(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20240905BHJP
B61L 3/12 20060101ALI20240905BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240905BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
B61L3/12 Z
B60L3/00 Q
(21)【出願番号】P 2020207571
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 紗葵
(72)【発明者】
【氏名】今井 達二己
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-052738(JP,A)
【文献】特開2020-064570(JP,A)
【文献】特開2019-041207(JP,A)
【文献】特開平10-203361(JP,A)
【文献】特開2016-159796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/00
B61L 3/12
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅のホームの縁部に沿った領域のうち前記ホームに横付けされる車両のド
アから遠い方にある内側領域
において検知された物体の数を計上し、
前記内側領域と対応付けたテーブルを用いて該数に応じて所定時間を決定し、
前記内側領域における物体の検知から前記所定時間の経過後の
前記ドアに近い方にある外側領域における物体の検知結果に基づき、前記ドアの閉鎖の可否を判定する
情報処理装置。
【請求項2】
前記内側領域において検知された物体の移動方向に応じて前記所定時間を決定する
請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記内側領域において検知された物体の移動速度に応じて前記所定時間を決定する
請求項
1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記内側領域における物体の検知後、乗車を促す通知を行う
請求項1から
3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記内側領域及び前記外側領域における物体の検知結果に基づき、前記ホームに設置されているホームドアの閉鎖の可否を判定する
請求項1から
4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を安全且つ迅速に駅から出発させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を安全且つ迅速に駅から出発させる技術として、特許文献1には、ホームに設置されたカメラによりホームと列車との境界付近を撮像し、撮像された映像を無線通信により列車に送信し、送信されてきた映像を列車が受信して、列車の運転席に設置された液晶ディスプレイにその映像を表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホームに停車した車両を安全に出発させるためには、車両に接触しそうな人や荷物などの物体がないことを確認しなければならない。特に、車両のドア付近はそれらの物体が最も頻繁に通過する領域なので、物体有無の確認が重要である。ただし、その領域よりも車両のドアから離れた領域にある物体であっても、急遽車両に向けて移動してくる可能性があるから、確認しておくことが望ましい。
本発明は、上記の背景に鑑み、物体の有無の判定を車両のドア付近の領域だけで行う場合に比べて、車両の出発時の安全性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、駅のホームの縁部に沿った領域のうち前記ホームに横付けされる車両のドアから遠い方にある内側領域において検知された物体の数を計上し、前記内側領域と対応付けたテーブルを用いて該数に応じて所定時間を決定し、前記内側領域における物体の検知から前記所定時間の経過後の前記ドアに近い方にある外側領域における物体の検知結果に基づき、前記ドアの閉鎖の可否を判定する情報処理装置を第1の態様として提供する。
【0006】
