(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】電気式脱イオン水製造装置および脱イオン水の製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/469 20230101AFI20240905BHJP
B01D 61/48 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C02F1/469
B01D61/48
(21)【出願番号】P 2020201780
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 友綺
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慶介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠介
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-177327(JP,A)
【文献】特開2020-078772(JP,A)
【文献】特開平10-258289(JP,A)
【文献】特開2020-157252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/48
C02F 1/469
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に1対のイオン交換膜で区画された脱塩室を備え、前記脱塩室にイオン交換樹脂が充填されている電気式脱イオン水製造装置において、
0.1mm以上0.4mm以下の粒径を小粒径とし、0.4mmを超える粒径を大粒径として、
大粒径の
アニオン交換樹脂の見かけの体積をLとし、小粒径の
アニオン交換樹脂の見かけの体積をSとして、L:Sが1:1から20:1の範囲内である混合比率で前記大粒径の
アニオン交換樹脂と前記小粒径の
アニオン交換樹脂とが混合されている混合粒径層が前記脱塩室内に配置し、
ホウ素を含む被処理水が前記脱塩室に供給されて前記被処理水からホウ素を除去することを特徴とする電気式脱イオン水製造装置。
【請求項2】
前記脱塩室において、前記脱塩室における被処理水の流れに沿って、前記混合粒径層のほか
に大粒径のイオン交換樹脂からなる大粒径層が配置している、請求項
1に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項3】
前記脱塩室において、前記脱塩室
の処理水の出口から、前記被処理水の流れに沿った前記脱塩室の長さの25%の範囲内に、前記混合粒径層の少なくとも一部が含まれる、請求項
2に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項4】
前記被処理水の流れに沿って前記混合粒径層の上流側に、少なくとも1つの前記大粒径層が配置している、請求項
2または
3に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項5】
前記混合粒径層での前記被処理水の流れに沿ったイオン交換樹脂の充填高さの総和が、前記被処理水の流れに沿った前記脱塩室の長さの20%以上である、請求項
2乃至
4のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項6】
前記脱塩室は、前記1対のイオン交換膜との間に位置する中間のイオン交換膜を備えて該中間のイオン交換膜によって第1小脱塩室及び第2小脱塩室に区画され、前記第1小脱塩室及び前記第2小脱塩室のうちの一方の小脱塩室に前記被処理水が供給されて当該一方の小脱塩室から流出する水が他方の小脱塩室に流入するように、前記第1小脱塩室及び前記第2小脱塩室が連通している、請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項7】
第1小脱塩室及び前記第2小脱塩室のうち前記陽極に近い側の小脱塩室にアニオン交換樹脂が充填され、前記陰極に近い側の小脱塩室の一部にカチオン交換樹脂が充填されている、請求項
6に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項8】
前記脱塩室の全域に前記混合粒径層が充填されている、請求項1に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項9】
陽極と陰極との間に直流電圧を印加しながら、前記陽極と前記陰極との間に設けられて1対のイオン交換膜で区画された脱塩室に対してホウ素を含む被処理水を通水させることにより脱イオン水を得る脱イオン水の製造方法において、
0.1mm以上0.4mm以下の粒径を小粒径とし、0.4mmを超える粒径を大粒径として、
前記脱塩室において、大粒径の
アニオン交換樹脂の見かけの体積をLとし、小粒径の
アニオン交換樹脂の見かけの体積をSとして、L:Sが1:1から20:1の範囲内である混合比率で前記大粒径の
アニオン交換樹脂と前記小粒径の
アニオン交換樹脂とが混合されている混合粒径層に前記被処理水を通水させて前記被処理水中のホウ素を除去することを特徴とする、脱イオン水の製造方法。
【請求項10】
