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特許7550070レーザ加工方法、加工プログラム作成方法、及びレーザ加工機
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】レーザ加工方法、加工プログラム作成方法、及びレーザ加工機
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20240905BHJP
【FI】
B23K26/38 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021015655
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022118872
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 遼
(72)【発明者】
【氏名】成田 真庸
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-137533(JP,A)
【文献】特開平02-255287(JP,A)
【文献】登録実用新案第3139074(JP,U)
【文献】特開2015-157303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金にネスティングされている複数のパーツのうちの1またはそれ以上のパーツを第1の加工単位としてレーザビームの照射により切断し、
前記第1の加工単位に含まれる1またはそれ以上のパーツと、前記板金にネスティングされている複数のパーツのうちの未加工のパーツとの間の桟を、前記板金の端部から所定の距離だけ前記板金を切断しない状態でレーザビームの照射により切断して、前記桟にスリットを形成し、
前記未加工のパーツのうちの1またはそれ以上のパーツを第2の加工単位としてレーザビームの照射により切断し、
前記第1及び第2の加工単位の各加工単位に含まれるパーツの個数を、前記各加工単位に含まれる1またはそれ以上のパーツの累積加工時間が予め設定された累積加工時間以内となるように設定する
レーザ加工方法。
【請求項2】
前記板金の板厚と、前記板金にレーザビームを照射して前記板金を切断するときの加工速度と、レーザ発振器が射出するレーザビームのレーザ出力とに応じた、前記板金に反りが発生するまでの時間が予め求められており、
前記予め設定された累積加工時間を前記板金に反りが発生するまでの時間以内に設定する
請求項に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
nを2以上の自然数とし、板金にネスティングされている複数のパーツを、前記複数のパーツの加工順に、1またはそれ以上のパーツを含むn個の加工単位に分割し、
前記n個の加工単位の隣接する加工単位の間に、前記板金の端部から所定の距離だけ前記板金を切断せず、他のスリット加工経路と連結していないスリット加工経路であって、前記n個の加工単位のうちの最後に加工される加工単位を除く(n-1)個の加工単位における各加工単位に対応付けられる(n-1)個のスリット加工経路を設定し、
前記(n-1)個の加工単位における各加工単位の加工に続けて、前記各加工単位に対応付けられるスリット加工経路を加工するよう、前記複数のパーツと前記(n-1)個のスリット加工経路との加工順を設定し、
設定された加工順で前記板金を切断する加工プログラムを作成し、
前記板金の板厚と、前記板金にレーザビームを照射して前記板金を切断するときの加工速度と、レーザ発振器が射出するレーザビームのレーザ出力とに応じた、前記板金に反りが発生するまでの時間が予め求められており、
前記加工単位に含まれる1またはそれ以上のパーツの個数を、前記板金に反りが発生するまでの時間以内に加工が完了する個数に設定する
加工プログラム作成方法。
【請求項4】
前記複数のパーツの各パーツは、アプローチと、ジョイントを形成するための前記アプローチとは離隔した終点または逃げとを有する非閉形状の線分で表されており、
前記各パーツにおける前記ジョイントを連結し、かつ前記アプローチと前記終点または前記逃げを削除して、前記各パーツの外形線に相当する閉形状の線分を作成し、
前記各パーツの閉形状の線分の内側に穴を示す閉形状の線分が存在するときには前記穴を示す閉形状の線分を破棄し、他のパーツの閉形状の線分の内側にパーツの閉形状の線分が存在するときには内側に存在するパーツの閉形状の線分を破棄し、
残ったパーツの閉形状の線分を設定された幅だけ拡大し、
拡大されたパーツの閉形状の線分間の桟を通る前記(n-1)個のスリット加工経路を設定する
請求項に記載の加工プログラム作成方法。
【請求項5】
板金を切断する加工機本体と、
加工プログラムに基づいて前記加工機本体を制御するNC装置と、
を備え、
前記NC装置は、
前記板金より複数のパーツを作製するために予め作成された加工プログラムに基づいて、nを2以上の自然数とし、前記複数のパーツを、前記複数のパーツの加工順に、予め設定された累積加工時間に基づいて1またはそれ以上のパーツを含むn個の加工単位に分割し、
前記n個の加工単位の隣接する加工単位の間に、前記板金の端部から所定の距離だけ前記板金を切断せず、他のスリット加工経路と連結していないスリット加工経路であって、前記n個の加工単位のうちの最後に加工される加工単位を除く(n-1)個の加工単位における各加工単位に対応付けられる(n-1)個のスリット加工経路を設定し、
前記(n-1)個の加工単位における各加工単位の加工に続けて、前記各加工単位に対応付けられるスリット加工経路を加工するよう、前記複数のパーツと前記(n-1)個のスリット加工経路との加工順を設定し、
前記予め作成された加工プログラムを、設定された前記複数のパーツと前記(n-1)個のスリット加工経路との加工順で前記板金を切断するよう再構成して、再構成された新たな加工プログラムを作成し、
前記新たな加工プログラムに基づいて前記板金を切断するよう前記加工機本体を制御する
レーザ加工機。
【請求項6】