第1の態様の情報処理装置によれば、物体の有無の判定を車両のドア付近の領域だけで行う場合に比べて、車両の出発時の安全性を高めることができる。また、この情報処理装置によれば、所定時間が一定の場合に比べて、判定の処理の負荷を少なくしつつ、出発時刻をなるべく早くすることができる。また、この情報処理装置によれば、所定時間の待機を行わない場合に比べて、車両のドアの閉鎖の可否を判定する処理の負荷を小さくすることができる。
【0011】
上記の第1の態様の情報処理装置において、前記内側領域において検知された物体の移動方向に応じて前記所定時間を決定する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0012】
第2の態様の情報処理装置によれば、所定時間が一定の場合に比べて、判定の処理の負荷を少なくしつつ、出発時刻をなるべく早くすることができる。
【0013】
上記の第1又は第2の態様の情報処理装置において、前記内側領域において検知された物体の移動速度に応じて前記所定時間を決定する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0014】
第3の態様の情報処理装置によれば、所定時間が一定の場合に比べて、判定の処理の負荷を少なくしつつ、出発時刻をなるべく早くすることができる。
【0015】
上記の第1から第3のいずれか1の態様の情報処理装置において、前記内側領域における物体の検知後、乗車を促す通知を行う、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0016】
第4の態様の情報処理装置によれば、本発明の通知が行われない場合に比べて、内側領域に物体がないと検知されるタイミングを早めることができる。
【0017】
上記の第1から第4いずれか1の態様の情報処理装置において、前記内側領域及び前記外側領域における物体の検知結果に基づき、前記ホームに設置されているホームドアの閉鎖の可否を判定する、という構成が第5態様として採用されてもよい。
【0018】
第5の態様の情報処理装置によれば、ホームドアの閉鎖の可否を判定しない場合に比べて、ホームドアを安全に閉じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例に係る運行支援システムの構成を表す図
【
図6】閉鎖確認処理における動作手順の一例を表す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[1]実施例
図1は実施例に係る運行支援システム1の構成を表す。運行支援システム1は、列車の運行を支援するシステムである。運行支援システム1は、具体的には、駅のホームに停車した列車における乗客の乗降が終わった後、その列車を安全且つ迅速に出発させるための処理を行う。運行支援システム1は、通信回線2と、サーバ装置10と、車両装置20と、複数の撮像装置30と、ホームドア装置40と、スピーカ装置50とを備える。
【0021】
通信回線2は、移動体通信網及びインターネット等を含む通信システムであり、自システムと通信する装置等(=装置、端末及びシステム等)同士のデータのやり取りを中継する。通信回線2には、サーバ装置10、撮像装置30、ホームドア装置40及びスピーカ装置50が有線通信で接続しており、車両装置20が無線通信で接続している。なお、各装置と通信回線2との通信は、
図1の例に限定されず、有線通信及び無線通信のどちらでもよい。
【0022】
サーバ装置10は、前述した列車を安全且つ迅速に出発させるための処理を行う。サーバ装置10は、具体的には、ホームを監視して、運転士に対して、乗降する乗客又は荷物等の物体がドア(車両のドア及びホームドアのどちらでも)の近くに残っている場合は出発しては危険な状態であることを報知し、それらの物体が残っていない場合は出発してもよい状態であることを報知する報知処理を行う。
【0023】
車両装置20は、列車の車両に搭載された、運転士による車両の運転を支援する処理を行う装置である。車両装置20は、例えば、運転席に設けられたディスプレイを有し、そのディスプレイに車両の速度及び位置等を表示する。サーバ装置10は、上述した報知の内容を示す報知情報を車両装置20に出力する処理を報知処理として行う。車両装置20が出力されてきた報知情報を表示することで、運転士に対する報知が行われる。
【0024】
複数の撮像装置30は、駅のホームにそれぞれ設置され、ホームにいる人や物を撮影する。スピーカ装置50は、駅のホームに設置され、入力された信号が示す音を放出する。ホームドア装置40は、駅のホームに設置された柵及びドア(以下「ホームドア」と言う)を有し、列車が駅に停車する際のホームドアの開閉を制御する。ホームドア装置40は、物体検知センサ41を有しており、後述するホーム内の定められた領域に人や物などの物体があるか否かを検知する。