前記脱塩室の全域に前記混合粒径層が充填されている、請求項9に記載の脱イオン水の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素を含む被処理水から脱イオン水を製造する電気式脱イオン水製造装置と脱イオン水の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置製造に用いられる超純水などにおいて、ホウ素の含有量のさらなる低減が求められている。水中のホウ素は、通常のイオン交換樹脂によるイオン交換処理によっては除去しにくい弱酸成分である。ホウ素を除去する手段として、逆浸透膜装置やホウ素選択性イオン交換樹脂、電気式脱イオン水製造装置(EDI(Electrodeionization)装置)など知られている。EDI装置は、電気泳動と電気透析とを組み合わせた装置であって、少なくともその脱塩室にはイオン交換樹脂が充填されており、薬剤によってイオン交換樹脂を再生する処理が不要であるという利点を有する。しかしながらEDI装置といえどもホウ素についての十分な除去性能が得られないことがあり、そのような場合には2段のEDI装置を直列に接続して使用することがある。
【0003】
通常のイオン交換樹脂はビーズ状あるいは粒状であってその標準的な粒径は0.4mmを超えて1mm程度以下であるが、EDI装置におけるホウ素の除去性能を向上させるために、より粒径の小さなイオン交換樹脂を脱塩室に充填することが提案されている。例えば特許文献1は、平均粒径が150~250μmであるイオン交換樹脂をEDI装置の脱塩室に単床で充填することを開示する。特許文献2は、平均直径が0.2~0.3mmであるイオン交換樹脂を脱塩室に単床で充填することを開示する。特許文献3,4は、上下方向に被処理水が流通する脱塩室において、上下方向での中間となる領域に平均粒径0.1~0.4mmのイオン交換樹脂を充填し、それよりも上側及び下側の領域に平均粒径が0.4mmを超えるイオン交換樹脂を充填することを開示する。
【0004】
ところでEDI装置の運転時において脱塩室の電気抵抗を低下させて脱塩効率を向上させるためには、脱塩室におけるイオン交換樹脂の充填率を制御することが重要である。特許文献5は、脱塩室の電気抵抗を低下させるために、粒径が異なる複数の均一粒径を有するイオン交換樹脂粒子群を混合して脱塩室に充填することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-150304号公報
【文献】特開2017-176968号公報
【文献】特開2019-177327号公報
【文献】特開2020-78772号公報
【文献】特開平10-258289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホウ素の除去性能を高めるために小粒径のイオン交換樹脂をEDI装置の脱塩室に充填した場合、イオン交換樹脂の粒子の間の空隙が減少するために通水差圧が大きくなる。そのため、高い圧力で被処理水を脱塩室に通水させなければならず、EDI装置の密閉性を向上させる必要が生じる。また、高い圧力で被処理水を通水させることは、EDI装置の耐久性を低下させる。
【0007】
本発明の目的は、脱塩室の通水差圧の上昇を抑制しつつホウ素の除去性能を高めた電気式脱イオン水製造装置(EDI装置)と、そのような脱イオン水の製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気式脱イオン水製造装置は、陽極と陰極との間に1対のイオン交換膜で区画された脱塩室を備え、脱塩室にイオン交換樹脂が充填されている電気式脱イオン水製造装置において、0.1mm以上0.4mm以下の粒径を小粒径とし、0.4mmを超える粒径を大粒径として、大粒径のアニオン交換樹脂の見かけの体積をLとし、小粒径のアニオン交換樹脂の見かけの体積をSとして、L:Sが1:1から20:1の範囲内である混合比率で大粒径のアニオン交換樹脂と小粒径のアニオン交換樹脂とが混合されている混合粒径層が脱塩室内に配置し、ホウ素を含む被処理水が脱塩室に供給されて被処理水からホウ素を除去することを特徴とする。
【0009】
本発明の脱イオン水の製造方法は、陽極と陰極との間に直流電圧を印加しながら、陽極と陰極との間に設けられて1対のイオン交換膜で区画された脱塩室に対してホウ素を含む被処理水を通水させることにより脱イオン水を得る脱イオン水の製造方法において、0.1mm以上0.4mm以下の粒径を小粒径とし、0.4mmを超える粒径を大粒径として、脱塩室において、大粒径のイオン交換樹脂の見かけの体積をLとし、小粒径のイオン交換樹脂の見かけの体積をSとして、L:Sが1:1から20:1の範囲内である混合比率で大粒径のイオン交換樹脂と小粒径のイオン交換樹脂とが混合されている混合粒径層に被処理水を通水させて被処理水中のホウ素を除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脱塩室の通水差圧の上昇を抑制しつつホウ素の除去性能を高めた電気式脱イオン水製造装置(EDI装置)と、そのような脱イオン水の製造方法とを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態のEDI装置を示す図である。
【
図2】第1の実施形態のEDI装置の別の例を示す図である。
【
図3】(a)~(e)は、脱塩室でのイオン交換樹脂の充填例を示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態のEDI装置を示す図である。
【
図5】第2の実施形態のEDI装置の別の例を示す図である。
【
図6】第2の実施形態のEDI装置の別の例を示す図である。
【
図7】第2の実施形態のEDI装置の別の例を示す図である。
【
