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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】リニア電気機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20240905BHJP
   F15B 15/24 20060101ALI20240905BHJP
   H02K 35/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H02K41/03 A
F15B15/24
H02K35/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021538951
(86)(22)【出願日】2020-01-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 GB2020050006
(87)【国際公開番号】W WO2020141324
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】1900115.5
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514035084
【氏名又は名称】リバティーン エフピーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コッカリル,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘインズ,エドワード
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-117149(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013218074(DE,A1)
【文献】特表2001-525530(JP,A)
【文献】特公昭45-022260(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B15/00-15/28
H02K24/00-27/30
31/00-35/06
39/00-41/06
47/00-47/30
53/00
99/00
H02N1/00-1/12
3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニア電気機械(linear electrical machine)であって、
ハウジングに取り付けられた少なくとも1つのステータであって、前記ハウジングおよび前記少なくとも1つのステータが作業シリンダを画定する、少なくとも1つのステータと、
前記作業シリンダ内の2セクションの中央コアであって、前記コアの2つのセクションは同軸であり、別体であり、前記作業シリンダ内に片持ち式に取り付けられる、中央コアと、
前記作業シリンダと前記2つのセクションとの間に設けられる円筒形のステータボアキャビティと、
1つまたは複数の中空のトランスレータであって、各トランスレータは、前記中央コアの各セクションが前記1つまたは複数のトランスレータの一部によって横断されるように前記ステータボアキャビティ内で軸方向に移動可能であり、これによりそれぞれのトランスレータとステータとの間に外部磁気回路エアギャップ(exterior magnetic circuit airgap)が形成される、1つまたは複数の中空のトランスレータと、
前記中央コアのセクションと前記1つまたは複数のトランスレータの間に、1つまたは複数のたわみ部材(flexure)および/またはベアリングと
前記1つまたは複数のトランスレータの少なくとも1つの表面に設けられる1つまたは複数のベアリングジャーナルと
を有することを特徴とするリニア電気機械。
【請求項2】
記セクションは互いに対向することを特徴とする請求項1に記載のリニア電気機械。
【請求項3】
各セクションは、前記ハウジングの端部から軸方向に延在することを特徴とする請求項1または2に記載のリニア電気機械。
【請求項4】
前記トランスレータは、両方のセクションにわたって移動可能であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のリニア電気機械。
【請求項5】
前記トランスレータは、前記中央コアの間で自由に往復運動する前記トランスレータのセクション上において前記トランスレータの中空部分に向かって内側に突出する少なくとも1つの要素を有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のリニア電
