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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】レーザ加工ヘッド及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20240905BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20240905BHJP
【FI】
B23K26/70
B23K26/064 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021069778
(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公開番号】P2022164347
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】高津 正人
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 隼
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-19888(JP,A)
【文献】特開2015-66590(JP,A)
【文献】特開2005-152988(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151177(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給されノズルから射出するレーザビームのビームプロファイルを変換する変換素子と、
前記変換素子を保持するホルダと、
前記ホルダが先端に連結されたシャフトと、
前記シャフトを前記変換素子が前記レーザビームの光束に対し進入及び退避するよう移動させるアクチュエータと、
前記シャフトの内部に形成され、冷媒となる流体を前記シャフトの根元側から前記ホルダの側に向け流動可能な第1流路、及び前記第1流路を流動した前記流体を前記シャフトの前記ホルダの側から前記根元側へと戻すように流動可能な第2流路と、
を備えレーザ加工ヘッド。
【請求項2】
前記シャフトは、前記ホルダの側が底部となる止まり穴と、前記止まり穴の内部に配置されたパイプとを有し
記パイプの内部の第1空間が前記第1流路前記第2流路うちの一方の流路であり、前記止まり穴の内面と前記パイプの外面との間の第2の空間が他方の流路である
求項1に記載のレーザ加工ヘッド。
【請求項3】
レーザビームを出力するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から供給された前記レーザビームのビームプロファイルを変換する変換素子を有するレーザ加工ヘッドと、
前記レーザ加工ヘッドに冷媒を供給する冷媒供給装置と、
を備え、
前記レーザ加工ヘッドは、
前記変換素子を保持するホルダと、
前記ホルダが先端に連結されたシャフトと、
前記シャフトを前記変換素子が前記レーザビームの光束に対し進入及び退避するよう移動させるアクチュエータと、
前記シャフトの内部に形成され、前記冷媒供給装置から供給された前記冷媒を前記シャフトの根元側から前記ホルダの側に向け流動可能な第1流路、及び前記第1流路を流動した前記冷媒を前記シャフトの前記ホルダの側から前記根元側へと戻すように流動可能な第2流路と、
を備えるレーザ加工装置。
【請求項4】
前記シャフトは、前記ホルダの側が底部となる止まり穴と、前記止まり穴の内部に配置されたパイプとを有し
記パイプの内部の第1空間が前記第1流路前記第2流路うちの一方の流路であり、前記止まり穴の内面と前記パイプの外面との間の第2空間が他方の流路である
求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記第1空間が前記第1流路であり、前記第2空間が前記第2流路である請求項4記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記冷媒は水である請求項3~5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工ヘッド及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、レーザビームのビームプロファイルを所定のビームプロファイルに変換する光学素子と、その光学素子を保持してレーザビームの光束に対し出入りさせる駆動部とを備えレーザ加工ヘッドが記載されている。特許文献1に記載されたレーザ加工ヘッドは、ビームプロファイルを変換する光学素子をレーザビームの光束に挿入することで、射出するレーザビームのビームプロファイルを、その光束に挿入された光学素子に応じたビームプロファイルに変換できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-116603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱レンズ効果は、レーザビームが物質に吸収されてそのエネルギが熱に変換されると、物質の温度が上昇して密度または屈折率が変化する現象である。レーザビームの光束に挿入された光学素子は、全てのレーザビーム透過することはないので、レーザビームの一部を吸収して変換された熱エネルギにより昇温する。昇温した光学素子から光学素子を保持する駆動部の保持部材に熱が伝達し、その保持部材は昇温して熱膨張する。
