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特許7550085ステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   G04C 3/14 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G04C3/14 W
G04C3/14 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021040047
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139592
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】502366745
【氏名又は名称】セイコーウオッチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一雄
(72)【発明者】
【氏名】井橋 朋寛
(72)【発明者】
【氏名】佐久本 和実
(72)【発明者】
【氏名】奥村 朗人
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-158644(JP,A)
【文献】実開平4-130098(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 3/00
G04C 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指針を回転させるロータと、前記ロータを回転させるための磁束を発生させるコイルとを備えるステッピングモータを駆動する回路であって、前記コイルの第1端部から第2端部の方向に流れる第1電流を供給する第1駆動回路と、前記第2端部から前記第1端部の方向に流れる第2電流を供給する第2駆動回路とを備える駆動部と、
前記ロータを半回転ごとにステップ回転させるための駆動パルスと、前記ロータを揺動させるための揺動パルスとを前記駆動部に出力する制御部と、
回転負荷が他の歯とは異なる負荷歯を有し1回転する場合の前記ロータの回転のステップ数が奇数である負荷歯車を含み、前記ロータから前記指針に回転力を伝達する輪列と、
前記ロータが振動した場合に、前記コイルの前記第1端部および前記第2端部のうち、一方の端部に発生する誘起電圧のみを検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出する結果に基づいて、前記負荷歯車の負荷歯と前記負荷歯車に噛み合う歯とが接触することによって前記ロータが受ける機械的負荷を判定する判定部と、
を備えるステッピングモータ制御装置。
【請求項2】
前記輪列は、前記指針の角速度と一致した角速度で回転する第1車と、前記第1車の歯車にかみ合うかなと前記負荷歯車とを有する第2車と、前記第2車の前記負荷歯車にかみ合うかなと前記ロータにかみ合う歯車とを有する第3車とを備える
請求項1に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項3】
前記第2車が1回転する前記ロータの回転のステップ数が奇数である
請求項2に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項4】
前記第2車の歯数が奇数である
請求項2または請求項3に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項5】
前記第1車の歯車は、回転負荷が他の歯とは異なる負荷歯を備えており、
前記判定部は、前記第2車のかなと前記第1車の負荷歯とが接触することにより前記ロータが受ける機械的負荷である第1負荷と、前記第3車のかなと前記第2車の負荷歯とが接触することにより前記ロータが受ける機械的負荷である第2負荷とをそれぞれ判定する
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項6】
前記ステッピングモータは、複数の前記コイルを備え、
前記駆動部は、複数の前記コイルにそれぞれ対応する前記第1駆動回路と前記第2駆動回路との組を備える
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項7】
前記判定部は、過去に検出された前記誘起電圧の検出周期に基づいて、前記電圧検出部が検出する結果を補間することにより、前記誘起電圧が検出されるべきタイミングを判定する
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項8】
指針を回転させるロータと、前記ロータを回転させるための磁束を発生させるコイルとを備えるステッピングモータを駆動する回路を備える駆動部と、
前記ロータを回転させるための駆動パルスと、前記ロータを揺動させるための揺動パルスとを前記駆動部に出力する制御部と、
回転負荷が他の歯とは異なる負荷歯を有する負荷歯車を含み、前記ロータから前記指針に回転力を伝達する輪列と、
前記ロータが振動した場合に前記コイルに発生する誘起電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出する結果に基づいて、前記負荷歯車の負荷歯と前記負荷歯車に噛み合う他の歯車の歯とが接触することによって前記ロータが受ける機械的負荷を判定するとともに、過去に検出された前記機械的負荷の検出周期に基づいて、前記電圧検出部が検出する結果を補間することにより、前記機械的負荷が検出されるべきタイミングを判定する判定部と、
を備えるステッピングモータ制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置と、
前記ステッピングモータと、
を備えるムーブメント。
【請求項10】
請求項9に記載のムーブメントを備える時計。
【請求項11】
指針を回転させるロータと、前記ロータを回転させるための磁束を発生させるコイルとを備えるステッピングモータを駆動する回路であって、前記コイルの第1端部から第2端部の方向に流れる第1電流を供給する第1駆動回路と、前記第2端部から前記第1端部の方向に流れる第2電流を供給する第2駆動回路とを備える駆動部に対して、前記ロータを半回転ごとにステップ回転させるための駆動パルスと、前記ロータを揺動させるための揺動パルスとを前記駆動部に出力し、
前記ロータが振動した場合に前記コイルに発生する誘起電圧のうち、前記コイルの前記第1端部に発生する誘起電圧のみを検出し、
前記ロータから前記指針に回転力を伝達する輪列を構成する歯車のうち、回転負荷が他の歯とは異なる負荷歯を有し1回転する場合の前記ロータの回転のステップ数が奇数である負荷歯車の前記負荷歯と、前記負荷歯車に噛み合う他の歯車の歯とが接触することによって前記ロータが受ける機械的負荷を、前記誘起電圧の検出結果に基づいて判定する
ステッピングモータ制御方法。
【請求項12】
指針を回転させるロータと、前記ロータを回転させるための磁束を発生させるコイルとを備えるステッピングモータを駆動する回路を備える駆動部に対して、前記ロータを回転させるための駆動パルスと、前記ロータを揺動させるための揺動パルスとを出力し、
前記ロータが振動した場合に前記コイルに発生する誘起電圧を検出し、
前記誘起電圧の検出結果に基づいて、負荷歯車の負荷歯と前記負荷歯車に噛み合う他の歯車の歯とが接触することによって前記ロータが受ける機械的負荷を判定し、
過去に検出された前記機械的負荷の検出周期に基づいて、前記誘起電圧の検出結果を補間することにより、前記機械的負荷が検出されるべきタイミングを判定する
ステッピングモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性変形する歯を有する歯車を回転させる際の回転負荷の変化を、ステッピングモータの駆動コイルに生じる誘起電圧の変化として検出することによって、歯車の回転位置を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-124681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような従来技術によると、歯車の回転負荷の変化を正確に検出しようとすると、検出回路の構成が複雑なものになる場合があるという問題が生じていた。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、指針の位置の検出回路の構成を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置は、指針を回転させるロータと、前記ロータを回転させるための磁束を発生させるコイルとを備えるステッピングモータを駆動する回路であって、前記コイルの第1端部から第2端部の方向に流れる第1電流を供給する第1駆動回路と、前記第2端部から前記第1端部の方向に流れる第2電流を供給する第2駆動回路とを備える駆動部と、前記ロータを半回転ごとにステップ回転させるための駆動パルスと、前記ロータを揺動させるための揺動パルスとを前記駆動部に出力する制御部と、回転負荷が他の歯とは異なる負荷歯を有し1回転する場合の前記ロータの回転のステップ数が奇数である負荷歯車を含み、前記ロータから前記指針に回転力を伝達する輪列と、前記ロータが振動した場合に、前記コイルの前記第1端部および前記第2端部のうち、一方の端部に発生する誘起電圧のみを検出する電圧検出部と、前記電圧検出部が検出する結果に基づいて、前記負荷歯車の負荷歯と前記負荷歯車に噛み合う歯とが接触することによって前記ロータが受ける機械的負荷を判定する判定部とを備える。
