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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】分離装置、および、除去システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/24 20230101AFI20240905BHJP
   B09C 1/00 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
C02F1/24 D
B09C1/00 ZAB
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020203860
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091199
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲郎
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-056426(JP,A)
【文献】特開2017-023892(JP,A)
【文献】特開2003-039066(JP,A)
【文献】実開平06-071524(JP,U)
【文献】特開2019-130484(JP,A)
【文献】特開昭53-054364(JP,A)
【文献】中国実用新案第209687570(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20- 1/26
1/30- 1/38
1/40
B01D 17/00-17/12
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に溶けにくい液体の除去対象を含む処理対象水を受け入れる漏斗形状の受水部と、
前記処理対象水を、前記除去対象と処理水とに分離する、筒状の分離部と、
前記処理水を側壁から放出する、筒状の放出部と、
を備え、
前記受水部は、上に開いた前記漏斗形状の開口部分と、当該開口部分の下部に形成された下端孔と、を有し、
前記受水部の下端孔の下に、前記分離部および前記放出部が順に設置され、または、前記放出部および前記分離部が順に設置され、
前記処理対象水を放出する供給管の一部が、前記受水部の開口部分の外周の内側に沿って設置され、当該供給管の放出口が、前記受水部の内側の円錐面の円周方向に開口したことを特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記受水部の下端孔より大きい第1開口部分と、当該第1開口部分より小さい第2開口部分を有し、当該第2開口部分を、前記分離部または前記放出部の上部分に連結させる連結部を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記分離部が、透明な部材で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分離装置。
【請求項4】
前記分離部が、分離された除去対象を吸い出させる吸出孔を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項5】
前記受水部の下端孔の下に、前記放出部および前記分離部が順に設置され、当該分離部が、前記分離部の底部分の上方に狭窄部分を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項6】
前記受水部の下端孔の下に、前記分離部および前記放出部が順に設置され、当該放出部の下方に狭窄部分と、当該狭窄部分の下方に第2分離部とが形成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項7】
水に溶けにくい液体の除去対象を含む処理対象水を受け入れる漏斗形状の受水部と、前記処理対象水を、前記除去対象と処理水とに分離する、筒状の分離部と、前記処理水を側壁から放出する、筒状の放出部と、を有し、前記受水部は、上に開いた前記漏斗形状の開口部分と、当該開口部分の下部に形成された下端孔と、を有し、前記受水部の下端孔の下に、前記分離部および前記放出部が順に設置され、または、前記放出部および前記分離部が順に設置され、前記処理対象水を放出する供給管の一部が、前記受水部の開口部分の外周の内側に沿って設置され、当該供給管の放出口が、前記受水部の内側の円錐面の円周方向に開口した分離装置と、前記分離装置の前記分離部および前記放出部を内部に有し、前記放出部の側壁から放出された処理水を貯える貯水槽と、を備えたことを特徴とする除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離装置、および、除去システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等の土壌が、汚染物質で汚染されている場合、土壌の浄化作業が行われている。