(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
E03D9/08 A
(21)【出願番号】P 2020201099
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西佐古 健太
(72)【発明者】
【氏名】作埜 絢子
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 佳憲
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-003384(JP,U)
【文献】特開2011-256529(JP,A)
【文献】特開2008-285835(JP,A)
【文献】特開2006-132270(JP,A)
【文献】特開2010-077596(JP,A)
【文献】国際公開第2018/054547(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第111827435(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大便器本体の後部に取り付けられるケーシングと、
前記ケーシングを覆った状態である被覆位置と、覆っていた部分が露出した状態になる移動位置とに変位するカバーと、
前記カバーが前記被覆位置から前記移動位置へ変位することを阻止する状態から、前記カバーの前記被覆位置から前記移動位置への変位を許容する状態に解除具によって操作されるロック部と、
を備え
ており、
前記カバーは前記解除具を挿入する孔が形成されており、前記孔に挿入された前記解除具によって前記ロック部は操作され、
前記解除具は、
前記カバーの表面に接触する接触面と、
前記接触面から突出し、前記カバーに形成された前記孔に挿入する凸部と、
を有している便器装置。
【請求項2】
前記ロック部は、
前記ケーシング及び前記カバーの一方に設けられたラッチ部と、
前記ケーシング及び前記カバーの他方に設けられたラッチ掛け部と、
を有しており、
前記ラッチ部は、前記ラッチ掛け部に引っ掛かる状態と前記ラッチ掛け部に引っ掛からない状態との間を移動する請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
前記ロック部は、前記ケーシング及び前記カバーの側面に設けられている請求項1及び2のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項4】
機能部を備えており、
前記カバーが前記移動位置に変位すると前記機能部を操作する操作部が露出する請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載の便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は便器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の便器装置を開示している。この便器装置は、大便器本体の後部に取り付けられるケーシングと、ケーシングの上面を覆うカバーとを備えている。ケーシングは、局部洗浄装置などの機能部を収納している。カバーは、薄板状であり、後縁部に使用者が手を掛けることができる手掛け部を有している。この便器装置は、カバーの手掛け部に手を掛けて、カバーをケーシングから容易に取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の便器装置を有する大便器を不特定多数の者が利用するホテルなどのトイレ室に設置した場合、大便器の使用者などがケーシングからカバーを取り外して、カバーによって覆われていたケーシングの上面を露出させることができる。このため、この便器装置は、ケーシングに収納された機能部などの操作部を、大便器の使用者などに勝手に操作されてしまうおそれがある。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ケーシングのカバーで覆われていた部分を、不特定多数の者が容易に露出させることができない便器装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の便器装置は、大便器本体の後部に取り付けられるケーシングと、前記ケーシングを覆った状態である被覆位置と、覆っていた部分が露出した状態になる移動位置とに変位するカバーと、前記カバーが前記被覆位置から前記移動位置へ変位することを阻止する状態から、前記カバーの前記被覆位置から前記露出位置への変位を許容する状態に解除具によって操作されるロック部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】大便器に取り付けられた実施形態1の便器装置において、カバーが被覆位置に位置してケーシングを覆った状態を示す斜視図である。
