(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ドライワイパーのロール体
(51)【国際特許分類】
A47L 13/17 20060101AFI20240905BHJP
A47K 7/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A47L13/17 A
A47K7/00 E
(21)【出願番号】P 2020197301
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124060(JP,A)
【文献】特開2008-202153(JP,A)
【文献】特開2017-131545(JP,A)
【文献】特開2016-007267(JP,A)
【文献】特開2016-16178(JP,A)
【文献】特開2005-287702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0270412(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 13/17
A47K 7/00
A47K 10/16-10/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布を含むドライワイパーがロール状に巻き取られ、その軸方向に沿って円柱形状の中心孔が形成された、ドライワイパーのロール体であり、
前記ロール体の前記中心孔の中心直径が、25mm以上45mm以下であり、
前記ロール体の巻密度が、0.10m/cm
2
以上0.50m/cm
2
以下であり、
前記ドライワイパーの坪量が、55g/m
2
以上130g/m
2
以下であり、
前記ドライワイパーの比容積が、5.5cm
3/g以上8.5cm
3/g以下であり、
前記ドライワイパーの単位面積あたりの吸水量(TWA)が、280g/m
2以上420g/m
2以下であり、
前記ドライワイパーの単位質量あたりの吸水量(TWA)が、3.5g/g以上6.5g/g以下であ
り、
前記ドライワイパーは、前記ロール体を薬液に含浸又は塗布して、ウェット状態のワイパーを前記ロール体から引き出して使用される、
ドライワイパーのロール体。
【請求項2】
前記ドライワイパーの巻き取り方向の強度が、19.6N/25mm以上44.1N/25mm以下である、
請求項
1に記載のドライワイパーのロール体。
【請求項3】
前記不織布は、パルプと樹脂とを含む、
請求項1
又は2に記載のドライワイパーのロール体。
【請求項4】
前記不織布は、パルプを60質量%以上92質量%以下含む、
請求項1~
3のいずれか一項に記載のドライワイパーのロール体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライワイパーのロール体に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や介護施設等で用いられる容器入りのワイパー製品には、薬液をワイパーに含浸する前のドライワイパーをロール状に巻き取ったロール体として出荷し、使用者がこれに薬液を含浸又は充填した後、シート(ウェットワイパー)をロール体から引き出して使用するものがある。このようなドライワイパーとしては、例えば、パルプと、ポリエステル又はポリプロピレン等の樹脂とを複合した不織布をドライワイパーとして用いた製品(不織布ワイパー)が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、60質量%以上80質量%以下の木材パルプ繊維と、20質量%以上40質量%以下のポリプロピレンメルトブロー繊維と、を含有する不織布を基布とし、精製水を主成分とする薬液を基布の乾燥重量に対して、200質量%以上400質量%以下の割合で含浸させたウェットワイパーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなドライワイパーのロール体は、薬液等を含浸又は塗布させてから使用されることが多く、その場合は以下の点を満たすことが望まれている。
【0006】
まず、薬液等を含浸又は塗布させた後、ロール体からシートを引き出しやすく、シートが薬液を十分に保持し、シートの塗布面に均一に拡散できており(薬液の拡散性)、拭き取りやすいことが求められる。そして、ロール体がコンパクトでありながら、ロール体から引き出したシートにシワが生じないことも求められる。しかし、従来のドライワイパーのロール体では、これら全てを高いレベルで満たすことができていないのが実情である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、薬液等を含浸又は塗布させた後であっても、シートが引き出しやすく、薬液の拡散性が高く、拭き取りやすく、コンパクトなロール体でありながら、シートにシワが生じない、ドライワイパーのロール体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、不織布を含むドライワイパーがロール状に巻き取られ、その軸方向に沿って円柱形状の中心孔が形成された、ドライワイパーのロール体であり、ロール体の中心孔の中心直径が、25mm以上45mm以下であり、ドライワイパーの比容積が、5.5cm3/g以上8.5cm3/g以下であり、ドライワイパーの単位面積あたりの吸水量(TWA)が、280g/m2以上420g/m2以下であり、ドライワイパーの単位質量あたりの吸水量(TWA)が、3.5g/g以上6.5g/g以下である、ドライワイパーのロール体とすることに知見を得て、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0010】
