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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】環境音自動切替装置
(51)【国際特許分類】
   G10L 15/10 20060101AFI20240905BHJP
   G10L 15/00 20130101ALI20240905BHJP
【FI】
G10L15/10 500Z
G10L15/00 200Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021034936
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135252
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 啓
(72)【発明者】
【氏名】沖田 吉朗
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/184122(WO,A1)
【文献】特開2006-229867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモート環境でライブイベントを観戦する視聴者に配信する環境音を自動で切り替える環境音自動切替装置であって、
同一のリモート観戦グループの前記視聴者の会話音声のテキストデータに対する形態素解析により生成された形態素解析結果に基づいて、ライブイベント会場内における環境音採取場所を特定する、
環境音自動切替装置。
【請求項2】
請求項1に記載の環境音自動切替装置において、
前記形態素解析結果に含まれるそれぞれの形態素の発話回数をカウントし、前記形態素と発話回数とを関連付けた発話回数カウント結果を生成する単語発話回数カウント部と、
前記発話回数カウント結果、および所属グループとそれぞれの所属グループに関連する複数の単語とが対応付けられた単語表判定データに基づき、前記リモート観戦グループの所属グループを選定し、所属グループごとに設定された、複数の単語と複数の話題とのそれぞれの対応関係を示す単語表マトリクスから、選定した前記所属グループの単語表マトリクスを選択する単語表マトリクス選択部と、
前記形態素解析結果および選択された前記単語表マトリクスに基づき、前記形態素の重み付けを行い、単語重み付けデータを生成する単語分析部と、
前記発話回数カウント結果、選択した前記単語表マトリクス、および前記単語重み付けデータに基づき、前記リモート観戦グループについて選定した前記所属グループの話題ごとの会話得点を算出し、話題と総得点とを関連付けた話題総得点算出結果を生成する会話得点算出部と、
前記話題総得点算出結果、および前記ライブイベント会場内における環境音採取場所を特定する判定条件を規定する環境音採取場所表に基づき、環境音採取場所を特定する環境音採取場所特定部と、
特定された前記環境音採取場所の環境音を採取させる環境音採取部と、
採取した前記環境音を前記リモート観戦グループに配信する環境音配信部と、
を備える、
環境音自動切替装置。
【請求項3】
請求項2に記載の環境音自動切替装置において、
前記単語表マトリクス選択部は、前記発話回数カウント結果に含まれる前記形態素の発話回数を用いて、前記単語表判定データに含まれるそれぞれの前記単語の発話回数を前記所属グループごとにカウントし、発話回数が最も多い所属グループを前記リモート観戦グループの所属グループとして選定する、
環境音自動切替装置。
【請求項4】
請求項2に記載の環境音自動切替装置において、
前記会話得点算出部は、前記単語表マトリクス、および前記単語重み付けデータを用いて、前記話題ごとのそれぞれの前記単語の基礎得点を一覧にした単語基礎得点表マトリクスを生成し、前記単語基礎得点表マトリクス、および前記発話回数カウント結果を用いて前記話題ごとの総得点を算出する、
環境音自動切替装置。
【請求項5】
請求項2に記載の環境音自動切替装置において、
前記環境音採取場所表は、前記判定条件として、前記所属グループを規定する第1条件、複数の前記話題間における前記総得点の関係を規定する第2条件、および前記第1条件と前記第2条件との関係を規定する第3条件を含む、
環境音自動切替装置。
【請求項6】
請求項2に記載の環境音自動切替装置において、
前記リモート観戦グループに配信される前記環境音は、WAV形式のデータである、
