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特許7550054アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20240905BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K31/194
A61K9/20
A61P1/00
A61P3/00
A61P39/02
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020553227
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2019040653
(87)【国際公開番号】W WO2020080398
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2018195043
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228590
【氏名又は名称】日本ケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】川口 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 里美
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0111060(US,A1)
【文献】特開昭60-092215(JP,A)
【文献】特開2018-020963(JP,A)
【文献】アリスト メダリスト 1リットル用 28g×5袋,2006年05月24日,pp.1-4,retrieved on 2023.10.27, retrieved from the internet,https://www.amazon.co.jp/%E3%83%A1%E3%83%80%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88-888029-%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88-1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AB%E7%94%A8-28g%C3%975%E8%A2%8B/dp/B000ARO9DM
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/10
A61K 31/194
A61P 1/00
A61P 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸のアルカリ金属塩及び無水クエン酸を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制用食品組成物であって、錠剤である、前記食品組成物。
【請求項2】
クエン酸のアルカリ金属塩及び無水クエン酸を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制用、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制用は血中酢酸濃度増加の抑制用の食品組成物であって、錠剤である、前記食品組成物。
【請求項3】
クエン酸のアルカリ金属塩及び無水クエン酸を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制用の食品組成物であって、錠剤である、前記食品組成物。
【請求項4】
クエン酸のアルカリ金属塩及び無水クエン酸を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制用の食品組成物であって、錠剤である、前記食品組成物。
【請求項5】
クエン酸のアルカリ金属塩及び無水クエン酸を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制用の食品組成物であって、錠剤である、前記食品組成物。
【請求項6】
クエン酸のアルカリ金属塩及び無水クエン酸を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール吸収抑制用の食品組成物であって、錠剤である、前記食品組成物。
【請求項7】
クエン酸のアルカリ金属塩及び無水クエン酸を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール代謝促進用の食品組成物であって、錠剤である、前記食品組成物。
【請求項8】
クエン酸のアルカリ金属塩が、クエン酸ナトリウム又はその水和物と、クエン酸カリウム又はその水和物との混合物を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の食品組成物。
【請求項9】
水クエン酸:クエン酸ナトリウム又はその水和物:クエン酸カリウム又はその水和物のモル比が1:1.7~2.3:1.7~2.3であり、アルコール摂取の前に摂取される、請求項に記載の食品組成物。
【請求項10】
装、容器は説明書に、アルコール飲料摂取による悪酔い若しくは二日酔いの抑制の効果;アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制の効果、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制の効果しくは血中酢酸濃度増加の抑制の効果;アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制の効果;アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制の効果;アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制の効果;アルコール吸収抑制の効果;及び/又はアルコール代謝促進の効果が表示されている食品組成物である、請求項1~のいずれか1項に記載の食品組成物。
【請求項11】
エン酸のアルカリ金属塩及び無水クエン酸を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制用医薬組成物であって、錠剤である、前記医薬組成物。
【請求項12】
エン酸のアルカリ金属塩及び無水クエン酸を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制用、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制用は血中酢酸濃度増加の抑制用の医薬組成物であって、錠剤である、前記医薬組成物。
【請求項13】
エン酸のアルカリ金属塩及び無水クエン酸を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制用の医薬組成物であって、錠剤である、前記医薬組成物。
【請求項14】
エン酸のアルカリ金属塩及び無水クエン酸を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制用の医薬組成物であって、錠剤である、前記医薬組成物。
【請求項15】
エン酸のアルカリ金属塩及び無水クエン酸を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制用の医薬組成物であって、錠剤である、前記医薬組成物。
【請求項16】
エン酸のアルカリ金属塩及び無水クエン酸を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール吸収抑制用の医薬組成物であって、錠剤である、前記医薬組成物。
【請求項17】
エン酸のアルカリ金属塩及び無水クエン酸を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール代謝促進用の医薬組成物であって、錠剤である、前記医薬組成物。
【請求項18】
エン酸のアルカリ金属塩が、クエン酸ナトリウム又はその水和物と、クエン酸カリウム又はその水和物との混合物を含む、請求項1117のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
水クエン酸:クエン酸ナトリウム又はその水和物:クエン酸カリウム又はその水和物のモル比が1:1.7~2.3:1.7~2.3であり、アルコール摂取の前に投与される、請求項18に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クエン酸又はその塩を有効成分として含む、アルコール飲料摂取による悪酔い若しくは二日酔いの抑制用;アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制用、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制用、若しくは血中酢酸濃度増加の抑制用;アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制用;アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制用;アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制用;アルコール吸収抑制用;アルコール代謝促進用;又は血中オルニチン濃度増加用、血中セロトニン濃度増加用、血中タウリン濃度増加用、血中シスチン濃度増加用、若しくは血中ニコチンアミド濃度増加用の食品組成物又は医薬組成物に関する。
本願は、2018年10月16日に、日本に出願された特願2018-195043号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
アルコール(特にエタノール)は、生理的及び心理的状態に影響を及ぼすことが知られており、比較的少量のアルコール飲料の摂取は、気分を陽気にさせ、又は入眠までの時間を短縮させる等、睡眠の質の改善にも寄与する場合がある。しかしながら、過量のアルコール飲料の摂取は、悪心、嘔吐、頭痛又はめまい等を伴う、いわゆる、悪酔い又は二日酔いの状態を惹起することが知られている。摂取されたアルコールは、生体内で、アセトアルデヒドを経て酢酸に代謝され、更に二酸化炭素と水に分解されるが、悪酔い又は二日酔いには、アルコールの代謝によって生成したアセトアルデヒドが深く関与していると理解されている。アルデヒドデヒドロゲナーゼ2は、生体内でアセトアルデヒドを酢酸に代謝する酵素であるが、欧米人に比べて、日本人は、正常なアルデヒドデヒドロゲナーゼ2を有しない者の割合が高いことが知られている。アルデヒドデヒドロゲナーゼ2を有しない個体は、「フラッシャーズ」と分類され、少量のアルコール摂取によって、フラッシング反応(顔面紅潮、動悸、悪心又は低血圧等)を生じやすい。
【0003】
オルニチンは、アミノ酸の1種であり、生体内において、有害なアンモニアを尿素に変換するオルニチン回路を構成する物質として知られている。また、オルニチンは、アルコール飲料の摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有効であることが期待されている。また、経口的に投与されたオルニチンが、アルコールを摂取したフラッシャーズの翌朝の唾液中コルチゾールの低下と疲労感の改善をもたらすことが報告されている(非特許文献1)。
【0004】
シスチン(3,3’-ジチオビス(2-アミノプロピオン酸)ともいう)は、アミノ酸の1種であり、毛又は爪等を構成するケラチンの構成成分として多く含まれていることが知られている。また、シスチンには、生体内でアセトアルデヒドの代謝を促進する効果があることが知られている。
【0005】