【0025】
物体検知センサ41としては、例えば、画素毎の距離を表す距離画像を撮影可能な距離画像センサが用いられる。なお、物体検知センサ41は、距離画像センサに限らず、赤外線センサ又はミリ波センサ等の物体を検知可能なセンサであればよい。サーバ装置10は、撮像装置30が撮影した映像及び物体検知センサ41による検知結果を用いてホームを監視する。
【0026】
図2はサーバ装置10のハードウェア構成を表す。サーバ装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信装置14とを備えるコンピュータである。プロセッサ11は、例えば、CPU(=Central Processing Unit)等の演算装置、レジスタ及び周辺回路等を有する。メモリ12は、プロセッサ11が読み取り可能な記録媒体であり、RAM(=Random Access Memory)及びROM(=Read Only Memory)等を有する。
【0027】
ストレージ13は、プロセッサ11が読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ハードディスクドライブ又はフラッシュメモリ等を有する。プロセッサ11は、RAMをワークエリアとして用いてROMやストレージ13に記憶されているプログラムを実行することで各ハードウェアの動作を制御する。通信装置14は、アンテナ及び通信回路等を有し、通信回線2を介した通信を行う通信手段である。
【0028】
図3は車両装置20のハードウェア構成を表す。車両装置20は、プロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ23と、通信装置24と、表示装置25と備えるコンピュータである。プロセッサ21から通信装置24までは、
図2に表すプロセッサ11から通信装置24までと同種のハードウェアである。表示装置25は、ディスプレイ等の表示手段を有し、車両、走行又は運行に関する情報を表示する。
【0029】
運行支援システム1においては、上記の各装置のプロセッサがプログラムを実行して各部を制御することで、以下に述べる各機能が実現される。各機能が行う動作は、その機能を実現する装置のプロセッサが行う動作としても表される。
図4は本実施例で実現される機能構成を表す。サーバ装置10は、内側検知部101と、外側検知部102と、促進通知部103と、車両ドア判定部104と、ホームドア判定部105と、報知情報出力部106とを備える。車両装置20は、報知情報表示部201を備える。
【0030】
サーバ装置10の内側検知部101は、撮像装置30が撮影した駅のホームの所定の領域である内側領域の映像に基づき、内側領域に物体があるか否かを判断し、物体があると判断した場合にその物体を検知する。外側検知部102は、物体検知センサ41が出力する信号に基づいて、内側領域とは異なる領域である外側領域に物体があるか否かを判断し、物体があると判断した場合にその物体を検知する。内側領域及び外側領域について
図5を参照して説明する。
【0031】
図5は列車が横付けされたホームの一例を表す。
図5では、鉛直上方から見たホーム3が表されている。ホーム3には、
図5に表すように、ホーム3の線路側の縁部4に沿ってホームドア装置40が設置されている。
図5では、ホーム3に横付けされた列車5が表されている。列車5の各車両6には3つのドア(以下それぞれを「車両ドア7」と言う)が設けられている。
【0032】
ホームドア装置40は、複数のホームドア42と、複数の柵43とを有している。複数のホームドア42及び複数の柵43は、ホーム3の縁部4に沿って交互に且つ縁部4に沿って並べて設けられ、ホームドア装置40よりも縁部4に近い側とホームドア装置40よりも縁部4から遠い側とにホーム3を仕切っている。複数のホームドア42は、停車してホーム3に横付けされた列車5の車両ドア7に対向する位置にそれぞれ設けられている。
【0033】
内側検知部101は、
図5に表す内側領域A1において物体検知を行う。内側領域A1は、ホームドア装置40よりもホーム3の縁部4から離れており且つ長方形の形をした領域である。内側領域A1の各角には、撮像装置30がそれぞれ内側領域A1の中心を向くようにして設けられている。その結果、内側領域A1のどの位置に人がいる場合でも、その人の顔が撮影されるようになっている。
【0034】
内側検知部101は、本実施例では、人という物体の有無を検知する。具体的には、内側検知部101は、複数の撮像装置30により撮影された映像を取得し、取得した映像から、内側領域A1に人がいるか否かを検知する。内側検知部101は、例えば、周知の顔認識技術を用いて映像に映っている顔の認識を試みて、1つでも顔が認識されれば人がいることを検知し、1つも顔が認識されなければ人がいることを検知しない。