前記板金の板厚と、前記板金にレーザビームを照射して前記板金を切断するときの加工速度と、レーザ発振器が射出するレーザビームのレーザ出力とに応じた、前記板金に反りが発生するまでの時間が予め求められており、
前記NC装置は、前記累積加工時間を前記板金に反りが発生するまでの時間以内に設定する
請求項に記載のレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法、加工プログラム作成方法、及びレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工機は、レーザ発振器より射出されたレーザビームを板金に照射して板金を切断し、所定の形状を有する複数のパーツを作製することがある。近年、レーザ発振器として、高出力のファイバレーザ発振器が広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-137533号公報
【文献】国際公開第2020/218477号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファイバレーザ発振器より射出されたレーザビームのように高出力のレーザビームを板金に照射して切断すると、低出力のレーザビームを板金に照射して切断する場合と比較して、板金への入熱量は各段に多くなる。従って、レーザ発振器としてファイバレーザ発振器を備えるレーザ加工機は、板金を切断する切断速度が速く、短時間でパーツを作製することが可能である。
【0005】
ところが、レーザ加工機が、1枚の板金から小さいパーツまたは穴が多いパーツを多数作製するよう板金を加工すると、板金が大きく反ることがある。典型的には、板金は、板金の面内の中央付近を頂点として、周辺に向かうほど下方に反る。板金が大きく反ると、パーツの寸法精度が低下したり、加工ヘッドまたはノズルチェンジャ等の構成部品が沿った板金に衝突したりする不具合が発生することがある。そこで、ファイバレーザ発振器等の高出力のレーザビームを射出するレーザ発振器を用いて板金を加工しても、板金の反り量を低減させることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様によれば、板金にネスティングされている複数のパーツのうちの1またはそれ以上のパーツを第1の加工単位としてレーザビームの照射により切断し、前記第1の加工単位に含まれる1またはそれ以上のパーツと、前記板金にネスティングされている複数のパーツのうちの未加工のパーツとの間の桟を、前記板金の端部から所定の距離だけ前記板金を切断しない状態でレーザビームの照射により切断して、前記桟にスリットを形成し、前記未加工のパーツのうちの1またはそれ以上のパーツを第2の加工単位としてレーザビームの照射により切断し、前記第1及び第2の加工単位の各加工単位に含まれるパーツの個数を、前記各加工単位に含まれる1またはそれ以上のパーツの累積加工時間が予め設定された累積加工時間以内となるように設定するレーザ加工方法が提供される。
【0007】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様は、第1の加工単位の加工に続けて、第1の加工単位に含まれる1またはそれ以上のパーツと、板金にネスティングされている複数のパーツのうちの未加工のパーツとの間の桟にスリットを形成するので、板金の反り量を低減させることができる。板金の反り量が低減するので、板金を切断して作製するパーツの寸法精度の低下、及び構成部品が板金に衝突する不具合を低減させることができる。
【0008】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様によれば、nを2以上の自然数とし、板金にネスティングされている複数のパーツを、前記複数のパーツの加工順に、1またはそれ以上のパーツを含むn個の加工単位に分割し、前記n個の加工単位の隣接する加工単位の間に、前記板金の端部から所定の距離だけ前記板金を切断せず、他のスリット加工経路と連結していないスリット加工経路であって、前記n個の加工単位のうちの最後に加工される加工単位を除く(n-1)個の加工単位における各加工単位に対応付けられる(n-1)個のスリット加工経路を設定し、前記(n-1)個の加工単位における各加工単位の加工に続けて、前記各加工単位に対応付けられるスリット加工経路を加工するよう、前記複数のパーツと前記(n-1)個のスリット加工経路との加工順を設定し、設定された加工順で前記板金を切断する加工プログラムを作成し、前記板金の板厚と、前記板金にレーザビームを照射して前記板金を切断するときの加工速度と、レーザ発振器が射出するレーザビームのレーザ出力とに応じた、前記板金に反りが発生するまでの時間が予め求められており、前記加工単位に含まれる1またはそれ以上のパーツの個数を、前記板金に反りが発生するまでの時間以内に加工が完了する個数に設定する加工プログラム作成方法が提供される。
【0009】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様は、各加工単位の加工に続けて各加工単位に対応付けられるスリット加工経路を切断する加工プログラムを作成するので、レーザ加工機が板金の加工するときの板金の反り量を低減させることができる。板金の反り量が低減するので、板金を切断して作製するパーツの寸法精度の低下、及び構成部品が板金に衝突する不具合を低減させることができる。
【0010】