ニコチンアミド(ナイアシン又はビタミンBともいう)は、生体内において、酸化還元酵素の補酵素ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(略称:NAD)及びニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド・リン酸(略称:NADP)の構成要素として知られ、これらの補酵素は、生体内における酸化還元反応の電子受容体又は水素供与体として機能している。例えば、NADは、アルコールの代謝酵素である、アルコールデヒドロゲナーゼ及びアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼの補酵素としても機能している。アルコールが代謝されてアセトアルデヒドに変換される際に、酸化型NADは還元されて還元型NADHとなり、アセトアルデヒドが代謝されて酢酸に変換される際に、酸化型NADは還元されて還元型NADHとなる。ニコチンアミドは、生体内でトリプトファンから生合成される。トリプトファンは、セロトニン及びメラトニンの生合成原料でもあることが知られている。セロトニンは、生体内において、トリプトファンから5-ヒドロキシトリプトファンを経て合成される。セロトニンの多くは消化管粘膜に分布して、腸の蠕動運動に作用するが、脳内の神経伝達物質としても存在し、生体リズム、睡眠又は体温調節等の生理機能や、精神の安定化等の心理機能に関与することが知られている。また、日中分泌されたセロトニンは、夕刻から深夜にかけてメラトニンに変換され、かかるメラトニンが入眠を促すことが知られている。アルコール代謝により、ニコチンアミドが消費されると、それを補うべく、トリプトファンがニコチンアミドの生合成に消費され、セロトニン又はメラトニンの生合成に使用されるトリプトファンが減少し、結果としてセロトニン又はメラトニンの不足が睡眠の質に悪影響を与える場合がある。したがって、ニコチンアミドの摂取は、アルコール及びアセトアルデヒドの代謝促進、及びアルコール代謝時の睡眠の質の低下抑制に寄与することが期待されている。
【0006】
タウリン(2-アミノエタンスルホン酸ともいう)は、生体内に存在する含硫アミノ酸様物質の1つであり、生体の恒常性維持に関与し、身体疲労回復効果を有することが知られている。また、生体内でアセトアルデヒドの代謝を促進することも知られている。
【0007】
ピルビン酸は、生体内で、乳酸脱水素酵素(LDH)により還元され乳酸に変換されることが知られている。かかる変換反応は可逆反応であり、通常、血中の乳酸濃度/ピルビン酸濃度の比はほぼ一定に保たれている。前記ピルビン酸と乳酸との変換反応では、NADが補酵素として機能している。すなわち、ピルビン酸から乳酸への変換反応では、還元型NADHが酸化されて酸化型NADとなり、乳酸からピルビン酸への変換反応では、酸化型NADが還元されて還元型NADHとなる。アルコールの代謝では、酸化型NADが消費されるので、アルコールの摂取により、乳酸からピルビン酸への変換反応に必要な酸化型NADが不足する。したがって、アルコールの摂取により、乳酸からピルビン酸への変換反応が進行せず、血中のピルビン酸濃度が低下するとともに、乳酸/ピルビン酸比が大きくなる。血中のピルビン酸濃度を増加させ、乳酸/ピルビン酸比を正常に近づけることにより、酸化型NADを供給することができるので、アルコールの代謝を促進することができる(特許文献1)。
【0008】
ところで、クエン酸は、医薬品又は食品の分野において、安定化剤,緩衝剤,又は矯味剤等の添加剤として有用であることが知られている。
クエン酸の塩、特にアルカリ金属塩(以下、これらを総称してアルカリ性化剤と称する場合がある)は、高尿酸血症患者又は痛風患者に投与することにより、これらの患者における尿路結石の生成の抑制に有用であることが知られている。また、アルカリ性化剤は、患者の体液をアルカリ性にする作用を有するので、患者のアシドーシス、特に腎尿細管性アシドーシス等の代謝性アシドーシスの改善に有効なことが知られている。
【0009】
しかしながら、クエン酸又はその塩が、哺乳動物(特にヒト)において、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制作用、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制作用、若しくは血中酢酸濃度増加の抑制作用を有すること、アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制作用を有すること、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制作用を有すること、アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制作用を有すること、アルコール吸収抑制作用を有すること、アルコール代謝促進作用を有すること、又は血中オルニチン濃度増加作用、血中セロトニン濃度増加作用、血中タウリン濃度増加作用、血中シスチン濃度増加作用、若しくは血中ニコチンアミド濃度増加作用を有していることは知られていない。ましてや、クエン酸又はその塩が、哺乳動物(特にヒト)において、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用なことは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2019-43861号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】Kokubo et al., BioPsychoSocial Medicine 2013, 7:6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題の一つは、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制用の食品組成物又は医薬組成物を提供することである。本発明の他の一つの課題は、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制用、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制用、又は血中酢酸濃度増加の抑制用の食品組成物又は医薬組成物を提供することである。本発明の他の一つの課題は、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制用の食品組成物又は医薬組成物を提供することである。本発明の他の一つの課題は、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制用の食品組成物又は医薬組成物を提供することである。本発明の他の一つの課題は、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制用の食品組成物又は医薬組成物を提供することである。本発明の他の一つの課題は、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール吸収抑制用の食品組成物又は医薬組成物を提供することである。本発明の他の一つの課題は、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール代謝促進用の食品組成物又は医薬組成物を提供することである。また、本発明の他の一つの課題は、哺乳動物(特にヒト)の、血中オルニチン濃度増加用、血中セロトニン濃度増加用、血中タウリン濃度増加用、血中シスチン濃度増加用、又は血中ニコチンアミド濃度増加用の食品組成物又は医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を行ったところ、クエン酸又はその塩が、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制作用、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制作用、若しくは血中酢酸濃度増加の抑制作用;アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制作用;アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制作用;アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制作用;アルコール吸収抑制作用;アルコール代謝促進作用;又は血中オルニチン濃度増加作用、血中セロトニン濃度増加作用、血中タウリン濃度増加作用、血中シスチン濃度増加作用、及び血中ニコチンアミド濃度増加作用を有し、前記クエン酸又はその塩が、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用であることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
本発明は以下の側面を有する。
(1)クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制用食品組成物又は医薬組成物。
(2)クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制用、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制用、又は血中酢酸濃度増加の抑制用の食品組成物又は医薬組成物。
(3)クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制用の食品組成物又は医薬組成物。
(4)クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制用の食品組成物又は医薬組成物。
(5)クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制用の食品組成物又は医薬組成物。
(6)クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール吸収抑制用の食品組成物又は医薬組成物。
(7)クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物の、アルコール代謝促進用の食品組成物又は医薬組成物。
(8)有効成分が、クエン酸のアルカリ金属塩である、(1)~(7)のいずれか1つに記載の食品組成物又は医薬組成物。
(9)クエン酸のアルカリ金属塩が、クエン酸ナトリウム又はその水和物と、クエン酸カリウム又はその水和物との混合物を含む、(1)~(8)のいずれか1つに記載の食品組成物又は医薬組成物。
(10)クエン酸ナトリウム又はその水和物、クエン酸カリウム又はその水和物、及び無水クエン酸を含む、(1)~(9)のいずれか1つに記載の食品組成物又は医薬組成物。
(11)包装、容器、又は説明書に、アルコール飲料摂取による悪酔い若しくは二日酔いの抑制の効果;アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制の効果、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制の効果、若しくは血中酢酸濃度増加の抑制の効果;アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制の効果;アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制の効果;アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制の効果;アルコール吸収抑制の効果;及び/又はアルコール代謝促進の効果が表示されている食品組成物である、(1)~(10)のいずれか1つに記載の食品組成物又は医薬組成物。
(12)クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物(特にヒト)の、血中オルニチン濃度増加用、血中セロトニン濃度増加用、血中タウリン濃度増加用、血中シスチン濃度増加用、又は血中ニコチンアミド濃度増加用食品組成物又は医薬組成物。
(13)有効成分が、クエン酸のアルカリ金属塩である、(12)に記載の食品組成物又は医薬組成物。
(14)有効成分が、無水クエン酸、クエン酸ナトリウム又はその水和物、及びクエン酸カリウム又はその水和物であり、前記無水クエン酸:前記クエン酸ナトリウム又はその水和物:前記クエン酸カリウム又はその水和物のモル比が1:1.7~2.3:1.7~2.3であり、アルコール摂取の前に投与又は摂取される、(1)~(13)のいずれか1つに記載の食品組成物又は医薬組成物。