気機械。
【請求項6】
前記少なくとも1つの突出要素は、力連結部(force coupling feature)を提供することを特徴とする請求項に記載のリニア電気機械。
【請求項7】
前記力連結部は、前記作業シリンダに対して中央に位置する支持体であることを特徴とする請求項に記載のリニア電気機械。
【請求項8】
前記力連結部は開口部を有さず、これにより、各チャンバ内の圧力が前記力連結部の表面にわたって作用するように、前記力連結部とそれぞれの前記セクションの自由端との間に一対のチャンバが画定されることを特徴とする請求項またはに記載のリニア電気機械。
【請求項9】
記支持体は、中実の壁であることを特徴とする請求項または請求項7を引用する請求項8に記載のリニア電気機械。
【請求項10】
少なくとも1つの前記セクションは、中空であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のリニア電気機械。
【請求項11】
力接続ロッド(force connecting rod)が、前記トランスレータの内部に接続され、中空の前記セクションを通って延在することを特徴とする請求項10に記載のリニア電気機械。
【請求項12】
前記力接続ロッドは、前記力連結部に接続されていることを特徴とする請求項を引用する請求項11に記載のリニア電気機械。
【請求項13】
2つのトランスレータをさらに有し、前記2つのトランスレータの第1トランスレータと第2トランスレータは、それぞれのセクション上を移動可能であり、それぞれのトランスレータとステータとの間に別個の外部磁気回路エアギャップを形成することを特徴とする請求項2または3に記載のリニア電気機械。
【請求項14】
前記2つのトランスレータは、前記2つのトランスレータの間に中央チャンバを画定し、前記チャンバ内の圧力が前記2つのトランスレータの表面に作用することを特徴とする請求項13に記載のリニア電気機械。
【請求項15】
前記2つのトランスレータは、同一の前記作業シリンダ内に配置されることを特徴とする請求項13または14に記載のリニア電気機械。
【請求項16】
記複数のベアリングは、前記少なくとも1つのステータの全長にわたって分散配置されていることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載のリニア電気機械。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
リニア電気機械
本発明は、リニア電気機械に関する。
【0002】
当該リニア電気機械は、燃焼圧力がトランスレータに作用して有用な電力出力を生成するフリーピストンエンジンリニアジェネレータとして使用すること、高圧ガスがトランスレータに作用して有用な電力出力を生成するガスエキスパンダとして使用すること、電気入力がトランスレータ内で動きを誘発してガスを加圧するガスコンプレッサとして使用すること、トランスレータの動きが生じるあるいは作業チャンバ内の油圧流体の変位によってトランスレータの動きが引き起こされる油圧システムで使用すること、電気入力がトランスレータの動きを誘導して所望の作動効果をもたらすアクチュエータとして使用すること、を含むがこれらに限定されない様々な用途において使用することができる。
【0003】
上記アクチュエータは、変位および振動試験システム、製造作業、およびロボットで使用することができる。変位および振動試験システムの用途では、アクチュエータを使用して、周期的な力または運動プロファイルを試験対象に適用することができる。試験対象は、材料サンプル、別個の構成要素、構成要素のサブシステムアセンブリ、または完全な製品であり得る。そのような試験の目的は、適用される力または変位関数に対する試験対象の耐久性を決定することであり得る。あるいは、試験は、印加された力または変位関数に対する試験対象の応答を特定することを目的とすることもできる。
【0004】
自動車産業では、サブアセンブリ試験および完全な製品試験のためにこのような試験アクチュエータが広く利用されている。試験アクチュエータは、典型的には、車両または車両の一部、例えば1つ以上の車輪またはサスペンション部品を支持するように構成される。
【0005】