1またはそれ以上の実施形態の第3の態様によれば、板金を切断する加工機本体と、加工プログラムに基づいて前記加工機本体を制御するNC装置とを備え、前記NC装置は、前記板金より複数のパーツを作製するために予め作成された加工プログラムに基づいて、nを2以上の自然数とし、前記複数のパーツを、前記複数のパーツの加工順に、予め設定された累積加工時間に基づいて1またはそれ以上のパーツを含むn個の加工単位に分割し、前記n個の加工単位の隣接する加工単位の間に、前記板金の端部から所定の距離だけ前記板金を切断せず、他のスリット加工経路と連結していないスリット加工経路であって、前記n個の加工単位のうちの最後に加工される加工単位を除く(n-1)個の加工単位における各加工単位に対応付けられる(n-1)個のスリット加工経路を設定し、前記(n-1)個の加工単位における各加工単位の加工に続けて、前記各加工単位に対応付けられるスリット加工経路を加工するよう、前記複数のパーツと前記(n-1)個のスリット加工経路との加工順を設定し、前記予め作成された加工プログラムを、設定された前記複数のパーツと前記(n-1)個のスリット加工経路との加工順で前記板金を切断するよう再構成して、再構成された新たな加工プログラムを作成し、前記新たな加工プログラムに基づいて前記板金を切断するよう前記加工機本体を制御するレーザ加工機が提供される。
【0011】
1またはそれ以上の実施形態の第3の態様は、NC装置が新たな加工プログラム基づいて加工機本体を制御するので、加工機本体が板金の加工するときの板金の反り量を低減させることができる。板金の反り量が低減するので、板金を切断して作製するパーツの寸法精度の低下、及び構成部品が板金に衝突する不具合を低減させることができる。
【発明の効果】
【0012】
1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工方法、加工プログラム作成方法、及びレーザ加工機によれば、板金の反り量を低減させることができ、板金を切断して作製するパーツの寸法精度の低下、及び構成部品が板金に衝突する不具合を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工方法を実行するレーザ加工機、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成方法を実行するレーザ加工システム、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工機を示すブロック図である。
図2図2は、図1におけるCAM機器20が作成する加工プログラムの一例を部分的に示す図である。
図3A図3Aは、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成方法で実行される処理を示す部分的なフローチャートである。
図3B図3Bは、図3Aに続く部分的なフローチャートである。
図4図4は、板金Wより円形のパーツP0を14個作製するネスティング画像を示す図である。
図5図5は、加工機本体32が備える加工ヘッド321を概念的に示す部分側面図である。
図6図6は、レーザ加工機30が14個のパーツP0を作製するよう板金Wを切断し、各パーツP0のジョイントを切断して各パーツP0を取り外した状態を示す平面図である。
図7図7は、板金Wの板厚と、板金Wにレーザビームを照射して板金Wを切断するときの加工速度と、レーザ発振器が射出するレーザビームのレーザ出力とに応じた、板金Wに反りが発生するまでの時間を示す表である。
図8図8は、14個のパーツP0を4つの加工単位に分割した例を示す図である。
図9図9は、図4に示すネスティング画像101にNC装置31が特定したジョイントの位置をマークJtで示した状態を示す図である。
図10図10は、ネスティング画像101におけるジョイントを連結した状態のネスティング画像102を示す図である。
図11図11は、ネスティング画像102におけるアプローチApと終点Epを削除した状態のネスティング画像103を示す図である。
図12図12は、図11に示すネスティング画像103に一点鎖線で示す拡大された閉形状の線分を付加した状態を示す図である。
図13図13は、拡大された閉形状の線分に基づいて作成された閉形状の線分を含むネスティング画像104を示す図である。
図14図14は、図13に示すネスティング画像104に桟を通るスリット加工経路Psを付加した状態のネスティング画像105を示す図である。
図15図15は、図14に示すスリット加工経路Psのうち、異なる加工単位の境界を通るスリット加工経路Ps0のみとしたネスティング画像106を示す図である。
図16図16は、各加工単位に隣接するスリット加工経路Ps0を各加工単位と対応付けた状態を示すネスティング画像107を示す図である。
図17図17は、各スリット加工経路Ps1~Ps3の始端側と終端側の端部を所定の距離だけ削除した状態を示すネスティング画像108を示す図である。
図18図18は、NC装置31が設定した、14個のパーツP0とスリット加工経路Ps1’~Ps3’に加工順を設定したネスティング画像109を示す図である。
図19図19は、NC装置31が図18に示す加工順に基づいて再構成した新たな加工プログラムによるネスティング画像110を示す図である。
図20図20は、14個のパーツP0を5つの加工単位に分割した例を示す図である。
図21図21は、図20に示すように14個のパーツP0が5つの加工単位に分割された場合における、各加工単位に隣接するスリット加工経路Ps0を各加工単位と対応付けた状態を示すネスティング画像107を示す図である。
図22図22は、各スリット加工経路Ps1~Ps4の始端側と終端側の端部を所定の距離だけ削除した状態を示すネスティング画像108を示す図である。
図23図23は、NC装置31が設定した、14個のパーツP0とスリット加工経路Ps1’~Ps4’に加工順を設定したネスティング画像109を示す図である。
図24図24は、NC装置31が図23に示す加工順に基づいて再構成した新たな加工プログラムによるネスティング画像110を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工方法、加工プログラム作成方法、及びレーザ加工機について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工方法を実行するレーザ加工機、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成方法を実行するレーザ加工システム、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工機を示すブロック図である。まず、図1を用いて、レーザ加工システムの全体的な構成例を説明する。