(2)本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記輪列は、前記指針の角速度と一致した角速度で回転する第1車と、前記第1車の歯車にかみ合うかなと前記負荷歯車とを有する第2車と、前記第2車の前記負荷歯車にかみ合うかなと前記ロータにかみ合う歯車とを有する第3車とを備える。
(3)本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記第2車が1回転する前記ロータの回転のステップ数が奇数である。
(4)本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記第2車の歯数が奇数である。
(5)本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記第1車の歯車は、回転負荷が他の歯とは異なる負荷歯を備えており、前記判定部は、前記第2車のかなと前記第1車の負荷歯とが接触することにより前記ロータが受ける機械的負荷である第1負荷と、前記第3車のかなと前記第2車の負荷歯とが接触することにより前記ロータが受ける機械的負荷である第2負荷とをそれぞれ判定する。
(6)本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記ステッピングモータは、複数の前記コイルを備え、前記駆動部は、複数の前記コイルにそれぞれ対応する前記第1駆動回路と前記第2駆動回路との組を備える。
(7)本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記判定部は、過去に検出された前記誘起電圧の検出周期に基づいて、前記電圧検出部が検出する結果を補間することにより、前記誘起電圧が検出されるべきタイミングを判定する。
(8)本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置は、指針を回転させるロータと、前記ロータを回転させるための磁束を発生させるコイルとを備えるステッピングモータを駆動する回路を備える駆動部と、前記ロータを回転させるための駆動パルスと、前記ロータを揺動させるための揺動パルスとを前記駆動部に出力する制御部と、回転負荷が他の歯とは異なる負荷歯を有する負荷歯車を含み、前記ロータから前記指針に回転力を伝達する輪列と、前記ロータが振動した場合に前記コイルに発生する誘起電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部が検出する結果に基づいて、前記負荷歯車の負荷歯と前記負荷歯車に噛み合う他の歯車の歯とが接触することによって前記ロータが受ける機械的負荷を判定するとともに、過去に検出された前記機械的負荷の検出周期に基づいて、前記電圧検出部が検出する結果を補間することにより、前記機械的負荷が検出されるべきタイミングを判定する判定部と、を備える。
(9)本発明の一態様に係るムーブメントは、上記のステッピングモータ制御装置と、前記ステッピングモータと、を備える。
(10)本発明の一態様に係る時計は、上記のムーブメントを備える。
(11)本発明の一態様に係るステッピングモータ制御方法は、指針を回転させるロータと、前記ロータを回転させるための磁束を発生させるコイルとを備えるステッピングモータを駆動する回路であって、前記コイルの第1端部から第2端部の方向に流れる第1電流を供給する第1駆動回路と、前記第2端部から前記第1端部の方向に流れる第2電流を供給する第2駆動回路とを備える駆動部に対して、前記ロータを半回転ごとにステップ回転させるための駆動パルスと、前記ロータを揺動させるための揺動パルスとを前記駆動部に出力し、前記ロータが振動した場合に前記コイルに発生する誘起電圧のうち、前記コイルの前記第1端部に発生する誘起電圧のみを検出し、前記ロータから前記指針に回転力を伝達する輪列を構成する歯車のうち、回転負荷が他の歯とは異なる負荷歯を有し1回転する場合の前記ロータの回転のステップ数が奇数である負荷歯車の前記負荷歯と、前記負荷歯車に噛み合う他の歯車の歯とが接触することによって前記ロータが受ける機械的負荷を、前記誘起電圧の検出結果に基づいて判定する。
(12)本発明の一態様に係るステッピングモータ制御方法は、指針を回転させるロータと、前記ロータを回転させるための磁束を発生させるコイルとを備えるステッピングモータを駆動する回路を備える駆動部に対して、前記ロータを回転させるための駆動パルスと、前記ロータを揺動させるための揺動パルスとを出力し、前記ロータが振動した場合に前記コイルに発生する誘起電圧を検出し、前記誘起電圧の検出結果に基づいて、負荷歯車の負荷歯と前記負荷歯車に噛み合う他の歯車の歯とが接触することによって前記ロータが受ける機械的負荷を判定し、過去に検出された前記機械的負荷の検出周期に基づいて、前記誘起電圧の検出結果を補間することにより、前記機械的負荷が検出されるべきタイミングを判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、指針の位置の検出回路の構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る時計の外観図である。
図2】第1実施形態に係るムーブメント表側の平面図である。
図3】第1実施形態に係る負荷歯車の一例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る時計の機能構成の一例を示す図である。
図5】第1実施形態に係る指針駆動部の構成の一例を示す図である。
図6】第1実施形態における揺動パルスと駆動パルスの一例を示す図である。
図7】第1実施形態における負荷歯とかなが噛み合う場合の振動と、標準歯とかなが噛み合う場合の振動の一例を示す図である。
図8】第1実施形態におけるステッピングモータ制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図9】本実施形態のステッピングモータ制御装置の具体的な構成の一例を示す図である。
図10】変形例におけるステッピングモータ制御装置の具体的な構成の一例を示す図である。
図11】第2実施形態に係る時計の機能構成の一例を示す図である。
図12】本実施形態における負荷検出結果の一例を示す図である。
図13】従来例によるステッピングモータ制御装置の具体的な構成の一例を示す図である。
図14】従来例による負荷変動の発生タイミングの一例を示す図である。
図15】従来例によるロータの組み立て方と、負荷変動の発生タイミングとの関係の一例を示す図である。
図16】従来例による2コイルモータの場合のステッピングモータ制御装置の具体的な構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0010】
[第1実施形態]
まず、ステッピングモータの駆動コイルに生じる誘起電圧によって歯車の回転位置を検出する技術の概要について説明する。次に、駆動コイルに生じる誘起電圧を検出する回路を簡素化する技術について説明する。
【0011】
[歯車の回転位置検出]
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側(すなわち、文字板のある方の側)をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側(すなわち、文字板と反対の側)をムーブメントの「表側」と称する。
【0012】
図1は、第1実施形態に係る時計の外観図である。
図1に示すように、本実施形態の時計1のコンプリートは、図示しないケース裏蓋およびガラス3からなる時計ケース2内に、ムーブメント4(時計用ムーブメント)と、目盛りを有する文字板5と、時針6(指針)、分針7、秒針8とを備えている。
【0013】
図2は、第1実施形態に係るムーブメント表側の平面図である。
図2に示すように、ムーブメント4は、地板11と、第1モータ20Aと、第2モータ20Bと、第1輪列群30と、第2輪列群50と、を備える。地板11は、ムーブメント4の基板を構成する。
【0014】
[輪列の構成]
