IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社の特許一覧

特許7550142関節リウマチ治療のためのバイオマーカー
<>
  • 特許-関節リウマチ治療のためのバイオマーカー 図1
  • 特許-関節リウマチ治療のためのバイオマーカー 図2
  • 特許-関節リウマチ治療のためのバイオマーカー 図3
  • 特許-関節リウマチ治療のためのバイオマーカー 図4
  • 特許-関節リウマチ治療のためのバイオマーカー 図5
  • 特許-関節リウマチ治療のためのバイオマーカー 図6
  • 特許-関節リウマチ治療のためのバイオマーカー 図7
  • 特許-関節リウマチ治療のためのバイオマーカー 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】関節リウマチ治療のためのバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20240905BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240905BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20240905BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240905BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240905BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
G01N33/53 K ZNA
A61K45/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61K39/395 N
C12N15/62 Z
C07K16/24
C07K19/00
C12Q1/06
C12N15/13
C12P21/08
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021516097
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2020017016
(87)【国際公開番号】W WO2020218232
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2019081452
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】安田 信之
(72)【発明者】
【氏名】山田 知広
(72)【発明者】
【氏名】田胡 文利
(72)【発明者】
【氏名】北条 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】今井 俊夫
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193541(JP,A)
【文献】Chara et al.,Monocyte populations as markers of response to adalimumab plus MTX in rheumatoid arthritis,Arthritis Research & Therapy, 14:R175,2012年,http://arthritis-research.com/content/14/4/R175
【文献】Imai and Yasuda,Therapeutic intervention of inflammatory/immune diseases by inhibition of the fractalkine (CX3CL1)-CX3CR1 pathway,Inflammation and Regeneration,36:9,2016年,DOI 10.1186/s41232-016-0017-2
【文献】自社創製の抗フラクタルカイン抗体 E6011 について、臨床I/II相試験結果を発表―関節リウマチおよびクローン病に対する安全性と忍容性および臨床活性を示唆する結果を取得―,News Release エーザイ株式会社,2016年06月13日,https://www.eisai.co.jp/news/news201640.html
【文献】YANO, R. et al.,Recruitment of CD16+ monocytes into synovial tissues is mediated by fractalkine and CX3CR1 in rheuma,Acta Medica Okayama,2007年04月,Vol.61/No.2,pp.89-98
【文献】TANAKA, Y. et al.,Efficacy and Safety of E6011, an Anti-Fractalkine Monoclonal Antibody, in MTX-IR Patients with Rheum,Arthritis & Rheumatology,2019年10月,Vol.71/No.Suppl. 10,pp.0932
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00-33/98
A61K 45/00
A61P 19/02
A61P 29/00
A61K 39/395
C12N 15/62
C07K 16/24
C07K 19/00
C12Q 1/06
C12N 15/13
C12P 21/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節リウマチ対象において、フラクタルカイン(FKN)-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による治療効果を予測するための方法であって、
前記薬剤の投与開始前に前記対象から取得した生体サンプルにおけるCD16+単球の測定値に基づいて、前記対象における前記薬剤による治療効果を予測することを含
前記予測は、前記CD16+単球の測定値を、対照と比較することを含み、
さらに前記測定値が、対照以上であることが、前記対象が前記薬剤に奏効する可能性が高いことを示す、
前記方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記生体サンプルは、血液または滑液である、
方法。
【請求項3】
請求項に記載の方法であって、
前記生体サンプルは、血液である、
方法。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の方法であって、
前記CD16+単球の測定値は、全単球中のCD16+単球の割合で算出される数値である、
方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の方法であって、
前記薬剤は、抗ヒトFKN抗体またはその抗原結合断片である、
方法。
【請求項6】
請求項に記載の方法であって、
抗ヒトFKN抗体は、完全ヒト型、ヒト化またはキメラ抗体である、
方法。
【請求項7】
請求項またはに記載の方法であって、
前記抗ヒトFKN抗体は、
(a)配列番号5(NYYIH)のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号6(WIYPGDGSPKFNERFKG)のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号7(GPTDGDYFDY)のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号8(RASGNIHNFLA)のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号9(NEKTLAD)のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および
(f)配列番号10(QQFWSTPYT)のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む、
方法。
【請求項8】
請求項のいずれか1項に記載の方法であって、
前記抗ヒトFKN抗体の重鎖可変領域は、配列番号3(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含み、
軽鎖可変領域は、配列番号4(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む、
方法。
【請求項9】
請求項のいずれか1項に記載の方法であって、
前記抗ヒトFKN抗体は、ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含み、
前記定常領域のFc領域は、V234AおよびG237Aの変異を含む、
方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の方法であって、
前記関節リウマチ対象は、既存治療に対する効果が不十分な関節リウマチ患者である、
方法。
【請求項11】
FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤を有効成分とする関節リウマチ治療剤であって、
前記薬剤の投与開始前に関節リウマチ対象から取得した生体サンプルにおけるCD16+単球の測定値に基づいて、前記薬剤が奏効する可能性が高いと予測される対象を特定する工程、および
前記特定された対象に、治療上有効な量の前記薬剤を投与する工程
を含む、関節リウマチの治療方法において使用することを特徴とする、
関節リウマチ治療剤。
【請求項12】
請求項1に記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記対象を特定する工程は、前記CD16+単球の測定値が、対照以上である対象を特定することを含む、
関節リウマチ治療剤。
【請求項13】
FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤を有効成分とする関節リウマチ治療剤であって、
前記薬剤の投与開始前に関節リウマチ対象から取得した生体サンプルにおけるCD16+単球の測定値が対照以上である対象に、治療上有効な量の前記薬剤を投与する工程を含む、関節リウマチの治療方法において使用することを特徴とする、
関節リウマチ治療剤。
【請求項14】
請求項1~1のいずれか1項に記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記生体サンプルは、血液または滑液である、
関節リウマチ治療剤。
【請求項15】
請求項1に記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記生体サンプルは、血液である、
関節リウマチ治療剤。
【請求項16】
請求項1~1のいずれか1項に記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記CD16+単球の測定値は、全単球中のCD16+単球の割合で算出される数値である、
関節リウマチ治療剤。
【請求項17】
請求項1~1のいずれか1項に記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記薬剤は、抗ヒトFKN抗体またはその抗原結合断片である、
関節リウマチ治療剤。
【請求項18】
請求項1に記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記抗ヒトFKN抗体は、完全ヒト型、ヒト化またはキメラ抗体である、
関節リウマチ治療剤。
【請求項19】
請求項1または18に記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記抗ヒトFKN抗体は、
(a)配列番号5(NYYIH)のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号6(WIYPGDGSPKFNERFKG)のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号7(GPTDGDYFDY)のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号8(RASGNIHNFLA)のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号9(NEKTLAD)のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および
(f)配列番号10(QQFWSTPYT)のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む、
関節リウマチ治療剤。
【請求項20】
請求項119のいずれか1項に記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記抗ヒトFKN抗体の重鎖可変領域は、配列番号3(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含み、
軽鎖可変領域は、配列番号4(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む、
関節リウマチ治療剤。
【請求項21】
請求項1~2のいずれか1項に記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記抗ヒトFKN抗体は、ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含み、