例えば、特許文献1には、硫酸還元菌が存在する汚染土壌に、汚染土壌の温度より高温で過硫酸塩を含有する水を注入井戸から注入し、注入井戸から離れて汚染土壌に設けられた揚水井戸から揚水することにより、汚染土壌を浄化する土壌浄化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-093226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、汚染エリア内の井戸から汲み上げた揚水には、多量の油が含まれることがあり、油を除去する必要がある。水と油とを分離させるための設備を、リース資機材を組み合わせて組み立てると、大型化する傾向があった。そのため、汚染エリア内の既存構造物を残しながら構造物下を浄化する場合、構造物内に設置することが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題点等に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、小型で効率よく油等の除去対象と水とを分離する分離装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、水に溶けにくい液体の除去対象を含む処理対象水を受け入れる漏斗形状の受水部と、前記処理対象水を、前記除去対象と処理水とに分離する、筒状の分離部と、前記処理水を側壁から放出する、筒状の放出部と、を備え、前記受水部は、上に開いた前記漏斗形状の開口部分と、当該開口部分の下部に形成された下端孔と、を有し、前記受水部の下端孔の下に、前記分離部および前記放出部が順に設置され、または、前記放出部および前記分離部が順に設置され、前記処理対象水を放出する供給管の一部が、前記受水部の開口部分の外周の内側に沿って設置され、当該供給管の放出口が、前記受水部の内側の円錐面の円周方向に開口したことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の分離装置において、前記受水部の下端孔より大きい第1開口部分と、当該第1開口部分より小さい第2開口部分を有し、当該第2開口部分を、前記分離部または前記放出部の上部分に連結させる連結部を更に備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の分離装置において、前記分離部が、透明な部材で形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の分離装置において、前記分離部が、分離された除去対象を吸い出させる吸出孔を有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の分離装置において、前記受水部の下端孔の下に、前記放出部および前記分離部が順に設置され、当該分離部が、前記分離部の底部分の上方に狭窄部分を有することを特徴とする。請求項6に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の分離装置において、前記受水部の下端孔の下に、前記分離部および前記放出部が順に設置され、当該放出部の下方に狭窄部分と、当該狭窄部分の下方に第2分離部とが形成されたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、水に溶けにくい液体の除去対象を含む処理対象水を受け入れる漏斗形状の受水部と、前記処理対象水を、前記除去対象と処理水とに分離する、筒状の分離部と、前記処理水を側壁から放出する、筒状の放出部と、を有し、前記受水部は、上に開いた前記漏斗形状の開口部分と、当該開口部分の下部に形成された下端孔と、を有し、前記受水部の下端孔の下に、前記分離部および前記放出部が順に設置され、または、前記放出部および前記分離部が順に設置され、前記処理対象水を放出する供給管の一部が、前記受水部の開口部分の外周の内側に沿って設置され、当該供給管の放出口が、前記受水部の内側の円錐面の円周方向に開口した分離装置と、前記分離装置の前記分離部および前記放出部を内部に有し、前記放出部の側壁から放出された処理水を貯える貯水槽と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分離装置の受水部が、処理対象水を、漏斗形状の開口部分から円周方向に受け入れ、受水部の下端孔から分離部または放出部に落下させることにより、処理対象水が、円筒状に分離部または放出部の内側の側壁に沿って落下して、できるだけ撹乱されず分離部に達するので、比較的短時間で、効率よく液体の除去対象が分離されやすくなる。受水部の下端孔の直径ほどの分離部でよいので、装置を小型にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る除去システムの概略構成の一例を示す模式図である。