【0016】
図1において、CAD(Computer Aided Design)機器10は1または複数のパーツの図形データを作成する。CAD機器10は、板金に1または複数のパーツをネスティングした画像データを作成して、CAM(Computer Aided Manufacturing)機器20に供給する。CAD機器10は、CADプログラムを実行するコンピュータ機器で構成される。CAM機器20は、入力された画像データに基づいて、板金より1または複数のパーツを切断するための加工プログラムを作成する。CAM機器20は、CAMプログラムを実行するコンピュータ機器で構成される。CAM機器20には、表示部21及び操作部22が接続されている。操作部22は、表示部21と一体化されたタッチパネルであってもよい。CAD機器10とCAM機器20とが1つのコンピュータ機器で構成され、コンピュータ機器がCAD/CAM機器として機能してもよい。
【0017】
レーザ加工機30は、板金にレーザビームを照射して板金を切断する加工機本体32と、加工機本体32を制御するNC(Numerical Control)装置31と、NC装置31に接続された表示部33及び操作部34を有する。加工機本体32はファイバレーザ発振器を含む。操作部34は、表示部33と一体化されたタッチパネルであってもよい。NC装置31は、CAM機器20によって作成された加工プログラムに基づいて加工機本体32を制御する。後述するように、NC装置31は、CAM機器20によって予め作成された加工プログラムを再構成して、再構成された新たな加工プログラムに基づいて加工機本体32を制御することがある。
【0018】
CAM機器20によって作成された加工プログラムが図示していないデータベースに記憶され、NC装置31がデータベースより加工プログラムを読み出してもよい。
【0019】
図2は、図1におけるCAM機器20が作成する加工プログラムの一例を部分的に示す図である。加工プログラムはGコード等の機械制御コードによって構成されている。図2に示すように、加工プログラムは、パーツP01を加工するためのコード群と、パーツP02を加工するためのコード群とを含む。加工プログラムは、パーツごとにコメントで区切られている。加工プログラムには、各パーツがサブプログラムで表現されていてもよい。
【0020】
以下、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工方法、加工プログラム作成方法、及びレーザ加工機を具体的に説明する。NC装置31は1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成方法を実行する。NC装置31は、CAM機器20によって作成された加工プログラムを再構成して、再構成された新たな加工プログラムを作成する。NC装置31は、板金の反り量を低減させることができる加工プログラムを作成する加工プログラム作成装置である。1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工機は、NC装置31が新たな加工プログラムに基づいて板金を加工するよう加工機本体32を制御するレーザ加工機30である。1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工方法は、レーザ加工機30で実行される。
【0021】
CAM機器20が1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成方法を実行してもよい。CAM機器20は、板金の反り量を低減させることができる加工プログラムを作成する加工プログラム作成装置であってもよい。1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工機は、NC装置31が、CAM機器20が板金の反り量を低減させるように作成した加工プログラムに基づいて板金を加工するよう加工機本体32を制御するレーザ加工機30であってもよい。
【0022】
図3Aは、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成方法で実行される処理を示す部分的なフローチャートである。図3Bは、図3Aに続く部分的なフローチャートである。図4図24を参照しながら、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成方法が実行する処理を説明する。図3A及び図3Bは、NC装置31がコンピュータプログラムを実行することによってなされる処理である。
【0023】
図3Aにおいて、NC装置31は、ステップS1にて、加工プログラムに基づいてネスティング画像を作成して、ネスティング画像を表示部33に表示する。図4は、図1におけるNC装置31が表示部33に表示するネスティング画像の一例を示す図である。ネスティング画像は、板金W(図5及び図6に図示)に複数のパーツがネスティングされた状態を示す描画線分である。図4に示すネスティング画像101は、板金Wの外形線を示す板金画像Wiに切断すべきパーツを配置した画像である。
【0024】
図4は、板金Wより円形のパーツP0を14個作製するネスティング画像を示す図である。各パーツP0には後述するジョイントが存在することから、非閉形状の線分で表されている。図4以降の図面において、#1、#2…は加工順を示す。図4に示す#1~#14で示す加工順は一例である。板金Wより作製するパーツは全て同じ形状、または同じ大きさでなくてもよい。作製するパーツの形状と大きさは任意であり、形状または大きさが異なる複数のパーツの各パーツの個数も任意である。
【0025】
図5は、加工機本体32が備える加工ヘッド321を概念的に示す部分側面図である。加工ヘッド321の下端部にはノズル322が装着されている。加工ヘッド321は、一点鎖線で示すレーザビームをノズル322の先端に形成された開口より射出して、板金Wを切断する。
【0026】