前記定常領域のFc領域は、V234AおよびG237Aの変異を含む、
関節リウマチ治療剤。
【請求項22】
請求項1~2のいずれか1項に記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記関節リウマチ対象は、既存治療に対する治療効果が不十分な関節リウマチ患者である、
関節リウマチ治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチの治療剤、具体的にはフラクタルカイン(FKN)-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤、による治療効果を関節リウマチ対象において予測する方法、ならびに、前記方法によって前記薬剤が奏功する可能性が高いことが明らかになった対象のための関節リウマチ治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フラクタルカイン(「FKN」とも称する)は、LPS、TNF-α、IL-1などの炎症刺激により血管内皮細胞の表面に発現する膜結合型ケモカインである。FKN受容体のCX3CR1を発現する細胞は、セレクチンまたはインテグリンの介在なしに膜結合型FKNと結合し、強力な細胞接着を引き起こす。また、膜結合型FKNからシェディングされた分泌型FKNは、CX3CR1を有するNK細胞、T細胞、単球に対して細胞遊走活性を示す。
FKNの発現は、炎症誘発性サイトカインによって血管内皮細胞の表面上で誘導される。関節リウマチ(「RA」とも称する)を有する患者において、FKNの発現上昇ならびにCX3CR1+細胞傷害性エフェクターリンパ球およびマクロファージの蓄積が報告されている。
【0003】
これまでに、慢性関節リウマチのモデルとして知られるコラーゲン誘導ミューリン関節炎モデル(CIA)において、FKN阻害による治療効果が報告されている(非特許文献1)。CIAにおける結果は、抗フラクタルカイン抗体による、関節炎の臨床スコアの有意な低減、関節炎の発生率の有意な減少、さらに、滑膜中の炎症細胞および骨侵食の有意な減少を示している。また、FKNとCX3CR1との相互作用を阻害する抗フラクタルカイン抗体が、関節リウマチを含む炎症性疾患を治療し得ることが示唆されている(特許文献1)。
かかる抗体としては、複数のマウス抗ヒトフラクタルカイン(hFKN)モノクローナル抗体(クローン1F3-1、3A5-2、1F3、1G1、2B2、3D5、3H7、6D1、7F6、および5H7-6)が開示されており、特にクローン3A5-2は、hFKNに対する高い中和活性、結合親和性および種間交差反応性のために、ヒト化され、H3-2L4と命名され(特許文献2、参照によりその全体が組み入れられる)、関節リウマチのヒト対象での有効性が示されている(特許文献3、参照によりその全体が組み入れられる)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】J Immunol.2004;173:7010-7016
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2006/046739
【文献】WO2011/052799
【文献】特開2017-193541号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当該技術分野でよく知られているとおり、ある疾患に対する効能に優れることが知られる薬剤でさえ、奏功が認められるか否かは投与対象に左右されるのであり、奏功しない対象は、結果として、副作用のリスクおよび経済的負担だけを負うことになる。したがって、治療対象ごとに、ある薬剤が奏功する可能性が高いか否かをあらかじめ判定できることは、当該薬剤の投与を開始するか否かの判断を容易にし、奏功しない可能性が高い治療対象が、副作用や経済的負担のリスクを事前に回避できるという点で非常に有用である。
【0007】
本発明は、FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による関節リウマチの治療効果を関節リウマチ対象において予測する方法、および前記方法を利用した、新規かつより効果的な関節リウマチ治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の実施形態を包含する。
(1)関節リウマチ対象において、フラクタルカイン(FKN)-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による治療効果を予測するための方法であって、
前記対象から前記薬剤の投与開始前に取得した生体サンプルにおけるCD16+単球の測定値に基づいて、前記対象における前記薬剤による治療効果を予測することを含む、
前記方法。
【0009】
(2)(1)に記載の方法であって、
前記予測は、前記CD16+単球の測定値を、対照と比較することを含む、
方法。
【0010】
(3)(2)に記載の方法であって、
前記CD16+単球の測定値が、対照以上であることが、前記対象が前記薬剤に奏効する可能性が高いことを示す、
方法。
【0011】
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の方法であって、
前記生体サンプルは、血液または滑液である、
方法。
【0012】
(5)(4)に記載の方法であって、
前記生体サンプルは、血液である、
方法。
【0013】
(6)(1)~(5)のいずれかに記載の方法であって、
前記CD16+単球の測定値は、全単球中のCD16+単球の割合で算出される数値である、
方法。
【0014】
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の方法であって、
前記薬剤は、抗ヒトFKN抗体またはその抗体結合断片である、
方法。
【0015】
(8)(7)に記載の方法であって、
抗ヒトFKN抗体は、完全ヒト型、ヒト化またはキメラ抗体である、
方法。
【0016】
(9)(7)または(8)に記載の方法であって、
前記抗ヒトFKN抗体は、
(a)配列番号5(NYYIH)のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号6(WIYPGDGSPKFNERFKG)のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号7(GPTDGDYFDY)のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号8(RASGNIHNFLA)のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号9(NEKTLAD)のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および
(f)配列番号10(QQFWSTPYT)のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む、
方法。
【0017】
(10)(7)~(9)のいずれかに記載の方法であって、
前記抗ヒトFKN抗体の重鎖可変領域は、配列番号3(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含み、
軽鎖可変領域は、配列番号4(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む、
方法。
【0018】
(11)(7)~(10)のいずれかに記載の方法であって、
前記抗ヒトFKN抗体は、ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含み、
前記定常領域のFc領域は、V234AおよびG237Aの変異を含む、
方法。
【0019】
(12)(1)~(11)のいずれかに記載の方法であって、
前記関節リウマチ対象は、既存治療に対する効果が不十分な関節リウマチ患者である、方法。
【0020】
(13)FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤を有効成分とする関節リウマチ治療剤であって、
前記薬剤の投与開始前に関節リウマチ対象から取得した生体サンプルにおけるCD16+単球の測定値に基づいて、前記薬剤が奏効する可能性が高いと予測される対象を特定する工程、および
前記特定された対象に、治療上有効な量の前記薬剤を投与する工程
を含む、関節リウマチの治療方法において使用することを特徴とする、
関節リウマチ治療剤。
【0021】
(14)(13)に記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記対象を特定する工程は、前記CD16+単球の測定値が、対照以上である対象を特定することを含む、
関節リウマチ治療剤。
【0022】
(15)FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤を有効成分とする関節リウマチ治療剤であって、
前記薬剤の投与開始前に関節リウマチ対象から取得した生体サンプルにおけるCD16+単球の測定値が対照以上である対象に、治療上有効な量の前記薬剤を投与する工程を含む、関節リウマチの治療方法において使用することを特徴とする、
関節リウマチ治療剤。
【0023】
(16)(13)~(15)のいずれかに記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記生体サンプルは、血液または滑液である、
関節リウマチ治療剤。
【0024】
(17)(16)に記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記生体サンプルは、血液である、
関節リウマチ治療剤。
【0025】
(18)(13)~(17)のいずれかに記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記CD16+単球の測定値は、全単球中のCD16+単球の割合で算出される数値である、
関節リウマチ治療剤。
【0026】
(19)(13)~(18)のいずれかに記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記薬剤は、抗ヒトFKN抗体またはその抗体結合断片である、
関節リウマチ治療剤。
【0027】
(20)(19)に記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記抗ヒトFKN抗体は、完全ヒト型、ヒト化またはキメラ抗体である、
関節リウマチ治療剤。
【0028】
(21)(19)または(20)に記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記抗ヒトFKN抗体は、
(a)配列番号5(NYYIH)のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号6(WIYPGDGSPKFNERFKG)のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号7(GPTDGDYFDY)のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号8(RASGNIHNFLA)のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号9(NEKTLAD)のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および
(f)配列番号10(QQFWSTPYT)のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む、
関節リウマチ治療剤。
【0029】
(22)(19)~(21)のいずれかに記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記抗ヒトFKN抗体の重鎖可変領域は、配列番号3(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含み、
軽鎖可変領域は、配列番号4(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む、
関節リウマチ治療剤。
【0030】
(23)(19)~(22)のいずれかに記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記抗ヒトFKN抗体は、ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含み、
前記定常領域のFc領域は、V234AおよびG237Aの変異を含む、
関節リウマチ治療剤。
【0031】
(24)(13)~(23)のいずれかに記載の関節リウマチ治療剤であって、
前記関節リウマチ対象は、既存に対する治療効果が不十分な関節リウマチ患者である、関節リウマチ治療剤。
【0032】
(25)関節リウマチの治療方法であって、
関節リウマチ対象から取得した生体サンプルにおけるCD16+単球の測定値に基づいて、FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤が奏効する可能性が高いと予測される対象を特定する工程、および
前記特定された対象に、治療上有効な量の前記薬剤を投与する工程
を含む、
関節リウマチの治療方法。
【0033】
(26)(25)に記載の関節リウマチの治療方法であって、
