(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ガス検出装置、ガス検出方法、制御プログラム、記録媒体
(51)【国際特許分類】
G01N 1/38 20060101AFI20240905BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G01N1/38
G01N1/22 M
(21)【出願番号】P 2021066005
(22)【出願日】2021-04-08
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】清水 悦朗
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真一
(72)【発明者】
【氏名】上山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】竹之下 健
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-068732(JP,A)
【文献】特開平07-306127(JP,A)
【文献】特開2017-161348(JP,A)
【文献】特開2001-074683(JP,A)
【文献】特開平10-170461(JP,A)
【文献】特開2001-159587(JP,A)
【文献】特開2020-076731(JP,A)
【文献】特開2020-076776(JP,A)
【文献】特開2017-062221(JP,A)
【文献】特開2021-092443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00~1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を貯留可能な貯留槽と、
対象空間内のサンプルガスを採取し、前記貯留槽内に、採取された前記サンプルガスを供給可能な採取部と、
前記サンプルガス、及び前記サンプルガスとは異なるガスである希釈ガスの前記貯留槽への流入を調節可能な弁と、
前記貯留槽に前記希釈ガスを供給可能な希釈部と、
ガスの濃度に応じた検知信号を出力可能な第1ガスセンサと、
前記貯留槽から、前記第1ガスセンサに、少なくとも前記サンプルガスを含む気体を供給可能な第1供給部と、
前記サンプルガスに含まれる特定ガスの濃度に応じて前記弁の状態を制御できて、前記第1ガスセンサから出力された検知信号に基づき、少なくとも前記サンプルガスを含む前記気体に含まれる検出対象ガスの濃度を検出可能な制御部と
、
前記採取部に採取された前記サンプルガス及び/または前記希釈部から供給された前記希釈ガスを前記貯留槽に供給可能な第2供給部と、前記サンプルガスに含まれる特定ガスの濃度に応じた検知信号を出力可能な第2ガスセンサと、を備え、
前記制御部は、
前記第1ガスセンサからの前記検知信号に基づき、前記検出対象ガスの濃度を検出可能な第1検出部と、
前記第2ガスセンサからの前記検知信号に基づき、前記特定ガスの濃度を検出可能な第2検出部と、
前記第2検出部の検出結果に応じて前記弁の状態を制御可能な弁制御部と、
前記第1供給部及び前記第2供給部の動作を制御可能な動作制御部と、をさらに備える、ガス検出装置。
【請求項2】
特定ガスの濃度が、予め設定された閾値よりも高い場合、前記弁制御部は、(i)前記希釈部と前記貯留槽とが少なくとも一部連通し、かつ(ii)前記採取部と前記貯留槽とが連通しないように、前記弁の状態を制御可能である、請求項
1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記貯留槽に貯留される前記サンプルガスの容量に基づき、(i)前記貯留槽に供給すべき前記希釈ガスの容量及び(ii)当該希釈ガスの容量を前記貯留槽に供給するための所要時間を算出可能な算出部を備え、
前記弁制御部は、前記算出部が算出した所要時間中、前記希釈部と前記貯留槽との間を連通した状態にできる、請求項
2に記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記弁制御部は、
前記弁の状態を制御することで、前記希釈部と前記貯留槽との間の連通状態を調節可能であり、
前記貯留槽に所定時間内に所望量の前記希釈ガスが供給されるように、前記弁の状態を制御可能である、請求項
2に記載のガス検出装置。
【請求項5】
気体を送気可能な第1ファンをさらに備え、
前記第1ファンは、
前記採取部の、前記貯留槽と接続しない方の端部近傍に位置しており、
前記サンプルガスを該ガス検出装置の外部から前記採取部側に送気可能である、請求項
1から
4のいずれか1項に記載のガス検出装置。
【請求項6】
気体を送気可能な第2ファンをさらに備え、
前記採取部は、前記サンプルガスを流すためのサンプル流路を内部に有しており、
前記第2ファンは、
前記サンプル流路に位置しており、
前記サンプルガスを前記採取部内部側から前記貯留槽側に送気可能である、請求項
1から
5のいずれか1項に記載のガス検出装置。
【請求項7】
前記採取部は、前記サンプルガスが採取される対象の空間に向けて開口する開口部をさらに備え、
前記第2ガスセンサは、前記開口部近傍に位置している、請求項
1から
6のいずれか1項に記載のガス検出装置。
【請求項8】
前記第2ガスセンサは、前記第2供給部と前記貯留槽との間に位置している、請求項
1から
6のいずれか1項に記載のガス検出装置。
【請求項9】
前記制御部による前記検出対象ガスの濃度の検出後、
前記弁制御部は、前記希釈部と前記貯留槽とが連通した状態となるように前記弁を制御可能であり、
前記動作制御部は、前記希釈ガスを前記貯留槽に供給するように前記第2供給部を制御可能である、請求項
1から
8のいずれか1項に記載のガス検出装置。
【請求項10】
前記第1ガスセンサを内部に格納するセンサチャンバをさらに備え、
前記センサチャンバは、前記第1供給部に接続されており、
前記第1供給部は、前記センサチャンバに前記サンプルガスを供給可能である、請求項
1から
9のいずれか1項に記載のガス検出装置。
【請求項11】
前記希釈ガスは、前記ガス検出装置が位置している空間周辺の環境空気、または、前記ガス検出装置がさらに備える希釈ガス貯留槽に予め貯留されたガスである、請求項
1から
10のいずれか1項に記載のガス検出装置。
【請求項12】
前記希釈ガス貯留槽を備えており、
前記希釈ガスは、前記希釈ガス貯留槽に予め貯留されたガスであり、
前記希釈ガス貯留槽から前記第1ガスセンサへ前記希釈ガスを供給可能な第3供給部をさらに備え、
前記動作制御部は、
前記貯留槽から前記第1ガスセンサへ前記サンプルガスを供給するように前記第1供給部を動作させた後、希釈ガス貯留槽から前記第1ガスセンサへ前記希釈ガスを供給するように前記第3供給部の動作を制御可能である、請求項
11に記載のガス検出装置。
【請求項13】
前記特定ガスは、硫黄元素を含むガスである、請求項
1から
12のいずれか1項に記載のガス検出装置。
【請求項14】
対象空間内のサンプルガスを採取し、気体を貯留可能な貯留槽内に、採取された前記サンプルガスを供給する採取ステップと、
前記サンプルガスに含まれる特定ガスの濃度
に応じた検知信号を出力可能な第2ガスセンサからの前記検知信号に基づき、前記特定ガスの濃度を検出する特定ガス検出ステップと、
前記特定ガスの濃度を検出するステップにおいて検出された前記特定ガスの濃度に応じて前記サンプルガス、及び前記サンプルガスとは異なるガスである希釈ガスの前記貯留槽への流入を調節するための弁の状態を制御する弁制御ステップと、
前記採取ステップにおいて採取された前記サンプルガス及び/または前記希釈ガスを前記貯留槽に供給可能な第2供給部、の動作を制御し、前記貯留槽に前記希釈ガスを供給する希釈ステップと、
少なくとも前記サンプルガスを含む気体を前記貯留槽からガスの濃度に応じた検知信号を出力可能な第1ガスセンサに供給可能な第1供給部の動作を制御し、前記貯留槽から、
前記第1ガスセンサに、少なくとも前記サンプルガスを含む気体を供給する供給ステップと、
前記第1ガスセンサから出力された検知信号に基づき、少なくとも前記サンプルガスを含む前記気体に含まれる検出対象ガスの濃度を検出する検出対象ガス検出ステップと、
を含む、
ガス検出方法。
【請求項15】
請求項1から
13のいずれか1項に記載のガス検出装置としてのコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記制御部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項16】
請求項