【0035】
外側検知部102は、
図5に表す外側領域A2において物体検知を行う。外側領域A2は、ホームドア装置40よりもホーム3の縁部4に近く且つ長方形の形をした領域である。内側領域A1は、ホーム3の縁部4に沿った領域のうちホーム3に横付けされる車両6の車両ドア7から遠い方にある領域であり、外側領域A2は、縁部4に沿った領域のうち車両6の車両ドア7に近い方にある領域である。
【0036】
複数の柵43には、外側領域A2における物体の有無を検知するように複数の物体検知センサ41が設けられている。複数の物体検知センサ41は、検知範囲が外側領域A2全体をカバーするように設けられ、各々の検知結果を示す信号を外側検知部102に出力する。外側検知部102は、出力されてきた信号が示す検知結果を取得し、外側領域A2における物体の有無を検知する。
【0037】
外側検知部102は、例えば、外側領域A2に何の物体もない状態での各画素に映るホーム3の上面までの距離を予め記憶しておき、記憶した距離よりも短い距離が測定された画素が示す位置に物体があると検知する。外側検知部102は、外側領域A2における検知結果を示す結果情報を車両ドア判定部104及びホームドア判定部105に供給する。一方、内側検知部101は、内側領域A1における検知結果を示す結果情報を促進通知部103、車両ドア判定部104及びホームドア判定部105に供給する。
【0038】
促進通知部103は、内側領域A1における物体(本実施例では人)の検知後、乗車を促す通知を行う。促進通知部103は、内側検知部101から供給された結果情報が内側領域A1に人がいることを示す場合、乗車を促す案内を示す音声信号をスピーカ装置50に出力する。スピーカ装置50は、内側領域A1の付近に設けられ、入力された音声信号が示す案内の音声を内側領域A1にいる人に向けて出力する。
【0039】
乗車を促す案内とは、例えば、「まもなくドアが閉まって車両が出発します。危険ですので、乗車される方及び降車された方は急いでご移動ください」という音声である。促進通知部103によりこのような通知が行われることで、内側領域A1にいる人は急いでその場から移動しようとするので、この通知が行われない場合に比べて、内側領域A1に物体がないと検知されるタイミングを早めることができる。
【0040】
車両ドア判定部104は、内側領域A1及び外側領域A2の各々における物体の検知結果に基づき、車両ドア7の閉鎖の可否を判定する。より詳細には、車両ドア判定部104は、内側領域A1における物体の検知から所定時間の経過後の外側領域A2における物体の検知結果に基づき、車両ドア7の閉鎖の可否を判定する。つまり、車両ドア判定部104は、所定時間だけ判定処理を行わず待機して、所定時間の経過後に判定処理を行う。
【0041】
以下ではこの所定時間を「待機時間」とも言う。待機時間としては、例えば、内側領域A1の短手方向の幅と同じ距離を人が移動するのに要する最大の時間が用いられる。車両ドア判定部104は、例えば、内側領域A1の短手方向の幅が2mであり、平均の歩行速度を1m毎秒とすると、待機時間を2秒として閉鎖の可否を判定する。なお、待機時間は、これに限らず、例えば、内側領域A1を斜めに横断するのに要する最大の時間が用いられてもよいし、それらの最大の時間に余裕率を乗じた時間を待機時間としてもよい。
【0042】
具体的には、車両ドア判定部104は、内側領域A1に人がいるという検知結果を示す結果情報が供給されると、待機時間(例えば2秒間)が経過するまで待機し、待機時間の経過後に外側検知部102から供給される結果情報を取得する。また、車両ドア判定部104は、内側領域A1に人がいないという検知結果を示す結果情報が供給されると、待機せずに、即座に、外側検知部102から供給される結果情報を取得する。
【0043】
車両ドア判定部104は、取得した外側検知部102からの結果情報により物体がないという検知結果が示されている場合、車両ドア7の閉鎖が可能であると判定し、物体があるという検知結果が示されている場合、車両ドア7の閉鎖が不可であると判定する。車両ドア判定部104は、所定の時間間隔(例えば0.1秒毎)で判定を繰り返し行い、判定結果を報知情報出力部106に供給する。
【0044】