環境音自動切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境音自動切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウィルスによるライブイベントの人数制限が行われ、ライブイベントのチケットの入手が困難になっている。そのため、ユーザは、自宅のTVやWeb配信等のリモート環境下でライブイベントを視聴する機会が多くなっている。従来、リモート環境下におけるライブイベントの臨場感向上には、優れた音響機器や、大画面・高画質の動画配信等のハードウェアを使って実現している。
【0003】
例えば特許文献1には、より臨場感のある高品質な音声を得ることができるようにしたテレビジョン受像機等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-3814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ライブイベントの雰囲気を得るためには、周りの応援団による盛り上げや、声援、拍手、ざわめき等の付随的な環境音が重要である。また、環境音は、スタジアム等の場所や、種目、対戦カード等によっても異なるため、環境音を取得する場所や対戦内容も重要となる。具体的には、ホーム応援席とビジター応援席とではイベントの進行状況に応じた盛り上がり方が全く異なるため、場所毎の環境音が応援の高揚感向上につながる。
【0006】
ところが、配信内容はTV局やWeb配信事業者に一方的に選択決定され、ユーザは配信者側が設定した環境音を受け身で得ることしかできない。例えば、TV等の一方的な動画配信では、例えば放送席の音声やその周辺の環境音のみが再生されることが多い。このような形態は、既存の配信の延長であるため観戦しやすいが、視聴者の意向に沿ったライブイベントの雰囲気を感じることは難しい。
【0007】
そこで、本発明は、リモート環境においても視聴者の意向に沿ったライブイベントの雰囲気を感じさせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下の通りである。
【0009】
本発明の代表的な実施の形態による環境音自動切替装置は、リモート環境REMでライブイベントを観戦する視聴者に配信する環境音を自動で切り替える。環境音自動切替装置40は、同一のリモート観戦グループの視聴者の会話音声のテキストデータに対する形態素解析により生成された形態素解析結果に基づいて、ライブイベント会場内における環境音採取場所を特定する。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0011】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、リモート環境においても視聴者の意向に沿ったライブイベントの雰囲気を感じさせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る環境音自動切替装置を備えた環境音自動切替システムの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る環境音自動切替装置の構成の一例を示す図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る環境音自動切替装置の動作の一例を説明する図である。
図4】単語表判定データの一例を示す図である。
図5】単語表マトリクスの一例を示す図である。
図6図5に対応する単語重み付けデータの一例を示す図である。
図7】会話得点算出部による所属グループの話題ごとの会話得点の算出方法を説明する図である。
図8】環境音採取場所表の一例を示す図である。
図9】本発明の一実施の形態の実施例に係る会話内容の一例を示す図である。
図10】本発明の一実施の形態の実施例に係る発話回数カウント結果を示す図である。
図11】本発明の一実施の形態の実施例に係る単語表判定データを示す図である。
図12】本発明の一実施の形態の実施例に係る単語表マトリクスを示す図である。
図13】本発明の一実施の形態の実施例に係る単語重み付けデータを示す図である。
図14】本発明の一実施の形態の実施例における会話得点算出部による所属グループの話題ごとの総得点の算出方法を説明する図である。
図15】本発明の一実施の形態の実施例における環境音採取場所表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する各実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明の技術範囲を限定するものではない。なお、実施例において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は、特に必要な場合を除き省略する。
