(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
A61F13/15 143
A61F13/15 110
(21)【出願番号】P 2021030450
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀憲
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-085255(JP,A)
【文献】特開2016-097106(JP,A)
【文献】特開2002-369838(JP,A)
【文献】特開2016-010593(JP,A)
【文献】特開2011-103923(JP,A)
【文献】特開2000-093456(JP,A)
【文献】特開平06-107838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体とを含む吸収性物品であり、
前記トップシート及び前記吸収体の間には、香料袋が配置されており、
前記香料袋は、
パルプ系シートに香気成分が含浸された香気材が、表面に開孔が形成された第1の開孔フィルムによって包まれた包装体が、水溶性フィルムにより袋状に形成された袋本体の内部に収納されたものであり、
前記袋本体の外表面が、表面に開孔が形成された第2の開孔フィルムによって更に包まれており、
着用時に体液が排出された際に前記袋本体の少なくとも一部が溶解することにより、外部に香気を放出することが可能である、
吸収性物品。
【請求項2】
前記第1の開孔フィルムの前記開孔は、上面視において円形であり、
前記開孔の直径は、0.5mm以上1mm以下である、
請求項
1に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ等を使用者が着用する際、糞尿等の体液が排泄されるが、この臭気が、使用者、使用者の介護者、使用者の周囲にいる者等を悩ます。そのため、紙おむつ等の吸収性物品には、体液の排泄による臭気発生の対策を講じることが求められている。
【0003】
このような臭気対策が講じられた吸収性物品に関するものとして、例えば、吸収性物品の材料として、体液による臭気を消臭することが期待される消臭機能を有する材料を用いることが試みられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、吸収コアと、吸収コアを被覆し、又は吸収コアに積層されるコアラップシートと、コアラップシートの少なくとも一方の面を覆う液透過性の外層シートと、を有する吸収性物品であって、コアラップシートは、酸化セルロース繊維の絶乾質量に対するカルボキシル基又はカルボキシレート基量が0.1~2.0mmol/gである酸化セルロース繊維に対し、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属元素のイオンを含有し、金属イオン含有セルロース繊維のカナダ標準濾水度が30~400mLである金属イオン含有セルロース繊維を含有する衛生薄葉紙である吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、体液の排泄による臭気発生の対策方法として、臭気を消臭するのではなく、マスキング効果又はハーモナイズ効果のある香料を用いることで、体液による臭気の不快感を軽減することが試みられている。
【0006】
例えば、特許文献2には、水不透過性の透明ないし半透明のカバー部材と尿吸収部材との間に、被膜が湿潤時に崩壊する被膜からなり、該被膜が湿潤して崩壊したときに核物質が外部に出て芳香を発したりする物質でなっているマイクロカプセルを介在させてなるおむつ型着用品が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、芳香物を密封した気密性水溶解性の袋が紙おむつ構成材料と共に含まれて成る紙おむつが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2017/014255号
【文献】特開昭59-106501号公報
【文献】公開実用新案昭63-100021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した特許文献1のような化学的消臭方法では、完全に臭気を感じない程度に臭気を取り除くことができないため、紙おむつ等の吸収性物品の消臭機能としては十分ではない。また、消臭効果を長時間にわたり持続させるという点でも不十分である。
【0010】
そして、特許文献2のようなマイクロカプセルを用いた方法では、使用者が体液を排出したときにカプセルが崩壊し、これによってカプセル内の香気成分が外部に香気を発することが期待される。しかし、このようなマイクロカプセルの場合、マイクロカプセルよりも先に吸収体が体液を吸収してしまうため、崩壊しないカプセルが残存し、外部に十分な香気を放出できない。
【0011】
また、本発明者は、その他の対策方法として、紙おむつの構成部材、例えばフラッフパルプ等に香気成分を付与(賦香)することも検討したが、やはり不十分であることがわかった。例えば、紙おむつ等の吸収性物品は、製品出荷時から時間がたつにつれて、香料が紙おむつを包装するポリエチレン等の包装材を貫通して徐々に揮散してしまい、賦香した香りが持続しない。そのため、使用者が吸収性物品を使用する時には、香気の放出効果が薄れてしまっており、外部に十分な香気を放出できない。このような理由等により、使用時には、体液が排出されても十分な臭気対策がなされないという問題がある。
【0012】
