続されている。入力ポート103とは反対側の流路175の端部には、流路断面積が急激に拡大するように形成されたバッファ空間176が設けられている。
【0029】
そして、バッファ空間176と処理空間SPとは流路177を介して連通している。流路177は、上下方向(Z方向)に狭く、水平方向(X方向)に長い幅広の断面形状を有しており、その断面形状は、処理流体の流通方向において略一定である。バッファ空間176とは反対側の流路177の端部は、処理空間SPに臨んで開口する吐出口178となっており、この吐出口178から処理流体が処理空間SP内に導入される。
【0030】
望ましくは、流路177の高さは、処理空間SPの底面と支持トレイ15の下面との距離と同等とされる。そして、吐出口178は、処理空間SPの底面と支持トレイ15の下面との間のギャップに臨んで開口している。例えば、流路177の底面と処理空間SPの底面とが同一平面をなすようにすることができる。つまり、吐出口178は、処理空間SPに臨んで水平方向に細長いスリット状に開口している。
【0031】
Z方向において、流路171の配設位置と流路173の配設位置とが異なっていることが望ましい。両者が同一高さにあるとき、流路171からバッファ空間172に流入した処理流体の一部がそのまま直進して流路173に流入することになる。そうすると、流通方向に直交する流路の幅方向、つまりX方向においては、流路171に対応する位置とそれ以外の位置とで、流路173に流れ込む処理流体の流量や流速に差が生じるおそれがある。このことは、流路173から処理空間SPに流れ込む処理流体の流れにX方向の不均一性を生じさせ、乱流の原因となる。
【0032】
流路171と流路173とをZ方向に異ならせて配置することにより、このような流路171から流路173への処理流体の直進は生じなくなり、幅方向において均一な層流として処理流体を処理空間SPに導入することが可能となる。
【0033】
このように構成された導入流路17から導入される処理流体は、処理空間SP内で支持トレイ15の上面および下面に沿って流れ、以下のように構成される排気流路18を介して処理容器外へ排出される(排出工程)。基板Sよりも(-Y)側において、処理空間SPの天井面と支持トレイ15の上面151とはいずれも水平な平面をなしており、両者は一定のギャップを保って平行に対向している。このギャップが、支持トレイ15の上面151および基板Sの表面Saに沿って流れた処理流体を流体排出部55に導く排気流路18の上流領域181として機能する。この上流領域181は上下方向(Z方向)に狭く、水平方向(X方向)に長い幅広の断面形状を有している。
【0034】
上流領域181の処理空間SPとは反対側の端部はバッファ空間182に接続している。詳しい構造については後述するが、バッファ空間182は、処理チャンバ100と、蓋部材14と、シール部材16とで囲まれた空間である。X方向におけるバッファ空間182の幅は上流領域181の幅と同等またはこれより大きく、Z方向におけるバッファ空間182の高さは上流領域181の高さよりも大きい。したがって、バッファ空間182は上流領域181より大きな流路断面積を有している。
【0035】
バッファ空間182の上部に下流領域183が接続されている。下流領域183は処理チャンバ100を構成する上部ブロックである第1部材11を貫通して設けられた貫通孔である。その上端は処理チャンバ100の上面に開口する出力ポート104を構成し、下端はバッファ空間182に臨んで開口している。
【0036】
このように、本実施形態では、支持トレイ15の上面側における排気流路18は、以下の3つの領域、つまり、
・支持トレイ15の上面151と第1部材11の下面との間に形成される上流領域181と、
・流体排出部55と繋がる下流領域183と、
・上流領域181と下流領域183とを連通する中間領域(バッファ空間182)と、
を有している。これらのうち上流領域181およびバッファ空間182は、
図2Aおよび
図2Bに示すように、処理空間SPからの処理流体の流れ方向Yに対して直交するX方向において基板Sの直径よりも広い幅(本発明の「第1幅」に相当)にわたって設けられている。これに対し、X方向における下流領域183の幅(本発明の「第2幅」に相当)は大幅に狭まっている。このため、従来技術と同様に排気流路18に対して特段の工夫を施さない場合には、排気流路18のインレット側、つまり上流領域181で処理流体の逆流が生じ、処理済の処理流体が上流領域181から処理空間SPに流れ込むことがある。そこで、本実施形態では、
図2Aおよび