図2に示すように、第1モータ20Aおよび第2モータ20Bは、それぞれステータ21およびロータ22を有するステッピングモータである。第1モータ20Aおよび第2モータ20Bのそれぞれは、1ステップでロータ22を180°回転させる。第1モータ20Aは、時針6(図1参照)を回転させる動力を発生させる。第2モータ20Bは、分針7および秒針8(いずれも図1参照)を回転させる動力を発生させる。第1モータ20Aおよび第2モータ20Bそれぞれのロータ22には、かなが形成されている。
【0015】
第1輪列群30は、第1モータ20Aのロータ22の回転に基づいて回転する歯車を有する。第1輪列群30は、第1モータ20Aのロータ22の回転を時針6(図1参照)に伝達する時輪列31を備える。
なお、時計1が24時針やカレンダ機能を備えている場合には、第1輪列群30は、第1モータ20Aのロータ22の回転を24時針やカレンダの日車に伝達するカレンダ輪列を備えていてもよい。カレンダ輪列の詳細な説明は省略する。
【0016】
時輪列31は、第3車32と、第2車33と、第1車34とを有する。
第3車32は、地板11(図2参照)に回転可能に支持されている。第3車32は、第3車歯車32aと第3車かな32bとを有する。第3車歯車32aは、第1モータ20Aのロータ22のかなと噛み合っている。
【0017】
第2車33は、地板11に回転可能に支持されている。第2車33は、第2車歯車33aと第2車かな33bとを有する。第2車歯車33aは、第3車32の第3車かな32bと噛み合っている。第2車33は、第3車32に対する従動歯車である。
【0018】
第1車34は、地板11に回転可能に支持されている。第1車34は、第1車歯車34aを有する。第1車歯車34aは、第2車33の第2車かな33bと噛み合っている。第1車34は、第2車33に対する従動歯車である。第1車34には、時針6(図1参照)が取り付けられる。
【0019】
図2に示すように、第2輪列群50は、第2モータ20Bのロータ22の回転に基づいて回転する歯車を有する。第2輪列群50は、第2モータ20Bのロータ22の回転を秒針8および分針7(いずれも図1参照)に伝達する表輪列51を備える。表輪列51は、第1中間車52と、第2中間車53と、第3中間車54と、第4中間車55とを備える。
なお、第2輪列群50の詳細については説明を省略する。
【0020】
[負荷歯車の構成]
図3は、第1実施形態に係る負荷歯車の一例を示す図である。
図3に示すように、第2車33は、複数の歯60と、弾性部65と、を有する。
複数の歯60は、標準歯61と、負荷歯62としての第1負荷歯62Aと、を含む。標準歯61は、複数の歯60のうち第1負荷歯62Aを除く全ての歯である。標準歯61は、一般的な歯車の歯であって、円弧歯形やインボリュート歯形、サイクロイド歯形等に形成された歯である。第1負荷歯62Aは、それぞれ第2車33の有する複数の歯60のうち1つの歯である。第1負荷歯62Aは、第2車33を回転させた際に第3車かな32bに等間隔で接触しないように、第2車33の外周の片側に配置されている。第1負荷歯62Aは、弾性部65に支持されることによって、弾性的に変位可能に形成されている。
【0021】
弾性部65は、負荷歯62毎に設けられている。弾性部65は、先端に負荷歯62を有し、撓み変形可能に形成された片持ち梁である。弾性部65は、第1負荷歯62Aを有する第1弾性部65Aを備える。第1弾性部65Aは、第2車33に形成された第1スリット67および第2スリット68の間の部分である。第1スリット67は、第1負荷歯62Aに隣接する一方の歯溝から径方向内側に向かって延びた後、周方向の一方側に向かって延びている。第2スリット68は、第1負荷歯62Aに隣接する他方の歯溝から第1スリット67に沿って延びている。これにより、第1弾性部65Aは、略一定の幅で延在し、先端の第1負荷歯62Aを径方向に変位させるように弾性変形可能に形成されている。
【0022】
ここで、複数の標準歯61のうち第1標準歯61A、第2標準歯61Bを以下のように定義する。第1標準歯61Aは、第1負荷歯62Aに対して第2車33の正転方向N(所定の回転方向)の下流側で隣り合う。第2標準歯61Bは、第1負荷歯62Aに対して正転方向Nの上流側で隣り合う。
【0023】
第1負荷歯62Aと第1標準歯61Aとの間隔は、第1負荷歯62Aと第2標準歯61Bとの間隔よりも狭くなっている。第1負荷歯62Aと第1標準歯61Aとの間の歯溝の幅は、第3車かな32bの歯の歯厚よりも小さい。なお、隣り合う一対の歯60の間の歯溝の幅は、第2車33のピッチ円上での一対の歯60間の距離である。歯60の歯厚は、第2車33のピッチ円上での歯60の厚さである。これにより、第3車かな32bの歯は、第1負荷歯62Aと第1標準歯61Aとの間の歯溝に入り込むと、第1負荷歯62Aに接触する。第1負荷歯62Aと第2標準歯61Bとの間の歯溝の幅は、第3車かな32bの歯の歯厚よりも大きい。これにより、第3車かな32bの歯は、第1負荷歯62Aに接触せずに、第1負荷歯62Aと第2標準歯61Bとの間の歯溝に入り込むことができる。
【0024】
ここで、負荷歯62の作用について説明する。なお、以下の説明において特に記載のない限り、第2車33は正転方向Nに回転しているものとする。第2車33の各歯60には、第3車かな32bの歯が正転方向Nの上流側から接触する。
【0025】
第3車かな32bに係合する歯60が第1標準歯61Aに交替する際、第3車かな32bの歯は、第1標準歯61Aと第1負荷歯62Aとの間の歯溝に入り込む。このとき、第3車かな32bの歯は、第1標準歯61Aとの接触に前後して第1負荷歯62Aに接触し、第1標準歯61Aと第1負荷歯62Aとの間の歯溝の幅を広げるように第1負荷歯62Aを弾性的に変位させる。これにより、時輪列31には、第1負荷歯62Aの弾性変位に伴うエネルギ損失が生じる。その後、第3車かな32bに係合する歯60が第1負荷歯62Aに交替すると、第1負荷歯62Aは初期位置に向けて徐々に復帰する。そして、第3車かな32bに係合する歯60が第1負荷歯62Aから第2標準歯61Bに交替する際、第3車かな32bの歯が第1負荷歯62Aと第2標準歯61Bとの間の歯溝において第1負荷歯62Aから完全に離間し、第1負荷歯62Aは初期位置に復帰する。
なお、かなの歯と負荷歯との噛み合いの詳細は、図7を参照して後述する。
【0026】
上述したように、第2車33の第1負荷歯62Aが第3車かな32bに接触する際、時輪列31にはエネルギ損失が生じる。時輪列31にエネルギ損失が生じると、第1モータ20Aのロータ22が受ける負荷が変動する。これにより、負荷歯62は、ロータ22が受ける負荷に変動を与えることができる。従って、第2車33の第1負荷歯62Aが第3車かな32bに接触する場合の、ロータ22の1ステップの回転時にのみ負荷変動が生じる。なお、負荷歯62が与える負荷の変動は、標準歯61が第3車かな32bに接触する際の負荷と異なっていればよい。以下、ロータ22が受ける負荷を回転負荷と称する場合がある。
【0027】
また、第1車34は、第2車33と同様の構成を有している。すなわち、第1車34は、第2車33の標準歯61に対応する標準歯61a(不図示)と、第2車33の負荷歯62に対応する負荷歯62a(不図示)とを備えている。
【0028】
すなわち、第1車34の歯車は、回転負荷が他の歯とは異なる負荷歯を備えている。
以下の説明において、第2車33を第2負荷歯車とも称し、第1車34を第1負荷歯車とも称する。
【0029】
[時計の機能構成]
図4は、第1実施形態に係る時計の機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、時計1の機能構成について説明する。時計1は、発振回路101と、分周回路102と、制御回路103と、判定回路104と、電圧検出回路105と、モータ駆動回路106と、ステッピングモータ107と、時計ケース2と、ムーブメント4と、時針6、分針7、秒針8と、日窓5aとを備える。
以後、発振回路101と、分周回路102と、制御回路103と、判定回路104と、電圧検出回路105と、モータ駆動回路106とを総称して、ステッピングモータ制御装置100とも記載する。また、ステッピングモータ制御装置100と、ステッピングモータ107とを、指針駆動部110とも記載する。
【0030】
すなわち、ムーブメント4は、ステッピングモータ制御装置100と、ステッピングモータ107とを備える。なお、上述した第1モータ20Aおよび第2モータ20Bは、ステッピングモータ107の一例である。
【0031】
発振回路101は、所定の周波数を有する信号を発生させ、発生した信号を分周回路102に出力する。分周回路102は、発振回路101から入力した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生させ、発生した時計信号を制御回路103に出力する。制御回路103は、分周回路102から入力した時計信号等に基づいて、時計1の各部に制御信号を出力し、時計1の各部の動作を制御する。
【0032】