図8】純水製造システムの構成を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。一般に電気式脱イオン水製造装置(EDI装置)では、陽極と陰極との間に1対のイオン交換膜で区画された脱塩室が設けられ、脱塩室にはイオン交換樹脂が充填される。そしてEDI装置は、陽極と陰極との間に直流電圧を印加した状態で脱塩室に被処理水が供給されたときに被処理水に対する脱塩(脱イオン)処理を行い、その結果、イオン成分が除去された水が処理水として脱塩室から排出される。本発明に基づくEDI装置は、ホウ素を含む被処理水からホウ素を除去するときに好適に用いられるものであって、0.1mm以上0.4mm以下の粒径を小粒径と定義し、0.4mmを超える粒径を大粒径と定義したときに、大粒径のイオン交換樹脂と小粒径のイオン交換樹脂とが以下に説明する混合比率で混合した混合粒径層が脱塩室に配置されたものである。被処理水中のホウ素の濃度は、例えば、1ppb以上100ppb以下である。ビーズ状または粒状のイオン交換樹脂の粒径は、通常、1mm以下であるから、大粒径のイオン交換樹脂として、粒径が0.4mmを超えて1mm以下であるものを使用してもよい。なお、ふるい(篩)を用いてイオン交換樹脂の粒径を測定することもできるが、イオン交換樹脂メーカーのカタログ値を本発明における粒径として使用してもよい。本発明においては、大粒径のアニオン交換樹脂と小粒径のアニオン交換樹脂とを混合してアニオン交換樹脂の混合粒径層としてもよいし、大粒径のカチオン交換樹脂と小粒径のカチオン交換樹脂とを混合してカチオン交換樹脂の混合粒径層としてもよい。
【0013】
混合粒径層における大粒径のイオン交換樹脂と小粒径のイオン交換樹脂との混合比率について説明する。大粒径であっても小粒径であってもイオン交換樹脂はビーズ状または粒状であるから、粒子間の空隙も含めた見かけの体積を測定することができる。そこで、混合前の大粒径のイオン交換樹脂の見かけの体積をL、小粒径のイオン交換樹脂の見かけの体積をSとして、本発明に基づくEDI装置では、L:Sが1:1から20:1の範囲内である混合比率で大粒径のイオン交換樹脂と小粒径のイオン交換樹脂とを混合して混合粒径層を構成する。混合粒径層において、L:Sが5:1から10:1の範囲内である混合比率で大粒径のイオン交換樹脂と小粒径のイオン交換樹脂が混合されていることがより好ましい。大粒径のイオン交換樹脂の比率が高すぎるとホウ素についての十分な除去性能が得られなくなり、小粒径のイオン交換樹脂の比率が高すぎると通水差圧が過度に大きくなる。なお、大粒径のイオン交換樹脂と小粒径のイオン交換樹脂とを混合して混合粒径層を構成したのちにおいても、大粒径のイオン交換樹脂と小粒径のイオン交換樹脂との混合比率を求めることができる。例えば、脱塩室から混合粒径層を取り出し、ふるいを用いて分級して粒径が0.1mm以上0.4mm以下のイオン交換樹脂と粒径が0.4mmを超えるイオン交換樹脂とに分離し、それぞれの見かけの体積を測定することによって、混合比率L:Sを求めることができる。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のEDI装置10を示している。このEDI装置10では、陽極11を備えた陽極室21と、陰極12を備えた陰極室25との間に、陽極室21の側から順に、濃縮室22、脱塩室23及び濃縮室24が設けられている。陽極室21と濃縮室22はカチオン交換膜(CEM)31を隔てて隣接し、濃縮室22と脱塩室23はアニオン交換膜(AEM)32を隔てて隣接し、脱塩室23と濃縮室24はカチオン交換膜33を隔てて隣接し、濃縮室24と陰極室25はアニオン交換膜34を隔てて隣接している。したがって脱塩室23は、陽極11と陰極12との間で1対のイオン交換膜(ここではアニオン交換膜32及びカチオン交換膜33)によって区画されていることになる。脱塩室23にはホウ素を含む被処理水が供給され、被処理水を脱塩処理して得られる処理水(脱イオン水)が脱塩室23から流出する。被処理水中に含まれるホウ素も除去される。脱塩室23の内部にはイオン交換樹脂が充填されるが、ここに示した例では、脱塩室23には、大粒径のアニオン交換樹脂(AER)と小粒径のアニオン交換樹脂とが、混合比率L:Sが1:1~20:1の範囲内で混合された混合粒径層として充填されている。図において、アニオン交換樹脂からなる混合粒径層は、「大・小粒径混合AER」と記載されている。
【0015】
さらにEDI装置10では、カチオン交換樹脂(CER)が陽極室21内に充填され、アニオン交換樹脂が濃縮室22,24及び陰極室25内に充填されている。なお、陽極室21、濃縮室22,24及び陰極室25には必ずしもイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂またはカチオン交換樹脂)を充填する必要はないが、EDI装置10の運転時に陽極11と陰極12との間に印加すべき直流電圧を低くするために、陽極室21、濃縮室22,24及び陰極室25にもイオン交換樹脂を充填することが好ましい。濃縮室22,24は、濃縮室供給水が供給され、濃縮水を排出する。陰極室25には電極室供給水が供給され、陰極室25に供給された電極室供給水は、陰極室25を通過した後に陽極室21に供給され、陽極室21から電極水として排出される。なお、濃縮室と電極室(陽極室21及び陰極室25)を兼ねる構成とすることもできる。
【0016】
一般的にEDI装置は、[濃縮室|イオン交換膜|脱塩室|イオン交換膜|濃縮室]からなる基本構成を陽極と陰極との間に複数個並置することができる。このとき、イオン交換膜を挟んで隣接する2つの濃縮室は、その挟まれているイオン交換膜を除去して単一の濃縮室とすることができる。
図1に示したEDI装置10では、アニオン交換膜32、脱塩室23、カチオン交換膜33及び濃縮室24が1つの基本構成を形成するものとして、陽極室21に最も近い濃縮室22と陰極室25に接するアニオン交換膜34との間にこの基本構成をN(Nは1以上の整数)個配置することができる。基本構成を複数個並置できることは、図において「×N」の記載によって示されている。
【0017】
次に、