【0014】
(一実施の形態)
<環境音自動切替システムの構成>
図1は、本発明の一実施の形態に関わる環境音自動切替装置を備えた環境音自動切替システムの構成の一例を示す図である。図1に示すように、環境音自動切替システム1は、ネットワークNETを介して、リモート環境REMと接続されている。
【0015】
図1の例では、リモート環境REMに複数のリモート観戦グループGR_1、GR_2が含まれている。それぞれのリモート観戦グループは、1または複数のユーザ(視聴者)で構成される。例えばリモート観戦グループGR_1には、3人のユーザU1、U2、U3が含まれる。ユーザは、例えばネットワーク等を介して所望のリモート観戦グループに接続する。また、ユーザは、ライブイベントの観戦中においても、リモート観戦グループから離れることが可能である。
【0016】
リモート観戦グループは、例えば、同一チームを応援するサポーターや、同一の会議や集会等の参加者等で構成される。同一のリモート観戦グループのユーザは、例えば電話による会話、ネットワークNET等を介した会話、あるいは直接会話を行う。すなわち、同じリモート観戦グループのユーザは、互いに離れた場所に居てもよいし、近くに居てもよい。
【0017】
環境音自動切替システム1は、同じリモート観戦グループのユーザの会話を取得して解析し、解析結果に基づいて観戦しているライブイベント会場の複数箇所の環境音から、このリモート観戦グループに最適な環境音を選択し、選択した環境音をこのリモート観戦グループの各ユーザへ配信する。環境音自動切替システム1は、図1に示すように、会話音声採取装置10、音声認識装置20、形態素解析装置30、環境音自動切替装置40、集合環境50等を含む。
【0018】
会話音声採取装置10は、リモート観戦グループに接続しているユーザの会話音声を採取し、採取した会話音声をRTP(Real-time Transport Protocol)化して音声RTPデータDAT_1を生成する。会話音声採取装置10は、生成した音声RTPデータDAT_1を音声認識装置20へ出力する。
【0019】
音声認識装置20は、会話音声採取装置10で生成された音声RTPデータDAT_1を入力し、入力した音声RTPデータDAT_1に対するRTP-テキスト変換処理をリアルタイムで行う。これにより、音声認識装置20は、音声RTPデータDAT_1から音声テキストデータDAT_2を生成する。音声認識装置20は、生成した音声テキストデータDAT_2を形態素解析装置30へ出力する。
【0020】
形態素解析装置30は、音声認識装置20で生成された音声テキストデータDAT_2を入力し、入力した音声テキストデータDAT_2に対する形態素解析を所定期間ごとに行う。形態素解析では、所定期間内に生成された、あるいは入力された、1または複数の音声テキストデータDAT_2に対する形態素解析が行われる。形態素解析により、形態素解析装置30は、音声テキストデータDAT_2を形態素(以下、「単語」とも称する)ごとに分割し、複数の単語からなる形態素解析結果DAT_3を生成する。形態素解析装置30は、生成した形態素解析結果DAT_3を環境音自動切替装置へ出力する。なお、形態素解析結果DAT_3は、後述するストレージ60へ記憶されてもよい。なお、形態素解析は、RTP-テキスト変換処理と同様、リアルタイムに行われてもよい。
【0021】
集合環境50は、ライブイベント会場の複数箇所に配置されたマイクが採取する環境音を含む。マイクは、ライブイベントのさまざまな場所に設置される。例えば野球やサッカー等のスポーツイベントでは、対戦チームのそれぞれの応援団が集まる場所や、応援団から離れた場所等にマイクが設置される。また、例えば会議や集会では、演壇や傍聴席等にそれぞれマイクが設置される。また、同一のライブイベントであってもブースごとに異なるイベントが行われる場合には、メイン会場や各ブースにマイクが設置される。また、集合環境50には、複数のライブイベントの環境音が含まれてもよい。
【0022】
環境音自動切替装置40は、形態素解析結果DAT_3を分析し、形態素解析結果DAT_3の分析結果に基づき、形態素解析結果DAT_3に対応する会話を行ったリモート観戦グループに配信する環境音の選択や切り替えを行う。環境音自動切替装置40は、例えば、形態素解析結果DAT_3の分析結果から、対応するリモート観戦グループが観戦するライブイベントを抽出する。さらに、環境音自動切替装置40は、形態素解析結果DAT_3の分析結果から、抽出したライブイベントにおいて、リモート観戦グループに最適な場所を選択し、選択した場所の環境音を配信用音声データSOU_2としてリモート観戦グループに配信する。環境音自動切替装置40の詳細については後述する。
