(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】作業機械の運転室およびホイールローダ
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20240905BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
E02F9/16 A
E02F9/16 C
B60H1/00 102A
B60H1/00 102C
B60H1/00 102P
(21)【出願番号】P 2021007254
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 拓志
(72)【発明者】
【氏名】村本 憲一
(72)【発明者】
【氏名】古川 資生
(72)【発明者】
【氏名】和田 啓史
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-180920(JP,A)
【文献】特開平11-314514(JP,A)
【文献】特開2013-028197(JP,A)
【文献】国際公開第2004/078562(WO,A1)
【文献】特開2007-154444(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0203333(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0241380(US,A1)
【文献】米国特許第04531453(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアプレートと、
前記フロアプレート上に配置された操作ペダルと、
前記操作ペダルの前方に配置され、エバポレータを含む空気調和装置と、を備え、
前記エバポレータは、前方から後方へ向かって下り勾配となるように傾斜し、
前記空気調和装置の後面は、前記フロアプレートに対する前記エバポレータの傾斜角度以下の傾斜角度で前方から後方へ向かって下り勾配となる第1傾斜部を含む、作業機械の運転室。
【請求項2】
前記フロアプレートは、平坦部と、前記平坦部よりも上方へ突き出した凸部とを含み、
前記凸部は、前方から後方へ向かって下り勾配となる第2傾斜部を有し、
前記第2傾斜部は前記エバポレータの真下に位置し、前記フロアプレートに対する前記第2傾斜部の傾斜角度と前記フロアプレートに対する前記エバポレータの傾斜角度とは略同一である、請求項1に記載の作業機械の運転室。
【請求項3】
前記空気調和装置は送風機を含み、
前記送風機は、前記フロアプレートよりも上方に位置する上端と、前記フロアプレートよりも下方に位置する下端とを有する、請求項1または請求項2に記載の作業機械の運転室。
【請求項4】
側面視において、前記運転室の前端は、前方から後方に向かって上り勾配の傾斜角度が変化する変曲点を有し、
前記空気調和装置はヒータコアを含み、
前記ヒータコアは前記変曲点よりも下側で、かつ前側に位置する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の作業機械の運転室。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の運転室と、
前記運転室の前記フロアプレートより下方に位置する上端を有する走行輪と、
前記運転室よりも前方に位置する作業機と、を備える、ホイールローダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の運転室およびホイールローダに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置を有するホイールローダは、たとえば特開2007-154444号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1においては、空気調和装置が運転室(キャブ)内の前方であって、ペダルの前方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転室の床面に対するペダルの傾斜角度が大きいと、オペレータの足首の負担が大きくなり、オペレータが疲労しやすくなる。