IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-振動デバイス 図1
  • 特許-振動デバイス 図2
  • 特許-振動デバイス 図3
  • 特許-振動デバイス 図4
  • 特許-振動デバイス 図5
  • 特許-振動デバイス 図6
  • 特許-振動デバイス 図7
  • 特許-振動デバイス 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20240905BHJP
   H04R 7/04 20060101ALI20240905BHJP
   H04R 7/18 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H04R17/00
H04R7/04
H04R7/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021011496
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114978
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】江澤 敦
(72)【発明者】
【氏名】永井 慧大
(72)【発明者】
【氏名】滝 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】丸山 俊樹
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-016692(JP,A)
【文献】特開2006-100954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
H04R 7/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、
一の方向に延在し、前記圧電素子が固定され、前記圧電素子の駆動によってベンディング振動を生じさせる振動部と
前記振動部における前記一の方向の両端部を固定端とする固定部と、を備え、
前記振動部には、前記振動部の平面視において、前記圧電素子を囲むように減肉部が配置され
前記振動部における前記一の方向に交差する方向の両端部は、前記固定部によって固定されずに自由端となっている、振動デバイス。
【請求項2】
前記減肉部は、前記振動部の平面視において、前記圧電素子と重ならないように配置されている請求項1記載の振動デバイス。
【請求項3】
前記振動部は、一方面及び当該一方面の反対側に位置する他方面を有し、
前記圧電素子は、前記振動部の前記一方面側に配置され、前記減肉部は、前記振動部の前記他方面側に配置されている請求項1又は2記載の振動デバイス。
【請求項4】
記減肉部は、前記固定部から離間して配置されている請求項1~3のいずれか一項記載の振動デバイス。
【請求項5】
前記減肉部は、溝部又はスリットによって構成されている請求項1~4のいずれか一項記載の振動デバイス。
【請求項6】
前記振動部は、平坦な第1の層と、前記減肉部に対応するスリット又は凹部を有する第2の層とによって構成されている請求項1~5のいずれか一項記載の振動デバイス。
【請求項7】
前記減肉部は、有底の溝部によって構成され、前記振動部の平面視において、前記圧電素子の全縁を囲むように連続した枠状に設けられている、請求項1~6のいずれか一項記載の振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の振動デバイスとして、例えば特許文献1に記載の透明スピーカがある。この従来の振動デバイスは、圧電素子を振動部に固定することによって構成されている。この振動デバイスでは、圧電素子の振動を振動部によって増幅し、振動部にベンディング振動を生じさせることによって、所望の音響出力が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-70100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の振動デバイスのように、振動部のベンディング振動を利用した構成は、圧電素子から振動部への振動伝達性に優れる。その反面、振動部の共振に起因する音圧の低下や周波数に対する歪みが生じ易く、これらの課題の解決が求められている。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、音圧の向上や周波数に対する歪みの改善が図られる振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る振動デバイスは、圧電素子と、圧電素子が固定され、圧電素子の駆動によってベンディング振動を生じさせる振動部と、を備え、振動部には、振動部の平面視において、圧電素子を囲むように減肉部が配置されている。