15に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスを分析するためのガス検出装置、ガス検出方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両等の内燃機関から排出された排ガスをサンプリングし、当該排ガスの濃度が高い場合は、希釈ガスを導入し、当該排ガスに含まれる所定成分の濃度を測定する排ガス測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシステムでは、収集したガスの測定に関して、改善の余地がある。
【0005】
本開示の一態様は、ガスの分析精度が向上した、ガス検出装置、及びガス検出方法等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るガス検出装置は、気体を貯留可能な貯留槽と、対象空間内のサンプルガスを採取し、前記貯留槽内に、採取された前記サンプルガスを供給可能な採取部と、前記サンプルガス、及び前記サンプルガスとは異なるガスである希釈ガスの前記貯留槽への流入を調節可能な弁と、前記貯留槽に前記希釈ガスを供給可能な希釈部と、ガスの濃度に応じた検知信号を出力可能な第1ガスセンサと、前記貯留槽から、前記第1ガスセンサに、少なくとも前記サンプルガスを含む気体を供給可能な第1供給部と、前記サンプルガスに含まれる特定ガスの濃度に応じて前記弁の状態を制御できて、前記第1ガスセンサから出力された検知信号に基づき、少なくとも前記サンプルガスを含む前記気体に含まれる検出対象ガスの濃度を検出可能な制御部と、を備える。
【0007】
また、本開示の一態様に係るガス検出方法は、対象空間内のサンプルガスを採取し、気体を貯留可能な貯留槽内に、採取された前記サンプルガスを供給する採取ステップと、前記サンプルガスに含まれる特定ガスの濃度を検出する特定ガス検出ステップと、前記特定ガスの濃度に応じて前記サンプルガス、及び前記サンプルガスとは異なるガスである希釈ガスの前記貯留槽への流入を調節するための弁の状態を制御する弁制御ステップと、前記貯留槽に前記希釈ガスを供給する希釈ステップと、前記貯留槽から、ガスの濃度に応じた検知信号を出力可能な第1ガスセンサに、少なくとも前記サンプルガスを含む気体を供給する供給ステップと、前記第1ガスセンサから出力された検知信号に基づき、少なくとも前記サンプルガスを含む前記気体に含まれる検出対象ガスの濃度を検出する検出対象ガス検出ステップと、を含む。
【0008】
本開示の各態様に係るガス検出装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記ガス検出装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記ガス検出装置をコンピュータにて実現させるガス検出装置の制御プログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様は、ガスの分析精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係る分析システムの構成を示す外観図である。
【
図2】一実施形態に係るガス検出装置の構成を示す概略図である。
【
図3】ガス検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】採取部の構成の一例を示す一部断面図である。
【
図5】ガス検出装置において行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】ガス検出装置における各部の動作のタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【
図7】従来のガス検出装置及び一実施形態に係るガス検出装置における検出対象ガスの検出可能な範囲を示すグラフである。
【
図8】他の実施形態に係るガス検出装置の構成を示す概略図である。
【
図9】ガス検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図12】他の実施形態に係るガス検出装置の構成を示す概略図である。
【
図13】他の実施形態に係るガス検出装置の構成を示す概略図である。
【
図14】ガス検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図15】他の実施形態に係るガス検出装置の構成を示す概略図である。
【
図16】ガス検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図17】ガス検出装置において行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図18】ガス検出装置における各部の動作のタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る分析システム100の構成を示す外観図である。本明細書において参照する各図は、説明の便宜上、実施形態を説明するために一部の部材のみを簡略化して示した模式図である。従って、分析システム100は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各部材の寸法比率などを忠実に表したものではない。
図1に示すような分析システム100は、「ガス検出システム」、あるいは「ガス分析システム」と呼称され得る。
図1に示すように、分析システム100は、ガス検出装置1、及び電子機器(端末装置)3を備える。また、ガス検出装置1は、被検者の検体から発生したガスを検出する。検出されたガスは被検者の健康状態の分析等に用いられ得る。ここで、被検者の検体は、例えば被検者の組織の一部または尿等であり得るが、本実施形態においては被検者の便である。ガス検出装置1が備える、後述する第1ガスセンサ34によって検出される対象となる化学物質であり、かつ、気体として存在可能な化学物質を「検出対象ガス」と称する。検出対象ガスは、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。検出対象ガスは、例えば、被検者の便から排出されるガス(サンプルガス)に含まれ得る。検出対象ガスの濃度とは、検出される対象となる化学物質のサンプルガス中における濃度を意図している。
【0012】
ガス検出装置1は、
図1に示すように、例えば水洗の便器2に設置される。便器2は、便器ボウル2Aと、便座2Bとを備える。ガス検出装置1は、便器2の任意の箇所に設置されてよい。一例として、ガス検出装置1は、
図1に示すように、便器ボウル2Aと便座2Bとの間から便器2の外部にわたって配置されてよい。ガス検出装置1の一部は、便座2Bに埋め込まれていてよい。便器2の便器ボウル2Aには、被検者の便が排出され得る。ガス検出装置1は、便器ボウル2Aに排出された便から発生するガスが外気と混成されたサンプルガスを取得し得る。ガス検出装置1は、サンプルガスに含まれる検出対象ガスの種類及び濃度等を検出し得る。ガス検出装置1は、検出結果を電子機器3に送信し得る。
【0013】
便器2は、住宅または病院等のトイレ室に設置され得る。また、電子機器3は、例えば、被検者が利用するスマートフォンである。ただし、電子機器3は、スマートフォンに限定されず、任意の電子機器であってもよい。電子機器3は、トイレ室の内部にあってもよいし、トイレ室の外部にあってもよい。
【0014】
電子機器3は、ガス検出装置1から検出結果を、無線通信または有線通信によって、受信し得る。電子機器3は、受信した検出結果を、表示部3Aに表示し得る。表示部3Aは、文字等を表示可能なディスプレイと、ユーザ(被検者)の指等の接触を検出可能なタッチスクリーンとを含んで構成されてよい。当該ディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro‐Luminescence Display)または無機ELディスプレイ(IELD:Inorganic Electro‐Luminescence Display)等の表示デバイスを含んで構成されてよい。当該タッチスクリーンの検出方式は、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式(または超音波方式)、赤外線方式、電磁誘導方式または荷重検出方式等の任意の方式でよい。
【0015】
<ガス検出装置1>
図2は、一実施形態に係るガス検出装置1の構成を示す概略図である。
図3は、ガス検出装置1の構成を示すブロック図である。上述したように、ガス検出装置1は、便器2に設置され、被検者の便から排出されたガスを含むサンプルガスを採取し、当該サンプルガスに含まれる検出対象ガスの種類及び濃度等を検出し得る。また、ガス検出装置1は、検出した検出対象ガスの種類及び濃度等を示す情報を、検出結果として電子機器3に送信し得る。
図2及び
図3に示すように、ガス検出装置1は、筐体10、採取系20、分析系30、排出路40、制御部50、通信部61、及び記憶部62を備える。
【0016】
(筐体10)