レーザ加工機30は、加工ヘッド321よりレーザビームを板金Wに照射して各パーツP0のアプローチApを切断する。続けて、レーザ加工機30は、各パーツP0の外形線に沿って終点Epまで板金Wを切断することによって各パーツP0を作製する。アプローチApのパーツP0側の端部と、アプローチApと離隔している終点Epとの間がジョイントとなる。
【0027】
図6は、レーザ加工機30が14個のパーツP0を作製するよう板金Wを切断し、各パーツP0のジョイントを切断して各パーツP0を取り外した状態を示す平面図である。板金Wには、14個のパーツP0に対応する14個の開口HP0が形成される。このように、板金Wから複数のパーツが取り外された後の板金Wの端材はスケルトンと称される。
【0028】
図3Aに戻り、NC装置31は、ステップS2にて、板金Wより複数のパーツを作製するときの加工順と累積加工時間とに基づいて、複数のパーツを複数の加工単位に分割する。
【0029】
Elpをレーザビームによる入熱エネルギ、Ecrを酸化反応によるエネルギとすると、金属加工に必要なエネルギEmは式(1)で表すことができる。
Em=Elp+Ecr …(1)
レーザビームによる入熱エネルギElpは、金属材料へのレーザビームの吸収率Aと、そのときのレーザビームの加工(切断)への寄与度η、レーザ出力P(W(J/s))の積である式(2)で表すことができる。
Elp=A×η×P …(2)
【0030】
板金Wとして鉄系の金属材料を加工するときには、アシストガスとして酸素が用いられるのが一般的である。アシストガスとして酸素が用いられると、板金Wの加工時に酸化による反応エネルギが付加される。そのときの単位時間当たりの発熱量Q(J/s)は式(3)で表すことができる。式(3)において、Vはカッティングフロントにおける金属材料の除去体積(mm)、ρは材料密度(g/mm)、Mは原子量(g/mol)、ΔEは酸化による反応熱(J/s)、tは時間(s)である。
Q={(V×ρ)/M}×(ΔE/t) …(3)
【0031】
加工中に発生する酸化鉄の大半がFeOである。反応熱ΔEは酸化鉄FeOが生成されるときのエネルギ量と等しいとすると、257kJ/molとなる。
【0032】
これらを踏まえ、酸化反応によるエネルギEcrは、加工中の溶融金属の割合C、そのときのレーザビームの加工(切断)への寄与度ε、単位時間当たりの発熱量Qの積である式(4)で表すことができる。
Ecr=C×ε×Q …(4)
【0033】
板金Wの反りが大きく発生する板金Wに加わるエネルギを1000kJと想定し、以上の式に基づき、板金Wに加わるエネルギが1000kJに達する時間T(分)(即ち、板金Wに反りが発生するまでの時間)は、式(5)で表すことができる。
T=(1000000/Em)/60 …(5)
【0034】
式(5)に基づき、板厚6.0mm~25.0mmの板金Wにおける反りが発生するまでの時間は、図7に示すとおりとなる。図7は、板金Wの板厚と、板金Wにレーザビームを照射して板金Wを切断するときの加工速度と、レーザ発振器が射出するレーザビームのレーザ出力とに応じた、板金Wに反りが発生するまでの時間を示す表である。図7に示す反りが発生するまでの時間は、理論的な計算値であり、各種の条件で変動する。各種の条件とは、例えば、板金Wの材質、または板金Wを冷却水で冷却しながら加工するか否か等である。
【0035】
しかしながら、本発明者による検証によって、理論的な計算値と、板金Wを図6に示すように加工したときの実際に反りが発生するまでの時間とは大きくは乖離していないことが確認されている。
【0036】
NC装置31は、式(5)に基づく計算によって、板金Wと板金Wを切断するときの条件とに応じて、反りが発生するまでのおおよその時間を求めることができる。NC装置31は、板金Wと板金Wを切断するときの条件とに応じた反りが発生するまでの時間を保持する。
【0037】
NC装置31は、14個のパーツP0を、複数のパーツP0の累積加工時間が板金Wに反りが発生するまでの時間以内となる1群のパーツP0を1つの加工単位として、14個のパーツP0を、複数の加工単位に分割する。図8は、14個のパーツP0を4つの加工単位に分割した例を示す図である。図8に示すように、NC装置31は、14個のパーツP0を加工単位U1~U4の4つの加工単位に分割したとする。加工単位U1は、加工順#1~#3の3つのパーツP0よりなる。加工単位U2は、加工順#4~#7の4つのパーツP0よりなる。加工単位U3は、加工順#8~#10の3つのパーツP0よりなる。加工単位U4は、加工順#11~#14の4つのパーツP0よりなる。
【0038】
累積加工時間に基づいて複数のパーツP0を複数の加工単位に分割する代わりに、反りが発生する時間から計算した切断経路の長さに基づいて複数のパーツP0を複数の加工単位に分割してもよい。オペレータが操作部34を操作して、累積加工時間に基づいて複数の加工単位に分割したパーツP0を変更するとも可能である。同じ板金Wを複数枚加工する場合、オペレータが1枚目の板金Wの切断加工の反りの状態を確認し、より反りが少なくなるように、2枚目以降の板金Wの切断加工の際に加工単位を変更してもよい。
【0039】
オペレータが、表示部33に表示されているネスティング画像を見ながら操作部34を操作することによって加工単位を設定してもよいし、複数の加工単位の選択肢の中からいずれかの加工単位を選択してもよい。各加工単位は、加工単位に含まれる1またはそれ以上のパーツP0の個数が、板金Wに反りが発生するまでの時間以内に加工が完了する個数に設定するのがよい。
【0040】
このように、NC装置31が複数のパーツP0を複数の加工単位に分割するときに1つの加工単位を決めるための参照値は累積加工時間または経路長さであってもよいし、オペレータが手動で設定した設定値であってもよい。設定値はパーツP0の個数であってもよい。パーツP0の個数は一定値であってもよいし、切断加工の進行の程度に応じた変動値であってもよい。
【0041】
図3Aに戻り、NC装置31は、ステップS3にて、加工プログラムを解析してジョイントの位置を特定する。上記のように、アプローチApと終点Epの間をジョイントの位置と特定することができる。ジョイントの位置のさらに具体的な特定方法は特許文献2に記載されているので、特定方法の説明を省略する。図9は、図4に示すネスティング画像101にNC装置31が特定したジョイントの位置をマークJtで示した状態を示す図である。図9図18は、NC装置31が表示部33に表示する画像ではなく、NC装置31が実行する内部処理を示す概念図である。