オペレータの疲労軽減のためにペダルの傾斜角度を小さくすると、ペダルを操作する足のつま先と空気調和ユニットとの隙間が小さくなる。このためISO(International Organization for Standardization)3411で規定されたオペレータの靴のつま先部分に対する前方の隙間を確保できなくなるおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、オペレータのつま先と空気調和装置との間の隙間を大きく確保しつつ、オペレータの疲労を軽減できる作業機械の運転室およびホイールローダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の作業機械の運転室は、フロアプレートと、操作ペダルと、空気調和装置とを備える。操作ペダルは、フロアプレート上に配置されている。空気調和装置は、操作ペダルの前方に配置され、エバポレータを含む。エバポレータは、前方から後方へ向かって下り勾配となるように傾斜している。空気調和装置の後面は、フロアプレートに対するエバポレータの傾斜角度以下の傾斜角度で前方から後方へ向かって下り勾配となる第1傾斜部を含む。
【0007】
本開示のホイールローダは、上記の運転室と、その運転室のフロアプレートより下方に位置する上端を有する走行輪と、運転室よりも前方に位置する作業機とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、オペレータのつま先と空気調和装置との間の隙間を大きく確保しつつ、オペレータの疲労を軽減できる作業機械の運転室およびホイールローダを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態における作業機械の例としてホイールローダの構成を示す概略側面図である。
【
図2】
図1に示す運転室の内部を示す側断面図である。
【
図3】
図2に示す空気調和装置の構成を拡大して示す側断面図である。
【
図5】比較例1(A)、比較例2(B)および一実施形態(C)の各々における操作ペダルの傾斜角度と、オペレータのつま先前方の隙間との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図に基づいて説明する。
【0011】
明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0012】
<ホイールローダの構成>
まず、本開示の一実施形態における作業機械の一例としてホイールローダの構成について
図1を用いて説明する。
【0013】
なお本開示は、ホイールローダ以外に、油圧ショベル、ブルドーザ、クレーンなどの作業機械にも適用可能である。また以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」とは、運転室10内の運転席5に着座したオペレータを基準とした方向である。
【0014】
本明細書における側面視とは、運転席5に着座したオペレータを基準にして左右方向から見た視点を意味する。また本明細書における平面視とは、運転席5に着座したオペレータを基準にして上下方向から見た視点を意味する。平面視は、たとえばフロアプレート2の平坦部2Fにおける上面2Uに垂直な方向から見た視点である。
【0015】
図1は、一実施形態における作業機械の例としてホイールローダの構成を示す概略側面図である。
図1に示されるように、本実施形態のホイールローダ50は、運転室10と、前部フレーム11と、後部車体12と、前輪13aと、後輪13bと、作業機20とを主に有している。前部フレーム11の両側部の各々には前輪13aが取付けられている。後部車体12の両側部の各々には後輪13bが取付けられている。
【0016】
前部フレーム11と後部車体12とは、センタピン(図示せず)により左右に作動自在に取付けられている。前部フレーム11と後部車体12とは、アーティキュレート構造を構成している。
【0017】
具体的には前部フレーム11と後部車体12とは、左右一対のステアリングシリンダ(図示せず)により連結されている。この左右一対のステアリングシリンダが伸縮することにより、前部フレーム11と後部車体12とはセンタピンを中心として左右に作動し、操向する。前部フレーム11、後部車体12、前輪13aおよび後輪13bによりホイールローダ50の走行体が構成されている。また前輪13aおよび後輪13bによりホイールローダ50の走行輪が構成されている。走行輪は、運転室10のフロアプレート2(