モータ駆動回路106は、制御回路103から制御信号を取得し、取得した制御信号に基づきステッピングモータ107を駆動する。取得した制御信号が駆動パルスである場合、ステッピングモータ107は、モータ駆動回路106により駆動され、輪列を介して時針6、分針7、秒針8を回転させる。取得した制御信号が揺動パルスである場合、ステッピングモータ107は、モータ駆動回路106により駆動され、ロータを揺動させる。
【0033】
電圧検出回路105は、ステッピングモータ107のロータが振動(揺動)した場合にコイルに発生する誘起電圧を検出する。電圧検出回路105は、検出した誘起電圧を判定回路104に出力する。
【0034】
判定回路104は、電圧検出回路105により検出された誘起電圧の値に基づいて、ステッピングモータ107に備えられるロータが受ける機械的負荷を判定する。例えば、判定回路104は、電圧検出回路105が検出する電圧値が所定の閾値を超えたか否かに基づいて、ロータが受ける機械的負荷を判定する。
【0035】
[指針駆動部の構成]
図5は、第1実施形態に係る指針駆動部110の構成の一例を示す図である。
ステッピングモータ107は、ステータ201と、ロータ202と、ロータ収容用貫通孔203と、内ノッチ204と、内ノッチ205と、外ノッチ206と、外ノッチ207と、磁心208と、コイル209とを備える。以降、ロータ収容用貫通孔203をロータ用貫通孔とも記載する。
【0036】
磁心208は、磁性材料で作製されている部材であり、ステータ201の両端と接合されている。コイル209は、磁心208に巻き付けられており、端子ОUT1に一端が接続されており、端子ОUT2に他端が接続されている。コイル209は、駆動電流iが流されることにより磁束を発生させる。ステータ201は、磁性材料で作製されている部材である。ステータ201は、コイル209が発生させる磁束をロータ202に与える。
【0037】
ロータ202は、円柱状に形成されており、ステータ201に形成されたロータ収容用貫通孔203に対して回転可能な状態で挿入されている。つまり、ステッピングモータ107は、ロータ収容用貫通孔203が設けられたステータ201と、ロータ収容用貫通孔203内に回転可能に配設されたロータ202と、ステータ201に設けられたコイル209とを備える。また、ロータ202は、着磁されているため、N極及びS極を有する。
以下の説明において、ロータ202のS極からN極に向かう軸を磁極軸Aとも称し、磁極軸AのS極からN極へ向かう方向を磁極軸Aの正の方向(又は単に磁極軸Aの方向)とも称する。
【0038】
ロータ202は、正転方向に回転することにより輪列を介して指針を時計周りに回転させ、逆転方向に回転することにより輪列を介して指針を反時計周りに回転させる。すなわち、ロータ202は、指針を時計回りに回転させる正転方向及び指針を正転方向とは反対の方向である逆転方向に回転させる。
【0039】
内ノッチ204及び内ノッチ205は、ロータ収容用貫通孔203の壁面に形成された切り欠きであり、ステータ201に対するロータ202の停止位置を決定している。すなわち、例えば、ロータ202は、コイル209が励磁されていない場合、磁極軸が内ノッチ204と内ノッチ205とを結ぶ線分と直交する位置で静止する。
【0040】
外ノッチ206及び外ノッチ207は、それぞれ湾曲しているステータ201の内側及び外側に形成されている切り欠きである。外ノッチ206と、ロータ収容用貫通孔203との間には、可飽和部210が形成され、外ノッチ207とロータ収容用貫通孔203との間には、可飽和部211が形成される。可飽和部210及び可飽和部211は、ロータ202の磁束により磁気飽和せず、コイル209が励磁されたときに磁気飽和して磁気抵抗が大きくなる部分である。
【0041】
[ステッピングモータの駆動]
モータ駆動回路106は、コイル209の端子(第1端子OUT1及び第2端子OUT2)間に駆動パルスを印加することにより、駆動電流iを生じさせる。
ステッピングモータ制御装置100は、ロータ202の停止位置における磁極軸Aの方向に応じて、コイル209に供給する駆動電流iの方向を反転させることにより、ロータ202を一定の方向(例えば、正転方向)に回転させる。
【0042】
一例として正転方向の駆動について説明する。ステッピングモータ制御装置100が駆動パルスをコイル209の第1端子OUT1と第2端子OUT2との間に供給すると、ステータ201には、磁束が発生する。これにより、可飽和部210及び可飽和部211が飽和して磁気抵抗が大きくなり、その後、ステータ201に生じる磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は、反時計回りに180度回転し、安定的に停止する。この約180度の回転により、時計1の指針は規定量のひと目盛り分を移動することができる。当該規定量の動作を1ステップと称する場合もある。当該規定量の動作となるように、ロータ202と指針との間には適当な減速比を備える輪列が適宜配置されている。
【0043】
ロータ202が図5に示す状態にある場合に、ステッピングモータ制御装置100が、駆動パルスをコイル209の第1端子OUT1と第2端子OUT2との間に供給すると、コイル209には、電流が流れる。この一例において、第1端子OUT1が高電位であり第2端子OUT2が低電位である(以下、正方向と記載する。)パルスを印加した場合、電流iの方向に電流が流れる。コイル209に電流が流れると、ステータ201には磁束が発生する。この磁束によりロータ202は、反時計回りに略180度回転し、安定的に停止する。
【0044】
ロータ202が図5の状態から略180度回転した状態にある場合に、ステッピングモータ制御装置100が、第1端子OUT1が低電位であり第2端子OUT2が高電位である(以下、負方向と記載する。)パルスを印加した場合、ステータ201には、正方向のパルスを印加した場合とは逆向きの磁束が発生する。これにより、可飽和部210及び可飽和部211が先ず飽和し、その後、ステータ201に生じる磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は、反時計回りに略180度回転し、安定的に停止する。このように、コイル209に対して極性の異なる信号(交番信号)を供給することによって、ロータ202は、反時計回りに略180度ずつ連続的に回転する。
【0045】
[揺動パルスと駆動パルス]
図6は、第1実施形態における揺動パルスと駆動パルスの一例を示す図である。図6(A)は、揺動パルスと駆動パルスとが印加されるタイミングを説明するためのタイミングチャートを示す図であり、図6(B)は、ロータ202の角度について説明するための図である。図6(A)の説明において横軸は時刻を示し、“Out1”は、各時刻における第1端子OUT1に印加される電圧の大きさを示し、“Out2”は、各時刻における第2端子OUT2に印加される電圧の大きさを示す。
また、図6(B)の説明において、図5において説明した磁極軸Aの位置を0度として、磁極軸Aが反時計回りに回転する角度を正の回転角度としてロータ202の回転位置について説明する。時刻t11から時刻t21における制御は、ロータ202を0度から180度まで時計回りに回転させる制御であり、時刻t21から時刻t29における制御は、ロータ202を180度から0度まで時計回りに回転させる制御である。
【0046】
制御回路103は、モータ駆動回路106に駆動パルスを出力することによってロータ202を回転させ、モータ駆動回路106に揺動パルスを出力することによってロータ202を揺動させる。以下、揺動パルスと、駆動パルスとについて、それぞれ説明する。
【0047】
時刻t11から時刻t12において、ステッピングモータ制御装置100は、第2端子OUT2に正方向のパルスを印加する。第2端子OUT2に正方向のパルスが印加し続けられると、ロータ202は-45度回転した位置で静止する。ステッピングモータ制御装置100は、時刻t12において、パルスの印加を止めると、ロータ202は0度の位置に引き戻されて静止する。ここで、ロータ202は、-45度の位置から0度の位置に戻る際に、慣性により少なくとも一度、反時計回りに正の回転角度の位置まで回転し、時計回りに負の回転角度の位置まで回転する。ロータ202は、反時計回りに回転することと時計回りに回転することを繰り返す。すなわち、ロータ202は、振動し、振動が減衰することにより0度の位置で静止する。
【0048】
なお、時刻t11から時刻t12において印加されるパルスは、ロータ202が、略180度回転することを目的としたパルスではなく、ロータ202を振動させることにより、ロータ202の振動状態を検出することを目的とするパルスである。以後、ロータ202を振動させることを目的とするパルスを、通常の駆動パルスとは区別し、揺動パルスと記載する。
【0049】
なお、揺動パルスが印加される時間は、ロータ202が振動するに足りる時間であればよく、ロータ202が-45度の回転位置で静止するまでパルスが印加されることを要しない。
【0050】
時刻t12から時刻t15において、ステッピングモータ制御装置100は、揺動パルスの印加によりロータ202が受ける機械的負荷を判定する。具体的には、電圧検出回路105が検出した電圧に基づき、判定回路104は、ロータ202が受ける機械的負荷を判定する。