(1)
不織布を含むドライワイパーがロール状に巻き取られ、その軸方向に沿って円柱形状の中心孔が形成された、ドライワイパーのロール体であり、前記ロール体の前記中心孔の中心直径が、25mm以上45mm以下であり、前記ドライワイパーの比容積が、5.5cm3/g以上8.5cm3/g以下であり、前記ドライワイパーの単位面積あたりの吸水量(TWA)が、280g/m2以上420g/m2以下であり、前記ドライワイパーの単位質量あたりの吸水量(TWA)が、3.5g/g以上6.5g/g以下である、ドライワイパーのロール体である。
(2)
前記ドライワイパーの坪量が、50g/m2以上130g/m2以下である、(1)に記載のドライワイパーのロール体である。
(3)
前記ロール体の巻密度が、0.10m/cm2以上0.50m/cm2以下である、(1)又は(2)に記載のドライワイパーのロール体である。
(4)
前記ドライワイパーの巻き取り方向の強度が、19.6N/25mm以上44.1N/25mm以下である、(1)~(3)のいずれかに記載のドライワイパーのロール体である。
(5)
前記不織布は、パルプと樹脂とを含む、(1)~(4)のいずれかに記載のドライワイパーのロール体である。
(6)
前記不織布は、パルプを60質量%以上92質量%以下含む、(1)~(5)のいずれかに記載のドライワイパーのロール体である。
(7)
前記ドライワイパーは、前記ロール体を薬液に含浸又は塗布して、ウェット状態のワイパーを前記ロール体から引き出して使用される、(1)~(6)のいずれかに記載のドライワイパーのロール体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、薬液等を含浸又は塗布させた後であっても、シートが引き出しやすく、薬液の拡散性が高く、拭き取りやすく、コンパクトなロール体でありながら、シートにシワが生じない、ドライワイパーのロール体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るドライワイパーのロール体の一例の斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るドライワイパーのロール体の中心孔の中心直径を測定する方法の説明に供する概念図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るドライワイパーのロール体の断面積を測定する方法の説明に供する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0014】
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
さらに、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
【0016】
(ドライワイパーのロール体)
【0017】
図1は、本実施形態に係るドライワイパーのロール体の一例の斜視図である。
【0018】
本実施形態に係るドライワイパー10のロール体1(以下、単に「ロール体1」ということがある。)は、不織布を含むドライワイパー10がロール状に巻き取られ、その軸方向に沿って円柱形状の中心孔Hが形成されたロール体1であり、ロール体1の中心孔Hの中心直径DIが、25mm以上45mm以下であり、ドライワイパー10の比容積が、5.5cm3/g以上8.5cm3/g以下であり、ドライワイパー10の単位面積あたりの吸水量(TWA)が、280g/m2以上420g/m2以下であり、ドライワイパー10の単位質量あたりの吸水量(TWA)が、3.5g/g以上6.5g/g以下である、ドライワイパー10のロール体1である。
【0019】
ロール体1は、その好適な使用態様として、そのドライワイパー10に薬液を含浸又は塗布して使用することができる。より具体的には、ドライワイパー10は、ロール体1を薬液に含浸又は塗布して、ウェット状態のワイパーをロール体1から引き出して使用することができる。例えば、図示はしないが、容器にロール体1をセットして、そこに薬液を充填することによって、ドライワイパー10に薬液を含浸させて、ウェットワイパーとして使用することができる。そして、ロール体1の中心孔Hからシートを引き出して使用することができる。もちろん、ロール体1の端部11からシートを引き出して使用してもよい。
【0020】
