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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】衛星信号捕捉
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/24 20100101AFI20240905BHJP
   B64G 3/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G01S19/24
B64G3/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020566850
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019034770
(87)【国際公開番号】W WO2019232287
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】62/678,831
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/425,682
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516247177
【氏名又は名称】カイメタ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】クリーガー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】メイソン ティモシー
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01703352(EP,A1)
【文献】特開2017-106891(JP,A)
【文献】特開2014-77769(JP,A)
【文献】特開2012-163509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/254903(US,A1)
【文献】米国特許第5917446(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/285784(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00 - 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星アンテナを使用するための方法であって、
1又は2以上のセンサを使用してヨーを推定することを含む、アンテナ方位を推定するステップと、
少なくとも処理ロジックを用いて、少なくとも部分的に、受信機によって、アンテナの各異なる指向方向について衛星からのRF信号を受信することによって無線周波数(RF)信号検出を実行し、かつ前記受信機によって、各受信指向方向と関連する前記受信されたRF信号を表す1又は複数の受信機メトリックを生成することによって、前記衛星アンテナを用いて複数の信号探索を実行することを含む、衛星信号を探索するための信号捕捉プロセスを実行するステップと、を含み、
前記複数の信号探索は、互いに対して時間的にインターリーブされた、一度に1つずつ実行されるインターリーブされたヨー探索であり、前記衛星信号が見つかるまで前記衛星信号を探索するための推定されたヨーに少なくとも部分的に基づき、前記インターリーブされたヨー探索は、前記推定されたヨー方位に基づく前記アンテナ方位の第1の所定の度数の内の全360°ヨー探索領域の第1の部分の探索が実行される第1のヨー探索と前記第1のヨー探索の対象であった前記全360°ヨー探索領域の任意の部分を閉塞する前記全360°ヨー探索領域の第2の部分の探索が実行される第2のヨー探索とを含み、前記複数の信号探索を実行することは、
a)前記第1のヨー探索を実行し、所定の基準を満たす前記衛星信号が見つかるか否かを判定することと、
b)前記第1のヨー探索を用いて前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからなかったと判定すると、前記第2のヨー探索を実行することと、
c)前記第2のヨー探索が前記所定の基準を満たす前記衛星信号を見つけなかったと判定すると、前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つかるまで時間内にa)とb)の間で繰り返すことと、を含み、
更に、前記インターリーブされたヨー探索を実行することは、
どの前記インターリーブされたヨー探索がその時に実施されているかに基づいて、前記第1のヨー探索で使用するための第1のヨー値又は前記第2のヨー探索で使用するための第2のヨー値を選択することと、
前記衛星信号の捕捉を試みるために、前記推定されたアンテナ方位及び前記第1のヨー値又は前記第2のヨー値の選択に基づいて受信ビームを生成することと、を含む、
方法。
【請求項2】
どの前記インターリーブされたヨー探索がその時に実施されているかに基づいて、前記第1のヨー探索で使用するための第1のヨー値又は前記第2のヨー探索で使用するための第2のヨー値を選択することは、記第1ヨー探索実行した結果、前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからなかったと判定すると、前記第2のヨー値を選択することと前記第2のヨー探索を実行した結果、前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからなかったと判定すると、前記第1のヨー値を選択することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インターリーブされたヨー探索は、
前記1又は2以上のセンサからの前記推定されたヨー方位の近くで前記第1の部分において第1の領域を探索することと、
次に、前記推定されたヨー方位の近くで前記第1の部分を探索したときに、所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからないと判定すると、前記全360°ヨー探索の前記第2の部分を探索することと、
次に、全360°ヨー探索の前記部分を探索したときに、前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからないと判定すると、前記第1の部分において第2の領域を探索することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記全360°ヨー探索の前記第2の部分を探索することは、前記所定の基準を満たす前記衛星信号の受信をもたらさなかった前記第2の部分内の1又は2以上の以前の探索領域を閉塞することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヨーを推定することは、前記アンテナが移動している場合に全地球測位システム(GPS)ヘディングを使用して、前記アンテナが移動していない場合にアンテナ方位を生成するために前記アンテナ上の慣性計測ユニット(IMU)を使用して、実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記信号捕捉プロセスを実行するステップは、
前記衛星からの前記受信されたRF信号のうちの1つが、見つかった衛星信号に関連する所定の基準を満たすか否かを判定するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1又は2以上の信号メトリックは、信号対雑音比(SNR)又は搬送波対雑音比(C/N)を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記衛星からの前記RF信号を受信することは、前記アンテナの開口を電子的に操縦することにより実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
衛星装置であって、
1又は2以上のセンサを使用するヨーの推定を含む、アンテナ方位情報及びアンテナ位置情報を生成する慣性計測ユニット(IMU)と、
前記IMUに結合され、少なくとも部分的に推定されたヨーに基づく複数のインターリーブされた信号探索のために衛星信号を取得するための信号捕捉プロセスの一部としての信号捕捉中にビーム方向を計算する計算ユニットであって、前記複数の信号探索は、互いに対して時間的にインターリーブされた、一度に1つずつ前記計算ユニットにより実行されるインターリーブされたヨー探索であり、前記衛星信号が見つかるまで前記衛星信号を探索するための推定されたヨーに少なくとも部分的に基づき、前記インターリーブされたヨー探索は、前記推定されたヨー方位に基づいて前記アンテナ方位情報の第1の所定の度数の内の全360°ヨー探索領域の第1の部分の探索が実行される第1のヨー探索と前記第1のヨー探索の対象であった前記全360°ヨー探索領域の任意の部分を閉塞する前記全360°ヨー探索領域の第2の部分の探索が実行される第2のヨー探索とを含み、前記計算ユニットは、
a)前記第1のヨー探索を実行し、所定の基準を満たす前記衛星信号が見つかるか否かを判定することと、
b)前記第1のヨー探索を用いて前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからなかったと判定すると、前記第2のヨー探索を実行することと、
c)前記第2のヨー探索が前記所定の基準を満たす前記衛星信号を見つけなかったと判定すると、前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つかるまで時間内にa)とb)の間で繰り返すことと、
により、前記複数の信号探索を実行するように構成され、
更に、前記計算ユニットは、部分的に、
どの前記インターリーブされたヨー探索がその時に実施されているかに基づいて、前記第1のヨー探索で使用するための第1のヨー値又は前記第2のヨー探索で使用するための第2のヨー値を選択することと、
前記衛星信号の捕捉を試みるために、前記推定されたアンテナ方位及び前記第1のヨー値又は前記第2のヨー値の選択に基づいて受信ビームを生成することと、
により、前記インターリーブされたヨー探索を実行するように構成される、
計算ユニットと、
前記計算ユニットに結合され、前記ビーム方向に応答して、各ビーム方向について衛星からの無線周波数(RF)信号を受信する電子式操縦可能アンテナ開口と、
前記電子式操縦可能アンテナ開口及び前記IMUに結合されて、各ビーム方向と関連する受信されたRF信号を表す1又は2以上の受信機メトリックを生成するように動作可能であるモデムと、
を含む、衛星装置。
【請求項10】
前記計算ユニットは、前記電子式操縦可能アンテナで受信した衛星信号が所定の基準を満たすまで、前記複数のインターリーブされた信号探索の一部であるビーム方向を繰り返し計算する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
どの前記インターリーブされたヨー探索がその時に実施されているかに基づいて、前記第1のヨー探索で使用するための第1のヨー値又は前記第2のヨー探索で使用するための第2のヨー値を選択することは、記第1ヨー探索実行した結果、前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからなかったと判定すると、前記第2のヨー値を選択することと前記第2のヨー探索を実行した結果、前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからなかったと判定すると、前記第1のヨー値を選択することとを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記インターリーブされたヨー探索は、