図1に示したEDI装置10による脱イオン水(処理水)の製造について説明する。一般的なEDI装置の場合と同様に、濃縮室22,24に濃縮室供給水を通水し、陰極室25に電極水供給水を供給して陽極室21にも電極室供給水を通水させ、陽極11と陰極12との間に直流電圧を印加した状態で、脱塩室23に被処理水を通水する。すると、被処理水中のイオン成分が脱塩室23内のイオン交換樹脂に吸着される脱イオン化(脱塩)が進行し、脱塩室23から処理水として脱イオン水が流出する。大粒径のアニオン交換樹脂を単独で用いた場合にはホウ素の吸着除去を効率よく行うことは難しいが、本実施形態のEDI装置10では、脱塩室23内には小粒径のアニオン交換樹脂を含む混合粒径層が設けられており、被処理水中のホウ素は混合粒径層内の小粒径のアニオン交換樹脂に効率よく吸着されて被処理水から除去される。その結果、ホウ素をほとんど含まない処理水が脱塩室23から流出する。小粒径のアニオン交換樹脂だけを脱塩室23に充填したときもホウ素を除去することができるが、その場合は、後述の実施例からも明らかになるように、脱塩室23での通水差圧が大きく増加する。本実施形態では、大粒径のアニオン交換樹脂と小粒径のアニオン交換樹脂とを混合した混合粒径層としてアニオン交換樹脂を脱塩室23に充填することにより、ホウ素の除去効率を高めながら、脱塩室23の通水差圧の増加を抑制することができる。
【0018】
図2は、第1の実施形態のEDI装置10の別の例を示している。
図2に示すEDI装置10は、
図1に示すEDI装置における脱塩室23を、脱塩室23での被処理水の流れの方向に沿ってほぼ2等分し、上流側すなわち入口側に大粒径のアニオン交換樹脂からなる大粒径層を配置し、下流側すなわち出口側に上述した混合粒径層を配置したものである。図では、アニオン交換樹脂からなる大粒径層を「大粒径AER」と記載している。
図2に示すEDI装置では、ホウ素を含む被処理水は、脱塩室23においてまず大粒径層を通過し、そこで強酸成分や弱酸成分であってもアニオン交換樹脂に比較的吸着しやすい成分が被処理水から除去される。その後、被処理水に含まれるホウ素などの比較的除去しにくい成分は、続いて小粒径のアニオン交換樹脂を含む混合粒径層を通過するときに、アニオン交換樹脂に吸着されて被処理水から除去される。その結果、このEDI装置からも、ホウ素などが十分に除去された処理水が排出される。通水抵抗は大粒径層よりも混合粒径層の方が大きいが、
図2に示すEDI装置では脱塩室23の全体が混合粒径層になっているわけではなく大粒径層も存在するので、
図1に示すEDI装置と遜色のないホウ素除去率を達成しつつ、小粒径のアニオン交換樹脂のみを充填する場合に比べ、通水抵抗の増加を抑制することが可能になる。
【0019】
脱塩室23を区分して大粒径層と混合粒径層とを配置するときは、被処理水の流れの方向に沿った大粒径層と混合粒径層との配置の順番は任意である。大粒径層と混合粒径層は1層ずつ設けられていてもよいし、大粒径層と混合粒径層の少なくとも一方が2層以上設けられていてもよい。しかしながら、被処理水における比較的除去しやすい成分を除去したのちにホウ素などの比較的除去しにくい成分を除去する構成とすることが好ましいから、脱塩室23における処理水の出口に近い位置に混合粒径層を配置することが好ましい。この場合、処理水の出口に接するように混合粒径層を配置してもよいし、処理水の出口から、被処理水の流れに沿った脱塩室23の長さの25%の範囲内に、混合粒径層の少なくとも一部が含まれるようにしてもよい。また、脱塩室23には混合粒径層と大粒径層の両方を配置するとき、それらのうちの混合粒径層の割合は、例えば、混合粒径層での被処理水の流れに沿ったイオン交換樹脂の充填高さの総和として、被処理水の流れに沿った脱塩室23の長さの20%以上であることが好ましい。混合粒径層の割合が少なすぎる場合には、ホウ素の除去性能が低下し、混合粒径層の割合が多すぎる場合には、通水差圧の増加が無視できなくなることがある。本明細書において、大粒径層や混合粒径層における被処理水の流れに沿ったイオン交換樹脂の充填高さのことをその層の充填高さと呼ぶことがある。脱塩室23の長さとは、被処理水の流れに沿った脱塩室23の長さであって脱塩室23においてイオン交換樹脂が設けられている部分の長さをいう。
【0020】
被処理水中のホウ素などの弱酸成分は、混合粒径層を構成するアニオン交換樹脂にイオン交換により吸着した後、アニオンとしてアニオン交換膜32を通過して陽極11側の濃縮室22に移動する。濃縮室22におけるアニオン濃度が低いほど弱酸成分は濃縮室22に移動しやすくなるから、濃縮室22において、アニオン交換膜32を挟んで脱塩室23の混合粒径層に向かい合う位置を流れる水におけるアニオン濃度が低いことが好ましい。また上述したように、脱塩室23において混合粒径層は出口に近い位置に設けられることが好ましい。これらのことから、脱塩室23における出口水の流れと濃縮室22に供給される濃縮室供給水の流れとは向流になっていることが好ましい。
【0021】
図2では、アニオン交換樹脂からなる大粒径層が脱塩室23内のその入口側に配置され、アニオン交換樹脂からなる混合粒径層が脱塩室23内のその出口側に配置されている。上述した説明からも明らかなように、脱塩室23におけるイオン交換樹脂の配置は
図1及び
図2にそれぞれ示されるものに限定されない。
図3(a)~(e)は、脱塩室23とその両側のイオン交換膜だけを抜き出して描くことにより、脱塩室23におけるイオン交換樹脂の配置の別の例を示している。
図3(a)は、
図2に示すEDI装置10における脱塩室23において、脱塩室23の出口に接して大粒径層を小さな充填高さで配置したものであり、混合粒径層は、脱塩室23の入口側の大粒径層と出口側の大粒径層とに挟まれて配置している。
図3(a)に示した例では、混合粒径層の充填高さは脱塩室23の長さの約36%となっており、また出口側の大粒径層の充填高さは脱塩室23の長さの約14%となっている。
【0022】
カチオンであるイオン性不純物を除去するために、アニオン交換樹脂だけでなくカチオン交換樹脂(CER)を脱塩室23に充填してもよい。
図3(b)に示したものは、脱塩室23内に、その入口側からカチオン交換樹脂からなる大粒径層、アニオン交換樹脂からなる大粒径層、カチオン交換樹脂からなる大粒径層及びアニオン交換樹脂からなる混合粒径層をこの順で配置したものである。各層の充填高さはほぼ同一である。