ロール体1は、長尺のシート状のドライワイパー10を巻き取ったものであるが、必要に応じて、ドライワイパー10を複数枚折りたたんでから(例えば、ドライワイパー10を2枚折りや3枚折り等に折りたたんでから)、巻き取ったものであってもよい。そして、必要に応じて、ドライワイパー10の巻き取り方向の所定の間隔で、ミシン目等の切り取り線12を連続的に設けてもよい。
【0021】
ロール体1は、軸方向に沿って円柱形状の中心孔Hが形成されている。ロール体は、例えば、芯(不図示)の周りにドライワイパー10を巻き取った有芯タイプでもよいし、芯がない無芯タイプでもよい。
【0022】
なお、特に断りがない限り、ドライワイパー10の巻き取り方向とは、ドライワイパー10の縦方向(
図1の矢印X参照)である。例えば、
図1に示すような形態の場合、ドライワイパー10の長手方向になる。そして、ドライワイパー10の巻き取り方向と垂直の方向(
図1の矢印Y参照)は、ドライワイパー10の横方向であり、ロール体1の高さ方向である。例えば、
図1に示すような形態の場合、ドライワイパー10の短手方向になる。なお、ここでの長手か短手かは、
図1に示される形状である場合の例示であって、製品の形態によっては、長手と短手が逆になる場合もありうる。
【0023】
中心孔Hの中心直径DIは、25mm以上45mm以下である。中心直径DIの下限は、28mm以上であることが好ましく、30mm以上であることがより好ましい。また、中心直径DIの上限は、42mm以下であることが好ましく、40mm以下であることがより好ましい。中心直径DIの下限をこのような範囲とすることで、使用開始時であってもドライワイパー10を一層引き出しやすくできる。また、中心直径DIの上限をこのような範囲とすることで、薬液をロール体1に含浸又は塗布する際に液体が中心孔Hから抜けてしまうことがなく、ロール体1全体に対して均一に充填することができる。
【0024】
図2は、本実施形態に係るドライワイパーのロール体の中心孔の中心直径を測定する方法の説明に供する概念図である。
【0025】
中心孔Hの中心直径DIは、JIS B 7516に準拠した金尺を用いて、
図2に示すように、中心孔Hの中心Oを通る4か所の直径を測定し、その算術平均値である。
【0026】
ドライワイパー10の比容積は、5.5cm3/g以上8.5cm3/g以下である。そして、比容積の下限は、6.0cm3/g以上であることがより好ましく、6.5cm3/g以上であることが更に好ましい。また、比容積の上限は、8.0cm3/g以下であることがより好ましく、7.5cm3/g以下であることが更に好ましい。比容積の下限をこのような範囲とすることで、吸水性が一層向上する。また、比容積の上限をこのような範囲とすることで、ロール体1のコンパクト性がより向上する。この比容積は、ドライワイパー1枚あたりの紙厚を坪量で除することによって、単位質量(g)あたりの容積(cm3)で除した値として求める。比容積は、後述する実施例に記載の方法に準拠して求めることができる。
【0027】
ドライワイパー10の単位面積あたりの吸水量(TWA:Total Water Absorbency、g/m2)は、280g/m2以上420g/m2以下である。この吸水量の下限は、300g/m2以上であることが好ましく、320g/m2以上であることが更に好ましい。また、この吸水量の上限は、410g/m2以下であることが好ましく、400g/m2以下であることが更に好ましい。この吸水量の下限をこのような範囲とすることで、薬液の拡散性等が一層向上する。また、この吸水量の上限をこのような範囲とすることで、含浸又は塗布に使用する薬液の使用量を低減すること等ができ、経済性等がより優れたものとなる。
【0028】
ドライワイパー10の単位質量あたりの吸水量(TWA、g/g)は、3.5g/g以上6.5g/g以下である。この吸水量の下限は、3.7g/g以上であることが好ましく、4.0g/g以上であることが更に好ましい。また、この吸水量の上限は、6.3g/g以下であることが好ましく、6.0g/g以下であることが更に好ましく、5.8g/g以下であることがより更に好ましい。この吸水量の下限をこのような範囲とすることで、薬液の拡散性等が一層向上する。また、この吸水量の上限をこのような範囲とすることで、含浸又は塗布に使用する薬液の使用量を低減すること等ができ、経済性等がより優れたものとなる。さらに加えて、製造時の吸水量の調整がしやすい。
【0029】
なお、本発明者らは、ドライワイパー10の単位面積あたりの吸水量(g/m2)は、単位面積当たりの吸水量の指標であるため、使用者にとって実使用時の拭き取りやすさ等にも資するものであるが、坪量や厚み等によって変動しうる指標であると考えた。そして、ドライワイパー10の単位面積あたりの吸水量(g/g)は、質量あたりの吸水量であるため、坪量や厚み等を考慮した指標であり、吸水性能をより客観的に評価できる指標であるが、使用者にとって実使用の拭き取りやすさ等には十分に資することができていないところがあると考えた。本発明者らは、このような考えに基づき鋭意研究したところ、本実施形態によれば、少なくとも、これらの2つの吸水量を上述した範囲とすることで、ロール体1のコンパクト性やシートの引き出しやすさと、薬液の拡散性や使用時の拭き取りやすさとの両立に資することができる(ただし、本実施形態の作用はこれらに限定されない。)。