【0023】
<<環境音自動切替装置の詳細>>
図2は、本発明の一実施の形態に係る環境音自動切替装置の構成の一例を示す図である。
図3は、本発明の一実施の形態に係る環境音自動切替装置の動作の一例を説明する図である。
【0024】
環境音自動切替装置40は、図2に示すように、単語発話回数カウント部41、単語表マトリクス選択部42、単語分析部43、会話得点算出部44、環境音採取場所特定部45、環境音採取部46、環境音配信部47、ストレージ60を備えている。
【0025】
これらのうち、単語発話回数カウント部41、単語表マトリクス選択部42、単語分析部43、会話得点算出部44、環境音採取場所特定部45、環境音採取部46、環境音配信部47は、コンピュータCOMでプログラムを実行することによりソフトウェアで実現されてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせて構成されてもよい。
【0026】
《ストレージ》
ストレージ60は、図2に示すように、発話回数カウント結果DAT_11を記憶する発話回数カウント結果記憶領域61、単語表判定データDAT_12を記憶する単語表判定データ記憶領域62、単語表マトリクスDAT_13を記憶する単語表マトリクス記憶領域63、単語重み付けデータDAT_14を記憶する単語重み付け記憶領域64、話題総得点算出結果DAT_15を記憶する会話得点記憶領域65、環境音採取場所表DAT_16を記憶する環境音採取場所表記憶領域66を備えている。
【0027】
また、ストレージ60は、前述の形態素解析結果DAT_3を記憶する形態素解析結果記憶領域や、プログラム等を記憶する記憶領域を備えてもよい。なお、ストレージ60は、環境音自動切替装置40の外部に設けられてもよい。
【0028】
《単語発話回数カウント部》
単語発話回数カウント部41は、ストレージ60から形態素解析結果DAT_3を読み出し、形態素解析結果DAT_3に含まれる各単語の発話回数をカウントし、単語と発話回数とを関連付けた発話回数カウント結果DAT_11を生成する。単語発話回数カウント部41は、発話回数カウント結果DAT_11を単語表マトリクス選択部42へ出力する。また、単語発話回数カウント部41は、発話回数カウント結果DAT_11をストレージ60へ記憶させる。なお、発話回数カウント結果DAT_11は、単語表マトリクス選択部42によりストレージ60へ記憶されてもよい。
【0029】
《単語表マトリクス選択部》
単語表マトリクス選択部42は、発話回数カウント結果DAT_11および単語表判定データDAT_12に基づき、対応するリモート観戦グループの所属グループを選定する。ここで言う所属グループとは、例えば、リモート観戦グループが応援するチーム、参加する会議や集会等における参加資格(演壇者、観覧者等)を区別する情報である。
【0030】
単語表マトリクス選択部42は、例えば、発話回数カウント結果DAT_11に含まれる単語の発話回数を用いて、単語表判定データDAT_12に含まれる単語の発話回数を所属グループごとにカウントし、発話回数が最も多い所属グループをリモート観戦グループの所属グループとして選定する。
【0031】
そして、単語表マトリクス選択部42は、選定した所属グループをストレージ60へ通知する。ストレージ60は、単語表マトリクス選択部42から通知された所属グループに対応する単語表マトリクスDAT_13を、単語分析部43へ出力する。
【0032】
図4は、単語表判定データの一例を示す図である。図4に示すように、単語表判定データDAT_12は、複数の所属グループと、それぞれの所属グループに関連する複数の単語とが対応付けられている。図4の例では、所属グループXと単語X1~Xmとが対応付けられ、所属グループYと単語Y1~Ymとが対応付けられ、所属グループZと単語Z1~Zmとが対応付けられている。単語表判定データDAT_12は、事前に登録され、ストレージ60に記憶される。なお、所属グループごとに登録される単語数が異なってもよい。
【0033】
単語表マトリクスDAT_13は、対応する所属グループごとに、複数の単語と、複数の話題とのそれぞれの対応関係を示している。具体的に述べると、単語表マトリクスDAT_13には、それぞれの単語がどのような話題で使用される単語であるかが登録されたものである。
【0034】
図5は、単語表マトリクスの一例を示す図である。図5には、所属グループXの単語表マトリクスDAT_13Xが例示されている。図5では、単語1~単語nが、所属グループXの話題A~話題Zのそれぞれに属するか否かが示されている。例えば、単語1は、話題Aに属していないが、話題Zに属している。一方、単語3は、話題Aに属しているが、話題Zに属していない。