図2Bに示すように、第1部材11の一部(後で説明する隔壁112)をバッファ空間182に延設するとともに(-Y)方向側の端部を凹凸形状に仕上げ、本発明の「整流部」として機能させている。なお、これらの点については、後で詳述する。
【0037】
同様に、処理空間SPの底面と支持トレイ15の下面とはいずれも水平な平面をなしており、両者は一定のギャップを保って平行に対向している。このギャップが、支持トレイ15の下面に沿って流れる処理流体を流体排出部55に導く排気流路18の上流領域185として機能する。また、支持トレイ15の下面側の上流領域185は、支持トレイ15の上面側と同様に、バッファ空間186を介して下流領域187と接続されている。すなわち、支持トレイ15の下面側における排気流路18は、以下の3つの領域、つまり、
・支持トレイ15の下面と第2部材12の上面との間に形成される上流領域185と、
・流体排出部55と繋がる下流領域187と、
・上流領域185と下流領域187とを連通する中間領域(バッファ空間186)と、
を有している。これらのうち上流領域185およびバッファ空間186も、支持トレイ15の上面側と同様に、X方向において基板Sの直径よりも広い幅(本発明の「第1幅」に相当)にわたって設けられている。これに対し、X方向における下流領域187の幅(本発明の「第2幅」に相当)は大幅に狭められている。したがって、上記逆流を防止するために本実施形態では、第2部材12の一部(後で説明する隔壁122)をバッファ空間186に延設するとともに左側端部を凹凸形状に仕上げ、本発明の「整流部」として機能させている。なお、これらの点についても、後で詳述する。
【0038】
処理空間SPにおいて支持トレイ15の上方を流れた処理流体は、上流領域181、バッファ空間182および下流領域183を介して出力ポート104へ送出される。出力ポート104は、配管551によって流体排出部55に接続されており、配管551の途中にはバルブ552が介挿されている。
【0039】
同様に、処理空間SPにおいて支持トレイ15の下方を流れた処理流体は、上流領域185、バッファ空間186および下流領域187を介して出力ポート105へ送出される。出力ポート105は、配管553によって流体排出部55に接続されており、配管553の途中にはバルブ554が介挿されている。
【0040】
バルブ552、554は制御ユニット90により制御されている。制御ユニット90からの制御指令に応じてバルブ552、554が開成すると、処理空間SP内の処理流体が配管551、553を介して流体排出部55に回収される。
【0041】
次に、整流部の構成および動作について、
図3A、
図3B、
図4、
図5Aおよび
図5Bを参照しつつ説明する。
図3Aおよび
図3Bは処理チャンバの開口部周辺の構造および整流部を例示する図である。より具体的には、
図3Aは処理チャンバ100の開口部101を示す外観図である。また、
図3Bは、処理チャンバ100の内部構造を見やすく示すために、
図3Aからシール部材16および第1部材11と第2部材12との境界線の図示を省き、代わりに
図3Aでは隠れている構造を隠れ線(点線)によって示したものである。
【0042】
これらの図に示されるように、処理チャンバ100の(-Y)側端面には、環状のシール部材16が取り付けられ、シール部材16に囲まれた内部領域に開口部101が設けられている。より具体的には、処理チャンバ100を構成する第1部材11、第2部材12の(-Y)側端面に、表面が(+Y)側に後退した凹部111、121が設けられている。そして、第1部材11の凹部111の下端には、X方向における幅が処理空間SPの幅と同じかこれよりも少し大きく、かつ上下方向(Z方向)に薄い鍔状の隔壁112が(-Y)方向に突出して設けられている。
【0043】
隔壁112は、支持トレイ15と対向しながら(-Y)方向に延びる第1部材11の(-Y)側下端部であり、
図4に示すように上流領域181とバッファ空間182とを部分的に仕切っている。したがって、上流領域181を流れてくる処理流体(点線)は隔壁112の(-Y)側を通過し、さらに(+Z)方向に向きを変えてバッファ空間182に流れ込む。また、本実施形態では、隔壁112に対し、X方向における略中央部に2つの切欠部位112aが設けられている。これにより、隔壁112は凹凸形状に仕上げられ、X方向における中央部での処理流体の流量が高められる一方、X方向における両端部での処理流体の流量が抑制される。つまり、凹凸部を有する隔壁112が本発明の「整流部」として機能する。
【0044】