さらに、本発明者は、特許文献2のようなカプセル化だけでなく、特許文献3のような水溶性フィルム製の袋に香気成分を封入した香料袋とすることについても検討したが、従来の技術でははやり不十分であることが分かった。例えば、水溶性フィルム製の袋に用いられる材料によっては、耐薬品性が高いポリビニルアルコール等を使用することで、液状の香気成分(香料等)をそのまま袋に入れることができる場合があるかもしれない。しかし、仮にそのようなことが可能な場合があったとしても、一般に使用される香気成分の中には、水溶性フィルム製の袋に浸透するものがある。この場合、未使用の状態で吸収性物品を長期間保管していると、意図せず香気成分が水溶性フィルム製の袋に浸透してしまうため、袋から香気成分がしみ出してしまったり、袋の強度を低下させてしまったりする。このような理由等により、未使用の状態で吸収性物品を長期間保管すると品質が低下してしまうという問題がある。
【0013】
また、例えば介護者等が、着用者の排尿に気づくことができることも求められている。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、使用時には、体液が排出された際に十分な臭気対策がなされ、未使用時には、品質が低下することなく長期間保管することができ、さらには、使用者の排尿に気づくこともできる、吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体とを含む吸収性物品であり、トップシート及び吸収体の間には、香料袋が配置されており、香料袋は、パルプ系シートに香気成分が含浸された香気材が、表面に開孔が形成された第1の開孔フィルムによって包まれた包装体が、水溶性フィルムにより袋状に形成された袋本体の内部に収納されたものであり、着用時に体液が排出された際に袋本体の少なくとも一部が溶解することにより、外部に香気を放出することが可能である、吸収性物品とすることに知見を得て、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0017】
(1)
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体とを含む吸収性物品であり、前記トップシート及び前記吸収体の間には、香料袋が配置されており、前記香料袋は、パルプ系シートに香気成分が含浸された香気材が、表面に開孔が形成された第1の開孔フィルムによって包まれた包装体が、水溶性フィルムにより袋状に形成された袋本体の内部に収納されたものであり、着用時に体液が排出された際に前記袋本体の少なくとも一部が溶解することにより、外部に香気を放出することが可能である、吸収性物品である。
(2)
前記香料袋は、前記袋本体の外表面が、表面に開孔が形成された第2の開孔フィルムによって更に包まれている、(1)に記載の吸収性物品である。
(3)
前記第1の開孔フィルムの前記開孔は、上面視において円形であり、前記開孔の直径は、0.5mm以上1mm以下である、(1)又は(2)に記載の吸収性物品である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、使用時には、体液が排出された際に十分な臭気対策がなされ、未使用時には、品質が低下することなく長期間保管することができ、さらには、使用者の排尿に気づくこともできる、吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る吸収性物品の上面模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の香料袋の断面模式図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の香料袋の上面模式図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の香気材の断面模式図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の香気材の上面模式図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の第1及び第2の開孔フィルムの開孔の一例を示す断面模式図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の香料袋の製造方法の一例を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る吸収性物品の上面模式図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の香気材の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0021】
そして、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
なお、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
【0023】
[第1実施形態]
【0024】
図1は、第1実施形態に係る吸収性物品の上面模式図であり、
図2は、
図1のA-A線における断面模式図である。そして、
図3は、第1実施形態の香料袋の断面模式図であり、
図4は、第1実施形態の香料袋の上面模式図である。また、
図5は、第1実施形態の香気材の断面模式図であり、
図6は、第1実施形態の香気材の上面模式図であり、
図7は、第1実施形態の第1及び第2の開孔フィルムの開孔の一例を示す断面模式図である。
【0025】