【
図2】大便器に取り付けられた実施形態1の便器装置において、カバーが移動位置に位置してカバーが覆っていた部分が露出状態を示す斜視図である。
【
図5】解除具によってロック部を操作した状態を示す要部拡大図である。
【
図6】解除具によってロック部を操作し、カバーを僅かに持ち上げた状態を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
本開示の便器装置10を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、上下方向は、
図1に示すように、大便器1を設置した状態における上下方向である。前後方向は、大便器本体2に便器装置10を取り付けた状態において、ケーシングが取り付けられている側が後方向であり、倒伏した状態の便蓋50の先端側が前方向である。左右方向は、設置した状態の大便器1を前方から見た左右方向である。
図1~
図6において、上方向はX軸の正方向、下方向はX軸の負方向、左方向はY軸の正方向、右方向はY軸の負方向、前方向はZ軸の正方向、後方向はZ軸の負方向である。
【0009】
大便器1は、
図1及び
図2に示すように、大便器本体2と便器装置10とを備えている。便器装置10は、ケーシング30、便蓋50、カバー70、ロック部100、及び図示しない便座を備えている。ケーシング30は、大便器本体2の後部の上面に載せて大便器本体2に取り付けられている。ケーシング30は、図示しない人体検知装置、便器洗浄装置、便座及び便蓋50の自動開閉装置、局部洗浄装置、暖房便座装置、及び脱臭装置などの図示しない機能部を収納している。
【0010】
便座及び便蓋50は、左右後端部の夫々から後方に延びる一対の延出部51を有している。便座及び便蓋50は、各延出部51を左右方向に通る回転軸を中心に回転自在にケーシング30に支持されている。便座及び便蓋50は、図示しない自動開閉装置によって、倒伏した状態と起立した状態との間を回転する。便座及び便蓋50が倒伏した状態において、便座の上方に便蓋50が位置し、便蓋50が便座の上面及び側面を覆っている。便座及び便蓋50の倒伏した状態とは、大便器本体2の上面に沿って倒れた状態を示す。便座及び便蓋50の起立した状態とは、大便器本体2の上面に対して略垂直に立った状態を示す。
【0011】
ケーシング30は、
図2に示すように、上面部31、左右側面部33、及び後側面部35を有している。上面部31は、便座及び便蓋50が倒伏した状態において、便蓋50の一対の延出部51の間で左右方向に延びる便蓋50の後端縁53よりも後方に延びている。上面部31は、便座及び便蓋50が倒伏した状態において、便蓋50の一対の延出部51の後端より後方で左右方向に延びている。
【0012】
図2及び
図3に示すように、上面部31の右側後部に凹部31Aが形成されている。凹部31Aはリモートコントローラ40を着脱自在に収納している。リモートコントローラ40は上面に操作部41及び表示部43が設けられている。リモートコントローラ40はケーシング30の凹部31Aに操作部41及び表示部43が上方を向いた状態で収納される。凹部31Aに収納されたリモートコントローラ40の操作部41及び表示部43は、後述するカバー70がケーシング30から取り外された状態で、露出する。操作部41は、便座及び便蓋50の自動開閉装置の駆動をON-OFFするボタン、局部洗浄装置の洗浄水温度の設定ボタン、暖房便座の便座温度の設定ボタンなど、通常の使用において頻繁に操作しないボタンが設けられている。表示部43は操作部41によって操作される各装置の状態を示している。
【0013】
ケーシング30は上面部31の右側前部に光学式の人体検知センサの投受光窓31Bが設けられている。投受光窓31Bは、上から見た平面視において、略四角形状である。投受光窓31Bはケーシング30の上面部31に突出している。ケーシング30の上面部31は、後述するカバー70をケーシング30に取り付けた際、上から見た平面視において、投受光窓31Bを除いてカバー70の上板部71によって覆われる(
図1参照)。
【0014】
左右側面部33及び後側面部35は、
図2及び
図3に示すように、ケーシング30の上面部31の縁部から下方に延びている。左右側面部33は左右側面上部33Uと左右側面下部33Sとを具備している。左右側面上部33Uは、後述するカバー70をケーシング30に取り付けた際、左右側方から見た側面視において、カバー70によって覆われる。左右側面下部33Sは、カバー70をケーシング30に取り付けているいないにかかわらず、常時、露出している。左右側面上部33Uの外面は左右側面下部33Sの外面に比べて左右内側で広がっている。左右側面上部33Uは、便座及び便蓋50が倒伏した状態において、便蓋50の一対の延出部51の後端よりも後方に設けられている。左右側面上部33Uは前端部に左右方向に貫通した貫通孔33Hが形成されている(