また、第2部材12の凹部121の上端にも、X方向における幅が処理空間SPの幅と同じかこれよりも少し大きく、かつ上下方向(Z方向)に薄い鍔状の隔壁122が(-Y)方向に突出して設けられている。
【0045】
隔壁122は、支持トレイ15と対向しながら(-Y)方向に延びる第2部材12の(-Y)側上端部であり、上流領域185とバッファ空間186とを部分的に仕切っている。したがって、上流領域185を流れてくる処理流体は隔壁122の(-Y)側を通過し、さらに(-Z)方向に向きを変えてバッファ空間186に流れ込む。また、本実施形態では、
図3Aおよび
図3Bに示すように、隔壁122に対し、X方向における略中央部に2つの切欠部位122aが設けられている。これにより、隔壁122は凹凸形状に仕上げられ、X方向における中央部での処理流体の流量が高められる一方、X方向における両端部での処理流体の流量が抑制される。つまり、凹凸部を有する隔壁122は、隔壁112と同様に、本発明の「整流部」として機能する。
【0046】
隔壁112上方の上部空間は、その(-Y)側開口部を蓋部材14により閉塞されることによってバッファ空間182として機能する。また、隔壁122下方の下部空間は、その(-Y)側開口部を蓋部材14により閉塞されることによってバッファ空間186として機能する。凹部111の上面には、そのX方向両端部近傍に下流領域183、183が接続されている。下流領域183、183は、第1部材11の上面に設けられた出力ポート104、104に連通している。また凹部121の下面には、そのX方向両端部近傍に下流領域187、187が接続されている。下流領域187、187は、第2部材12の下面に設けられた出力ポート105、105に連通している。そして、出力ポート104、104、105、105に流体排出部55が接続されて処理流体を回収する。
【0047】
このように第1実施形態では、排気流路18のインレット側、つまり上流領域181、185ではX方向に幅広な範囲で処理済の処理流体が流入可能に構成される一方で、排気流路18のアウトレット側、つまり下流領域183、187ではX方向に幅狭な範囲で処理流体を流出させる必要がある。したがって、既述した問題が懸念されるが、第1実施形態では、整流部として機能する隔壁112、122が設けられているため、排気流路18での排気バランスが良好に調整される。この点について、
図4、
図5Aおよび
図5Bを参照しつつ説明する。
【0048】
図5Aは隔壁の切欠部位近傍での処理流体の流れを模式的に示す断面図である。また、
図5Bは隔壁のX方向端部近傍での処理流体の流れを模式的に示す断面図である。隔壁112、122の切欠部位112a、122a近傍では、
図4に示すように、隔壁112、122は(+Y)側に後退しており、凹部位に相当している。一方、切欠部位112a、122a以外においては、隔壁112、122は、上流領域185からバッファ空間186に流れる処理流体に向かって突出しており、凸部位に相当している。このため、X方向において下流領域183、187から離れた中央部では、
図4および
図5Aに示すように、比較的大きな流量で処理流体が上流領域185からバッファ空間186に流れ込み、X方向両端に向けて流通される。一方、X方向両端部では、
図4および
図5Bに示すように、中央部に比べて上流領域185からバッファ空間186に流れ込む処理流体の流量が抑制される。
【0049】
以上のように、第1実施形態によれば、排気流路18において下流領域183、187をX方向両端部に設けたことに対応して隔壁112、122に凹部位と凸部位とを設け、隔壁112、122を整流部として機能させている。すなわち、流体排出部55により処理済の処理流体を排出する際に、排気流路18のうち隔壁112、122を設けた整流位置RP(
図2B、
図4)に流れ込む処理流体を整流する。これにより、整流位置RPに対する処理空間SP側での処理流体の流れと、整流位置RPに対する前記流体排出部側での前記処理流体の流れとのバランスが調整される。つまり、排気流路18における排気のバランスが確保される。その結果、処理済の処理流体が処理空間SPに逆流して基板Sを汚染するのを効果的に防止することができる。
【0050】
図6は、本発明に係る基板処理装置の第2実施形態における処理チャンバの開口部周辺の構造および整流部を例示する図である。なお、
図6およびその説明において、実質的に
図3Aおよび
図3Bに記載のものと同様の機能を有する構造には同一符号を付して、詳しい説明を省略する。
【0051】