【0042】
NC装置31は、ステップS4にて、ジョイントを連結し、ステップS5にて、アプローチApと終点Epを削除する。図10は、ネスティング画像101におけるジョイントを連結した状態のネスティング画像102を示す図である。図11は、ネスティング画像102におけるアプローチApと終点Epを削除した状態のネスティング画像103を示す図である。図11に示すように、各ジョイントを連結し、アプローチApと終点Epを削除すると、パーツP0は円形の外形線で囲まれた閉形状の線分で表される。
【0043】
ところで、図4において、終点Epから円形のパーツP0の法線方向に向かう、アプローチApと平行の所定の長さの逃げが設定されることがある(特許文献2の図7B参照)。パーツP0に逃げが設定されている場合には、NC装置31はステップS4にてアプローチApと逃げを削除する。
【0044】
NC装置31は、ステップS6にて、いずれかの閉形状の線分を選択する。なお、NC装置31は、ステップS6の処理を2回目以降繰り返すときには、選択済みの閉形状の線分を除く未選択の閉形状の線分の中からいずれかの閉形状の線分を選択する。NC装置31は、ステップS7にて、選択した閉形状が未判定の閉形状であるか否かを判定する。
【0045】
ステップS7にて閉形状の線分が未判定であれば(YES)、NC装置31は、ステップS8にて、選択した閉形状の線分が他の閉形状の線分の内側に存在するか否かを判定する。選択した閉形状の線分が他の閉形状の線分の内側に存在すれば(YES)、NC装置31は、ステップS9にて、選択した閉形状の線分を破棄して、処理をステップS6に戻す。選択した閉形状の線分が他の閉形状の線分の内側に存在しなければ(NO)、NC装置31は、ステップS10にて、選択した閉形状の線分を残して、処理をステップS6に戻す。
【0046】
ステップS8~S10の処理によって、各パーツの閉形状の線分の内側に穴を示す閉形状の線分が存在するときには、穴を示す閉形状の線分が破棄される。また、他のパーツの閉形状の線分の内側にパーツの閉形状の線分が存在するときには、内側に存在するパーツの閉形状の線分が破棄される。
【0047】
パーツP0は、内側に穴を示す閉形状の線分もパーツの閉形状の線分も存在しないので、ステップS8~S10の処理を繰り返しても、図11に示すネスティング画像103のままである。ステップS8~S10の処理の後、NC装置31は、ネスティング画像103に基づいて、パーツP0の部分を開口にした、図6に示すスケルトンと同様のスケルトン画像を生成してもよい。
【0048】
全ての閉形状の線分の選択が完了すると、ステップS7にて選択した閉形状が未判定の閉形状ではない(NO)と判定され、NC装置31は、処理を図3BのステップS11に移行させる。ネスティング画像103は、板金画像Wi内にパーツP0の各外形線で囲まれた閉形状の線分を含む。
【0049】
図3Bにおいて、NC装置31は、ステップS11にて、閉形状の線分(またはスケルトン画像の開口)を、設定された幅だけ拡大する。図12は、図11に示すネスティング画像103に一点鎖線で示す拡大された閉形状の線分を付加した状態を示す図である。図12において、ネスティング画像103には拡大された円形の線分EL0が付加されている。NC装置31は、ステップS12にて、拡大された線分に基づいて新たに閉形状の線分を作成する。
【0050】
図13は、拡大された閉形状の線分に基づいて作成された閉形状の線分(またはスケルトン画像の開口)を含むネスティング画像104を示す図である。図1において、拡大された閉形状の線分ELP0が形成されている。閉形状の線分ELP0はパーツP0の外形線を広げた形状の線分に相当する。拡大されたパーツの閉形状の線分は、隣接する拡大されたパーツの閉形状の線分とは接触しないとする。
【0051】
NC装置31は、ステップS13にて、最終的に残った全ての桟を通るスリット加工経路を作成する。図14は、図13に示すネスティング画像104に桟を通るスリット加工経路Psを付加した状態のネスティング画像105を示す図である。スリット加工経路Psは、桟の幅方向の中央、即ち、隣接する2つの線分ELP0から等距離となる位置に配置されている。
【0052】
NC装置31がパーツP0の閉形状の線分を線分EL0に拡大した上でスリット加工経路Psを設定するのは次の理由による。パーツP0の外形線とスリット加工経路Psとが近接していると、板金Wをスリット加工経路Psで切断することができないことがある。拡大された閉形状の線分ELP0間の桟にスリット加工経路Psを設定すれば、レーザ加工機30は板金Wをスリット加工経路Psでほぼ確実に切断することができる。
【0053】
NC装置31は、ステップS14にて、図14に示すスリット加工経路Psのうち、1つの加工単位内に存在するスリット加工経路Psを削除し、異なる加工単位の境界を通るスリット加工経路Psのみを残す。図15は、図14に示すスリット加工経路Psのうち、異なる加工単位の境界を通るスリット加工経路Ps0のみとしたネスティング画像106を示す図である。
【0054】
NC装置31は、ステップS15にて、各加工単位に隣接するスリット加工経路Ps0を各加工単位と対応付ける。図16は、各加工単位に隣接するスリット加工経路Ps0を各加工単位と対応付けた状態を示すネスティング画像107を示す図である。
【0055】
図16に示すように、NC装置31は、加工順#1~#3のパーツP0(線分ELP0)よりなる加工単位U1に、実線で示すようにスリット加工経路Ps1を対応付ける。NC装置31は、加工順#4~#7のパーツP0(線分ELP0)よりなる加工単位U2に、一点鎖線で示すようにスリット加工経路Ps2を対応付ける。NC装置31は、加工順#8~#10のパーツP0(線分ELP0)よりなる加工単位U3に、破線で示すようにスリット加工経路Ps3を対応付ける。図16においては、スリット加工経路Ps1~Ps3の区別を容易にするため、互いの線種を分けて表示している。