前記1又は2以上のセンサからの前記推定されたヨー方位の近くで前記第1の部分において第1の領域を探索することと、
次に、前記推定されたヨー方位の近くで前記第1の部分を探索したときに、所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからないと判定すると、前記全360°ヨー探索の前記第2の部分を探索することと、
次に、全360°ヨー探索の前記部分を探索したときに、前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからないと判定すると、前記第1の部分において第2の領域を探索することと、
を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記全360°ヨー探索の前記第2の部分を探索することは、前記所定の基準を満たす前記衛星信号の受信をもたらさなかった前記第2の部分内の1又は2以上の以前の探索領域を閉塞することを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ヨー推定値は、前記電子式操縦可能アンテナが移動している場合にアンテナ方位を推定するために全地球測位システム(GPS)ヘディングを使用して、前記電子式操縦可能アンテナが移動していない場合にアンテナ方位を生成するために前記電子式操縦可能アンテナ上の前記IMUを使用して、推定される、請求項9に記載の装置。
【請求項15】
前記電子式操縦可能アンテナは、前記アンテナの各受信指向方向に向かって衛星からの無線周波数(RF)信号を受信することによって無線周波数(RF)信号検出を実行するように動作可能であり、
更に、前記モデムは、前記アンテナの各受信指向方向と関連する前記受信されたRF信号を表す前記1又は2以上の受信機メトリックを生成するように、かつ前記衛星からの前記受信されたRF信号のうちの1つが、見つかった衛星信号に関連する所定の基準を満たすか否かを判定するように動作可能である、請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記1又は2以上の信号メトリックは、信号対雑音比(SNR)又は搬送波対雑音比(C/N)を含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
システムによって実行されたときに前記システムに方法を実行させる命令を格納する1又は2以上の非一時的コンピュータ可読媒体を有する製品であって、
前記方法は、
1又は2以上のセンサを使用してヨーを推定することを含む、アンテナ方位情報を生成するステップと、
少なくとも処理ロジックを用いて、少なくとも部分的に、受信機によって、アンテナの各異なる指向方向について衛星からのRF信号を受信することによって無線周波数(RF)信号検出を実行し、かつ前記受信機によって、各受信指向方向と関連する前記受信されたRF信号を表す1又は複数の受信機メトリックを生成することによって前記衛星アンテナを用いて複数の信号探索を実行することを含む、衛星信号を探索するための信号捕捉プロセスを実行するステップと、を含み、
前記複数の信号探索は、一度に1つずつ実行されるインターリーブされたヨー探索であり、互いに対して時間的にインターリーブされ、前記衛星信号が見つかるまで前記衛星信号を探索するための推定されたヨーに少なくとも部分的に基づき、前記インターリーブされたヨー探索は、前記推定されたヨー方位に基づく前記アンテナ方位情報の第1の所定の度数の内の全360°ヨー探索領域の第1の部分の探索が実行される第1のヨー探索と前記第1のヨー探索の対象であった前記全360°ヨー探索領域の任意の部分を閉塞する前記全360°ヨー探索領域の第2の部分の探索が実行される第2のヨー探索とを含み、前記複数の信号探索を実行することは、
a)前記第1のヨー探索を実行し、所定の基準を満たす前記衛星信号が見つかるか否かを判定することと、
b)前記第1のヨー探索を用いて前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからなかったと判定すると、前記第2のヨー探索を実行することと、
c)前記第2のヨー探索が前記所定の基準を満たす前記衛星信号を見つけなかったと判定すると、前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つかるまで時間内にa)とb)の間で繰り返すことと、を含み、
更に、前記インターリーブされたヨー探索を実行することは、
どの前記インターリーブされたヨー探索がその時に実施されているかに基づいて、前記第1のヨー探索で使用するための第1のヨー値又は前記第2のヨー探索で使用するための第2のヨー値を選択することと、
前記衛星信号の捕捉を試みるために、前記推定されたアンテナ方位及び前記第1のヨー値又は前記第2のヨー値の選択に基づいて受信ビームを生成することと、を含む、
製品。
【請求項18】
どの前記インターリーブされたヨー探索がその時に実施されているかに基づいて、前記第1のヨー探索で使用するための第1のヨー値又は前記第2のヨー探索で使用するための第2のヨー値を選択することは、記第1ヨー探索実行した結果、前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからなかったと判定すると、前記第2のヨー値を選択することと前記第2のヨー探索を実行した結果、前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからなかったと判定すると、前記第1のヨー値を選択することとを含む、請求項17に記載の製品。
【請求項19】
前記インターリーブされたヨー探索は、
前記1又は2以上のセンサからの前記推定されたヨー方位の近くで前記第1の部分において第1の領域を探索することと、
次に、前記推定されたヨー方位の近くで前記第1の部分を探索したときに、所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからないと判定すると、前記全360°ヨー探索の前記第2の部分を探索することと、
次に、全360°ヨー探索の前記部分を探索したときに、前記所定の基準を満たす前記衛星信号が見つからないと判定すると、前記第1の部分において第2の領域を探索することと、
を含む、請求項18に記載の製品。
【請求項20】
ヨー推定値を推定することは、前記アンテナを移動している場合に全地球測位システム(GPS)ヘディングを使用して実行される、請求項17に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本特許出願は、「ROBUST METHOD TO REDUCE SATELLITE ACQUISITION TIMES WHEN USING LOW QUALITY SENSORS(低品質センサを使用した場合の衛星捕捉時間を短縮するための堅牢な方法)」という名称の、2018年5月31日に出願された対応する米国仮特許出願第62/678,831号、及び「SATELLITE SIGNAL ACQUISITION(衛星信号捕捉)」という名称の、2019年5月29日に出願された本出願の米国特許出願第16/425,682号に対する優先権を主張し、これらを引用により組み込む。
【0002】
(技術分野)
本発明の実施形態は、アンテナの分野に関し、より具体的には、本発明の実施形態は、推定ヨー値を使用したアンテナでの衛星信号の捕捉に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の衛星信号の捕捉は、地上受信機ユニットのアンテナ及び受信機が衛星からの信号を受信して復調できるように地上受信機ユニットを調整するプロセスである。このプロセスは、通常、電気モータ、高精度傾斜計、ジャイロスコープ、及び磁気コンパスを必要とする。信号捕捉プロセス中、受信機は、受信機が衛星信号を検出できるようになるまで空間的に探索し、次に、信号をロックオンして、信号を送信している衛星に関する基本情報を取得する。次いで、受信機は、この情報を使用して、当該衛星によって送信された追加情報を受信し復号することができる。
【0004】
従来の手法は、ジンバルを用いて螺旋パターンでアンテナ組立体を機械的に移動させていた。探索中、アンテナ組立体の動きは、或るパターンに従う。二重正弦波運動は、半径を増大させながら衛星信号を探索するのに使用される螺旋パターンを生成する。すなわち、捕捉パターンは、2つの軸で正弦波運動によって引き起こされる螺旋である。
【0005】
パラボラアンテナが、ジンバルに取り付けられて、衛星と移動プラットフォーム上の地上局との間で通信すると、方位角、仰角、及び偏波(polarization)に関する正確な設定値を動的に決定する必要がある。このことは、GPSと組み合わせて使用され、パラボラアンテナの位置及び方位を報告できるIMU(慣性計測ユニット)を使用して実施可能である。IMUからの値を使用して、ジンバルを目標衛星に向けて、フィードホーンの回転を調整して適正な偏波を達成するよう、リアルタイム計算を行うことができる。IMU値が誤差を含むので、各々の精度は誤差の影響を受ける。パラボラディッシュは、受信(Rx)ビーム及び送信(Tx)ビームを独立して誘導することができないので、IMU誤差を補正するパラボラディッシュの能力が制限される。
【0006】
受信及び送信アンテナビームの独立した誘導を可能にする別の種類のアンテナが存在する。フェーズドアレイは、機械的アレイと同様に周知の実施例である。これらの実施例の両方は、物理的に切り離された送信アンテナ及び受信アンテナを使用する。
【0007】
フェーズドアレイアンテナを使用する場合に、フェーズドアレイアンテナがビームを見つけることができない状況が存在する場合がある。この例は、フェーズドアレイアンテナを有する船舶が、アンテナが取り付けられた方向と整列していない方向に移動している場合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願第14/550,178号明細書
【文献】米国特許出願第14/610,502号明細書
【文献】米国特許公開第2015/0236412号明細書
【発明の概要】
【0009】
衛星信号の捕捉を実行するための方法及び装置が記載される。1つの実施形態において、衛星アンテナを使用する方法は、1又は2以上のセンサを使用してヨーを推定することを含む、アンテナが移動しているときにアンテナ方位(antenna orientation)を推定するステップと、衛星アンテナによって実行される複数の信号探索(signal searches)をインターリーブすることによって衛星アンテナを用いて衛星信号を探索するために信号捕捉を実行するステップとを含み、複数の信号探索は、推定されたヨーに基づく。
【0010】
本発明は、以下に示す詳細な説明及び本発明の様々な実施形態の添付図面からより完全に理解されるであろうが、これらは、本発明を特定の実施形態に限定するものと解釈すべきではなく、単に説明及び理解のためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ヨーインターリービングの一例を示す図である。
図2】ヨーインターリービングの別の例を示す図である。
図3】衛星信号捕捉のためのプロセスの1つの実施形態のフローチャートである。
図4】ヨーインターリービングアルゴリズムの1つの実施形態の別のフローチャートである。
図5】信号捕捉技法を実行するアンテナシステムの1つの実施形態を示す図である。