報知情報出力部106は、供給された判定結果を報知するための報知情報を生成し、生成した報知情報を出力する。報知情報出力部106は、車両ドア7の閉鎖が可能であるという判定結果が供給された場合は、例えば、「車両ドアを閉めてください」という文字列を報知情報として生成し、出力する。また、報知情報出力部106は、車両ドア7の閉鎖が不可であるという判定結果が供給された場合は、例えば、「車両ドアをまだ閉めないでください」という文字列を報知情報として生成し、出力する。
【0045】
車両装置20の報知情報表示部201は、上記のとおり出力されてきた報知情報を表示する。報知情報表示部201は、例えば、車両ドア7の閉鎖が可能である場合は「車両ドアを閉めてください」という文字列を表示し、車両ドア7の閉鎖が不可である場合は「車両ドアをまだ閉めないでください」という文字列を表示する。運転士は、「車両ドアをまだ閉めないでください」と表示されている間は車両ドア7を閉める操作を行わず、「車両ドアを閉めてください」と表示されたときに車両ドア7を閉める操作を行う。
【0046】
出発する車両6への物体の接触を回避するためには、外側領域A2のように車両付近(特に車両6への人の移動経路が集中する車両ドア7の付近)の領域における物体の検知が重要である。しかし、例えば駆け込み乗車のように外側領域A2よりも車両から離れた領域(例えば内側領域A1)から物体が急に車両に接近することも起こり得る。本実施例では、以上のとおり内側領域A1及び外側領域A2という2つの領域における検知結果に基づいて判定及び報知が行われることで、物体の有無の判定を車両のドア付近の領域(本実施例では外側領域A2)だけで行う場合に比べて、車両の出発時の安全性を高めることができる。
【0047】
内側領域A1に物体があるときには車両ドア7の閉鎖が不可であるなら、内側領域A1にある物体が外に出るまでは車両ドア7の閉鎖は不可のままである。つまり、内側領域A1に物体があると検知されたのにその物体が内側領域A1から出るまでの期間に車両ドア7の閉鎖の可否を判定する処理を行っても、不要になりやすい。本実施例では、内側領域A1に物体がある(人がいる)と検知された場合は所定時間経過してから車両ドア7の閉鎖の判定が行われる。
【0048】
これにより、所定時間の待機を行わない場合に比べて、車両ドア7の閉鎖の可否を判定する処理の負荷(主にサーバ装置10のプロセッサに対する負荷)を小さくすることができる。また、本実施例では、内側領域A1に人がいないことが検知された場合は待機せずに即座に外側領域A2における検知結果が取得されて判定及び報知が行われる。これにより、内側領域A1に人がいないことが検知された場合に常に待機する場合に比べて、車両6の出発を早めることができる。
【0049】
ホームドア判定部105は、内側領域A1における物体の検知結果に基づき、外側領域A2に設置されているホームドア装置40のホームドア42の閉鎖の可否を判定する。ホームドア判定部105は、本実施例では、車両ドア判定部104と同様に、内側領域A1における物体の検知から所定時間の経過後の外側領域A2における物体の検知結果に基づき、ホームドア42の閉鎖の可否を判定する。
【0050】
ホームドア判定部105は、内側領域A1に人がいないという検知結果を示す結果情報が供給されると、即座に、外側検知部102から供給される結果情報を取得する。ホームドア判定部105は、取得した外側検知部102からの結果情報により物体がないという検知結果が示されている場合、ホームドア42の閉鎖が可能であると判定し、物体があるという検知結果が示されている場合、ホームドア42の閉鎖が不可であると判定する。
【0051】
ホームドア判定部105は、所定の時間間隔(例えば0.1秒毎)で判定を繰り返し行い、判定結果を報知情報出力部106に供給する。報知情報出力部106は、車両ドアの場合と同様に、供給された判定結果を報知するための報知情報を生成し、生成した報知情報を出力する。報知情報出力部106は、ホームドア42の閉鎖が可能であるという判定結果が供給された場合は、例えば、「ホームドアを閉めてください」という文字列を報知情報として生成し、出力する。
【0052】
また、報知情報出力部106は、ホームドア42の閉鎖が不可であるという判定結果が供給された場合は、例えば、「ホームドアをまだ閉めないでください」という文字列を報知情報として生成し、出力する。車両装置20の報知情報表示部201は、上記のとおり出力されてきた報知情報を表示する。以上のとおり判定及び報知が行われることで、ホームドア42の閉鎖の可否を判定しない場合に比べて、ホームドア42を安全に閉じることができる
【0053】
サーバ装置10は、上記の構成により、ドア(車両ドア7及びホームドア42)を閉鎖してよいか否かを確認する閉鎖確認処理を行う。