図2など)より下方に位置している。
【0018】
前部フレーム11の前方には作業機20が取付けられている。作業機20は、運転室10よりも前方に位置している。作業機20は、ホイールローダ50の走行体に支持されている。作業機20は、一対のブーム21と、バケット22と、一対のブームシリンダ23とを有している。
【0019】
後部車体12にはエンジン室が配置されている。エンジン室には、エンジンユニット(エンジン、排気処理構造体など)が収納されている。エンジン室の上方はエンジンフード12aにより覆われている。
【0020】
運転室10は、エンジン室(エンジンフード12a)の前方に配置されている。運転室10は、オペレータが内部に入ってホイールローダ50を操作するための空間を構成している。運転室10は、ホイールローダ50の走行体に支持されている。走行輪13a、13bの上端は、運転室10のフロアプレート2(
図2)より下方に位置している。運転室10の内部には、オペレータが着座するための運転席5が配置されている。
【0021】
<運転室10の構成>
次に、運転室10の構成について
図2を用いて説明する。
【0022】
図2は、
図1に示す運転室の内部を示す側断面図である。
図2に示されるように、本実施形態の運転室10は、空気調和装置1と、フロアプレート2と、複数のピラー3a、3bと、屋根部分4と、運転席5と、フロントコンソール6と、ステアリング7と、操作ペダル8とを主に有している。
【0023】
複数のピラー3a、3bは、フロアプレート2に取り付けられ、フロアプレート2から上方に立ち上がっている。複数のピラー3a、3bは、たとえば左右1対のフロントピラー3aと、左右1対のリアピラー3bとを含んでいる。
【0024】
フロントピラー3aとリアピラー3bとの各々の上端部には、梁部材(図示せず)が接続されている。屋根部分4は、この梁部材に接続されることにより運転室10の上部に配置されている。
【0025】
左右一対のフロントピラー3aの間には、たとえば前窓FWと、フロントパネルFPとが配置されている。左右一対のリアピラー3bの間には、たとえば後窓RWと、リアパネルRPとが配置されている。フロントピラー3aとリアピラー3bとの間には、たとえば横窓SWなどが配置されている。フロントパネルFPおよびリアパネルRPは外装パネルである。前窓FW、後窓RWおよび横窓SWの各々は、たとえばガラスよりなる透明部材を有している。
【0026】
フロアプレート2、複数のピラー3a、3b、屋根部分4、窓FW、RW、SWおよび外装パネルFP、RPにより取り囲まれた空間が、運転室10の内部空間を構成している。運転室10の内部空間は、フロアプレート2と、複数のピラー3a、3bと、屋根部分4と、窓FW、RW、SWと、外装パネルFP、RPとにより運転室10の外部空間と仕切られている。
【0027】
運転室10の内部空間には、運転席5が配置されている。運転席5は、フロアプレート2上であって屋根部分4の下方に位置している。
【0028】
運転席5の前方に、空気調和装置1、フロントコンソール6、ステアリング7および操作ペダル8の各々が配置されている。フロントコンソール6、ステアリング7および操作ペダル8の各々は、フロアプレート2上であって、運転室10の内部空間に配置されている。空気調和装置1は、フロントコンソール6の下方であって、ステアリング7および操作ペダル8の前方に配置されている。操作ペダル8は、回転軸8aを中心に回転可能である。
【0029】
フロアプレート2は、平坦部2Fと、凸部2Pとを有している。平坦部2Fは、平板形状を有している。平坦部2Fは、互いに対向する上面2Uと下面2Lとを有している。上面2Uは運転室10の室内空間に位置し、下面2Lは運転室10の室外空間に位置する。
【0030】
リアパネルRPには、外気吸引口10aが設けられている。外気吸引口10aは、リアパネルRPを貫通しており、たとえば複数のスリット10aaよりなっている。外気吸引口10aは、たとえば運転席5の座部よりも後方に位置している。
【0031】