筐体10は、ガス検出装置1の各種部品を収容する。筐体10は、任意の材料で構成されてよい。例えば、筐体10は、金属または樹脂等の材料で構成されてよい。
【0017】
(採取系20)
採取系20は、便器ボウル2A内の空間(対象空間)から、外気と共にサンプルガスを吸引(採取)し、当該サンプルガスに含まれる特定ガスの濃度に応じて希釈を行った上で貯留する。ここで、特定ガスは、後述する第2ガスセンサ22によって検出される対象となる化学物質であり、かつ、気体として存在可能な化学物質を意図している。特定ガスは、これに限定されるものではないが、例えば、構造式に硫黄元素を有する化学物質(例えば、硫化水素、及びメチルメルカプタン等)であってもよい。すなわち、特定ガスの濃度とは、第2ガスセンサ22によって検出される対象となる化学物質のサンプルガス中における濃度を意図している。
図2に示すように、採取系20は、採取部21、第2ガスセンサ22、弁23、希釈部24、第2ポンプ25(第2供給部)、及びサンプル貯留槽26(貯留槽)を備える。
【0018】
[採取部21]
図4は、採取部21の構成の一例を示す一部断面図である。採取部21は、対象空間内のサンプルガスを採取し、サンプル貯留槽26内に、採取された当該サンプルガスを供給する管状の部材である。
図4に示すように、採取部21は、便器ボウル2Aの内側に露出し、便器ボウル2A内に向けて開口する開口部211を有しており、第2ポンプ25(後述)の動作により、対象空間としての便器ボウル2A内のサンプルガスを採取する。また、採取部21は、サンプルガスを流すためのサンプル流路212を内部に有している。
図3に示すように、サンプル流路212の一端(第1端部)は開口部211に接続しており、サンプル流路212の他端(第2端部)は弁23を経由してサンプル貯留槽26に接続している。
【0019】
[第2ガスセンサ22]
第2ガスセンサ22は、特定ガスの濃度に応じて異なる検知信号を出力するセンサであればよい。以下では、第2ガスセンサ22として、特定ガスの濃度に応じて検知信号の強度が変化するセンサを例に挙げて説明するが、これに限定されない。一例として、第2ガスセンサ22は、サンプルガスに含まれ得る特定ガスの濃度に応じた強度の検知信号を制御部50の第2検出部52に出力可能である。第2ガスセンサ22は、後述する第1ガスセンサ34と同様の構成を有するセンサであってもよい。第2ガスセンサ22は、ガス検出装置1が動作している間、常に動作し、特定ガスを検出した場合に当該特定ガスの濃度に応じた強度の信号を第2検出部52に出力してもよい。
図4に示すように、第2ガスセンサ22は、採取部21の開口部211近傍に位置してよい。
【0020】
[弁23]
弁23は、採取部21及び希釈部24の流路上に位置しており、弁制御部54の制御に従って動作する。弁23は、弁制御部54の制御に従って各流路の開放の程度(連通の程度)を調節することで、採取部21とサンプル貯留槽26との間、及び希釈部24とサンプル貯留槽26との間の連通状態を調節することができる。これにより、サンプルガス及び希釈ガスのサンプル貯留槽26への流入が調節され得る。
【0021】
以下、弁23が、弁制御部54の制御により以下の3つの状態を切り替え可能な弁である場合を例に挙げて説明する。
(1)希釈部24とサンプル貯留槽26とが少なくとも一部連通し、かつ採取部21とサンプル貯留槽26とが連通しない状態
(2)採取部21とサンプル貯留槽26とが少なくとも一部連通し、かつ希釈部24とサンプル貯留槽26とが連通しない状態
(3)採取部21及び希釈部24の両方がサンプル貯留槽26と連通しない状態
【0022】
上述の弁23において、「連通しない」状態とは、流路によって接続される2つの部材の間において、気体が完全に移動できない状態と、一部気体が移動可能な状態とを含んでもよい。例えば、弁23は、希釈部24とサンプル貯留槽26との連通状態、すなわち希釈部24側の開き具合に連動して、採取部21側の閉じ具合が変わってもよい。具体的には、上述の(1)の状態において、採取部21側の弁23は、希釈部24側の弁23の開き具合に連動して、完全に閉鎖しきらなくともよい。換言すると、採取部21とサンプル貯留槽26とが連通しない状態では、希釈部24側の弁23の開き具合によって、採取部21とサンプル貯留槽26との間で完全に気体の移動が不可能であってもよいし、一部気体が移動可能であってもよい。
【0023】
また、弁23は、上述の3つの状態を切り替え可能な構成に限られない。例えば、弁23は、上述の(1)または(2)のみを切り替え可能な構成であってもよい。換言すると、弁23は、採取部21及び希釈部24のうち少なくともいずれかはサンプル貯留槽26と連通した状態であってもよい。このような弁23は、後述する
図6におけるタイミングチャートにおいて「閉」状態を有さない構成に対応する。但し、このような弁23においても、希釈部24側の流路または採取部21側の流路の開放及び閉鎖のタイミングは、3つの状態を切り替え可能な弁23と同様であってよい。
【0024】
[希釈部24]
希釈部24は、内部に希釈ガスを流すための流路を備える管状の部材である。希釈部24の一端(第1端部)は、対象空間とは異なる外部の空間に向けて開口する開口部241と接続しており、希釈部24の他端(第2端部)は弁23を経由してサンプル貯留槽26と接続している。一例として、外部とは、トイレ室内の空間等、ガス検出装置1が位置している空間周辺の環境空気である。希釈部24は、第2ポンプ25の動作により、希釈ガスとしてトイレ室内の外気を吸引し、流路を介してサンプル貯留槽26に供給し得る。
図2に示す構成において、希釈部24は、弁23において採取部21と合流しており、弁23とサンプル貯留槽26との間において採取部21と希釈部24とが1つの流路となっている。但し、採取部21及び希釈部24の構成はこれに限られず、弁23とサンプル貯留槽26との間において採取部21と希釈部24とは別々の流路として構成されていてもよい。
【0025】
[第2ポンプ25]
第2ポンプ25は、弁23とサンプル貯留槽26との間に位置しているポンプであり、動作制御部51の制御に従って駆動する。一例として、第2ポンプ25は、一定の送気速度で駆動するポンプである。第2ポンプ25は、採取部21からサンプル貯留槽26へのサンプルガスの供給、または、希釈部24からサンプル貯留槽26への希釈ガスの供給を行う。
[サンプル貯留槽26]
サンプル貯留槽26は、採取部21によって採取されたサンプルガス等の気体を貯留可能な貯留槽である。
図2に示すように、サンプル貯留槽26は、採取部21、希釈部24、及び流路31(後述)と接続している。採取部21とサンプル貯留槽26とが連通した状態となるように弁23が調節され、第2ポンプ25が駆動することにより、サンプル貯留槽26にサンプルガスが供給される。また、希釈部24とサンプル貯留槽26とが連通した状態となるように弁23が調節され、第2ポンプ25が駆動することにより、サンプル貯留槽26に希釈ガスが供給される。これにより、サンプル貯留槽26内においてサンプルガスが希釈ガスによって希釈される。サンプル貯留槽26は収縮可能な容器でもよいが、所望の圧力でサンプルガス及び希釈ガスが封入され得る非収縮な容器であってもよい。
【0026】
(分析系30)
分析系30は、採取系20によって採取されたサンプルガスを用いて、該サンプルガスに含まれる検出対象ガスの種類及び濃度を検出する。換言すると、分析系30は、採取されたサンプルガスを分析する。
図2に示すように、分析系30は流路31、第1ポンプ32(第1供給部)、センサチャンバ33、及び第1ガスセンサ34を備える。
【0027】
[流路31]
流路31は、サンプル貯留槽26とセンサチャンバ33とを接続する管状の部材である。流路31は、第1ポンプ32の動作により、サンプル貯留槽26内に貯留された気体をセンサチャンバ33に供給し得る。一例として、流路31は、第1ポンプ32の動作により、サンプル貯留槽26内に貯留されたサンプルガス、あるいはサンプルガスと希釈ガスとの混合物をセンサチャンバ33に供給する。
【0028】
[第1ポンプ32]
第1ポンプ32はサンプル貯留槽26とセンサチャンバ33の間の流路31上に位置しているポンプであり、動作制御部51の制御に従って動作する。一例として、第1ポンプ32は、一定の送気速度で動作するポンプである。第1ポンプ32は、サンプル貯留槽26からセンサチャンバ33内に、サンプルガス、またはサンプルガスと希釈ガスとの混合物を供給する。これにより、センサチャンバ33内に格納される第1ガスセンサ34に、少なくともサンプルガスを含む気体が供給される。
【0029】
[センサチャンバ33]
センサチャンバ33は、第1ガスセンサ34を内部に格納するチャンバである。
図2に示すように、センサチャンバ33には、流路31の一端と、排出路40の一端とが接続される。換言すると、センサチャンバ33は、流路31を介して第1ポンプ32に接続されている。
【0030】
[第1ガスセンサ34]