図6は閉鎖確認処理における動作手順の一例を表す。まず、サーバ装置10(内側検知部101)は、撮像装置30が撮影した内側領域A1の映像に基づき、内側領域A1における物体の有無を判断する(ステップS11)。
【0054】
次に、サーバ装置10は、ステップS11で内側領域A1において物体が検知されたか否かを判断する(ステップS12)。ステップS12で物体を検知した(YES)と判断された場合、まず、サーバ装置10(促進通知部103)は、乗車を促す通知を行う(ステップS13)。続いて、サーバ装置10(外側検知部102)は、所定時間が経過するまで待機し(ステップS14)、所定時間の経過後に外側領域A2に物体があるか否かを判断する(ステップS15)。
【0055】
ステップS12で物体を検知していない(NO)と判断された場合、サーバ装置10(外側検知部102)は、ステップS15に進んで外側領域A2に物体があるか否かを判断する。次に、サーバ装置10は、ステップS15で外側領域A2において物体が検知されたか否かを判断する(ステップS16)。
【0056】
ステップS16で物体が検知された(YES)と判断された場合、サーバ装置10(車両ドア判定部104及びホームドア判定部105)は、ドア(車両ドア7及びホームドア42)の閉鎖が不可であることを判定する(ステップS21)。そして、サーバ装置10(報知情報出力部106)は、閉鎖不可という判定結果を報知する報知情報を車両装置20に対して出力する(ステップS22)。サーバ装置10は、ステップS22の後はステップS11に戻って動作を行う。
【0057】
ステップS16で物体が検知されていない(NO)と判断された場合、サーバ装置10(車両ドア判定部104及びホームドア判定部105)は、ドア(車両ドア7及びホームドア42)の閉鎖が可能であることを判定する(ステップS31)。そして、サーバ装置10(報知情報出力部106)は、閉鎖可能という判定結果を報知する報知情報を車両装置20に対して出力する(ステップS32)。サーバ装置10は、ステップS32の後はこの動作手順を終了する。
【0058】
[2]変形例
上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、実施例及び各変形例は必要に応じてそれぞれ組み合わせてもよい。
【0059】
[2-1]報知方法
運行支援システム1は、実施例と異なる方法でドア(車両ドア7及びホームドア42)の閉鎖可否の判定結果を報知してもよい。例えば、実施例では、車両装置20が報知情報を表示することで報知が行われたが、それに加えて又はその代わりに、車両装置20が報知情報を示す音声を出力することで報知が行われてもよい。
【0060】
また、実施例では、車両装置20に報知情報が出力されたが、これに限らない。例えば、ホーム又はホームドア装置40に画像又は音声の出力装置(例えばディスプレイ又はスピーカ等)が設けられている場合に、その出力装置に報知情報出力部106が報知情報を出力することで報知が行われてもよい。要するに、車両ドア7及びホームドア42を閉鎖する操作を行う者(例えば運転士)に報知情報が報知されるのであれば、どのような方法で報知が行われてもよい。
【0061】
[2-2]待機時間
実施例では、車両ドア判定部104が、内側領域A1における物体の検知から所定時間(=待機時間)の経過後の外側領域A2における物体の検知結果に基づき、車両ドア7の閉鎖の可否を判定したが、待機時間が状況に応じて変更されてもよい。
【0062】
車両ドア判定部104は、本変形例では、内側領域A1において検知された物体の数に応じて待機時間を決定する。車両ドア判定部104は、例えば、物体の数と待機時間とを対応付けた待機時間テーブルを用いる。
図7は待機時間テーブルの一例を表す。
図7(a)の例では、「Th1未満」、「Th1以上Th2未満」及び「Th2以上」と言う物体の数に、「T1」、「T2」及び「T3」と言う待機時間が対応付けられている(T1<T2<T3とする)。
【0063】
本変形例では、内側検知部101が、例えば内側領域A1において認識した顔の数を検知した物体の数として車両ドア判定部104に供給する。車両ドア判定部104は、供給された物体の数に待機時間テーブルにおいて対応付けられている待機時間(例えば物体の数がTh2以上であれば待機時間T3)を特定し、特定した待機時間だけ待機してから判定を行う。
【0064】
図7(a)の例では、車両ドア判定部104は、内側領域A1において検知された物体の数が多いほど待機時間を長くしている。内側領域A1において検知された物体の数が多いほど、ホームが混雑していることを意味し、ホームが混雑しているほど、内側領域A1から人がいなくなるまでに時間を要することになりやすい。そのため、検知された物体の数が多いほど待機時間を長くすると、内側領域A1から人がいなくなるまでに行われる不要な判定処理が少なくなる。