【0056】
なお、図15において、NC装置31は、2つの加工単位の間に存在するスリット加工経路Ps0は、加工順の早い方の加工単位に対応付ける。よって、加工単位U1~U3にそれぞれスリット加工経路Ps1~Ps3が対応付けられる。
【0057】
NC装置31は、ステップS16にて、各スリット加工経路Ps1~Ps3の始端側と終端側の端部を所定の距離だけ削除する。所定の距離は一例として10mmである。図17は、各スリット加工経路Ps1~Ps3の始端側と終端側の端部を所定の距離だけ削除した状態を示すネスティング画像108を示す図である。図17に示すように、スリット加工経路Ps1~Ps3は、始端側と終端側の端部が所定の距離だけ削除されてスリット加工経路Ps1’~Ps3’とされる。
【0058】
nを2以上の自然数とし、複数のパーツが加工順にn個の加工単位に分割されているとする。各加工単位は1またはそれ以上のパーツを含む。このとき、n個の加工単位のうちの最後に加工される加工単位を除く(n-1)個の加工単位にスリット加工経路が対応付けられることになる。即ち、スリット加工経路は(n-1)個となる。ネスティング画像108における最終的な(n-1)個のスリット加工経路は、板金Wの端部から所定の距離だけ板金Wを切断せず、他のスリット加工経路と連結していないスリット加工経路である。
【0059】
レーザ加工機30には、板金Wを支持する支持テーブルに支持テーブルと板金Wとを一体的に固定する複数のクランプが設けられていることがある。板金Wの端部から所定の距離だけ板金Wを切断しないスリット加工経路Ps1’~Ps3’とするのは、クランプによって板金Wを把持して板金Wのずれが抑え、板金Wがずれることによる寸法精度の悪化を防ぐためである。例えば、スリット加工によって分離される加工単位の部分がクランプによって把持されている場合は、板金Wの端部の非切断の部分を残さず、端部まで板金Wを切断することも可能である。
【0060】
NC装置31は、ステップS17にて、14個のパーツP0(線分ELP0)とスリット加工経路Ps1’~Ps3’の加工順を設定する。NC装置31は、各加工単位U1~U3の直後に各スリット加工経路Ps1’~Ps3’の加工が実行されるように加工順を設定する。図18は、NC装置31が設定した、14個のパーツP0(線分ELP0)とスリット加工経路Ps1’~Ps3’に加工順を設定したネスティング画像109を示す図である。NC装置31は、加工順#1~#3のパーツP0(線分ELP0)の次にスリット加工経路Ps1’を加工順#4に設定する。その結果、NC装置31は、当初加工順#4~#7であったパーツP0(線分ELP0)を加工順#5~#8に繰り下げ、次にスリット加工経路Ps2’を加工順#9に設定する。
【0061】
また、NC装置31は、当初加工順#8~#10であったパーツP0(線分ELP0)を加工順#10~#12に繰り下げ、次にスリット加工経路Ps3’を加工順#13に設定する。最後に、NC装置31は、当初加工順#11~#14であったパーツP0を加工順#14~#17に繰り下げる。
【0062】
NC装置31がステップS17にて14個のパーツP0(線分ELP0)とスリット加工経路Ps1’~Ps3’の加工順を設定した後に、オペレータが操作部34を操作して、スリット加工経路Ps1’~Ps3’のうちの少なくとも1つのスリット加工経路の位置を変更してもよい。オペレータがスリット加工経路の位置を変更すると、少なくとも2つの加工単位が変更される。スリット加工経路の位置変更による加工単位の変更(変更)も、オペレータが加工単位を手動で設定した設定値に相当する。なお、スリット加工経路の位置を変更すると、加工順を設定し直す必要がある。
【0063】
NC装置31は、ステップS18にて、加工プログラムを再構成して、再構成された新たな加工プログラムを作成して処理を終了させる。図19は、NC装置31が図18に示す加工順に基づいて再構成した新たな加工プログラムによるネスティング画像110を示す図である。
【0064】
NC装置31が新たに作成した加工プログラムに基づいて板金Wを加工するようレーザ加工機30(加工機本体32)を制御すると、レーザ加工機30は次のように板金Wを加工する。レーザ加工機30は、板金Wにネスティングされている複数のパーツのうちの1またはそれ以上のパーツを第1の加工単位としてレーザビームの照射により切断する。レーザ加工機30は、第1の加工単位に含まれる1またはそれ以上のパーツと、板金Wにネスティングされている複数のパーツのうちの未加工のパーツとの間の桟を、板金Wの端部から所定の距離だけ板金Wを切断しない状態でレーザビームの照射により切断して、その桟にスリットを形成する。レーザ加工機30は、未加工のパーツのうちの1またはそれ以上のパーツを第2の加工単位としてレーザビームの照射により切断する。
【0065】
このとき、第1及び第2の加工単位の各加工単位に含まれるパーツの個数を、各加工単位に含まれる1またはそれ以上のパーツの累積加工時間が予め設定された累積加工時間以内となるように設定するのがよい。予め設定された累積加工時間は、板金Wに反りが発生するまでの時間以内に設定するのがよい。
【0066】
より具体的に説明すると、まず、レーザ加工機30は、加工順#1~#3の3つのパーツP0を作製するよう板金Wを切断する。すると、板金Wに反りが発生するまでの時間に近い累積加工時間が経過している。レーザ加工機30は、加工順#4のスリット加工経路Ps1’を切断して、板金Wにスリットを形成する。これにより、板金Wの反りが軽減または防止される。板金Wの端部を切り残して加工順#1~#3の3つのパーツP0の領域を完全に切断しないようにすることによって、板金Wの位置ずれ等の不具合が防止される。
【0067】
次に、レーザ加工機30は、加工順#5~#8の4つのパーツP0を作製するよう板金Wを切断する。すると、板金Wに反りが発生するまでの時間に近い累積加工時間が経過している。レーザ加工機30は、加工順#9のスリット加工経路Ps2’を切断して、板金Wにスリットを形成する。これにより、板金Wの反りが軽減または防止され、板金Wの位置ずれ等の不具合が防止される。