図6】円筒状給電ホログラフィック放射状開口アンテナ(aperture antenna)の1つの実施形態の概略図を示す。
図7】グランドプレーン及び再構成可能共振器層を含む1列のアンテナ素子(antenna elements)の斜視図を示す。
図8A】同調可能共振器/スロットの1つの実施形態を示す図である。
図8B】物理的アンテナ開口(antenna aperture)の1つの実施形態の断面図を示す。
図9A】スロット付きアレイを形成する様々な層の1つの実施形態を示す図である。
図9B】スロット付きアレイを形成する様々な層の1つの実施形態を示す図である。
図9C】スロット付きアレイを形成する様々な層の1つの実施形態を示す図である。
図9D】スロット付きアレイを形成する様々な層の1つの実施形態を示す図である。
図10】円筒状給電アンテナ構造の1つの実施形態の側面図を示す。
図11】外向き波と共にアンテナシステムの別の実施形態を示す図である。
図12】アンテナ素子に対するマトリクス駆動回路の配置の1つの実施形態を示す図である。
図13】TFTパッケージの1つの実施形態を示す図である。
図14】同時送信及び受信経路を有する通信システムの1つの実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明において、本発明のより完全な説明を提供するために数多くの詳細事項が記載されている。しかしながら、当業者であれば、本発明がこれらの特定の詳細なしに実施できることは明らかであろう。場合によっては、本発明を不明確にすることのないように、周知の構造及びデバイスは、詳細には示さずにブロック図の形式で示される。
【0013】
概要
本発明の実施形態は、衛星信号捕捉を実行するための方法及び装置を含む。1つの実施形態では、本明細書で開示される衛星信号捕捉技法は、推定が正確である多くのシステムにおける迅速な捕捉のための推定を依然として効果的に使用しながら、アンテナの姿勢の推定がヨーにおいて重大な誤差を有する場合において衛星捕捉に対して堅牢性を付加する。
【0014】
より具体的には、捕捉探索空間を縮小するために、本明細書で開示される衛星信号捕捉技法は、限定ではないが、ヨー推定のために、加速度計、磁力計、ジャイロスコープを含む1又は2以上のセンサ、並びに移動時に全地球測位システム(GPS)ヘディング(heading)が使用される場合のアンテナ方位の推定に依存する。1つの実施形態では、アンテナ方位を推定した結果は、アンテナ方位のヨーの推定値が得られることである。例えば、1つの実施形態では、ヨーの推定値は、静止時に磁力計、又は移動時にGPSヘディングを使用することによって得られる。移動時にヨー推定値としてGPSヘディングを使用することは、一般に磁力計ベースのヨーと比較して有意な改善点であるが、アンテナが車両の進行方向ベクトルと正確に整列して設置されていること(すなわち、車両対アンテナオフセットがほぼゼロであり、車両(又はアンテナが取り付けられている他の物体)とアンテナが同じ方向に移動していること)に依存する。車両の動きの方向がアンテナ方位と整列していない場合、GPSヘディング推定の使用時に正確なヨー方位推定値が存在しないことになる。
【0015】
1つの実施形態では、ヨーの推定を含むアンテナ方位の推定を使用すると、信号捕捉プロセスは、より信頼度の高い推定でヨーの方向での探索に時間を費やし、より信頼度の低いヨー推定の方向での探索にはより短い時間を費やすアルゴリズムを使用する。最終的な捕捉を確保するために、1つの実施形態では、探索アルゴリズムは、GPSヘディング推定値の近くでの360度探索繰り返し探索にインターリーブして、整列が正確である場合に捕捉時間を短縮し、場合によっては捕捉時間を最小にしながら、ヨーの360度不確定性領域全体を探索する。この改善は、迅速な捕捉時間を提供しながら、衛星ビームが常に見つかることを保証する。
【0016】
従って、1つの実施形態では、探索アルゴリズムは、低精度で安価なセンサに基づく不十分な方位推定に対する回復機能がありながら、平均捕捉時間を短縮する確率論的重み付き探索アルゴリズムである。別の言い方をすれば、本発明の実施形態は、信頼できないセンサデータから得られた方位推定値により与えられる限定領域を探索すると共に、時間内に全360°ヨー探索をインターリーブすることによる確率論的重み付き捕捉を使用する。
【0017】
本明細書で記載される手法は、高速捕捉時間と、並びに全ヨーを探索して衛星アンテナに衛星信号を見つけさせる機能とを提供する。これらの手法は、閉塞後の捕捉時間を短縮するのに極めて有用である。更に、使用される従来技術の信号捕捉アルゴリズムとは対照的に、アンテナがビームを見つけることができなかった(例えば、アンテナを備えた船舶が、設備と整列していない方向に移動している、例えば、ボートが、その進行方向でない方向の波により押されているなどの)状況では、本明細書で開示される技法は、衛星信号をより高速に捕捉することができる。
【0018】
1つの実施形態では、本プロセスにおいて、GPSを使用したアンテナ方位推定値と車両の移動方向との間の整列を表す車両アンテナオフセットの推定が含まれる。1つの実施形態では、これは、GPS方向ベクトルと、衛星を追跡することによって与えられるヨーとの間の差分を測定することによって推定することができる。これは、車両対アンテナオフセットを自動的に調整する1つの手法である。異なるヨーベースの探索をインターリーブすること並びに車両対アンテナオフセットを推定することの両方を組み合わせることにより、全てではないが多くの場合に探索時間が短縮される。アンテナ方位に対する移動方向が変化した場合、新しい方位オフセットが決定される必要があり、探索時間を増加させる可能性がある。この例は、トンネル内で停車して後退している列車である。
【0019】
本明細書で開示される技法の1つの目的は、設置誤差が生じた場合でも依然として捕捉が行われることを確保しながら、利用可能なヨーセンサデータを最大限に活用することである。すなわち、システムの観点から、本明細書で記載される技法は、低精度/安価なセンサを使用したアンテナを用いて衛星信号捕捉を可能にするので有利である。
【0020】
以下の説明は、1又は2以上の実施形態の物理的構造の説明及び図を示している。
【0021】
図1は、2つの異なるタイプの探索パターン、すなわち、縮小探索空間101及び全360°探索空間102を示している。縮小探索空間101は、衛星信号に対するセンサベースのヨー探索であり、他方、360度探索空間102は、ヨーの一部又は全360度を探索する探索である。1つの実施形態では、これら2つの探索の両方がインターリーブされる。センサが正確であり、アンテナ方位の良好な推定を行うことができる場合、必要とされる全てのことは、縮小探索空間101を探索することである。しかしながら、低品質のヨー方位推定値が存在する場合、場合によっては、全360°探索が目標信号を見つけるのに必要である。
【0022】
図2は、ヨーインターリービングを使用して衛星信号を探索するアルゴリズムの1つの実施形態を示している。図2を参照すると、Nは、センサ提供ヨーの近くの空間が衛星信号を求めて探索される時間期間を表す。1つの実施形態では、時間N+1で信号(例えば、所定の基準を満たす衛星信号)を検出する際に探索が何もない場合、アルゴリズムは、衛星信号を求めて全360°ヨー探索の一部を探索する。全360°ヨー探索の一部を探索した後、所定の基準を満たす衛星信号が依然として見つからない(すなわち、依然として何もない)場合、アルゴリズムは、再度、時間N+2で最も可能性の高いセンサヨー探索を探索する。1つの実施形態では、アルゴリズムは、一方が利用可能である場合に、信号が見つかるまで時間内に両方のタイプの探索パターンをインターリーブする。
【0023】
図3は、衛星信号捕捉のためのプロセスの1つの実施形態のフローチャートである。このプロセスは、ハードウェア(回路、専用論理回路など)、ソフトウェア(汎用コンピュータシステム、サーバ、又は専用マシン上で実行されるものなど)、ファームウェア、又はこれら3つの組み合わせを備えることができる処理ロジックによって実行される。1つの実施形態では、このプロセスは、衛星アンテナ(例えば、以下でより詳細に説明されるものなど、電子的に操縦可能なメタマテリアルアンテナ素子を有する平面アンテナ)によって実行される。
【0024】
図3を参照すると、本プロセスは、1又は2以上のセンサを使用してヨーを推定することを含む、アンテナが移動しているときにアンテナ方位を推定するステップ(処理ブロック301)から開始する。1つの実施形態では、アンテナ方位を推定するステップは、アンテナ上の1又は2以上のセンサ(例えば、磁力計など)を使用して推定される。1つの実施形態では、アンテナ方位を推定するステップは、アンテナが移動している場合にアンテナ方位を推定するよう全地球測位システム(GPS)ヘディングを使用して推定される。1つの実施形態では、アンテナ方位のヨーが推定される。従って、このような場合、推定されたヨーを含むアンテナ方位の何れかの生成は、推定アンテナ方位とみなされる。
【0025】
アンテナ方位を推定した後、処理ロジックは、衛星アンテナによって実行される複数の信号探索をインターリーブすることによって衛星アンテナを用いて衛星信号を探索する信号捕捉プロセスを実行し、これら複数の信号探索は、推定されたヨーに基づく(処理ブロック302)。1つの実施形態では、探索は、インターリーブされたヨー探索(interleaved yaw searches)を含む。1つの実施形態では、インターリーブされたヨー探索は、1又は2以上のセンサからの推定されたヨー方位(estimated yaw orientation)の第1の所定の度数(first predetermined number of degrees)の内の全360°ヨー探索空間の第1の部分の探索が実行される第1のヨー探索と、全360°ヨー探索空間の第2の部分の探索が実行される第2のヨー探索とを含み、第1の部分及び第2の部分は異なる。
【0026】
例えば、1つの実施形態では、インターリーブされたヨー探索は、1又は2以上のセンサから得られた推定されたヨー方位の方向の近くで第1の部分において第1の空間を探索するステップと、次に、推定されたヨー方位の方向の近くの第1の部分を探索したときに、所定の基準を満たす衛星信号が見つからない場合に、全360°ヨー探索の第2の部分を探索するステップと、次いで、全360°ヨー探索の当該部分を探索したときに、所定の基準を満たす衛星信号が見つからない場合に、第1の部分において第2の空間を探索するステップと、を含む。
【0027】
1つの実施形態では、全360°ヨー探索の一部を探索するステップは、所定の基準を満たす適正な衛星信号の受信をもたらさなかった当該部分内の1又は2以上の以前の探索領域を閉塞するステップを含む。1つの実施形態では、メモリは、既に探索されたヨー値の指示値を格納し、Rx指向に対する新しいヨー値を出力する前に、メモリがチェックされて、このヨー値が信号捕捉探索中に既に使用されていたか否かを確認する。これは、捕捉をもたらすものでないことが既に判明しているヨー値を使用する必要がないことに起因する。このような場合、代わりに別のヨー値が出力される。
【0028】
1つの実施形態では、信号捕捉を実行するステップは、アンテナの各受信指向方向(receive pointing direction)に向かって衛星からの無線周波数(RF)信号を受信して、アンテナの各受信指向方向と関連する受信RF信号を表す1又は2以上の受信機メトリック(receiver metrics)を生成することによって無線周波数(RF)信号検出を実行するステップと、衛星からの受信RF信号のうちの1つが、見つかった衛星信号に関連する所定の基準を満たすか否かを判定するステップとを含む。1つの実施形態では、1又は2以上の信号メトリック(signal metrics)は、受信信号強度インジケータ(RSSI)、信号対雑音比(SNR)又は搬送波対雑音比(C/N)を含む。1つの実施形態では、衛星からのRF信号は、アンテナの開口(aperture)を物理的に位置決めすることなく受信される。