【0007】
この振動デバイスでは、振動部において圧電素子を囲むように減肉部が配置されている。減肉部では、振動部の他の部位に比べて振動による曲げ変形が生じ易い。このため、圧電素子によって振動部にベンディング振動が生じた場合に、圧電素子の周囲で振動部に垂直な方向の均一な振動(直動振動)への変換が促進される。この振動デバイスでは、ベンディング振動が直動振動に効率的に変換されることで、振動部の共振の影響を軽減でき、音圧の向上や周波数に対する歪みの改善が図られる。
【0008】
減肉部は、振動部の平面視において、圧電素子と重ならないように配置されていてもよい。これにより、圧電素子の周囲でより広範囲にベンディング振動から直動振動への変換を促進できる。
【0009】
振動部は、一方面及び当該一方面の反対側に位置する他方面を有し、圧電素子は、振動部の一方面側に配置され、減肉部は、振動部の他方面側に配置されていてもよい。この場合、減肉部の配置が圧電素子の配置を阻害してしまうことを防止できる。
【0010】
振動部は、一の方向に延在しており、振動デバイスは、振動部における一の方向の両端部を固定する固定部を更に備え、減肉部は、固定部から離間して配置されていてもよい。振動部の両端部が固定部によって振動の固定端となることで、ベンディング振動を好適に生じさせることができる。ベンディング振動が好適に生じることで、直動振動を出力として十分に取り出すことが可能となり、音圧の一層の向上が図られる。
【0011】
減肉部は、溝部又はスリットによって構成されていてもよい。この場合、簡単な構成で振動部に減肉部を設けることができる。
【0012】
振動部は、平坦な第1の層と、減肉部に対応するスリット又は凹部を有する第2の層とによって構成されていてもよい。この場合、第1の層及び第2の層の構成材料の組み合わせにより、振動部の構成の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、音圧の向上や周波数に対する歪みの改善が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態に係る振動デバイスの構成を示す概略的な平面図である。
図2図1におけるII-II線断面図である。
図3】減肉部の作用を示す概略的な断面図である。
図4】(a)は、ベンディング振動による音響出力の周波数と音圧との関係を示す模式的な図であり、(b)は、ベンディング振動による音響出力の周波数と歪みとの関係を示す模式的な図である。
図5】(a)は、直動振動による音響出力の周波数と音圧との関係を示す模式的な図であり、(b)は、ベンディング振動による音響出力の周波数と歪みとの関係を示す模式的な図である。
図6】(a)~(c)は、減肉部の変形例を示す概略的な断面図である。
図7】(a)及び(b)は、振動部の変形例を示す概略的な断面図である。
図8】減肉部の他の変形例を示す概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る振動デバイスの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本開示の一実施形態に係る振動デバイスの構成を示す概略的な平面図である。図2は、図1におけるII-II線断面図である。図1及び図2に示す振動デバイス1は、例えばスピーカ等の音響デバイスとして用いられるデバイスであり、テレビやスマートフォンといった音を発する電子機器に搭載され得る。図1及び図2に示すように、振動デバイス1は、圧電振動子2と、固定部3とを備えて構成されている。
【0017】
圧電振動子2は、圧電素子4と、振動部5とを含んで構成されている。圧電素子4は、例えば圧電素体と、一対の外部電極(不図示)とを有している。圧電素体は、複数の圧電体層の積層によって構成されている。図1及び図2の例では、圧電素体は、平面視において長方形状をなしている。各圧電体層は、圧電材料によって形成されている。本実施形態では、各圧電体層は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料としては、例えばPZT[Pb(Zr、Ti)O]、PT(PbTiO)、PLZT[(Pb,La)(Zr、Ti)O]、チタン酸バリウム(BaTiO)が挙げられる。
【0018】