【0065】
一方、待機時間を常に長くしていると、ホームが空いている状況でも長い時間待機することになり、出発が遅くなる。本変形例では、検知された物体の数に応じて待機時間を変動させることで、待機時間が一定の場合に比べて、不要な判定処理による負荷(主にサーバ装置10のプロセッサに対する負荷)を少なくしつつ、出発時刻をなるべく早くすることができる。
【0066】
なお、上記以外にも、車両ドア判定部104は、内側領域A1において検知された物体の移動方向に応じて待機時間を決定してもよい。車両ドア判定部104は、例えば、物体の移動方向と待機時間とを対応付けた待機時間テーブルを用いる。
図7(b)は待機時間テーブルの別の一例を表す。
図7(b)の例では、「乗車方向」及び「降車方向」と言う物体の移動方向に、「T11」及び「T12」と言う待機時間が対応付けられている(T11<T12とする)。
【0067】
乗車方向とは、車両6に乗車する人が移動する方向、すなわち車両6の車両ドア7に向かう方向である。降車方向とは、その反対で、車両6から降車する人が移動する方向、すなわち車両6の車両ドア7から離れて行く方向である。本変形例では、内側検知部101が、検知した物体の位置を所定の時間間隔(例えば0.1秒毎)で繰り返し車両ドア判定部104に供給する。
【0068】
車両ドア判定部104は、供給された位置が変化する方向から移動方向を特定する。車両ドア判定部104は、例えば、時刻t1における物体の位置(移動前の位置とする)に次の時刻t2では物体が存在しない場合、時刻t2においてその移動前の位置から最も近い位置を移動後の位置として、移動前の位置から移動後の位置に向かう方向に基づいて移動方向を特定する。
【0069】
車両ドア判定部104は、移動前の位置から移動後の位置に向かう方向と乗車方向とが成す角度と、移動前の位置から移動後の位置に向かう方向と降車方向とが成す角度を比較し、小さい角度の方向を移動方向として特定する。車両ドア判定部104は、複数の物体が検知され、乗車方向と降車方向とが混在する場合、例えば、移動する物体の数が多い方の方向を移動方向として特定する。
【0070】
車両ドア判定部104は、特定した移動方向に待機時間テーブルにおいて対応付けられている待機時間(例えば移動方向が乗車方向であれば待機時間T11)を特定し、特定した待機時間だけ待機してから判定を行う。
図7(b)の例では、車両ドア判定部104は、乗車方向の場合の待機時間に比べて降車方向の場合の待機時間を長くしている。一般的に、ホームで待っている人は、乗客が降車してから乗車するので、乗車する人の方が多い状況よりも、降車する人の方が多い状況の方が内側領域A1から人がいなくなるまでに要する時間が短くなりやすい。
【0071】
内側領域A1において検知された物体の数が多いほど、ホームが混雑していることを意味し、ホームが混雑しているほど、内側領域A1から人がいなくなるまでに時間を要することになりやすい。そのため、乗車方向が特定された場合の待機時間よりも降車方向が特定された場合の待機時間を長くすると、内側領域A1から人がいなくなるまでに行われる不要な判定処理が少なくなる。
【0072】
一方、待機時間を常に長くしていると、ホームが空いている状況でも長い時間待機することになり、出発が遅くなる。本変形例では、検知された物体の移動方向に応じて待機時間を変動させることで、待機時間が一定の場合に比べて、不要な判定処理による負荷(主にサーバ装置10のプロセッサに対する負荷)を少なくしつつ、出発時刻をなるべく早くすることができる。
【0073】
また、上記以外にも、車両ドア判定部104は、内側領域A1において検知された物体の移動速度に応じて待機時間を決定してもよい。車両ドア判定部104は、例えば、物体の移動速度と待機時間とを対応付けた待機時間テーブルを用いる。
図7(c)は待機時間テーブルの別の一例を表す。
図7(c)の例では、「Th21未満」、「Th21以上Th22未満」及び「Th22以上」と言う物体の移動速度に、「T21」、「T22」及び「T23」と言う待機時間が対応付けられている(T21>T22>T23とする)。
【0074】
本変形例では、内側検知部101が、
図7(b)の例と同様に、検知した物体の位置を所定の時間間隔(例えば0.1秒毎)で繰り返し、車両ドア判定部104に供給する。車両ドア判定部104は、供給された位置の変化量に基づき移動速度を算出する。車両ドア判定部104は、算出した物体の移動速度に待機時間テーブルにおいて対応付けられている待機時間(例えば物体の移動速度がTh21未満Th22以上であれば待機時間T22)を特定し、特定した待機時間だけ待機してから判定を行う。