図2図1の分離装置の概略構成の一例を示す斜視図である。
図3図1の分離装置の概要構成の一例を示す側面図である。
図4図1の分離装置の設定の一例を示す斜視図である。
図5】実施形態に係る除去システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図6】本実施形態に係る除去システムの変形例を示す模式図である。
図7】本実施形態に係る除去システムの変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、除去システム等に対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0017】
[1.除去システムおよび各装置の構成および機能概要]
(1.1 除去システムの構成および機能概要)
【0018】
まず、本発明の一実施形態に係る除去システムの構成および概要機能について、図1を用いて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る除去システムの概略構成の一例を示す模式図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る除去システム1は、揚水井戸から汲み上げた地下水w1(処理対象水の一例)から油等の水に溶けにくい液体の除去対象を除き処理水を生成する分離装置10と、分離装置10により油が除去された処理水w2を貯留する第1槽20と、第1槽20からの処理水を曝気して加温する第2槽30と、を備える。
【0021】
分離装置10は、揚水井戸から汲み上げた地下水w1を供給する供給管P1から、地下水w1を受け入れる漏斗形状の受水部11と、地下水w1を、除去対象の油分o1と処理水w2とに分離する分離部13と、処理水w2を側壁から放出する放出部15と、を有する。分離部13は、受水部11の下に設置され、受水部11と分離部13とは、第1連結部12によって連結されている。放出部15は、分離部13の下に設置され、分離部13と放出部15とは、第2連結部14によって連結されている。分離部13と放出部15とが上下方向に並んでいる。
【0022】
第1槽20は、処理水w2を貯留する貯留部21と、貯留部21から処理水w2を排出する排出管22と、を有する。第1槽20の形状は、例えば、円柱や四角柱である。第1槽20は、処理水を貯える貯水槽の一例である。
【0023】
第2槽30は、第1槽20からオーバーフローさせた処理水を貯留する貯留部31と、処理水を曝気するバブリング器32と、処理水を加温する加温器33と、曝気され加温された処理水w3を貯留部31から汲み出し、排出管P3に排出するポンプ34と、貯留部31から処理水w3を排出する排出管35と、を有する。第2槽30の形状は、例えば、円柱や四角柱である。ポンプ34には、水面センサ34aが設置されている。第2槽30は、蓋30aにより、上部分が塞がれている。第2槽30に蓋30aを設置することで、ポンプ騒音の軽減、加温効率、曝気効率、防臭効果をアップできる。なお、発生ガスの種別と濃度によっては防爆の観点から蓋30aが外されてもよい。
【0024】
第1槽20と第2槽30とは、連結管P2で接続されている。連結管P2は、第1槽20の側面と第2槽30の側面とを、貯留部21と貯留部31とを所定の高さで接続している。連結管P2の一端が、第2槽30側に突出している。処理水w2が一定の高さに達すると、貯留部21から貯留部31へオーバーフローして、処理水が流れ込む。連結管P2の第2槽30側の一端から、処理水が第2槽30の水面に落下する。連結管P2の一端が、第2槽30側に突出しているので、処理水の落下により曝気が起こり易くなる。
【0025】
ここで、例えば、第1槽20と第2槽30とは、200リットルのドラム缶を使用して作製される。
【0026】
(1.2 分離装置10の構成および機能)
次に、分離装置10の構成および機能について、図を用いて説明する。
【0027】
図2は、分離装置10の概略構成の一例を示す斜視図である。図3は、分離装置10の概要構成の一例を示す側面図である。
【0028】
図2に示すように、受水部11は、開口部分11aと下端孔11bとを有する漏斗形状である。受水部11の内面は、頂角が鈍角の円錐面の一部である。図3に示すように、開口部分11aの内径d1に対して、下端孔11bは内径d2である。