【0030】
上述した単位面積あたりの吸水量(TWA)及び単位質量あたりの吸水量(TWA)は、ドライワイパー10の1枚あたりの吸水量であり、後述する実施例に記載の方法に準拠して、それぞれ求めることができる。
【0031】
ドライワイパー10の坪量は、50g/m2以上130g/m2以下であることが好ましい。坪量の下限は、55g/m2以上であることが好ましく、60g/m2以上であることがより好ましい。また、坪量の上限は、100g/m2以下であることが好ましく、80g/m2以下であることがより好ましい。坪量の下限をこのような範囲とすることで、使用時の拭き取りやすさが一層向上する。また、坪量の上限をこのような範囲とすることで、コンパクト性を高いレベルで維持することができる。坪量は、JIS P 8124に準拠して測定することができる。
【0032】
ロール体1の巻密度は、0.10m/cm
2以上0.50m/cm
2以下であることが好ましい。巻密度の下限は、0.15m/cm
2以上であることが好ましく、0.20m/cm
2以上であることがより好ましい。また、巻密度の上限は、0.45m/cm
2以下であることが好ましく、0.40m/cm
2以下であることがより好ましい。巻密度の下限をこのような範囲とすることで、巻径(
図1のDR参照)に対する巻長の割合を高くすることができ、コンパクト性を高いレベルに維持できる。また、巻密度の上限をこのような範囲とすることで、シートが薄くなりすぎず、シート同士の張り付きを効果的に防止でき、引き出しやすさが一層向上するとともに、高い吸水性を維持できる。
【0033】
ロール体1の巻密度は、(巻長)÷(ロール体1の断面積S)によって求めることができる。2つ折りや3つ折り等、ドライワイパー10が複数折りされた状態でロール状に巻き取られる場合、ロール体1の巻密度は、(巻長×折り数)÷(ロール体1の断面積S)によって求めることができる。
【0034】
ロール体1の巻長(ドライワイパー10の巻き取り方向(縦方向、
図1の矢印X参照)の長さ)は、15m以上90m以下であることが好ましい。この下限は、20m以上であることがより好ましく、25m以上であることが更に好ましい。また、この上限は、80m以下であることがより好ましく、70m以下であることが更に好ましい。巻長をこのような範囲とすることにより、より拭き取りやすくなる。
【0035】
図3は、本実施形態に係るドライワイパーのロール体の断面積を測定する方法の説明に供する概念図である。
【0036】
ロール体1の断面積Sは、下記式に基づき求めることができる(
図3参照)。そして、下記の牧直径(外径)DR及び中心直径(内径)DIは、上述した中心孔Hの中心直径DIの求め方に準拠して求めることができる(
図2参照)。
ロール体1の断面積S={(ロール体1の巻直径(外径)DRを直径とする円の面積S2)-(ロール体1の中心孔Hの中心直径(内径)DIを直径とする円の面積S1)}
【0037】
ドライワイパー10の巻き取り方向の強度(縦強度)は、19.6N/25mm以上44.1N/25mm以下であることが好ましい。この強度の下限は、22.6N/25mm以上であることが好ましく、25.5N/25mm以上であることがより好ましい。また、この強度の上限は、39.2N/25mm以下であることが好ましく、35.3N/25mm以下であることが更に好ましい。この強度の下限をこのような範囲とすることで、巻き取り時に紙切れや紙くず等の発生や、シワの発生を効果的に防止でき、ロール体1の巻密度を調節しやすくなる。また、この強度の上限をこのような範囲に制御することで、ドライワイパー10が固くなりすぎず、拭き取りやすさを維持できる。
【0038】
なお、ドライワイパー10の巻き取り方向の強度とは、ドライワイパー10の縦方向(
図1の矢印X参照)の強度である。この強度は、JIS L 1913に準拠して測定することができる。
【0039】
ドライワイパー10の横方向の強度(横強度)は、8.8N/25mm以上19.6N/25mm以下であることが好ましい。この強度の下限は、9.8N/25mm以上であることが好ましく、10.8N/25mm以上であることがより好ましい。また、この強度の上限は、17.6N/25mm以下であることが好ましく、15.7N/25mm以下であることが更に好ましい。この強度の下限をこのような範囲とすることで、清拭する際にドライワイパー10が破れることを効果的に防止できる。また、この強度の上限をこのような範囲とすることで、ドライワイパー10が硬くなりすぎず、拭き取りにより適した柔軟性を付与することができる。この強度は、JIS L 1913に準拠して測定することができる。
【0040】
ロール体1の高さ(すなわち、ドライワイパー10の横方向の長さ、
図1の矢印Y参照)は、100mm以上500mm以下であることが好ましい。この下限は、120mm以上であることがより好ましく、140mm以上であることが更に好ましい。また、この上限は、450mm以下であることがより好ましく、400mm以下であることが更に好ましい。高さをこのような範囲とすることにより、より拭き取りやすくなる。