(15)剤形が錠剤である、(1)~(14)のいずれか1つに記載の食品組成物又は医薬組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明が提供するクエン酸又はその塩を有効成分として含む食品組成物又は医薬組成物の摂取又は投与により、哺乳動物(特にヒト)において、アルコール飲料摂取による悪酔い若しくは二日酔いの抑制;アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、若しくは血中酢酸濃度増加の抑制;アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制;アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制;アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制;アルコール吸収抑制;アルコール代謝促進;又は血中オルニチン濃度増加、血中セロトニン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、若しくは血中ニコチンアミド濃度増加が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】腎不全ミニブタに対し、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合剤を投与したときの血漿オルニチン濃度の変化を表すグラフである。横軸の1、2、3及び4のグラフは、それぞれ、投与前、1週間投与後、次の1週間投与休止後、更に次の1週間投与後の結果を表し、縦軸は披検物質量の相対面積値を表す(図2~5においても同様である)。
図2】腎不全ミニブタに対し、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合剤を投与したときの血漿セロトニン濃度の変化を表すグラフである。
図3】腎不全ミニブタに対し、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合剤を投与したときの血漿タウリン濃度の変化を表すグラフである。
図4】腎不全ミニブタに対し、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合剤を投与したときの血漿シスチン濃度の変化を表すグラフである。
図5】腎不全ミニブタに対し、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合剤を投与したときの血漿ニコチンアミド濃度の変化を表すグラフである。
図6】SD系雄性ラット(8週齢)に、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合剤を投与したCitrate群、及び精製水を投与した対照群に対し、それぞれ、エタノール溶液を投与したときの血中アルコール濃度の変化を表すグラフである。
図7】SD系雄性ラット(8週齢)に、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合剤を投与したCitrate群、及び精製水を投与した対照群に対し、それぞれ、エタノール溶液を投与したときの血中アセトアルデヒド濃度の変化を表すグラフである。
図8】SD系雄性ラット(8週齢)に、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合剤を投与したCitrate群、及び精製水を投与した対照群に対し、それぞれ、エタノール溶液を投与したときの血中酢酸濃度の変化を表すグラフである。
図9】SD系雄性ラット(8週齢)に、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合剤を投与したCitrate群、及び精製水を投与した対照群に対し、それぞれ、エタノール溶液を投与したときの血中ピルビン酸濃度の変化を表すグラフである。
図10】SD系雄性ラット(8週齢)に、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合剤を投与したCitrate群、及び精製水を投与した対照群に対し、それぞれ、エタノール溶液を投与したときの血中乳酸濃度の変化を表すグラフである。
図11】SD系雄性ラット(8週齢)に、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合剤を投与したCitrate群、及び精製水を投与した対照群に対し、それぞれ、エタノール溶液を投与したときの血中乳酸/ピルビン酸比の変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.食品組成物
本発明が提供する食品組成物は、有効成分として、クエン酸又はその塩を含むことができる。
クエン酸としては、クエン酸の水和物(例えば、クエン酸一水和物(C6H8O7・H2O))及び無水クエン酸等が挙げられる。
【0018】
クエン酸の塩としては、クエン酸の食品又は医薬として許容され得る塩が好ましく、例えば、クエン酸と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄又はアンモニウムイオンとの塩等が挙げられ、より具体的には、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム(本明細書では、クエン酸三カリウムを単にクエン酸カリウムと称する場合がある)、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム(本明細書では、クエン酸三ナトリウムを単にクエン酸ナトリウムと称する場合がある)、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸第一鉄、クエン酸第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄アンモニウム等が挙げられる。
【0019】
クエン酸の塩としては、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸カリウム、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム及びクエン酸ナトリウム等のクエン酸のアルカリ金属塩が好ましく、中でもクエン酸カリウム及びクエン酸ナトリウム等が好ましい。
一つの実施態様において、クエン酸の塩は、クエン酸第一鉄及びクエン酸第二鉄以外の食品又は医薬として許容され得る塩である。
【0020】
前記クエン酸の塩は、その水和物であってもよく、また異なる塩又はその水和物の混合物であってもよい。より具体的には、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及びクエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)等の水和物並びにそれらの混合物を例示することができる。例えば、有効成分であるクエン酸のアルカリ金属塩が、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及びクエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)の混合物であるとき、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及びクエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)の混合比は、当業者が適宜設定でき、例えば、クエン酸カリウムの一水和物とクエン酸ナトリウムの二水和物のモル比を、クエン酸カリウムの一水和物1に対してクエン酸ナトリウムの二水和物を0.01~100とすることができる。混合比をモル比で約1:1としてもよい。
一つの実施態様において、前記混合物における、クエン酸のナトリウム塩のモル数と、クエン酸のカリウム塩のモル数との混合比は、当業者が適宜設定でき、0.85:1.15~1.15:0.85が好ましく、0.90:1.10~1.10:0.90がより好ましく、0.95:1.05~1.05:0.95がより好ましく、0.99:1.01~1.01:0.99が更に好ましく、1:1が特に好ましい。
一つの実施態様において、前記混合物における、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)のモル数と、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)のモル数との混合比は、当業者が適宜設定でき、0.85:1.15~1.15:0.85が好ましく、0.90:1.10~1.10:0.90がより好ましく、0.95:1.05~1.05:0.95がより好ましく、0.99:1.01~1.01:0.99が更に好ましく、1:1が特に好ましい。
【0021】
有効成分をクエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)及び無水クエン酸の混合物とした場合、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)及び無水クエン酸の混合物における、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)及び無水クエン酸の混合比は、当業者が適宜設定でき、例えば、クエン酸カリウムの一水和物、クエン酸ナトリウムの二水和物と無水クエン酸のモル比を、クエン酸カリウムの一水和物1に対してクエン酸ナトリウムの二水和物を0.01~100、無水クエン酸を0.01~100とすることができる。混合比をモル比で約2:2:1としてもよい。
また、好ましいクエン酸のアルカリ金属塩の他の例には、クエン酸ナトリウム又はその水和物が挙げられ、例えば、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)であってもよい。
また、好ましいクエン酸のアルカリ金属塩の他の例には、クエン酸カリウム又はその水和物が挙げられ、例えば、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)であってもよい。
一つの実施態様において、前記混合物における、無水クエン酸のモル数と、クエン酸のナトリウム塩のモル数と、クエン酸のカリウム塩のモル数との混合比は、当業者が適宜設定でき、1:1.7~2.3:1.7~2.3が好ましく、1:1.9~2.1:1.9~2.1がより好ましく、1:1.95~2.05:1.95~2.05が更に好ましく、1:2:2が特に好ましい。
一つの実施態様において、前記混合物における、無水クエン酸のモル数と、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)のモル数と、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)のモル数との混合比は、当業者が適宜設定でき、1:1.7~2.3:1.7~2.3が好ましく、1:1.9~2.1:1.9~2.1がより好ましく、1:1.95~2.05:1.95~2.05が更に好ましく、1:2:2が特に好ましい。
【0022】
一つの実施態様において、本発明の食品組成物に含まれる有効成分としては、クエン酸ナトリウム又はその水和物と、クエン酸カリウム又はその水和物との混合物を含んでいてもよい。
別の実施態様において、本発明の食品組成物に含まれる有効成分としては、クエン酸ナトリウム又はその水和物と、クエン酸カリウム又はその水和物との混合物のみから構成されていてもよい。
本明細書において、クエン酸及びその塩(例えば、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及びクエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O))の重量について言及するときは、その重量は乾燥重量であり得る。