空気調和装置1は、室外ダクト9aおよび室内ダクト9bを通じて外気吸引口10aから吸引された空気を取り込む。室外ダクト9aは、空気調和装置1に接続されている。室外ダクト9aは運転室10の外部であって、フロアプレート2の下方に配置されている。室外ダクト9aは、室内ダクト9bに接続されている。これにより室外ダクト9aの通風経路と室内ダクト9bの通風経路とは互いに繋がっている。
【0032】
室内ダクト9bは運転室10の内部空間であってフロアプレート2上に位置している。室内ダクト9bは、リアパネルRPに設けられた外気吸引口10aに通じるようにリアパネルRPに取り付けられている。これにより室内ダクト9bの通風経路は外気吸引口10aを通じて運転室10の外部空間と繋がっている。
【0033】
<空気調和装置1の構成>
次に、空気調和装置1の構成について
図3を用いて説明する。
【0034】
図3は、
図2に示す空気調和装置の構成を拡大して示す側断面図である。
図3に示されるように、空気調和装置1は、たとえば送風機1aと、エバポレータ1bと、ヒータコア1cと、ケース1dとを有している。
【0035】
送風機1aは、運転室10の内気および外気を空気調和装置1内に取り入れ、エバポレータ1b(またはエバポレータ1bおよびヒータコア1c)に送った後に運転室10の内部空間に送出する。エバポレータ1bは、送風機1aから送られた空気を冷やす働きをする。またヒータコア1cは、送風機1aから送られた空気を温める働きをする。空気調和装置1により、運転室10の内部空間における空気が調和される。
【0036】
送風機1aは、たとえばブロアである。送風機1aは、羽根車1aaと、駆動源1abと、ケース1acとを有している。駆動源1abは、たとえばモータである。駆動源1abの回転軸RSは、羽根車1aaに固定されている。駆動源1abの駆動力が回転軸RSを介在して羽根車1aaに伝達される。これにより羽根車1aaが回転し、運転室10の内気および外気が空気調和装置1内に取り入れられる。
【0037】
送風機1aの羽根車1aaおよび駆動源1abはケース1acの内部に収納されている。ケース1acは、室外ダクト9aに接続されている。これにより送風機1aは、外気吸引口10aと、室内ダクト9bと、室外ダクト9aとを通じて運転室10の外部から空気を取り込むことが可能である。
【0038】
エバポレータ1bおよびヒータコア1cはケース1dの内部に収納されている。ケース1dは、上端に吹出口1da、1dbを有している。吹出口1da、1dbは、空気調和装置1にて調和された空気を空気調和装置1の外部へ吹き出す部分である。吹出口1da、1dbの各々は、ケース1dを貫通し、ケース1d内の通風経路とケース1d外の通風経路とを繋いでいる。
【0039】
ケース1d内の通風経路には、エバポレータ1bとヒータコア1cとが配置されている。ケース1d内の通風経路において、エバポレータ1bはヒータコア1cよりも上流側に配置されている。ケース1d内の通風経路は、エバポレータ1bを通過した後の空気がヒータコア1cを通過して吹出口1da、1dbへ達する第1経路と、ヒータコア1cを通過せずに吹出口1da、1dbへ達する第2経路とを有している。エバポレータ1bを通過した後の空気の経路を第1経路および第2経路のいずれかに切り替える切替装置SDが設けられている。
【0040】
ヒータコア1cは、エバポレータ1bの上方に配置されている。平面視において、ヒータコア1cの全体は、エバポレータ1bと重畳するように配置されている。エバポレータ1bおよびヒータコア1cの各々は、側面視において、前方から後方へ向かって下り勾配となるように傾斜している。
【0041】
ヒータコア1cは、側面視において運転室10の前端の変曲点IPよりも下側で、かつ前側に位置している。運転室10の前端における変曲点IPは、側面視において前方から後方に向かって上り勾配の傾斜角度が変化する点である。変曲点IPは、たとえばフロントパネルFPと前窓FWとの接続部であってもよい。
【0042】
側面視において、運転席の前端は、変曲点IPから前方へ延びる第1傾斜部FI(たとえばフロントパネルFP)と、変曲点IPから後方へ延びる第2傾斜部SI(たとえば前窓FW)とを有している。第2傾斜部SIは、第1傾斜部FIよりもフロアプレート2の上面2Uに対して急な傾斜を有している。具体的には側面視において、第2傾斜部SIは、第1傾斜部FIよりも平坦部2Fにおける上面2Uの垂線に近い傾斜を有している。