【0035】
このように、単語表マトリクスDAT_13には、それぞれの単語がどの話題に属するかを、「0」、「1」の値からなるマトリクスとして登録されている。単語表マトリクスDAT_13は、事前に登録され、ストレージ60に記憶される。なお、単語表マトリクスの単語は、単語表判定データの単語と同一ある必要はない。また、単語表判定データと単語表マトリクスとの間で、単語の個数が異なってもよい。
【0036】
《単語分析部》
単語分析部43は、形態素解析結果DAT_3、および対応するリモート観戦グループに対し選定された所属グループに対応する単語表マトリクスDAT_13に基づき、単語ごとの重み付けを行う。ここで、重み付けの対象となる単語は、単語表マトリクスDAT_13に登録された単語である。
【0037】
単語分析部43は、例えば、既存のテキストマイニング技術(例えばbow : Bag of words等)を用いた単語のベクトル化や、TF-IDF(Term Frequency - Inverse Document Frequency)等のアルゴリズムを用いて単語の重み付けを行う。このように、単語分析部43は、単語表マトリクスDAT_13に登録された単語と、重み付けとを関連付けた単語重み付けデータDAT_14を生成し、生成した単語重み付けデータDAT_14を会話得点算出部44へ出力する。また、単語重み付けデータDAT_14は、単語分析部43または会話得点算出部44からストレージ60へ記憶される。
【0038】
図6は、図5に対応する単語重み付けデータの一例を示す図である。図6には、図5と対応させて、単語1~単語nと、それぞれの単語の重み付けとが関連付けた単語重み付けデータDAT_14Xが示されている。
【0039】
《会話得点算出部》
会話得点算出部44は、発話回数カウント結果DAT_11、単語表マトリクスDAT_13、および単語重み付けデータDAT_14に基づき、リモート観戦グループについて選定した所属グループの話題ごとの会話得点(総得点)を算出する。
【0040】
図7は、会話得点算出部による所属グループの話題ごとの会話得点の算出方法を説明する図である。図7には、前述した所属グループXの話題特定方法が例示されている。以下、図7を用いて会話得点算出部44の処理について説明する。
【0041】
会話得点算出部44は、まず、例えば図7(a)に示す単語表マトリクスDAT_13X、および例えば図7(b)に示す単語重み付けデータDAT_14Xを用いて、例えば図7(c)に示す、話題ごとのそれぞれの単語の基礎得点を一覧にした単語基礎得点表マトリクスDAT_25X(DAT_25)を生成する。
【0042】
会話得点算出部44は、単語重み付けデータDAT_14Xにおける単語1の重み付け「0.4」と、単語表マトリクスDAT_13Xにおける、それぞれの話題A~話題Zの単語1の各値とを乗算し、それぞれの話題A~話題Zの単語1の基礎得点を算出する。図7では、話題Aにおける単語1の値は「0」に設定されているので、話題Aにおける単語1の基礎得点は「0」である。これに対し、話題Zにおける単語1の値は「1」に設定されているので、話題Zにおける単語1の基礎得点は「0.4」である。
【0043】
会話得点算出部44は、単語2~単語nについて、対応する重み付け「0.3」、「0.7」・・・「Vn」をそれぞれ用いて、それぞれの話題A~話題Zにおける、単語2~単語nの基礎得点をそれぞれ算出する。会話得点算出部44は、これらの演算結果を用いて、単語基礎得点表マトリクスDAT_25X(DAT_25)を生成する。
【0044】
次に、会話得点算出部44は、単語基礎得点表マトリクスDAT_25X(DAT_25)、および例えば図7(d)に示す発話回数カウント結果DAT_11X(DAT_11)を用いて話題ごとの総得点を算出する。
【0045】
会話得点算出部44は、話題ごとに、単語基礎得点表マトリクスDAT_25Xにおける各単語の基礎得点と、発話回数カウント結果DAT_11Xにおける各単語の発話回数とを乗算し、各単語の得点を算出する。そして、会話得点算出部44は、話題ごとにすべての単語の得点を加算することで、話題ごとの総得点をそれぞれ算出する。
【0046】
そして、会話得点算出部44は、例えば図7(e)に示すような、話題と総得点とを関連付けた話題総得点算出結果DAT_15X(DAT_15)を生成する。図7(e)において、「a」は話題Aの総得点(a=5*0+2*0+1*0.7・・・)を示し、「z」は話題Zの総得点(z=5*0.4+2*0.3+1*0・・・)を示している。会話得点算出部44は、生成した話題総得点算出結果DAT_15X(DAT_15)を環境音採取場所特定部45へ出力する。また、話題総得点算出結果DAT_15X(DAT_15)は、会話得点算出部44または環境音採取場所特定部45によりストレージ60へ記憶される。