クエン酸のアルカリ金属塩は、アルカリ性化剤とも称され、哺乳動物(特にヒト)の体液、例えば、血液又は尿のHCO3 -濃度やpHを高める能力を有する薬剤としても知られている。
【0023】
本明細書において、「哺乳動物」には哺乳類(Mammalia)に分類される動物が含まれ、特にヒトが好ましい。
【0024】
本明細書において、「アルコール飲料」とは、エタノールを含む飲料を意味し、その種類は特に限定されない。
本明細書において、「悪酔い」とは、アルコール飲料の摂取によって現れる不快な身体的状態を意味し、例えば、悪心、嘔吐、頭痛又はめまい等の症状を伴い得る。一般には、アルコール飲料摂取後、主に、エタノール代謝の過程で生じたアセトアルデヒドに起因する症状であると理解されている。本明細書においては、便宜上、アルコール飲料摂取開始時から12時間以内に生じる上記状態を「悪酔い」と称することとする。
本明細書において、「二日酔い」とは、アルコール飲料の摂取によって現れる不快な身体的状態を意味し、例えば、悪心、嘔吐、頭痛又はめまい等の症状を伴い得る。一般には、アルコール飲料摂取後、主に、エタノール代謝の過程で生じたアセトアルデヒドに起因する症状であると理解されている。本明細書においては、便宜上、アルコール飲料摂取開始時から12時間を超えて24時間以内に生じる上記状態を「二日酔い」と称することとする。すなわち、本明細書において、「悪酔い」及び「二日酔い」には、その症状及び発症原因に本質的な違いはないが、便宜上、アルコール飲料の摂取開始時から症状が発生する時間によって、区別するものとする。
なお、本明細書において、「悪酔い」及び「二日酔い」の状態と、意識障害等を伴う急性アルコール中毒の状態とは明確に区別されるものとする。
「悪酔い」及び「二日酔い」は、例えば、頭重感、吐き気・嘔吐、倦怠感、アルコール残り感、胃の不快感、顔面紅潮、頭痛、悪寒、又は脈拍数の上昇などによって評価することができる。また、これらの症状に対する本発明が提供する食品組成物の効果は、アルコール脱水素酵素の活性値の上昇やアルデヒド脱水素酵素の活性値の上昇によっても評価することができる。
本明細書において、「アルコール摂取直後」とは、アルコール飲料等の摂取開始時から2時間、好ましくは1時間、より好ましくは0.5時間を意味する。
【0025】
本明細書において、「改善」とは、「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状、状態又は疾患を、「健常な」、「正常な」若しくは「快適な」状態に近づけること又はそのためのこと、及び「健常な」、「正常な」若しくは「快適な」状態にすること又はそのためのことを含む概念である。したがって、一つの実施態様において、「改善」とは、「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状又は状態の指標となる数値が、前記「改善」に従って、小さくなるか、若しくは大きくなって、正常な値に近づくか、又は正常な値となることを含む。
【0026】
本明細書において、「健常」とは、急性若しくは慢性の疾患又は障害がない状態を表し、「正常」とは、健常な対象が、通常発現する状態にあることを表し、「快適」とは、不快感がない状態を表す。
本明細書において、「治療」とは、「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状、状態又は疾患を、消失、完治、治癒又は寛解させること、及びそのためのことを含み、「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状、状態又は疾患の悪化を抑制すること、及びそのためのことを含み、また、前記「改善」を含む概念である。ここで、抑制とは後記の意味を有する。一つの実施態様において、「治療」とは、「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状、状態又は疾患を、消失、完治、治癒又は寛解させること、及びそのためのことである。別の実施態様において、「治療」とは、「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状、状態又は疾患を、消失、完治、治癒又は寛解させることである。
本明細書において、「予防」とは、「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状、状態又は疾患の発症を未然に防止すること、及びそのためのことを含む概念である。
【0027】
本明細書において、「抑制」とは、症状、状態若しくは疾患の悪化又は進行を、停止又は減速させること、及びそのためのことを含み、また、前記症状、状態若しくは疾患を改善すること、又はそのためのことを含む概念である。ここで、改善とは前記の意味を有する。前記「症状、状態若しくは疾患の悪化又は進行」は、「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状、状態若しくは疾患の悪化又は進行、及び「健常な」、「正常な」又は「快適な」状態から、「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状、状態若しくは疾患への悪化又は進行を含む。一つの実施態様において、「抑制」とは、症状、状態若しくは疾患の悪化若しくは進行を、停止若しくは減速させること、又はそのためのことである。別の実施態様において、「抑制」とは、症状、状態若しくは疾患の悪化又は進行を、停止又は減速させることである。
【0028】
したがって、本明細書において、「アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制」は、例えば、本発明の食品組成物の摂取前又はコントロールと比較し、頭重感の改善、吐き気・嘔吐の抑制、倦怠感の改善、アルコール残り感の改善、胃の不快感の改善、顔面紅潮の改善、頭痛の改善、悪寒の改善、又は脈拍数の上昇の抑制等として評価することができる。なお、本明細書において、「コントロール」とは、例えば、本発明の食品組成物を摂取することなく、アルコール飲料を摂取した比較対象群等が挙げられる。
本明細書において、「アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制」は、本発明の食品組成物の摂取前又はコントロールと比較し、血中アルコール濃度、血中アセトアルデヒド濃度、及び血中酢酸濃度が、それぞれ、増加していないこと、低いこと、増加傾向にないこと、又は低下傾向にあること等によって評価することができる。
【0029】
血中アルコール濃度及び血中酢酸濃度は、公知の酵素法によって測定することができる。また、血中アセトアルデヒド濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって測定することができる。
【0030】
本明細書において、「アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制」は、本発明の食品組成物の摂取前又はコントロールと比較し、血中ピルビン酸濃度が、低下していないこと、高いこと、低下傾向にないこと、又は増加傾向にあること等によって評価することができる。
血中ピルビン酸濃度は、公知の酵素法によって測定することができる。
【0031】
本明細書において、「アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制」は、アルコールの摂取前の血中乳酸/ピルビン酸比に比較して、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比が-20%~+20%、好ましくは-15%~+15%、より好ましくは-10%~+10%、さらにより好ましくは-5%~+5%の範囲であることによって評価するか、又は本発明の食品組成物の摂取前と比較し、コントロールの血中乳酸/ピルビン酸比から離れる傾向にないか、又は近づく傾向があることによって評価することができる。
血中乳酸濃度は、公知の酵素法によって測定することができるので、上記方法によって測定した血中ピルビン酸濃度との比を算出することができる。
本明細書において、「アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制」は、本発明の食品組成物の摂取前又はコントロールと比較し、アルコール飲料等の摂取開始時から2時間、好ましくは1時間、より好ましくは0.5時間において、血中アルコール濃度が増加していないこと、低いこと、又は単位時間あたりの濃度増加率が小さいこと等によって評価することができる。
本明細書において、「アルコール吸収抑制」は、本発明の食品組成物の摂取前又はコントロールと比較し、血中アルコール濃度が、増加していないこと、低いこと、増加傾向にないこと、又は低下傾向にあること等によって評価することができる。
本明細書において、「アルコール代謝促進」は、本発明の食品組成物の摂取前又はコントロールと比較し、血中アルコール濃度が、増加していないこと、低いこと、増加傾向にないこと、低下傾向にあること、又は低下傾向が大きいこと等によって評価することができる。
【0032】
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の摂取により、摂取前又はコントロールに比較し、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制等の効果を奏するので、本発明が提供する食品組成物は、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用である。
アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制の1つの側面は、摂取したアルコール飲料のアルコールの吸収の抑制であり、別の側面は、摂取したアルコール飲料のアルコールの血中への移行の抑制である。
アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制の別の側面は、アルコール飲料摂取によって吸収されたアルコールの代謝の促進である。
【0033】
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の摂取により、摂取前又はコントロールに比較し、アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制等の効果を奏するので、本発明が提供する食品組成物は、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用である。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の摂取により、摂取前又はコントロールに比較し、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制等の効果を奏するので、本発明が提供する食品組成物は、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用である。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の摂取により、摂取前又はコントロールに比較し、アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制等の効果を奏するので、本発明が提供する食品組成物は、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用である。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の摂取により、摂取前又はコントロールに比較し、アルコール吸収抑制等の効果を奏するので、本発明が提供する食品組成物は、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用である。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の摂取により、摂取前又はコントロールに比較し、アルコール代謝促進等の効果を奏するので、本発明が提供する食品組成物は、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用である。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の摂取により、摂取前又はコントロールに比較し、血中オルニチン濃度の増加、血中タウリン濃度の増加、血中シスチン濃度の増加、又は血中ニコチンアミド濃度の増加等の効果を奏するので、本発明が提供する食品組成物は、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用である。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の摂取により、アルコールの吸収が抑制され、且つアルコールの代謝が促進される。