第1実施形態に係る吸収性物品1は、液透過性のトップシート10と、液不透過性のバックシート20と、トップシート10及びバックシート20の間に配置された吸収体30とを含む吸収性物品であり、トップシート10及び吸収体30の間には、香料袋40が配置されている。そして、香料袋40は、パルプ系シートに香気成分が含浸された香気材42が第1の開孔フィルム43によって包まれた包装体41が、水溶性フィルム44により袋状に形成された袋本体の内部に収納されたものである。ここでは、香気材42を1枚の水溶性フィルム44でくるみ、その端部をヒートシールしたものを袋本体とした場合を例示している。
【0026】
このような構成を有する吸収性物品1は、着用時に体液が排出された際に、体液により袋本体の少なくとも一部が溶解することにより、外部に香気を放出することが可能である。
【0027】
そして、第1実施形態では、包装体41を内部に収納した水溶性フィルム44により袋状に形成された袋本体の外表面が、第2の開孔フィルム46によって更に包まれており、これをもって香料袋40を構成している。なお、本実施形態では、第2の開孔フィルム46を省略することができる。すなわち、袋本体の外表面は、第2の開孔フィルム46によって包まれていなくてもよい(後述する第2実施形態参照)。
【0028】
なお、本明細書の説明において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の着用時及び着用後の少なくとも一方をいう。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに使用者の前後にわたる方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向である。さらに、肌当接面とは、吸収体30等の各部材の表裏両面のうち、着用時に使用者の肌側(矢印F参照)に向けられる面であり、非肌当接面とは、吸収体30等の各部材の表裏両面のうち、着用時に使用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0029】
また、吸収性物品1は、ベビー用、成人用、介護用を問わず、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が例示されるが、これに限定されるものではなく、その他の吸収性物品1であってもよい。
【0030】
以下、各部材について説明する。
【0031】
<トップシート>
【0032】
トップシート10としては、公知のものを用いることができる。トップシート10は、体液が吸収体30へと移動するような液透過性を備えた不織布から形成されることが好ましい。トップシート10上に流出した体液は、吸収体30へと拡散し、吸収体30で素早く吸収される。
【0033】
トップシート10は、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドの2層の積層複合不織布、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、又はこれらを積層した複合シートといった材料から形成されることが好ましい。
【0034】
また、トップシート10には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工が施されてもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施す方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0035】
トップシート10の坪量は、特に限定されないが、強度、加工性、及び液戻り量の観点から、18g/m2以上400g/m2以下であることが好ましい。トップシート10の形状は、特に限定されないが、漏れがないように体液を吸収体30へと誘導できる形状であればよい。トップシート10は、吸収体30の全面を覆うように設けられているが、これに限定されず、例えば、吸収体30の一部が露出する構成としてもよい。体液を吸収体30に効率よく誘導できる観点から、トップシート10は吸収体30を覆うように配置されていることが好ましい。
【0036】
<立体ギャザー>
【0037】
吸収性物品1は、使用者が排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート10の肌側面に、一対の立体ギャザー50を備えていてもよい。吸収性物品1の幅方向における立体ギャザー50の幅方向一端は、バックシート20の肌側面の両側端部付近(又は非肌側面の両側端部付近)に固定されている。そして、幅方向他端はトップシート10に固定されない自由端となるように、立体ギャザーシートが配置されている。
【0038】
また、立体ギャザー50の自由端付近に立体ギャザー用弾性伸縮部材51を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザー50の自由端に起立性を付与し、使用者の体型に合わせて変形可能とすることができる。なお、本実施形態では、立体ギャザー50を設けていなくてもよい。
【0039】
立体ギャザー用弾性伸縮部材51としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が着用時され、立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維によって形成された撥水性又は液不透過性の不織布、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布等が着用時される。
【0040】
<バックシート>
【0041】