【0047】
《環境音採取場所特定部》
環境音採取場所特定部45は、話題総得点算出結果DAT_15、およびライブイベント会場内における環境音採取場所を特定する判定条件を規定する環境音採取場所表DAT_16に基づき、リモート観戦グループに配信する環境音の採取場所を特定する。
【0048】
図8は、環境音採取場所表の一例を示す図である。図8の環境音採取場所表DAT_16には、環境音採取場所の一覧(例えば場所1~場所7)とそれぞれに対応する判定条件とが関連付けて示されている。ライブイベント会場には、事前に所定の場所(例えば場所1~場所7)にマイクが設置されている。
【0049】
前述の環境音採取場所は、すなわちマイク設置場所である。図3には、ライブイベント会場として野球場が例示されている。野球場の場合、場所1は、レフトスタンドの応援団付近である。場所2は、3塁側の外野スタンドである。場所3は、3塁側の内野スタンドである。場所4は、バックネット付近である。場所5は、ライトスタンドの応援団付近である。場所6は、1塁側の外野スタンドである。場所7は、1塁側の内野スタンドである。
【0050】
図8には、判定条件として、所属グループを規定する第1条件、複数の話題間における総得点の関係を規定する第2条件、および第1条件と第2条件との関係を規定する第3条件がそれぞれ示されている。
【0051】
第1条件として、対応するリモート観戦グループに対し選定された所属グループが規定される。図8は、説明の便宜上、所属グループX、Yのみが示されているが、3つ以上の所属グループが規定されてもよい。第2条件として、話題間の総得点の関係が規定される。図8では、話題Aおよび話題Z間における総得点の関係が規定されているが、3つ以上の話題間における総得点の関係が規定されてもよい。第3条件として、第1条件と第2条件との関係が規定される。例えば「AND」は第1条件および第2条件の両方を満たせばよいことを規定し、「OR」は第1条件または第2条件を満たせばよいことを規定する。環境音採取場所表DAT_16は、事前に登録され、ストレージ60に記憶される。なお、判定条件は、この例に限定されるものではない。
【0052】
環境音採取場所特定部45は、話題総得点算出結果DAT_15、および環境音採取場所表DAT_16に基づき環境音採取場所(例えば場所1~場所7のいずれか)を特定し、特定した環境音採取場所を環境音採取場所情報DAT_17として環境音採取部46へ出力する。
【0053】
《環境音採取部》
環境音採取部46は、環境音採取場所情報DAT_17を入力し、環境音採取場所情報DAT_17に対応する場所から環境音を採取させる。初期状態ではすべてのマイクがオフになっており、環境音採取部46は、環境音採取場所情報DAT_17に対応する場所に設置されたマイクをオンする。このマイクが採取した環境音SOU_1は、環境音自動切替装置40へ出力される。
【0054】
《環境音配信部》
環境音配信部47は、環境音SOU_1を入力し、配信用音声データSOU_2を生成する。配信用音声データSOU_2は、特に限定されるものではないが、例えばWAV形式等のデータである。環境音配信部47は、入力される環境音SOU_1から配信用音声データSOU_2を逐次生成し、生成した配信用音声データSOU_2を、対応するリモート観戦クループの各ユーザへ向けてリアルタイムに配信する。これにより、リモート観戦クループの各ユーザは、リモート観戦クループに最適なライブイベント会場の環境音を聞くことが可能となる。
【0055】
<実施例>
ここで、プロ野球を観戦する場合を例にした実施例について説明する。ここでは、チームXとチームYの試合をリモートで観戦するものとする。試合が行われる場所は、チームXのホームグラウンドであるZスタジアムである。リモート観戦グループの参加メンバーは、ユーザA、ユーザB、ユーザCの3人とする。
【0056】
図9は、本発明の一実施の形態の実施例に係る会話内容の一例を示す図である。図9には、ユーザA、ユーザB、ユーザCによる会話内容の音声テキストデータDAT_2exが示されている。図9には、説明の便宜上、3人の会話内容がテキスト化されて示されている。図9において、太字は、単語表判定データに含まれる単語であり、下線が引かれた太字は、単語表マトリクスに含まれる単語である。
【0057】
図9には、チームXの「O野」選手および「Mニキ」選手、チームYの「O丸」選手、今回の対戦チームではないチームWの「M山」選手、およびチームSの「S島」選手を中心に、バッティング成績に関する3人の会話が含まれている。