【0029】
図4は、衛星信号捕捉のために複数の探索をインターリーブするヨーインターリービングアルゴリズムを使用した探索プロセスの1つの実施形態に関連する別のデータフロー図である。1つの実施形態では、捕捉プロセスは、以下の通りである。
・ステップ1:センサデータに基づいてアンテナ方位を推定する(例えば、方位のヨーを推定する)。1つの実施形態では、これは、アンテナが静止している場合(例えば、アンテナを搭載する車両又は船舶が移動していない)場合の磁力計、又はアンテナがある場所から別の場所に移動している場合のGPSによるものの何れかである。このステップは、アンテナが、移動する物体(車両、船舶など)に取り付けられている場合に行うことができる。
・ステップ2:限定された最も可能性の高いヨー探索を実行する(図4における入力A)。例えば、1つの実施形態では、最適なヨー推定値内で0度~5度にわたって探索する。度数は、5である必要はなく、任意の数とすることができる点に留意されたい。
・ステップ3:信号が見つからなかった場合に、全360°探索の一部を実行する(図4における入力B)。例えば、1つの実施形態では、全360°探索の5度又は5度~10度を選択する。度数は、5である必要はなく、任意の度数とすることができる点に留意されたい。
・信号が見つかるまで、時間内にステップ2とステップ3の両方の間で繰り返す。
【0030】
図4を参照すると、入力Aでの最も可能性の高いヨーの探索(401)に関連するヨー値、及び入力Bでの全360°探索の一部の探索に関連するヨー値は、電子式操縦可能アンテナ(electronically-steerable antenna)の受信(Rx)ビームを指向するのに使用される選択に利用される。セレクタ又は他の選択機構405は、アンテナRx指向ユニット410に対して入力A又は入力Bからの1又は2以上のヨー値を入力のために選択する。1つの実施形態では、セレクタ405は、1又は2以上の制御信号に基づいて選択を行う。1つの実施形態では、制御信号は、Nが偶数である場合に、セレクタ405に入力Aのヨー値を選択させ、Nが偶数でない場合に、このセレクタに入力Bのヨー値を選択させる。
【0031】
アンテナRx指向ユニット410はまた、アンテナ方位推定値409を受け取る。これらの入力を使用して、アンテナRx指向ユニット410は、入力A又は入力Bから受け取った各ヨー値に関する受信ビームを生成して、衛星信号の捕捉を試みる。1つの実施形態では、アンテナRx指向ユニット410は、例えば、以下に説明するものなどのビーム方向及び偏波計算ユニットを使用して、方向及び偏波を有するビームを生成する。
【0032】
ビームを指向させた後、信号検出器415は、信号検出を実行して、衛星信号を捕捉する。衛星信号が捕捉されたか否かに関する判定が行われる(420)。1つの実施形態では、この判定はモデムによって行われる。
【0033】
信号が見つかった場合には、信号捕捉プロセスが行われる。信号が見つからない場合、Nが1だけインクリメントされ、これにより、セレクタ405に対して、アンテナRx指向ユニット410に入力されるヨー値を、入力A及びBのうちの一方から他方に変更させる。
【0034】
本明細書で記載される技法に対する幾つかの代替案がある。1つの代替案は、全空間探索を実行することであり、これにより、正確に整列したシステムについての捕捉時間が極めて増加することになる。別の代替案は、ヨーセンサによって提供されるヨーの近くでのみ常に探索することであり、これにより、正確に整列されていないシステムの場合に絶えず捕捉が行われることが防止できる。
【0035】
図5は、上述した信号捕捉技法を実行するアンテナシステムの1つの実施形態を示している。図5を参照すると、慣性計測ユニット(IMU)501は、ビーム方向計算ユニット502で受け取った複数の値(IMU)520を生成する。1つの実施形態では、値520は、電子式操縦可能アンテナ503の方位の推定値を含む。1つの実施形態では、値520は、ロール、ピッチ、ヨー、及び位置情報(例えば、緯度及び経度)を含む。1つの実施形態では、ヨーは、センサ500(例えば、磁力計など)又はGPSのうちの1又は2以上からの推定ヨー値である。
【0036】
IMU501から出力された推定ヨー521は、信号捕捉及び追跡中にヨー値をビーム方向計算ユニット502に提供するヨー値生成器510により受け取られる。1つの実施形態では、信号捕捉中、ヨー値生成器510は、インターリーブ探索のうちのどれが行われているかに基づいてヨー値を生成する。1つの実施形態では、信号捕捉中、信号捕捉コントローラ511からの1又は2以上の制御信号に応答して、ヨー値生成器510は、最も可能性の高いヨーに関連するヨー値(例えば、最も可能性の高いヨーのうちの、所定の度数(例えば、5、6、7、8、9、10度など)の中のヨー値)、又は全360°ヨー探索に関連するヨー値(例えば、全360°ヨー探索のうちの、所定の度数(例えば、5、6、7、8、9、10度など)のヨー値)を生成する。
【0037】
1つの実施形態では、ヨー値生成器510は、1又は2以上のヨー値がヨー値生成器510から出力されることを防ぐための閉塞ロジック501Aを含む。1つの実施形態では、これは、信号捕捉をもたらさなかった全360°ヨー探索を探索する際に既に使用されたヨー値を用いて信号探索が行われる場合に使用される。これは、特にこれらの探索が誤った衛星からの信号を捕捉することをもたらすと認識されている場合に、全360°ヨー探索の失敗部分を繰り返すことを回避するのに有利である。従って、既知の誤った衛星ビームを繰り返す必要がないことにより、捕捉時間が短縮される。
【0038】
また、ビーム方向計算ユニット502は、衛星位置(例えば、緯度及び経度)及び偏波530を受け取る。これらの入力に応答して、ビーム方向計算ユニット502は、当該技術分野で周知の方法で電子式操縦可能アンテナ503に提供されてこのアンテナを制御するシータ及びファイ値502を生成することによってアンテナ受信指向を実行する。例えば、シータの範囲は[0,90]度とすることができ、ファイの範囲は[0,360]度とすることができ、偏波の範囲は[0,360]度とすることができる。1つの実施形態では、ビーム方向計算ユニット502はまた、電子式操縦可能アンテナ503に提供される偏波値を生成する。1つの実施形態では、偏波値は、当該技術分野で周知の方法でビーム方向計算ユニット502によって生成される。
【0039】
電子式操縦可能アンテナ503の受信部は、新しい指向角度を使用してビームを生成し、衛星550からRF信号を得てこの信号をモデム505に提供する。これに応答して、モデム505は、受信メトリック(例えば、SNR、C/Nなど)を生成し、信号検出器505Aを使用して、衛星信号が検出されたか又はそれ以外の場合で見つかったか否かを判定する。1つの実施形態では、信号検出器505Aは、当該技術分野で周知の方法で、信号が1又は2以上の所定の基準(例えば、所定の閾値より大きいSNR又はC/N)を満たすか否かに基づいて、衛星信号が見つかったか否かを判定する。
【0040】
モデム505は、衛星信号が信号捕捉コントローラ51lに見けられたか否かについての結果を出力する。所定の基準を満たす衛星信号が見つかったことを示す結果に応答して、信号捕捉コントローラ51lは、ヨー値生成器510を制御して、インターリーブ捕捉に関連するヨー値の生成を停止し、代わりに、IMU501からのヨー値を通過させる。所定の基準を満たす衛星信号が見つからなかったことを示す結果に応答して、信号捕捉コントローラ51lは、インターリーブ探索の一部であるヨー値を出力し続けるようにヨー値生成器510を制御する。1つの実施形態では、これは、制御信号(例えば、図4におけるようなNを指定する制御信号)の更新を含むことができる。
【0041】
アンテナ実施形態の例
上述した技法は、平面アンテナと共に使用することができる。このような平面アンテナの実施形態が開示される。平面アンテナは、アンテナ開口上にアンテナ素子の1又は2以上のアレイを含む。1つの実施形態において、アンテナ素子は、液晶セルを備える。1つの実施形態において、平面アンテナは、行及び列状に配置されていないアンテナ素子の各々を一意的にアドレス指定してこれらのアンテナ素子を駆動するマトリクス駆動回路を含む円筒状給電アンテナである。1つの実施形態において、素子は、リング状に配置される。
【0042】
1つの実施形態において、アンテナ素子の1又は2以上のアレイを有するアンテナ開口は、共に結合された複数のセグメントから構成される。セグメントの組み合わせは、共に結合された場合に、アンテナ素子の閉じた同心リングを形成する。1つの実施形態において、同心リングは、アンテナ給電部に対して同心である。
【0043】
アンテナシステムの実施例
1つの実施形態において、平面アンテナは、メタマテリアルアンテナシステムの一部である。通信衛星地上局用のメタマテリアルアンテナシステムの実施形態について説明する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、民間商用衛星通信用のKa帯域周波数又はKu帯域周波数の何れかを使用して動作するモバイルプラットフォーム(例えば、航空、海上、陸上、その他)上で動作する衛星地上局(ES)のコンポーネント又はサブシステムである。アンテナシステムの実施形態はまた、モバイルプラットフォーム上ではない地上局(例えば、固定地上局又は可搬地上局)で使用することもできる点に留意されたい。
【0044】
1つの実施形態において、アンテナシステムは、表面散乱メタマテリアル技術を使用して、別個のアンテナを介して送受信ビームを形成して誘導する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、ビームを電気的に形成して誘導するのにデジタル信号処理を使用するアンテナシステム(フェーズドアレイアンテナなど)とは対照的に、アナログシステムである。
【0045】
1つの実施形態において、アンテナシステムは、3つの機能的サブシステム、すなわち、(1)円筒波給電アーキテクチャからなる導波構造、(2)アンテナ素子の一部である波散乱メタマテリアル単位セルのアレイ、及び(3)ホログラフィ原理を使用してメタマテリアル散乱素子からの調整可能な放射場(ビーム)の形成を命令する制御構造から構成される。
【0046】
アンテナ素子
図6は、円筒状給電ホログラフィック放射状開口アンテナの1つの実施形態の概略図を示している。図6を参照すると、アンテナ開口は、円筒状給電アンテナの入力給電部602の周りに同心リング状に配置されたアンテナ素子603の1又は2以上のアレイ601を有する。1つの実施形態において、アンテナ素子603は、RFエネルギーを放射する無線周波数(RF)共振器である。1つの実施形態において、アンテナ素子603は、アンテナ開口の全表面上に交互配置され分散されるRxアイリス及びTxアイリスの両方を備える。このようなRxアイリス及びTxアイリス、又はスロットは、各セットが別々にかつ同時に制御される帯域のためのものである場合の3又は4以上のセットからなるグループ内にあるとすることができる。このようなアンテナ素子の実施例は、以下に更に詳細に説明される。本明細書で記載されるRF共振器は、円筒状給電部を含まないアンテナで使用できる点に留意されたい。
【0047】