前記対象を特定する工程は、対照以上である対象を特定することを含む、
関節リウマチの治療方法。
【0034】
(27)関節リウマチの治療方法であって、
FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤の投与開始前の関節リウマチ対象から取得した生体サンプルにおけるCD16+単球の測定値が対照以上である対象に、治療上有効な量の前記薬剤を投与する工程
を含む、
関節リウマチの治療方法。
【0035】
(28)(25)~(27)のいずれかに記載の関節リウマチの治療方法であって、
前記生体サンプルは、血液または滑液である、
関節リウマチの治療方法。
【0036】
(29)(28)に記載の関節リウマチの治療方法であって、
前記生体サンプルは、血液である、
関節リウマチの治療方法。
【0037】
(30)(25)~(29)のいずれかに記載の関節リウマチの治療方法であって、
前記CD16+単球の測定値は、全単球中のCD16+単球の割合で算出される数値である、
関節リウマチの治療方法。
【0038】
(31)(25)~(30)のいずれかに記載の関節リウマチの治療方法であって、
前記薬剤は、抗ヒトFKN抗体またはその抗体結合断片である、
関節リウマチの治療方法。
【0039】
(32)(31)に記載の関節リウマチの治療方法であって、
前記抗ヒトFKN抗体は、完全ヒト型、ヒト化またはキメラ抗体である、
関節リウマチの治療方法。
【0040】
(33)(31)または(32)に記載の関節リウマチの治療方法であって、
前記抗ヒトFKN抗体は、
(a)配列番号5(NYYIH)のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号6(WIYPGDGSPKFNERFKG)のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号7(GPTDGDYFDY)のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号8(RASGNIHNFLA)のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号9(NEKTLAD)のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および
(f)配列番号10(QQFWSTPYT)のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む、
関節リウマチの治療方法。
【0041】
(34)(31)~(33)のいずれか1項に記載の関節リウマチの治療方法であって、
前記抗ヒトFKN抗体の重鎖可変領域は、配列番号3(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含み、
軽鎖可変領域は、配列番号4(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む、
関節リウマチの治療方法。
【0042】
(35)(31)~(34)のいずれかに記載の関節リウマチの治療方法であって、
前記抗ヒトFKN抗体は、ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含み、
前記定常領域のFc領域は、V234AおよびG237Aの変異を含む、
関節リウマチの治療方法。
【0043】
(36)(25)~(35)のいずれかに記載の関節リウマチの治療方法であって、
前記関節リウマチ対象は、既存治療治療に対する効果が不十分な関節リウマチ患者である、
関節リウマチの治療方法。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による関節リウマチの治療効果を関節リウマチ対象において予測する方法、および前記方法を利用した、新規かつより効果的な関節リウマチ治療剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】臨床第1/2相試験における各用量群の12週後のACR反応率を示す。
図2】臨床第1/2相試験における400mg群の12週後のACR反応とCD16+単球割合との関係を示す。AはACR20、BはACR50、CはACR70である。CD16+MoはCD16+単球を、Total Moは全単球を表す。
図3】臨床第2相試験における各用量群の12週後のACR反応率を示す。
図4】臨床第2相試験における各用量群の24週後のACR反応率を示す。
図5】臨床第2相試験におけるCD16+単球割合が中央値未満の集団の12週後のACR反応率を示す。
図6】臨床第2相試験におけるCD16+単球割合が中央値以上の集団の12週後のACR反応率を示す。
図7】臨床第2相試験におけるCD16+単球割合が中央値未満の集団の24週後のACR反応率を示す。
図8】臨床第2相試験におけるCD16+単球割合が中央値以上の集団の24週後のACR反応率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
1.発明の概要および定義
本発明は、一態様において、関節リウマチ対象において、FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による治療効果を予測する方法(以下、「本発明の予測方法」とも称する)に関する。
本発明はまた、別の態様において、FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤を有効成分とする関節リウマチ治療剤(以下、「本発明の治療剤」とも称する)に関する。
【0047】
本発明において、用語「関節リウマチ」には、1987年ACR分類基準または2010年ACR/EULAR分類基準に従って診断され得る疾患状態が含まれる。関節リウマチの生理学的指標としては、関節リウマチにおいて特徴的であるが不変ではない、対称性の関節腫脹、受動運動時の疼痛などが挙げられる。
【0048】
本発明において、関節リウマチ対象は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(サル、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ウマ、ヤギ等)であり得る。本発明において、関節リウマチ対象は、好ましくはヒトである。
【0049】
本発明の一実施形態において、「奏功」「奏功する」とは、当該分野で確立された、関節リウマチの評価基準に定められた項目またはパラメータの1つ以上において、治療上有効な改善を示すことを意味し得る。そのような項目またはパラメータとして、これに限定されるものではないが、ACR(American College of Rheumatology)20反応率(response rate)、ACR50反応率、ACR70反応率、赤血球沈降速度(erythrocyte sedimentation
rate:ESR)、高感度CRP(high sensitive C-reactive protein:hs-CRP)、HAQ(Health Assessment Questionnaire)、SDAI(simple disease activity index;例えば、CRPを用いたDisease Activity Score(DAS28-CRP)など)、CDAI(clinical disease activity index)、およびBoolean寛解率などを挙げることができる。
【0050】
本発明の一実施形態において、治療上有効な改善の評価時点は、治療開始後、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、12週、16週、20週、24週、28週、32週、36週、40週、44週、48週、52週、58週、60週、64週、68週、72週、76週、80週、80週、88週、92週、100週、104週、108週、112週または116週である。別の実施形態において、治療上有効な改善の評価時点は、4週、8週、12週、16週または24週である。別の実施形態において、治療上有効な改善の評価時点は、12週または24週である。更なる実施形態において、治療上有効な改善の評価時点は、24週である。
【0051】
本発明の一実施形態において、関節リウマチにおける治療上有効な改善は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%のACR20反応率を意味し得る。別の実施形態において、ACR20反応率は、治療開始後、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、12週、16週、20週、24週、28週、32週、36週、40週、44週、48週、52週、58週、60週、64週、68週、72週、76週、80週、80週、88週、92週、100週、104週、108週、112週または116週のACR20反応率である。別の実施形態において、ACR20反応率は、治療開始後、4週、8週、12週、16週または24週のACR20反応率である。別の実施形態において、ACR20反応率は、治療開始後、12週または24週のACR20反応率である。さらなる実施形態においては、ACR20反応率は、治療開始後、24週のACR20反応率である。
【0052】
本発明の一実施形態において、関節リウマチにおける治療上有効な改善は少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%のACR50反応率を意味し得る。別の実施形態において、ACR50反応率は、治療開始後、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、12週、16週、20週、24週、28週、32週、36週、40週、44週、48週、52週、58週、60週、64週、68週、72週、76週、80週、80週、88週、92週、100週、104週、108週、112週または116週のACR50反応率である。別の実施形態において、ACR20反応率は、治療開始後、4週、8週、12週、16週または24週のACR50反応率である。別の実施形態において、ACR50反応率は、治療開始後、12週または24週のACR50反応率である。さらなる実施形態においては、ACR50反応率は、治療開始後、24週のACR50反応率である。
【0053】
本発明の一実施形態において、関節リウマチにおける治療上有効な改善は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%のACR70反応率を意味し得る。別の実施形態において、ACR70反応率は、治療開始後、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、12週、16週、20週、24週、28週、32週、36週、40週、44週、48週、52週、58週、60週、64週、68週、72週、76週、80週、80週、88週、92週、100週、104週、108週、112週または116週のACR70反応率である。別の実施形態において、ACR20反応率は、治療開始後、4週、8週、12週、16週または24週のACR70反応率である。別の実施形態において、ACR70反応率は、治療開始後、12週または24週のACR70反応率である。さらなる実施形態においては、ACR70反応率は、治療開始後、24週のACR70反応率である。
【0054】
一実施形態において、本発明における関節リウマチ対象は、既存の関節リウマチ治療薬に対する治療に対して十分な効果が得られていない、効果が持続しない、または不耐性である、ヒト対象である。かかる既存の関節リウマチ治療薬としては、これに限定されるものではないが、メトトレキサート、サラゾスルファピリジン,ブシラミン,イグラチモドまたは抗TNF製剤(アダリムマブ、インフリキシマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴルまたはエタネルセプト)などが挙げられる。
【0055】
単球には、その表面マーカーに基づき、少なくとも3種のサブセット:CD14++CD16(古典的単球)、CD14++CD16(中間単球)およびCD14CD16++(非古典的単球)が存在することが知られている。
本発明において、「CD16+単球」は、CD16を発現している全ての単球、すなわちCD14++CD16およびCD14CD16++の両者を指す。この関連で、本明細書中で使用される「CD16+単球の測定値」とは、所与の生体サンプル中に存在するCD14++CD16およびCD14CD16++の測定量の合計を指す。
【0056】
本発明において、FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤には、これに限定されるものではないが、FKNとCX3CR1との相互作用を阻害する抗体またはそれをコードする核酸、CX3CR1のアンタゴニスト、CX3CR1のパーシャルアゴニスト、CX3CR1のインバースアゴニストなど、FKNとCX3CR1との相互作用を阻害する任意の化合物等が含まれる。
【0057】
2.薬剤の治療効果を予測する方法
本発明の予測方法は、FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤の投与開始前に、関節リウマチ対象から取得した生体サンプルにおけるCD16+単球の測定値に基づいて、前記対象における前記薬剤による治療効果を予測することを含むことを特徴とする。
【0058】