【0005】
光学素子が過度に昇温すると、熱レンズ効果によりレーザビームの焦点位置が無視できない程度に変動する。また、保持部材が過度に熱膨張することで、光学素子の光軸中心が大きくずれるなど無視できない不具合が生じ得る。これらの現象は、レーザ加工における加工精度及び加工の安定性の低下、という不具合につながる。
【0006】
そのため、レーザビームのビームプロファイルを変換可能でありながら熱レンズ効果または熱伝導から生じる加工の不具合が生じにくいレーザ加工ヘッド及びレーザ加工装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外部から供給されノズルから射出するレーザビームのビームプロファイルを変換する変換素子と、前記変換素子を保持するホルダと、前記ホルダが先端に連結されたシャフトと、前記シャフトを前記変換素子が前記レーザビームの光束に対して進入及び退避するよう移動させるアクチュエータと、前記シャフトの内部に形成され、冷媒となる流体を前記シャフトの根元側から前記ホルダの側に向けて流動可能な第1の流路、及び前記第1の流路を流動した前記流体を前記シャフトの前記ホルダの側から前記根元側へと戻すように流動可能な第2の流路とを備えるレーザ加工ヘッドを提供する。
【0008】
本発明によれば、変換素子を保持するホルダに連結したシャフトの内部に冷媒をホルダに向け流動させる第1流路とホルダ側から戻す第2流路とを有するので、第1流路及び第2流路に冷媒を流すことでシャフトホルダ及び変換素子を良好に冷却することができる。
【0009】
本発明は、レーザビームを出力するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から供給された前記レーザビームのビームプロファイルを変換する変換素子を有するレーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッドに冷媒を供給する冷媒供給装置とを備え、前記レーザ加工ヘッドは、前記変換素子を保持するホルダと、前記ホルダが先端に連結されたシャフトと、前記シャフトを前記変換素子が前記レーザビームの光束に対して進入及び退避するよう移動させるアクチュエータと、前記シャフトの内部に形成され、前記冷媒供給装置から供給された前記冷媒を前記シャフトの根元側から前記ホルダの側に向けて流動可能な第1の流路、及び前記第1の流路を流動した前記冷媒を前記シャフトの前記ホルダの側から前記根元側へと戻すように流動可能な第2の流路とを備えるレーザ加工装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、変換素子を保持するホルダに連結したシャフトの内部に冷媒をホルダに向け流動させる第1流路とホルダ側から戻す第2流路と、第1流路に冷媒を供給する冷媒供給装置とを有するので、第1流路及び第2流路に冷媒を流すことでシャフトホルダ及び変換素子を良好に冷却することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るレーザ加工ヘッド及びレーザ加工装置によれば、レーザビームのビームプロファイルを変換可能でありながら熱レンズ効果または熱伝導から生じる加工の不具合生じにくくすることができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の実施例であるレーザ加工装置91の全体構成を示す図である。
図2図2は、レーザ加工装置91が備えるレーザ加工ヘッド2の縦断面図である。
図3図3は、図2におけるS3-S3位置を前側から見た平面図であり、レーザ加工ヘッド2が備えるプロファイル変換装置5の第1の態様を示す図である。
図4図4は、プロファイル変換装置5の第2の態様を示す平面図である。
図5図5は、レーザ加工ヘッド2が備える冷却部RKを示す図であり、図5(a)は図3におけるS5a-S5a位置での断面図であり、図5(b)は図5(a)におけるS5b-S5b位置での断面図である。
図6図6は、プロファイル変換装置5が備える変換素子移動部6の熱伝達態様を示す第1の断面図である。
図7図7は、変換素子移動部6の熱伝達態様を示す第2の断面図である。
図8図8は、温度の時間変化を示すグラフであり、図8(a)は実施例のプロファイル変換装置5の場合の温度変化を、図8(b)は比較例における温度変化を示している。
図9図9は、冷却部RKの変形例1である冷却部RKAを示す図であり、図9(a)は部分断面図、図9(b)は図9(a)におけるS9b-S9b位置での断面図である。
図10図10は、冷却部RKの変形例2である冷却部RKBを示す図であり、図10(a)は部分断面図、図10(b)は図10(a)におけるS10b-S10b位置での断面図である。