【0058】
形態素解析装置30は、図9の会話音声の音声テキストデータに対する形態素解析を行い、形態素解析結果(図示は省略)が環境音自動切替装置40に入力され、単語ごとの発話回数がカウントされ、発話回数カウント結果が生成される。
【0059】
図10は、本発明の一実施の形態の実施例に係る発話回数カウント結果を示す図である。図10の発話回数カウント結果DAT_11exには、主に野球選手や野球用語等の単語と、単語ごとの発話回数とが関連付けられている。
【0060】
次に、単語表マトリクス選択部42は、ストレージ60から単語表判定データDAT_12exを読み出し、発話回数カウント結果DAT_11ex、および単語表判定データDAT_12exに基づき、リモート観戦グループの応援チーム(所属グループ)を選定する。
【0061】
図11は、本発明の一実施の形態の実施例に係る単語表判定データを示す図である。図12は、本発明の一実施の形態の実施例に係る単語表マトリクスを示す図である。単語表判定データDAT_12exには、例えばチームX、チームY、…、チームWと、各チームに属する単語が示されている。なお、プロ野球等のスポーツイベントでは、選手名が観戦中に最もよく発話されるため、所属チーム(所属グループ)ごとに、選手名やニックネームを単語表判定データDAT_12exに登録することが好ましい。
【0062】
本実施例では、発話回数カウント結果DAT_11exにチームXの選手名が一番発話されているので、このリモート観戦グループの所属グループとしてチームXが選択される。図12には、所属グループがチームXである場合の単語表マトリクスDAT_13exが示されている。単語表マトリクスDAT_13exには、それぞれの単語が、それぞれの話題(話題A、話題B)に属するか否かの情報がマトリクスとして登録されている。話題Aは、例えばチームXやチームXの所属選手に対する応援・野次に関するものであり、話題Bは、例えばチームXやチームXの所属選手の成績・指標に関するものである。
【0063】
単語分析部43は、形態素解析結果および単語表マトリクスDAT_13exを入力し、例えばテキストマイニング技術を用いて図10に示す各単語の重み付けを行う。図13は、本発明の一実施の形態の実施例に係る単語重み付けデータを示す図である。図13に示す単語重み付けデータDAT_14exは、単語ごとの重み付けが示されている。
【0064】
図14は、本発明の一実施の形態の実施例における会話得点算出部による所属グループの話題ごとの総得点の算出方法を説明する図である。会話得点算出部44は、図13の単語重み付けデータDAT_14exおよび単語表マトリクスDAT_13exを用いて、図14(a)に示す単語基礎得点表マトリクスDAT_25exを作成する。そして、会話得点算出部44は、図10の単語基礎得点表マトリクスDAT_25exおよび発話回数カウント結果DAT_11exを用いて、話題A、話題Bの総得点をそれぞれ算出し、図7(b)に示すような話題総得点算出結果DAT_15exを生成する。会話得点算出部44は、生成した話題総得点算出結果DAT_15exを環境音採取場所特定部45へ出力する。
【0065】
図15は、本発明の一実施の形態の実施例における環境音採取場所表を示す図である。図15に示すように、本実施例では、環境音の採取場所(すなわちマイクの設置場所)は、「実況・解説席付近」、「ホーム応援団付近」、「ビジター応援団付近」、「ホーム外野スタンド」、「ビジター外野スタンド」、「ホーム内野スタンド」、「ビジター内野スタンド」である。 また、環境音採取場所表DAT_16exには、それぞれの採取場所について、応援チーム(所属グループ、第1条件)、話題間の総得点関係(第2条件)、第1条件と第2条件との関係を規定する第3条件(AND、OR)が規定されている。
【0066】
第2条件の考え方は以下の通りである。「実況・解説席付近」、「ホーム内野スタンド」、および「ビジター内野スタンド」は、試合観戦において、例えば監督や選手の知見を聞きたい、ゲーム状況を正しく把握したい観戦者に好まれる傾向にある。このため、「応援・野次」の総得点よりも、「成績・指標」の総得点が高いリモート観戦グループに、これらの場所の環境音を配信する。また、テレビ放送やラジオ放送等においても、「実況・解説席付近」の位置の環境音を、応援しているチーム側のリモート観戦グループに配信する。
【0067】
一方、「ホーム応援団付近」、「ビジター応援団付近」、「ホーム外野スタンド」、および「ビジター外野スタンド」の環境音は、「成績・指標」よりも「応援・野次」の総得点が高いリモート観戦グループの各ユーザに配信される。また、このようなユーザは、当然ながら、応援しているチームを応援団とともに応援したいと考えているので、応援するチームの応援団付近や、外野スタンドの環境音が配信される。