図3(b)に示したものでは、アニオン交換樹脂の陰極12の側での水の解離反応を促進するために、カチオン交換膜33と脱塩室23内のアニオン交換樹脂が接する界面にアニオン交換膜37を配置している。
図3(c)に示した脱塩室23は、
図3(b)に示した脱塩室23において、2つあるカチオン交換樹脂の大粒径層のうちの出口側の大粒径層を、カチオン樹脂からなる混合粒径層に置き換えたものである。カチオン交換膜33に接して設けられるアニオン交換膜37は必ずしも設けなくてもよい。
図3(d)及び
図3(e)に示した構成は、それぞれ、
図3(b)及び
図3(c)の構成からアニオン交換膜37を取り除いたものであり、アニオン交換樹脂がその陰極12側においてカチオン交換膜33と接している。本発明においては、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂のいずれを混合粒径層としてもよいが、ホウ素の除去効率をさらに高めるために、アニオン交換樹脂からなる混合粒径層を設けることが好ましい。
【0023】
(第2の実施形態)
本発明に基づくEDI装置では、脱塩室自体をイオン交換膜によって2つの小脱塩室に区画し、一方の小脱塩室に被処理水を供給し、一方の小脱塩室から流出する水を他方の小脱塩室に供給するように構成することができる。他方の小脱塩室から処理水として脱イオン水が得られる。
図4に示す本発明の第2の実施形態のEDI装置10は、
図1あるいは
図2に示すEDI装置10における脱塩室23を中間のイオン交換膜であるアニオン交換膜36によって2つの小脱塩室26,27に区画し、かつ、脱塩室内のイオン交換樹脂の配置を異ならせたものである。アニオン交換膜36を挟んで陽極11に近い側に配置されるものが第1小脱塩室26であり、陰極12に近い側に配置されるものが第2小脱塩室27である。被処理水は第1小脱塩室26に供給され、第1小脱塩室26からの出口水が第2小脱塩室27に供給される。第2小脱塩室27からの出口水がEDI装置10からの処理水(脱イオン水)である。脱塩室が入口側の第1小脱塩室26及び出口側の第2小脱塩室27に区画されている場合、脱塩室の長さとは、被処理水の流れに沿った、第1小脱塩室26においてイオン交換樹脂が設けられている部分の長さと第2小脱塩室27においてイオン交換樹脂が設けられている部分の長さとの和を意味する。
【0024】
図4に示したEDI装置10において、第1小脱塩室26における流れの向きと第2小脱塩室27における流れの向きとは相互に逆向き、すなわち向流となっている。また陽極11側の濃縮室22での流れの向きはそれに隣接する第1小脱塩室26の流れの向きと同じであり、両者は並流の関係にある。脱塩室としての出口側である第2小脱塩室27での流れの向きとそれに隣接する濃縮室24での流れの向きは向流の関係にある。第1小脱塩室26には、大粒径層としてアニオン交換樹脂が充填されている。第2小脱塩室27では、その入口側にはカチオン交換樹脂が充填され、出口側にはアニオン交換樹脂が混合粒径層として充填されている。カチオン交換樹脂は、通常、大粒径層として設けられるが混合粒径層であってもよい。第2小脱塩室27においてアニオン交換樹脂の混合粒径層とカチオン交換樹脂との境界となる位置は、第2小脱塩室27の長さのほぼ半分、言い換えれば、脱塩室の出口側から測って脱塩室の長さの約25%である位置である。カチオン交換膜33と第2小脱塩室27内のアニオン交換樹脂とが接触する界面にはアニオン交換膜37が設けられている。アニオン交換膜37を設けずに、第2小脱塩室27内のアニオン交換樹脂がカチオン交換膜33に直接接するようにしてもよい。
図4に示したEDI装置10においても、アニオン交換樹脂による混合粒径層を被処理水が通過するので、ホウ素などを効率よく除去することが可能になる。また、少なくともアニオン交換樹脂からなる大粒径層も存在するので、通水差圧の上昇を抑制することができる。
【0025】
脱塩室を中間のイオン交換膜により2つの小脱塩室に区画する第2の実施形態においても、混合粒径層における大粒径のイオン交換樹脂と小粒径のイオン交換樹脂との好ましい混合比率や、脱塩室の長さに対する混合粒径層の充填高さの総和の好ましい比率は、第1の実施形態において説明したものと同様である。第2の実施形態においても、混合粒径層を脱塩室全体としての処理水の出口に近い位置に設けることが好ましく、処理水の出口から脱塩室の長さの25%の範囲内に、混合粒径層の少なくとも一部が含まれるようにしてもよい。
【0026】
図5は、第2の実施形態のEDI装置の別の構成例を示している。
図5に示すEDI装置10は、
図4に示すEDI装置10において、第1小脱塩室26に充填されるアニオン交換樹脂を混合粒径層とし、その代わり、第2小脱塩室27に充填されているアニオン交換樹脂を大粒径層としたものである。
【0027】
図6は、第2の実施形態のEDI装置のさらに別の構成例を示している。
図6に示すEDI装置10は、
図4に示すEDI装置10において、第1小脱塩室26に充填されるアニオン交換樹脂を混合粒径層としたものである。
【0028】
図7は、第2の実施形態のEDI装置のさらに別の構成例を示している。
図7に示すEDI装置10は、
図6に示すEDI装置10において、第1小脱塩室26及び第2小脱塩室27に混合粒径層として充填されるアニオン交換樹脂として、大粒径のアニオン交換樹脂と小粒径であって粒径が均一なアニオン交換樹脂とを混合したものを用いている。図では、小粒径のイオン交換樹脂として均一な粒径のものを用いて構成した混合粒径層を「大・小(均一)粒径混合」と表示している。粒径が均一とはイオン交換樹脂の粒子における粒径のばらつきが小さいことを意味し、例えば均一係数が1.2以下であることを意味する。均一係数とは、イオン交換樹脂の粒子の大きさをふるい分けにより測定して正規分布の状態を対数確率グラフに直線として作図し、ふるい残留百分率累計値が90%および40%に対応するふるいの目開き(mm)を求め、90%に対応する目開き(mm)を有効径としたときに、40%に対応する目開きと有効径の比のことをいう。均一係数の理論的な最小値は1であって、1に近いほど粒径が揃っていると言える。後述の実施例から明らかになるように、混合粒径層において小粒径のアニオン交換樹脂として粒径の揃っているものを使用することより、ホウ素の除去率が向上する。