バックシート20は、公知のものを用いることができ、吸収体30が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されることが好ましく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成されることが好ましい。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー又はスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド等の積層複合不織布、及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0042】
バックシート20の坪量は、特に限定されないが、強度及び加工性の観点から、15g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。また、着用時の蒸れを防止する観点から、通気性を有するバックシート20であることが好ましい。バックシート20に通気性を付与する方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、バックシート20の基材となる樹脂フィルムを多孔質化する方法、バックシート20の基材にエンボス加工を施す方法等が挙げられる。樹脂フィルムを多孔質化する方法の一例としては、樹脂にフィラーを含有させてフィルム化し、得られたフィルムからフィラーを除去する方法等が挙げられる。フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム等の無機塩が挙げられる。
【0043】
<吸収体>
【0044】
吸収体30としては、公知のものを用いることができる。例えば、フラッフパルプ及び高吸収性ポリマーを含むものが挙げられる。
【0045】
フラッフパルプとしては、例えば、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。
【0046】
高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを着用時することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。
【0047】
吸収体30における、フラッフパルプ及び高吸収性ポリマーの形態は、フラッフパルプ中に高吸収性ポリマー粒子を混合して形成したものでもよく、フラッフパルプ間に高吸収性ポリマー粒子を固着した高吸収性ポリマーシートでもよい。
【0048】
また、高吸収性ポリマー粒子の漏洩防止や吸収体30の形状の安定化の目的から、吸収体30をキャリアシートに包んでもよい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、複数のキャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0049】
<香料袋>
【0050】
香料袋40は、まず、香気材42を第1の開孔フィルム43で包み込んだ包装体41を、水溶性フィルム44により袋状に形成された袋本体の内部に収納している。本実施形態では、袋本体の外表面を第2の開孔フィルム46によって更に包みこむことが好ましい。
【0051】
まず、本実施形態では、香気材42は、液状である香気成分(香料等)を直接袋本体に入れるのではなく、パルプ系シートに香気成分を含浸させた部材(香気材42)とした上で、この香気材42を袋本体に収納する。
【0052】
上述したように、液状の香気成分(香料等)を直接袋本体に入れると、未使用の状態で吸収性物品を長期間保管していると、意図せず香気成分が水溶性フィルム製の袋に浸透してしまうため、袋から香気成分がしみ出してしまったり、袋の強度を低下させてしまったりするといった事象が起こり得る。
【0053】
また、水溶性フィルム44から構成される袋本体である場合、水溶性フィルム44がシール(ヒートシール等)されているシール部45と、シールされていない部分との境目等のように、フィルム厚が異なる部分が発生することがある。あるいは、水溶性フィルム44にピンホールが発生することもある。液状の香気成分(香料等)を直接袋本体に入れると、このような箇所から、意図せずに、袋本体から香気成分がにじみ出てしまうといった事象も起こり得る。
【0054】
このような事象等により、使用時に体液が排出された際には、既に十分な香気を放出することができなくなっており、臭気対策が不十分であるという問題や、未使用時には、長期間保管しているうちに品質が低下してしまうという問題等が起きてしまう。
【0055】
しかしながら、本実施形態では、香気成分を香気材42で保持しているため、未使用時に意図せず香気成分が香料袋40から逃げて行ったり、揮発してしまったりすることがない。そして、使用時に体液が水溶性フィルム44と接触した際には、香気材42に保持されている香気成分から十分な香気が外部に放出される。よって、吸収性物品1の使用時には、体液が排出された際に十分な臭気対策がなされ、その効果を長時間にわたり持続させることができる。そして、吸収性物品1の未使用時には、意図せずに内部の香気成分が水溶性フィルム44を溶解させたり、破損させたりすることがないため、香気の放出や臭気対策といった点で品質が低下することがなく、長期間にわたって保管できる。
【0056】
さらに、本実施形態では、第1の開孔フィルム43によって香気材42を包み込むことで、香気材42及び水溶性フィルム44の間に第1の開孔フィルム43を介在させており、これによっても上述した問題の解消に寄与することができ、その利点を更なるものにできる。第1の開孔フィルム43を、香気材42及び水溶性フィルム44の間に介在させるため、香気材42と水溶性フィルム44が接触していない状態(非接触の状態)となる。そのため、香気材42に含浸された香気成分が、含浸部材であるパルプ系シートから水溶性フィルム44に移動してしまうことがない。よって、未使用時には、香気成分が、意図せず香料袋40から逃げて行ったり、揮発してしまったりすることがない。そして、使用時に体液が水溶性フィルム44と接触した際には、香気材42に保持されている香気成分から十分な香気を発生させることができる。