【0041】
ロール体1は、薬液を含浸又は塗布して、ウェットタオルとして好適に使用できる。このような観点から、ドライワイパー10の厚さは、0.30mm以上0.50mm以下であることが好ましい。ドライワイパー10の厚さの下限は、0.33mm以上であることがより好ましく、0.35mm以上であることが更に好ましい。また、ドライワイパー10の厚さの上限は、0.47mm以下であることがより好ましく、0.45mm以下であることが更に好ましい。ドライワイパー10の厚さをこのような範囲に制御することにより、より拭き取りやすくなる。
【0042】
不織布は、パルプを含むことが好ましい。パルプとしては、特に限定されないが、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、発塵抑制の観点から、NBKP単独(100質量%)であることが好ましい。
【0043】
そして、不織布がパルプを含む場合、不織布はパルプを60質量%以上92質量%以下含むことが好ましい。このパルプの含有率(パルプ比)の下限は、65質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。また、このパルプの含有率(パルプ比)の上限は、88質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。パルプ比の下限をこのような範囲とすることで、ドライワイパー10の1枚あたりの薬液保持量が高くなり、その結果、清拭可能面積が広くなり、拭き取りやすさが一層向上する。また、パルプ比の上限をこのような範囲とすることで、ドライワイパー10同士の張り付きを防止できる。なお、このパルプ比は、後述する実施例に記載する方法に準拠して求めることができる。
【0044】
不織布は、パルプと樹脂とを含むパルプ含有不織布であることが好ましい。パルプとしては上述したものを用いることができる。そして、樹脂としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。これらの中でも、ポリオレフィン及び/又はポリエステルであることがより好ましく、ポリエチレン及び/ポリエステルであることが更に好ましく、ポリエチレン及びポリエステルであることがより更に好ましい。
【0045】
不織布が樹脂を含む場合、樹脂の含有率は、8質量%以上40質量%未満であることが好ましく、35質量%未満であることがより好ましく、30質量%未満であることがより好ましい。また、樹脂の含有率の下限は、12質量%よりも大きいことが好ましく、15質量%より大きいことがより好ましい。
【0046】
不織布は、例えば、パルプを含む繊維に、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成繊維を、ケミカルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、エアレイド法、湿式スパンレース法、スパンボンド法、メルトボンド法等の加工法によって一体化したものを好適に使用することができる。
【0047】
このような不織布の具体例としては、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布を積層したスパンボンド-メルトブローン複合不織布等が挙げられる。これらの中でも、スパンボンド不織布が好ましい。そして、スパンボンド不織布を少なくとも有する複合不織布の場合、スパンボンド不織布を50質量%以上含むことがより好ましい。
【0048】
不織布の製造方法については、特に限定されず、公知の製造方法を採用することができる。例えば、複数の不織布を積層した複合不織布の製造方法としては、例えば、複数の不織布層を積層した積層体に対して、水流交絡法により高圧の水を打ち込んで絡め合わせる方法が好ましい。このような水流交絡法により得られた不織布(水流交絡不織布)によれば、ドライワイパーの表裏差を出しやすいため、ドライワイパーを広げやすくなる。ここでいうドライワイパーの表裏差は、パルプの含有量の差である。例えば、一方の表面がパルプの含有率が高い不織布層面であり、他方の表面がパルプの含有率が低い又はパルプを含まない不織布層面であることにより、表裏差を出すことができる。パルプの含有量の表裏差を設けることで、シート間の張り付きを一層効果的に防止することができる。
【0049】
そして、このようにして得られた不織布をドライワイパーとして、スリッターワインダー等で巻き取り、ロール体1とすることができる。その際、必要に応じて、ドライワイパー10の巻き取り方向の所定の間隔で、ミシン目等の切り取り線12を挿入してもよい。
【0050】
(薬液)
【0051】
薬液としては、清拭用途に使用可能な薬液を特に限定なく使用できる。薬液としては、例えば、除菌剤を含み、必要に応じて、保湿剤、エモリエント剤、その他添加剤等を含む薬液が挙げられる。薬液は、例えば、各成分を水に溶解又は分散させた液体として使用可能である。
【0052】