【0029】
以上、本発明に基づくEDI装置について説明したが。EDI装置は、例えば原水から純水あるいは超純水を製造するときに使用できる。
図8は、上述したEDI装置10を用いた純水製造システムの構成を示すフロー図である。この図では電極や各イオン交換膜は描かれていない。またこの図は、EDI装置10として第1の実施形態のものを用いているように描かれているが、第2の実施形態のEDI装置10を用いることも可能である。原水が供給される逆浸透膜装置(RO)が設けられており、逆浸透膜装置40の内部には逆浸透膜41が設けられている。逆浸透膜装置40において逆浸透膜41を透過しなかった水(RO濃縮水)には不純物が多く含まれており、RO濃縮水は外部にブローされる。逆浸透膜装置40において逆浸透膜41を透過した水(RO透過水)は、不純物を比較的含まない水であり、被処理水としてEDI装置10の脱塩室23に供給される。RO透過水の一部は濃縮室供給水及び電極室供給水として濃縮室22,24及び陰極室25に供給される。陽極室21から排出される電極水は外部にブローされ、濃縮室22,24から排出される濃縮水も外部にブローされる。
【0030】
陽極室21に設けられている陽極(
図8には不図示)と陰極室25に設けられている陰極(
図8には不図示)との間に直流電圧を印加し、被処理水としてRO透過水を脱塩室23に供給することによって、脱塩室23において脱塩処理が行われ、脱塩室23から処理水(脱イオン水)として純水が抽出する。原水中に含まれる弱酸成分、特にホウ素は、逆浸透膜41を透過してRO透過水に含まれやすい。逆浸透膜装置の後段にEDI装置を設けてホウ素などを除去する場合、従来のEDI装置ではホウ素の除去性能が十分ではないのでEDI装置を2段接続することもあるが、上述した各実施形態のEDI装置10を用いることにより、逆浸透膜装置40の後段には1段のEDI装置10を設けるだけで被処理水中のホウ素を十分に除去できる。
【0031】
以上説明したように本発明に基づくEDI装置によれば、大粒径のイオン交換樹脂と小粒径のイオン交換樹脂とを混合した混合粒径層を脱塩室内に配置することにより、ホウ素の除去率を向上させることができ、より高い水質の純水、超純水を得ることが可能になる。EDI装置におけるホウ素の除去率が向上することは、EDI装置の前段に設けられる例えば逆浸透膜装置などの小型化や、EDI装置の後段に設けられる例えばイオン交換装置などの小型化を達成することにつながる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。以下の説明において、大粒径のイオン交換樹脂と小粒径のイオン交換樹脂とを混合して混合粒径層を構成するときの混合比率をL:Sとして表す。Lは、混合前の大粒径のイオン交換樹脂の見かけの体積であり、Sは、混合前の小粒径のイオン交換樹脂の見かけの体積である。
【0033】
(実施例1)
実施例1のEDI装置として、
図1に示すEDI装置10を組み立てた。陽極室21、濃縮室22,24、脱塩室23及び陰極室25にはいずれも10cm×10cmの大きさの開口を有して厚さが1cmである枠形状のセルを用いた。各室のセルにそれぞれイオン交換樹脂を充填し、イオン交換膜を挟んで厚さ方向にこれらのセルを積層することにより、EDI装置を構成した。カチオン交換樹脂(CER)としてDuPont社製のAMBERJET(登録商標) 1020(粒径:0.60~0.70mm、均一係数1.20以下)を用い、陽極室21に充填した。大粒径のアニオン交換樹脂(AER)として、DuPont社製のAMBERJET(登録商標) 4002(粒径:0.50~0.65mm、均一係数:1.20以下)を用いた。小粒径のアニオン交換樹脂として、DuPont社製のDOWEX(登録商標) 1×4 50-100メッシュ アニオン交換樹脂(粒径:0.15~0.3mm、均一係数:1.3以下)を使用した。大粒径のアニオン交換樹脂と小粒径のアニオン交換樹脂とを混合比率L:Sが10:1となるように混合して脱塩室23に混合粒径層として充填した。濃縮室22,24及び陰極室25にも上述の大粒径のアニオン交換樹脂を充填した。
【0034】
脱塩室23に供給する被処理水として、2段の逆浸透膜装置を透過させることで得た透過水に、ホウ素濃度が50ppbとなるようにホウ酸を加えたものを使用した。この被処理水の電気伝導度は0.3~0.4μS/cmであった。流量30L/hで被処理水を脱塩室23に通水し、2段の逆浸透膜装置を透過させて得た透過水を濃縮室供給水として流量10L/hで各濃縮室22,24に流し、電極室供給水として5L/hで陰極室25に供給した。陽極11と陰極12との間に電流が0.5Aとなるように直流電圧を印加して、EDI装置を運転した。そして脱塩室23の出口水すなわち処理水でのホウ素濃度を測定し、EDI装置によるホウ素除去率を求めたところ、96.2%であった。
【0035】
(比較例1)
比較例1のEDI装置として、
図9に示すEDI装置10を組み立てた。
図9に示すEDI装置は、実施例1のEDI装置において、脱塩室23に充填されるアニオン交換樹脂の全体を大粒径層としたものである。使用したセルや使用したカチオン交換樹脂及び大粒径のアニオン交換樹脂は、全て実施例1と同じであり、完成したEDI装置に対し、実施例1と同じ条件で通水し、直流電圧を印加して、処理水でのホウ素濃度を測定した。この測定に基づいてEDI装置のホウ素除去率を求めたところ、95%であった。