【0043】
なお変曲点IPは、たとえば運転室10の左右方向の中央位置で運転室10を前後に切断した際の運転室10の前端における変曲点である。
【0044】
空気調和装置1の後面(ケース1dの後面)は、傾斜部1Ra、1Rbを有している。傾斜部1Ra(第1傾斜部)は、側面視において、前方から後方に向かって下り勾配の傾斜を有している。傾斜部1Rbは、側面視において、前方から後方に向かって上り勾配の傾斜を有している。
【0045】
傾斜部1Rbの下端は、傾斜部1Raの上端1RUに接続されている。傾斜部1Rbの下端と傾斜部1Raの上端1RUとの接続部付近は側面視においてラウンド形状を有していてもよい。傾斜部1Rbの下端と傾斜部1Raの上端1RUとが接続されることにより、空気調和装置1の後面に、前方へ突き出した窪みが構成されている。この窪みは、傾斜部1Raの下端1Rlからフロアプレート2の上面2Uに対して垂直方向上方に延ばした仮想の直線L1よりも前方へ突き出した空間を構成している。
【0046】
なお傾斜部1Raと傾斜部1Rbとにより空気調和装置1の後面に、前方に突き出した窪みが形成されれば、傾斜部1Rbの下端が傾斜部1Raの上端1RUに直接接続されていなくてもよい。また傾斜部1Rbは、側面視においてフロアプレート2の上面2Uに対して垂直な方向または平行な方向に延びていてもよい。また傾斜部1Rbは、前方から後方に向かって下り勾配の傾斜を有していてもよい。
【0047】
傾斜部1Raの上端1Ruは、エバポレータ1bの上端1buよりも低い位置に配されている。傾斜部1Raの下端1Rlは、エバポレータ1bの下端1blよりも高い位置に配されている。操作ペダル8の上端8Uは、傾斜部1Raの上端1Ruはよりも低く、傾斜部1Raの下端1Rlよりも高い位置に配されている。
【0048】
側面視において、平坦部2Fの上面2Uに対するエバポレータ1bの傾斜角度α2は、平坦部2Fの上面2Uに対するヒータコア1cの傾斜角度α4よりも大きい。傾斜部1Raは、平坦部2Fの上面2Uに対して傾斜している。このため平坦部2Fの上面2Uに対する傾斜部1Raの傾斜角度α1は、0より大きい。平坦部2Fの上面2Uに対する傾斜部1Raの傾斜角度α1は、エバポレータ1bの傾斜角度α2以下である。傾斜部1Raの傾斜角度α1は、エバポレータ1bの傾斜角度α2と略同一であってもよい。
【0049】
平坦部2Fの上面2Uに対する操作ペダル8の上面の傾斜角度α5は、たとえば傾斜角度α1、α2以下である。傾斜角度α5は、傾斜角度α1またはα2と略同一であってもよい。なお傾斜角度α1、α2、α4、α5の各々は鋭角である。傾斜角度α5は、回転軸8aを中心とした操作ペダル8の回転可能な範囲のうち、操作ペダル8の上端(先端)8Uが最も高い位置にある状態における操作ペダル8の上面と平坦部2Fの上面2Uとのなす角度である。
【0050】
本明細書において略同一とは、設計時においては傾斜角度が互いに同じ角度で設計されるが、製造誤差、取付誤差などにより実際の状態においては異なる角度となる場合を含む。つまり本明細書における略同一とは、傾斜角度同士が互いに製造誤差、取付誤差などの誤差分だけ異なる場合を含む。
【0051】
ケース1acは、フロアプレート2の下方に位置している。ケース1acはフロアプレート2の下面2Lに取り付けられている。ケース1dは、フロアプレート2の上方に位置している。ケース1dは、平坦部2Fの上面2Uに取り付けられている。
【0052】
フロアプレート2の凸部2Pは、平坦部2Fよりも上方へ突き出している。凸部2Pは、ケース1acとケース1dとが取り付けられるフロアプレート2の部分に設けられている。
【0053】
送風機1aの少なくとも一部は、凸部2Pの上方に突き出した空間内に配置されている。送風機1aは、フロアプレート2の下面2Lよりも上方に位置する上端UEを有している。送風機1aは、フロアプレート2の下面2Lよりも下方に位置する下端LEを有している。
【0054】
<フロアプレート2の凸部2Pの構成>
次に、上記フロアプレート2における凸部2Pの構成について
図3および
図4を用いて説明する。
【0055】
図3に示されるように、凸部2Pは、上端部2Paと、傾斜部2Pb(第2傾斜部)と、側部2Pcとを有している。上端部2Paは、フロアプレート2の平坦部2Fよりも上方に位置し、平坦部2Fとたとえば平行方向に延在している。