本発明において、関節リウマチ対象から取得される生体サンプルは、単球が採取可能なものである特に限定されず、例えば組織または体液とすることができる。かかる例としては、例えば、全血、末梢血単核細胞(PMBC)、赤血球除去全血などの血液、滑液、骨髄液などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0059】
本発明の一実施形態において、前記生体サンプルとして、血液または滑液が用いられる。取得および処理の簡便さ、CD16+単球の検出感度などの理由により、前記生体サンプルとして、血液を使用することが好ましい。
【0060】
対象から取得される生体サンプルは、対象から採取した生体サンプルそれ自体であってもよいし、採取した生体サンプルに通常行われる希釈、濃縮、分離等の処理を行ったものであってもよい。かかる処理が行われたサンプルとしては、末梢血単核細胞(PMBC)、赤血球除去全血、密度勾配遠心法により滑液から単離した単核球が挙げられる。
【0061】
なお、本発明に用いる関節リウマチ対象からの生体サンプルの採取、採取した生体サンプルの処理、CD16+単球の測定は、医師または医師の指示を受けた者(医師に限られない。)により行うことができる。
【0062】
本発明に用いられる関節リウマチ対象由来の生体サンプルは、本発明の実施時に取得されたものでもよいし、予め取得または処理され、保存されたものであってよい。
【0063】
取得された生体サンプルにおけるCD16+単球の測定には、CD16+単球の定量的な測定が可能な標準的な手法を用いることができる。そのような手法として、これに限定されるものではないが、フローサイトメトリ―(例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS))、等を挙げることができる。
【0064】
本発明の一実施形態において、CD16+単球の測定値として、CD16+単球の割合が使用される。CD16+単球の割合は、例えば、全単球中に占めるCD16+単球の割合、全白血球に占めるCD16+単球の割合、および全単核球に占めるCD16+単球の割合が挙げられる。全単球、全白血球、全単核球およびCD16+単球の測定には、フローサイトメトリ―を用いることが好ましい。かかる実施形態では、標準的な手法にしたがって、前方散乱光(FSC)および側方散乱光(SSC)に基づき全単球、全白血球または全単核球を測定し、次いで単球をCD14及びCD16で展開し、単球中のCD16+単球を測定し、次いでそれらの数値に基づきCD16+単球の割合を算出する。CD14およびCD16の識別に用いる抗CD14抗体および抗CD16抗体は市販のものを用いることができ、必要に応じて、蛍光標識等で標識された抗体を用いることができる。フローサイトメトリーを用いて全単球中に占めるCD16+単球の割合を算出する具体的手法の一例は、下記実施例で例示されている。
【0065】
本発明の予測方法において、前記CD16+単球の測定値に基づく治療効果の予測は、前記測定値を評価することによって行われる。評価は、例えば、奏功と非奏功とを区別するためにあらかじめ設定された基準値(カットオフ値)、薬剤が奏功した対象および/または薬剤が奏功しなかった対象において取得された測定値、などの対照との比較によって行うことができる。評価の対象となるCD16+単球の測定値と対照のCD16+単球の測定値の取得方法は、同一であることが好ましい。測定値の評価は、測定値の取得に次いで連続的に行われてもよく、事前に取得した測定値を用いて後から行われてもよい。
【0066】
対照は、薬剤が奏功したおよび/または奏功しなかった1または複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35若しくは40個体、またはそれを超える)の対象のCD16+単球の測定値に基づきによって設定することができる。
【0067】
前記基準値は、例えば、評価対象のFKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による奏功が認められた対象群から取得されたCD16+単球の測定値と、奏功が認められなかった対象群からから取得されたCD16+単球の測定値とをROC解析(Receiver Operating Characteristic analysis)等に付することよって設定することができる。ROC解析は、例えば、疾病の検査方法の検出能、診断能を評価可能な解析方法であって、例えば、日本臨床検査自動化学会会誌「臨床検査の診断的有用性評価マニュアル」Ver.1.3(2004.9.1)、Vol.29
Suppl.1(通巻第154号)(2004年9月1日発行)に記載されている。
【0068】
前記基準値は、評価対象のFKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による奏功が認められた対象群から取得されたCD16+単球の測定値と、奏功が認められなかった対象群からから取得されたCD16+単球の測定値とを、対象群ごとのヒストグラムを用いた解析をすることによって設定された、それぞれの群を最もよく区別するCD16+単球の測定値でもよい。
【0069】
また、前記基準値は、評価対象のFKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による奏功が認められた対象から取得されたCD16+単球の測定値の平均値±標準偏差または分位値、評価対象のFKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による奏功が認められなかった対象から取得されたCD16+単球の測定値の平均値±標準偏差または分位値、または関節リウマチ対象から取得されたCD16+単球の測定値の平均値±標準偏差または分位値とすることができる。分位値の例としては、中央値(メジアン)、第1三分位値、第2三分位値、第1四分位値、第3四分位値が挙げられる。
基準値は、治療方法または治療薬、および対象(群)の背景に対し個別に設定することができる。基準値の改善は、使用するCD16+単球の測定値の測定および算出方法、使用する統計手法、サンプルの種類、サンプルの数等に応じて決定され得る。したがって、確立された基準値は、定期的再評価、治療方法もしくは治療薬、または集団の分布の変化に基づいて上下に調整することが可能である。
【0070】
別の実施形態では、基準値は、シミュレーションモデルに基づいて予め設定されたCD16+単球の測定値であってもよい。
【0071】
さらに、評価対象のFKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による奏功が認められた対象に関しては、評価対象のFKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤に対してわずかに奏功した対象、中程度に奏功した対象、および顕著に奏功した対象などにさらに細分化して、それぞれの基準値を設定してもよい。
【0072】
評価には、上に例示される対照から選択された1種のみを用いてもよいし、複数種を用いてもよい。
【0073】
本発明の一実施形態において、投与開始前の関節リウマチ対象から取得された生体サンプルにおいて測定されたCD16+単球の測定値が、評価対象のFKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による奏功が認められた対象から設定された基準値以上であることが、前記対象が前記薬剤に奏功する可能性が高いことを示す、と評価される。
【0074】
本発明の別の実施形態において、投与開始前の関節リウマチ対象から取得された生体サンプルにおいて測定されたCD16+単球の測定値が、評価対象のFKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による奏功が認められなかった対象から設定された基準値以上であることが、前記対象が前記薬剤に奏功する可能性が高いことを示す、と評価される。
【0075】
本発明のさらに別の実施形態において、投与開始前の関節リウマチ対象から取得された生体サンプルにおいて測定されたCD16+単球の測定値が、関節リウマチ対象から設定された基準値以上であることが、前記対象が前記薬剤に奏功する可能性が高いことを示す、と評価される。
【0076】
本発明のさらに別の実施形態において、投与開始前の関節リウマチ対象から取得された生体サンプルにおいて測定されたCD16+単球の測定値が、評価対象のFKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による奏功が認められた対象から設定された基準値、評価対象のFKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による奏功が認められなかった対象から設定された基準値、および関節リウマチ対象から設定された基準値、から選択される2種または3種の基準値以上であることが、前記対象が前記薬剤に奏功する可能性が高いことを示す、と評価される。
【0077】
本発明のある実施形態において、奏功の評価はACR20、ACR50またはACR70に基づき行われる。
【0078】
CD16+単球の測定値が、全単球中のCD16+単球の割合である場合、基準値は、例えば、6%~16%の範囲で定めることができる。FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤による奏功する可能性が高いことを示すと評価される測定値の範囲は、例えば、6.0%以上、6.5%以上、7.0%以上、7.5%以上、8.0%以上、8.5%以上、9.0%以上、9.5%以上、10.0%以上、10.5%以上、11.0%以上、11.5%以上、12.0%以上、12.5%以上、13.0%以上、13.5%以上、14.0%以上、14.5%以上、15.0%以上、15.5%以上、および16.0%以上である。
【0079】
本発明の予測方法により、FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤に奏功する可能性が高いと評価された関節リウマチ対象に対し、治療上有効な量の前記薬剤を投与し、関節リウマチの治療を行うことができる。
【0080】
3.関節リウマチ治療剤
本発明は、一態様において、FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤を有効成分とする関節リウマチ治療剤に関する。
【0081】
本発明の治療剤は、一実施形態において、FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤の投与開始前に関節リウマチ対象から取得した生体サンプルにおけるCD16+単球の測定値に基づいて、前記薬剤が奏効する可能性が高いと予測される対象を特定する工程、および、前記特定された対象に、治療上有効な量の前記薬剤を投与する工程を含む、関節リウマチの治療方法において使用することを特徴とする。
【0082】
本発明の治療剤は、別の実施形態において、FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤の投与開始前に関節リウマチ対象から取得した生体サンプルにおけるCD16+単球の測定値が対照以上である対象に、治療上有効な量の前記薬剤を投与する工程を含む、関節リウマチの治療方法において使用することを特徴とする。
【0083】
前記関節リウマチの治療方法における生体サンプルにおけるCD16+単球の測定、予測または比較は、既に説明した本発明の予測方法に準じて行うことができる。
4.FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤
本発明のFKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤には、これに限定されるものではないが、FKNとCX3CR1との相互作用を阻害する抗体またはそれをコードする核酸、CX3CR1のアンタゴニスト、CX3CR1のパーシャルアゴニスト、CX3CR1のインバースアゴニストなど、FKNとCX3CR1との相互作用を阻害する任意の化合物等が含まれる。FKNとCX3CR1との相互作用を阻害する抗体は、例えば、抗FKN抗体または抗CX3CR1抗体である。FKNとCX3CR1との相互作用を阻害する薬剤は、公知のFKN-CX3CR1の阻害薬のスクリーニング方法、例えば特開2002-345454に記載のスクリーニング方法を用いて取得することができる。
【0084】
好ましい実施形態において、FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤は、抗フラクタルカイン(FKN)抗体である。本発明において、抗FKN抗体は、完全ヒト型、ヒト化またはキメラ抗体であり得る。
【0085】
最も好ましい実施形態において、FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤は、ヒト化抗ヒトフラクタルカイン抗体H3-2L4、またはこれと機能的に同等な抗体である。本発明において、「機能的に同等な抗体」とは、抗体H3-2L4と、ヒトFKNに対する結合親和性、中和活性、交差反応性、血中における薬物動態の少なくともいずれか、または好ましくは全てが同等である抗体をいう。機能的に同等な抗体は、世界保健機関のガイドライン(GUIDELINES ON EVALUATION OF SIMILAR BIOTHERAPEUTIC PRODUCTS (SBPs))の有効成分についての要件に従って定める抗体も含む。
【0086】