第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、整流部の構成である。つまり、第1実施形態では、第1部材11の一部(隔壁112)および第2部材12の一部(隔壁122)を本発明の「整流部」として機能させている。これに対し、第2実施形態では、独立した隔壁整流部材191、192がそれぞれ第1部材11および第2部材12に対して着脱自在となっている。
【0052】
隔壁整流部材191は、
図6に示すように、断面が略L字型のアングル状部材である。この隔壁整流部材191を構成する2つの翼部位のうち(-Y)方向に延びる翼部位の幅方向中央部に2つの切欠部位191a、191aが設けられている。そして、もう一方の翼部位が、第1部材11の凹部101aに密接された状態で、固定ねじ113aにより第1部材11に固定される。これによって、隔壁整流部材191は第1実施形態の隔壁112と同様に、隔壁機能と整流機能とを発揮する。また同様に、開口部101bの下部には、隔壁整流部材192が固定ねじ123aにより固結され、隔壁機能を発揮する。また同時に、幅方向中央部に設けられた2つの切欠部位192a、192aを有する隔壁整流部材192が整流機能を発揮する。
【0053】
このように第2実施形態では、隔壁整流部材191、192が着脱自在であるため、基板Sの種類や処理条件などに対応した隔壁整流部材191、192を用いることができる。例えば、予め切欠部位191a、192aの数、形状および大きさなどが互い異なる複数の隔壁整流部材191、192を準備することができる。そして、それらのうち基板Sの種類や処理条件などに適合する隔壁整流部材191、192をそれぞれ選択して処理チャンバ100に装着することができる。これによって、多種多様な基板Sや処理条件などに対応することができ、基板処理装置1の汎用性を高めることができる。
【0054】
以上説明したように、第1実施形態および第2実施形態においては、主として第1ないし第3部材11~13により構成される処理チャンバ100が本発明の「容器本体」として機能している。また、蓋部材14が本発明の「蓋部」の一例に相当している。そして、これら処理チャンバ100と蓋部材14とにより本発明の「処理容器」が構成されている。また、開口部101が本発明の「開口部」に相当している。また、Y方向、X方向およびZ方向がそれぞれ本発明の「第1方向」、「第2方向」および「第3方向」に相当している。
【0055】
また、第1実施形態および第2実施形態では、出力ポート104、105の周辺領域は、流体排出部55により強く排気されており、排気流路18のうち(+X)方向側および(-X)方向側の端部範囲が本発明の「強排気範囲」の一例に相当している。一方、出力ポート104、105から離れたX方向における中央範囲が本発明の「弱排気範囲」の一例に相当している。
【0056】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態の基板処理装置1では、2つの出力ポート104、104(105、105)がX方向において振り分けて設けられており、上記中央範囲が弱排気範囲となっている。このため、切欠部位112a、122a、191a、192aがX方向における中央部に設けられている。しかしながら、切欠部位の配設位置はこれに限定されるものではなく、任意である。例えば
図7Aに示すように、(-X)方向側のみに出力ポート104、105が設けられている場合、(+X)方向側に切欠部位112a、122a(191a、192a)を設けてもよい(第3実施形態)。逆に、
図7Bに示すように、(+X)方向側のみに出力ポート104、105が設けられている場合、(-X)方向側に切欠部位112a、122a(191a、192a)を設けてもよい(第4実施形態)。
【0057】
また、上記実施形態では、排気流路18を構成する上流領域181(185)とバッファ空間182(186)との間に隔壁112(121)や隔壁整流部材191(192)を設けているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。例えば
図8A、
図8B、
図9Aおよび
図9Bに示す基板処理装置に対しても本発明を適用可能である。
【0058】
図8Aは、本発明に係る基板処理装置の第5実施形態における処理流体の流路の平面図である。また、
図8Bは、第5実施形態において用いられる整流部の一例を示す斜視図である。また、
図9Aは、幅方向中央部近傍での処理流体の流れを模式的に示す断面図である。さらに、
図9Bは、幅方向端部近傍での処理流体の流れを模式的に示す断面図である。第5実施形態では、
図9Aおよび