なお、判定回路104は、電圧検出回路105が検出した電圧の大きさに加え、もしくは電圧検出回路105が検出した電圧の大きさに代えて、電圧検出回路105が予め定められた所定の電圧値を超える電圧値を検出するタイミングに基づいて、ロータ202が受ける機械的負荷を判定してもよい。例えば、判定回路104は、電圧検出回路105が検出する電圧値の発生タイミングが予め定められた所定の期間内であるか否かに基づいて、ロータ202が受ける機械的負荷を判定してもよい。
【0051】
時刻t15から時刻t16において、ステッピングモータ制御装置100は、第1端子OUT1に正方向のパルスを印加する。第1端子OUT1に正方向のパルスが印加し続けられると、ロータ202は135度回転した位置で静止する。ステッピングモータ制御装置100は、時刻t16において、パルスの印加を停止すると、ロータ202は180度の位置に引かれて、静止する。時刻t15から時刻t16において印加されるパルスは、ロータ202を略180度回転させるためのパルスであるため、駆動パルスである。駆動パルスは、制御回路103により出力される。すなわち、制御回路103は、揺動パルスを出力した後、所定期間経過後に駆動パルスを出力する。
【0052】
なお、駆動パルスが印加される時間(駆動パルスのパルス幅)は、ロータ202が180度回転するに足りる時間であればよく、ロータ202が135度の回転位置で静止するまでパルスが印加されることを要しない。
なお、駆動パルスが印加される時間は、判定回路104により判定された機械的負荷に応じて決定されてもよい。その場合、制御回路103は、判定回路104により判定された機械的負荷に応じて、駆動パルスの出力時間を制御する。
【0053】
時刻t21から時刻t22において、ステッピングモータ制御装置100は、第1端子OUT1に正方向のパルス、すなわち揺動パルスを印加する。第1端子OUT1に正方向のパルスが印加し続けられると、ロータ202は135度回転した位置で静止する。ステッピングモータ制御装置100は、時刻t22において、パルスの印加を止めると、ロータ202は180度の位置に引き戻されて静止する。ここで、ロータ202は、135度の位置から180度の位置に戻る際に振動し、振動が減衰することにより180度の位置で静止する。
【0054】
時刻t22から時刻t25において、ステッピングモータ制御装置100は、揺動パルスの印加によりロータ202が受ける機械的負荷を判定する。具体的には、電圧検出回路105が検出した電圧に基づき、判定回路104は、ロータ202が受ける機械的負荷を判定する。
【0055】
時刻t25から時刻t26において、ステッピングモータ制御装置100は、第2端子OUT2に正方向のパルス、すなわち駆動パルスを印加する。第2端子OUT2に正方向のパルスが印加し続けられると、ロータ202は315度回転した位置で静止する。ステッピングモータ制御装置100は、時刻t26において、パルスの印加を停止すると、ロータ202は0度の位置に引かれて、静止する。
【0056】
すなわち、制御回路103(制御部)は、ロータ22を半回転ごとにステップ回転させるための駆動パルスと、ロータ22を揺動させるための揺動パルスとをモータ駆動回路106(駆動部)に出力する。
【0057】
図7は、第1実施形態における負荷歯とかなが噛み合う場合の振動と、標準歯とかなが噛み合う場合の振動の一例を示す図である。同図を参照しながら、負荷歯とかなが噛み合う場合の振動と、標準歯とかなが噛み合う場合の振動とについて、説明する。
図の上段は、標準歯とかなが噛み合う場合の一例であり、図の下段は、負荷歯とかなが噛み合う場合の一例である。具体的には、負荷歯62を有する第2車33と、第3車かな32bとが噛み合う場合の一例について説明する。同図における説明において、第2車33を単に歯車(又は第2歯車)と、第3車かな32bを単にかな(又は第1歯車)と記載する場合がある。第1歯車は、ロータ202の回転に基づいて回転する歯車であり、第2歯車は、負荷歯を有する歯車である。
図の左側は、歯車とかなの噛み合いの状態を示す図である。図の右側は、揺動パルスを印加するタイミングと、誘起電圧が発生するタイミングとを示す図である。
【0058】
まず、上段の標準歯61とかなが噛み合う場合の一例について説明する。上段左側の図に示すように、揺動パルスを印加することによりかなを駆動するロータ202が振動すると、ロータ202の振動によりかなが振動する。ロータ202が振動することのできる範囲は、歯車とかなとの間のバックラッシ(バックラッシュ)の大きさにより異なる。標準歯61とかなが噛み合った状態では、バックラッシは大きいため、ロータ202が振動することのできる範囲も広い。
上段右側の図に示すように、時刻t31から時刻t32において、揺動パルスが印加される。印加された揺動パルスに基づいて、ロータ202が振動し、時刻t33から時刻t35において、誘起電圧が発生する。標準歯61とかなが噛み合った状態では、ロータ202が振動することのできる範囲が広いため、発生する誘起電圧も大きくなる。同図に示す一例では、時刻t34において、電圧v1が発生している。電圧v1が判定閾値より大きい場合、判定回路104は、かなが、歯車の負荷歯に接触していないと判定する。
【0059】
次に、下段の負荷歯62とかなが噛み合う場合の一例について説明する。下段左側の図に示すように、揺動パルスを印加することによりかなを駆動するロータ202が振動すると、ロータ202の振動によりかなが振動する。しかし、負荷歯62とかなが噛み合った状態では、バックラッシが小さいため、ロータ202が振動することのできる範囲も狭い。
下段右側の図に示すように、時刻t41から時刻t42において、揺動パルスが印加される。印加された揺動パルスに基づいて、ロータ202が振動し、時刻t43から時刻t45において、誘起電圧が発生する。しかし、負荷歯62とかなが噛み合った状態では、ロータ202が振動することのできる範囲が狭いため、発生する誘起電圧も小さくなる。
同図に示す一例では、時刻t44において、電圧v2が発生している。電圧v2は、電圧v1と比較し、小さい。電圧v1が判定閾値より小さい場合、判定回路104は、かなが、歯車の負荷歯に接触している機械的負荷と判定する。
【0060】
なお、負荷歯62と第1標準歯61Aとの間にかなが噛み合う場合は振動が小さくなるのに対し、負荷歯62と第2標準歯61Bとの間にかなが噛み合う場合は振動が大きくなる。これら両方の振動と、標準歯61とかなが噛み合う場合の振動とを比較して、指針の位置を検出するよう構成してもよい。
【0061】
図8は、第1実施形態におけるステッピングモータ制御装置100の動作の一例を示すフローチャートである。同図を参照しながら、ステッピングモータ制御装置100の一連の動作について説明する。
【0062】
(ステップS110)制御回路103は、モータ駆動回路106に揺動パルスを出力する。モータ駆動回路106は、取得した揺動パルスに基づいて、ステッピングモータ107を駆動する。
【0063】
(ステップS120)電圧検出回路105は、ロータ202が振動することに起因する誘起電圧を検出する。判定回路104は、検出された誘起電圧の値又は誘起電圧が検出されるタイミングに基づき、ロータ202の機械的負荷を判定する。
【0064】
(ステップS130)揺動パルスを出力してから所定時間が経過した場合(ステップS130;YES)、制御回路103は、処理をステップS140に進める。揺動パルスを出力してから所定時間が経過していない場合(ステップS130;NO)、電圧検出回路105は、ステップS120を繰り返す。
【0065】
(ステップS140)制御回路103は、モータ駆動回路106に駆動パルスを出力する。駆動パルスの大きさ(電圧及び時間)は、予め定められた所定の値であってもよいし、ステップS120において判定されたロータ202の機械的負荷に基づいた値であってもよい。
【0066】
[輪列の減速比について]
ここで、本実施形態の輪列の減速比と、従来例による輪列の減速比とを比較する。
【0067】
(1)本実施形態の輪列の減速比(一例)
本実施形態の輪列(時輪列31)を構成する歯車の歯数及びかなの歯数は次のとおりである。
ロータ22のかなの歯数: 8
第3車32の歯車の歯数:40
第3車32のかなの歯数:10
第2車33の歯車の歯数:45
第2車33のかなの歯数: 7
第1車34の歯車の歯数:56
【0068】
すなわち、第2車33は、歯数が奇数である。
【0069】
ここで、ロータ22は、1ステップあたり180度回転する。つまり、ロータ22は、2ステップで1回転する。
第3車32は、ロータ22に対して減速比5で回転する。すなわち、第3車32は、第1モータ20Aのロータ22が5回転する(つまり、10ステップ)毎に1回転する。
第2車33は、第3車32に対して減速比4.5で回転する。すなわち、第2車33は、第1モータ20Aのロータ22が22.5回転する(つまり、45ステップ)毎に1回転する。