本発明において、抗FKN抗体に言及する場合、その抗原結合性断片を含んでもよい。そのような抗原結合性断片は、抗FKN抗体の機能的、構造的断片であって、当該抗体がFKNに対する結合性を保持し、かつ、完全抗体と血中における薬物動態が有意に異ならないものであれば特に限定されない。抗体の抗原結合断片の例としては、限定はされないが、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、1本鎖(ScFv)、それらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および、抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の修飾構造体等が挙げられる。
【0087】
一実施形態において、本発明の抗FKN抗体は、以下のCDR配列を含む任意の抗体であり得る:
(a)配列番号5(NYYIH)のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号6(WIYPGDGSPKFNERFKG)のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号7(GPTDGDYFDY)のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号8(RASGNIHNFLA)のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号9(NEKTLAD)のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および
(f)配列番号10(QQFWSTPYT)のアミノ酸配列を含むCDR-L3
【0088】
別の実施形態において、抗FKN抗体は、抗体が重鎖および軽鎖を含み、前記抗体の重鎖可変領域が、配列番号11(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSDDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)、配列番号3(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)、配列番号12(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTRDKSTNTAYMELSSLRSDDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTMTADTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYFCARGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)、または配列番号14(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYFCARGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)のアミノ酸配列を含み、かつ、前記抗体の軽鎖可変領域が、配列番号15(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKFLVYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTQYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)、配列番号4(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)、または配列番号16(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTQYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)のアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0089】
好ましい実施形態において、抗FKN抗体、抗体が重鎖および軽鎖を含み、前記抗体の重鎖可変領域が、配列番号3(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)のアミノ酸配列を含み、かつ、前記抗体の軽鎖可変領域が、配列番号4(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)のアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0090】
特定の実施形態において、抗FKN抗体は、ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含む抗体である。
【0091】
特定の実施形態において、抗FKN抗体は、前記ヒトIgG2アイソタイプの定常領域のFc領域がV234Aおよび/またはG237Aの変異を含む抗体である。
【0092】
本発明の特に好ましい実施形態において、抗FKN抗体は、配列番号1に示すアミノ酸配列(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPAAAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK)からなる重鎖、および配列番号2に示すアミノ酸配列(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC)からなる軽鎖からなる、抗体H3-2L4である。
【0093】
言うまでもなく、上記に例示した抗FKN抗体を、当該抗体の機能を保持させたまま、または当該抗体の機能を付加、向上させるために、適宜改変(例えば、抗体の修飾、または、抗体のアミノ酸配列の部分的な置換、付加、欠失)した抗体も、本発明の抗体に含まれる。より具体的には、抗体産生細胞により産生される抗体の不均一性を減少させるため、重鎖のカルボキシ末端(C末端)に位置するリシン(Lys)を遺伝子改変等の人為的方法によって欠失させた抗体も、本発明の範囲に含まれる。また、本発明の関節リウマチ治療剤に含まれる抗FKN抗体は、必ずしも完全な均一性を有している必要はなく、本発明の関節リウマチ治療剤が意図する機能を維持する限りにおいて、例えば、重鎖のカルボキシ末端(C末端)に位置するリシン(Lys)が欠失したものと欠失していないものとが混在していてもよい。
【0094】
抗FKN抗体は、所望により、修飾してもよい。抗FKN抗体は、(a)例えばシートまたはヘリックスコンホメーション等の、修飾領域におけるアミノ酸配列の三次元的な構造;(b)標的部位での分子の電荷または疎水性の状態;または、(c)側鎖の容積の維持に対する修飾の効果、を変化させる修飾であってもよく、あるいはこれらの変化が明白に観察されないような修飾であってもよい。
【0095】
抗FKN抗体の修飾は、例えば、構成するアミノ酸残基の置換、欠失、付加等によって達成してよい。
【0096】
本明細書において、アミノ酸とは、その最も広い意味で用いられ、天然のアミノ酸、例えばセリン(Ser)、アスパラギン(Asn)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、アラニン(Ala)、チロシン(Tyr)、グリシン(Gly)、リシン(Lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、トレオニン(Thr)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、プロリン(Pro)のみならず、アミノ酸変異体および誘導体といった、非天然アミノ酸も含まれる。当業者であれば、この広い定義を考慮して、本明細書におけるアミノ酸として、例えばL-アミノ酸;D-アミノ酸;アミノ酸変異体、アミノ酸誘導体等の化学修飾されたアミノ酸;ノルロイシン、β-アラニン、オルニチン等、生体内でタンパク質の構成材料とならないアミノ酸;および当業者に公知のアミノ酸の特性を有する、化学的に合成された化合物等が挙げられることを当然に理解する。非天然アミノ酸の例としては、α-メチルアミノ酸(α-メチルアラニン等)、D-アミノ酸(D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸等)、ヒスチジン様アミノ酸(2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン等)、側鎖に余分なメチレンを有するアミノ酸(「ホモ」アミノ酸)および側鎖中のカルボン酸官能基アミノ酸がスルホン酸基で置換されるアミノ酸(システイン酸等)等が挙げられる。
【0097】
天然に存在するアミノ酸残基は、例えば、一般的な側鎖特性に基づいて、次のグループに分類され得る:
(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0098】
抗FKN抗体を構成するアミノ酸配列の非保存的置換は、これらのグループの1つに属するアミノ酸を他のグループに属するアミノ酸と交換することにより行ってもよい。より保存的な置換は、これらのグループの1つに属するアミノ酸を同一グループの他のアミノ酸と交換することにより行ってもよい。同様に、アミノ酸配列の欠失または置換を適宜行ってもよい。
【0099】
5.製剤
本発明の関節リウマチ治療剤は、治療上有効量のFKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤を含む。FKN-CX3CR1相互作用を阻害する薬剤の量は、薬剤の種類、投与対象、投与経路、投与間隔等に応じて変化し得る。
【0100】
以下、抗FKN抗体を有効成分とする、本発明の関節リウマチ治療剤を例示的に説明する。
【0101】
抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)の治療上有効量としては、皮下投与において、1回あたり50mg~1000mg、100mg~800mg、または200mg~800mg、400~800mgであるが、これらに限定されない。本発明の特定の実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、少なくとも50mg、少なくとも100mg、少なくとも150mg、少なくとも200mg、少なくとも250mg、少なくとも300mg、少なくとも350mg、少なくとも400mg、少なくとも450mg、少なくとも500mg、少なくとも550mg、少なくとも600mg、少なくとも650mg、少なくとも700mg、少なくとも750mg、または少なくとも800mgの量で投与される。さらに別の実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、100mg、200mg、400mg、600mgまたは800mgの量で投与される。
【0102】
本発明の関節リウマチ治療剤の投与剤形は特に制限されないが、典型的には、皮下投与用に調製された注射用製剤である。本発明の関節リウマチ治療剤は、例えば、抗FKN抗体を、非限定的に注射用水、生理食塩水、またはリン酸緩衝生理食塩水中に、薬学的に許容される賦形剤とともに、注射用製剤として調製することができる。本発明に使用される薬学的に許容される賦形剤には、非限定的に、安定化剤、界面活性剤、保存剤などが挙げられる。
【0103】
本発明に使用される安定化剤は、例えば薬学的製剤における適切な添加剤または賦形剤として当局によって認められている炭水化物または糖類または糖、例えばスクロースである。安定化剤の濃度は、15から250mM、または150から250mM、または200mMである。製剤は二次安定剤を含んでもよい。
【0104】
本発明に使用される薬学的に許容される界面活性剤の適切な例は、これに限定されるものではないが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween)、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(Triton-X)、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体(Poloxamer,Pluronic)、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む。最も適切なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ポリソルベート20(Tween20)およびポリソルベート80(Tween80)である。界面活性剤の濃度は、0.01から0.1%(w/v)、または0.01から0.08%(w/v)、または0.025から0.075%(w/v)、例えば0.05%(w/v)である。
【0105】
本発明に使用される保存剤には、非限定的に、パラベン、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、フェノール、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、安息香酸、亜硫酸水素ナトリウム、プロピオン酸ナトリウムおよびその任意の組み合わせまたは混合物などを含む。
【0106】
本発明に使用される緩衝剤の例は、これに限定されるものではないが、ヒスチジン、シトレート、ホスフェート、グリシン、アセテート、およびその任意の組み合わせまたは混合物などを含む。
【0107】
本発明の製剤は、pHを制御するための緩衝剤またはpH調整剤を含んでもよい。一実施形態では、本発明の製剤は、4.0~9.0の範囲、5.0~9.0の範囲、5.0~8.0の範囲、5.0~7.5の範囲、5.5~7.0の範囲、または5.5~6.5の範囲のpHを有する。