【0068】
本実施例では、応援チームとして「チームA」が選定されている。すなわち、第1条件は「チームA」である。また、図7(b)の話題総得点算出結果DAT_15exに示すように、本実施例では、話題B(成績・指標)の総得点「1.4」は、話題A(応援・野次)の総得点「0.7」より高くなっている。すなわち、第2条件は「応援・野次<=成績・指標」である。この結果から、このリモート観戦グループは、チームや選手の成績についての会話を主に行っていることがわかる。
【0069】
これらの条件を満たす環境音の採取場所は、「実況・解説席付近」、「ホーム内野スタンド」の2箇所である。なお、環境音の採取場所が「実況・解説席付近」である条件は、第1条件または第2条件を満たせばよいため、本条件を満たしている。また、この場合、応援チームを特に規定していないため、必ず第1条件を満たすこととなる。したがって、本実施例では、応援チームがホームチーム、ビジターチームであっても、「実況・解説席付近」は選択される。
【0070】
そして、環境音採取場所特定部45は、「実況・解説席付近」、および「ホーム内野スタンド」のマイクをオンにする。これらのマイクが採取した環境音は、環境音採取部46に入力される。環境音採取部46は、入力された環境音から配信用音声データを生成し、リモート観戦グループのユーザA、ユーザB、ユーザCへそれぞれ配信する。これにより、ユーザA、ユーザB、ユーザCは、球場から離れた場所に居ながら、実況・解説の音声、および応援するチームX側の内野スタンドの環境音を聞くことが可能となる。
【0071】
<本実施の形態による主な効果>
本実施の形態によれば、同一のリモート観戦グループのユーザの会話音声に対応する形態素解析結果に基づいて、ライブイベント会場内における環境音採取場所が特定される。この構成によれば、リモート観戦グループに最適な環境音が選択されるので、リモート環境においてもユーザの意向に沿ったライブイベントの雰囲気を感じさせることが可能となる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、単語表判定データDAT_12に含まれるそれぞれの単語の発話回数を所属グループごとにカウントし、発話回数が最も多い所属グループがリモート観戦グループの所属グループとして選定される。この構成によれば、数値判定により客観的にリモート観戦グループの所属グループを選定することが可能となる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、単語基礎得点表マトリクスDAT_25、および発話回数カウント結果DAT_11を用いて話題ごとの総得点が算出される。これにより、リモート観戦グループにおける主な話題を特定することが可能となる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、環境音採取場所表DAT_16は、判定条件として、所属グループを規定する第1条件、複数の話題間における総得点の関係を規定する第2条件、および第1条件と第2条件との関係を規定する第3条件を含む。この構成によれば、ライブイベント会場の環境音の採取場所を適切な特定することが可能となる。
【0075】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。なお、図面に記載した各部材や相対的なサイズは、本発明を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な形状となる場合がある。
【符号の説明】
【0076】
1…環境音自動切替システム、40…環境音自動切替装置、41…単語発話回数カウント部、42…単語表マトリクス選択部、43…単語分析部、44…会話得点算出部、45…環境音採取場所特定部、46…環境音採取部、47…環境音配信部、60…ストレージ、DAT_11…発話回数カウント結果、DAT_12…単語表判定データ、DAT_13…単語表マトリクス、DAT_14…単語重み付けデータ、DAT_15…話題総得点算出結果、DAT_16…環境音採取場所表、DAT_17…環境音採取場所情報、DAT_25…単語基礎得点表マトリクス、GR…リモート観戦グループ、REM…リモート環境。
図1
図2
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図6
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