【0034】
本発明が提供する食品組成物中のクエン酸又はその塩の含量は、食品の種類により、適宜決定され得る。食品組成物の例には、特定保健用食品、機能性表示食品、病院患者用食品、サプリメントが挙げられる。これら、食品組成物の形態としては、前記効果を奏するための有効量のクエン酸又はその塩を含み、経口的に摂取可能な形態であれば特に限定されるものではなく、通常の飲食品の形態であってもよいし、後述のように製剤化し、経口投与に適した製剤、例えば、錠剤、カプセル剤、液剤等の製剤として提供されてもよい。本明細書において、これらの製剤の構成及び製造方法については、医薬の製剤技術の分野(以下、製薬分野と称する場合がある)において、それ自体公知の製剤技術を、本発明が提供する食品組成物の製剤に適用することができる。
【0035】
本発明が提供する食品組成物の製剤は、クエン酸又はその塩を、そのまま、又は食品として許容され得る担体、例えば、賦形剤(例えば、乳糖、D-マンニトール、結晶セルロース、ブドウ糖)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP))、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca))、希釈剤(例えば、水、生理食塩水)、及び必要な場合はその他の添加剤(例えば、pH調整剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤)と混合して調製されていてもよい。本発明が提供する食品組成物の製剤は、製薬又は食品分野において公知の方法を適用して製造することができる。本発明が提供する食品組成物の製剤の剤形としては、錠剤、カプセル剤、液剤等の経口的に摂取できる製剤であり得る。例えば、錠剤とするには、クエン酸又はその塩を、賦形剤(例えば、乳糖、D-マンニトール、結晶セルロース、ブドウ糖)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca))、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP))、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク)等と混合して製剤化してもよい。本明細書において、食品組成物の有効成分が、クエン酸又はその塩であるとき、これらの成分は前記担体には含まれない。
【0036】
本発明が提供する食品組成物中の前記有効成分の量は適宜設定され得る。本発明が提供する食品組成物におけるクエン酸又はその塩の含量は、食品組成物に対し10~95重量%、好ましくは30~90重量%であってもよく、より好ましくは60~85重量%であってもよい。
有効成分であるクエン酸又はその塩の摂取量は、前記有効成分の種類、摂取方法、摂取する対象の年齢、体重、性別、症状、前記有効成分への感受性等に応じて適宜決定されるが、症状の種類、及びその改善若しくは抑制の状況に応じて摂取の時期及び摂取量を調節してよい。
クエン酸又はその塩の1日の摂取量は、例えば、0.1~10g、1~5g、又は1~3gであってもよい。一つの実施態様において、前記食品組成物の製剤は、痛風又は高尿酸血症における酸性尿の改善用の医薬として承認されている医薬製剤と区別できるような、有効成分、その含有量、又は剤形である。
一つの実施態様において、例えば、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性表示食品又は病院患者用食品の場合、1食分の食品あたり、クエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物を合計で1~3gの1/3量含んでいてもよい。特定保健用食品、栄養補助食品、機能性表示食品、病院患者用食品又はサプリメントが錠剤として提供される場合、例えば、1錠あたり、300mg~600mg の錠剤に、70~80重量%のクエン酸又はその塩を含んでいてもよい。
【0037】
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物(例えば、錠剤)の有効成分がクエン酸のアルカリ金属塩(例えば、クエン酸カリウム又はその水和物(例えば、クエン酸カリウムの一水和物);クエン酸ナトリウム又はその水和物(例えば、クエン酸ナトリウムの二水和物);クエン酸カリウム又はその水和物、及びクエン酸ナトリウム又はその水和物の混合物;又はクエン酸カリウムの一水和物及びクエン酸ナトリウムの二水和物の混合物)である場合、本発明が提供する食品組成物(例えば、錠剤)は無水クエン酸を安定化剤として含んでもよい。
【0038】
本発明が提供する食品組成物が製剤化されず、通常の飲食品の形態として提供される場合、当該食品の種類により、当業者が適宜製造でき、例えば、食品素材にクエン酸又はその塩(例えば、クエン酸カリウム及び/又はクエン酸ナトリウム)を配合することにより製造され得る。
前記飲食品の形態としては、飲料、醤油、牛乳、ヨーグルト、味噌等の液状又は乳状又はペースト状食品;ゼリー、グミ等の半固形状食品;飴、ガム、豆腐、サプリメント等の固形状食品;又は粉末状食品等が挙げられる。
飲料としては、果汁・果実飲料、コーヒー飲料、烏龍茶飲料、緑茶飲料、紅茶飲料、麦茶飲料、野菜飲料、ソフトドリンクである炭酸飲料、果実エキス入り飲料、野菜エキス入りジュース、ニアウオーター、スポーツ飲料、ダイエット飲料等が挙げられる。
飲料には、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を、単独又は組み合わせて配合することができる。
【0039】
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物は、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制が必要な対象に適用することができる。
一つの実施態様において、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制が必要な対象とは、哺乳動物(特にヒト)であって、アルコール飲料摂取により、悪酔い若しくは二日酔い等の「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状、状態若しくは疾患を有しない対象か、又は悪酔い若しくは二日酔い等の「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状はあっても疾患若しくは障害を有するとまではいえない対象、すなわち、「健常な」状態にある対象を意味し、本発明が提供する食品組成物は、「健常な」、「正常な」又は「快適な」状態を維持するため、若しくは増進するため、「快適な」状態をより快適な状態にするため、又は悪酔い若しくは二日酔い等の「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状若しくは状態を改善するために適用することができる。
【0040】
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物は、「アルコール飲料の摂取が予定されている人(健常人)」、「アルコール飲料の摂取の可能性がある人(健常人)」、「アルコール飲料を摂取した人(健常人)」、「アルコール飲料の摂取が過ぎた人(健常人)」又は「アルコール飲料の摂取により、悪酔い又は二日酔いの症状を生じている人(健常人)」に対して、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いを抑制するために適用することができる。この場合、本発明が提供する食品組成物の上記摂取量を、アルコール飲料摂取前にあらかじめ摂取してもよく、例えば、アルコール飲料摂取の予定時刻の3時間前、より好ましくは0.5時間前~2時間前か、アルコール飲料摂取後であって、悪酔い若しくは二日酔いの症状が発生する前か、又はアルコール飲料の摂取により悪酔い若しくは二日酔いの症状が発生したときに摂取することができる。
【0041】
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の有効量が、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制が必要な対象に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の有効量が、アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制が必要な対象に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の有効量が、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制が必要な対象に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の有効量が、アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制が必要な対象に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の有効量が、アルコール吸収抑制が必要な対象に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の有効量が、アルコール代謝促進が必要な対象に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物の有効量が、血中オルニチン濃度増加、血中セロトニン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、又は血中ニコチンアミド濃度増加が必要な対象に投与される。
【0042】
一つの実施態様において、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、若しくは血中酢酸濃度増加の抑制が必要な対象;アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制が必要な対象;アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制が必要な対象;アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制が必要な対象;アルコール吸収抑制が必要な対象;アルコール代謝促進が必要な対象;又は血中オルニチン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、若しくは血中ニコチンアミド濃度増加が必要な対象とは、前記アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制を必要とする対象と同じであり得る。
【0043】
「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状、状態若しくは疾患を有しない対象か、又は「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状はあっても疾患若しくは障害を有するとまではいえない対象、すなわち、「健常な」状態にある対象に対して、「健常な」、「正常な」若しくは「快適な」状態を維持するため、若しくは増進するため、「快適な」状態をより快適な状態にするため、又は「病的な」、「異常な」若しくは「不快な」症状若しくは状態を改善するために適用する食品組成物を、特に「機能性表示食品」と称する場合がある。