【0029】
受水部11の材質は、例えば、樹脂、金属等である。開口部分11aの内径d1は、例えば、500[mm]で、下端孔11bの内径d2は、130[mm]である。
【0030】
分離部13は、図2に示すように、透明の円筒形である。例えば、分離部13の材質はアクリルである。図3に示すように、分離部13の内径d4は、下端孔11bの内径d2とほぼ同じか、または、下端孔11bの内径d2より小さい。分離部13の内径d4は、例えば、107[mm]である。分離部13の内側の形状は、下端孔11bから落下した地下水が、壁伝いに落ちる形状ならばよいので、例えば、楕円柱、四角柱でもよい。分離部13の内側の形状は、鉛直方向で大きさが多少変わってもよい。
【0031】
図2に示すように、分離部13の側壁には、分離された油分o1を取り出す取出管D1が取り付けられている。取出管D1の一部が、アクリルのような透明な材質である。分離部13の側壁の所定の高さの位置に、分離された油を吸い出させる吸出孔が形成され、取出管D1が取り付けられる。分離装置10に回収されて、分離して溜まった油分o1が、分離部13の筒の中で分離した場合に分離、回収ができる。
【0032】
図2に示すように、複数の高さに、取出管D1が取り付けられていてもよい。例えば、上段の取出管D1は、水面直下に取り付けられ、中段の取出管D1は、上段の取出管D1の25mm下、下段の取出管D1は中段の取出管D1の25mm下に設置される。分離された油分o1の量、高さ、質等によって、取出管D1が選択されてもよい。分離して溜まった油の厚さ、または、量によって最も効率的な取出管D1を選択できる。また、油分o1の粘性が高く追従性が悪い場合に上段の取出管D1では水面付近のエアを吸い込みサイフォンにならないため中段の取出管D1に切り替えて回避してもよい。また、油分o1の上部に有機物などが浮遊している場合は中段の取出管D1を使って有機物吸い込みによる管の詰まりを回避してもよい。
【0033】
図1に示すように、第1槽20の外に、取出管D1は、パイプやホース等で延長され、取出管D1の末端部は、処理水w2の水面より低くなっている。管D1の末端部にコックが取り付けられていて、油分o1が分離部13に貯まると、コックを開き、サイフォンの原理により回収される。
【0034】
放出部15は、図2に示すように、円筒形である。図3に示すように、放出部15の内径は、分離部13の内径d4とほぼ同じである。放出部15は、放出部15の円筒の側壁に、複数の孔15pを有する。放出部15の材質は、例えば、塩化ビニールである。放出部15の底面は、複数の孔15pを有してもよい。
【0035】
第1連結部12の断面は、図2に示すように、円形である。第1連結部12は、図3に示すように、第1連結部12の第1開口部分の内径d3が、下端孔11bの内径d2より大きい。第1連結部12の第2開口部分の内径が、内径d4の分離部13を嵌め込むことができる大きさである。第1連結部12は、第1連結部12の第1開口部分の大きさから、第1連結部12の第2開口部分の大きさまで、徐々にすぼまるテーパ部分12aを有する。第1開口部分の内径d3は、例えば、215[mm]である。
【0036】
第2連結部14は、図2に示すように、円筒形である。第1連結部12の内径が、内径d4の分離部13と、内径d4の放出部15と、を嵌め込むことができる大きさである。
【0037】
図2および図3に示すように、取出管D1の端部には、取出管D1を延長するための連結パーツが取り付けられている。
【0038】
次に、第1槽20の中に分離装置10を設置して、地下水w1を流す供給管P1を設置した状態を、図4を用いて説明する。図4は、分離装置10の設定の一例を示す斜視図である。
【0039】
図4に示すように、第1槽20の貯留部21に分離装置10を設置して、固定される。分離装置10は、例えば、第2連結部14の表面から3方向に伸びる3本の固定部材(図示せず)により、第1槽20の内部に固定される。例えば、固定部材の両端と、第2連結部の外壁および貯留部21の内壁とを、ボルト等で固定する。第1槽20は、分離装置10の分離部13および放出部15を内部に有している。
【0040】
供給管P1は、例えば、軟質塩化ビニール製のホースである。供給管P1の先端には、部材Eが取り付けられている。例えば、部材Eは、ゴム板を捻った部材で、供給管P1の先端にワイヤ等が巻かれて、固定されている。部材Eが取り付けられた供給管P1は、受水部11の開口部分11aの外周の内側に、1周するように、設置される。
【0041】
[2.除去システムの動作例]
次に、除去システムの動作例について、図を用いて説明する。
【0042】
図5は、実施形態に係る除去システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【0043】