特に、車両試験の適用例において、本発明は、車両のそれぞれの角が典型的には別個のアクチュエータに支持される道路シミュレータ車両試験システムの一部として利用されてもよい。支持体は、車両の車輪に直接提供されてもよいし、サスペンション部分、スタブ軸、または支持アームなどの他の構成要素に提供されてもよい。アクチュエータは、特定の状況において車両の本体に適用することができる。また、アクチュエータの動きは、様々な路面および他の地形における車両の動きをシミュレートすることができる。したがって、試験環境は、異なる運転速度および路面条件を表す力または変位入力関数を車両に適用することができる制御された環境である。例えば、高周波数変位の振幅を変化させることによって、より粗いまたはより滑らかな路面をシミュレートすることができる。あるいは、大きな負荷を加えて、路面のくぼみや他のより大きな特徴をシミュレートすることができる。このような試験は、車両の開発において使用されて、運転時の騒音を低減し、車両サスペンション構成要素が、所望の範囲の駆動条件に対して十分な性能および耐久性を有することを保証することができる。
【0006】
代表的な運転速度での道路負荷を特徴付ける高周波数変位をシミュレートするために、サーボ・油圧システムは、一般に、自動車試験システムの基礎として使用される。これらのシステムでは、サーボ油圧パワーパックにより高圧油圧流体が生成され、高圧油圧流体は1つ以上のサーボバルブを使用して油圧アクチュエータに供給される。これらのシステムには、周知の種々の欠点が存在する。
【0007】
第1に、油圧油およびサーボ油圧パワーパックのコンポーネントの慣性により、発生し
得る道路の負荷関数の実用周波数が約150Hzに制限される。これは、20mm以下のスケールの特徴物によって決まる路面粗さを正確に表すのに必要な性能レベルよりもはるかに低いものであり、車両の構造において共振を誘起することが知られている入力振動周波数よりも低いものであり、この結果、望ましくないキャビン騒音が発生する。
【0008】
第2に、サーボ油圧システムは、試験設備内に高価かつ専用の機構を必要とし、この機構は、非常にかさばる可能性があるが、システム内を移動する油の慣性を制限するためには、油圧アクチュエータに比較的近い位置に配置する必要がある。また、この機構は、専門技術者による運用やメンテナンスの専門知識が必要である。
【0009】
第3に、サーボ油圧システムは、大きな電力を消費するため、運用にコストがかかり、自動車開発および製造において炭素排出のフットプリントに影響を及ぼす。
【0010】
第4に、サーボ油圧システムは、騒音が大きく、試験対象物の応答に起因する騒音と、試験アクチュエータシステム自体の騒音とを区別することが難しい。
【0011】
これらの欠点があるため、特定の自動車試験での用途や他の試験アクチュエータでの用途のために、サーボ油圧システムの代わりにリニア電磁アクチュエータが採用されつつある。リニア電磁アクチュエータは、応答性がより高く、よりコンパクトであり、操作がより容易であり、維持がより容易であり、効率がより高く、騒音が小さいという利点がある。
【0012】
このようなシステムには、従来技術で説明されるアクチュエータが、電気機械トランスレータを通じて、または電気機械トランスレータと共に、かつ試験対象物内に、静荷重を与えることを可能にするよう、ばねおよび/または空気圧シリンダが設けられる。この構成は、試験対象物の重量のバランスをとるために、および/または試験対象物が試験開始前に正しい位置にあることを保証するために、作動前にアクチュエータの固定力成分を調整することを可能にする。
【0013】
米国特許第7401520号明細書には、複数の装置を備える車両を試験するためのシステム全体が開示されており、複数の装置のそれぞれは、車両の車輪の少なくとも一部を支持するためのフレームと、フレーム内に少なくとも部分的に収容されるリニア電磁アクチュエータとを備え、リニア電磁アクチュエータは、可動の磁石を有し、使用時に、車両車輪に対して実質的に垂直な制御された力を付与する。各装置は、複数の支持された車両車輪のうちの対応する1つに制御された実質的に垂直な力を独立して付与するように構成され、複数の空気ばね(エアバッグと呼ばれることもある)または代替的に機械的ばね(コイルばね、ねじりばねおよび板ばねからなる群から選択される)が、支持された車両を水平にするために提供される。
【0014】
このようなシステムには、多数の欠点が存在する。
【0015】
第1に、エアバッグまたは機械ばねとホイールプレートまたは電気機械ムーバ(electrical machine mover)との間の耐荷重機械接続(load-bearing mechanical connection)の要件は、移動アセンブリに慣性質量を付加する。この付加による慣性は、所与の変位に対してアクチュエータが達成できるピーク周波数を減少させる。