図11図11は、冷却部RKの変形例3である冷却部RKCを示す図であり、図11(a)は部分断面図、図11(b)は図11(a)におけるS11b-S11b位置での断面図である。
図12図12は、冷却部RKの変形例4である冷却部RKDを示す図であ図12(a)は部分断面図、図12(b)は図12(a)におけるS12b-S12b位置での断面図である。
図13図13は、図12(a)におけるS13-S13位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例)
本発明の実施の形態に係るレーザ加工ヘッド及びレーザ加工装置を、実施例のレーザ加工ヘッド2及びそれを備えたレーザ加工装置91によって説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の実施例であるレーザ加工装置91の構成を示すブロック図である。レーザ加工装置91は、レーザ発振器1レーザ加工ヘッド2、NC(Numerical Control)装置3ヘッド駆動部4操作部31及び冷媒供給装置8を含んで構成されている。NC装置3は制御装置の一例である。
【0014】
レーザ発振器1は、例えばファイバレーザによって所定の波長帯のレーザビームLsを生成する。生成されたレーザビームLsは、ファイバケーブル1a及びカプラ1bを介してレーザ加工ヘッド2に供給される。レーザ発振器1は、ファイバレーザ発振器に限定されず、固体レーザ発振器、ダイレクトダイオードレーザ発振器などであってもよい。
【0015】
図2は、レーザ加工装置91が備えるレーザ加工ヘッド2の縦断面図である。上下前後の各方向を図2に矢印で規定する。左方は紙面手前側で右方は紙面奥側となる。
【0016】
図1及び図2に示ように、レーザ加工ヘッド2は、カプラ接続部23プロファイル変換装置5ハウジング21コリメートレンズ駆動部22集束レンズ駆動部24及び光学素子群7を有する。光学素子群7は、ビームプロファイル変換素子71コリメートレンズ72ベンドミラー73及び集束レンズ74を含んで構成される。以下、ビームプロファイル変換素子71変換素子71と称する。
【0017】
図2に示ように、カプラ接続部23は、一端側にカプラ1bが接続され他端側がプロファイル変換装置5に連結されている。プロファイル変換装置5は、変換素子移動部6を備えている。変換素子移動部6は、ベース部51アパーチャ52変換素子71を有する。変換素子71は、変換素子移動部6の動作によってレーザビームLsの光束に対し進入及び退避する。プロファイル変換装置5の詳細は後述する。
【0018】
ハウジング21は、管状の第1のハウジング212及び第2のハウジング213を有し、L字状に形成されている。第1のハウジング212は、一端側がプロファイル変換装置5のベース部51に連結している。第1のハウジング212は、コリメートレンズ72及びコリメートレンズ72を移動させるコリメートレンズ駆動部22を有する。第1のハウジング212の他端側の内部には45°の傾斜面212aが形成され、傾斜面212aにはベンドミラー73が取り付けられている。第2のハウジング213は、一端側が第1のハウジング212の他端部に直交するように連結されている。第2のハウジング213の他端となる先端にはノズルホルダ214が取り付けられ、ノズルホルダ214には、ノズル215が着脱自在に取り付けられている。
【0019】
レーザ加工ヘッド2の内部には、カプラ1bの側から、アパーチャ52変換素子71コリメートレンズ72ベンドミラー73及び集束レンズ74がこの順で配置されている。
【0020】
レーザ発振器1から供給されたレーザビームLsは、カプラ1bからプロファイル変換装置5のベース部51の内部に発散光として射出される。発散光として射出されたレーザビームLsは、アパーチャ52の開口部52aを通りコリメートレンズ72の調整位置によって平行光または発散角もしくは収束角を有する光とされる。角度調整されたレーザビームLsは、ベンドミラー73で反射して第2のハウジング213内に入り、集束レンズ74によって所定の焦点位置で集束するように、ノズル215から被加工部材であるワークWに向けて射出される。
【0021】
変換素子71は、アパーチャ52とコリメートレンズ72との間において、レーザビームLsの光束Ls1に対しビームプロファイルを変換する場合に挿入される。
【0022】
コリメートレンズ駆動部22は、モータ21gを含む駆動部22Kを有する。駆動部22Kは、モータ21gの回転動を直線移動に変換し、コリメートレンズ72を光束Ls1の光軸CL1方向に移動させる(矢印DR1参照)。
【0023】
集束レンズ74は、集束レンズ駆動部24の動作によって光軸CL1の方向に直線移動する(矢印DR2参照)。集束レンズ74の光軸CL1の方向の移動によって、ノズル215から外部に射出したレーザビームLsの焦点位置が調整される。
【0024】
変換素子移動部6は、レーザ発振器1から供給されたレーザビームLsのビームプロファイルを変換する光学素子である変換素子71を、レーザビームLsの光束Ls1に対し進入させた進入位置と待避した退避位置との間で進退させる。
【0025】