第1ガスセンサ34は、検出対象ガスの濃度に応じて異なる検知信号を出力するセンサであればよい。以下では、第1ガスセンサ34として、検出対象ガスの濃度に応じて検知信号の強度が変化するセンサを例に挙げて説明するが、これに限定されない。一例として、第1ガスセンサ34は、サンプルガスに含まれ得る検出対象ガスの濃度に応じた強度の検知信号を出力可能である。
図2に示すように、ガス検出装置1には、複数の第1ガスセンサ34が位置してよい。また、複数の第1ガスセンサ34は、それぞれ異なる種類の検出対象ガスの濃度に応じた検知信号を出力可能であってもよい。これにより、ガス検出装置1は、複数種類の検出対象ガスの濃度を分析することができる。
【0031】
第1ガスセンサ34は、センサ素子及び抵抗素子を備える。センサ素子と抵抗素子は、電源端子と接地端子との間において、直列接続される。電源端子と接地端子との間には、一定の電圧値VCが印加される。センサ素子及び抵抗素子の各々には同じ電流値ISが流れる。電流値ISは、センサ素子の抵抗値RS及び抵抗素子の抵抗値RLに応じて決まり得る。第1ガスセンサ34が出力する電圧は、センサ素子にかかる電圧値VSであってもよいし、抵抗素子にかかる電圧値VRLであってもよい。
【0032】
電源端子は、ガス検出装置1が備えるバッテリ等の電源に接続される。接地端子は、ガス検出装置1のグラウンドに接続される。センサ素子の一端は、電源端子に接続される。センサ素子の他端は、抵抗素子の一端に接続される。一例として、センサ素子は、半導体式センサである。ただし、センサ素子は、半導体式センサに限定されない。例えば、センサ素子は、接触燃焼式センサまたは固体電解質センサ等であってもよい。
【0033】
センサ素子は、感ガス部を含む。感ガス部は、第1ガスセンサ34の種類に応じた金属酸化物半導体材料を含む。金属酸化物半導体材料の一例として、酸化スズ(SnO2等)、酸化インジウム(In2O3等)、酸化亜鉛(ZnO等)、酸化タングステン(WO3等)及び酸化鉄(Fe2O3等)等から選択される1種以上を含むものが挙げられる。感ガス部の金属酸化物半導体材料に適宜不純物を添加することにより、センサ素子によって検出するガスを適宜選択することができる。センサ素子は、感ガス部を加熱するヒータをさらに含んでよい。
【0034】
センサ素子をサンプルガスに曝すと、サンプルガスに含まれる検出対象ガスと、センサ素子の感ガス部の表面に吸着した酸素とが置き換わり、還元反応が生じ得る。還元反応が生じることにより、感ガス部の表面に吸着していた酸素が除去され得る。感ガス部の表面に吸着していた酸素が除去されると、センサ素子の抵抗値RSが低下し、センサ素子にかかる電圧値VSが低下し得る。つまり、第1ガスセンサ34にサンプルガスを供給すると、サンプルガスに含まれる検出対象ガスの濃度に応じて、センサ素子にかかる電圧値VSが低下し得る。ここで、電圧値VSと電圧値VRLとを合わせた値は一定である。そのため、第1ガスセンサ34にサンプルガスを供給すると、サンプルガスに含まれる検出対象ガスの濃度に応じて、電圧値VRLは増加し得る。
【0035】
抵抗素子は、可変抵抗素子である。抵抗素子の抵抗値RLは、制御部50からの制御信号によって変化し得る。抵抗素子の一端は、センサ素子の他端に接続される。抵抗素子の他端は、接地端子に接続される。
【0036】
抵抗素子の抵抗値RLを調整することにより、センサ素子にかかる電圧値VSが調整され得る。例えば、抵抗値RLをセンサ素子の抵抗値RSと同等にすると、センサ素子にかかる電圧値VSの振れ幅は最大値に近くなり得る。
【0037】
(排出路40)
排出路40は、樹脂製チューブ或いは金属製またはガラス製配管等の管状の部材で構成されてよい。排出路40の一端(第1端部)は、センサチャンバ33と接続されており、排出路40の他端(第2端部)はガス検出装置1の筐体10の外部に向かって開口している。排出路40は、第1ポンプ32の動作により、センサチャンバ33からの排気をガス検出装置1の外部に排出する。排出路40の開口部側の一部は、
図1に示すように、便器ボウル2Aの外側へ露出し得る。
【0038】
(制御部50)
制御部50は、ガス検出装置1の各部の動作を制御し、サンプルガスに含まれる特定ガス及び検出対象ガスの検出を行う。
図3に示すように、制御部50は、動作制御部51、第2検出部52、算出部53、弁制御部54、及び第1検出部55を備える。
【0039】
[動作制御部51]
動作制御部51は、ガス検出装置1が備える各部の動作を制御可能である。例えば、動作制御部51は、第1ポンプ32及び第2ポンプ25の動作を制御する。具体的には、動作制御部51は、対象者検知部60の検知結果に応じて第2ポンプ25を動作させ、所定時間が経過した後に停止させる。これにより、採取部21から便器ボウル2A内のサンプルガスが吸引され、サンプル貯留槽26に供給される。あるいは、希釈部24から希釈ガスが吸引され、サンプル貯留槽26に供給される。また、動作制御部51は、第2ポンプ25を所定時間動作させた後、第1ポンプ32を動作させる。動作制御部51が第1ポンプを動作させ始めるタイミングは、第2ポンプ25の動作を停止させるタイミングと同時であってもよいし、異なっていてもよい。動作制御部51は第1ポンプ32を動作させることにより、サンプル貯留槽26からセンサチャンバ33にサンプルガスが供給される。動作制御部51は、第2ポンプ25の動作を開始させることを示す情報を第2検出部52、算出部53及び弁制御部54に出力する。また、動作制御部51は、第1ポンプ32の動作を開始させたことを示す情報を第1検出部55に出力する。
【0040】
また、動作制御部51は、第1ポンプ32及び第2ポンプ25の動作を制御することで、採取系20及び分析系30のクリーニングを行ってもよい。具体的には、第1検出部55による分析が終了した後、動作制御部51は、希釈部24とサンプル貯留槽26とが連通した状態で第2ポンプ25を動作させることで希釈ガスをサンプル貯留槽26に供給する。また、動作制御部51は、第1ポンプ32を動作させることでサンプル貯留槽26に供給された希釈ガスをセンサチャンバ33に供給した後排出路40から排出する。これにより、サンプル貯留槽26、流路31、及びセンサチャンバ33に残留していたサンプルガスが希釈ガスと共に排出され、採取系20及び分析系30がクリーニングされる。採取系20及び分析系30のクリーニングを行うことにより、サンプルガスの分析において、別のタイミングで採取されたサンプルガスが混入する可能性を低減することができる。
【0041】
[第2検出部52]
第2検出部52は、サンプルガスに含まれ得る特定ガスの濃度を検出する。具体的には、第2検出部52は、動作制御部51から第2ポンプ25の動作を開始することを示す情報を取得すると、第2ガスセンサ22から特定ガスの濃度に応じた信号の取得を開始する。第2検出部52は、当該信号の強度に基づき、該特定ガスの濃度を算出する。また、第2検出部52は、記憶部62を参照し、算出した特定ガスの濃度が、予め設定された閾値を越えたか否かを判定する。算出した特定ガスの濃度が閾値を越えた場合、第2検出部52は、特定ガスの濃度が閾値を越えたことを示す情報を算出部53に出力する。
【0042】
[算出部53]
算出部53は、動作制御部51から第2ポンプ25の動作を開始することを示す情報を取得する。また、算出部53は、第2検出部52から特定ガスの濃度が閾値を越えたことを示す情報を取得する。算出部53は、特定ガスの濃度が閾値を越えたことを示す情報を取得すると、記憶部62を参照し、所定時間内に所望量の希釈ガスをサンプル貯留槽26に供給するために必要な弁23の開放の程度を算出する。
【0043】
具体的には、算出部53は、第2ポンプ25の動作を開始したタイミング、特定ガスの濃度が閾値を越えたタイミング、及び第2ポンプ25が動作する全体の時間に基づき、第2ポンプ25が動作する残り時間(所定時間)を算出する。また、算出部53は、特定ガスの濃度が閾値を越えたタイミングまでに採取され、サンプル貯留槽26に貯留されたサンプルガスの量を算出する。算出部53は、算出した所定時間と、貯留されたサンプルガスの量と、第2ポンプ25の送気速度とに基づき、サンプルガスを所望の希釈度とするために必要な希釈ガスの量を算出する。また、算出部53は、算出した希釈ガスを所定時間の間にサンプル貯留槽26に供給するために必要な弁23の開放の程度を算出する。算出部53は、算出した弁23の開放の程度を示す情報を弁制御部54に出力する。
【0044】
[弁制御部54]
弁制御部54は、弁23の状態を制御可能である。弁制御部54は、弁23の状態を制御することで、希釈部24とサンプル貯留槽26との間において、どの程度の送気速度で気体が移動可能か、すなわち希釈部24とサンプル貯留槽26との間の連通状態(接続の程度)を調節可能である。また、弁制御部54は、弁23の状態を制御することで、採取部21とサンプル貯留槽26との間の連通状態を調節可能である。換言すると、弁制御部54は、弁23の開放の程度を制御し得る。