図4~
図6参照)。貫通孔33Hは後述するラッチ部110の爪部113が挿通する。左右側面上部33Uは、後述する左右棚部33Tの上面から上方に延びた細長い突条部33Rが左右両側に2個ずつ前後方向に離れて設けられている。カバー70をケーシング30に取り付けた際、突条部33Rの外側面にカバー70の左右側板部73の内面が接触し、カバー70が位置決めされる。
【0015】
左右側面下部33Sは、倒伏した状態の便蓋50の後部下方及びケーシング30に取り付けられたカバー70の下方に設けられている。左右側面下部33Sの上端縁は、側面視において、後端から前端に向けて斜め下方に傾斜している。右側の左右側面下部33Sの後端上部に便器洗浄ボタンFBが設けられている。ケーシング30は左右側面上部33Uの下端と左右側面下部33Sの上端との間を連結した左右棚部33Tを有している。左右棚部33Tの上面は上方を向いている。左右棚部33Tは左右側面下部33Sの上端縁の後端から前端まで延びている。左右棚部33Tは後端から前端に向けて斜め下方に傾斜している。
【0016】
後側面部35は後側面上部35Uと後側面下部35Sとを具備している。後側面上部35Uは、後述するカバー70をケーシング30に取り付けた際、後方から見た背面視において、カバー70によって覆われる。後側面下部35Sは、カバー70をケーシング30に取り付けているいないにかかわらず、常時、露出している。後側面上部35Uの外面は後側面下部35Sの外面に比べて前側で広がっている。後側面上部35Uの左右両端部は左右側面上部33Uの後端縁に連続している。後側面下部35Sの左右両端部は左右側面下部33Sの後端縁に連続している。ケーシング30は後側面上部35Uの下端と後側面下部35Sの上端との間を連結した後棚部35Tを有している。後棚部35Tの左右両端は左右棚部33Tの後端に連続している。後棚部35Tの上面は上方を向いている。
【0017】
カバー70は、
図1~
図3に示すように、上板部71、左右側板部73、及び後側板部75を有している。上板部71は、上から見た平面視において、外形がケーシング30の上面部31と略相似形状であり、わずかに大きく形成されている。上板部71は、右側前部に略四角形状の開口71Aが形成されている。開口71Aは、カバー70をケーシング30に取り付けた際にケーシング30に設けられた投受光窓31Bに対応する位置に形成されており、投受光窓31Bよりもわずかに大きい。カバー70をケーシング30に取り付けた際、投受光窓31Bが上板部71の開口71Aを挿通して露出し、投受光窓31Bを除いたケーシング30の上面部31が上板部71に覆われる。
【0018】
左右側板部73は上板部71の左右縁部に連続して下方に延びている。左右側板部73は、左右から見た側面視において、外形がケーシング30の左右側面上部33Uと略相似形状に形成されている。カバー70をケーシング30に取り付けた際、ケーシング30の左右側面上部33Uが左右側板部73に覆われる。左右側板部73の前部に左右方向に貫通する丸孔73Aが形成されている。丸孔73Aは後述する解除具200の凸部230を挿入することができる。カバー70をケーシング30に取り付けた際、左右側板部73の外面はケーシング30の左右側面下部33Sの外面と略面一になる。
【0019】
後側板部75は上板部71の後縁部に連続して下方に延びている。後側板部75の左右端部は左右側板部73の後端部に連続している。後側板部75は、後方から見た背面視において、外形がケーシング30の後側面上部35Uと略相似形状に形成されている。カバー70をケーシング30に取り付けた際、ケーシング30の後側面上部35Uが後側板部75に覆われる。カバー70をケーシング30に取り付けた際、後側板部75の外面はケーシング30の後側面下部35Sの外面と略面一になる。
【0020】
ロック部100は、
図2~
図6に示すように、ケーシング30及びカバー70の側面に設けられている。ロック部100は、
図4~
図6に示すように、ラッチ部110と、ラッチ掛け部130とを有している。ラッチ部110はケーシング30の側面に設けられている。ラッチ掛け部130はカバー70の側面に設けられている。
【0021】
ラッチ部110は、
図4~
図6に示すように、本体部111、爪部113、延長部115、リブ部117、及びガイド部119を有している。ラッチ部110の本体部111は、左右外側が閉鎖され、左右内方向に開放した収納空間110Sが形成されている。収納空間110Sは左右方向に延びる円筒状である。収納空間110Sは中心軸が左右方向に延びた圧縮コイルバネSを収納している。