【0044】
したがって、本発明に係る食品組成物の実施の形態としては以下が挙げられる。
<1-1>クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制用食品組成物;
<1-2>アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む食品組成物を摂取させることを含む、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いを抑制させる方法;及び
<1-3>アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いを抑制するための食品組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用。
【0045】
本発明に係る食品組成物の実施の形態の別の側面としては以下が挙げられる。
<2-1>クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制用、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制用、又は血中酢酸濃度増加の抑制用の食品組成物;
<2-2>アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む食品組成物を摂取させることを含む、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加、血中アセトアルデヒド濃度増加、又は血中酢酸濃度増加を抑制させる方法;及び
<2-3>アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加、血中アセトアルデヒド濃度増加、又は血中酢酸濃度増加を抑制するための食品組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用。
【0046】
本発明に係る食品組成物の実施の形態の別の側面としては以下が挙げられる。
<3-1>クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制用の食品組成物;
<3-2>アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む食品組成物を摂取させることを含む、アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下を抑制させる方法;及び
<3-3>アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下を抑制するための食品組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用。
【0047】
本発明に係る食品組成物の実施の形態の別の側面としては以下が挙げられる。
<4-1>クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制用の食品組成物;
<4-2>アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む食品組成物を摂取させることを含む、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常を抑制させる方法;及び
<4-3>アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常を抑制するための食品組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用。
【0048】
本発明に係る食品組成物の実施の形態の別の側面としては以下が挙げられる。
<5-1>クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制用の食品組成物;
<5-2>アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む食品組成物を摂取させることを含む、アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇を抑制させる方法;及び
<5-3>アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇を抑制するための食品組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用。
【0049】
本発明に係る食品組成物の実施の形態の別の側面としては以下が挙げられる。
<6-1>クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール吸収抑制用の食品組成物;
<6-2>アルコール吸収抑制が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む食品組成物を摂取させることを含む、アルコール吸収を抑制させる方法;及び
<6-3>アルコール吸収を抑制するための食品組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用。
【0050】
本発明に係る食品組成物の実施の形態の別の側面としては以下が挙げられる。
<7-1>クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール代謝促進用の食品組成物;
<7-2>アルコール代謝促進が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む食品組成物を摂取させることを含む、アルコール代謝を促進させる方法;及び
<7-3>アルコール代謝を促進するための食品組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用。
【0051】
本発明に係る食品組成物の実施の形態の別の側面としては以下が挙げられる。
<8-1>クエン酸又はその塩を有効成分として含む、哺乳動物(特にヒト)の、血中オルニチン濃度増加用、血中セロトニン濃度増加用、血中タウリン濃度増加用、血中シスチン濃度増加用、又は血中ニコチンアミド濃度増加用食品組成物;
<8-2>血中オルニチン濃度増加、血中セロトニン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、又は血中ニコチンアミド濃度増加が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む食品組成物を摂取させることを含む、血中オルニチン濃度増加、血中セロトニン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、又は血中ニコチンアミド濃度増加をさせる方法;及び
<8-3>血中オルニチン濃度増加、血中セロトニン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、又は血中ニコチンアミド濃度増加をさせるための食品組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用。
【0052】
血中オルニチン濃度、血中セロトニン濃度、血中タウリン濃度、血中シスチン濃度、及び血中ニコチンアミド濃度の測定は、公知のHPLC法、酵素法、酵素免疫測定法等により測定することができる。
【0053】
本発明に係る食品組成物は、その包装、容器、又は説明書に、アルコール飲料摂取による悪酔い若しくは二日酔いの抑制の効果;アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、若しくは血中酢酸濃度増加の抑制の効果;アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制の効果;アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制の効果;アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制の効果;アルコール吸収抑制の効果;アルコール代謝促進の効果;又は血中オルニチン濃度増加、血中セロトニン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、若しくは血中ニコチンアミド濃度増加の効果が表示されていることが好ましい。
【0054】
2.医薬組成物
本発明が提供する医薬組成物は、有効成分として、クエン酸又はその塩を含むことができる。前記医薬組成物に含まれる、クエン酸又はその塩は、前記食品組成物の有効成分として記載されている、クエン酸又はその塩と同義であり、その具体例も同様であり得る。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物(例えば、錠剤)の有効成分がクエン酸のアルカリ金属塩(例えば、クエン酸カリウム又はその水和物(例えば、クエン酸カリウムの一水和物);クエン酸ナトリウム又はその水和物(例えば、クエン酸ナトリウムの二水和物);クエン酸カリウム又はその水和物、及びクエン酸ナトリウム又はその水和物の混合物;又はクエン酸カリウムの一水和物及びクエン酸ナトリウムの二水和物の混合物)である場合、本発明が提供する医薬組成物(例えば、錠剤)は無水クエン酸を安定化剤として含んでもよい。
【0055】
一つの実施態様として、本発明が提供する医薬組成物の投与により、投与前又はコントロールに比較し、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制が認められる。
一つの実施態様として、本発明が提供する医薬組成物の投与により、投与前又はコントロールに比較し、哺乳動物(特にヒト)の、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制が認められる。
【0056】
アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制の1つの側面は、摂取したアルコール飲料のアルコールの吸収の抑制であり、別の側面は、摂取したアルコール飲料のアルコールの血中への移行の抑制である。
アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制の別の側面は、アルコール飲料摂取によって吸収されたアルコールの代謝の促進である。
【0057】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の投与により、投与前又はコントロールに比較し、アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制等の効果を奏するので、本発明が提供する医薬組成物は、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用である。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の投与により、投与前又はコントロールに比較し、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制等の効果を奏するので、本発明が提供する医薬組成物は、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用である。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の投与により、投与前又はコントロールに比較し、アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制等の効果を奏するので、本発明が提供する医薬組成物は、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用である。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の投与により、投与前又はコントロールに比較し、アルコール吸収抑制等の効果を奏するので、本発明が提供する医薬組成物は、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用である。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の投与により、投与前又はコントロールに比較し、アルコール代謝促進等の効果を奏するので、本発明が提供する医薬組成物は、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用である。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の投与により、投与前又はコントロールに比較し、血中オルニチン濃度の増加、血中タウリン濃度の増加、血中シスチン濃度の増加、又は血中ニコチンアミド濃度の増加等の効果を奏するので、本発明が提供する医薬組成物は、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に有用である。