【0016】
第2に、エアバッグまたは機械ばねなどのコンプライアント材料(compliant material)の使用により、試験アクチュエータシステム内で望ましくない共振が生じる可能性があり、試験対象物に適用される入力関数が不完全となる可能性がある。
【0017】
第3に、米国特許第7401520号明細書に開示されている構成は、各アクチュエータテストフレーム内に別個のばねおよび電気機械アセンブリを結合する必要があるため、構造の不必要なレベルの複雑さを必要とし、結果として、装置全体のコストおよびサイズを増大させる。
【0018】
米国特許第8844345号明細書には、制御された態様で自動車などの試験対象物に運動を行わせる装置が開示されている。装置のベースには、第1の端部と第2の端部とを有するリニア電磁モータが取り付けられており、第1の端部はベースに接続されている。空気圧シリンダおよびピストンの組み合わせは、第1の端部および第2の端部を有し、第1の端部は、空気圧シリンダおよびピストンの組み合わせがリニア電磁モータとほぼ平行になるようにベースに接続される。リニア電磁モータと空気圧シリンダおよびピストンの組み合わせとのそれぞれの第2の端部は、試験対象物用のマウントに追加的に取り付けられる可動部材に共通に連結される。リニア電磁モータと空気圧シリンダおよびピストンの組み合わせとの制御システムは、空気圧シリンダおよびピストンの組み合わせを駆動して、試験対象物の実質的な静荷重を支持し、リニア電磁モータは、試験対象物に制御された運動を行わせる。
【0019】
このようなシステムには、米国特許第7401520号明細書での説明と同様に、多くの欠点が存在する。
【0020】
第1に、空気圧シリンダおよびピストンの個別の組み合わせの要件、試験対象物に対する耐荷重可動部材の要件およびマウントの要件により、移動アセンブリに大きな慣性質量が加わる。この追加の慣性は、所与の変位に対してアクチュエータが達成できるピーク周波数を減少させる。
【0021】
第2に、エアバッグまたは機械的ばねではなく、空気圧シリンダおよびピストンの組み合わせを使用することで、空気圧シリンダとピストンとの間に摺動シール(sliding seal)による摩擦が生じる。この摩擦は、試験対象物に加えられる正味の力に影響を及ぼし、また、アクチュエータの摩耗および寿命の減少をもたらし得る。
【0022】
第3に、米国特許第8844345号明細書に開示される構成では、各アクチュエータ試験フレーム内に、電気機械、空気圧シリンダ、可動部材、および試験対象のためのマウントを結合する必要があるため、構造が不必要に複雑なり、結果として、装置全体のコストおよびサイズが増大する。
【0023】
国際公開第2018/142137号明細書には、ハウジング本体を有するリニア電気機械の提供について開示されている。ハウジング本体は、典型的に円筒形の壁と、中空の内部を画定する端壁とから形成される。その内部は、ステータ、典型的には管状のリニア電気機械ステータを有し、ステータは、ステータの一端から他端まで軸方向に延在する円筒ボアを有する。したがって、ハウジング本体およびステータは、作業シリンダを画定する。中央コアは、作動シリンダ内でステータ14に対して少なくとも軸方向に固定され、この構成では、中央コアは、中央コアの固定点で、端壁に固定される。中央コアの上端は、中空のトランスレータによって囲まれ、トランスレータは、中央コアの上部および外部において摺動する。
【0024】
中央コアおよびステータは、それらの間でステータボアキャビティを画定する。ステータボアキャビティは、トランスレータがステータに対して軸方向に移動可能な円筒形の環状空間である。トランスレータとステータとの間には外部磁気回路エアギャップが存在する。この例示的な実施形態では、ハウジング、したがってステータは、しっかりと保持され、トランスレータは、ステータ内で中心コア上を動く。
【0025】
中央コアの主な機能は、ステータボア内のトランスレータの同軸位置を提供すること、およびトランスレータの運動のためのリニアベアリングを提供することであり、このベアリングは、ステータによって生成される電気機械的な負荷を支持するために、典型的にはステータの全長にわたって分散配置される。同軸位置が精度よく整列されないと、結果として生じる電気機械的な負荷により、リニアベアリングの過負荷、ならびに結果として生じる摩擦および摩耗が生じる。
【0026】