【0045】
例えば、弁制御部54は、動作制御部51から第2ポンプ25の動作を開始することを示す情報を取得すると、弁23の状態を制御し、サンプル流路212を開放した状態、換言すると、採取部21とサンプル貯留槽26との間を連通させた状態としてよい。この状態において第2ポンプ25が動作することにより、便器ボウル2Aから採取部21によってサンプルガスが吸引される。また、吸引されたサンプルガスは、サンプル貯留槽26に供給され、貯留される。このとき、弁制御部54は、サンプル流路212内のサンプルガスの流れが弁23によって妨げられないように、弁23における採取部21側の連通状態を調節する部分を完全に開放した状態としてよい。
【0046】
また、例えば、弁制御部54は、第2検出部52の検出結果によって示される特定ガスの濃度に応じて弁23の状態を制御してもよい。具体的には、弁制御部54は、算出部53の算出結果に基づき、サンプル貯留槽26に所定時間内に所望量の希釈ガスが供給されるように、弁23の状態を制御してよい。特定ガスの濃度が、予め設定された閾値よりも高い場合、弁制御部54は、算出部53から弁23の開放の程度を示す情報を取得する。弁制御部54は、該情報に基づき弁23を制御し、希釈部24側の流路の開放の程度を調節する。また、弁制御部54は、同時に弁23を制御し、採取部21側のサンプル流路212を閉鎖する。換言すると、特定ガスの濃度が予め設定された閾値よりも高い場合、弁制御部54は、(i)希釈部24とサンプル貯留槽26とが少なくとも一部連通し、かつ(ii)採取部21とサンプル貯留槽26とが連通しないように、弁23の状態を制御する。この状態において、第2ポンプ25が動作することにより、希釈部24からサンプル貯留槽26に、所望の送気速度で希釈ガスが供給される。これにより、サンプル貯留槽26に貯留されたサンプルガスが希釈される。また、弁制御部54が、算出部53の算出結果に基づいて弁23の開放の程度を調節することにより、サンプル貯留槽26にはサンプルガスの濃度に応じた所望量の希釈ガスが所定時間内に供給されるため、サンプルガスを所望の希釈率とすることができる。
【0047】
具体例として、第2ポンプ25が120ml/分の送気速度で100秒間動作し、特定ガスの濃度が閾値を越えた場合、サンプルガスが2倍に希釈される構成を挙げて説明する。当該構成において、第2ポンプ25の動作開始から30秒の段階で特定ガスの濃度が閾値を越えた場合、サンプル貯留槽26には60mlのサンプルガスが貯留されており、第2ポンプ25の残りの動作時間は60秒である。この場合、60秒の間に60mlの希釈ガスがサンプル貯留槽26に供給されればよい。そのためには、希釈部24からサンプル貯留槽26への単位時間あたりの送気量が、弁23を全開した場合に対して50%程度となるように弁23の開放の程度が制御されればよい。従って、算出部53は、弁23の開放の程度が上述の程度となるように弁23を制御することを示す情報を弁制御部54に出力し、弁制御部54は、取得した当該情報に基づいて弁23を制御する。これにより、60秒間第2ポンプ25が動作することで、サンプル貯留槽26には60mlの希釈ガスが供給され、サンプル貯留槽26内のサンプルガスは2倍に希釈される。以上のように、第2ポンプ25が一定の送気速度で一定の期間動作し、弁23の開放の程度が適宜調節されることで、サンプルガスが所望の希釈率に希釈される。
【0048】
また、弁制御部54は、第1検出部55による検出後、希釈部24とサンプル貯留槽26とが連通した状態となるように弁23を制御してもよい。この状態で第2ポンプ25が動作することにより、サンプル貯留槽26に希釈ガスが供給されるため、サンプル貯留槽26をクリーニングすることができる。
【0049】
[第1検出部55]
第1検出部55は、第1ガスセンサ34から取得した(第1ガスセンサ34から出力された)検知信号の強度に基づき、サンプルガスまたはサンプルガスと希釈ガスとの混合物に含まれる検出対象ガスの種類及び濃度を算出(検出)する。第1検出部55は、算出した検出対象ガスの種類及び濃度を示す情報を、通信部61を介して電子機器3へ送信する。第1検出部55は、動作制御部51から、第1ポンプ32の動作を開始したことを示す情報を取得した場合に、第1ガスセンサ34からの信号の取得を開始してもよい。また、第1検出部55は、記憶部62を参照し、記憶部62に記憶された重回帰分析のアルゴリズム及び予測式を用いて検出対象ガスを詳細に分析してもよい。また、第1検出部55は、検出対象ガスの検出が終了した後、当該検出が終了したことを示す情報を動作制御部51及び弁制御部54に出力してもよい。
【0050】
(対象者検知部60)
対象者検知部60は、不図示の画像カメラ、個人識別スイッチ、赤外線センサ及び圧力センサ等の少なくとも何れかを含んで構成されていてよい。対象者検知部60は、検出結果を、制御部50に出力する。
【0051】
例えば、対象者検知部60は、赤外線センサを含んで構成される場合には、赤外線センサが照射した赤外線の対象物からの反射光を検出することにより、被検者がトイレ室に入室したことを検出し得る。対象者検知部60は、検出結果として、被検者がトイレ室に入室したことを示す信号を制御部50に出力する。
【0052】
例えば、対象者検知部60は、圧力センサを含んで構成される場合には、
図1に示す便座2Bにかかる圧力を検出することにより、被検者が便座2Bに座ったことを検出し得る。対象者検知部60は、検出結果として、被検者が便座2Bに座ったことを示す信号を制御部50に出力する。
【0053】
例えば、対象者検知部60は、圧力センサを含んで構成される場合には、
図1に示す便座2Bにかかる圧力の低減を検出することにより、被検者が便座2Bから立ち上がったことを検出し得る。対象者検知部60は、検出結果として、被検者が便座2Bから立ち上がったことを示す信号を制御部50に出力する。
【0054】
例えば、対象者検知部60は、画像カメラ及び個人識別スイッチ等を含んで構成される場合には、顔画像、座高及び体重等のデータを収集する。対象者検知部60は、収集したデータから個人を特定識別して検出する。対象者検知部60は、検出結果として、特定識別した個人を示す信号を動作制御部51に出力する。
【0055】
例えば、対象者検知部60は、個人識別スイッチ等を含んで構成される場合には、個人識別スイッチの操作に基づいて、個人を特定(検出)する。この場合、記憶部62には、予め個人情報が登録(記憶)されてよい。対象者検知部60は、検出結果として、特定した個人を示す信号を動作制御部51に出力する。
【0056】
また、対象者検知部60は、被検者が排便したことを検知してもよい。対象者検知部60は、検出結果として、被検者が排便したことを示す信号を制御部50に出力する。
【0057】
(通信部61)
通信部61は、制御部50による検出対象ガスの分析結果を、例えば表示部3Aへの表示または音声によって被検者に示す電子機器3と通信する。通信部61は、外部サーバと通信可能であってもよい。通信部61と電子機器3及び外部サーバとの通信において用いられる通信方式は、近距離無線通信規格または携帯電話網へ接続する無線通信規格であってもよいし、有線通信規格であってもよい。近距離無線通信規格は、例えば、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、赤外線及びNFC(Near Field Communication)等を含んでよい。携帯電話網へ接続する無線通信規格は、例えば、LTE(Long Term Evolution)または第4世代以上の移動通信システム等を含んでよい。また、通信部61と電子機器3及び外部サーバとの通信において用いられる通信方式は、例えばLPWA(Low Power Wide Area)またはLPWAN(Low Power Wide Area Network)等の通信規格でよい。
【0058】
(記憶部62)
記憶部62は、例えば、半導体メモリまたは磁気メモリ等で構成される。記憶部62は、各種情報、及び、ガス検出装置1を動作させるためのプログラムを記憶する。記憶部62は、ワークメモリとして機能してよい。また、記憶部62は、例えば、第1検出部55が、第1ガスセンサ34において検出される検出対象ガスを詳細に分析するための重回帰分析のアルゴリズム及び予測式等を記憶してよい。また、記憶部62は、算出部53がサンプルガスに含まれる特定ガスの濃度に基づいて希釈を行うべきか否かを判定するための閾値を記憶してよい。また、記憶部62は、サンプルガスの希釈を行う場合の弁23における各部の適切な連通状態を算出するために算出部53が用いる演算式及び第2ポンプ25の送気速度等の情報を記憶してよい。
【0059】
<ガス検出装置1の処理の流れの一例>