第1車34は、第2車33に対して減速比8で回転する。すなわち、第1車34は、第1モータ20Aのロータ22が180回転する(つまり、360ステップ)毎に1回転する。
【0070】
上述した輪列の減速比において、ロータ22が22.5回転する(つまり、45ステップ)毎に第2車33が1回転するということは、第2車33が1回転する場合のロータ22の回転ステップ数が、奇数であることを意味している。
【0071】
すなわち、時輪列31(輪列)は、回転負荷が他の歯とは異なる負荷歯を有し1回転する場合のロータ22の回転のステップ数が奇数である負荷歯車を含み、ロータ22から指針に回転力を伝達する。
【0072】
時輪列31(輪列)は、指針の角速度と一致した角速度で回転する第1車34と、第1車34の歯車にかみ合うかなと負荷歯車とを有する第2車33と、第2車33の負荷歯車にかみ合うかなとロータ22にかみ合う歯車とを有する第3車32とを備える。
【0073】
(2)従来例による輪列の減速比(一例)
従来例による輪列(時輪列)を構成する歯車の歯数及びかなの歯数は次のとおりである。
ロータのかなの歯数: 6
第3車の歯車の歯数:36
第3車のかなの歯数:12
第2車の歯車の歯数:60
第2車のかなの歯数:10
第1車の歯車の歯数:60
【0074】
このロータは、本実施形態のロータ22と同様に、1ステップあたり180度回転する。つまり、このロータは、2ステップで1回転する。
第3車は、ロータに対して減速比6で回転する。すなわち、第3車は、ロータが6回転する(つまり、12ステップ)毎に1回転する。
第2車は、第3車に対して減速比5で回転する。すなわち、第2車は、ロータが30回転する(つまり、60ステップ)毎に1回転する。
第1車は、第2車に対して減速比6で回転する。すなわち、第1車は、ロータが180回転する(つまり、360ステップ)毎に1回転する。
この従来例における輪列の減速比において、ロータが30回転する(つまり、60ステップ)毎に第2車が1回転するということは、第2車が1回転する場合のロータの回転ステップ数が、偶数であることを意味している。
【0075】
[ロータの磁極の方向と負荷歯の回転位置との関係]
ここで、輪列(時輪列31)に対するロータ22の組付け方向について説明する。ロータ22(図5に示すロータ202)は、N極及びS極の2極に着磁されている。このロータ202の磁極(N極及びS極)は、目視では判別が困難である。このため、第2車33の負荷歯62が第3車32のかなにかみ合う位置にされている場合に、ステータ201内におけるロータ202の磁極の方向が、第1方向(例えば、図5に示す方向)になるように組み立てられる場合と、第2方向(例えば、図5に示す方向から180度回転した方向)になるように組み立てられる場合とが生じる。
なお、以下の説明において、ロータ202が上述の第1方向にして組み立てられている場合を「第1方向の組み立て」(又は「表組み」)と、ロータ202が上述の第2方向にして組み立てられている場合を「第2方向の組み立て」(又は「裏組み」)とも称する。
【0076】
[電圧検出回路の構成]
(1)本実施形態の電圧検出回路の構成
図9は、本実施形態のステッピングモータ制御装置100の具体的な構成の一例を示す図である。
モータ駆動回路106は、第1ドライバ1061と、第2ドライバ1062とを備える。第1ドライバ1061は、その出力端子がコイル209の一端に接続される。第2ドライバ1062は、その出力端子がコイル209の他端に接続される。第1ドライバ1061と、第2ドライバ1062とが、コイル209に対して駆動電流を相互排他的に出力することにより、コイル209に流れる電流の方向が入れ替わる。これにより、ステータ201には交番磁界が生じ、ロータ202が所定方向に回転する。
【0077】
すなわち、モータ駆動回路106(駆動部)は、指針を回転させるロータ22と、ロータ22を回転させるための磁束を発生させるコイル209とを備えるステッピングモータ(第1モータ20A、第2モータ20B)を駆動する回路である。また、モータ駆動回路106(駆動部)は、コイル209の第1端部から第2端部の方向に流れる第1電流を供給する第1ドライバ1061(第1駆動回路)と、第2端部から第1端部の方向に流れる第2電流を供給する第2ドライバ1062(第2駆動回路)とを備える。
【0078】
電圧検出回路105は、コンパレータ1051と、電圧検出抵抗1052と、電圧検出スイッチ1053とを備えている。
電圧検出抵抗1052は、電圧検出点1054と電圧検出スイッチ1053との間に接続される。電圧検出抵抗1052は、抵抗値が比較的高くされている。電圧検出点1054と電圧検出スイッチ1053との間に電流が流れると、電圧検出抵抗1052の両端に比較的大きな電位差が生じる。電圧検出点1054は、第1ドライバ1061とコイル209の一端との間にあり、コイル209の一端の電位を示す。
電圧検出スイッチ1053は、制御回路103の制御に基づいて動作し、電圧検出抵抗1052に電流が流れる状態(例えば、オン状態)と、電流が流れない状態(例えば、ハイインピーダンス状態)とを切り替える。
コンパレータ1051は、電圧検出スイッチ1053がオン状態の場合に、電圧検出点1054の電圧が所定のしきい値電圧を超えるか否かを示す信号を、上述した判定回路104に出力する。
【0079】
すなわち、電圧検出回路105(電圧検出部)は、ロータ22が振動した場合に、コイル209の第1端部および第2端部のうち、一方の端部に発生する誘起電圧を検出する
判定回路104(判定部)は、電圧検出回路105(電圧検出部)が検出する結果に基づいて、負荷歯車の負荷歯と負荷歯車に噛み合う歯とが接触することによってロータ22が受ける機械的負荷を判定する。
【0080】
なお、判定回路104(判定部)は、第2車33のかなと第1車34の負荷歯とが接触することによりロータ22が受ける機械的負荷である第1負荷と、第3車32のかなと第2車33の負荷歯とが接触することによりロータ22が受ける機械的負荷である第2負荷とをそれぞれ判定するように構成されていてもよい。
【0081】
(2)従来例による電圧検出回路の構成
図13は、従来例によるステッピングモータ制御装置500の具体的な構成の一例を示す図である。
従来例による検出回路は、制御回路503と、判定回路504と、電圧検出回路505と、モータ駆動回路506とを備えている。なお、制御回路503は本実施形態の制御回路103と、判定回路504は本実施形態の判定回路104と、モータ駆動回路506は本実施形態のモータ駆動回路106と、それぞれ同一の構成であるとしてその説明を省略する。
【0082】
電圧検出回路505は、第1電圧検出点5054Aと、第2電圧検出点5054Bとの2点の電圧を検出する構成にされている点において、本実施形態の電圧検出回路105と異なる。より具体的には、電圧検出回路505は、第1コンパレータ5051Aと、第1電圧検出抵抗5052Aとを備え、第1電圧検出点5054Aの電圧を検出する。また、電圧検出回路505は、第2コンパレータ5051Bと、第2電圧検出抵抗5052Bとを備え、第2電圧検出点5054Bの電圧を検出する。
すなわち、この従来例による電圧検出回路505は、コイル209の両端の電圧を検出可能に構成されている。
【0083】
[従来例による電圧検出回路と、本実施形態における電圧検出回路との比較]
図14は、従来例による負荷変動の発生タイミングの一例を示す図である。
上述した従来例の輪列の構成の場合、ロータが60ステップするごとに、第2車が1回転する。したがって、ロータの60ステップのうちのいずれか1ステップにおいて、第2車の負荷歯が第3車のかなとかみ合って負荷変動を生じさせる。例えば、同図に示すように、ロータのステップ数が105ステップ~110ステップ付近の場合に第1負荷が発生し、ロータのステップ数が0ステップ、60ステップ、120ステップ…360ステップの場合に第2負荷が発生する。
上述したように、ロータは、第1方向の組み立てと(つまり、表組み)される場合と、第2方向の組み立てと(つまり、裏組み)される場合とがある。
ロータを第1方向に組み立てた場合は第2負荷が必ず極性0でのみ検出され、ロータを第2方向に組み立てた場合は第2負荷が必ず極性1でのみ検出される。
【0084】
図15は、従来例によるロータの組み立て方と、負荷変動の発生タイミングとの関係の一例を示す図である。
同図[A]には、ロータが表組みされている場合の第1負荷の発生タイミングを示す。同図[B]には、ロータが裏組みされている場合の第1負荷の発生タイミングを示す。
なお、同図には第1負荷の発生タイミングを例示しているが、第2負荷の発生タイミングも第1負荷と同様に、ロータが表組みされている場合とロータが裏組みされている場合とで互いに異なる。
具体的には、ロータが表組みされている場合と、裏組みされている場合とで、第2車の負荷歯による負荷変動が生じる位置における、ロータを回転させる駆動パルスの極性(つまり、駆動コイルに流れる電流の方向)が互いに異なる。すなわち、ロータが表組みされている場合と、裏組みされている場合とで、負荷歯による負荷変動によって駆動コイルに誘起される電圧の極性が互いに異なる。