【0075】
図7(c)の例では、車両ドア判定部104は、内側領域A1において検知された物体の移動速度が遅いほど待機時間を長くしている。検知された物体の移動速度が遅いほど、内側領域A1から人がいなくなるまでに時間を要することになりやすい。そのため、検知された物体の移動速度が遅いほど待機時間を長くすると、内側領域A1から人がいなくなるまでに行われる不要な判定処理が少なくなる。
【0076】
一方、待機時間を常に長くしていると、ホームが空いている状況でも長い時間待機することになり、出発が遅くなる。本変形例では、検知された物体の移動速度に応じて待機時間を変動させることで、待機時間が一定の場合に比べて、不要な判定処理による負荷(主にサーバ装置10のプロセッサに対する負荷)を少なくしつつ、出発時刻をなるべく早くすることができる。
【0077】
なお、車両ドア判定部104は、検知された物体の数、検知された物体の移動方向及び検知された物体の移動速度のうち2以上を用いて待機時間を特定してもよい。車両ドア判定部104は、例えば物体の数及び物体の移動方向を用いる場合、
図7で述べた方法でそれぞれ待機時間を特定し、特定した2つの待機時間の平均を待機時間とする。これにより、物体の数、移動方向及び移動速度のうちの1つしか用いない場合に比べて、不要な判定処理をより少なくすることができる。
【0078】
[2-3]ホームドアの判定方法
ホームドア判定部105は、車両ドア判定部104と同様に、検知された物体の数、検知された物体の移動方向及び検知された物体の移動速度に基づいて特定した待機時間だけ待機してから判定を行ってもよい。これにより、待機時間が一定の場合に比べて、ホームドア42の閉鎖の可否を判定する処理の負荷を小さくすることができる。
【0079】
また、ホームドア判定部105は、車両ドア判定部104とは異なる待機時間を特定してもよい。例えば、車両ドア判定部104は検知された物体の数に基づいて待機時間を特定し、ホームドア判定部105は検知された物体の移動方向に基づいて待機時間を特定するという具合である。
【0080】
[2-4]待機時間、ホームドアの有無
車両ドア判定部104及びホームドア判定部105は、待機時間を設けずに判定を行ってもよい。その場合でも、物体の有無の判定を車両のドア付近の領域(例えば外側領域A2)だけで行う場合に比べて、車両の出発時の安全性を高めることができる。また、ホームにホームドア装置が設けられていなくてもよい。その場合でも、内側領域A1及び外側領域A2という2つの領域毎に物体の有無を検知することで、物体の有無の判定を1つの領域だけで行う場合に比べて、車両の出発時の安全性を高めつつ、車両の出発を早めることができる。
【0081】
[2-5]機能構成
サーバ装置10及び車両装置20が実現する機能の構成は、
図4に表すものに限らない。例えば、実施例では報知情報出力部106が、報知情報を生成する動作と生成した報知情報を出力する動作とを行ったが、これらの動作を別々の機能が行ってもよい。
【0082】
また、例えば内側検知部101及び外側検知部102が行う動作を1つの機能が行ってもよい。また、サーバ装置10が実現する機能を2以上の情報処理装置又はクラウドサービスで提供されるコンピュータリソースが実現してもよい。要するに、全体として
図4等に表された機能が実現されていれば、各機能が行う動作の範囲及び各機能を実現する装置は自由に定められてよい。
【0083】
[2-6]発明のカテゴリ
本発明は、運行支援システム1のような情報処理システムやサーバ装置10のような情報処理装置として捉えられる。また、その情報処理装置が実施する処理を実現するための情報処理方法としても捉えられるし、その情報処理装置を制御するコンピュータを機能させるためのプログラムとしても捉えられる。このプログラムは、それを記憶させた光ディスク等の記録媒体の形態で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してコンピュータにダウンロードさせ、それをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…運行支援システム、2…通信回線、3…ホーム、5…列車、6…車両、7…車両ドア、10…サーバ装置、20…車両装置、30…撮像装置、40…ホームドア装置、50…スピーカ装置、101…内側検知部、102…外側検知部、103…促進通知部、104…車両ドア判定部、105…ホームドア判定部、106…報知情報出力部、201…報知情報表示部。