【0022】
爪部113はラッチ部110の本体部111の左右外側の面から外方向に延びている。爪部113の外形は、上下方向の寸法が前後方向の寸法よりも小さい略四角柱形状である。爪部113は先端の前後上端角部が面取りされている。延長部115はラッチ部110の本体部111の収納空間110Sの左右内側の周縁部から内方向に延びている。延長部115は圧縮コイルバネの上側を覆った半円筒状である。リブ部117は、爪部113の下端縁に連続しており、ラッチ部110の本体部111の左右外側の面から爪部113の中間部まで延びている。ガイド部119は、ラッチ部110の本体部111の上端部に連続しており、左右方向及び上下方向に広がった薄板状に形成されている。
【0023】
ラッチ部110は、ケーシング30内に設けられた収納部120内に収納されている。収納部120はケーシング30の左右側面上部33Uの内側に設けられている。収納部120はラッチ部110を左右方向に移動自在に案内している。収納部120は、ラッチ部110のガイド部119が挿入される溝部121が形成されている。ガイド部119は溝部121内を左右方向に移動する。溝部121は前後方向の間隔がガイド部119の厚さよりもわずかに大きく形成されている。このため、ガイド部119は、溝部121内を左右方向に移動する際、前後方向のがたつきが抑えられてスムーズに移動することができる。圧縮コイルバネの弾性力はラッチ部110が左右方向の外側に向けて移動する方向に作用している。
【0024】
ラッチ部110の爪部113はケーシング30の左右側面上部33Uに設けられた貫通孔33Hを挿通している。ラッチ部110は、最も左右外側に位置すると、カバー70がケーシング30に取り付けられた状態において、爪部113がカバー70のラッチ掛け部130の上方に位置し、爪部113の先端部がカバー70に形成された丸孔73Aの内部に内側から挿入した状態になる(
図4参照)。
【0025】
ラッチ掛け部130は、
図4~
図6に示すように、掛かり部131と補強部133とを有している。掛かり部131は、平板状であり、カバー70の左右側板部73の内面に連続してケーシング30内に延びている。掛かり部131の上面はカバー70の左右側板部73に形成された丸孔73Aの直下に水平に広がっている。補強部133は、前から見た正面視において、三角形状であり、左右側板部73の内面に連結しつつ掛かり部131の下面から下方に延びている。補強部133の内側面133Aは上端から下方に向けて左右外方向に傾斜している。補強部133は、掛かり部131に上方から掛かる力を支持して、掛かり部131の変形を防止する。
【0026】
解除具200は、
図7に示すように、本体部210、凸部230、及び帯部250を有している。解除具200の本体部210は、平板状であり、本体部210の表面側から見ると、角部が切り取られた略四画形状である。解除具200の本体部210は裏面の中央部に半球状の出っ張り211が形成されている(
図5及び
図6参照)。凸部230は本体部210の表面の中央部から突出した円柱形状である。凸部230は本体部210の表面に対して垂直方向に延びている。解除具200の本体部210の表面は、凸部230をカバー70に形成された丸孔73Aに挿入すると、カバー70の表面に接触する接触面210Sである。帯部250は、U字形状に湾曲しており、両端部が本体部210の平行に位置する外縁部の夫々に連続し、解除具200の本体部210の裏面側に指先を挿入する空間Xを形成している。
【0027】
凸部230の長さは、
図5及び
図6に示すように、凸部230をカバー70の左右側板部73に形成された丸孔73Aに挿入し、解除具200の本体部210の接触面210Sがカバー70の左右側板部73の表面に接触した状態で、ラッチ部110の爪部113の先端がラッチ掛け部130の掛かり部131よりも内側まで移動する長さであり、且つ凸部230の先端がケーシング30の左右側面上部33Uに設けられた貫通孔33Hに挿入しない長さである。
【0028】
以上説明した便器装置10において、カバー70は、
図1に示すように、ケーシング30に取り付けた状態が、ケーシング30の上面部31、左右側面上部33U、及び後側面上部35Uを覆った状態である被覆位置である。便器装置10のカバー70は、
図2に示すように、ケーシング30から取り外した状態が、カバー70が覆っていたケーシング30の上面部31、左右側面上部33U、及び後側面上部35Uが露出した状態になる移動位置である。
【0029】
<カバー70の取り付け>