まず、第1槽20の貯留部21に、連結管P2の高さまで水が入れられている。また、サイフォンが働くように、管Dの中に水等の液体が満たされている。また、第2槽20の貯留部31に、バブリング器32および加温器33が作動する程度まで、水が入れられていてもよい。
【0044】
図5に示すように、除去システム1は、揚水井戸から処理対象水の一例である地下水を汲み上げる(ステップS1)。具体的には、汲み上げポンプが、揚水井戸から、土壌中の油を含む地下水を汲み上げ、分離装置10に地下水w1を、供給管P1を通して、供給する。
【0045】
地下水w1の供給量や供給時間は、地下水w1に含まれる油等の除去対象の量や、油等の除去対象の性質、分離装置10の処理能力により、設定される。除去システム1が、タイマー等で間欠的に、地下水w1を供給する。除去システム1が、所定の時間、地下水w1を供給し、所定時間供給を止める。なお、井戸に染み出す地下水の量に応じて、地下水w1の供給を連続にしてもよい。特に、染み出す地下水が多量の場合、地下水w1の供給を連続にすることが好ましい。
【0046】
次に、除去システム1は、受水部11に地下水w1を円周方向に流し込み、渦巻き状にして、下端孔11bから落下させる(ステップS2)。具体的には、供給管P1の先端の部材Eの部分から放出された地下水w1が、受水部11の円周方向に流し込まれる。供給管P1の先端から出た地下水w1が、受水部11から外へ流れるのを、部材Eが防止している。
【0047】
放出された地下水w1が、重力により、受水部11の内側の円錐面を渦状に螺旋を描いて下方に移動して行く。地下水w1が下端孔11bに達すると、下端孔11bの円周付近から、円柱状に捻れながら、落下する。すなわち、下端孔11bの中心部分は、空洞になる形状で、地下水w1が落下する。
【0048】
円柱状に落下した地下水w1は、第1連結部12のテーパ部分12aに落下する。地下水w1が、第1連結部12の内壁に沿って分離部13まで落下し、分離部13の水面または油面に達する。分離部13内の水面または油面は、ほぼ、第1槽20の処理水w2の水面の高さである。
【0049】
次に、除去システム1は、分離部13で油分o1と処理水w2とに、地下水w1を分離する(ステップS3)。具体的には、分離装置10の分離部13が、油分o1と、処理水w2との2層に分離させる。分離部13の中で、比重が軽い油分o1が、浮き、比重が重い処理水w2が下方になる。
【0050】
分離した処理水w2は、供給管P1から供給された地下水w1の分、放出部15の孔15pから、第1槽20の貯留部21内に供給される。
【0051】
一方、油分o1は、徐々に分離部13内に貯まってくる。第1槽20の上部から透明の分離部13を観察して、油分o1の量を測かる。油分o1が所定量貯まってきた場合、地下水w1の供給を止めているときに、取出管D1のコックを開いて、サイフォンの原理により、分離部13から油分o1が吸い出され、油分o1を回収する。なお、貯まった油の量に応じて、複数の取出管D1のうちから、1つを選択してもよい。また、サイフォンでなく、真空ポンプ等の陰圧により、油分o1が吸い出されてもよい。
【0052】
次に、除去システム1は、第1槽20から第2槽30へオーバーフローさせる(ステップS4)。具体的には、放出部15の孔15pから処理水w2が供給された分、連結管P2を通して、処理水w2が、第2槽30へ流れる。連結管P2から、第2槽30内の貯留部31に流れ落ちる。
【0053】
次に、除去システム1は、第2槽30で処理水を曝気、加温する(ステップS5)。具体的には、第2槽30のバブリング器32が、処理水w3に空気中の酸素を供給し、加温器33が、処理水w3を加温する。例えば、微生物が活動しやすい温度より多少高めに加温しておく。なお、汚染物質を分解する微生物や、微生物の栄養が、第2槽30の中に供給されてもよい。
【0054】
次に、除去システム1は、処理水w3を注水井戸に注入する(ステップS6)。具体的には、処理水w3の水面の高さが、水面センサ34aまで達すると、ポンプ34が作動する。ポンプ34が、処理水w3を汲み上げ、排出管P3を通して、処理水w3を注水井戸に注入する。
【0055】
除去システム1を撤収する際は、第1槽20の排出管22と、第2槽30の排出管35とを開けて、貯まっている処理水を抜く作業を行う。
【0056】
実施形態に係る分離装置10によれば、受水部11が、油分o1を含む地下水w1を、漏斗形状の開口部分11aから円周方向に受け入れ、受水部11の下端孔11bから分離部13に落下させることにより、油分o1を含む地下水w1が、円筒状に分散して落下して、分離部13の水面に達するので、地下水w1ができるだけ撹乱されず、比較的短時間で、効率よく油が分離されやすくなる。また、受水部11の下端孔11bの直径ほどの分離部13でよいので、装置を小型にできる。また、従来大型化が避けられなかった汚染土壌浄化システムの分離装置10をコンパクトにすることで構造物内での設置面積を小さくできる。