【0057】
このように、第1の開孔フィルム43を設けることによって、吸収性物品1の使用時には、体液が排出された際に十分な臭気対策がなされ、その効果を長時間にわたり持続させることができるという利点を更なるものにできる。そして、吸収性物品1の未使用時には、意図せずに内部の香気成分が水溶性フィルム44を溶解させたり、破損させたりすることがないため、香気の放出や臭気対策といった点で品質が低下することがなく、長期間にわたって保管できるという利点も更なるものにできる。
【0058】
そして、本実施形態では、使用時のべたつきの発生を抑えることができ、吸収性能が低下することなく、高い吸収性能を維持できるという観点から、第2の開孔フィルム46によって袋本体の外表面を更に包むことが好ましい。第2の開孔フィルム46によって袋本体を更に包み込むことで、溶解して糊状となった水溶性フィルム44の移動を効果的に抑制できる。
【0059】
例えば、吸収性物品1の使用時には、体液が水溶性フィルム44に接触することによって、水溶性フィルム44が溶解して糊状となる。この糊状になった水溶性フィルム44が吸収体30の構成部材(例えば、フラッフパルプ等)の空隙に入り込んでしまうと、吸収体30の吸収性能を低下させるといった問題が生じうる。
【0060】
あるいは、糊状になった水溶性フィルム44が吸収性物品1の表面(例えば、トップシート10等の表面)から大量ににじみ出てしまうと、べたつきが発生してしまい、使用者に不快感を与えてしまうといった問題が生じうる。
【0061】
しかし、本実施形態によれば、袋本体を第2の開孔フィルム46によって包み込むことで、水溶性フィルム44及び吸収体30の間に第2の開孔フィルム46を介在させることになるため、体液が水溶性フィルム44に接触して、水溶性フィルム44が糊状になった場合であっても、吸収体30への移動を効果的に抑制できる。その結果、吸収体30の吸水性能が低下することなく、高いレベルを維持できる。
【0062】
また、袋本体を第2の開孔フィルム46によって包み込むことで、水溶性フィルム44及びトップシート10の間に第2の開孔フィルム46を介在させることにもなるため、体液が水溶性フィルム44に接触して、水溶性フィルム44が糊状になった場合であっても、トップシート10等の表面への移動を効果的に抑制できる。その結果、吸収性物品1の表面に糊状の水溶性フィルム44がにじみ出すことがないため、べたつきの発生を効果的に防止できる。
【0063】
以下、本実施形態の香料袋40の各部材を説明する。
【0064】
(香気材)
【0065】
香料袋40の香気材42は、パルプ系シートに香気成分が含浸されたものである。香気成分が液状である場合、パルプ系シートに香気成分を含浸させることで、液状である香気成分を固定化することができる。なお、パルプ系シートには、後述するように、各種紙や不織布等のシートも包含される。
【0066】
水溶性フィルム44によって形成された袋本体は、ヒートシールしたことによりシール部45の厚さが薄くなり、強度の点で弱くなっていたり、ピンホールが生じてしまっていたりする場合がある。このような場合、袋本体に直接液体の状態で香料を入れると、袋本体の強度が弱くなった部分やピンホールが生じた部分等から液体である香料が漏れてしまうことがある。このような漏れがひどい場合は、吸収体30が油染みのような状態になってしまう。また、香料の中にはホットメルトの接着強度を弱めるものがあるため、このような香料を用いた場合には吸収性物品1を構成する部材が剥がれてしまう可能性もある。しかし、本実施形態では、液体である香料を直接袋本体に入れるのではなく、パルプ系シートに香気成分を含浸させて内包させるため、このような不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0067】
香気成分としては、天然香料及び合成香料等の香料を用いることができるが、排泄物の臭気に対するマスキング効果や、特にハーモナイズ効果を有するものであることが好ましい。香気成分の具体例としては、例えば、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュート等の天然抽出香料;高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、エステル類、ケトン類、サリチル酸及びこれらの誘導体、バニリン等の各種の合成香料;あるいはこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。香料としては、その他の公知の香料及び市販品の香料を用いることもできる。また、香気成分としては、常温常圧下において液状であることが好ましい。
【0068】
香気成分は、上述した香料の他に、公知の添加剤や溶媒を含んでいてもよい。
【0069】
香気成分を含浸させるパルプ系シートは、特に限定されないが、例えば、ろ紙、エアレイド不織布等が挙げられる。これらの中でも、香気成分を変質させることなく多量に含浸させることができる観点から、ろ紙であることが好ましい。また、パルプとしては、例えば、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サウザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース、ダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のパルプが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
(第1の開孔フィルム)