【0058】
本発明が提供する医薬組成物は、ヒト又はその他の哺乳動物に経口又は非経口で投与され、非経口投与の例には、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、関節内投与、経粘膜投与、経皮投与、経鼻投与、直腸投与、髄腔内投与、腹腔内投与、局所投与が挙げられる。
【0059】
本発明が提供する医薬組成物は、クエン酸又はその塩を、そのまま、又は薬学的に許容され得る担体、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、希釈剤、及び必要な場合はその他の添加剤と混合して調製されてもよく、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、注射剤、坐薬等の製剤であり得る。
前記賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、希釈剤、及びその他の添加剤は、食品組成物において記載されている、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、希釈剤、及びその他の添加剤と同じものを使用することができる。また、本発明が提供する食品組成物が経口的な摂取に適した錠剤、カプセル剤及び懸濁剤等に製剤化され得るのに対し、本発明が提供する医薬組成物は、食品組成物の経口的な摂取に適した剤形に加えて、注射剤又は坐薬等の非経口的な投与に適した剤形に製剤化され得る。
【0060】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は錠剤である。本発明が提供する医薬組成物の錠剤におけるクエン酸又はその塩の含量は、錠剤に対し10~95重量%、好ましくは30~90重量%であってもよく、より好ましくは60~85重量%であってもよい。
有効成分であるクエン酸又はその塩の投与量は、前記有効成分の種類、投与方法、投与する対象の年齢、体重、性別、症状、前記有効成分への感受性等に応じて適宜決定されるが、症状の種類、及びその改善若しくは抑制の状況に応じて投与の時期及び投与量を調節してよい。
クエン酸又はその塩の1日の投与量は、例えば、0.1~10g、1~5g、又は1~3gであってもよい。
【0061】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、クエン酸のアルカリ金属塩として、クエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物を、それぞれ0.5~1.5g/日で合計1~3g/日、1日1~5回、好ましくは1日3回に分けて経口投与するものである。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、1投与単位(好ましくは1錠の錠剤)に、クエン酸のアルカリ金属塩として、クエン酸カリウム一水和物231.5mg及びクエン酸ナトリウム二水和物195.0mgを含み、1日に3投与単位ないし6投与単位を、1日3回に分けて経口投与するものである。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、アルコール摂取の前(例えば、アルコール摂取の直前、アルコール摂取の0~30分前、アルコール摂取の0~1時間前、アルコール摂取の0~3時間前)に投与される。
【0062】
上記「1.食品組成物」において記載されている、「摂取」という用語は、本発明に係る「医薬組成物」にも適用することができ、さらに、本発明に係る「医薬組成物」については、用語「摂取」を、「投与」と読み替えることができる。したがって、例えば、用語「摂取する」、「摂取させる」、「摂取される」等は、「投与する」、「投与させる」等と文脈に応じて語形変化させて読み替えることができ、製剤化された食品組成物に適用される技術が、医薬組成物にも適用できる。
【0063】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の有効量が、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制を必要とする対象(例えば、ヒト又はその他の哺乳動物)に投与される。
【0064】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の有効量が、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの治療又は予防を必要とする対象に投与され、例えば、アルコール飲料摂取による、頭重感、吐き気・嘔吐、倦怠感、アルコール残り感、胃の不快感、腹痛、胃腸障害、顔面紅潮、頭痛、悪寒、及び脈拍数の上昇からなる群から選択される少なくとも一つの症状の抑制を必要とする対象に投与される。
【0065】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の有効量が、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制が必要な対象に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の有効量が、アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制が必要な対象に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の有効量が、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制が必要な対象に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の有効量が、アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制が必要な対象に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の有効量が、アルコール吸収抑制が必要な対象に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の有効量が、アルコール代謝促進が必要な対象に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の有効量が、血中オルニチン濃度増加、血中セロトニン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、又は血中ニコチンアミド濃度増加が必要な対象に投与される。
【0066】
一つの実施態様において、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、若しくは血中酢酸濃度増加の抑制が必要な対象;アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制が必要な対象;アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制が必要な対象;アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制が必要な対象;アルコール吸収抑制が必要な対象;アルコール代謝促進が必要な対象;又は血中オルニチン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、若しくは血中ニコチンアミド濃度増加が必要な対象とは、前記アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制を必要とする対象と同じであり得る。
【0067】
本発明の実施の他の形態の例としては以下が挙げられる。
(1-1)アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む医薬組成物を投与することを含む、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いを抑制させる方法;
(1-2)アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む医薬組成物を投与することを含む、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加、血中アセトアルデヒド濃度増加、又は血中酢酸濃度増加を抑制させる方法;
(1-3)アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む医薬組成物を投与することを含む、アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下を抑制させる方法;
(1-4)アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む医薬組成物を投与することを含む、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常を抑制させる方法;
(1-5)アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む医薬組成物を投与することを含む、アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇を抑制させる方法;
(1-6)アルコール吸収抑制が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む医薬組成物を投与することを含む、アルコール吸収を抑制させる方法;
(1-7)アルコール代謝促進が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む医薬組成物を投与することを含む、アルコール代謝を促進させる方法;
(1-8)血中オルニチン濃度増加、血中セロトニン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、又は血中ニコチンアミド濃度増加が必要な対象に、有効量のクエン酸又はその塩を含む医薬組成物を投与することを含む、血中オルニチン濃度増加、血中セロトニン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、又は血中ニコチンアミド濃度増加をさせる方法;
(1-9)前記対象が、腎臓病に罹患している患者である、前記(1-1)~(1-8)のいずれか1つに記載の方法;
【0068】