【0057】
実施形態に係る除去システムによれば、油分o1を含む地下水w1を受け入れる漏斗形状の受水部11と、油分o1を含む地下水w1を、油分o1と処理水w2とに分離する分離部13と、処理水w2を側壁から放出する放出部15と、を有し、受水部11が、油分o1を含む地下水w1を、漏斗形状の開口部分11aから円周方向に受け入れ、受水部11の下端孔11bから分離部13に落下させる分離装置10と、分離装置10の分離部13および放出部15を内部に有し、放出部15の側壁から放出された処理水w2を貯える貯水槽(第1槽20)と、を備えることにより、貯水槽が、分離装置を内部に有するので、除去システムを小型化できる。
【0058】
受水部11の下端孔11bより大きい第1開口部分と、当該第1開口部分より小さい第2開口部分を有し、当該第2開口部分を、分離部13の上部分に連結させる連結部12を更に備えた場合、地下水w1が、分離部13に、内壁伝いに滑らかに流れ込むので、油を含む地下水w1ができるだけ撹乱されず供給でき、比較的短時間で、効率よく油が分離されやすくなる。また、連結部12を介することで、下端孔11bから分離部13まで、内壁伝いに、より滑らかに、地下水w1を流れ込ませることができる。
【0059】
分離部13が、透明な部材で形成されている場合、外部から油分o1の貯まり具合が分かり、分離された油分o1を排出するタイミングが分かる。分離部13および取出管D1の一部を透明にすることで、装置内の油回収量を目視で確認できる。
【0060】
分離部13が、分離された油を吸い出させる吸出孔を有する場合、分離装置10内に分離された油分o1を、サイフォン等によって効果的に回収できる。
【0061】
従来の油水分離槽における油分の回収は、多くの場合、油吸着マットを使って、吸収・吸着を行い、マットは産廃処分されていた。粘性の高い油、機械油系の重質油は殆どマットに吸着されないため、吸着マットの交換回数が増え、マットの産廃処分量も非常に多く、環境負荷は甚大であり、処分コストも課題であった。しかし、本願の吸出孔に接続された取出管D1によって、油分o1を回収することにより、環境負荷低減を図ることができる。
【0062】
分離部13と放出部15とが円筒形であり、分離部13と放出部15とが上下方向に並んでいる場合、内壁伝いに、より滑らかに流れ込むので、油を含む地下水w1ができるだけ撹乱されず供給でき、比較的短時間で、効率よく油が分離されやすくなる。
【0063】
(変形例)
次に、分離装置の変形例について、図を用いて説明する。なお、前記実施形態と同一または対応する部分には、同一の符号を用いて異なる構成および動作のみを説明する。
【0064】
図6および図7は、本実施形態に係る除去システムの変形例を示す模式図である。
【0065】
図6は、処理対象水の一例である地下水w1にトリクロロエチレン等の水より比重が重い揮発性有機化合物VOCs(Volatile Organic Compounds)等が含まれる場合の除去システム1Aである。VOCsは、水に溶けにくい液体の除去対象の一例である。
【0066】
図6に示すように、除去システム1Aは、地下水w1からVOCs等の油を除き処理水を生成する分離装置10Aと、第1槽20と、第2槽30と、第1槽20および第2槽30を底上げする台Bと、を備える。
【0067】
分離装置10Aは、受水部11と、地下水w1を、VOCs等の水より比重が重い成分o2(水に溶けにくい液体の除去対象の一例)と処理水w2とに分離する分離部13Aと、処理水w2を側壁から放出する放出部15Aと、を有する。
【0068】
放出部15Aは、受水部11の下に設置され、受水部11と放出部15Aとは、第1連結部12によって連結されている。分離部13Aは、放出部15Aの下部分に設置され、放出部15Aと分離部13Aとは、第2連結部14によって連結されている。分離装置10Aにおいて、放出部15Aが上部にあり、分離部13Aが下部にある。
【0069】
放出部15Aの孔15pは、処理水w2の水面より下に形成されている。
【0070】
分離部13Aは、吸出孔に向かって比重が水より重い成分o2が集まるように底面に傾斜を設けたテーパ底部分16と、分離して落下して行く成分o2がテーパ底部分16に達するまでに隘路を形成する狭窄部分17と、を有する。分離部13Aが、分離部13Aの底部分の上方に狭窄部分17を有する。狭窄部分17の通路の大きさは、成分o2が十分通過できる大きさならばよい。狭窄部分17は、複数あってもよい。狭窄部分17は、板状であって、成分o2が十分通過できる大きさの少なくとも1つの孔を有してもよい。