次に、変換素子移動部6を有するプロファイル変換装置5について、図2に加え図3図7も参照して詳述する。図3は、図2におけるS3-S3位置を前側から見た平面図であり、レーザ加工ヘッド2が備えるプロファイル変換装置5の第1態様を示す図である。図4は、プロファイル変換装置5の第2態様を示す平面図である。図5は、レーザ加工ヘッド2が備える冷却部RKを示す図であり図3におけるS5-S5位置での断面図である。図6は、プロファイル変換装置5が備える変換素子移動部6の熱伝達態様を示す第1の断面図である。図7は、変換素子移動部6の熱伝達態様を示す第2の断面図である。
【0026】
図3に示ように、プロファイル変換装置5は、ベース部51と変換素子移動部6とを有する。ベース部51は、アルミニウムなどの金属で形成され、左右に細長い形状で板状に形成された細板部511と、細板部511の長手方向先端部に連結された桝状のベース512とを有する。ここでベース部51の金属材質は熱伝導率の高い元素から構成されればよく、その点だけを考慮すれば、アルミニウム以外に、銀、銅、金、マグネシウム、亜鉛などを選択できる。ここでは、ベース部51の金属材質として、コスト安全性及び熱伝導率の効率からアルミニウムを選択している。ベース部51の体積が比較的小さい場合は、銅を選択してもよい。
【0027】
図2において、図2では図示されていない細板部511は、光軸CL1に対し紙面手前側である左方に延びるように配置されている。
【0028】
ベース512は、矩形の底部512aと、底部512aの各辺から矩形枠状に前方に向けて立設した枠壁部512bとを有する。ベース512は、底部512aにおいて、レーザビームLsの光軸CL1となる位置を中心とする概ね円形の貫通孔51a(図2参照)を有する。アパーチャ52は、貫通孔51aを前方側から覆うように取り付けられており、中央に所定面積の円形の絞り孔である開口部52aを有する。
【0029】
ベース512の貫通孔51aの内面におけるアパーチャ52よりもカプラ1b側には、エア噴出部53が形成されている。この例において、エア噴出部53は、左右方向に並んで設けられた3個の通気孔53a~53cと、先端が3分岐してそれぞれ通気孔53a~53cに並列にエアを供給するエア供給部53dとを含んで構成されている。エアは不図示の圧縮などの供給源から供給される除塵された乾燥空気である。通気孔53a~53cから噴出されたエアは、レーザ加工ヘッド2内を外気よりも高圧の状態で流れ光学素子群7などへの塵埃の付着を防止する。
【0030】
変換素子移動部6は、変換素子71ホルダ61及びシャフト62と、スライダ63を有するリニアアクチュエータであるアクチュエータ64とを含んで構成されている。変換素子71は石英からなる円形薄板状の部材であって、レーザビームLsのビームプロファイルを変換する。ホルダ61は変換素子71を、変換素子71の光軸CL71がレーザビームLsの光軸CL1と平行になるように保持する。ホルダ61は、平面視で概ね矩形となる金属部材である。
【0031】
図5に示ように、ホルダ61は変換素子71を収容する段付き孔61aを有する。段付き孔61aに変換素子71を挿入し、ばね部材611を介して押さえフランジ612をボルト613によってホルダ61にねじ固定することで、変換素子71はホルダ61に収容保持される。
【0032】
図3に示ように、シャフト62はステンレスなどの金属により左右に延びる棒状に形成され右端にホルダ61が連結されている。ベース512の枠壁部512bにおける左壁には貫通孔512cが形成されており、シャフト62は貫通孔512cを挿通し、ホルダ61は枠壁部512bで囲まれた内部空間に位置している。
【0033】
シャフト62の左端部はアクチュエータ64のスライダ63に連結されている。アクチュエータ64は、第1エア供給口641及び第2エア供給口642からのエアの供給状況に応じてスライダ63を左右に所定のストロークで移動させる(矢印DR3参照)。アクチュエータ64の動作はNC装置3によって制御される。スライダ63の移動によってスライダ63に連結されたホルダ61も左右に移動する。
【0034】
図3は、スライダ63の移動によってホルダ61が所定のストロークの最も右端に移動した進入位置にある状態を示し、図4は、ホルダ61が所定のストロークの最も左端に移動した退避位置にある状態を示している。すなわち、変換素子71は、アクチュエータ64の動作によって、レーザビームLsの光束Ls1に対し進入した進入位置と退避した退避位置との間を移動する。
【0035】
スライダ63には、外観上、流体を流入する流入口631と流体が流出する流出口632とが設けられている。流入口631には冷媒供給装置8からの冷媒供給路8aが接続されている。
【0036】
図3に示ように、ホルダ61が進入位置にあるとき、変換素子71の光軸CL71とレーザビームLsの光軸CL1とは一致する。ホルダ61が進入位置にあるとき、レーザビームLsの光束Ls1は、その断面の全体が変換素子71の有効領域内に含まれ、光束Ls1のビームプロファイルは変換素子71固有の変換特性に応じたビームプロファイルに変換される。図4に示ように、ホルダ61が退避位置にあるとき、変換素子71だけでなくホルダ61も、レーザビームLsの光束Ls1にかからない位置にある。
【0037】