【0071】
香気材42を第1の開孔フィルム43で包み込んで包装体41とする。第1の開孔フィルム43は、オレフィン樹脂を含むことが好ましい。オレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。これらの中でも、柔らかさの観点からポリエチレンがより好ましい。第1の開孔フィルム43の具体例としては、例えば、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のオレフィン樹脂系フィルムが挙げられ、このようなオレフィン樹脂系フィルムを開孔処理したもの等が使用できる。
【0072】
第1の開孔フィルム43の単位面積あたりの開孔43hの数は、40個/cm2以上130個/cm2以下であることが好ましい。第1の開孔フィルム43の単位面積あたりの開孔43hの数を上記範囲とすることによって、糊状になった水溶性フィルム44のにじみ出し防止と香料の揮散のバランスを一層向上させることができる。この単位面積あたりの開孔43hの数は、第1の開孔フィルム43の一定の範囲内の開孔43hの数を数えることで測定できるが、境界部分で開孔部が完全に測定範囲内に収まっていない場合には、その面積を測定し、開孔43hの平均面積で除した値を使用する。
【0073】
第1の開孔フィルム43の開孔43hは、上面視において円形である場合、開孔43hの直径(開孔径d、
図7参照)は、0.5mm以上1mm以下であることが好ましい。直径を上記範囲とすることによって、開孔43hからの糊状になった水溶性フィルム44の滲みだしを防ぐことができる。ここでいう直径(開孔径d)とは、第1の開孔フィルム43のテーパー状に突出したリブRがない側の面からみた直径であり、第1の開孔フィルム43に形成された開孔43hの直径(開孔径d)の算術平均をとったものである。なお、テーパー状に突出したリブRがなく、断面視した際の開孔43hの開孔面にテーパーがない場合は、いずれか一方の面上から上面視した際の開孔直径をいう。また、開孔43hが真円形でない場合は、その面積と同じ真円を想定し、その直径を採用する。
【0074】
第1の開孔フィルム43の坪量は、強度、加工性等の点から、20g/m2以上60g/m2以下であることが好ましく、23g/m2以上30g/m2以下であることがより好ましい。坪量を上記下限値以上とすることにより、フィルムの破断をより一層防止できる傾向があり、また、坪量を上記上限値以下とすることにより、肌触りが硬くなることをより一層防止できる傾向がある。
【0075】
(袋本体)
【0076】
袋本体を構成する水溶性フィルム44は、耐薬品性が高く、保香性及びヒートシール性が得られる観点から、ポリビニルアルコールフィルム(PVAフィルム)等の水溶性樹脂フィルムであることが好ましい。
【0077】
PVAフィルムは、10℃以下の水で可溶であるものが好ましい。一般にポリビニルアルコールは、温水可溶タイプ(冷水には溶解せず、60℃以上や70℃以上といった温水の場合にのみ溶解可能なもの)や冷水可溶タイプ(冷水から温水までの広い水温域で溶解可能なもの)等、種々のものが使用されているが、本実施形態ではいわゆる冷水可溶であることがより好ましい。冷水可溶であると、体液の温度に関わらず、速やかに溶解し、香気を放出することができる。
【0078】
また、PVAフィルムは、耐薬品性及びガスバリアー性に優れていることが好ましい。このような性質を有することにより、体液以外の他の薬品や酸やアルカリ等によって意図せずフィルムが侵食されてしまうことを防止できる。
【0079】
上述したPVA等の水溶性フィルム44は、その厚さは、特に限定されないが、内包する香気材42をしっかりと封入できるとともに、体液と接触した際には速やかに溶解して外部に香気を放出できる観点から、20μm以上60μm以下であることが好ましく、30μm以上50μm以下であることがより好ましく、35μm以上45μm以下であることが更に好ましい。厚さが上記範囲であることにより、未使用時には、収納されている香気材42をしっかりと保持でき、使用時には、体液により溶解して糊状となった樹脂の量を低く抑えることができる。溶解して糊状となった樹脂が少量であると、吸収体30に移動することや、トップシート10等の表面ににじみ出てしまうこと等をより効果的に防止できる。
【0080】
そして、上述した観点から、水溶性フィルム44の10℃の水中における完全溶解時間は、15秒以上45秒以下であることが好ましく、20秒以上40秒以下であることがより好ましい。完全溶解時間は、中央3cm×3cm四方をくりぬいた6cm×6cm四方の水溶性フィルム44をサンプルとし、これを10℃の水中に入れて攪拌を開始する。そして、目視観察によって、水中でフィルムが完全に溶解するまでの時間を計測することにより得られる。
【0081】
また、上述した観点から、水溶性フィルム44の10℃の水中における破れ時間は、3秒以上20秒以下であることが好ましく、5秒以上18秒以下であることがより好ましく、7秒以上15秒以下であることが更に好ましい。破れ時間は、水溶性フィルム44を8cm×8cm四方にカットしたものをサンプルとし、これを10℃の水中に入れて攪拌を開始する。そして、目視観察によって、水中でフィルムが破れるまでの時間を計測することにより得られる。
【0082】
香料袋40の袋本体は、水溶性フィルム44により形成されていればよいが、例えば、略矩形状の1枚の水溶性フィルム44を2つ折りして重ね合わせ、重ね合わされた水溶性フィルム44の縁部がヒートシールされたシール部45を有することが好ましい。なお、図示はしないが、本実施形態では、1枚の水溶性フィルム44を2つ折りするのではなく、略矩形状の2枚の水溶性フィルム44を重ね合わせ、重ね合わされた2枚の水溶性フィルム44の縁部がヒートシールされたシール部を有するものであってもよい。すなわち、本実施形態では、1枚の水溶性フィルム44を2つ折りすることで袋本体としてもよいし、2枚の水溶性フィルム44を重ね合わせて袋本体としてもよい。