1つの実施形態において、アンテナは、入力給電部602を介して円筒波給電を供給するのに使用される同軸給電部を含む。1つの実施形態において、円筒波給電アーキテクチャが、給電点から円筒状に外向きに広がる励起を中心点からアンテナに供給する。すなわち、円筒状給電アンテナは、外向きに進む同心状給電波(outward travelling concentric feed wave)を生成する。それでも、円筒状給電部の周りの円筒状給電アンテナの形状は、円形、正方形、又は何らかの形状とすることができる。別の実施形態では、円筒状給電アンテナは、内向きに進む給電波(inward travelling feed wave)を生成する。このような場合には、円形構造から生じる給電波が最も自然である。
【0048】
1つの実施形態において、アンテナ素子603は、アイリスを備え、図6の開口アンテナは、同調可能液晶(LC)材料を通ってアイリスを放射させるための円筒状給電波からの励起を使用することによって形成される主ビームを生成するのに使用される。1つの実施形態において、アンテナは、所望の走査角で水平又は垂直に偏極した電界を放射するように励起することができる。
【0049】
1つの実施形態において、アンテナ素子は、パッチアンテナのグループを備える。このパッチアンテナのグループは、散乱メタマテリアル素子のアレイを備える。1つの実施形態において、アンテナシステムにおける各散乱素子は、下部導体、誘電体基板、及び上部導体からなる単位セルの一部であり、上部導体は、この上部導体にエッチング又は堆積された相補的電気誘導型容量性共振器(「相補型電気LC」又は「CELC」)を組み込んでいる。当業者には理解されるように、液晶とは対照的に、CELCの関連でのLCは、インダクタンス・キャパシタンスを指す。
【0050】
1つの実施形態において、液晶(LC)が、散乱素子の周りのギャップに配置される。このLCは、上述の直接駆動実施形態によって駆動される。1つの実施形態において、液晶は、各単位セル内に封入され、スロットに関連する下部導体をそのパッチに関連する上部導体から分離する。液晶は、この液晶を含む分子の配向の関数である誘電率を有し、分子の配向(及びひいては誘電率)は、液晶両端間のバイアス電圧を調節することによって制御することができる。1つの実施形態において、この特性を使用して、液晶は、誘導波からCELCへのエネルギー伝達のためのオン/オフスイッチを統合する。スイッチオンになると、CELCは、電気的に小さいダイポールアンテナのような電磁波を放射する。本明細書での教示は、エネルギー伝達に関して2値的に動作する液晶を有することに限定されない点に留意されたい。
【0051】
1つの実施形態において、このアンテナシステムの給電幾何形状は、アンテナ素子を波動給電の波動ベクトルに対して45度(45°)の角度で位置決めすることを可能にする。他の位置(例えば、40°の角度)が使用できる点に留意されたい。素子のこの位置は、素子によって受信されるか又は素子から送信/放射される自由空間波の制御を可能にする。1つの実施形態において、アンテナ素子は、アンテナの作動周波数の自由空間波長より短い素子間隔で配列される。例えば、1波長につき4つの散乱素子が存在する場合には、30GHz送信アンテナ内の素子は、約2.5mm(すなわち、30GHzの10mm自由空間波長の4分の1)となる。
【0052】
1つの実施形態において、2組の素子は、互いに垂直であり、同じ同調状態に制御される場合に、等しい振幅の励起を同時に有する。給電波の励起に対してこれらの素子をプラスマイナス45度回転させることにより、両方の所望の機能が同時に達成される。一方の組を0度回転させ、他方を90度回転させることによって、垂直目標は達成されるが、等振幅励起目標は達成されない。0度と90度を使用して、2つの側部から単一構造のアンテナ素子アレイを給電する場合に、分離が達成できる点に留意されたい。
【0053】
各単位セルから放射されるパワーの量は、コントローラを使用してパッチに電圧(液晶チャネルの両端の電位)を印加することによって制御される。各パッチに対するトレースは、パッチアンテナに電圧を供給するのに使用される。この電圧は、キャパシタンス及び従って個々の素子の共振周波数を同調又は離調させて、ビーム形成を達成するのに使用される。必要とされる電圧は、使用される液晶混合物に依存する。液晶混合物の電圧同調特性は、液晶が電圧の影響を受け始める閾値電圧と、それを超える電圧の増加が液晶での大きな同調をもたらさない飽和電圧とによって主として説明される。これら2つの特性パラメータは、液晶混合物が異なると変化する場合がある。
【0054】
1つの実施形態において、上述のように、マトリクス駆動を使用してパッチに電圧を印加して、各セルが、各セルに対して別個の接続を有することなく他の全てのセルから切り離して駆動されるようになる(直接駆動)。素子が高密度であるために、マトリクス駆動は、各セルを個別にアドレス指定するのに効率的な方法である。
【0055】
1つの実施形態において、アンテナシステム用の制御構造は、2つの主要な構成要素を有し、すなわち、アンテナシステム用の駆動電子機器を含むアンテナアレイコントローラは、波散乱構造(本明細書で記載されるものなどの表面散乱アンテナ素子)の下方にあり、その一方、マトリクス駆動スイッチングアレイは、放射を妨害しないように放射RFアレイ全体にわたって散在している。1つの実施形態において、アンテナシステム用の駆動電子機器は、各散乱素子へのACバイアス信号の振幅又はデューティサイクルを調節することによって、この散乱素子に対するバイアス電圧を調節する市販のテレビジョン装置で使用される市販の既製LCD制御装置を備える。
【0056】
1つの実施形態において、アンテナアレイコントローラはまた、ソフトウェアを実行するマイクロプロセッサを包含する。制御構造はまた、プロセッサに位置及び方位情報を提供するセンサ(例えば、GPS受信機、3軸コンパス、3軸加速度計、3軸ジャイロ、3軸磁力計など)を組み込むこともできる。位置及び方位情報は、地上局内の他のシステムによってプロセッサに提供することができ、及び/又はアンテナシステムの一部でない場合がある。
【0057】
より具体的には、アンテナアレイコントローラは、作動周波数でどの素子がオフにされてどの素子がオンにされるか、及びどの位相及び振幅のレベルにするかを制御する。素子は、電圧印加によって周波数作動に対して選択的に離調される。
【0058】
送信に関して、コントローラは、RFパッチに一連の電圧信号を供給して変調パターン又は制御パターンを生成する。制御パターンは、素子を異なる状態に変化させる。1つの実施形態において、多状態制御が使用され、そこでは、方形波(すなわち、正弦波グレイシェード変調パターン)とは対照的に、様々な素子が様々なレベルにオン及びオフにされ、更に正弦波制御パターンが近似される。1つの実施形態において、放射する素子もあれば放射しない素子もあるのではなく、一部の素子が他の素子よりも強く放射する。可変放射は、特定の電圧レベルを印加することによって達成され、これにより、液晶の誘電率が様々な量に調節され、これにより、素子を可変的に離調させて一部の素子を他の素子よりも多く放射させる。
【0059】
素子のメタマテリアルアレイによる集束ビームの生成は、建設的干渉及び相殺的干渉の現象によって説明することができる。個々の電磁波は、自由空間で遭遇するときに同じ位相を有する場合に加え合わされ(建設的干渉)、自由空間で遭遇するときに逆位相である場合に互いに打ち消し合う(相殺的干渉)。各連続するスロットが誘導波の励起点から異なる距離に位置決めされるように、スロット付きアンテナ内のスロットが位置決めされた場合に、その素子からの散乱波は、前のスロットの散乱波と異なる位相を有することになる。スロットが、誘導波長の4分の1離間している場合に、各スロットは、前のスロットから4分の1の位相遅延で波を散乱させることになる。
【0060】
このアレイを使用すると、生成できる建設的干渉及び相殺的干渉のパターン数が増加することができるので、ビームは、ホログラフィの原理を使用して、理論的にはアンテナアレイのボアサイトからプラスマイナス90度(90°)の任意の方向に指向させることができる。従って、どのメタマテリアル単位セルがオン又はオフにされるかを制御することにより(すなわち、どのセルがオンにされてどのセルがオフにされるかについてのパターンを変更することにより)、建設的干渉及び相殺的干渉の異なるパターンが生成でき、アンテナは、主ビームの方向を変化させることができる。単位セルをオン及びオフにするのに必要な時間は、1つの位置から別の位置にビームを切り換えることができる速度によって定まる。
【0061】
1つの実施形態において、アンテナシステムは、アップリンクアンテナ用の1つの操縦可能ビームと、ダウンリンクアンテナ用の1つの操縦可能ビームとを生成する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、メタマテリアル技術を使用してビームを受信して、衛星からの信号を復号し、衛星に向けられる送信ビームを形成する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、ビームを電気的に形成して誘導するのにデジタル信号処理を使用するアンテナシステム(フェーズドアレイアンテナなど)とは対照的に、アナログシステムである。1つの実施形態において、アンテナシステムは、特に従来型衛星ディッシュベースの受信機と比較した場合に、平面的で比較的薄型である「面」アンテナとみなされる。
【0062】
図7は、グランドプレーンと再構成可能共振器層とを含む1列のアンテナ素子の斜視図を示している。再構成可能共振器層1230は、同調可能スロット1210のアレイを含む。同調可能スロット1210のアレイは、アンテナを所望の方向に指向させるように構成することができる。同調可能スロットの各々は、液晶両端間の電圧を変化させることによって同調/調節することができる。
【0063】
制御モジュール又はコントローラ1280は、再構成可能共振器層1230に結合されて、図8Aでの液晶両端間の電圧を変化させることにより同調可能スロット1210のアレイを変調する。制御モジュール1280は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)、マイクロプロセッサ、コントローラ、システム・オン・チップ(SoC)、又は他の処理論理回路を含むことができる。1つの実施形態において、制御モジュール1280は、同調可能スロット1210のアレイを駆動するために論理回路(例えば、マルチプレクサ)を含む。1つの実施形態において、制御モジュール1280は、同調可能スロット1210のアレイ上に駆動されるホログラフィック回折パターンに関する仕様を含むデータを受信する。ホログラフィック回折パターンは、この回折パターンがダウンリンクビーム(及び、アンテナシステムが送信を実行する場合には、アップリンクビーム)を通信に適した方向に誘導するように、アンテナと衛星との間の空間的関係に応じて生成することができる。各図には描かれていないが、制御モジュール1280に類似する制御モジュールが、本開示の図にて記載される同調可能スロットの各アレイを駆動することができる。
【0064】
更に、RF基準ビームがRFホログラフィック回折パターンに遭遇するときに所望のRFビームを生成することができる類似の技術を使用して、無線周波数(「RF」)ホログラフィが可能である。衛星通信の場合に、基準ビームは、給電波1205(幾つかの実施形態では、約20GHz)などの給電波の形態である。給電波を放射ビームに変換するために(送信目的又は受信目的の何れかで)、所望のRFビーム(目標ビーム)と給電波(基準ビーム)との間での干渉パターンが計算される。干渉パターンは、給電波が所望のRFビーム(所望の形状及び方向を有する)に「誘導される」ように、回折パターンとして同調可能スロット1210のアレイ上に駆動される。言い換えると、ホログラフィック回折パターンに遭遇する給電波は、目標ビームを「再構成」し、このビームは、通信システムの設計要件に従って形成される。ホログラフィック回折パターンは、各素子の励起を包含し、導波路内の波動方程式としてのwinと、外向き波(outgoing wave)に関する波動方程式としてのwoutとを用いて、whologram=win*woutによって計算される。