【0108】
本発明の関節リウマチ治療剤は、ヒト血液と等張でありうること、すなわち本発明の関節リウマチ治療剤はヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有し得る。そのような等張製剤は、一般に、250mOSm~350mOSmの浸透圧を有する。等張性は例えば蒸気圧または製氷型浸透圧計を使用することによって測定することができる。本発明に使用される等張化剤には、非限定的に、サッカライド、塩およびアミノ酸などを含む。
【0109】
前述の賦形剤のほか、皮下投与のための注射用製剤の製造のための代表的な賦形剤およびプロセスは当技術分野において公知であり、例えば、Introduction to
Pharmaceutical Dosage Forms,1985,Ansel,H.C.,Lea and Febiger,Philadelphia,Pa.;Remington’s Pharmaceutical Sciences,1995,Mack Publ.Co.,Easton,Pa.を参照することができる。該文献は参照によりその全体がここに組み入れられる。
【0110】
抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)を含む関節リウマチ治療剤の一実施形態においては、特開2017-193541号に記載された製剤処方を採用することができる。
【0111】
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、ヒトに対して1回あたり少なくとも100mgの抗FKN抗体が、皮下投与されるように用いられることを特徴とする。本発明の別の実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、ヒトに対して1回あたり100mg~400mgの抗FKN抗体が皮下投与されるように用いられることを特徴とする。本発明の一実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、ヒトに対して1回あたり100mg、200mgまたは400mgの抗FKN抗体が皮下投与されるように用いられる。本発明の別の実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、ヒトに対して1回あたり200mg~400mgの前記抗FKN抗体が皮下投与されるように用いられる。
【0112】
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、ヒトに対して1回あたり少なくとも200mgの抗FKN抗体が、皮下投与されるように用いられることを特徴とする。本発明の別の実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、ヒトに対して1回あたり200mg~600mgの抗FKN抗体が皮下投与されるように用いられることを特徴とする。本発明の一実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、ヒトに対して1回あたり200mg、400mg、または600mgの抗FKN抗体が皮下投与されるように用いられる。本発明の別の実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、ヒトに対して1回あたり400mg~600mgの前記抗FKN抗体が皮下投与されるように用いられる。
【0113】
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、ヒトに対して1回あたり少なくとも400mgの抗FKN抗体が、皮下投与されるように用いられることを特徴とする。本発明の別の実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、ヒトに対して1回あたり400mg~800mgの抗FKN抗体が皮下投与されるように用いられることを特徴とする。本発明の一実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、ヒトに対して1回あたり400mg、600mg、または800mgの抗FKN抗体が皮下投与されるように用いられる。本発明の別の実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、ヒトに対して1回あたり400mg~600mgの前記抗FKN抗体が皮下投与されるように用いられる。本発明の別の実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、ヒトに対して1回あたり600mg~800mgの前記抗FKN抗体が皮下投与されるように用いられる。
【0114】
本発明の関節リウマチ治療剤の投与回数および投与間隔は、1回あたりに投与される抗FKN抗体の量、および投与経路等に応じて変化し得る。
抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)の投与間隔は、例えば、1週間に1回から2ヵ月に1回、1週間に1回から1ヵ月に1回、1週間に1回から2週間に1回、1週間に1回、2週間に1回であり、これらを組み合わせることができる。
【0115】
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、1回あたり100mg~400mgの抗FKN抗体が、1週間に1回から2ヵ月に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒトに複数回皮下投与されるように使用される。本発明の別の実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、1回あたり100mg~400mgの抗FKN抗体が、1週間に1回から1ヵ月に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒトに複数回皮下投与されるように使用される。本発明の別の実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、1回あたり100mg~400mgの抗FKN抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒトに複数回皮下投与されるように使用される。本発明の特定の実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、1回あたり100mg~400mgの抗FKN抗体が、2回の週1回投与後、隔週の投与間隔で皮下投与されるように用いられる。
【0116】
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、1回あたり400mg~800mgの抗FKN抗体が、1週間に1回から2ヵ月に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒトに複数回皮下投与されるように使用される。本発明の別の実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、1回あたり400mg~800mgの抗FKN抗体が、1週間に1回から1ヵ月に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒトに複数回皮下投与されるように使用される。本発明の別の実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、1回あたり400mg~800mgの抗FKN抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒトに複数回皮下投与されるように使用される。本発明の特定の実施形態において、本発明の関節リウマチ治療剤は、1回あたり400mg~800mgの抗FKN抗体が、2回の週1回投与後、隔週の投与間隔で皮下投与されるように用いられる。
【0117】
本発明の別の実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、1回あたり100mg、200mg、または400mg、1週間に1回から2ヵ月に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒトに複数回皮下投与される。本発明の別の実施形態において、抗FKN抗体は、1回あたり100mg、200mg、または400mg、1週間に1回から1ヵ月に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒトに複数回皮下投与される。本発明の別の実施形態において、抗FKN抗体は、1回あたり100mg、200mg、または400mg、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒトに複数回皮下投与される。本発明の特定の実施形態において、抗FKN抗体、1回あたり100mg、200mg、または400mg、2回の週1回投与後、隔週の投与間隔で皮下投与される。
【0118】
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、1回あたり400mg、600mgまたは800mg、1週間に1回から2ヵ月に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒトに複数回皮下投与される。本発明の別の実施形態において、抗FKN抗体は、1回あたり400mg、600mgまたは800mg、1週間に1回から1ヵ月に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒトに複数回皮下投与される。本発明の別の実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、1回あたり400mg、600mgまたは800mg、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒトに複数回皮下投与される。本発明の特定の実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、1回あたり400mg、600mgまたは800mg、2回の週1回投与後、隔週の投与間隔で皮下投与される。
【0119】
1回あたりに投与されるFKN-CX3CR1の相互作用阻害薬の量は、投与開始後一定期間経過後、増量または減量されうる。増量または減量の時期は、例えば、投与開始後1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、12週、16週、20週、24週、28週、32週、36週、40週、44週、48週、52週、58週、60週、64週、68週、72週、76週、80週、80週、88週、92週、100週、104週、108週、112週または116週である。一実施形態において、増量または減量の時期は、治療開始後12週または24週である。一実施形態において、増量または減量後の投与量は、投与開始時の1/3~3/4、1/3~2/3、または1/2~2/3である。一実施形態においては、増量または減量は、0回、1回、または複数回行われる。
【0120】
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、1回あたり400mgが、0週、1週、2週に投与された後、隔週の投与間隔で皮下投与され、投与開始後12週の時点で200mg、隔週の投与間隔に減量される。
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、1回あたり400mgが、0週、1週、2週に投与された後、隔週の投与間隔で皮下投与され、投与開始後24週の時点で200mg、隔週の投与間隔に減量される。
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、10週まで1回あたり400mgが、隔週の投与間隔で皮下投与され、投与開始後12週の時点で200mg、隔週の投与間隔に減量される。
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、10週まで1回あたり400mgが、隔週の投与間隔で皮下投与され、投与開始後24週の時点で200mg、隔週の投与間隔に減量される。
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、10週まで1回あたり600mgが、隔週の投与間隔で皮下投与され、投与開始後12週の時点で400mg、隔週の投与間隔に減量される。
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、10週まで1回あたり600mgが、隔週の投与間隔で皮下投与され、投与開始後24週の時点で400mg、隔週の投与間隔に減量される。
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、10週まで1回あたり600mgが、隔週の投与間隔で皮下投与され、投与開始後12週の時点で200mg、隔週の投与間隔に減量される。
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、10週まで1回あたり600mgが、隔週の投与間隔で皮下投与され、投与開始後24週の時点で200mg、隔週の投与間隔に減量される。
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、10週まで1回あたり800mgが、隔週の投与間隔で皮下投与され、投与開始後12週の時点で600mg、隔週の投与間隔に減量される。