除菌剤としては、清拭用途に使用可能な成分を特に限定なく使用できる。除菌剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム等の第4級アンモニウム塩、ポリアミノプロピルビグアニド、パラベン(メチルパラベン(パラオキシ安息香酸メチル)、エチルパラベン(パラオキシ安息香酸エチル)、プロピルパラベン(パラオキシ安息香酸プロピル)、イソプロピルパラベン(パラオキシ安息香酸イソプロピル)、ブチルパラベン(パラオキシ安息香酸ブチル)、イソブチルパラベン(パラオキシ安息香酸イソブチル)、ベンジルパラベン(パラオキシ安息香酸ベンジル)等)、安息香酸及びその塩類(安息香酸ナトリウム等)、クロロクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸及びその塩類(サリチル酸ナトリウム等)、ソルビン酸及びその塩類(ソルビン酸カリウム等)、デヒドロ酢酸及びその塩類(デヒドロ酢酸ナトリウム等)、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、フェノキシエタノール、フェノール、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、レゾルシン、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、メチルイソチアゾリノン等が挙げられる。
【0053】
除菌剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
薬液における除菌剤の含有量は、薬液成分に応じて適宜決定することができるが、例えば、薬液全量の0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
【0055】
保湿剤としては、この分野で常用される成分を特に限定なく使用できる。保湿剤としては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール;乳酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム(PCA-Na)等の有機酸類;尿素;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエステル等のアルキレングリコール類等が挙げられる。
【0056】
保湿剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
薬液における保湿剤の含有量は、薬液成分に応じて適宜決定することができるが、例えば、薬液全量の0.0001質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0058】
さらに、油溶性成分のエモリエント剤としては、例えば、天然油脂、長鎖脂肪酸、脂肪酸エステル、ラノリン類(ラノリン、ラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ等)、リン脂質、セラミド類、天然保湿成分(アロエ抽出エキス等)等が挙げられる。
【0059】
また、その他の添加剤として、医薬部外品及び化粧品等に使用可能な添加剤を用いることができる。添加剤としては、ゲル化剤、乳化剤、増粘剤、pH調整剤、金属封鎖剤、界面活性剤、安定化剤、変色防止剤、香料、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記の中でも、本実施形態において使用する薬液の好適例としては、例えば、エタノール、塩化ベンザルコニウム及び塩化セチルピリジニウム等の第4級アンモニウム塩、ポリアミノプロピルビグアニド、パラベン、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0061】
乾燥状態であるドライワイパー10の質量(g1)に対する、乾燥状態であるドライワイパー10に含浸させた薬液の質量(g2)の倍率(ドライワイパー10の含浸倍率(g2/g1))は、特に限定されないが、200%以上400%以下とすることができる。含浸倍率の下限は、220%以上であることがより好ましく、240%以上であることが更に好ましい。また、含浸倍率の上限は、360%以下であることがより好ましく、330%以下であることが更に好ましい。含浸倍率をこのような範囲に制御できるため、単位面積あたりのドライワイパー10が清拭できる面積(清拭可能面積)が広く、十分な清拭効果が得られるとともに、清拭後の拭き跡の発生やべたつきの発生を効果的に抑制できる。
【0062】
以上説明してきたように、本実施形態に係るドライワイパー10のロール体1によれば、薬液等を含浸又は塗布させた後であっても、シートが引き出しやすく、薬液の拡散性が高く、拭き取りやすく、コンパクトなロール体でありながら、シートにシワが生じないといった利点等を少なくとも発揮できる。
【0063】
そして、その態様によっては、さらに、ロール体1のコンパクト性が高いため、容器に充填する枚数を多くでき、取り換え頻度を低く抑えることができるといった効果も発揮できる。また、ロール体1の外径DRを小さくしようとして、巻き密度等を制御した場合等であっても、ロール体1の中心孔Hからシートを引き出しやすく、上述した効果を高いレベルで維持することも期待できる。