(2-1)アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-2)腎臓病患者における、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制に使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-3)アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制に使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-4)腎臓病患者における、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制に使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-5)アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制に使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-6)腎臓病患者における、アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制に使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-7)アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制に使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-8)腎臓病患者における、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制に使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-9)アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制に使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-10)腎臓病患者における、アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制に使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-11)アルコール吸収抑制に使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-12)腎臓病患者における、アルコール吸収抑制に使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-13)アルコール代謝促進に使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-14)腎臓病患者における、アルコール代謝促進に使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-15)血中オルニチン濃度増加、血中セロトニン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、又は血中ニコチンアミド濃度増加をさせることに使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
(2-16)腎臓病患者における、血中オルニチン濃度増加、血中セロトニン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、又は血中ニコチンアミド濃度増加をさせることに使用するための、クエン酸又はその塩を含む医薬組成物;
【0069】
(3-1)アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制のための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;
(3-2)腎臓病患者における、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制のための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;
(3-3)アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制のための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;
(3-4)腎臓病患者における、アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、又は血中酢酸濃度増加の抑制のための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;
(3-5)アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制のための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;
(3-6)腎臓病患者における、アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制のための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;
(3-7)アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制のための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;
(3-8)腎臓病患者における、アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制のための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;
(3-9)アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制のための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;
(3-10)腎臓病患者における、アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制のための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;
(3-11)アルコール吸収抑制のための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;
(3-12)腎臓病患者における、アルコール吸収抑制のための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;
(3-13)アルコール代謝促進のための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;
(3-14)腎臓病患者における、アルコール代謝促進のための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;
(3-15)血中オルニチン濃度増加、血中セロトニン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、又は血中ニコチンアミド濃度増加をさせるための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用;及び
(3-16)腎臓病患者における、血中オルニチン濃度増加、血中セロトニン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、又は血中ニコチンアミド濃度増加をさせるための医薬組成物を製造するための、クエン酸又はその塩の使用。
【0070】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0071】
実施例1
腎血管結紮による腎障害ミニブタモデル(Gottingen Minipigs、雄性、n=3、20ヵ月齢、オリエンタル酵母工業株式会社伊那MP生産センター)に、クエン酸製剤(1錠中に231.5mgのクエン酸カリウムと195.0mgのクエン酸ナトリウム水和物及び72.5mgのクエン酸を含む)4錠を飼料200gと混ぜ合わせ、1日3回7日間給餌した(I期)。その後7日間の休薬期間を設け、再びクエン酸製剤4錠を含む飼料を1日3回7日間給餌した(II期)。I期のクエン酸製剤投与前(1)、投与最終日(2)、休薬最終日(3)、II期の投与最終日(4)の4ポイントで採血し、血漿サンプルを得た。サンプルは適切な前処理を施したのち、CE-TOFMS装置(Agilent Technologies社)を用いて、キャピラリー電気泳動-質量分析法により代謝物質の測定を行った。得られた代謝物の量は相対面積値として算出し、ウェルチのt検定による群間比較を行った。
その結果、以下が確認された。
クエン酸製剤投与前(1)に比べ、II期(4)のオルニチンレベルが増加することが確認された(p=0.0711)(図1)。
休薬期間中(3)に比べ、II期(4)のセロトニンレベルが増加することが確認された(p=0.0511)(図2)。
試験開始前(1)に比べI期(2)、休薬期間(3)に比べII期(4)のタウリンレベルが増加する傾向が確認された(図3)。
休薬期間(3)に比べ、II期(4)のシスチンレベルが有意に増加することが確認された(図4)。
試験開始前(1)及び休薬期間(2)に比べ、II期(4)のニコチンアミドレベルが増加することが確認された(図5)。
【0072】
実施例2
SD系雄性ラット(8週齢)にCitrate水溶液(100mL中にクエン酸三カリウム13.92g、クエン酸三ナトリウム11.7g、無水クエン酸4.38mgを含む水溶液)を投与量10mL/kgで投与し、30分後に採血した後にエタノール溶液(10mL(20v/w%)/kg)を投与した(以下、Citrate溶液を投与した対象をCitrate群と称する場合がある)。その後30分毎に2時間まで採血し、血中のエタノール濃度(酵素法)、アセトアルデヒド濃度(HPLC法)、酢酸濃度(酵素法)、乳酸濃度(酵素法)、及びピルビン酸(酵素法)濃度を、それぞれ測定した。対照群として、Citrate水溶液の代わりに精製水を投与した。また、採血時点が同じである乳酸濃度及びピルビン酸濃度から、乳酸/ピルビン酸比を求めた。それらの結果を、図6~11に示した。
【0073】
その結果、エタノールについて、Citrate群では,対照群と比較して,投与後0.5~2時間のいずれの時点でも低値が認められた.アセトアルデヒド及び酢酸についても,エタノールとほぼ同様の傾向が認められた.Citrate投与により,エタノールの代謝が促進、及び/又は吸収が阻害されたと考えられた。
Citrate群において、アルコール摂取直後における血中アルコール濃度がほとんど上昇しなかったことから、Citrate水溶液投与によるアルコール吸収の抑制が示唆される。また、Citrate群において、エタノール投与1時間後に血中ピルビン酸及び血中乳酸が増加傾向にあり、ピルビン酸から乳酸への変換によって産生されるNADがアルコール代謝を促進すると考えられることから、Citrate水溶液投与によるアルコール代謝の促進が示唆される。
【0074】
乳酸及びピルビン酸については、Citrate群では投与前の値と比較して,投与後0.5~2時間のいずれの時点でも高値を示した。一方、乳酸/ピルビン酸比については、対照群の乳酸/ピルビン酸比はCitrate群よりも常に高く、時間経過とともに増加傾向を示した。Citrate群の乳酸/ピルビン酸比は、エタノール溶液投与前の値(正常値)から一定の範囲で推移した。したがって、Citrate投与により、血中乳酸/ピルビン酸比異常が抑制されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0075】
哺乳動物、特にヒトにおいて、アルコール飲料摂取による悪酔い又は二日酔いの抑制;アルコール飲料摂取による血中アルコール濃度増加の抑制、血中アセトアルデヒド濃度増加の抑制、若しくは血中酢酸濃度増加の抑制;アルコール飲料摂取による血中ピルビン酸濃度低下の抑制;アルコール飲料摂取による血中乳酸/ピルビン酸比異常の抑制;アルコール摂取直後の血中アルコール濃度上昇抑制;アルコール吸収抑制;アルコール代謝促進;又は血中オルニチン濃度増加、血中セロトニン濃度増加、血中タウリン濃度増加、血中シスチン濃度増加、若しくは血中ニコチンアミド濃度増加に有用な食品組成物又は医薬組成物を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11