【0083】
(第2の開孔フィルム)
【0084】
香料袋40は、水溶性フィルム44により形成される袋本体の外表面が、第2の開孔フィルム46によって包み込まれている。第1実施形態のように第2の開孔フィルム46を使用する場合、水溶性フィルム44と第2の開孔フィルム46を重ね合わせた状態で一度に2つ折りし、重ね合わされたこれらの縁部を一度にヒートシールすることが好ましい(例えば、
図3参照)。このようにして一体的にヒートシールする場合は、水溶性フィルム44及び第2の開孔フィルム46の縁部を同時にヒートシールすることができるため、好適である。
【0085】
第2の開孔フィルム46の素材、物性、及び開孔46hの条件等は、第1の開孔フィルム43として説明した素材、物性、及び開孔43hの条件を採用することができる。例えば、第1の開孔フィルム43と同じ素材である開孔フィルムであってもよい。そして、物性及び/又は開孔条件が第1の開孔フィルム43と同じである開孔フィルムであってもよい。
【0086】
また、第2の開孔フィルム46を使用する場合、第2の開孔フィルム46は、必ずしも袋本体の外表面全て(すなわち、吸収体30側の表面とトップシート10側の表面の両面)に配置しなくてもよい。例えば、袋本体の吸収体30側の表面のみに第2の開孔フィルム46が積層されていてもよいし、トップシート10側の表面にのみに第2の開孔フィルム46が積層されていてもよい。すなわち、第2の開孔フィルム46は、袋本体の吸収体30側の表面、又は、トップシート10側の表面の少なくともいずれかに積層されているものであってもよい。このように片面のみに第2の開孔フィルム46を配置する場合の積層方法としては、水溶性フィルム44とヒートシールしてもよいし、接着剤によって接着してもよい。ヒートシールする場合は、ホットメルト接着剤等を併用してもよい。
【0087】
なお、第1の開孔フィルム43及び第2の開孔フィルム46の製造方法は、特に限定されず、公知の方法によって製造してもよい。例えば、第1の開孔フィルム43及び第2の開孔フィルム46がオレフィン樹脂系フィルムである場合、オレフィン樹脂組成物をフィルムに成形した後、このフィルムに開孔成形を施す方法が挙げられる。オレフィン樹脂組成物をフィルムに成形する方法は、特に限定されず、例えば、キャスト法、ラミネート法、インフレーションフィルム成形法等を採用することができる。また、オレフィン樹脂組成物は、フィルム成形の前にあらかじめ2軸押出機等によって溶融混練しておいてもよい。さらに、フィルムを開孔成形する方法も、高温空気によって開孔を穿孔する方法、高圧温水によって開孔を穿孔する方法、加熱された針によって開孔を穿孔する方法、レーザーによって開孔を穿孔する方法等を採用することができる。具体例としては、例えば、オレフィン樹脂組成物を、キャスト法によってフィルムに成形し、さらに、所定の開孔率を有するパンチングメタル(開孔パターンを有する多孔板)等をこのフィルムに当接して、高温空気を吹きつけることにより開孔成形を行う方法等が挙げられる。
【0088】
なお、上述した製造方法等によって得られた第1の開孔フィルム43及び第2の開孔フィルム46は、無孔フィルムに穿孔工程を施すことによって開孔43h、46hを形成するものであるため、フィルム表面に穿孔によるテーパー状のリブR(例えば、
図7参照)が生じる。すなわち、このようにして製造された第1の開孔フィルム43及び第2の開孔フィルム46は、これを断面視した状態において、開孔43h、46hが、フィルムの一方の表面から反対側の表面に向けて突出しているようになっている場合がある。
【0089】
この場合、第2の開孔フィルム46については、断面視した状態において、開孔46hが、第2の開孔フィルム46の一方の面(第1の面)から反対側の面(第2の面)に向かって突き出たテーパー状のリブRが形成されている。このようなリブRが形成されていることによって、使用時のべたつきの発生を一層効果的に抑制することができる。さらには、以下に説明するように、このテーパー状のリブRがある面(第2の面)が袋本体側となるように配置することが好ましい。
【0090】
例えば、トップシート10に使用される不織布等の材料は、液透過性があるものが使用されるため、トップシート10は、ポーラスで目付が低いものが用いられることが多い。そのため、糊状になった水溶性フィルム44の流動性が低いものであったとしても、使用者の体重により圧がかかることによって、不織布等の繊維が水溶性フィルム44の樹脂等に押し込まれてしまい、繊維間から糊状になった水溶性フィルム44が表面ににじみ出てしまう場合がある。
【0091】
この点、第2の開孔フィルム46は、例えば、特開平11-206811号公報等に記載されているような方法で製造することができる。例えば、上述したように、ポリエチレンを主成分としたフィルムを、開孔パターンを有する多孔板の上に配置して、そこに高温の空気を吹き付けることによって、多孔板の開孔に対応する形状を有する開孔46hを設ける製造方法を用いることができる。このような製造方法によって第2の開孔フィルム46を製造する場合、開孔46hの形状は、高温の空気を吹き付けられた表面(第1の面、
図7の上方側参照)とは反対側の表面(第2の面、
図7の下方側参照)に突き出たテーパー状のリブRが形成される(
図7のBlow及び符号R等参照)。
【0092】
このように、第2の開孔フィルム46の一方の面(第1の面、
図7の上方側参照)から反対側の面(第2の面、