【0065】
図8Aは、同調可能共振器/スロット1210の1つの実施形態を示している。同調可能スロット1210は、アイリス/スロット1212と、放射パッチ1211と、アイリス1212とパッチ1211との間に配置された液晶1213とを含む。1つの実施形態において、放射パッチ1211は、アイリス1212と同じ場所に配置される。
【0066】
図8Bは、物理的アンテナ開口の1つの実施形態の断面図を示している。アンテナ開口は、グランドプレーン1245と、再構成可能共振器層1230に含まれるアイリス層1233内の金属層1236とを含む。1つの実施形態において、図8Bのアンテナ開口は、図8Aの複数の同調可能共振器/スロット1210を含む。アイリス/スロット1212は、金属層1236内の開口部(openings)によって規定される。図8Aの給電波1205などの給電波は、衛星通信チャネルと適合性のあるマイクロ波周波数を有することができる。給電波は、グランドプレーン1245と共振器層1230との間を伝播する。
【0067】
再構成可能共振器層1230はまた、ガスケット層1232及びパッチ層1231を含む。ガスケット層1232は、パッチ層1231とアイリス層1233との間に配置される。1つの実施形態において、スペーサは、ガスケット層1232に置き換えることができる点に留意されたい。1つの実施形態において、アイリス層1233は、金属層1236として銅層を含むプリント回路基板(PCB)である。1つの実施形態において、アイリス層1233はガラスである。アイリス層1233は、他のタイプの基板であってもよい。
【0068】
銅層において開口部をエッチングして、スロット1212を形成することができる。1つの実施形態において、アイリス層1233は、導電性接合層によって図8Bの別の構造(例えば、導波路)に導電的に結合される。1つの実施形態において、アイリス層は、導電性接合層によって導電的に結合されず、代わりに非導電性接合層と接合される点に留意されたい。
【0069】
パッチ層1231はまた、放射パッチ1211として金属を含むPCBとすることもできる。1つの実施形態において、ガスケット層1232は、金属層1236とパッチ1211との間の寸法を規定する機械的離隔部(スタンドオフ)を提供するスペーサ1239を含む。1つの実施形態において、スペーサは75ミクロンであるが、他のサイズ(例えば、3mmから200mm)を使用することができる。上述のように、1つの実施形態において、図8Bのアンテナ開口は、図8Aのパッチ1211、液晶1213、及びアイリス1212を含む、同調可能共振器/スロット1210などの複数の同調可能共振器/スロットを備える。液晶1213のためのチャンバは、スペーサ1239、アイリス層1233、及び金属層1236によって規定される。チャンバが液晶で満たされた場合に、パッチ層1231は、共振器層1230内に液晶をシールするようにスペーサ1239上に積層することができる。
【0070】
パッチ層1231とアイリス層1233との間の電圧を変調して、パッチとスロット(例えば、同調可能共振器/スロット1210)と間のギャップ内の液晶を同調させることができる。液晶1213の両端間電圧を調節することにより、スロット(例えば、同調可能共振器/スロット1210)のキャパシタンスが変化する。従って、スロット(例えば、同調可能共振器/スロット1210)のリアクタンスは、このキャパシタンスを変化させることにより変化することができる。スロット1210の共振周波数はまた、次式:
【数1】
に従って変化し、ここで、fは、スロット1210の共振周波数であり、L及びCは、それぞれ、スロット1210のインダクタンス及びキャパシタンスである。スロット1210の共振周波数は、導波路を伝播する給電波1205から放射されるエネルギーに影響を与える。一例として、給電波1205が20GHzである場合に、スロット1210の共振周波数は、17GHzに調節されて(キャパシタンスを変化させることにより)、スロット1210が、給電波1205からのエネルギーを実質的に結合しないようにすることができる。或いは、スロット1210の共振周波数は、スロット1210が給電波1205からのエネルギーを結合してこのエネルギーを自由空間に放射するように、20GHzに調節することができる。所与の例は、2値的である(完全に放射するか又は全く放射しない)が、スロット1210のリアクタンス及び従ってこのスロットの共振周波数の完全グレイスケール制御は、多値範囲にわたって電圧を変化させることにより可能である。従って、各スロット1210から放射されるエネルギーが精密に制御されて、同調可能スロットのアレイが、精緻なホログラフィック回折パターンを形成できるようになる。
【0071】
1つの実施形態において、一列に並んだ同調可能スロットは、互いからλ/5だけ離間している。他の間隔を使用することもできる。1つの実施形態において、一列に並んだ各同調可能スロットは、隣接する列内の最も近い同調可能スロットからλ/2だけ離間しており、従って、異なる列にあって同じ配向の同調可能スロットは、λ/4だけ離間しているが、他の間隔が可能である(例えば、λ/5、λ/6.3)。別の実施形態では、一列に並んだ各同調可能スロットは、隣接する列内の最も近い同調可能スロットからλ/3だけ離間している。
【0072】
実施形態は、2014年11月21日出願の「Dynamic Polarization and Coupling Control from a Steerable Cylindrically Fed Holographic Antenna(操縦可能円筒給電式ホログラフィックアンテナからの動的偏波及び結合制御)」という名称の米国特許出願第14/550,178号明細書、及び2015年1月30日出願の「Ridged Waveguide Feed Structures for Reconfigurable Antenna(再構成可能アンテナのためのリッジ型導波路給電構造)」という名称の米国特許出願第14/610,502号明細書に記載されているものなどの再構成可能メタマテリアル技術を使用する。
【0073】
図9Aから9Dは、スロット付きアレイを形成する様々な層の1つの実施形態を示している。アンテナアレイは、図1Aに示されている例示的なリングのようにリング状に位置決めされたアンテナ素子を含む。この実施例において、アンテナアレイは、2つの異なるタイプの周波数帯域に使用される2つの異なるタイプのアンテナ素子を有する点に留意されたい。
【0074】
図9Aは、スロットに対応する位置を有する第1のアイリス基板層の一部分を示している。図9Aを参照すると、円は、アイリス基板の底部側におけるメタライゼーション内の開放エリア/スロットであり、給電部(給電波)との素子の結合を制御するためのものである。この層は、任意選択の層であり、全ての設計で使用されるとは限らない点に留意されたい。図9Bは、スロットを包含する第2のアイリス基板層の一部分を示している。図9Cは、第2のアイリス基板層の一部分の上のパッチを示している。図9Dは、スロット付きアレイの一部分の上面図を示している。
【0075】
図10は、円筒状給電アンテナ構造の1つの実施形態の側面図を示している。このアンテナは、二重層給電構造(すなわち、2つの給電構造層)を使用して内向き進行波を生成する。1つの実施形態において、アンテナは、円形の外形を含むが、このことは、必須ではない。すなわち、非円形内向き進行構造を使用することができる。1つの実施形態において、図10におけるアンテナ構造は、2014年11月21日出願の「Dynamic Polarization and Coupling Control from a Steerable Cylindrically Fed Holographic Antenna(操縦可能円筒給電式ホログラフィックアンテナからの動的偏波及び結合制御)」という名称の米国特許公開第2015/0236412号明細書に記載のものなどの同軸給電部を含む。
【0076】
図10を参照すると、同軸ピン1601は、アンテナの下層の場を励起するのに使用される。1つの実施形態において、同軸ピン1601は、容易に入手できる50Ω同軸ピンである。同軸ピン1601は、導電性グランドプレーン1602であるアンテナ構造の底部に結合(例えば、ボルト締め)される。
【0077】
内部導体である浸入型導体1603は、導電性グランドプレーン1602から切り離される。1つの実施形態において、導電性グランドプレーン1602及び浸入型導体1603は、互いに平行である。1つの実施形態において、グランドプレーン1602と浸入型導体1603との間の距離は、0.1インチから0.15インチである。別の実施形態では、この距離は、λ/2とすることができ、ここで、λは、作動周波数での進行波の波長である。
【0078】
グランドプレーン1602は、スペーサ1604を介して浸入型導体1603から切り離される。1つの実施形態において、スペーサ1604は、発泡体又は空気状スペーサである。1つの実施形態において、スペーサ1604は、プラスチックスペーサを含む。
【0079】
誘電体層1605が、浸入型導体1603の上部に存在する。1つの実施形態において、誘電体層1605は、プラスチックである。誘電体層1605の目的は、自由空間速度に対して進行波を減速させることである。1つの実施形態において、誘電体層1605は、自由空間に対して30%だけ進行波を減速させる。1つの実施形態において、ビーム形成に適した屈折率の範囲は、1.2から1.8であり、ここで、自由空間は、定義により1に等しい屈折率を有する。例えばプラスチックなどの他の誘電体スペーサ材料が、この効果を達成するのに使用できる。プラスチック以外の材料は、これらの材料が所望の波減速効果を達成する限り、使用できる点に留意されたい。代替的に、例えば機械加工すること又はリソグラフィによって規定することができる周期的サブ波長金属構造などの分散構造を有する材料は、誘電体層1605として使用することができる。
【0080】
RFアレイ1006は、誘電体1605の上部に存在する。1つの実施形態において、浸入型導体1603とRFアレイ1606との間の距離は、0.1インチから0.15インチである。別の実施形態では、この距離は、λeff/2とすることができ、ここで、λeffは、設計周波数での媒体中の有効波長である。
【0081】
アンテナは、側部1607及び1608を含む。側部1607及び1608は、同軸ピン1601から供給される進行波を、反射によって浸入型導体1603の下の領域(スペーサ層)から浸入型導体1603の上の領域(誘電体層)に伝播させるように角度付けされる。1つの実施形態において、側部1607及び1608の角度は、45度の角度にある。代替実施形態では、側部1607及び1608は、反射を達成するための連続した半径に置き換えることができる。図10は、45度の角度を有して角度付けした側部を示しているが、その他の角度は、下層給電部から上層給電部への信号伝達を達成して使用することができる。すなわち、下側給電部内の有効波長が、一般に、上側給電部内のものと異なることを考慮すると、理想的な45度の角度からの何らかの逸脱は、下側給電層から上側給電層への伝達を補助するのに使用することができる。例えば、別の実施形態では、45度の角度は、単一の段部に置き換えられる。アンテナの一端上の段部は、誘電体層、浸入型導体、及びスペーサ層の周りに延びる。同様の2つの段部が、これらの層の他端に存在する。