したがって、上述した従来例の輪列の構成の場合において、負荷歯による負荷変動による誘起電圧を、表組みと裏組みのいずれの場合でも検出するためには、極性が互いに異なる2種類の誘起電圧を検出可能である回路構成にする必要が生じる。このため、従来例の輪列の構成の場合、これら2種類の誘起電圧を、上述した第1コンパレータ5051Aと、第2コンパレータ5051Bとによってそれぞれ検出する回路構成にされる。
すなわち、従来例の輪列の構成の場合、負荷歯による負荷変動による誘起電圧を検出するためには、1つの駆動コイルあたり2個のコンパレータが必要になる。
【0085】
一方、本実施形態の輪列(時輪列31)の構成の場合、ロータ202が45ステップするごとに、第2車が1回転する。したがって、ロータ202の45ステップのうちのいずれか1ステップにおいて、第2車の負荷歯が第3車のかなとかみ合って負荷変動を生じさせる。つまり、本実施形態の輪列(時輪列31)の構成の場合、ロータ202が奇数回ステップするごとに負荷変動が生じる。
このため、ロータ202が表組みされている場合においても、裏組みされている場合においても、負荷歯62による負荷変動によって駆動コイルに誘起される電圧の極性が、負荷変動が発生するごとに入れ替わる。
したがって、本実施形態の輪列(時輪列31)の構成の場合、負荷歯による負荷変動がロータの表組と裏組のどちらであっても、第1電圧検出点5054Aに90ステップ毎に発生する。従っていずれか一方の極性の誘起電圧を検出する1個のコンパレータのみで検出することができる。
すなわち、本実施形態の輪列(時輪列31)の構成の場合、負荷歯による負荷変動による誘起電圧を検出するためには、1つの駆動コイルあたり1個のコンパレータ(例えば、コンパレータ1051)を備えれば十分である。
【0086】
このように、本実施形態のステッピングモータ制御装置100によれば、1つの駆動コイルあたり1個のコンパレータを備えればよい。すなわち、本実施形態のステッピングモータ制御装置100によれば、誘起電圧検出用のコンパレータを、従来例に比べて、駆動コイルごとに1つ削減することができる。
したがって、本実施形態のステッピングモータ制御装置100によれば、電圧検出回路105の回路構成を簡素化することができる。
【0087】
また、本実施形態のステッピングモータ制御装置100によれば、誘起電圧検出用のコンパレータを駆動コイルごとに1つずつ削減することができるため、1つのムーブメントに複数のステッピングモータを備える場合には、電圧検出回路105の回路構成をさらに簡素化することができる。
【0088】
[変形例(2コイルモータの場合)]
上述した本実施形態のステッピングモータ制御装置100においては、第1モータ20Aおよび第2モータ20Bがいずれも、1つのロータ22に対して1つのコイルを備える、いわゆる1コイルモータである場合について説明したがこれに限られない。
【0089】
具体的には、負荷歯車1回転あたりのロータ22のステップ数が、上述したように奇数になっていればよく、第1モータ20Aおよび第2モータ20Bはいずれも、1つのロータ22に対して2つのコイルを備える、いわゆる2コイルモータであってもかまわない。
【0090】
すなわち、本変形例のステッピングモータ(第1モータ20A、第2モータ20B)は、複数のコイル209を備える。また、本変形例のモータ駆動回路106(駆動部)は、複数のコイル209にそれぞれ対応する第1ドライバ(第1駆動回路)と第2ドライバ(第2駆動回路)との組を備える。
【0091】
上述したように、1コイルモータの場合、ロータの組付け角度によって、負荷歯62の負荷変動によって生じる誘起電圧が、コイルの第1端部とコイルの第2端部とのいずれかに生じるかが決まる。つまり、2コイルモータの場合、誘起電圧が生じる端子が2通りある。このため、負荷歯車1回転あたりのロータ22のステップ数が偶数にされている従来例の場合、1コイルモータでは、誘起電圧検出用に2つのコンパレータが必要とされた。
ここで、2コイルモータの場合、ロータの組付け角度によって、負荷歯62の負荷変動によって生じる誘起電圧が、第1コイルの第1端部、第1コイルの第2端部、第2コイルの第1端部、および第2コイルの第2端部のいずれかに生じるかが決まる。つまり、2コイルモータの場合、誘起電圧が生じる端子が4通りある。このため、従来例における2コイルモータの場合には、以下の様に誘起電圧検出用に4つのコンパレータが必要とされた。
【0092】
図16は、従来例による2コイルモータの場合のステッピングモータ制御装置の具体的な構成の一例を示す図である。2コイルモータの場合、従来例によるステッピングモータ制御装置500aは、電圧検出回路505aと、モータ駆動回路506とを備えている。
【0093】
本変形例における従来のモータ駆動回路506は、コイル209A及びコイル209Bの2つのコイルを駆動する4つ(または、2組)のドライバ5062aを備える。
【0094】
電圧検出回路505aは、第1電圧検出点5054A~第4電圧検出点5054Dの4点の電圧を検出する構成にされている。より具体的には、電圧検出回路505aは、第1コンパレータ5051Aと、第1電圧検出抵抗5052Aとを備え、第1電圧検出点5054Aの電圧を検出する。電圧検出回路505aは、第2コンパレータ5051Bと、第2電圧検出抵抗5052Bとを備え、第2電圧検出点5054Bの電圧を検出する。電圧検出回路505aは、第3コンパレータ5051Cと、第3電圧検出抵抗5052Cとを備え、第3電圧検出点5054Cの電圧を検出する。また、電圧検出回路505aは、第4コンパレータ5051Dと、第4電圧検出抵抗5052Dとを備え、第4電圧検出点5054Dの電圧を検出する。
この従来例による電圧検出回路505aは、コイル209Aの両端の電圧と、コイル209Bの両端の電圧とを検出可能に構成されている。
すなわち、この従来例による電圧検出回路505aは、4つのコンパレータを備えている。
正転で負荷検出を行う場合は、ドライバ5062aから揺動パルスを出力した後に電圧検出点5054Aで発生する誘起電圧をコンパレータ5051Aで検出する。ドライバ5061aから揺動パルスを出力した後に電圧検出点5054Bで発生する誘起電圧をコンパレータ5051Bで検出する。逆転で負荷検出を行う場合は、ドライバ5061bから揺動パルスを出力した後に電圧検出点5054Dで発生する誘起電圧をコンパレータ5051Dで検出する。ドライバ5062bから揺動パルスを出力した後に電圧検出点5054Cで発生する誘起電圧をコンパレータ5051Cで検出する。
尚、ドライバ5062aから揺動パルスを出力した後の正転駆動パルスは、ドライバ5062aとドライバ5062bの順で出力する。ドライバ5061aから揺動パルスを出力した後の正転駆動パルスは、ドライバ5061aとドライバ5061bの順で出力する。
【0095】
一方、第2車の負荷歯車1回転あたりのロータ22のステップ数が奇数にされていれば、上述したステッピングモータ制御装置100のように、コンパレータの数を半減することができる。したがって、ステッピングモータ制御装置100によれば、2コイルモータの場合、誘起電圧検出用に2つのコンパレータがあればよく、従来例に比べて2つのコンパレータを削減することができる。
【0096】
図10は、変形例におけるステッピングモータ制御装置の具体的な構成の一例を示す図である。本変形例のステッピングモータ制御装置100aは、電圧検出回路105aを備えている。
電圧検出回路105aは、第1電圧検出点5054Aと、第2電圧検出点5054Bの2点の電圧を検出する構成にされている。より具体的には、電圧検出回路105aは、第1コンパレータ1051Aと、第1電圧検出抵抗1052Aとを備え、第1電圧検出点1054Aの電圧を検出する。また、電圧検出回路105aは、第2コンパレータ1051Bと、第2電圧検出抵抗1052Bとを備え、第2電圧検出点1054Bの電圧を検出する。
すなわち、電圧検出回路105aは、コイル209Aの両端の電圧と、コイル209Bの両端の電圧とを2つのコンパレータによって検出可能である。
このように構成したステッピングモータ制御装置100によれば、電圧検出回路105の回路構成をより簡素化することができる。
【0097】
また、2コイルモータの場合において、負荷歯62の負荷変動によって生じる誘起電圧を、ロータが正転している場合にのみ(又はロータが逆転している場合にのみ)検出することもできる。このように構成した場合には、2コイルモータの場合であっても、誘起電圧検出用に1つのコンパレータがあれば、負荷歯62の負荷変動によって生じる誘起電圧を検出可能である。
このように構成したステッピングモータ制御装置100によれば、電圧検出回路105の回路構成をさらに簡素化することができる。