図5は、ガス検出装置1において行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6は、ガス検出装置1における各部の動作のタイミングの一例を示すタイミングチャートである。以下、
図5及び
図6を用いてガス検出装置1において行われる処理(ガス検出方法)の流れの一例を説明する。以下の説明において、ガス検出装置1は、圧力センサを含む構成とする。また、対象者検知部60は、対象者が便座2Bに座ったこと、及び対象者が排便したことを検出する処理を実行可能な場合を例に挙げて説明する。
【0060】
まず、被検者が便器2に便を排出するために便座2Bに座ると、対象者検知部60は、被検者が便座2Bに座ったことを検出する。その後、被検者が排便を行うと、対象者検知部60は、被検者が排便したことを検出し、当該検出結果を動作制御部51に出力する(S1)。
【0061】
動作制御部51は、被検者が排便したことを示す検出結果を取得すると、第2ポンプ25の動作を開始させる。
図6において時刻t0では、第2ポンプ25の動作が開始する。また、動作制御部51は、第2ポンプ25の動作を開始することを示す情報を第2検出部52、算出部53、及び弁制御部54に出力する。弁制御部54は、弁23を制御し、採取部21とサンプル貯留槽26とが連通し、かつ希釈部24とサンプル貯留槽26とが連通しない状態とする。これにより、採取部21の開口部211から便器ボウル2A内のサンプルガスが採取され、サンプル流路212を通ってサンプル貯留槽26に供給される(S2:採取ステップ)。
【0062】
ここで、第2ガスセンサ22は、ガス検出装置1が動作している間は常に動作しており、特定ガスを検出すると、当該特定ガスの濃度に応じた強度の検出信号を第2検出部52に出力する。第2検出部52は、第2ポンプ25の動作を開始することを示す情報を取得すると、第2ガスセンサ22から取得した検出信号に基づき、特定ガスの濃度の測定(検出)を開始する(S3:特定ガス検出ステップ)。
【0063】
特定ガスの濃度が閾値を越えた場合(S4でYES)、第2検出部52は、特定ガスの濃度が閾値を越えたことを示す情報を算出部53に出力する。
【0064】
算出部53は、特定ガスの濃度が閾値を越えたことを示す情報を取得すると、所定時間内に所望量の希釈ガスをサンプル貯留槽26に供給し、サンプルガスを所望の希釈度とするために必要な弁23の開放の程度を算出する(S5)。算出部53は、算出した弁23の開放の程度を示す情報を弁制御部54に出力する。
【0065】
弁制御部54は、算出部53から取得した情報に基づき、弁23の開放の程度を制御する(S6:弁制御ステップ)。一例として、弁制御部54は、(i)希釈部24とサンプル貯留槽26とが少なくとも一部連通し、かつ(ii)採取部21とサンプル貯留槽26とが連通しないように、弁23の状態を制御する。
【0066】
ここで、動作制御部51は、S2の処理以降第2ポンプ25を動作させ続けている。従って、弁23の状態が制御されることで、第2ポンプ25の動作により、希釈ガスが開口部241を介して希釈部24から吸引される。これにより、希釈ガスがサンプル貯留槽26に供給され、サンプル貯留槽26内のサンプルガスが希釈される(S7:希釈ステップ)。
図6において時刻t1では、弁23の状態が制御され、サンプルガスの希釈が開始される。
【0067】
サンプルガス採取開始から所定時間経過した場合(S8でYES)、動作制御部51は、第2ポンプ25の動作を停止させる。
【0068】
続いて、動作制御部51は、第1ポンプ32を動作させ、サンプルガスと希釈ガスとの混合物、換言すると少なくともサンプルガスを含む気体をセンサチャンバ33に供給する(S9:供給ステップ)。
図6において時刻t2では、第2ポンプ25の動作が停止し、第1ポンプ32の動作が開始する。換言すると、時刻t2では、サンプルガスの採取及び希釈が完了し、サンプルガスの分析が開始される。
図6に示すように、時刻t2において、弁制御部54は弁23を制御し、採取部21のサンプル流路212及び希釈部24の流路の両方を閉鎖した状態としてもよい。
【0069】
一方、S4においてNOの場合、すなわち、動作制御部51が第2ポンプ25を動作させている間、特定ガスの濃度が閾値を越えなかった場合、動作制御部51は、第2ポンプ25を所定時間動作させた後(S8でYES)、第1ポンプ32を動作させる。これにより、センサチャンバ33には、サンプル貯留槽26に貯留された、希釈ガスが混合していないサンプルガスが供給される(S9:供給ステップ)。
【0070】
また、動作制御部51は、第1ポンプ32の動作を開始させたことを示す情報を第1検出部55に出力する。第1検出部55は、動作制御部51が第1ポンプ32の動作を開始させたこと、すなわちセンサチャンバ33内の第1ガスセンサ34への、少なくともサンプルガスを含む気体の供給が開始されたことを示す情報を取得する。第1検出部55は、当該情報を取得すると、検出対象ガスの検出(分析)を開始する(S10:検出対象ガス検出ステップ)。具体的には、第1検出部55は、第1ガスセンサ34から出力された検出対象ガスの種類及び濃度に応じた強度の検知信号を取得し、当該検知信号に基づき、サンプルガスに含まれる検出対象ガスの種類及び濃度を算出する。ここで、S4においてYESであった場合、すなわちサンプルガスが希釈されていた場合、第1検出部55は、サンプルガスの希釈率を考慮した上で検出対象ガスの検出を行う。
【0071】
第1検出部55は、検出対象ガスの検出が完了すると、検出した検出対象ガスの種類及び濃度を示す情報を、サンプルガスの検出結果として、通信部61を介して電子機器3に送信する(S11)。電子機器3は、サンプルガスの検出結果を取得すると、当該結果を、例えば表示部3Aに表示することで被検者に提示する。
【0072】
また、第1検出部55は、検出対象ガスの検出が完了したことを示す情報を動作制御部51及び弁制御部54に出力する。弁制御部54は、当該情報を取得すると弁23を制御し、希釈部24の流路を開放し、採取部21のサンプル流路212を閉鎖する。また、動作制御部51は、当該情報を取得すると、第2ポンプ25を動作させる。これにより希釈ガスがサンプル貯留槽26に供給され、サンプル貯留槽26のクリーニングが開始される(S12)。
図6において時刻t3では、第2ポンプ25の動作が開始し、サンプル貯留槽26への希釈ガスの供給が開始される。換言すると、時刻t3では、サンプル貯留槽26のクリーニングが開始される。
【0073】
動作制御部51は、第2ポンプ25を所定時間動作させた後、第2ポンプ25の動作を停止させ、第1ポンプ32の動作を開始させる。これにより、サンプル貯留槽26に供給された希釈ガスが、サンプル貯留槽26に残留していたサンプルガスと共にセンサチャンバ33に供給される(S13)。また、動作制御部51は、第1ポンプ32を動作させ続けることで、センサチャンバ33に供給された希釈ガスを、センサチャンバ33に残留していたサンプルガスと共に排出路40から排出させる。これにより、センサチャンバ33がクリーニングされる。
図6において時刻t4では、第1ポンプ32の動作が開始し、センサチャンバ33への希釈ガスの供給が開始される。換言すると、時刻t4では、センサチャンバ33のクリーニングが開始される。また、時刻t4において、弁制御部54は弁23を制御し、希釈部24の流路を閉鎖した状態としてもよい。
【0074】
<ガス検出装置1の効果>
従来、検出対象ガスの濃度が第1ガスセンサ34の検出限界を超える場合、当該検出対象ガスの正確な濃度を測定することができなかった。また、従来の技術では、第1ガスセンサ34に対応するセンサにサンプルガスを供給した後に希釈を行っていたため、サンプルガスの希釈の程度が均一でなく、不正確な分析結果となる場合があった。
【0075】
これに対して、ガス検出装置1は、採取部21、弁23、希釈部24、サンプル貯留槽26、第1ポンプ32、第1ガスセンサ34、及び制御部50を備える。さらに、ガス検出装置1は、第2ガスセンサ22及び第2ポンプ25を備えてよい。
【0076】
上述の構成によれば、ガス検出装置1では、特定ガスの濃度に応じて、サンプルガスが希釈ガスによって希釈される。従って、第1ガスセンサ34は特定ガスの濃度に応じて希釈されたサンプルガスの濃度に応じた検知信号を出力し、第1検出部55は当該検知信号に基づいて検出対象ガスの濃度を測定(検出)する。さらに、サンプルガスは、サンプル貯留槽26内において貯留され、当該サンプル貯留槽26に希釈ガスが供給されるため、均一に希釈されたサンプルガスを第1ガスセンサ34に供給することができる。これにより、ガス検出装置1は、より高濃度の検出対象ガスの濃度を正確に測定することができる。
【0077】
図7は、従来のガス検出装置及び一実施形態に係るガス検出装置1における検出対象ガスの検出可能な範囲を示すグラフである。
図7のXに示すグラフは、従来のガス検出装置における検出対象ガスの濃度とガスセンサの検出信号との関係を示し、