【0082】
動作中、給電波が、同軸ピン1601から供給される場合には、この給電波は、グランドプレーン1602と浸入型導体1603との間の領域で同軸ピン1601から同心状外向きに進む。同心状外向き波は、側部1607及び1608で反射して、浸入型導体1603とRFアレイ1606との間の領域で内向きに進む。円形外周の縁部からの反射は、この波を同相のままにする(すなわち、この反射は、同相反射である)。進行波は、誘電体層1605によって減速する。この時点で、進行波は、RFアレイ1606内の素子との相互作用及び励振を開始して、所望の散乱が得られる。
【0083】
進行波を終了させるための終端部1609が、アンテナの幾何学的中心でアンテナに含まれる。1つの実施形態において、終端部1609は、ピン終端(例えば、50Ωピン)を備える。別の実施形態では、終端部1609は、未使用エネルギーを終端させて、この未使用エネルギーがアンテナの給電構造を通って反射して戻ることを防止するRF吸収体を備える。この終端部は、RFアレイ1606の上部で使用することができる。
【0084】
図11は、アンテナシステムの別の実施形態を外向き波と共に示している。図11を参照すると、2つのグランドプレーン1610及び1611は、これらのグランドプレーンの間にある誘電体層1612(例えば、プラスチック層など)と互いに実質的に平行であり得る。RF吸収体1619(例えば、抵抗器)は、2つのグランドプレーン1610及び1611を一緒に結合する。同軸ピン1615(例えば、50Ω)は、アンテナを給電する。RFアレイ1616は、誘電体層1612及びグランドプレーン1610の上部に存在する。
【0085】
動作中、給電波は、同軸ピン1615を介して給電され、同心円状外向きに進んでRFアレイ1616の素子と相互作用する。
【0086】
図10及び11の両アンテナにおける円筒形給電は、アンテナのサービス角度を改善する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、プラスマイナス45度の方位角(±45°Az)及びプラスマイナス25度の仰角(±25°El)からなるサービス角度の代わりに、ボアサイトから全方向に75度(75°)のサービス角度を有する。多数の個々の放射体から構成される何らかのビーム形成アンテナの場合と同様に、全体的なアンテナ利得は、それ自体が角度に依存するものである構成素子の利得に依存する。一般的な放射素子が使用される場合には、全体的なアンテナ利得は、通常、ビームがボアサイトから離れて向けられるにつれて減少する。ボアサイトから75度外れたところでは、約6dBの有意な利得低下が予期される。
【0087】
円筒状給電部を有するアンテナの実施形態は、1又は2以上の問題を解決する。これらは、統合分割器ネットワークを用いて給電されるアンテナと比較して給電構造を極めて簡単なものにし、従って、全体で必要なアンテナ及びアンテナ給電量を低減することと、より粗い制御(単純なバイナリ制御にまで拡張すること)で高ビーム性能を維持することによって製造誤差及び制御誤差に対する感度を低下させることと、円筒状配向給電波が遠距離場において空間的に多様なサイドローブをもたらすので、直線的給電部と比較してより好都合なサイドローブパターンを与えることと、偏波器を必要とせずに、左旋円偏波、右旋円偏波及び直線偏波を可能にすることを含めて偏波が動的であることを可能にすることと、を含む。
【0088】
波散乱素子のアレイ
図10のRFアレイ1606及び図11のRFアレイ1616は、放射体として作用するパッチアンテナ(例えば、散乱体)のグループを含む波散乱サブシステムを備える。このパッチアンテナグループは、散乱メタマテリアル素子のアレイを備える。
【0089】
1つの実施形態において、アンテナシステムにおける各散乱素子は、下部導体、誘電体基板、及び上部導体からなる単位セルの一部であり、上部導体は、この上部導体にエッチング又は堆積された相補的電気誘導型容量性共振器(「相補型電気LC」又は「CELC」)を組み込んでいる。
【0090】
1つの実施形態において、液晶(LC)が、散乱素子の周りのギャップに注入される。液晶は、各単位セル内に封入され、スロットに関連する下部導体をそのパッチに関連する上部導体から分離する。液晶は、この液晶を含む分子の配向の関数である誘電率を有し、分子の配向(及びひいては誘電率)は、液晶両端間のバイアス電圧を調節することによって制御することができる。この特性を使用して、液晶は、誘導波からCELCへのエネルギー伝達のためのオン/オフスイッチとして作用する。スイッチオンになると、CELCは、電気的に小さいダイポールアンテナのような電磁波を放射する。
【0091】
液晶の厚さを制御することによって、ビームスイッチング速度が増加する。下部導体と上部導体との間のギャップ(液晶の厚さ)の50パーセント(50%)の減少は、4倍の速度増加をもたらす。別の実施形態では、液晶の厚さは、約14ミリ秒(14ms)というビームスイッチング速度をもたらす。1つの実施形態において、液晶は、7ミリ秒(7ms)の要件を満たすことができるように応答性を高めるための当該技術分野において周知の方法でドープされる。
【0092】
CELC素子は、CELC素子の平面に平行でCELCギャップ補完物に垂直に印加される磁場に応答する。電圧が、メタマテリアル散乱単位セル内の液晶に印加された場合に、誘導波の磁場成分は、CELCの磁気励起を誘導し、その結果、誘導波と同じ周波数の電磁波が生成される。
【0093】
単一のCELCによって生成される電磁波の位相は、誘導波ベクトル上のCELCの位置によって選択することができる。各セルは、CELCと平行な誘導波と同相の波を生成する。CELCは、波長よりも小さいので、出力波は、誘導波がCELCの下を通過するときのこの誘導波の位相と同じ位相を有する。
【0094】
1つの実施形態において、このアンテナシステムの円筒状給電幾何形状は、CELC素子を波動給電の波動ベクトルに対して45度(45°)の角度で位置決めすることを可能にする。この素子位置は、この素子から生成される又はこの素子によって受信される自由空間波の偏波の制御を可能にする。1つの実施形態において、CELCは、アンテナの作動周波数の自由空間波長より短い素子間隔で配列される。例えば、1波長につき4つの散乱素子が存在する場合には、30GHz送信アンテナ内の素子は、約2.5mm(すなわち、30GHzの10mm自由空間波長の4分の1)となる。
【0095】
1つの実施形態において、CELCは、スロットの上に並置されたパッチを、それら両者の間に液晶を有して含むパッチアンテナを用いて実施される。この点において、メタマテリアルアンテナは、スロット付き(散乱)導波路のように作用する。スロット付き導波路に関して、出力波の位相は、誘導波に対するスロットの位置に依存する。
【0096】
セル配置(Cell Placement)
1つの実施形態において、アンテナ素子は、系統的マトリクス駆動回路が可能となるように、円筒状給電アンテナ開口上に配置される。セルの配置は、マトリクス駆動のためのトランジスタの配置を含む。図12は、アンテナ素子に対するマトリクス駆動回路の配置の1つの実施形態を示している。図12を参照すると、行コントローラ1701は、行選択信号Row1(行1)及びRow2(行2)それぞれを介してトランジスタ1711及び1712に結合され、列コントローラ1702は、列選択信号Column1を介してトランジスタ1711及び1712に結合される。また、トランジスタ1711は、パッチへの接続1731を介してアンテナ素子1721に結合され、その一方、トランジスタ1712は、パッチへの接続1732を介してアンテナ素子1722に結合される。
【0097】
単位セルが非正規グリッド内に配置されて円筒状給電アンテナ上でマトリクス駆動回路を実現する最初の手法では、2つのステップが実行される。第1のステップにおいて、セルが同心リング上に配置され、セルの各々は、セルの傍らに配置されたトランジスタに接続され、このトランジスタが、各セルを別々に駆動するスイッチとして機能する。第2のステップにおいて、マトリクス駆動回路は、このマトリクス駆動手法が必要とするときにあらゆるトランジスタを一意のアドレスで接続するように構築される。マトリクス駆動回路は、行及び列のトレースによって構築される(LCDと同様)が、セルは、リング上に配置されるので、各トランジスタに一意のアドレスを割り当てる系統的方法は存在しない。このマッピング問題は、全てのトランジスタをカバーするために極めて複雑な回路を生じさせ、経路設定を行う物理的トレースの数を著しく増加させることになる。セルが高密度であるので、これらのトレースは、カップリング効果に起因してアンテナのRF性能を妨げる。また、トレースが複雑であり実装密度が高いことに起因して、トレースの経路設定は、商業的に入手可能なレイアウトツールによって行うことができない。
【0098】
1つの実施形態において、マトリクス駆動回路は、セル及びトランジスタが配置される前に事前に規定される。このことにより、各々が一意のアドレスを有する全てのセルを駆動するのに必要な最小数のトレースが確保される。この方式は、駆動回路の複雑性を軽減して経路設定を簡素化し、これにより、次に、アンテナのRF性能が高まる。
【0099】
より具体的には、1つの手法では、第1のステップにおいて、セルは、各セルの一意のアドレスを表す行及び列から構成された正方形グリッド上に配置される。第2のステップにおいて、セルは、第1のステップで規定さられたセルのアドレス並びに行及び列への接続性が維持されながら、グループ化されて同心円に変換される。この変換の目的は、セルをリング上に配置するだけでなく、開口全体にわたってセル間の距離及びリング間の距離を一定に保つことである。この目的を達成するために、セルをグループ化する幾つかの方法が存在する。
【0100】
1つの実施形態において、TFTパッケージは、マトリクス駆動における配置及び一意のアドレス指定を可能にするのに使用される。図13は、TFTパッケージの1つの実施形態を示している。図13を参照すると、TFT及びホールドキャパシタ1803が、入力ポート及び出力ポートと共に示されている。行及び列を使用してTFTを共に接続するために、トレース1801に接続された2つの入力ポート及びトレース1802に接続された2つの出力ポートが存在する。1つの実施形態において、行のトレースと列のトレースとが90°の角度で交差して、行のトレースと列のトレースとの間の結合を抑え、場合によっては最小にする。1つの実施形態では、行のトレース及び列のトレースは、異なる層上に存在する。
【0101】
全二重通信システムの例
別の実施形態では、複合アンテナ開口は、全二重通信システムで使用される。図14は、同時送信及び受信経路を有する通信システムの一実施形態のブロック図である。1つの送信経路及び1つの受信経路のみが示されているが、通信システムは、1つより多い送信経路及び/又は1つより多い受信経路を含むことができる。
【0102】
図14を参照すると、アンテナ1401は、上述のように異なる周波数で同時に送信及び受信するように独立して動作可能な2つの空間的に交互配置されたアンテナアレイを含む。1つの実施形態において、アンテナ1401は、ダイプレクサ1445に結合される。この結合は、1又は2以上の給電ネットワークによるものとすることができる。1つの実施形態において、放射状給電アンテナの場合に、ダイプレクサ1445は、2つの信号を組み合わせるものであり、アンテナ1401とダイプレクサ1445の間の接続は、両方の周波数を搬送できる単一の広帯域給電ネットワークである。
【0103】