【0098】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成や機能についてはその説明を省略する。
【0099】
図11は、第2実施形態に係る時計の機能構成の一例を示す図である。本実施形態の時計1は、指針駆動部110Aが、ステッピングモータ制御装置100Aを備える。ステッピングモータ制御装置100Aは、上述したステッピングモータ制御装置100の各機能部に加えて、記憶部108を備える点でステッピングモータ制御装置100と異なる。
本実施形態のステッピングモータ制御装置100Aは、負荷検出結果の補間機能を備えている。
【0100】
記憶部108は、制御回路103の制御に基づき、電圧検出回路105が検出した誘起電圧の検出結果と、ロータ22のステップ数とを対応付けて記憶する。
【0101】
[負荷検出結果の補間機能]
図12は、本実施形態における負荷検出結果の一例を示す図である。上述した時輪列31を一例にして説明する。
時輪列31において、第2車33および第3車32は、それぞれ負荷歯を備える。以降の説明において、第3車32の負荷歯による負荷変動を第1負荷とも称し、第2車33の負荷歯による負荷変動を第2負荷とも称する。
【0102】
時輪列31は、第1実施形態で説明したギア比を有する。上述したギア比の時輪列31の場合、ロータ22が360ステップすると、第1車34が1回転する。ロータ22が45ステップすると、第2車33が1回転する。
上述したように、第2車33は、第2車歯車33aの歯の1か所が負荷歯とされている。第1車34は、第1車歯車34aの歯の1か所が負荷歯とされている。したがって、第1負荷は、第1車34が1回転するごとに1回発生する。第2負荷は、第2車33が1回転するごとに1回発生する。
上述したギア比の時輪列31の場合、第1車34は、第2車33に比べて回転角速度が小さい。このため、第1車34による第1負荷の発生時間幅は、第2車33による第2負荷の発生時間幅よりも大きい。すなわち、第1車34による第1負荷は、第2車33による第2負荷よりも長い時間発生する。
したがって、制御回路103は、負荷変動の発生幅の違いにより、第1負荷であるのか第2負荷であるのかを判定することができる。制御回路103は、第1負荷の発生タイミングと第2負荷の発生タイミングとを組み合わせることによって、指針(例えば、時針6)の回転位置を把握することができる。
【0103】
ここで、仮に第2車33の負荷歯によって生じた誘起電圧が、電圧検出回路105の判定しきい値電圧未満であるなどして、電圧検出回路105が負荷変動を検出できなかった場合には、制御回路103が指針(例えば、時針6)の回転位置を把握することができなくなることがあるとする。
【0104】
本実施形態の制御回路103は、電圧検出回路105が検出した第2負荷の発生タイミングと、ロータ22のステップ数とを対応付けて、記憶部108に記憶させる。
【0105】
上述したように、第2負荷は、第2車33が1回転するごとに発生する。すなわち図12に示すように、第2負荷は、ロータ22が90ステップするごとに発生する。
この一例において、ロータ22のステップ数「45」「225」及び「315」の場合に発生する第2負荷が検出され、ロータ22のステップ数「135」の場合に発生する第2負荷が検出できなかったものとする。
【0106】
ロータ22のステップ数が「45」である場合に第2負荷の発生が検出されると、制御回路103は、第2負荷の検出結果と、ロータ22のステップ数「45」とを対応付けて、記憶部108に記憶させる。
次にロータ22のステップ数がおよそ「107」から「111」辺りに第1負荷の発生が検出されると、ロータ22のステップ数「45」の第2負荷が発生した位置を針の基準位置と判断し、この基準位置から現在の針位置が何ステップ目であるかを計算して記憶部108に記憶させる。
【0107】
一方、ロータ22のステップ数「135」において第2負荷の発生が検出されなかった場合、制御回路103は、検出結果を記憶部108に記憶させない。
ロータ22のステップ数が「225」である場合に第2負荷の発生が検出されると、制御回路103は第2負荷の検出結果と、ロータ22のステップ数「225」とを対応付けて、記憶部108に記憶させる。更に、ロータ22のステップ数「135」において第2負荷の誘起電圧が何らかの理由により閾値を下回ったが、第2負荷は発生していたものとして検出結果を補間し、針位置ずれは無いと判断する。もし、ロータ22のステップ数が「225」以外の例えば「226」や「224」で第2負荷の発生が検出された場合は、ステップ数「45」以降のどこかのタイミングで外部からの衝撃を受けて針位置がずれたと判断して、基準位置から現在の針位置までのステップ数を補正する。
【0108】
すなわち、本実施形態の判定回路104(判定部)は、過去に検出された誘起電圧の検出周期に基づいて、電圧検出回路105(電圧検出部)が検出する結果を補間することにより、誘起電圧が検出されるべきタイミングを判定する。
【0109】
したがって、ステッピングモータ制御装置100Aによれば、第2負荷の発生を一時的に検出できない場合であっても、制御回路103が指針(例えば、時針6)の回転位置を把握することができる。
このように構成されたステッピングモータ制御装置100Aによれば、複雑な回路構成によって第2負荷の発生を検出する必要がなく、指針の位置の検出回路の構成を簡素化することができる。
【0110】
なお、本実施形態では、制御回路103が負荷検出結果の補間動作を行うとして説明したが、これに限られない。例えば、判定回路104が負荷検出結果の補間動作を行うように構成されていてもよい。
【0111】
また、本実施形態では、ステッピングモータ制御装置100Aが駆動する輪列(時輪列31)が、第1実施形態で説明したギア比を有するとしたが、これに限られない。
例えば、ステッピングモータ制御装置100Aが駆動する輪列は、上述の第1実施形態において従来例として説明したギア比を有していてもよい。
本実施形態では、第1車34、第2車33、第3車32はそれぞれ二番車、三番車、四番車の例で説明したが、他の輪列構成でもよい。例えば秒針と分針が連動するロータから順に五番車、四番車、三番車、二番車で構成された場合、二番車が第1負荷を備え、四番車が第2負荷を備える構成でも良い。分針や時針が独立したロータから順に中間車A、中間車B、二番車(時針のときは筒車)で構成された場合、二番車(筒車)が第1負荷を備え、中間車Bが第2負荷を備える構成でも良い。
【0112】
また、制御回路103は、第2負荷の検出周期をあらかじめ与えられていてもよいし、過去の第2負荷の検出結果の履歴から検出周期を求めるように構成されていてもよい。
【0113】
なお、上述した時計1が備える機能の全部又は一部は、プログラムとしてコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、このプログラムがコンピュータシステムにより実行されてもよい。コンピュータシステムは、OS、周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置、インターネット等のネットワーク上のサーバ等が備える揮発性メモリ(Random Access Memory:RAM)である。なお、揮発性メモリは、一定時間プログラムを保持する記録媒体の一例である。
【0114】
また、上述したプログラムは、伝送媒体、例えば、インターネット等のネットワーク、電話回線等の通信回線により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。
【0115】
また、上記プログラムは、上述した機能の全部又は一部を実現するプログラムであってもよい。なお、上述した機能の一部を実現するプログラムは、上述した機能をコンピュータシステムに予め記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるプログラム、いわゆる差分プログラムであってもよい。
【0116】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、具体的な構成が上述した実施形態に限られるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0117】
1…時計、4…ムーブメント(時計用ムーブメント)、6…時針(指針)、20A…第1モータ(ステッピングモータ)、22…ロータ、31…時輪列、32…第3車、33…第2車、34…第1車、62…負荷歯、100…ステッピングモータ制御装置、103…制御回路、104…判定回路、105…電圧検出回路、106…モータ駆動回路、1061…第1ドライバ、1062…第2ドライバ、1051…コンパレータ、1052…電圧検出抵抗、1053…電圧検出スイッチ、1054…電圧検出点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
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