図7のYに示すグラフは、ガス検出装置1における検出対象ガスの濃度と第1ガスセンサ34の検出信号との関係を示す。以上のように、ガス検出装置1は、上述の構成を備え、サンプルガスの濃度に応じて当該サンプルガスを希釈することで、適宜第1ガスセンサ34の検出限界を変更することができる。
図7に示すように、第1ガスセンサ34と従来のガス検出装置のガスセンサとの検出信号の上限値が同一であっても、ガス検出装置1ではサンプルガスの希釈が行われるため、第1ガスセンサ34の検出信号はより高濃度の検出対象ガスに対応し得る。従って、ガス検出装置1は、検出対象ガスの濃度をより高精度に測定することができる。
【0078】
また、ガス検出装置1において、特定ガスの濃度が予め設定された閾値よりも高い場合、弁制御部54は、(i)希釈部24とサンプル貯留槽26とが少なくとも一部連通するように弁23の状態を制御してもよい。また同時に、弁制御部54は、(ii)採取部21とサンプル貯留槽26とが連通しないように弁23の状態を制御してもよい。
【0079】
上記構成によれば、ガス検出装置1は、特定ガスの濃度が高い場合、サンプル貯留槽26に希釈ガスを供給することができる。これにより、サンプル貯留槽26内に貯留されるサンプルガスを希釈することができる。従って、特定ガスの濃度が高い場合、第1ガスセンサ34は希釈されたサンプルガスの濃度に応じた検知信号を出力することができる。
【0080】
また、弁制御部54は、弁23の状態を制御することで、希釈部24とサンプル貯留槽26との間の連通状態を調節可能であり、サンプル貯留槽26に対して所定時間内に所望量の希釈ガスが供給されるように、弁23の状態を制御してもよい。
【0081】
上記構成によれば、弁制御部54は、弁23の開放の程度を調節することで希釈部24とサンプル貯留槽26との間の連通状態を調節することができ、これにより、サンプル貯留槽26に所望量の希釈ガスが供給される。また、当該構成によると、弁制御部54は予め設定された時間中弁23を開放すればよいため、算出部53は、弁23を開放する時間を算出する必要がない。従って、制御部50における処理の負担を低減することができる。
【0082】
また、ガス検出装置1において、採取部21は開口部211を備えてよく、第2ガスセンサ22は、開口部211近傍に位置してよい。
【0083】
上記構成によると、第2ガスセンサ22は、サンプル貯留槽26に向けてサンプルガスが吸引されていない状態であってもサンプルガスに接触しやすい。そのため、サンプルガスに含まれる特定ガスの濃度の変化をより正確に検出することができる。
【0084】
また、ガス検出装置1では、第1検出部55によるサンプルガスの分析後、弁制御部54は、希釈部24とサンプル貯留槽26とが連通した状態としてよい。さらに動作制御部51は、希釈ガスをサンプル貯留槽26に供給するように第2ポンプ25を動作させてよい。
【0085】
上記構成によると、測定終了後にサンプル貯留槽26内が希釈ガスによってクリーニングされる。また、サンプル貯留槽26に供給された希釈ガスは、流路31を通過しセンサチャンバ33及び第1ガスセンサ34にも供給され、排出される。これにより、次回以降の測定時に測定済みのサンプルガスがサンプル貯留槽26内及びセンサチャンバ33内の第1ガスセンサ34付近に残留することで測定値に影響を与える可能性を低減し、測定の精度を向上させることができる。
【0086】
また、ガス検出装置1は、第1ガスセンサ34を内部に格納するセンサチャンバ33を備えてもよい。当該構成によると、第1ガスセンサ34がサンプルガス、または希釈ガス以外の外気等の気体に接触する可能性が低減するため、測定の精度を向上させることができる。
【0087】
また、ガス検出装置1において用いられる希釈ガスは、ガス検出装置1が位置している空間周辺の環境空気であってもよい。これにより、便器ボウル2A内の気体よりもサンプルガスを含む可能性が低い気体を、希釈ガスとして用いることができるため、より正確にサンプルガスを希釈することができる。また、ガス検出装置1が位置している空間周辺から希釈ガスを採取することで、より遠くの空間から採取する、あるいはガス検出装置1内に希釈ガスを貯留しておくよりも、ガス検出装置1の構成を簡略化することができる。
【0088】
また、第2ガスセンサ22によって検出される特定ガスは、例えば硫黄元素を含むガスであってもよい。硫黄元素を含むガスは、被検者の便から排出されるサンプルガスに含まれる可能性が高い。従って、特定ガスが硫黄元素を含むガスである場合、該特定ガスの濃度は、サンプルガスに含まれる検出対象ガスの状態(量及び濃度等)を反映し得る。従って、ガス検出装置1は、特定ガスの濃度を参照することで、より適切にサンプルガスを希釈することができる。
【0089】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0090】
図8は、他の実施形態に係るガス検出装置1Aの構成を示す概略図である。
図9は、ガス検出装置1Aの構成を示すブロック図である。
図8及び
図9に示すように、ガス検出装置1Aは、採取部21Aを有する採取系20A、及び制御部50Aを備える点においてガス検出装置1と異なる。
【0091】
図10は、採取部21Aの構成を示す一部断面図である。
図8及び
図10に示すように採取系20Aは、採取部21の開口部211の近傍に位置している第1ファン27を備える。第1ファン27は、気体を一方向に送気可能なファンである。
図10に示すように、第1ファン27は、開口部211の近傍、すなわち、採取部21の、サンプル貯留槽26と接続しない方の端部近傍に位置している。また、第1ファン27は、便器ボウル2Aから採取部21に向けて気体を送気するように配置される。
【0092】
図9に示すように、制御部50Aは、動作制御部51Aを備える。動作制御部51Aは、第2ポンプ25及び第1ポンプ32に加えて、第1ファン27の動作も制御する。
【0093】
具体的には、動作制御部51Aは、第2ポンプ25と同時に第1ファン27を動作させる。これにより、採取部21Aでは、第1ファン27によって採取部21A側に送気されたサンプルガスが第2ポンプ25の動作によって開口部211から採取される。以上のように、ガス検出装置1Aは、より効率的にサンプルガスを採取することができる。
【0094】
<変形例>
図11は、採取部21Aの変形例を示す一部断面図である。
図11に示すように、採取部21Aは、第1ファン27に代えて、サンプル流路212内に第2ファン28を備えてもよい。第2ファン28は、第1ファン27と同様に、気体を一方向に送気可能なファンであってもよい。動作制御部51Aは、第2ファン28の動作を制御する。また、
図11に示すように、採取部21Aにおいて、第2ガスセンサ22Aは、第2ファン28よりも下流に位置してよい。
【0095】
また、
図11に示すように、採取部21Aは、一端(第1端部)が第2ファン28よりも下流においてサンプル流路212と接続し、他端(第2端部)が便器ボウル2Aに向けて開口する分岐流路213を備えてよい。これにより、便器ボウル2A内の気体が開口部211から流入し、サンプル流路212を通って分岐流路213から便器ボウル2A内へ排出される流れが生じる。従って、第2ポンプ25が動作していない、あるいは採取部21Aとサンプル貯留槽26との間が弁23によって閉鎖している間であっても、便器ボウル2A内の気体が第2ガスセンサ22Aに到達し得る。分岐流路213は、サンプル流路212側との接続部における開口を小さく、及び/またはサンプル流路212と直交するように位置してよい。これにより、第2ポンプ25の動作によるサンプル貯留槽26へのサンプルガスの供給を行う際、分岐流路213によって便器ボウル2A側へ戻るサンプルガスを減少させることができる。
【0096】
上記構成によれば、ガス検出装置1は、より効率的にサンプルガスを採取することができる。また、第2ファン28は、採取部21Aのサンプル流路212に位置しているため、外部(例えば便器ボウル2A内)にファンが位置している場合よりも汚れる可能性が低減される。また、サンプル流路212の径を大きくすれば、第2ファン28を大型化し、より効率的にサンプルガスを採取することも可能である。
【0097】
〔実施形態3〕
本開示のさらに他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0098】
図12は、他の実施形態に係るガス検出装置1Bの構成を示す概略図である。
図12に示すように、ガス検出装置1Bは、採取系20及び制御部50に代えて、採取系20B及び制御部50Bを備える。
【0099】
採取系20Bは、第2ガスセンサ22に代えて第2ガスセンサ22Bを備える。
図12に示すように、第2ガスセンサ22Bは、第2ポンプ25とサンプル貯留槽26との間に位置している。
【0100】
制御部50Bは、制御部50における処理に加えて、サンプルガスの希釈開始時に、希釈ガスに含まれる特定ガスの濃度の測定を行ってもよい。