【実施例】
【0064】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0065】
<実施例1>
【0066】
(ドライワイパーのロール体の作製)
【0067】
まず、基布として、パルプ繊維が80質量%、ポリプロピレン繊維が20質量%の割合で配合され、水流交絡により複合された不織布を準備した。パルプ繊維は、NBKP100質量%を使用し、ポリプロピレン不織布はスパンボンドを使用した。そして、これらをスリッターワインダーにて巻き取り加工することによって、
図1に示されるように、略円柱形状の中心孔Hが形成された、ドライワイパー10のロール体1(無芯タイプ、巻長:44m、切り取り線(ミシン目)12の間隔:230mm、ロール体1の高さ:200mm)を得た。
【0068】
<実施例2~8、比較例1~5>
【0069】
表1及び表2に示す条件に変更した点以外は、実施例1と同様の方法によって、ドライワイパー10のロール体を作製した。
【0070】
<物性の測定方法>
【0071】
(坪量)
ドライワイパー10の坪量は、JIS P 8124に準拠して測定した。
【0072】
(比容積)
ドライワイパー10の比容積は、以下の方法に準拠して測定した。まず、シート1枚の紙厚を以下の方法によって測定した。JIS P 8111の条件下(23±1℃、50±2%相対湿度でシックネスゲージ(尾崎製作所製のアップライト ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK R1-B型」)を用いて、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmの条件で、測定子と測定台の間にサンプルを置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取ることによって、紙厚を測定した。シート1枚に対し、測定を10回繰り返し、その測定結果の算術平均をとって紙厚とした。このようにして得られた紙厚を、坪量で除することによって、単位質量(g)あたりの容積(cm3)で除した値を比容積(cm3/g)とした。
【0073】
(中心孔Hの中心直径DI(中心直径))
中心孔Hの中心直径DIは、JIS B 7516に準拠した金尺を用いて、
図2に示すように中心孔Hの中心Oを通る4か所の直径を測定し、その算術平均値を採用した。
【0074】
(巻密度)
ロール体1の巻密度は、(巻長)÷(ロール体1の断面積S)によって求めた。
ロール体1の断面積Sは、下記式に基づき求めた(
図3参照)。
ロール体1の断面積S={(ロール体1の巻直径(外径)DRを直径とする円の面積S2)-(ロール体1の中心孔Hの中心直径(内径)DIを直径とする円の面積S1)}
この外径DRは、中心直径DIの測定方法に準拠して、JIS B 7516に準拠した金尺を用いて、
図2に示すように4か所の直径を測定し、その算術平均値を採用した。
【0075】
(ドライワイパー10の吸水量;TWA)
ドライワイパー10の乾燥状態における吸水量(TWA)は、以下の方法に準拠して測定した。
まず、ドライワイパー10を7.5cm×7.5cm四方に裁断して、サンプルを準備した。そして、このサンプルの質量が一定になるまで60℃乾燥機内に静置して、絶乾後のサンプルを得て、この絶乾後のサンプルの質量を測定した(絶乾後質量)。
次に、このサンプルを蒸留水中に2分間浸漬した後、水蒸気飽和状態(RH100%)の容器中で、サンプルの1つの角部が上側の頂部となるようにし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態で吊るし、30分放置して水切り後の質量を測定した。そして、測定値を、サンプル1gあたりの保水量(g/g)、及び、サンプル1m2あたりの保水量(g/m2)に、それぞれ換算した。
【0076】
(巻き取り方向の強度(縦強度))
ドライワイパー10の巻き取り方向の強度(縦強度)とは、ロール体1において、ドライワイパー10の巻き取り方向(
図1の矢印X参照)の強度である。この強度は、JIS L 1913に準拠して測定した。
【0077】
(パルプ比)
ドライワイパー10を構成する不織布のパルプの含有率(パルプ比)は以下の方法に準拠して求めた。ロール体1のドライワイパー10を1cm×1cm四方に裁断して、サンプルとした。このサンプルの質量を測定して、ドライワイパー10の質量とした。そして、サンプルを、酢酸緩衝液(pH4~4.5)700mLに浸し、セルロース分解酵素(商品名「セルラーゼオノズカ3S」、ヤクルト薬品工業社製)を濃度1質量%となるように添加した。そして、40℃、166rpmで12時間遠心分離を行った。その後、サンプルを取り出して、水で洗浄し、乾燥させた。かかる処理後のサンプルの質量を測定し、下記式に基づきパルプの含有率を算出した。
パルプの含有率=(処理前のサンプルの質量(g)-処理後のサンプル(不織布本体)の質量(g))/処理前のサンプルの質量(g)×100
【0078】
<評価方法>
【0079】
作製したドライワイパー10のロール体1を、以下の条件で薬液に含浸させて各種評価を行った。