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、10週まで1回あたり800mgが、隔週の投与間隔で皮下投与され、投与開始後24週の時点で600mg、隔週の投与間隔に減量される。
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、10週まで1回あたり800mgが、隔週の投与間隔で皮下投与され、投与開始後12週の時点で400mg、隔週の投与間隔に減量される。
本発明の一実施形態において、抗FKN抗体(例えば、H3-2L4)は、10週まで1回あたり800mgが、隔週の投与間隔で皮下投与され、投与開始後24週の時点で400mg、隔週の投与間隔に減量される。
【0121】
技術的に矛盾しない限り、本明細書に記載の、あらゆる態様の任意の一または複数を、適宜組み合わせて、本発明を実施してよいことを当業者は理解する。さらに、技術的に矛盾しない限り、本明細書に記載の、好ましいまたは有利なあらゆる態様を、適宜組み合わせて、本発明を実施することが好ましいであろうことを当業者は理解する。
【0122】
本明細書中に引用される文献は、参照により、それらのすべての開示が、明確に本明細書に援用されているとみなされるべきであって、当業者は、本明細書の文脈に従って、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、それらの文献における関連する開示内容を、本明細書の一部として援用して理解できる。
【0123】
本明細書中に引用される文献は、本出願の出願日前の関連技術の開示のみを目的として提供され、本発明者らが、先行発明または任意の他の理由によって、かかる開示に先行する権利を持たないことを自認するものとして解釈されてはならない。これらの文献のすべての記述は、本出願人が入手可能であった情報に基づいており、これらの記述内容が正確であるという自認を何ら構成しない。
【0124】
本明細書において用いられる用語は、特定の実施態様を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
【0125】
本明細書において用いられる「を含む(comprise、include)」という用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記載された事項(部材、ステップ、要素または数字等)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素または数字等)が存在することを排除しない。「からなる(consist of)」という用語は、「からなる(consist of)」および/または「実質的に~からなる(consist essentially of)」という用語で記載される態様を包含する。
【0126】
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語および科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書および関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、または、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
【0127】
第1の、第2の等の用語が種々の要素を表現するために用いられるが、これらの要素はこれらの用語自身によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は一つの要素を他の要素と区別するためのみに用いられているのであり、例えば、第1の要素を第2の要素と記し、同様に、第2の要素は第1の要素と記すことは、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。
【0128】
本明細書および特許請求の範囲において、成分含有量や数値範囲等を示すのに用いられる数値は、特に明示がない限り、用語「約」で修飾されているものと理解されるべきである。例えば、「10μg」とは、特に明示がない限り、「約10μg」を意味するものと理解され、その程度を、当業者は技術常識と本明細書の文意に従って、合理的に理解できることは当然である。
【0129】
文脈上明白に他の意味を示す場合を除き、本明細書および請求の範囲で使用される場合、単数形で表される各態様は、技術的に矛盾しない限り、複数形であってもよいことが理解され、逆もまた真である。
【0130】
以下において、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明はいろいろな態様により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。関連技術分野の当業者は、本発明の精神または範囲を変更させることなく、様々な改変、付加、欠失、置換等を伴って本発明を実施できる。
【実施例
【0131】
実施例1:ヒト化抗ヒトフラクタルカイン抗体の調製
以下のヒトへの投与試験では、ヒト化抗ヒトフラクタルカイン抗体H3-2L4を用いた。ヒト化を含む、H3-2L4の作製は、WO2011/052799に記載されたように行った。実施例2以降に使用したH3-2L4は、特開2017-193541号に記載の方法により調製した。
H3-2L4の配列は以下のとおりである。H3-2L4の定常領域はヒトIgG2の定常領域のアミノ酸配列に2か所の変異(V234AおよびG237A)が挿入されたものである。
【0132】
(1)H3-2L4の重鎖全長(配列番号1)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPAAAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0133】
(2)H3-2L4の軽鎖全長(配列番号2)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0134】
(3)H3-2L4の重鎖可変領域(配列番号3)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS
【0135】
(4)H3-2L4の軽鎖可変領域(配列番号4)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK
【0136】
(5)H3-2L4のCDR-H1~CDR-H3、およびCDR-L1~CDR-L3のアミノ酸配列:
H3-2L4のCDR-H1(配列番号5)
NYYIH
H3-2L4のCDR-H2(配列番号6)
WIYPGDGSPKFNERFKG
H3-2L4のCDR-H3(配列番号7)
GPTDGDYFDY
H3-2L4のCDR-L1(配列番号8)
RASGNIHNFLA
H3-2L4のCDR-L2(配列番号9)
NEKTLAD
H3-2L4のCDR-L3(配列番号10)
QQFWSTPYT
【0137】
実施例2:反復皮下投与による臨床第1/2相試験
関節リウマチ患者を対象に、H3-2L4を反復皮下投与した際の安全性および忍容性を評価するための、臨床第1/2相試験を行った。
【0138】
2-1.治験デザイン
本治験は、日本人関節リウマチ患者を対象とし、H3-2L4を12週間、反復皮下投与した際の安全性および忍容性を評価することを主要な目的とした多施設共同、非盲検、非対照、反復投与用量漸増(multiple ascending dose,MAD)試験である。本治験では、100mg群として12例、200mg群として15例、400mg群として10例、合計37例が組み入れられ、このうち28例が52週までの継続投与期に移行した。用量漸増にあたって、低用量から順次実施し、安全性を評価した上でさらに高用量の投与群に移行した。
【0139】
本治験はスクリーニング期、観察期、投与期、継続投与期および追跡調査期から構成された。
【0140】
治験薬投与開始前42日~2日以内にスクリーニング検査を、治験薬初回投与前日または当日投与前に観察期の検査を実施し、適格性が確認された被験者にH3-2L4を投与した。適格性の基準は以下の通りであった:
(1)年齢が20歳以上65歳未満であること;
(2)1987年ACR分類基準または2010年ACR/EULAR分類基準を満たす関節リウマチ患者であること;
(3)スクリーニング開始時までに下記のいずれかまたは両方の治療を行い、スクリーニング期および観察期の評価で、圧痛関節数4ヵ所以上(68関節中)かつ腫脹関節数4ヵ所以上(66関節中)を認める患者であること;
-メトトレキサート(MTX)による治療を3ヵ月以上行った患者。ただし、副作用により投与継続ができなかった患者は3ヵ月以上の治療歴は問わない;
-抗TNF製剤による治療を3ヵ月以上行った患者。ただし、抗TNF製剤による治療はアダリムマブ、インフリキシマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴルまたはエタネルセプトのうちいずれか1剤に限る(抗TNF製剤はバイオ後続品を含む);
(4)過去に抗TNF製剤以外の生物学的製剤(トシリズマブ、アバタセプト等)または2剤以上の抗TNF製剤を投与されたことが無い患者であること;
(5)スクリーニング期に高感度CRP(hs-CRP)0.6mg/dL以上あるいは赤血球沈降速度(ESR)28mm/hr以上の患者であること;
(6)MTX、ブシラミンまたはサラゾスルファピリジン以外の抗リウマチ薬(DMARDs)を使用している場合は、治験薬投与開始4週間以上前に投与中止が可能な患者であること。但し、MTX、ブシラミンまたはサラゾスルファピリジンについては、治験薬投与開始4週前から治験期間を通じて、いずれか1剤の使用は可能とした;
(7)副腎皮質ステロイドをプレドニゾロン換算で10mg/日を超えて使用している場合は、治験薬投与開始4週間以上前にプレドニゾロン換算で10mg/日以下に減量可能な患者であること;および
(8)スクリーニング時の体重が30kg以上100kg以下の患者であること。
【0141】
2-2:治験薬の投与
本治験で用いた治験薬の種類および処方は以下のとおりである。
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
投与期では、H3-2L4を0週、1週、2週、以降2週ごとに10週まで計7回投与した。
100mg投与群は左右上腕部、左右腹部または左右大腿部のいずれか1ヵ所に、200mg投与群は1mLずつ2ヵ所に分けて、400mg投与群は1mLずつ4ヵ所に分けて皮下投与した。なお、400mg投与群については、治験責任医師または治験分担医師が適切に皮下投与できると判断した場合に限り、2mLずつ2ヵ所に分けて皮下投与することも可とした。治験薬投与は、当日予定する全ての調査(投与部位所見は除く)が終了した後に実施した。
【0144】
7回目の投与終了2週後(12週時)の評価で、安全性に問題がなく、圧痛関節数および腫脹関節数の両方が観察期から20%以上改善し、かつ継続投与を希望する被験者はさらに2週ごとに20回(40週間)同一用量にて投与を行った(継続投与期)。400mg投与群の継続投与期については、治験責任医師または治験分担医師の判断で200mg投与へ減量することも可とした(400mg投与に戻すことも可)。継続投与期に移行した被験者については初回投与後52週まで観察・調査した。治験薬の投与間隔は7日以上(中6日以上)空けることとし、観察・調査日を変更した関係で投与間隔が7日未満となる場合は、治験薬の投与は休薬とし、観察・調査のみ実施した。
【0145】
2-3:有効性
本治験では探索的に有効性を評価した。12週後のACR20反応率は100mg群で75.0%(9/12例)、200mg群で80.0%(12/15例)、400mg群で70.0%(7/10例)、ACR50反応率は100mg群で33.3%(4/12例)、200mg群26.7%(4/15例)、400mg群で30.0%(3/10例)、ACR70反応率は100mg群で8.3%(1/12例)、200mg群で20.0%(3/15例)、400mg群で20.0%(2/10例)であった(図1)。なお、早期中止またはその他の理由で各評価時点の有効性データに欠測が認められた症例については、last observation carried forward(LOCF)にてデータを補完した。
【0146】
2-4:CD16+単球割合によるサブグループ解析
投与開始日を起点(1日(0週))として、投与前(1日)(ベースライン)に採取した末梢血中の全単球中のCD16+単球の割合を、フローサイトメトリーを用いて測定した。
【0147】
Cyto-Chex BCT(Streck、Inc、213386)で採取された血液とLysisバッファー(大塚蒸留水(大塚製薬工場)で10倍希釈したBD Pharm Lyse(BD Biosciences、 555899))を、1:9(体積比)で混ぜた後、数回転倒混和し、室温で10分間放置し、赤血球を溶血させた。溶血させたサンプルを、室温、290xg、および5分間の条件で遠心分離し、残存細胞をFACSバッファー(0.5M EDTA(Invitrogen、15575-038)およびFBS(牛胎児血清、HyClone、SH30396.03)およびPBS(Santa Cruz Biotechnology、sc-296028)を用いて1mM