図7の下方側参照)に向かって突き出たテーパー状のリブRが、開孔46hの周縁に形成されている場合、第2の開孔フィルム46に使用者の体重がかかると、リブRが押しつぶされ、開孔46hが塞がれた状態にできるため、糊状になった水溶性フィルム44が開孔46hを通過することを阻むことができる。その結果、水溶性樹脂が表面ににじみ出てしまうといった現象を効果的に防止でき、べたつきの発生を一層効果的に抑制できる。
【0093】
さらに、本実施形態では、このテーパー状のリブRがある面(第2の面)が袋本体側となるように配置することが好ましい。このような配置をとることにより、糊状になった水溶性フィルム44が開孔46hを通過しにくくなる。そして、押しつぶされたリブRがスペーサーとなり、水溶性フィルム44と第2の開孔フィルム46との間に僅かな隙間が形成される。この隙間を通じて、香気成分が、使用者の体重によって押しつぶされて塞がれておらず、糊状になった水溶性樹脂によっても塞がれていない開孔46hを経由して、外部へ香気を発することができる。その結果、より多くの香気を外部に発することができる。
【0094】
<拡散層>
【0095】
本実施形態では、香料袋40がトップシート10と吸収体30との間に配置されていればよい。よって、図示はしないが、本実施形態は拡散層を更に設けてもよい。拡散層は、例えば、香料袋40とトップシート10との間、又は/及び、香料袋40と吸収体30の間に設けることができる。
【0096】
図8は、第1実施形態の香料袋の製造方法の一例を説明するための模式図である。
【0097】
まず、紙に香気成分を含浸させた香気材42を用意し、第1の開孔フィルム43で包み込むことによって、包装体41を準備する。
【0098】
続いて、略矩形の長尺の水溶性フィルム44と、同じく略矩形の長尺の第2の開孔フィルム46とを重ね合わせる。そして、水溶性フィルム44側の表面上に、長手方向に沿って所定の間隔で複数個分の包装体41を配置し、幅方向に2つ折りする。そして、3方の開放端部をヒートシール等によってシールするとともに、各包装体41の縦境界もヒートシールする。これにより、長尺方向に複数個分の香料袋40を有する連続積層体40Sを得る。
図8では、4個の香料袋40、40a、40b、40cを示しているが、それ以上又はそれ以下の個数を有する連続積層体40Sとしてもよい。
【0099】
そして、連続積層体40Sにおいて並列された香料袋40a、40b、40cの縦境界(短手方向の境界、
図8のcut参照)を切断分離することによって、複数個の香料袋40を得る。
【0100】
なお、ヒートシールだけでは、水溶性フィルム44と第2の開孔フィルム46との接合が弱い場合には、ヒートシールする部分にあらかじめホットメルト接着剤を塗布しておいてもよい。なお、第2の開孔フィルム46について、開孔46hの周縁に上述したリブRが形成されている場合、そのままヒートシールすると、十分な強度が得られないことがある。このような場合は、ヒートシールで熱圧着することによりリブRの突起を潰すことができる。これにより、開孔46hの周縁をフラットな状態とすることができ、ホットメルト接着剤が再溶融することで水溶性フィルム44と強く接着させるという利点を得ることもできる。
【0101】
[第2実施形態]
【0102】
図9は、第2実施形態に係る吸収性物品の上面模式図であり、
図10は、
図9のB-B線における断面模式図であり、
図11は、第2実施形態の香気材の断面模式図である。
【0103】
第2実施形態に係る吸収性物品2は、香気材62が第2の開孔フィルムを有していない点で、第1実施形態と相違する。このように、本実施形態では、体液に接触して糊状となる水溶性フィルム64の量が少ない場合等には、第2の開孔フィルムを省略することもできる。
【0104】
吸収性物品2の香料袋60は、パルプ系シートに香気成分が含浸された香気材62が第1の開孔フィルム63によって包まれた包装体61が、水溶性フィルム64によって袋状に形成された袋本体の内部に収納されたものである。
【0105】
ここでは、袋本体が1枚の水溶性フィルム64によって形成されている場合を例示している。この袋本体は、1枚の水溶性フィルム64を2つ折りして重ね合わせ、重ね合わされた水溶性フィルム64の縁部がヒートシールされたシール部65を有している。また、香気材62は、水溶性フィルム64の外表面は第2の開孔フィルムで包まれていないものである。その他の事項については、特に断りがない限り、第1実施形態において説明したものを採用することができる。
【0106】
以上説明してきたように、本実施形態に係る吸収性物品1、2は、使用時には、体液が排出された際に十分な臭気対策がなされ、未使用時には、品質が低下することなく長期間保管することができ、さらには、使用者の排尿に気づくこともできる。例えば、使用者が排尿すると香気が吸収性物品1、2の外部に放出されるため、この香気をトリガーとして介護者が排尿に気づくことができる。さらには、おむつ等に用いた場合、おむつの交換時の不快感も軽減できる。このような観点から、本実施形態に係る吸収性物品1、2は、これを備える紙おむつ等として好適に用いることができる。特に、介護者が必要となる使用者向けの介護用吸収性物品(例えば、介護用紙おむつ等)として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0107】
1、2:吸収性物品
10:トップシート
20:バックシート
30:吸収体
40、40a、40b、40c、60:香料袋
41、61:包装体
42、62:香気材
43、63:第1の開孔フィルム
43h:(第1の開孔フィルムの)開孔
44、64:水溶性フィルム
45、65:シール部
46:第2の開孔フィルム
46h:(第2の開孔フィルムの)開孔
50:立体ギャザー
51:立体ギャザー用弾性伸縮部材
40S:連続積層体
F:矢印
R:リブ
d:開孔径