【0036】
実施例1及び比較例1の結果より、脱塩室23に充填されるアニオン交換樹脂を混合粒径層とすることにより、ホウ素の除去率が向上することが分かった。
【0037】
(実施例2-1)
上述の
図4に示すEDI装置10を組み立てた。陽極室21、濃縮室22,24、陰極室25、第1小脱塩室26及び第2小脱塩室27には、いずれも、実施例1で用いた枠形状のセルを用い、実施例1と同様にセルを積層することによりEDI装置を構成した。カチオン交換樹脂(CER)、大粒径のアニオン交換樹脂(AER)及び小粒径のアニオン交換樹脂として、それぞれ、実施例1で用いたものと同じものを用いた。大粒径のアニオン交換樹脂を濃縮室22,24及び陰極室25にも充填し、カチオン交換樹脂を陽極室21にも充填した。大粒径のアニオン交換樹脂と小粒径のアニオン交換樹脂とを混合比率10:1で混合して第2小脱塩室27内の出口側に混合粒径層として充填した。
【0038】
第1小脱塩室26に供給する被処理水として、2段の逆浸透膜装置を透過させることで得た透過水に、ホウ素濃度が50ppbとなるようにホウ酸を加えたものを使用した。この被処理水の電気伝導度は0.3~0.4μS/cmであった。流量30L/hで被処理水を脱塩室23に通水し、2段の逆浸透膜装置を透過させて得た透過水を濃縮室供給水として流量10L/hで各濃縮室22,24に流し、電極室供給水として5L/hで陰極室25に供給した。陽極11と陰極12との間に電流が0.5Aとなるように直流電圧を印加して、EDI装置を運転した。そして第2小脱塩室27の出口水すなわち処理水でのホウ素濃度を測定した。また、第1小脱塩室26の入口での被処理水の圧力と第2小脱塩室27の出口での処理水の圧力を測定し、その差を算出することにより、通水差圧を求めた。結果を表1に示す。
【0039】
(実施例2-2)
実施例2-2のEDI装置として、上述の
図5に示すEDI装置10を組み立てた。具体的には実施例2-1と同じセルを使用し、第1小脱塩室26にアニオン交換樹脂を混合粒径層として充填し、第2小脱塩室27の出口側にアニオン交換樹脂を大粒径層として充填することにより、実施例2-2のEDI装置を組み立てた。このEDI装置においては、大粒径及び小粒径のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂としてそれぞれ実施例2-1で使用したものと同じものを使用した。混合粒径層における大粒径のアニオン交換樹脂と小粒径のアニオン交換樹脂との混合比率も実施例2-1と同じである。そして、実施例2-1と同様にEDI装置を運転して、ホウ素の除去率と通水差圧とを求めた。結果を表1に示す。
【0040】
(実施例2-3)
実施例2-3のEDI装置として、上述の
図6に示すEDI装置10を組み立てた。具体的には実施例2-1と同じセルを使用し、第1小脱塩室26にアニオン交換樹脂を混合粒径層として充填することにより、実施例2-3のEDI装置を組み立てた。このEDI装置においては、大粒径及び小粒径のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂としてそれぞれ実施例2-1で使用したものと同じものを使用した。混合粒径層における大粒径のアニオン交換樹脂と小粒径のアニオン交換樹脂との混合比率も実施例2-1と同じである。そして、実施例2-1と同様にEDI装置を運転して、ホウ素の除去率と通水差圧とを求めた。結果を表1に示す。
【0041】
(実施例2-4)
実施例2-4のEDI装置として、上述の
図7に示すEDI装置10を組み立てた。具体的には実施例2-4のEDI装置は実施例1-3のEDI装置と同様のものであるが、第1小脱塩室26及び第2小脱塩室27に充填されるアニオン交換樹脂からなる混合粒径層において使用する小粒径のアニオン交換樹脂として粒径の揃ったものを使用した点で、実施例2-4のEDI装置は実施例2-3のEDI装置と異なっている。具体的には、DuPont社製のDOWEX(登録商標) 1×4 50-100メッシュ アニオン交換樹脂(粒径:0.15~0.3mm、均一係数:1.3以下)をふるいによって分離することにより粒径が約0.3mmの粒子のみを取り出し、これを、混合粒径層を構成する小粒径のアニオン交換樹脂として使用した。このとき、小粒径のアニオン交換樹脂の均一係数は1.15であった。また、混合粒径層における大粒径のアニオン交換樹脂と小粒径のアニオン交換樹脂との混合比率L:Sを5:1とした。そして、実施例2-1と同様にEDI装置を運転して、ホウ素の除去率と通水差圧とを求めた。結果を表1に示す。
【0042】
(比較例2)
比較例2のEDI装置として、
図10に示すEDI装置10を組み立てた。このEDI装置10は、実施例2-1のEDI装置において、第2小脱塩室27に充填されるアニオン交換樹脂を大粒径層としたものである。このEDI装置においては、大粒径のアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂としてそれぞれ実施例2-1で使用したものと同じものを使用した。そして、実施例2-1と同様にEDI装置を運転して、ホウ素の除去率と通水差圧とを求めた。結果を表1に示す。
【0043】
【0044】
表1からも、EDI装置において大粒径のアニオン交換樹脂に小粒径のアニオン交換樹脂を混合した混合粒径層を設けることによってホウ素除去性能が向上することが分かった。混合粒径層に含ませる小粒径のアニオン交換樹脂として均一粒径のものを用いることにより、ホウ素の除去率はさらに向上した。また、脱塩室における被処理水の流れでの出口側(ここで示す例では第2小脱塩室)に混合粒径層を配置することにより、さらにホウ素の除去性能が向上する。大粒径のイオン交換樹脂に小粒径のイオン交換樹脂を混合した場合には通水差圧の上昇が懸念されるが、大粒径のアニオン交換樹脂と小粒径のアニオン交換樹脂との混合比率L:Sが5:1であるかそれよりも大粒径のアニオン交換樹脂の比率が高いときは、大粒径のアニオン交換樹脂のみを用いる場合とほとんど通水差圧が変わらず、通水差圧の増加を抑えられることが分かった。表1からは、脱塩室の出口側から脱塩室の長さの25%の領域をアニオン交換樹脂の混合粒径層とすることにより、通水差圧の増加を抑えつつホウ素除去性能の向上を達成することができることが分かる。