カバー70をケーシング30に取り付ける方法は以下に説明する2通りの方法がある。一つの方法はカバー70の後端縁である後側板部75の下端縁をケーシング30の後棚部35Tに合わせて、カバー70の後端縁を回転中心にして回転させるようにカバー70の上板部71の前端部をケーシング30の上面部31の前端部まで下降させて、カバー70をケーシング30に取り付ける。もう一つの方法は、カバー70の前端縁である上板部71の前端縁をケーシング30の上面部31の前端縁に合わせて、カバー70の前端縁を回転中心にして回転させるようにカバー70の後側板部75の下端縁をケーシング30の後棚部35Tまで下降させて、カバー70をケーシング30に取り付ける。
【0030】
カバー70に設けられたラッチ掛け部130の補強部133の傾斜した内側面133Aは、カバー70を回転させるように下降させると、ケーシング30に設けられたラッチ部110の爪部113の先端部に接触し、圧縮コイルバネSの弾性力に抗してラッチ部110を左右内方向に移動させる。ラッチ部110の爪部113は、ラッチ掛け部130の掛かり部131がラッチ部110の爪部113よりも下方に下降すると、圧縮コイルバネSの弾性力によって、左右外方向に移動し、ラッチ掛け部130の掛かり部131よりも上方で掛かり部131に左右方向で重なった状態となる(
図4参照)。
【0031】
ラッチ掛け部130の補強部133の内側面133Aは、カバー70を回転させるように下降させる際、ラッチ部110の爪部113の面取りされた前後上端部に先ず接触する。このため、ラッチ部110の爪部113の先端部は、ラッチ掛け部130の補強部133の内側面133Aをスムーズに摺動することができる。
【0032】
ラッチ部110の爪部113がラッチ掛け部130の掛かり部131よりも上方で掛かり部131に左右方向で重なった状態において、カバー70を持ち上げようとすると、ラッチ部110の爪部113はラッチ掛け部130の掛かり部131が衝突するため、カバー70を取り外すことが阻止される。つまり、ロック部100は、カバー70の被覆位置から移動位置へ変位することを阻止する状態になる。
【0033】
<カバー70の取り外し>
先ず、
図5及び
図6に示すように、左右両手の中指などの指先に解除具200を装着する。つまり、解除具200の本体部210と帯部250とによって本体部210の裏面側に形成された空間Xに指先を挿入する。この際、指先の内側を解除具200の本体部210の裏面側に設けられた出っ張り211に接触させることによって、指先の触覚を利用して、解除具200の凸部230が突出している位置を把握することができる。
【0034】
次に、左右両手の指先に装着した解除具200の凸部230をカバー70の左右側板部73に形成された丸孔73Aに挿入しつつ、カバー70の左右両側を左右両手で挟み込む。解除具200の接触面210Sがカバー70の表面に接触するまで、解除具200の凸部230をカバー70の左右側板部73に形成された丸孔73Aに挿入する。この際、解除具200の凸部230は、ラッチ部110の爪部113の先端部に対して左右外側上方から接触し、ラッチ部110を左右内側に移動させる。ラッチ部110の爪部113の先端部は解除具200の凸部230によって左右外側上方から力を受ける。ラッチ部110は、爪部113が左右外側上方から力を受けても、延長部115とリブ部117が設けられていることによって、収納部120内で傾くことが抑制され、左右内側への移動をスムーズに行うことができる。
【0035】
解除具200の接触面210Sがカバー70の表面に接触するまで解除具200の凸部230を丸孔73Aに挿入すると、ラッチ部110の爪部113の先端は、ラッチ掛け部130の掛かり部131よりも内側まで移動し、解除具200の凸部230の先端は、ケーシング30の左右側面上部33Uに設けられた貫通孔33Hに挿入しない状態になる。この状態において、ロック部100はカバーの被覆位置から移動位置への変位を許容する状態であり、カバー70は、上方に持ち上げられると、ケーシング30から取り外すことができる。
【0036】
以上説明したように、実施形態1の便器装置10は、ケーシング30、カバー70、及びロック部100を備えている。ケーシング30は大便器本体2の後部に取り付けられる。カバー70は、ケーシング30の上面部31、左右側面上部33U、及び後側面上部35Uを覆った被覆位置と、覆っていたケーシング30の上面部31、左右側面上部33U、及び後側面上部35Uが露出状態になる移動位置とに変位する。つまり、カバー70をケーシング30に取り付けた位置が被覆位置であり、カバー70をケーシング30から取り外した状態が移動位置である。ロック部100は、カバー70が被覆位置から移動位置への変位を阻止する。つまり、ロック部100はカバー70がケーシング30から取り外されることを阻止する。ロック部100は、カバー70が被覆位置から移動位置へ変位することを阻止する状態から、カバー70の被覆位置から移動位置への変位を許容する状態に解除具200によって操作される。つまり、ロック部100は、カバー70がケーシング30から取り外されることを許容する状態に解除具200によって操作される。