EDTA、1%FBS含有のPBSに調整したバッファー)で洗浄した。残存細胞は溶血した血液量と等量のFACSバッファーで懸濁し、細胞懸濁液を調製した。ブロッキングのため細胞懸濁液とFcR Blocking Reagent(Miltenyi Biotec、130-059-901)を10:2(体積比)で混ぜ、氷上で30分間放置した。96穴プレートに細胞懸濁液を加え、4℃下に290xg、5分間の条件で細胞を遠心分離した。上清廃棄後の細胞に、抗体混合溶液(蛍光標識抗CD14抗体(Alexa Fluor 647-CD14、BioLegend、325612)、および蛍光標識抗CD16抗体(FITC-CD16、Abcam、ab115920)をFACSバッファーで調整)を加え、プレートシェーカーで攪拌し、氷上遮光下で30分間放置して細胞を染色した。染色後、FACSバッファーを加え、4℃下、290xg、5分間の条件で遠心分離を行い、細胞を洗浄した。FACSバッファー200μLで細胞を懸濁し、BD FACSCantoII(Becton、Dickinson and Company、338962)を用いてサンプルデータを取得した。
【0148】
BD FACSCantoIIで取得したサンプルデータをfcsファイルにエクスポートし、そのfscファイルをFlowJo(FLOWJO、LLC)で解析した。FSC-AおよびSSC-A展開において、末梢血由来単核細胞(PBMC)を単球(Monocytes)に分画した。単球をCD14およびCD16で展開し、CD16+単球に分画し、全単球中のCD16+単球の割合(百分率)を算出した。
【0149】
得られたベースラインのCD16+単球割合と、ACR20、ACR50およびACR70の反応との関連性の評価を行った。なお、ACRの評価においては、2-3と同様、早期中止またはその他の理由で各評価時点の有効性データに欠測が認められた症例については、last observation carried forward(LOCF)にてデータを補完した。
【0150】
12週後の400mg群における、ACR20、ACR50およびACR70の反応群(Responder)および非反応群(Non-responder)におけるベースラインCD16+単球割合の平均値は、ACR20反応群で7.6%(N=6)、ACR20非反応群で4.7%(N=3)、ACR50反応群で11.8%(N=2)、ACR50非反応群で5.2%(N=7)、ACR50反応群で10.3%(N=1)、ACR50非反応群で6.2%(N=8)であった(図2)。この結果より、CD16+単球割合の高さと有効性の関連性が示唆された。
【0151】
実施例3:メトトレキサートによる治療で効果不十分な関節リウマチ患者を対象としたH3-2L4の用量反応性試験(臨床第2相試験)
【0152】
3-1.治験デザイン
本治験は、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験である。本治験では、H3-2L4 100mg、200mg、400mg、プラセボ群の4群を設定し、H3-2L4 100mg、200mgおよびプラセボ群では0週、1週、2週、以降2週ごとに投与し、H3-2L4 400mg群では0週、1週、2週、4週、6週、8週、10週に400mg、以降2週ごとに200mgを投与した。
【0153】
本治験はスクリーニング期、観察期、投与期、継続投与期および追跡調査期から構成された。
【0154】
治験薬投与開始前42日以内にスクリーニング検査を実施し、観察期において適格性が確認された被験者を対象に、スクリーニング期のCRP値、罹病期間、生物学的製剤の投与歴を割付因子とした動的割付を用いて、H3-2L4 100mg、200mg、400mgまたはプラセボ群のいずれかに1:2:2:2で割り付けた。適格性の基準は以下の通りであった:
(1)年齢が18歳以上75歳未満の患者であること;
(2)同意取得時の12週間以上前に1987年ACR分類基準または2010年ACR/EULAR分類基準を満たすRA患者であること;
(3)スクリーニング開始時までにMTXによる治療を6mg/週から16mg/週の範囲内で12週間以上行い、スクリーニング期および観察期の評価で、圧痛関節数6ヵ所以上(68関節中)かつ腫脹関節数6ヵ所以上(66関節中)を認める患者;
(4)治験薬投与開始4週間以上前から継続投与期完了時(または中止時)までMTXを一定の用法用量(6mg/週から16mg/週)で継続使用できる患者であること;
(5)過去にRAに対する生物学的製剤の投与歴(治験における投与歴も含む)がある場合、下記を満たす患者であること;
-RAに対する生物学的製剤の治療歴はアダリムマブ、インフリキシマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴル、エタネルセプト、トシリズマブまたはアバタセプトのうちいずれか1剤(バイオ後続品を含む);
-治験薬投与開始前12週以内にRAに対する生物学的製剤を使用していない;
(6)スクリーニング期にCRP 0.6mg/dL以上あるいは赤血球沈降速度(ESR)28mm/hr以上の患者であること;
(7)スクリーニング期の関節X線画像上に骨びらんを3ヵ所以上認める患者あるいはリウマトイド因子(RF)または抗cyclic citrullinated peptide(CCP)抗体が陽性であり骨びらんを1ヵ所以上認める患者であること;および(8)スクリーニング期の体重が30kg以上100kg以下の患者であること。
【0155】
3-2:治験薬の投与
本治験で用いた治験薬の種類、処方は以下のとおりである。
【表3】
【0156】
【表4】
【0157】
投与期は24週間とし、H3-2L4またはプラセボを0週、1週、2週、以降2週ごとに22週まで二重盲検下で投与した。
【0158】
投与期の24週時の評価を完了した被験者は、継続投与期に移行した。継続投与期は治験薬投与開始104週後までとし、H3-2L4 200mgを非盲検下で2週ごとに102週まで投与した。また、継続投与期において効果不十分あるいは再燃時(1週間以上間隔を空けた連続する2回の評価において圧痛関節数および腫脹関節数のいずれも観察期と比較して改善が認められない場合)には、1度に限り増量(400mgを2週ごとに6回投与)することも可とした。治験薬投与は、当日予定する全ての調査(投与部位所見は除く)が終了した後に実施した。
【0159】
本治験では1バイアル(1mL)中にH3-2L4 50mg、100mgまたはプラセボを含む治験薬を使用した。投与期0~10週は4mL、12~22週は2mLを皮下投与した。継続投与期においては、H3-2L4 200mg投与時は2mL、H3-2L4 400mg投与時は4mLを皮下投与した。2mLの投与時は左右上腕部、左右腹部または左右大腿部のいずれかに1mLずつ2ヵ所に分けて、4mLの投与時は1mLずつ4ヵ所に分けて皮下投与した。なお、4mL投与時については、治験責任医師または治験分担医師が適切に皮下投与できると判断した場合に限り、2mLずつ2ヵ所に分けて皮下投与することも可とした。
【0160】
評価は0週を基点として、1週~12週は前後3日以内に、14週以降は前後7日以内に実施した。追跡調査期については、規定日の前後7日以内(「最終投与70日後」は「後7日以内」)に実施した。ただし、治験薬の投与間隔は、投与開始2週目までは中3日以上、投与開始4週目以降は中6日以上あけることとした。予定された評価および治験薬の投与がこの範囲内に実施できない場合には、治験薬の投与は休薬としたが、各評価は実施した。
【0161】
本治験には、プラセボ群として54例、H3-2L4 100mg群として28例、200mg群として54例、400/200mg群として54例、合計190例が組み入れられ、このうち169例が投与期を完了した。
【0162】
3-3:有効性
投与量別に各評価時期におけるACR20反応率、ACR50反応率、ACR70反応率等の評価を行った。
【0163】
12週後のACR20反応率はプラセボ群で37.0%(20/54例)、100mg群で39.3%(11/28例)、200mg群で48.1%(26/54例)、400/200mg群で46.3%(25/54例)であった。また、ACR50反応率はプラセボ群で14.8%(8/54例)、100mg群で10.7%(3/28例)、200mg群で25.9%(14/54例)、400/200mg群で18.5%(10/54例)、ACR70反応率はプラセボ群で3.7%(2/54例)、100mg群で3.6%(1/28例)、200mg群で9.3%(5/54例)、400/200mg群で7.4%(4/54例)であった(図3)。24週後のACR20反応率はプラセボ群で35.2%(19/54例)、100mg群で39.3%(11/28例)、200mg群で53.7%(29/54例)、400/200mg群で57.4%(31/54例)であり、200mg群、400/200mg群ではプラセボ群と比較して有意に高かった。ACR50反応率はプラセボ群で16.7%(9/54例)、100mg群で17.9%(5/28例)、200mg群で25.9%(14/54例)、400/200mg群で27.8%(15/54例)、ACR70反応率はプラセボ群で5.6%(3/54例)、100mg群で14.3%(4/28例)、200mg群で11.1%(6/54例)、400/200mg群で13.0%(7/54例)であった(図4)。なお、早期中止またはその他の理由で各評価時点の有効性データに欠測が認められた症例については、non-responder imputation(NRI)にてデータを補完した。
【0164】
3-4:CD16+単球割合によるサブグループ解析
蛍光標識抗CD14抗体をAlexa Fluor 647-CD14(BioLegend、325612)からBrilliant Violet-CD14(BioLegend、325628)に変更した以外は、2-4に記載の方法と同一の方法で、投与前(1日)(ベースライン)に採取した末梢血中の全単球中の単球中のCD16+単球の割合(百分率)を算出した。3-3と同様、有効性における、早期中止またはその他の理由で各評価時点の有効性データに欠測が認められた症例については、non-responder imputation(NRI)にてデータを補完した。
【0165】
ベースラインにおけるCD16+単球割合の中央値(Median:10.35%)で全体集団を2分割した際のACR反応率を以下に示す。CD16+単球割合が中央値未満(<10.35%)の集団における12週後のACR20反応率はプラセボ群で43.3%(13/30例)、100mg群で20.0%(2/10例)、200mg群で45.5%(10/22例)、400mg群で27.3%(6/22例)、ACR50反応率はプラセボ群で13.3%(4/30例)、100mg群で10.0%(1/10例)、200mg群で22.7%(5/22例)、400/200mg群で9.1%(2/22例)、ACR70反応率はプラセボ群で3.3%(1/30例)、100mg群で0.0%(0/10例)、200mg群で4.5%(1/22例)、400/200mg群で4.5%(1/22例)であった(図5)。一方、CD16+単球割合が中央値以上(≧10.35)の集団における12週後のACR20反応率はプラセボ群で35.0%(7/20例)、100mg群で53.3%(8/15例)、200mg群で53.8%(14/26例)、400/200mg群で56.5%(13/23例)、ACR50反応率はプラセボ群で20.0%(4/20例)、100mg群で13.3%(2/15例)、200mg群で34.6%(9/26例)、400/200mg群で26.1%(6/23例)、ACR70反応率はプラセボ群で5.0%(1/20例)、100mg群で6.7%(1/15例)、200mg群で15.4%(4/26例)、400/200mg群で8.7%(2/23例)であり(図6)、CD16+単球割合が中央値以上の集団においてH3-2L4の有効性が強く検出されることが示唆された。
【0166】
24週後のACR反応率においても、CD16+単球割合が中央値未満の集団におけるACR20反応率はプラセボ群で43.3%(13/30例)、100mg群で20.0%(2/10例)、200mg群で54.5%(12/22例)、400/200mg群で45.5%(10/22例)、ACR50反応率はプラセボ群で20.0%(6/30例)、100mg群で10.0%(1/10例)、200mg群で13.6%(3/22例)、400/200mg群で13.6%(3/22例)、ACR70反応率はプラセボ群で6.7%(2/30例)、100mg群で0.0%(0/10例)、200mg群で9.1%(2/22例)、400/200mg群で9.1%(2/22例)であったが(図7)、CD16+単球割合が中央値以上の集団におけるACR20反応率はプラセボ群で30.0%(6/20例)、100mg群で46.7%(7/15例)、200mg群で57.7%(15/26例)、400/200mg群で69.6%(16/23例)、ACR50反応率はプラセボ群で15.0%(3/20例)、100mg群で26.7%(4/15例)、200mg群で34.6%(9/26例)、400/200mg群で39.1%(9/23例)、ACR70反応率はプラセボ群で5.0%(1/20例)、100mg群で26.7%(4/15例)、200mg群で7.7%(2/26例)、400/200mg群で13.0%(3/23例)であり(図8)、CD16+単球割合が中央値以上の集団において、より明確な用量反応性をもってH3-2L4の有効性が検出されることが示唆された。
【0167】
なお、ベースラインにおけるCD16+単球割合の中央値(Median:10.35%)で全体集団を2分割した際に両群間の被験者背景に偏りは生じておらず、CD16+単球割合による患者層別結果を解釈する上で特段注意すべき交絡因子は無いと考えられた(表5)。
【表5】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
0007550142000001.app