【0045】
(実施例3)
大粒径のイオン交換樹脂と小粒径のイオン交換樹脂とを混合した混合粒径層を設けることによる通水差圧の増加について検討した。直径5cm、長さ5cmの円筒形のカラムを用意し、このカラムに対し、2段の逆浸透膜装置を透過させることで得た透過水を100、140、210及び250L/hの各流量で流した。そのときのカラムの入口での圧力と出口での圧力を求めてその差をカラムがブランク状態のときの通水差圧とした。次に、同じカラムにアニオン交換樹脂を充填してブランク状態のときと同じ流量で透過水を通水し、同様に入口での圧力と出口での圧力を求めて通水差圧を求めた。このとき、アニオン交換樹脂として大粒径のアニオン交換樹脂と小粒径のアニオン交換樹脂とを用意し、これらを単独であるいは混合してカラムに充填した。大粒径のアニオン交換樹脂として、DuPont社製のAMBERJET(登録商標) 4002(粒径:0.5~0.65mm、均一係数:1.20以下)を用い、小粒径のアニオン交換樹脂として、DuPont社製のDOWEX(登録商標) 1×4 50-100メッシュ アニオン交換樹脂(粒径:0.15~0.3mm、均一係数:1.3以下)を使用した。カラムに充填されるアニオン交換樹脂における大粒径のものと小粒径のものとの混合比率L:Sは、0:1(すなわち小粒径のアニオン交換樹脂のみ)、1:1、5:1、10:1、20:1及び1:0(すなわち大粒径のアニオン交換樹脂のみ)であった。
【0046】
カラムでの通水流量ごと、及びカラムに充填されるアニオン交換樹脂における混合比率ごとに、アニオン交換樹脂を充填したカラムの通水差圧からブランク状態のときの通水差圧を差し引き、アニオン交換樹脂だけによる通水差圧を算出し、比較した。さらに、厚さ9mm、幅160mm、高さ280mmのセルによってEDI装置の脱塩室が構成されていることをシミュレートするために、カラムによって求めたアニオン交換樹脂だけによる通水差圧を、セルにおけるアニオン交換樹脂だけの通水差圧に計算により変換した。結果を
図11に示す。
図11では通水差圧は相対値で示されており、相対値における1(基準値)は、EDIにおいて一般的に許容される通水差圧の値を示している。
図11において横軸は、透過水の線流速LVである。
【0047】
図11より、大粒径のアニオン交換樹脂が多く含まれるほど通水差圧が小さくなることが分かる。混合比率L:Sが1:0(大粒径のもののみ)から5:1までの範囲内にあれば、線流速127m/hにおいても通水差圧の上昇は実用的な範囲内に収まった。また線流速が90m/hであれば、混合比率L:Sが1:1であっても通水差圧の上昇を実用的な範囲内に収めることができた。
【0048】
(実施例4)
実施例3と同様に、大粒径のアニオン交換樹脂と小粒径のアニオン交換樹脂とを混合した混合粒径層を設けることによる通水差圧の増加について検討した。ただし実施例4では、小粒径のイオン交換樹脂として、粒径の揃ったものを使用した。実施例3で用いたものと同じ円筒形のカラムを用い、実施例3と同様にブランク状態のときの通水差圧とアニオン交換樹脂を充填したときの通水差圧とを求めた。大粒径のアニオン交換樹脂としては実施例3で用いたものと同じものを使用し、小粒径のアニオン交換樹脂としては、DuPont社製のDOWEX(登録商標) 1×4 50-100メッシュ アニオン交換樹脂(粒径:0.15~0.3mm、均一係数:1.3以下)をふるいによって分離することにより粒径が約0.3mmの粒子のみを取り出して使用した。この使用された小粒径のアニオン交換樹脂の均一係数は1.15であった。カラムに充填されるアニオン交換樹脂における大粒径のものと小粒径のものとの混合比率L:Sは、0:1(すなわち小粒径のアニオン交換樹脂のみ)、1:1、5:1、10:1、20:1及び1:0(すなわち大粒径のアニオン交換樹脂のみ)であった。
【0049】
カラムでの通水流量ごと、及びカラムに充填されるアニオン交換樹脂における混合比率ごとに、アニオン交換樹脂を充填したカラムの通水差圧からブランク状態のときの通水差圧を差し引き、アニオン交換樹脂だけによる通水差圧を算出し、比較した。さらに、厚さ9mm、幅160mm、高さ280mmのセルによってEDI装置の脱塩室が構成されていることをシミュレートするために、カラムによって求めたアニオン交換樹脂だけによる通水差圧を、セルにおけるアニオン交換樹脂だけの通水差圧に計算により変換した。結果を
図12に示す。
図12では通水差圧は相対値で示されており、相対値における1(基準値)は、EDIにおいて一般的に許容される通水差圧の値を示している。
図12において横軸は、透過水の線流速LVである。
【0050】
図12より、混合粒径層を構成する小粒径のイオン交換樹脂として粒径の揃ったものを使用することにより、さらなる通水差圧の低減を図ることができることが分かった。特に、小粒径のイオン交換樹脂の均一係数は1以上1.2以下であることが好ましく、1以上1.15以下であることがより好ましいことが分かった。線速度が100m/hであれば、混合比率L:Sが1:1であっても通水差圧の上昇を実用的な範囲内に収めることができた。
【符号の説明】
【0051】
10 EDI装置
11 陽極
12 陰極
21 陽極室
22,24 濃縮室
23 脱塩室
25 陰極室
26,27 小脱塩室
31,33 カチオン交換膜(CEM)
32,34,36,37 アニオン交換膜(AEM)
40 逆浸透膜装置
41 逆浸透膜