【0037】
この便器装置10は、カバー70をケーシング30から取り外すためには、解除具200が必要である。このため、便器装置10は、不特定多数の者がケーシング30のカバー70で覆われていた部分を容易に露出させることができない。ひいては、不特定多数の使用者などがケーシング30に収納された機能部などの操作部41を勝手に操作することができない。
【0038】
便器装置10のロック部100は、ラッチ部110とラッチ掛け部130とを有している。ラッチ部110はケーシング30に設けられており、ラッチ掛け部130はカバー70に設けられている。ラッチ部110は、ラッチ掛け部130に引っ掛かる状態とラッチ掛け部130に引っ掛からない状態との間を移動する。このように、ロック部100を簡易な構造で構成することができる。
【0039】
便器装置10のロック部100はケーシング30及びカバー70の側面に設けられている。このため、ロック部100の操作を解除具200によって容易に行うことができる。
【0040】
便器装置10のカバー70は解除具200の凸部230を挿入する丸孔73Aが形成されており、解除具200の凸部230を丸孔73Aに挿入してロック部100を操作する。このように、ロック部100を容易に操作することができる。
【0041】
解除具200は、接触面210Sと、凸部230とを有している。接触面210Sは、カバー70の表面に接触する。凸部230は、接触面210Sから突出し、カバー70に形成された丸孔73Aに挿入する。この解除具200は、接触面210Sをカバー70の表面に接触させることによって、凸部230が丸孔73A内へ挿入しすぎたり、凸部230の挿入が足りなかったりせずに、凸部230の丸孔73A内への挿入を適切に行い、ロック部100を操作することができる。
【0042】
便器装置10は、局部洗浄装置などの機能部を備えており、カバー70がケーシング30から取り外されると、ケーシング30の凹部31Aに着脱自在に収納され、機能部を操作するリモートコントローラ40の操作部41が露出する。カバー70がケーシング30から取り外されると露出するリモートコントローラ40の操作部41に便座及び便蓋50の自動開閉装置のON-OFFボタン、局部洗浄装置の洗浄水温度の設定ボタン、暖房便座の便座温度の設定ボタンなど、通常の使用において頻繁に操作しないボタンを設けることによって、解除具200を持った特定の者のみが操作部41に設けられた各種ボタンを操作することができる。
【0043】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態1に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1の便器装置は、カバーをケーシングから取り外すことによって、覆っていた部分が露出状態になる。これに限らず、カバーは、ケーシングに回転自在に支持され、カバーをケーシングから取り外すことなく回転させて、ケーシングを覆った被覆位置と、覆っていた部分が露出状態になる移動位置に変位させるものであってもよい。
(2)実施形態1の便器装置のロック部は、ラッチ部をケーシングに設け、ラッチ掛け部をカバーに設けている。これに限らず、ラッチ部をカバーに設け、ラッチ掛け部をケーシングに設けてもよい。
(3)実施形態1の便器装置のロック部はケーシングの左右側面上部とカバーの左右側板部に設けられている。これに限らず、ロック部はケーシングの後側面上部とカバーの後側板部に設けてもよい。
(4)実施形態1の便器装置のロック部はケーシング及びカバーの左右側面の夫々に1か所ずつ設けられている。これに限らず、ロック部はケーシング及びカバーの1か所に設けられてもよく、3か所以上に設けられてもよい。
(5)実施形態1の解除具は接触面を有している。これに限らず、解除具は接触面を有していなくてもよい。
(6)実施形態1の解除具は指先を挿入するための空間を形成する帯部を有している。これに限らず、解除具は指先を挿入するための空間を形成せず、2本以上の指先で摘まんだり、挟んだりする部位を設けてもよい。
(7)実施形態1の便器装置は、ケーシングの上面部の凹部に着脱自在に収納されたリモートコントローラの操作部が上方を向いて収納されている。これに限らず、機能部の操作部をケーシングの上面部に直接的に設けてもよい。
【符号の説明】
【0044】
2…大便器本体、10…便器装置、30…ケーシング、41…操作部、70…カバー、73…丸孔(孔)、100…ロック部、110…ラッチ部、130…ラッチ掛け部、200…解除具、210S…接触面、230…凸部