図5に示ように、スライダ63の右端部には、ジョイント633が取り付けられ、ジョイント633にシャフト62の左端部が連結されている。ジョイント633は、連結通路6331及び連結通路6332を有する。
【0038】
変換素子移動部6は、ホルダ61及びシャフト62を冷却するための冷却部RKを有する。冷却部RKは、止まり穴62aパイプ621連結通路6331連結通路6332連結路631a連結路632a流入口631及び流出口632を含んで構成されている。流入口631と冷媒供給装置8との間は冷媒供給路8aによって接続されている。
【0039】
止まり穴62aは、シャフト62の左端面に開口し軸心に沿って直状に形成された非貫通の凹部である。止まり穴62aは、出口となる左端がジョイント633に形成されたL字状の連結通路6332に接続されている。止まり穴62aは、底部62a1がシャフト62の長手中央を超え、ホルダ61に近接した位置にある。連結通路6332は、流出口632に接続している。
【0040】
パイプ621は、左端がジョイント633に支持され、止まり穴62aの内部に止まり穴62aと平行に挿入された管状部材である。パイプ621は、止まり穴62aの内面に接触しないように配置されている。例えば、パイプ621の軸線CL21は、止まり穴62aの軸線CL2と一致している。パイプ621の貫通孔である孔621aの内部空間(第1空間)は、冷媒FL1が流動可能な第1流路FR1である。パイプ621の外面と止まり穴62aの内面との間の空間(第2空間)である空間Vは、冷媒FL1が流動可能な第2流路FR2である。
【0041】
パイプ621の外径及び孔621aの内径と、止まり穴62aの内径とは、例えば、軸線CL2に直交する断面において、第1流路FR1の断面積が、第流路FR2の断面積と概ね一致するように設定されるとよい。パイプ621の先端部621bは、止まり穴62aの底部62a1に達してなく、底部62a1とパイプ621との隙間として、第1流路FR1と第2流路FR2が接続する接続流路FR3が形成されている。すなわち、パイプ621の孔621aの右端となる第2開口部621dは、止まり穴62aの内部に開口している。
【0042】
パイプ621の先端部621bと、止まり穴62aにおける均一の内径を有する部位の先端位置(すなわち、止まり穴62aにおける径が順に小さくなっていく先端部を除く部位の先端位置)との軸線CL2方向の距離を隙間距離Daとする。隙間距離Daは、第1流路FR1から流出した流体などの冷媒FL1が接続流路FR3を通り第2流路FR2へとできるだけ淀みなく流れるように設定される。
【0043】
パイプ621の孔621aの左端となる第1開口部621cは、連結通路6331に接続している。連結通路6331は、流入口631に接続している。
【0044】
冷却部RKには、冷媒供給装置8から供給された冷媒FL1が流される。冷媒FL1は、レーザビームLsの通過に起因して昇温した変換素子71ホルダ61及びシャフト62の熱を吸収し外部に排出する。レーザビームLsに起因して昇温する少なくとも変換素子71ホルダ61及びシャフト62を含む部材群をまとめて昇温部材SBと称する。
【0045】
冷却部RK及び冷媒供給装置8による冷却作用によって昇温部材SBの温度上昇が抑制される。この冷却部RKなどの作用などについて具体的に説明する。
【0046】
冷媒供給装置8は、冷媒供給路8aを通して冷媒FL1を外部に供給する。冷媒FL1は例えば流体であり、具体的には水である。以下、冷媒FL1を水FL1として説明する。水FL1は例えば常温である。常温は、20℃以上35℃以下の温度である。すなわち、図5(a)に示ように、冷媒供給装置8は、水FL1を、冷媒供給路8aを介して流入口631に連続的に供給する。冷媒供給装置8による水FL1の供給動作は、NC装置3によって制御される。
【0047】
流入口631に供給された水FL1は、連結通路6331を経てパイプ621の第1開口部621cから孔621aに流入する。水FL1は、第1流路FR1内を流れて(矢印DR4参照)先端の第2開口部621dに向かう。水FL1は第2開口部621dから流出して止まり穴62a内の接続流路FR3に流入した後、流れ方向を反転し(矢印DR5参照)、パイプ621の外面と止まり穴62aの内面との間の環状の第流路FR2を流れる(矢印DR6参照)。水FL1は、連結通路6332を経て流出口632から外部へ排出冷媒である排出水FL2として排出される。
【0048】
図6に示ように、変換素子71進入位置にあるとき、レーザビームLsの光束Ls1は変換素子71を通過する。このとき、変換素子71は、レーザビームLsの一部を熱エネルギとして吸収して昇温する。変換素子71の温度上昇に伴い、その熱は変換素子71を保持しているホルダ61に熱伝導で放射状に移動し(矢印tm11参照)、ホルダ61の温度も上昇する。ホルダ61に移動した熱は、ホルダ61に連結されているシャフト62に熱伝達で移動する(矢印tm12参照)。
【0049】
シャフト62の内部には止まり穴62aが形成され、止まり穴62aの内部に水FL1が流れている。そのため、シャフト62の熱は、止まり穴62aの内面から水FL1に熱伝達で移動する(矢印tm13参照)。これにより水FL1の温度は上昇しシャフト62の温度上昇は抑制される。