図9Bに示すように、隔壁や隔壁整流部材が設けられず、処理空間SPから(-Y)方向に流れてくる処理流体が上流領域181、185を通過し、そのままバッファ空間182に流入する。一方、第5実施形態では、
図8Bに示す整流部20の凹凸面(下面)が上流領域181を臨むように整流部20が第1部材11の下面に取り付けられている。なお、上流領域185についても同様に構成されている。つまり、整流部20と同様に構成された整流部21は、その凹凸面(上面)が上流領域185を臨むように、第2部材12の上面に取り付けられている。
【0059】
整流部20、21は、
図8Aおよび
図8Bに示すように、X方向に延設されたプレート形状を有している。この整流部20は、下面中央部に切欠部位201、201が形成された凹凸形状を有し、上流領域181のアウトレット位置(整流位置RP)で上流領域181からバッファ空間182に流れる処理流体を整流する。また、整流部21は、上面中央部に切欠部位211、211が形成された凹凸形状を有し、上流領域185のアウトレット位置(整流位置RP)で上流領域185からバッファ空間186に流れる処理流体を整流する。このため、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0060】
また、上記実施形態では、出力ポート104、105がX方向の両側、(+X)方向側のみ、(-X)方向側のみに設けられた装置に本発明を適用しているが、出力ポート104、105がX方向における中央部に設けられた装置に対しても本発明を適用することができる。例えば
図10に示すように、出力ポート104、105がX方向中央部に設けられる場合、切欠部位112a、122a、191a、192aをX方向における両端部に振り分けて設けるのが望ましい(第6実施形態)。この第6実施形態では、X方向における中央部に出力ポート104、105が設けられていると、X方向における中央範囲が本発明の「強排気範囲」に相当し、端部範囲が「弱排気範囲」に相当する。したがって、切欠部位112a、122a、191a、192aが設けられていることによって、端部範囲では比較的大きな流量で処理流体が上流領域からバッファ空間に流れ込む。一方で、中央範囲には、隔壁112、122に切欠部位が設けられていないため、端部に比べて上流領域からバッファ空間に流れ込む処理流体の流量が抑制される。このように、端部に設けられた切欠部位112a、122a、191a、192aによって凹凸部が形成された隔壁112、122が、本発明の「整流部」として機能する。
【0061】
また、上記実施形態では、排気流路18のインレット側(処理空間SP側)は、X方向に延びるスリット状に開口されており、処理空間SPを流れてくる処理流体を効率的に取り込み可能となっている。ただし、インレット側の排気流路18の構成については、これに限定されるものではなく、例えば複数の貫通孔をX方向に配列したパンチングプレートを介して処理流体を取り込むように構成した排気流路を有する基板処理装置に対して本発明を適用することができる。すなわち、本発明については、特許文献1~4に記載された装置に対しても適用することができ、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0062】
また、上記実施形態では、排気流路18は、3種類の領域、つまり上流領域、中間領域(バッファ空間)および下流領域で構成されている。しかしながら、本発明については、排気流路18が上流領域と下流領域とで構成される基板処理装置に対して適用することができる。
【0063】
また、上記実施形態の処理で使用される各種の化学物質は一部の例を示したものであり、上記した本発明の技術思想に合致するものであれば、これに代えて種々のものを使用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
この発明は、処理容器内で基板を処理流体によって処理する基板処理技術全般に適用することができる。特に、高圧流体を用いた処理、例えば半導体基板等の基板を超臨界流体によって乾燥させる基板乾燥処理に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…基板処理装置
14…蓋部材
15…支持トレイ
18…排気流路
20,21…整流部
55…流体排出部
100…処理チャンバ(容器本体)
112、122…隔壁(整流部)
181、185…上流領域
182、186…バッファ空間(中間領域)
183、187…下流領域
191、192…隔壁整流部材(整流部)
RP…整流位置
S…基板
SP…処理空間
X…第2方向
Y…第1方向
Z…第3方向