【0068】
続けて、レーザ加工機30は、加工順#10~#12の3つのパーツP0を作製するよう板金Wを切断する。すると、板金Wに反りが発生するまでの時間に近い累積加工時間が経過している。レーザ加工機30は、加工順#13のスリット加工経路Ps3’を切断して、板金Wにスリットを形成する。これにより、板金Wの反りが軽減または防止され、板金Wの位置ずれ等の不具合が防止される。最後に、レーザ加工機30は、加工順#14~#17の4つのパーツP0を作製するよう板金Wを切断する。
【0069】
以上のようにして、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工方法、加工プログラム作成方法、及びレーザ加工機によれば、板金Wの反り量を低減させることができる。板金Wの反り量が低減するので、板金Wを切断して作製するパーツの寸法精度の低下、及び構成部品が板金に衝突する不具合を低減させることができる。
【0070】
図20は、14個のパーツP0を5つの加工単位に分割した例を示す図である。図20において、加工単位U1は、加工順#1~#3の3つのパーツP0よりなる。加工単位U2は、加工順#4~#6の3つのパーツP0よりなる。加工単位U3は、加工順#7及び#8の2つのパーツP0よりなる。加工単位U4は、加工順#9及び#10の2つのパーツP0よりなる。加工単位U5は、加工順#11~#14の4つのパーツP0よりなる。
【0071】
NC装置31は、ステップS15にて、各加工単位に隣接するスリット加工経路Ps0を各加工単位と対応付ける。図21は、図20に示すように14個のパーツP0が5つの加工単位に分割された場合における、各加工単位に隣接するスリット加工経路Ps0を各加工単位と対応付けた状態を示すネスティング画像107を示す図である。
【0072】
図21に示すように、NC装置31は、加工順#1~#3のパーツP0(線分ELP0)よりなる加工単位U1に、実線で示すようにスリット加工経路Ps1を対応付ける。NC装置31は、加工順#4~#6のパーツP0(線分ELP0)よりなる加工単位U2に、一点鎖線で示すようにスリット加工経路Ps2を対応付ける。NC装置31は、加工順#7及び#8のパーツP0(線分ELP0)よりなる加工単位U3に、点線で示すようにスリット加工経路Ps3を対応付ける。NC装置31は、加工順#9及び#10のパーツP0(線分ELP0)よりなる加工単位U4に、破線で示すようにスリット加工経路Ps4を対応付ける。
【0073】
図21に示す例では、スリット加工経路Ps1~Ps4によって、加工順#7及び#8のパーツP0を囲む閉経路が形成されている。
【0074】
図22は、各スリット加工経路Ps1~Ps4の始端側と終端側の端部を所定の距離だけ削除した状態を示すネスティング画像108を示す図である。図22に示すように、スリット加工経路Ps1~Ps4は、始端側と終端側の端部が所定の距離だけ削除されてスリット加工経路Ps1’~Ps4’とされる。スリット加工経路Ps3は両端部が所定の距離だけ削除されて、スリット加工経路Ps1’及びPs2’から離れたスリット加工経路Ps3’とされている。
【0075】
図23は、NC装置31が設定した、14個のパーツP0(線分ELP0)とスリット加工経路Ps1’~Ps4’に加工順を設定したネスティング画像109を示す図である。14個のパーツP0(線分ELP0)とスリット加工経路Ps1’~Ps4’に加工順は、図23に示すとおりとなる。図24は、NC装置31が図23に示す加工順に基づいて再構成した新たな加工プログラムによるネスティング画像110を示す図である。
【0076】
レーザ加工機30は、加工順#1~#3の3つのパーツP0を作製するよう板金Wを切断した後、加工順#4のスリット加工経路Ps1’を切断して、板金Wにスリットを形成する。レーザ加工機30は、加工順#5~#7の3つのパーツP0を作製するよう板金Wを切断した後、加工順#8のスリット加工経路Ps2’を切断して、板金Wにスリットを形成する。
【0077】
続けて、レーザ加工機30は、加工順#9及び#10の2つのパーツP0を作製するよう板金Wを切断した後、加工順#11のスリット加工経路Ps3’を切断して、板金Wにスリットを形成する。レーザ加工機30は、加工順#12及び#13の2つのパーツP0を作製するよう板金Wを切断した後、加工順#14のスリット加工経路Ps4’を切断して、板金Wにスリットを形成する。最後に、レーザ加工機30は、加工順#15~#18の4つのパーツP0を作製するよう板金Wを切断する。
【0078】
以上の1またはそれ以上の実施形態においては、NC装置31が、CAM機器20によって作成された加工プログラムを再構成して、再構成された新たな加工プログラムを作成している。NC装置31は、新たな加工プログラムに基づいて板金Wを加工するよう加工機本体32を制御する。
【0079】
CAM機器20が、スリット加工経路Ps1’~Ps3’またはPs1’~Ps4’を予め設定した加工プログラムを作成してもよい。この場合、NC装置31は、CAM機器20が作成した加工プログラムに基づいて板金Wを加工するよう加工機本体32を制御する。具体的には、CAM機器20はネスティング画像を作成すると共に複数のパーツの加工順を設定する。複数のパーツの加工順を設定したら、CAM機器20は、複数のパーツP0の累積加工時間等の条件に基づき板金Wに反りが発生するまでの時間以内となる1群のパーツP0を1つの加工単位として、複数のパーツを複数の加工単位に分割する。以降の処理は、図3A及び図3Bと同様であり、ステップS18では、新規に加工プログラムが作成される。
【0080】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 CAD機器
20 CAM機器
21,33 表示部
22,34 操作部
30 レーザ加工機
31 NC装置
32 加工機本体
321 加工ヘッド
322 ノズル
W 板金
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24