【0050】
ホルダ61及びシャフト62の温度上昇は、レーザビームLsが変換素子71を通過することで生じる以外に、次の事象でも生じる。例えば、レーザ加工ヘッド2における変換素子71よりも下流側の内面での拡散反射による迷光tm2図7参照)がホルダ61及びシャフト62に当たることで温上昇することがある。また、変換素子71の入射面71aと、その入射面71aに対向するアパーチャ52との間で繰り返し反射した迷光tm3図7参照)がホルダ61及びシャフト62に当たることで温上昇することがある。
【0051】
迷光tm2及び迷光tm3によって温度上昇したホルダ61及びシャフト62の熱は第2流路FR2を流れる水FL1に伝達する。そのため、水FL1の温度上昇しホルダ61及びシャフト62の温度上昇は抑制される。ただし、これらの事象で昇温部材SBに供給される熱量は比較的小さく、昇温部材SBの温度上昇の主要因は、変換素子71におけるレーザビームLsの通過による。従って、レーザビームLsのワークWへの通常の照射状態で、昇温部材SBの温度上昇は、変換素子71が最も大きく、次いでホルダ61シャフト62の順となる。
【0052】
このように、冷却部RKを有するレーザ加工ヘッド2は、昇温部材SBの温度上昇が良好に抑制される。
【0053】
図8は、温度の時間変化を示すグラフであり、図8(a)は実施例のプロファイル変換装置5を用いた場合の温度変化を、図8(b)は比較例における温度変化を示している。すなわち、図8(a)は、冷却部RKを有するプロファイル変換装置5において、変換素子71を進入位置とし、レーザ発振器1からレーザビームLsを出力してからのホルダ61及び外気の温度上昇の時間変化を示したグラフである。図8(b)は、冷却部RKを有していないこと以外同じ構成のプロファイル変換装置において、変換素子71を進入位置し、レーザ発振器1からレーザビームLsを出力してからのホルダ61及び外気の温度上昇の時間変化を示したグラフである。各グラフにおいて経過時間は20分までである。
【0054】
図8(a)に示ように、冷却部RKを備えている場合、経過時間0分で約23℃の外気及びホルダ61は、ホルダ61が経過時間10分頃まで昇温し、経過時間10分以降は、飽和温度約33℃で維持されている。図8(b)に示ように、冷却部RKを備えていない場合、経過時間0分で23℃の外気及びホルダ61は、ホルダ61が時間経過に伴い昇温し、経過時間20分で約45℃に達するも飽和に至らず上昇が継続している。
【0055】
図8(a)図8(b)とを比較すれば明らかなように、冷却部RKを備えることで、変換素子71及びホルダ61などの昇温部材SBの温度上昇は良好に抑制される。これにより、レーザ加工ヘッド2は変換素子71の熱レンズ効果わずかとなり、レーザビームLsの焦点位置の変動などは実用上支障のない程度に抑制でき、不具合は生じない。また、ホルダ61及びシャフト62の熱膨張もわずかとなり、変換素子71の光軸中心のずれは、実用上支障のない程度に抑制でき、不具合は生じない。そのため、冷却部RKを備えレーザ加工ヘッド2及びレーザ加工装置91は、レーザビームLsのビームプロファイルを変換可能でありながら加工の不具合が生じにくい。
【0056】
冷却部RKは、流入口631から流入する昇温部材SBからの熱が伝達される前の低い温度の水FL1を、パイプ621の第1流路FR1を通して、最も温度上昇の大きい変換素子71に近いシャフト62の先端近傍で止まり穴62a内に流入させるようになっている。従って、水FL1と最初に接触する昇温部材SBであるシャフト62との温度差は大きい。そのため、シャフト62から水FL1へ伝達する熱量は多く、高効率で昇温部材SBの温度上昇を抑制できる。
【0057】
水FL1の流れる向きは逆であってもよい。すなわち、水FL1を、流出口632から第2流路FR2に注入して第2流路FR2をホルダ61に向け流動させる。第2流路FR2を流れた水FL1は、接続流路FR3を通ってパイプ621の内部空間である第1流路FR1をシャフト62の根元側に向け流れ、流入口631から排出する。この流動方向の場合、水FL1は、第2流路FR2をホルダ61に向け流れるに従って、シャフト62から熱が移動して昇温し、ホルダ61近傍に達したときには、温度は注入時点よりも上昇している。そのため、ホルダ61よりもシャフト62の熱をより効率よく吸収する場合に有効である。
【0058】
このように、水FL1の流動方向に応じて熱伝導の態様が変わるので、流動方向を適宜反転させることにより、昇温部材SBの冷却態様の偏りを是正することができる。
【0059】
上述のように、パイプ621の内径及び外径と、止まり穴62aの内径とを軸線CL2に直交する断面において、第1流路FR1の断面積と第2流路FR2の断面積とを概ね一致させるとよい。これにより、第1流路FR1と第2流路FR2とを流れる水FL1の流量及び流速を概ね一定にでき淀みが生じにくくなる。そのため、シャフト62から水FL1への熱伝達が高効率で行われ、昇温部材SBの温度上昇をより良好に抑制できる。
【0060】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0061】
変形例1