【0056】
側部2Pcは、平坦部2Fの上面2Uに対して略垂直な方向(上下方向)に延びている。側部2Pcの下端はフロアプレート2に接続されている。側部2Pcの上端は上端部2Paの前端に接続されている。側部2Pcは、上端部2Paの前端の全体に接続されている。
【0057】
傾斜部2Pbは、前方から後方に向かって下り勾配となるように傾斜している。傾斜部2Pbの後端(下端)はフロアプレート2に接続されている。傾斜部2Pbの前端(上端)は上端部2Paの後端に接続されている。傾斜部2Pbは、上端部2Paの後端の全体に接続されている。
【0058】
側面視において、平坦部2Fの上面2Uに対する傾斜部2Pbの傾斜角度α3は、平坦部2Fの上面2Uに対するエバポレータ1bの傾斜角度α2と略同一であることが好ましい。傾斜角度α3は鋭角である。また傾斜角度α3は、たとえば傾斜部2Pbの上面と平坦部2Fの上面2Uとのなす角度である。
【0059】
上端部2Paには、1つの貫通孔THが設けられている。貫通孔THは、上端部2Paを貫通している。貫通孔THは、送風機1aにより送られる空気を運転室10の外部から内部へ通すための孔である。貫通孔THを通過して運転室10の外部から内部へ入った空気はエバポレータ1bを通過する。貫通孔THは、平面視においてたとえば四角形状を有している。具体的には、貫通孔THは、平面視において、左右方向に長く、前後方向に短い長方形状を有している。
【0060】
図4に示されるように、送風機1aは、たとえば2つの羽根車1aaを有している。2つの羽根車1aaは、駆動源1abを左右方向に挟み込むように配置されている。2つの羽根車1aaの各々は、駆動源1abの回転軸RSに接続されている。2つの羽根車1aaの一方に接続される回転軸RSと2つの羽根車1aaの他方に接続される回転軸RSとは同心となるように互いに同じ軸線上に配置されている。2つの回転軸RSの各々は、左右方向に延びている。
【0061】
送風機1aの上端UEは、フロアプレート2の下面2Lの高さ位置P1よりも上方に位置している。送風機1aの上端UEとはケース1acの上端である。
【0062】
送風機1aの少なくとも一部は凸部2Pの内部空間内に位置し、これにより送風機1aの上端UEは凸部2Pの内部空間に位置している。凸部2Pの内部空間とは、凸部2Pによりフロアプレート2の平坦部2Fよりも上方に突き出した空間であって、平坦部2Fの下面2Lの高さ位置と上端部2Paの下面の高さ位置との間の空間を意味する。送風機1aの上端UEは、貫通孔TH内に位置していてもよく、場合によっては貫通孔THよりも上方に位置していてもよい。
【0063】
羽根車1aaの少なくとも一部および駆動源1abの少なくとも一部は、フロアプレート2の下面2Lの高さ位置P1よりも上方に位置しており、凸部2Pの内部空間内に位置している。羽根車1aaの上端の高さ位置P2Uは、フロアプレート2の下面2Lの高さ位置P1よりも上方に位置しており、凸部2Pの内部空間内に位置している。駆動源1abの上端の高さ位置P3Uは、フロアプレート2の下面2Lの高さ位置P1よりも上方に位置しており、凸部2Pの内部空間内に位置している。駆動源1abがたとえばモータである場合、モータに含まれるステータの一部はフロアプレート2の下面2Lの高さ位置P1よりも上方に位置しており、凸部2Pの内部空間内に位置している。
【0064】
送風機1aの少なくとも一部は凸部2Pの内部空間外に位置している。送風機1aの下端LEは凸部2Pの内部空間外に位置しており、フロアプレート2の下面2Lよりも下方に位置している。
【0065】
羽根車1aaの少なくとも一部および駆動源1abの少なくとも一部は、フロアプレート2の下面2Lの高さ位置P1よりも下方に位置しており、凸部2Pの内部空間外に位置している。羽根車1aaの下端の高さ位置P2Lは、フロアプレート2の下面2Lの高さ位置P1よりも下方に位置しており、凸部2Pの内部空間外に位置している。駆動源1abの下端の高さ位置P3Lは、フロアプレート2の下面2Lの高さ位置P1よりも下方に位置しており、凸部2Pの内部空間外に位置している。
【0066】
送風機1aは、フロアプレート2における平坦部2Fの延在方向と交差するように配置されている。2つの羽根車1aaおよび駆動源1abの各々は、フロアプレート2における平坦部2Fの延在方向と交差するように配置されている。