【0080】
(含浸条件)
薬液として、「清浄・洗浄・除菌用アルコール製剤 アルペットライン」(サラヤ社製)を用い、各実施例及び各比較例のロール体に対し含浸倍率300%となる質量を手付きビーカーへ取り分けた。次に、手つきビーカーの注ぎ口からロール体の上部(天面)へ向け、均一に浸み渡るように回しかけた。
【0081】
(シートの引き出しやすさ)
薬液を含浸したロール体1の中心孔Hから、シート(薬液に含浸されたドライワイパー10)を上方に取り出した。その際の引き出しやすさについて、モニター20人が「よい」又は「悪い」で評価した。そして、以下の基準に基づき評価した。
◎:「よい」が16人以上20人以下であった。
○:「よい」が12人以上15人以下であった。
△:「よい」が6人以上11人以下であった。
×:「よい」がいないか、5人以下であった。
【0082】
(薬液の拡散性)
上述した含浸条件によってロール体1を薬液に含浸させてから15分間静置した。そして、ロール体1からシートを取り出し、以下の方法によって含浸倍率を求めた。
切り取り線12で裁断されたシート(シート1枚の寸法形状:縦230mm×横200mm)1枚をサンプルとし、このサンプルの質量を測定した(絶乾前質量)。続いて、このサンプルの質量が一定になるまで60℃乾燥機内に静置して、絶乾後のサンプルを得た。この絶乾後のサンプルの質量を測定した(絶乾後質量)。そして、下記式に基づき、乾燥状態であるシートの質量に対する、乾燥状態であるシートに含浸させた薬液の質量の倍率(含浸倍率)を求めた。
含浸倍率(%)=(絶乾前質量(g)-絶乾後質量(g))/絶乾後質量(g)×100
そして、サンプル100枚の含浸倍率の標準偏差(σ)÷母平均値(μ)×100を、拡散性の指標とし、以下の基準に基づき、「◎」、「〇」、「△」、「×」で評価した。なお、拡散性の指標は、以下の要領で算出した。
まず、上述した方法によってシート1枚毎の含浸倍率を算出した。
そして、サンプル100枚のデータ(X1~X100)を母集団(N=100)とし、母平均値(μ)を求めた。
続いて、下記式に基づき、母分散(σ2)を求めた。
σ2=1/N×Σ(Xi-μ)2
母分散の平方根を標準偏差(σ)とし、標準偏差(σ)÷母平均値(μ)×100の値を拡散性の指標とした。拡散性の指標の値が小さいほど、サンプル100枚について含浸倍率がより均一であり、薬液の拡散性がより良好であると評価した。
◎:拡散性の指標が0%以上15%以下であった。
○:拡散性の指標が16%以上25%以下であった。
△:拡散性の指標が26%以上35%以下であった。
×:拡散性の指標が36%以上100%以下であった。
【0083】
(拭き取りやすさ)
上述した含浸条件によって薬液を含浸させたシートを用いて、ステンレス板(SUS430プレート)に付着させた疑似汚れ(馬血及びグリース)を拭き取った際の拭き取りやすさを評価した。その際の拭き取りやすさについて、モニター20人が「よい」又は「悪い」で評価した。そして、以下の基準に基づき評価した。
◎:「よい」が16人以上20人以下であった。
○:「よい」が12人以上15人以下であった。
△:「よい」が6人以上11人以下であった。
×:「よい」がいないか、5人以下であった。
【0084】
(コンパクト性)
巻径に対する巻長の値(巻径(
図1のDR、(mm))÷巻長(m))をコンパクト性の指標として数値化し、このコンパクト性の値を、以下の基準に基づき、「◎」、「〇」、「△」、「×」で評価した。
◎:コンパクト性の値が4未満であった。
○:コンパクト性の値が4以上6未満であった。
△:コンパクト性の値が6以上9未満であった。
×:コンパクト性の値が9以上であった。
【0085】
(シートのシワ)
上述した含浸条件によって薬液を含浸させたロール体1からシートを全て引き出して、切り取り線12で裁断されたシート(シート1枚の寸法形状:縦230mm×横200mm)のシワの発生率(シワが発生したシート数÷全シート数×100)を以下の基準で評価した。なお、シワの有無については、シートを全て引き出し後、シートを広げて目視評価し、長さが10mm以上である、又は、幅が2mm以上であるシワをカウントした。
◎:シワの発生率が0%以上30%以下であった。
○:シワの発生率が31%以上40%以下であった。
△:シワの発生率が41%以上50%以下であった。
×:シワの発生率が51%以上100%以下であった。
【0086】
各実施例及び各比較例の条件及び評価結果を、表1及び表2に示す。
【0087】
【0088】
【0089】
以上より、本実施例に係るドライワイパー10のロール体1は、薬液等を含浸又は塗布させた後であっても、シートが引き出しやすく、薬液の拡散性が高く、拭き取りやすく、コンパクトなロール体でありながら、シートにシワが生じないことが少なくとも確認できた。
【符号の説明】
【0090】
1:ドライワイパーのロール体、
10:ドライワイパー、
11:端部、
12:切り取り線、
H:中心孔、
O:中心、
X:巻き取り方向(縦方向)、
Y:横方向、
DI:中心直径(内径)、
DR:外径、
S1:内径面積、
S2:外径面積、
S:断面積