各圧電体層は、例えば上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体によって構成されている。実際の圧電素体では、各圧電体層は、各圧電体層の間の境界が認識できない程度に一体化されている。圧電素体内には、複数の内部電極(不図示)が配置されている。各内部電極は、導電性材料によって形成されている。導電性材料としては、例えばAg、Pd、Ag-Pd合金が挙げられる。
【0019】
圧電素子4の一対の外部電極には、例えばフレキシブルプリント基板といった配線部材(不図示)が電気的に接続されている。配線部材の一端側は、圧電素子4の一対の外部電極に電気的かつ物理的に接続され、配線部材の他端側は、振動デバイス1が搭載される電子機器に対して電気的かつ物理的に接続される。
【0020】
振動部5は、圧電素子4の駆動によってベンディング振動を生じさせる部分である。振動部5は、例えば金属材料によって薄板状に形成され、一定の幅で一の方向に延在している。以下、振動部5が延在する一の方向を延在方向Dと称する。また、一の方向に直交する方向を幅方向Wと称する。金属材料としては、例えばNi-Fe合金、Ni、黄銅、ステンレス鋼などが挙げられる。振動部5は、樹脂材料によって構成されていてもよい。樹脂材料としては、例えばポリカーボネート(PC)、ポニフェニレンスルファイド(PPS)などが挙げられる。ここでは、振動部5は、平面視において長方形状をなしており、延在方向Dに沿う長辺と、延在方向Dに直交する短辺とを有している。長方形状には、例えば、各角部が面取りされた形状及び各角が丸められた形状も含まれ得る。
【0021】
振動部5は、一方面5aと、当該一方面5aの反対側の面である他方面5bとを有している。振動部5の一方面5aの中央部分Cには、上述した圧電素子4の固定領域が設けられている。振動部5の一方面5aと圧電素子4との固定には、例えば接着剤が用いられている。図1及び図2の例では、平面視における圧電素子4の長辺及び短辺は、平面視における振動部5の長辺及び短辺よりも小さくなっている。振動部5の平面視において、圧電素子4の長辺は、振動部5の長辺に沿い、圧電素子4の短辺は、振動部5の短辺に沿っている。また、振動部5の平面視において、圧電素子4の中心位置は、振動部5の中心位置と一致している。これにより、振動部5の平面視において、圧電素子4の全体が振動部5に重なり、且つ圧電素子4が振動部5の縁から張り出さない状態となっている(図1参照)。
【0022】
振動部5における延在方向Dの両端部5c,5cは、固定部3によって固定されている。具体的には、振動部5における延在方向Dの両端部5c,5cは、固定部3に埋没した状態となっている。これにより、振動部5における延在方向Dの両端部5c,5cは、圧電素子4によって振動部5に生じるベンディング振動の固定端となっている。図1及び図2の例では、振動部5の短辺側の縁部の全体が固定部3に埋没している。振動部5の平面視において、圧電素子4と固定部3との間には、延在方向Dについて一定の間隔が設けられている。両端部5c,5cは、必ずしも振動部5の延在方向Dの縁を含んでいなくてもよく、振動部5に生じるベンディング振動の固定端は、振動部5の延在方向Dの縁よりも僅かに延在方向Dの中央よりに位置していてもよい。
【0023】
振動部5には、振動部5の平面視において、長方形の枠状をなし、圧電素子4を囲むように減肉部11が配置されている。本実施形態では、減肉部11は、断面矩形の溝部12によって構成されている。溝部12は、振動部5において圧電素子4が固定される面の反対側の面、すなわち、他方面5bに設けられている。溝部12の深さは、例えば振動部5の厚さの半分程度となっている。溝部12の形成部分においては、振動部5の厚さが他の部分の半分程度に減肉されている。これにより、溝部12の形成部分においては、振動部5の曲げ剛性が他の部分の半分程度に低減されている。溝部12は、機械加工により形成されたものであってもよく、エッチングにより形成されたものであってもよい。
【0024】
溝部12の幅は、例えば2mm~50mmとなっている。溝部12の幅は、延在方向Dと幅方向とで等しくてもよく、異なっていてもよい。溝部12の内縁12aは、圧電素子4の縁部4aに対して所定の間隔をもって離間している。溝部12の内縁12aと圧電素子4の縁部4aとの離間幅は、例えば20mm以下となっている。当該離間幅は、延在方向Dと幅方向Wとで等しくてもよく、異なっていてもよい。溝部12の内縁12aは、圧電素子4の縁部4aと重複していてもよい。
【0025】
溝部12の外縁12bは、振動部5の長辺側の縁部5d及び固定部3に対して所定の間隔をもって離間している。溝部12の外縁12bと振動部5の長辺側の縁部5dとの離間幅は、例えば5mm~50mmとなっている。溝部12の外縁12bと固定部3との離間幅は、例えば2mm~50mmとなっている。本実施形態では、溝部12の外縁12bと固定部3との離間幅は、溝部12の外縁12bと振動部5の長辺側の縁部5dとの離間幅よりも大きくなっている。