【0067】
<空気調和装置の取付状態>
次に、本実施形態における空気調和装置1の取付状態について
図2を用いて説明する。
【0068】
図2に示されるように、空気調和装置1のケース1dは、平坦部2Fの上面2Uにたとえばネジ部材などにより取り付けられている。一方、送風機1aのケース1acは、フロアプレート2の下面2Lにたとえばネジ部材などにより取り付けられている。ケース1acとケース1dとは互いに分離可能である。このためケース1acとケース1dとは互いに別個にフロアプレート2に対して取り付け・取り外し可能である。
【0069】
ケース1dは、フロアプレート2の上方であって、運転室10の内部空間に配置されている。このためケース1dをフロアプレート2から取り外すためには、運転室10の内部空間から取り外す必要がある。
【0070】
一方、送風機1aのケース1acは、フロアプレート2の下方に配置されている。このためフロアプレート2の下方からケース1acを取り外すことができる。つまり送風機1aを運転室10の外部から取り外すことができ、運転室10の内部空間から取り外す必要はない。
【0071】
また空気調和装置1がフロアプレート2に取り付けられた状態において、貫通孔THの真上にエバポレータ1bが位置している。このため送風機1aをフロアプレート2から取り外した際に、フロアプレート2の下方から貫通孔THを通じてエバポレータ1bの清掃が容易となる。
【0072】
<効果>
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0073】
本実施形態によれば、
図3に示されるように、空気調和装置1の後面は、傾斜部1Raを有している。傾斜部1Raは、エバポレータ1bの傾斜角度α2以下の傾斜角度α1で前方から後方へ向かって下り勾配となっている。これによりオペレータのつま先と空気調和装置1との間の隙間が大きく確保され、かつオペレータの疲労が軽減される。以下、そのことを
図5を用いて説明する。
【0074】
図5は、比較例1(A)、比較例2(B)および一実施形態(C)の各々における操作ペダルの傾斜角度と、オペレータのつま先前方の隙間との関係を説明するための図である。
図5(A)に示されるように、比較例1においては、空気調和装置1の後面1R全体は、平坦で、かつフロアプレート2の上面2Uに対して略垂直方向に延びている。この場合、フロアプレート2の上面2Uに対する操作ペダル8の上面の傾斜角度α5aが大きいと、オペレータの足SHのつま先と空気調和装置1の後面1Rとの隙間寸法S1を大きく確保することができる。しかしながら操作ペダル8の上面の傾斜角度α5aが大きくなると、オペレータの足首の負担が大きくなり、オペレータが疲労しやすくなる。
【0075】
図5(B)に示されるように、比較例2においては、操作ペダル8の上面の傾斜角度α5bが比較例1の傾斜角度α5aよりも小さくなるように設定されている。これによりオペレータの足首の負担が小さくなり、オペレータの疲労が軽減される。しかしながら操作ペダル8の傾斜角度α5bが小さくなると、操作ペダル8を操作する足SHのつま先と空気調和装置1の後面1Rとの隙間寸法S2が小さくなる。このためISO3411で規定されたオペレータの靴のつま先部分に対する前方の隙間を確保できなくなるおそれがある。
【0076】
図5(C)に示されるように、本実施形態においては、空気調和装置1の後面は、エバポレータ1bの傾斜角度α2以下の傾斜角度α1で前方から後方へ向かって下り勾配となる傾斜部1Raを有している。これにより空気調和装置1の後面は前方に向かって窪んでいる。この窪みにより、オペレータの足SHのつま先と空気調和装置1の後面との間の隙間寸法S3が大きく確保される。
【0077】
またオペレータの足SHのつま先と空気調和装置1の後面との間の隙間寸法S3を大きく確保できるため、操作ペダル8の傾斜角度α5を小さくすることができる。このためオペレータの足首の負担が小さくなり、オペレータの疲労が軽減される。
【0078】
以上より本実施形態によれば、オペレータのつま先と空気調和装置1との間の隙間が大きく確保され、かつオペレータの疲労が軽減される。
【0079】
また本実施形態によれば、