ダイプレクサ1445は、低ノイズブロックダウンコンバータ(LNB)1427に結合され、このLNBは、当該技術分野において周知の方法でノイズフィルタリング機能、ダウンコンバート機能、及び増幅機能を実行する。1つの実施形態において、LNB1427は、室外ユニット(ODU)に存在する。別の実施形態では、LNB1427は、アンテナ装置に組み込まれる。LNB1427は、コンピューティングシステム1440(例えば、コンピュータシステム、モデムなど)に結合されたモデム1460に結合される。
【0104】
モデム1460は、アナログデジタル変換器(ADC)1422を含み、このADCは、LNB1427に結合されて、ダイプレクサ1445から出力された受信信号をデジタル形式に変換する。デジタル形式に変換されると、信号は、復調器1423によって復調されて、デコーダ1424によって復号されて、受信波上に符号化されたデータが得られる。次に、復号されたデータは、コントローラ1425に送られ、このコントローラが、このデータをコンピューティングシステム1440に送る。
【0105】
モデム1460はまた、コンピューティングシステム1440から送信されたデータを符号化するエンコーダ1430を含む。符号化されたデータは、変調器1431によって変調され、次に、デジタルアナログ変換器(DAC)1432によってアナログに変換される。次に、アナログ信号は、BUC(アップコンバート及び高域増幅器)1433によってフィルタリングされて、ダイプレクサ1445の1つのポートに供給される。1つの実施形態において、BUC1433は、室外ユニット(ODU)に存在する。
【0106】
当該技術分野において周知の方法で動作するダイプレクサ1445は、送信される送信信号をアンテナ1401に供給する。
【0107】
コントローラ1450は、単一の複合物理的開口上のアンテナ素子の2つのアレイを含むアンテナ1401を制御する。
【0108】
通信システムは、上述した結合器/アービタを含むように変更される。このような場合には、結合器/アービタは、BUC及びLNBの前ではなくモデムの後に存在する。
【0109】
図14に示されている全二重通信システムは、限定ではないが、インターネット通信、車両通信(ソフトウェア更新を含む)などを含む幾つかの用途を有する。
【0110】
本明細書で記載される幾つかの例示的な実施形態が存在する。
【0111】
実施例1は、衛星アンテナを使用するための方法であって、本方法は、1又は2以上のセンサを使用してヨーを推定することを含む、アンテナが移動しているときにアンテナ方位を推定するステップと、衛星アンテナによって実行される複数の信号探索をインターリーブすることによって衛星アンテナを用いて衛星信号を探索するために信号捕捉を実行するステップとを含み、これら複数の信号探索は、推定されたヨーに基づく。
【0112】
実施例2は、複数の信号探索が、1又は2以上のセンサからの推定されたヨー方位の第1の所定の度数の内の全360°ヨー探索空間の第1の部分の探索が実行される第1のヨー探索と、全360°ヨー探索空間の第2の部分の探索が実行される第2のヨー探索とを含むインターリーブされたヨー探索を含むことを任意選択で含むことができる実施例1の方法であり、これら第1の部分及び第2の部分は異なる。
【0113】
実施例3は、実施例2の方法であって、インターリーブされたヨー探索が、1又は2以上のセンサからの推定されたヨー方位の近くで第1の部分において第1の空間を探索することと、次に、この推定されたヨー方位の近くで第1の部分を探索したときに、所定の基準を満たす衛星信号が見つからない場合に、全360°ヨー探索の第2の部分を探索することと、次に、全360°ヨー探索のこの部分を探索したときに、所定の基準を満たす衛星信号が見つからない場合に、第1の部分において第2の空間を探索することと、を含むことを任意選択的に含むことができる実施例2の方法である。
【0114】
実施例4は、全360°ヨー探索の第2の部分を探索することが、所定の基準を満たす衛星信号の受信をもたらさなかった、第2の部分内の1又は2以上の以前の探索領域を閉塞することを含むことを任意選択的に含むことができる実施例3の方法である。
【0115】
実施例5は、アンテナ方位を推定するステップがアンテナ上の1又は2以上のセンサを使用して推定されることを任意選択的に含むことができる実施例1の方法である。
【0116】
実施例6は、ヨーを推定することが、アンテナが移動している場合に全地球測位システム(GPS)ヘディングを使用して実行されることを任意選択的に含むことができる実施例5の方法である。
【0117】
実施例7は、信号捕捉を実行するステップが、アンテナの各受信指向方向に向かって衛星からの無線周波数(RF)信号を受信して、アンテナの各受信指向方向と関連する受信RF信号を表す1又は2以上の受信機メトリックを生成することによって、無線周波数(RF)信号検出を実行するステップと、衛星からの受信RF信号のうちの1つが、見つかった衛星信号に関連する所定の基準を満たすか否かを判定するステップとを含むことを任意選択的に含むことができる実施例1の方法である。
【0118】
実施例8は、1又は2以上の信号メトリックが信号対雑音比(SNR)又は搬送波対雑音比(C/N)を含むことを任意選択的に含むことができる実施例7の方法である。
【0119】
実施例9は、アンテナの開口を物理的に位置決めすることなく衛星からのRF信号が受信されることを任意選択的に含むことができる実施例1の方法である。
【0120】
実施例10は、1又は2以上のセンサを使用するヨーの推定を含む、アンテナ方位情報及びアンテナ位置情報を生成する慣性計測ユニット(IMU)と、このIMUに結合されて、推定されたヨーに基づく複数のインターリーブされた信号探索のために衛星信号を探索する信号捕捉中にビーム方向を計算する計算ユニットと、この計算ユニットに結合され、ビーム方向に応答して、各ビーム方向に向かって衛星からの無線周波数(RF)信号を受信する電子式操縦可能アンテナと、電子式操縦可能アンテナ及びIMUに結合されて、各ビーム方向と関連する受信RF信号を表す1又は2以上の受信機メトリックを生成するように動作可能であるモデムと、を備える衛星装置である。
【0121】
実施例11は、電子式操縦可能アンテナで受信した衛星信号が所定の基準を満たすまで、計算ユニットが、複数のインターリーブされた信号探索の一部であるビーム方向を繰り返し計算することを任意選択的に含むことができる実施例10の装置である。
【0122】
実施例12は、複数の信号探索が、インターリーブされたヨー探索を含むことを任意選択的に含むことができる実施例10の装置であり、このヨー探索は、1又は2以上のセンサからの推定されたヨー方位の第1の所定の度数の内の全360°ヨー探索空間の第1の部分の探索が実行される第1のヨー探索と、全360°ヨー探索空間の第2の部分の探索が実行される第2のヨー探索とを含み、これら第1の部分及び第2の部分は異なる。
【0123】
実施例13は、インターリーブされたヨー探索が、1又は2以上のセンサからの推定されたヨー方位の近くで第1の部分において第1の空間を探索することと、次に、この推定されたヨー方位の近くで第1の部分を探索したときに、所定の基準を満たす衛星信号が見つからない場合に、全360°ヨー探索の第2の部分を探索することと、次に、全360°ヨー探索のこの部分を探索したときに、所定の基準を満たす衛星信号が見つからない場合に、第1の部分において第2の空間を探索することと、を含むことを任意選択的に含むことができる実施例10の装置である。
【0124】
実施例14は、全360°ヨー探索の第2の部分を探索することが、所定の基準を満たす衛星信号の受信をもたらさなかった、第2の部分内の1又は2以上の以前の探索領域を閉塞することを含むことを任意選択的に含むことができる実施例13の装置である。
【0125】
実施例15は、ヨー推定値が、アンテナが移動している場合に、全地球測位システム(GPS)ヘディングを使用してアンテナ方位を推定するために推定されることを任意選択的に含むことができる実施例10の装置である。
【0126】
実施例16は、電子式操縦可能アンテナが、アンテナの各受信指向方向に向かって衛星からの無線周波数(RF)信号を受信することによって無線周波数(RF)信号検出を実行するように動作可能であり、更に、モデムが、アンテナの各受信指向方向と関連する受信RF信号を表す1又は2以上の受信機メトリックを生成し、衛星からの受信RF信号のうちの1つが、見つかった衛星信号に関連する所定の基準を満たすか否かを判定するように動作可能であることを任意選択的に含むことができる実施例10の装置である。
【0127】
実施例17は、1又は2以上の信号メトリックが信号対雑音比(SNR)又は搬送波対雑音比(C/N)を含むことを任意選択的に含むことができる実施例10の装置である。
【0128】
実施例18は、1又は2以上の非一時的コンピュータ可読媒体を有する製品(article of manufacture)であり、この非一時的コンピュータ可読媒体は、システムによって実行されたときに、このシステムに方法を実行させる命令をこの非一時的コンピュータ可読媒体上に格納しており、本方法は、1又は2以上のセンサを使用してヨーを推定することを含む、アンテナが移動しているときにアンテナ方位情報を生成するステップと、衛星アンテナによって実行される複数の信号探索をインターリーブすることによって衛星アンテナを用いて衛星信号を探索するために信号捕捉を実行するステップと、を含み、これら複数の信号探索は、推定されたヨーに基づく。
【0129】
実施例19は、複数の信号探索が、インターリーブされたヨー探索を含むことを任意選択的に含むことができる実施例18の製品であり、このヨー探索は、1又は2以上のセンサからの推定されたヨー方位の第1の所定の度数の内の全360°ヨー探索空間の第1の部分の探索が実行される第1のヨー探索と、全360°ヨー探索空間の第2の部分の探索が実行される第2のヨー探索とを含み、これら第1の部分及び第2の部分は異なる。
【0130】
実施例20は、インターリーブされたヨー探索が、1又は2以上のセンサからの推定されたヨー方位の近くで第1の部分において第1の空間を探索することと、次に、この推定されたヨー方位の近くで第1の部分を探索したときに、所定の基準を満たす衛星信号が見つからない場合に、全360°ヨー探索の第2の部分を探索することと、次に、全360°ヨー探索のこの部分を探索したときに、所定の基準を満たす衛星信号が見つからない場合に、第1の部分において第2の空間を探索することと、を含むことを任意選択的に含むことができる実施例19の製品である。
【0131】
実施例21は、ヨー推定値を推定することは、アンテナが移動している場合に、全地球測位システム(GPS)ヘディングを使用して実行されることを任意選択的に含むことができる実施例18の製品である。
【0132】
以上の詳細説明の幾つかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットに対する演算のアルゴリズム及び記号表現の観点で提示されている。これらのアルゴリズム的記述及び表現は、データ処理技術分野の当業者により、自らの作業の内容を他の当業者に最も効果的に伝えるのに使用される手段である。アルゴリズムは、本明細書では一般的に、所望の結果に至る自己矛盾のない一連のステップであると考えられる。これらのステップは、物理量の物理的操作を必要とするものである。必須ではないが、通常、これらの量は、格納、転送、結合、比較、及びそれ以外の方法での操作が可能な電気信号又は磁気信号の形式を取る。これらの信号をビット、値、要素、記号、文字、用語、又は数字などと言及することは、主として共通使用という理由で時に好都合であることが判明している。
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