【0026】
図3は、減肉部の作用を示す概略的な断面図である。上述したように、振動部5における延在方向Dの両端部5c,5cは、固定部3(図1及び図2参照)に固定されることによって、圧電素子4によるベンディング振動の固定端となっている。このため、振動部5において延在方向Dに生じるベンディング振動は、幅方向Wから見て円弧状をなし、振動量は、振動部5の延在方向Dの両端部5c,5cから中央部分Cに向かうについて徐々に大きくなる。
【0027】
ここで、振動部5には、溝部12によって減肉部11が構成され、溝部12の形成部分において、振動部5の曲げ剛性が他の部分の半分程度に低減されている。このため、振動部5にベンディング振動が生じると、減肉部11が振動に伴って湾曲し、振動部5において減肉部11で囲まれた領域Rの全体が振動部5に垂直な方向に均一に振動する。したがって、振動部5において減肉部11で囲まれた領域Rでは、ベンディング振動が直動振動に変換され、直動振動成分が出力として取り出される。
【0028】
振動部5のベンディング振動を利用した構成は、圧電素子4から振動部5への振動伝達性に優れる。その反面、ベンディング振動では、振動部5の共振に起因して、振動振幅の強弱が生じたり、音圧を打ち消しあう現象が生じ得る。このため、図4(a)に示すように、特定の周波数で音圧のピーク及びディップが生じることがある。また、図4(b)に示すように、振動部5の共振に起因して特定の周波数において歪みが大きくなる現象が生じ得る。
【0029】
これに対し、振動部5に減肉部11を設けることでベンディング振動を直動振動に変換する場合、振動部5での共振の影響を軽減できる。このため、図5(a)に示すように、振動部5の共振に起因する特定の周波数での音圧のピーク及びディップの発生を抑制できる。振動部5において圧電素子4を減肉部11で囲むことにより、ベンディング振動が直動振動に変換される領域(すなわち、減肉部11で囲まれた領域R)の面積が十分に確保され、音圧の向上も図られる。また、図5(b)に示すように、振動部5の共振に起因して特定の周波数において歪みが大きくなる現象も低減できる。
【0030】
以上説明したように、振動デバイス1では、振動部5において圧電素子4を囲むように減肉部11が配置されている。減肉部11では、振動部5の他の部位に比べて振動による曲げ変形が生じ易い。このため、圧電素子4によって振動部5にベンディング振動が生じた場合に、圧電素子4の周囲の減肉部11で囲まれた領域Rにおいて、ベンディング振動から直動振動への変換が促進される。ベンディング振動が直動振動に効率的に変換されることで、振動部5の共振の影響を軽減でき、音圧の向上や周波数に対する歪みの改善が図られる。
【0031】
本実施形態では、減肉部11は、振動部5の平面視において、圧電素子4と重ならないように配置されている。これにより、減肉部11で囲まれた領域Rの面積の確保が容易となり、圧電素子4の周囲でより広範囲にベンディング振動から直動振動への変換を促進できる。
【0032】
本実施形態では、振動部5は、一方面5a及び当該一方面5aの反対側に位置する他方面5bを有し、圧電素子4は、振動部5の一方面5a側に配置され、減肉部11である溝部12は、振動部5の他方面5b側に配置されている。この場合、圧電素子4が配置される一方面5aの平坦性が保たれるため、減肉部11の配置が圧電素子4の配置を阻害してしまうことを防止できる。
【0033】
本実施形態では、振動部5における延在方向Dの両端部5c,5cを固定する固定部3が設けられており、減肉部11は、固定部3から離間して配置されている。これにより、振動部5の両端部5c,5cが固定部3によって振動の固定端となるため、振動部5にベンディング振動を好適に生じさせることができる。ベンディング振動が好適に生じることで、直動振動を出力として十分に取り出すことが可能となり、音圧の一層の向上が図られる。
【0034】
本実施形態では、減肉部11が溝部12によって構成されている。これにより、簡単な構成で振動部5に減肉部11を設けることができる。
【0035】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば図6(a)に示すように、圧電素子4と減肉部11とが振動部5の同一面に配置されていてもよい。図6(a)の例では、圧電素子4と減肉部11である溝部12とがいずれも振動部5の一方面5aに配置されている。圧電素子4と減肉部11とがいずれも振動部5の他方面5bに配置されていてもよい。
【0036】