【0071】
分離部13Aは、テーパ底部分16の側面に、分離された成分o2を吸い出させる吸出孔を有する。この吸出孔には、取出管D2が接続されている。図6に示すように、取出管D2の排出口の高さは、サイフォンの原理が働くように分離部13Aの底面の高さより低くなっている。
【0072】
次に、除去システム1Aの動作について説明する。
【0073】
ステップS2において、下端孔11bから落下した地下水w1は、放出部15Aの上部分の内壁伝いに落下して水面に達する。
【0074】
ステップS3において、成分o2と処理水w2とに、地下水w1が分離する。具体的には、比重が水より重い成分o2は、放出部15A内および分離部13A内で沈んで行き、狭窄部分17に達する。成分o2は、狭窄部分17を通過して、テーパ底部分16に貯まる。
【0075】
地下水w1の供給を止めているときに、取出管D2のコックを開いて、サイフォンの原理により、分離部13Aから底に所定量貯まった成分o2が吸い出され、成分o2を回収する。
【0076】
実施形態に係る分離装置10Aによれば、受水部11が、水に溶けにくい液体の除去対象を含む地下水w1を、漏斗形状の開口部分11aから円周方向に受け入れ、受水部11の下端孔11bから放出部15Aに落下させることにより、水に溶けにくい液体の除去対象を含む地下水w1が、円筒状に分散して落下して、放出部15Aの水面に達し、地下水w1ができるだけ撹乱されず、成分o2が分離して沈みながら分離部13Aに達するので、比較的短時間で、効率よく除去対象が分離されやすくなる。
【0077】
分離部13Aが、放出部15Aの下部分に設置された場合、水より重たい成分o2を分離できる。
【0078】
分離部13Aが、分離部13Aの底部分の上方に狭窄部分17を有する場合、放出部15Aでの液体の動きの影響を受けにくくなり、効率よく除去対象が分離されやすくなる。
【0079】
受水部11の下端孔11bより大きい第1開口部分と、当該第1開口部分より小さい第2開口部分を有し、当該第2開口部分を、放出部15Aの上部分に連結させる連結部12を更に備えた場合、地下水w1が、放出部15Aに、内壁伝いに滑らかに流れ込むので、除去対象を含む地下水w1ができるだけ撹乱されず供給でき、比較的短時間で、効率よく除去対象が分離されやすくなる。また、連結部12を介することで、下端孔11bから放出部15Aまで、内壁伝いに、より滑らかに、地下水w1を流れ込ませることができる。
【0080】
次に、地下水が、水より比重が軽い成分と、水より比重が重い揮発性有機化合物VOCsと、を含む場合の除去システム1Bについて、図7を用いて説明する。
【0081】
図7に示すように、除去システム1Bは、地下水w1から、水より比重が軽い油分と、水より比重が重い揮発性有機化合物VOCsとを除いた処理水を生成する分離装置10Bと、第1槽20と、第2槽30と、第1槽20および第2槽30を底上げする台Bと、を備える。
【0082】
分離装置10Bは、受水部11と、油分o1を浮かせて分離する分離部13Bと、成分o2を沈ませて分離する分離部13Cと、処理水w2を側壁から放出する放出部15Bと、を有する。
【0083】
受水部11と分離部13Bとは、第1連結部12によって連結されている。分離部13Bと放出部15Bとは、第2連結部14によって連結されている。放出部15Bの下方の狭窄部分17の下方に、分離部13Cが形成される。
【0084】
分離装置10Bは、分離装置10と、分離装置10Aとを組み合わせた装置である。分離装置10Bにおいて、分離部13B、放出部15B、分離部13Cの順で、上から並んでいる。分離部13Bは、分離部13とほぼ同じ構成である。分離部13Cは、分離部13Bとほぼ同じ構成である。放出部15Bは、放出部15とほぼ同じ構成であり、放出部15Aのように、傘部分を有してもよい。
【0085】
ステップS2において、下端孔11bから落下した地下水w1は、分離部13Bの上部分の内壁伝いに落下して水面に達する。水より軽い油分o1は、浮いて、分離部13Bに貯まる。一方、水より重い成分o2は、水中を沈み、分離部13Cの底に貯まる。
【0086】
貯まった油分o1は、取出管D1により回収される。貯まった成分o2は、取出管D2により回収される。
【0087】
さらに、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0088】
1、1A、1B:除去システム
10、10A、10B:分離装置
11:受水部
11a:開口部分
11b:下端孔
13、13A、13B、13C:受水部
15、15A、15B:放出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7