【0101】
上記構成によれば、ガス検出装置1Bは、第2ガスセンサ22Bを用いてサンプルガスを希釈するために供給される希釈ガスに含まれる検出対象ガスの濃度を測定することができる。これにより、ガス検出装置1Bは、希釈ガスの管理を行うことができる。
【0102】
〔実施形態4〕
本開示のさらに他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0103】
図13は、他の実施形態に係るガス検出装置1Cの構成を示す概略図である。
図14は、ガス検出装置1Cの構成を示すブロック図である。
【0104】
ガス検出装置1Cは、採取系20及び制御部50に代えて、採取系20C及び制御部50Cを備える点においてガス検出装置1と異なる。
【0105】
図13に示すように、採取系20Cは、弁23に代えて弁23Aを備える。弁23Aは、弁23と異なり、開放の程度を調節できないものであってもよい。具体的には、弁23Aは、弁制御部54Aの制御に従い、採取部21側のサンプル流路212及び希釈部24側の流路を開放するか、あるいは閉鎖するかのみを調節可能であってもよい。
【0106】
図14に示すように、制御部50Cは、算出部53及び弁制御部54に代えて、算出部53A及び弁制御部54Aを備える点において、制御部50と異なる。
【0107】
算出部53Aは、第2ガスセンサ22によって検出された特定ガスの濃度が閾値を越える場合、サンプル貯留槽26に貯留されるサンプルガスの容量に基づき、サンプル貯留槽26に供給すべき希釈ガスの容量を算出する。また、算出部53Aは、算出した希釈ガスの容量をサンプル貯留槽26に供給するための所要時間を算出し、算出した所要時間を示す情報を弁制御部54Aに出力する。
【0108】
弁制御部54Aは、算出部53Aが算出した所要時間を示す情報を取得すると、弁23Aを制御し、当該所要時間中、希釈部24とサンプル貯留槽26とを連通した状態とする。またこの時、弁制御部54Aは、弁23Aを制御し、サンプル流路212を閉鎖した状態、換言すると、採取部21とサンプル貯留槽26とを連通していない状態とする。従って、
図6に示すタイミングチャートにおいて、ガス検出装置1Cでのt2のタイミング、すなわちサンプルガスの希釈が完了し、サンプルガスがセンサチャンバ33に供給され始めるタイミングは、ガス検出装置1におけるt2のタイミングとは異なり得る。ガス検出装置1とガス検出装置1Cとのt2のタイミングが異なる場合、これらのタイミングの差に応じてt3及びt4も異なり得る。
【0109】
上記構成によれば、所望量の希釈ガスをサンプル貯留槽26に供給することができる。これにより、サンプル貯留槽26に貯留されるサンプルガスを所望の希釈率とすることができる。また、上記構成において、弁23Aは開放の程度を調節可能なものである必要が無い。そのため、ガス検出装置1Cでは開放及び閉鎖の機能のみを有する簡単な構成の弁を弁23Aとして使用することが可能である。
【0110】
〔実施形態5〕
本開示のさらに他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0111】
図15は、他の実施形態に係るガス検出装置1Dの構成を示す概略図である。
図16は、ガス検出装置1Dの構成を示すブロック図である。
図15及び
図16に示すように、ガス検出装置1Dは、採取系20及び制御部50に代えて採取系20D及び制御部50Dを備える点においてガス検出装置1と異なる。
【0112】
採取系20Dは、希釈部24Aを備える。希釈部24Aは、一端が弁23を経由してサンプル貯留槽26と接続しており、他端は希釈ガス貯留槽29と接続している。
【0113】
希釈ガス貯留槽29は、内部に希釈ガスを貯留するチャンバである。
図15に示すように、希釈ガス貯留槽29は、弁23及びセンサチャンバ33と接続している。
【0114】
また、
図15に示すようにガス検出装置1Dは、流路71及び第3ポンプ72(第3供給部)をさらに備える。流路71は、希釈ガス貯留槽29とセンサチャンバ33との間を接続する流路である。第3ポンプ72は、動作制御部51Bの制御に従って動作し、希釈ガス貯留槽29からセンサチャンバ33に、希釈ガス貯留槽29内の希釈ガスを供給可能なポンプである。
【0115】
図16に示すように、制御部50Dは、動作制御部51Bを備える。動作制御部51Bは、第2ポンプ25及び第1ポンプ32に加え、第3ポンプ72の動作を制御する。
【0116】
<ガス検出装置1Dの処理の流れの一例>
図17は、ガス検出装置1Dにおいて行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図18は、ガス検出装置1Dにおける各部の動作のタイミングの一例を示すタイミングチャートである。以下、
図17及び
図18を用いてガス検出装置1Dにおいて行われる処理の流れの一例を説明する。
【0117】
図17に示すフローチャートにおいて、S21~S29の処理は、
図5のS1~S9の処理と同様であるため、説明を省略する。S29の後、動作制御部51Bは、第3ポンプ72を動作させ、希釈ガス貯留槽29から流路71を介して希釈ガスをセンサチャンバ33に供給する(S30)。
図18に示すt2´のタイミングは、動作制御部51Bが第3ポンプ72を動作させ始めるタイミングである。動作制御部51Bは、第3ポンプ72を一定期間動作させた後、停止させる。
【0118】
センサチャンバ33に供給される希釈ガスは、検出対象ガスを含むサンプルガスに対する比較参照用のガスとして機能し得る。センサチャンバ33に希釈ガスが供給されることにより、センサチャンバ33内の検出対象ガスを含むサンプルガスは排出路40から排出される。これにより、
図18に示すように、検出対象ガスの濃度に対応する第1ガスセンサ34の信号強度が低下する。
【0119】
S30の後、第1検出部55は、第1ガスセンサ34からの検出信号に基づき、検出対象ガスの種類及び濃度の分析を行う(S31)。ここで、第1検出部55は、第3ポンプ72の動作によってセンサチャンバ33に希釈ガスが供給された時の検出信号も参照して検出対象ガスの分析を行う。第1検出部55による検出対象ガスの分析が終了した後、S32~S34の処理が行われる。S32~S34の処理は、
図5のS11~S13の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0120】
以上のように、ガス検出装置1Dでは、濃度測定時に、参照ガスとして希釈ガスが第1ガスセンサ34に供給されるため、より高精度に検出対象ガスの濃度を検出することができる。
【0121】
また、動作制御部51Bは、S34の処理の後、第3ポンプ72を動作させ、希釈ガスをセンサチャンバ33に供給し、センサチャンバ33のクリーニングを行ってもよい。これにより、サンプル貯留槽26を経由せず、サンプル貯留槽26に残留していたサンプルガスが含まれない希釈ガスがセンサチャンバ33に供給されるため、より確実にセンサチャンバ33内に残留したサンプルガスを除去することができる。
【0122】
〔ソフトウェアによる実現例〕
ガス検出装置1~1D(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部50~50Dに含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0123】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0124】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0125】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本開示の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0126】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0127】
以上、本開示に係る発明について、諸図面及び実施例に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0128】
1、1A~1D ガス検出装置
21、21A 採取部
22、22A、22B 第2ガスセンサ
23、23A 弁
24、24A 希釈部
25 第2ポンプ(第2供給部)
26 サンプル貯留槽(貯留槽)
27 第1ファン
28 第2ファン
29 希釈ガス貯留槽
32 第1ポンプ(第1供給部)
33 センサチャンバ
34 第1ガスセンサ
50、50A~50D 制御部
51、51A~51B 動作制御部
52 第2検出部
53、53A 算出部
54、54A 弁制御部
55 第1検出部
72 第3ポンプ(第3供給部)
211 開口部
212 サンプル流路