上記実施形態では、振動部5の平面視において、減肉部11が圧電素子4と重ならないように配置されているが、図6(b)に示すように、減肉部11の一部が圧電素子4と重なっていてもよい。図6(b)の例では、減肉部11である溝部12は、振動部5の他方面5b側に配置され、溝部12の内縁12a側が振動部5の平面視において圧電素子4と重なっている。溝部12の内縁12a側と圧電素子4との重なり幅は、溝部12の幅の半分以下であることが好ましい。これにより、減肉部11で囲まれた領域Rの面積を維持できる。
【0037】
振動部5の平面視において減肉部11の一部が圧電素子4と重なる場合でも、図6(c)に示すように、圧電素子4と減肉部11とが振動部5の同一面に配置されていてもよい。図6(c)の例では、圧電素子4と減肉部11である溝部12とがいずれも振動部5の一方面5aに配置され、溝部12の内縁12a側が振動部5の平面視において圧電素子4と重なっている。この場合も図6(b)と同様に、溝部12の内縁12a側と圧電素子4との重なり幅は、溝部12の幅の半分以下であることが好ましい。これにより、減肉部11で囲まれた領域Rの面積を維持できる。なお、図2及び図6(a)~(c)の各態様において、溝部12が振動部5における一方面5a及び他方面5bの両面に対称的に設けられていてもよい。
【0038】
上記実施形態では、振動部5が単層で構成されているが、図7(a)及び図7(b)に示すように、振動部5が複数層で構成されていてもよい。図7(a)の例では、振動部5は、平坦な第1の層21と、減肉部11に対応するスリット23を有する第2の層22とによって構成されている。第1の層21に第2の層22を固定することで、スリット23の形成位置に減肉部11である溝部12が形成されている。図7(b)の例では、振動部5は、平坦な第1の層21と、減肉部11に対応する凹部24を有する第2の層22とによって構成されている。第1の層21に第2の層22を固定することで、凹部24の形成位置に減肉部11である溝部12が形成されている。第1の層21と第2の層22との固定には、例えば接着剤を用いることができる。
【0039】
振動部5を複数層で構成する場合、第1の層21及び第2の層22の構成材料の組み合わせにより、振動部5の構成の自由度を高めることができる。例えば第1の層21を樹脂材料によって構成し、第2の層22を金属材料によって構成する場合、減肉部11の曲げ剛性を十分に低減させる一方で、振動部5の他の部分の曲げ剛性を確保できる。この場合、十分な振幅量のベンディング振動から直動振動を効果的に取り出すことが可能となり、音圧の一層の向上が図られる。
【0040】
上記実施形態では、減肉部11が溝部12によって構成されているが、図8に示すように、減肉部11がスリット31によって構成されていてもよい。図8の例では、振動部5の平面視において、圧電素子4を延在方向Dに挟むように4つずつのスリット31が配置され、圧電素子4を幅方向Wに挟むように4つずつのスリット31が配置されている。各スリット31は、振動部5の一方面5aから他方面5b(図2参照)まで貫通するように設けられている。ここでは、各スリット31の平面形状は、いずれも長方形状となっている。圧電素子4を延在方向Dに挟むスリット31では、長辺が延在方向Dに沿い、短辺が幅方向Wに沿っている。圧電素子4を幅方向Wに挟むスリット31では、長辺が幅方向Wに沿い、短辺が延在方向Dに沿っている。
【0041】
このように、減肉部11をスリット31によって構成する場合であっても、減肉部11において振動による曲げ変形を容易に生じさせることができる。このため、減肉部11を溝部12によって構成する場合と同様、圧電素子4によって振動部5にベンディング振動が生じた場合に、圧電素子4の周囲の減肉部11で囲まれた領域Rにおいて、ベンディング振動から直動振動への変換が促進される。ベンディング振動が直動振動に効率的に変換されることで、振動部5の共振の影響を軽減でき、音圧の向上や周波数に対する歪みの改善が図られる。なお、スリット31の配置や形状は、図8の態様に限られず、種々の変形を適用し得る。例えば振動部5の平面視において、スリット31の一部が圧電素子4と重なっていてもよい。また、スリット31の平面形状は、長方形状に限られず、正方形、円形、楕円形といった他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…振動デバイス、3…固定部、4…圧電素子、5…振動部、5a…一方面、5b…他方面、5c…端部、11…減肉部、12…溝部、21…第1の層、22…第2の層、23…スリット、24…凹部、31…スリット、D…延在方向(一の方向)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8