図3に示されるように、凸部2Pにおける傾斜部2Pbの傾斜角度α3とエバポレータ1bの傾斜角度α2とは略同一である。これにより傾斜部2Pbを直立させる場合と比較して、傾斜部2Pbがエバポレータの傾斜に沿って延ばすことができる。このため、傾斜部2Paがエバポレータ1bと干渉することを避けつつ、凸部2Pの内部空間を拡げることができる。
【0080】
また本実施形態によれば、
図3に示されるように、送風機1aは、フロアプレート2の平坦部2Fよりも上方に位置する上端UEと、平坦部2Fよりも下方に位置する下端LEとを有している。このため送風機1aの上端UEがフロアプレート2の下面2Lよりも下方に位置する場合と比較して、送風機1aを空気調和装置1の吹出口1da、1dbの近くに配置することができる。これにより送風機1aから吹出口1da、1dbまでの通風経路が短くなるため、吹出口1da、1dbから吹き出す風量を増大させることが可能となる。
【0081】
また送風機1aは、フロアプレート2の下面2Lよりも下方に位置する下端LEを有しているため、フロアプレート2の下側から送風機1aを交換することができる。これにより送風機1aの交換時に運転室10の内部空間内の部品を取り外す必要がなくなるため、整備が容易となる。
【0082】
また本実施形態によれば、
図3に示されるように、ヒータコア1cは変曲点IPよりも前側に位置している。これによりヒータコア1cの後方における空気調和装置1内の通風経路も前方に寄せて配置することができる。このため運転席5の前方の空間に余裕が生じる。
【0083】
また本実施形態における空気調和装置1は、
図1に示されるようなホイールローダ50に適用される。ホイールローダ50では、運転室10のフロアプレート2(
図2)が走行輪13a、13bの上端よりも上方に位置している。このため運転室10に搭乗したオペレータは、作業ポイントを前屈みになって前方を見下ろしながらホイールローダ50を操作することが多くなる。よってホイールローダ50を操作するオペレータにとっては、操作ペダル8の傾斜角度α5が大きいと足首に掛かる負担が特に大きくなる。
【0084】
しかし本実施形態においては上記のように操作ペダル8の傾斜角度α5を小さくすることができる。このため特にホイールローダ50を操作するオペレータの足首の負担が小さくなり、オペレータの疲労が軽減される。
【0085】
なお本実施形態においては、フロアプレート2が凸部2Pを有する構成について説明したが、フロアプレート2が凸部2Pを有していなくてもよい。この場合、たとえばフロアプレート2が送風機用貫通孔を有し、送風機1aがこの送風機用貫通孔に挿入された状態で運転室10に取り付けられてもよい。送風機1aがこの送風機用貫通孔に挿入された状態で、送風機1aの上端UEがフロアプレート2の下面2Lよりも上方に位置し、送風機1aの下端LEがフロアプレート2の下面2Lよりも下方に位置していればよい。この状態で送風機1aがフロアプレート2の下方から運転室10に取り付け・取り外しできるように構成されていればよい。
【0086】
また前窓FW、後窓RWおよび横窓SWの各々に用いられる透明部材の材質はガラスに限定されず、アクリルなどの他の透明な材質であってもよい。
【0087】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0088】
1 空気調和装置、1Ra,1Rb,2Pb 傾斜部、1Rl,1bl,LE 下端、1Ru,1bu,8U,UE 上端、1a 送風機、1aa 羽根車、1ab 駆動源、1b エバポレータ、1c ヒータコア、1d ケース、1da 吹出口、2 フロアプレート、2F 平坦部、2L 下面、2P 凸部、2Pc 側部、2U 上面、3a フロントピラー、3b リアピラー、4 屋根部分、5 運転席、6 フロントコンソール、7 ステアリング、8 操作ペダル、9a 室外ダクト、9b 室内ダクト、10 運転室、10a 外気吸引口、10aa スリット、11 前部フレーム、12 後部車体、12a エンジンフード、13a 前輪、13b 後輪、20 作業機、21 ブーム、22 バケット、23 ブームシリンダ、50 ホイールローダ、FI 第1傾斜部、FP フロントパネル、FW 前窓、IP 変曲点、P1,P2L,P2U,P3U,P3L 高さ位置、RP リアパネル、RS 回転軸、RW 後窓、SD 切替装置、SI 第2傾斜部、SW 横窓、TH 貫通孔。