図9に示すように、変換素子移動部6は、冷却部RKの替わりに冷却部RKAを備える変形例1の変換素子移動部6Aであってもよい。図9は、冷却部RKの変形例1である冷却部RKAを示す図であり、図9(a)は部分断面図、図9(b)は図9(a)におけるS9b-S9b位置での断面図である。
【0062】
変換素子移動部6Aはシャフト62の替わりとなるシャフト62Aを有し、シャフト62Aは、止まり穴62Aa及び仕切り壁6A1を有する。仕切り壁6A1は、止まり穴62Aa内の底部近傍を除く空間を二分するように直径方向に配置された薄板状部材である。止まり穴62Aaの内部空間は、仕切り壁6A1によって第1流路FR1と第2流路FR2とに分割され、仕切り壁6A1が達していない底部近傍の空間は、第1流路FR1と第2流路FR2とを接続する接続流路FR3となる。
【0063】
この構成において、第1流路FR1に常温の水FL1を注入すると、水FL1は接続流路FR3で方向転換し、第2流路FR2を通って排出水FL2として流出口632(図9では不図示)から外部に流出する。これにより、水FL1は、第1流路FR1接続流路FR3及び第2流路FR2を流れる間に、止まり穴62Aaの内面から熱が伝達して昇温し、替わりに昇温部材SBである変換素子71ホルダ61及びシャフト62Aは温度上昇が抑制される。
【0064】
変形例1の冷却部RKAは、シャフト62Aが比較的細く、止まり穴62Aaの内部にパイプを挿入できない場合にも、容易に第1流路FR1第2流路FR2及び接続流路FR3を形成できる。
【0065】
変形例2
図10に示すように、変換素子移動部6は、冷却部RKの替わりに冷却部RKBを備える変形例2の変換素子移動部6Bであってもよい。図10は、冷却部RKの変形例2である冷却部RKBを示す図であり、図10(a)は部分断面図、図10(b)は図10(a)におけるS10b-S10b位置での断面図である。
【0066】
変換素子移動部6Bは、ホルダ61及びシャフト62それぞれの替わりとなるホルダ61B及びシャフト62Bと、パイプ状の管路6B2とを有する。シャフト62Bは止まり穴ではない貫通孔62Baを有する。管路6B2は、貫通孔62Ba内を通り、ホルダ61Bの変換素子71を径方向外側で円弧状に囲み、再び貫通孔62Ba内を通るように配設されている。ホルダ61B内に通された管路6B2は、押さえカバー6B1によって所定位置に押さえられて収容される。
【0067】
この構成において、貫通孔62Ba内の一方の管路6B2に常温の水FL1を注入する。水FL1は、管路6B2内をホルダ61Bに向け流れ(破線矢印DR7参照)、ホルダ61Bにおける変換素子71の径方向外側を円弧状に流れ(破線矢印DR8参照)、再び貫通孔62Ba内を逆方向に流れ(破線矢印DR9参照)、排出水FL2として流出口632(図10では不図示)から外部に流出する。この構成において、水FL1は、シャフト62Bのみならず、ホルダ61Bからも熱が伝達して昇温する。これにより、昇温部材SBである変換素子71ホルダ61B及びシャフト62Bの温度上昇が抑制される。
【0068】
変形例2の冷却部RKBは、水FL1に対し、温度上昇量が大きい変換素子71の近傍で熱が伝達されるので、昇温部材SBの温度上昇をより良好に抑制できる。
【0069】
変形例3
図11に示すように、変換素子移動部6は、冷却部RKの替わりに冷却部RKCを備える変形例3の変換素子移動部6Cであってもよい。図11は、冷却部RKの変形例3である冷却部RKCを示す図であり、図11(a)は部分断面図、図11(b)は図11(a)におけるS11b-S11b位置での断面図である。
【0070】
変換素子移動部6Cは、シャフト62の替わりとなるシャフト62Cを有する。シャフト62Cは、半円柱状の半シャフト部62C1及び半シャフト部62C2が合わされて円柱状に形成されている。半シャフト部62C1及び62C2は、図11(a)または図11(b)に示ように、それぞれ横断面が半円形状で長手方向にU字状となるよう抉られた凹部6C1及び6C2を有する。半シャフト部62C1と半シャフト部62C2とが組み合わされたシャフト62Cには、凹部6C1と凹部6C2とが対向しホルダ61側で折り返す、横断面形状が円形かつ長手方向にU字状である流路FRCが形成される。
【0071】
この構成において、流路FRCに常温の水FL1を注入すると、水FL1はホルダ61の近くで折り返し、排出水FL2として流出口632(図11では不図示)から外部に流出する。これにより、水FL1は、流路FRCを流れる間に、流路FRCの内面である凹部6C1及び凹部6C2の内面から熱が伝達して昇温し、替わりに昇温部材SBである変換素子71ホルダ61及びシャフト62Cの温度上昇が抑制される。
【0072】
変形例3の変換素子移動部6Cは、冷却部RKCをパイプ状部材を用いることなく形成でき、比較的安価となる。
【0073】
(変形例4)
図12に示すように、変換素子移動部6は、冷却部RKの替わりに冷却部RKDを備える変形例4の変換素子移動部6Dであってもよい。図12は、冷却部RKの変形例4である冷却部RKDを示す図であって、図12(a)は部分断面図、図12(b)は図12(a)におけるS12b-S12b位置での断面図である。図13は、図12(a)におけるS13-S13位置での断面図である。
【0074】
変換素子移動部6Dは、ホルダ61及びシャフト62それぞれの替わりとなるホルダ61D押さえプレート61D1及びシャフト62Dを有する。ホルダ61Dは、変換素子71を収容する円形の凹部である収容部61Daを有する。押さえプレート61D1は、変換素子71の周縁部を除く範囲を露出する円形の開口部61Dbを有する薄板である。押さえプレート61D1は、ホルダ61Dよりも熱伝導率の高い金属の薄板で形成される。例えば、ホルダ61Dをアルミニウムで形成し、押さえプレート61D1銅板から形成する。
【0075】
図12及び図13に示ように、シャフト62Dの先端から鍔部62Ddが延出している。押さえプレート61D1は、ホルダ61Dに対し、ボルトN1によって鍔部62Ddを共締めして固定される。この構成によって、変換素子移動部6Dの昇温した変換素子71の熱の多くは、押さえプレート61D1を経由してシャフト62Dに伝達される。これにより、変換素子71及びホルダ61Dの温度上昇は、良好に抑制される。
【0076】
一方、シャフト62Dは、ホルダ61Dの側が底となる止まり穴62Dcと、止まり穴62Dcの内部に挿入された第1パイプ6D2及び第2パイプ6D3を有する。第パイプ6D3は、第1パイプ6D2よりも長く、第1パイプ6D2の孔内に挿通され、先端が第1パイプ6D2からホルダ61D側に突出している。
【0077】
止まり穴62Dcは出口側が第1の内径を有する第1穴部62Daとされ、奥側が第1の内径よりも小さい(細い)第2の内径を有する第2穴部62Dbとされている。第パイプ6D2は、第1穴部62Daよりも短い長さで第1穴部62Da内に配置されている。第2パイプ6D3は、第1パイプ6D2の先端からホルダ61D側に延出し、延出した部分は止まり穴62Dcの底部よりも出口側の位置を先端として第2穴部62Db内に配置されている。第2パイプ6D3は、出口側において第1パイプ6D2に連結片6D4で連結支持されている。
【0078】
この構成において、水FL1を、第1パイプ6D2及び第2パイプ6D3の内部にホルダ61Dとは反対側の端部から注入する。第パイプ6D3に注入された水FL1は、第2パイプ6D3内を流れ(矢印DR10参照)、止まり穴62Dcの底部に近い位置で止まり穴62Dc内に流出し(矢印DR11参照)、流れ方向が反転して戻り流となる。第パイプ6D2に注入された水FL1は、第1パイプ6D2内を流れ、止まり穴62Dcの第1穴部62Daと第2穴部62Dbとの境界近くで止まり穴62Dc内に流出する(矢印DR12参照)。第パイプ6D2及び第2パイプ6D3から止まり穴62Dc内に流出した水FL1は、合流した戻り流となり、排出水FL2として流出口632図12dは不図示から外部に流出する。
【0079】
冷却部RKDは、水FL1を止まり穴62Dc内へ供給する流路を、上述のように複数(この例で二つ)とし、水FL1が各流路から止まり穴62Dc内に流出する位置を軸線方向で異なる位置としている。そのため、シャフト62Dから水FL1へと、を、長手方向における偏りを少なくしてできるだけ均一に伝達させることができる。これにより、シャフト62D全体が同じ温度減少勾配で良好に冷却されるので、ホルダ61D及びホルダ61Dが保持する変換素子71の温度上昇を良好に抑制することができる。
【0080】
上述の変形例1~4は、それぞれ冷却部RKA~RKDを有することによって、レーザビームLsのビームプロファイルを変換素子71で変換可能でありながら、昇温部材SBの温度上昇を良好に抑制できる。そのため、変換素子71の昇温による熱レンズ効果はわずかとなり、レーザビームLsの焦点位置の変動などは実用上支障のない程度に抑制でき不具合は生じない。また、ホルダ61A~61D及びシャフト62A~62Dの熱膨張もわずかとなり、変換素子71の光軸の位置ずれは、実用上支障のない程度に抑制でき、不具合は生じない。
【0081】
上述のように、実施例及び変形例1~4の冷却部RKまたはRKA~RKDを備えたレーザ加工ヘッド2及びレーザ加工装置91は、レーザビームLsのビームプロファイルを変更可能でありながら加工の不具合が生じにくい。
【0082】
上述において、冷媒FL1を水とした例を説明したが、冷媒FL1は水に限定されるものではない。また、冷媒FL1は流体でなく気体であってもよい。冷媒FL1に水を用いると、安価に適用でき扱いが容易である。上述の実施例及び変形例1~4は、可能な範囲で自由に組み合わせてよい。
【符号の説明】
【0083】
1 レーザ発振器
2 レーザ加工ヘッド
3 NC装置
4 ヘッド駆動部
5 プロファイル変換装置
6,6A,6B,6C,6D 変換素子移動部
7 光学素子群
8 冷媒供給装置
61,61B,61D ホルダ
62,62A,62B,62C,62D シャフト
62a,62Aa,62Dc 止まり穴
64 アクチュエータ
71 ビームプロファイル変換素子(変換素子)
91 レーザ加工装置
215 ノズル
621 パイプ
FL1 冷媒(水)
FL2 排出水
FR1 第1の流路
FR2 第2の流路
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13