また、リニア電気機械は作業チャンバを有し、作業チャンバ容積の変化により、1つまたは複数のコイルに電流を誘導するトランスレータの動きが引き起こされ、または1つまたは複数のコイルの電流によって引き起こされるトランスレータの動きにより、作業チャンバの容積の変化が引き起こされる。このようなシステムの例として、燃焼圧力がトランスレータに作用して有用な電力出力を生成するフリーピストンエンジンリニアジェネレータ(free piston engine linear generator)として使用すること、高圧ガスがトランス
レータに作用して有用な電力出力を生成するガスエキスパンダ(gas expander)として使用すること、電気入力がトランスレータ内で動きを誘導してガスを加圧するガスコンプレッサ(gas compressor)として使用すること、トランスレータの動きが作業チャンバ内の油圧流体の変位を引き起こすか、またはそれによって引き起こされる油圧システムにおける使用などが挙げられる。
【0027】
アクチュエータとしてリニア電気機械を使用することに関連して上記の問題の多くは、作業チャンバ内に含まれる流体に作用するモータまたはジェネレータとしてそのようなデバイスを使用する場合にも存在することから、同様の利点が得られる。特に、フリーピストンエンジンリニアジェネレータでは、効率的かつ低排出燃焼に望ましい一貫した圧縮および膨張比を達成するために、ピストンの動きを効果的に制御しなければならない。フリーピストンエンジンフォーマットが適切に開発され商業化されるには、ピストン運動制御の課題は、解決すべき主要な課題として従来技術においても広く認識されている。フリーピストンエンジンにおいて典型的に採用されるリニア電気機械では、電気機械によって印加される力に対して高いピストン質量(piston mass)を有するこれらの機械のために、
所望のレベルの運動制御を達成することはほぼ不可能である。この計量、あるいは「特定の力」と呼ばれることもあるその逆数(移動質量の単位当たりの力)は、フリーピストンエンジンの運動制御における最も重要な決定因子である。
【0028】
ピストン運動によりストロークの終わりに達成される圧力または変位容積が決まるため、適切なピストン運動を制御する性能は、フリーピストンガスエキスパンダ(例えば、ランキンサイクルの廃熱回収システムまたは冷凍サイクル)、フリーピストンガスコンプレッサ、およびフリーピストンポンプを含む、リニア塩基機械を使用する適用例において重要である。ピストンのストローク位置の端部における制御されてないあらゆる変化が、デバイス性能に直接影響する。
【0029】
本発明は、上記の1つ以上の問題を解決することを目的とする。
【0030】
本発明に係るリニア電気機械(Linear Electrical Machine;LEM)は、ハウジング
に取り付けられた少なくとも1つのステータであって、ハウジングおよび少なくとも1つのステータが作業シリンダを画定する、少なくとも1つのステータと、作業シリンダ内の2セクションの中央コアであって、コアの2つのセクションは同軸であり、別体であり、作業シリンダ内に片持ち式に取り付けられる、中央コアと、作業シリンダと2つの中央コアセクションとの間に設けられる円筒形のステータボアキャビティと、1つまたは複数の中空のトランスレータであって、各トランスレータは、前記中央コアの各セクションが前記1つまたは複数のトランスレータの一部によって横断されるように前記ステータボアキ
ャビティ内で軸方向に移動可能であり、これによりそれぞれのトランスレータとステータとの間に外部磁気回路エアギャップが形成されることを特徴とする。
【0031】
このようなLEMでは、LEMの所与の出力に対して中央コアの任意の部分のカンチレバー長が短縮されるため有益である。また、LEMの所与の幾何学的形状におけるより大きな機能ストローク長(functional stroke length)を可能にし、これにより所与のサイズおよび形状のLEMからの出力が増大する。
【0032】
これは、図21および図22を参照した以下の説明によってさらに理解される。
【0033】
中央コアを有するリニア電気機械の形状は、以下の5つの線形寸法によって特徴付けられる。
(1)ステータ長さS
(2)機能ストローク長F
(3)中心コア長C
(4)中心コアベアリング長B
(5)トランスレータ長T
【0034】
ステータは、トランスレータと係合すると、トランスレータに力を発生させて、トランスレータと有用な作業を交換することができる。機能ストローク長Fは、有用な作業が行われる間にトランスレータとステータとの間の相対移動の量を表す。有用な仕事は、有用な電気エネルギー出力または有用な機械的運動出力(ニュートンメートル)の発生をもたらす、軸方向の電気機械力(ニュートン、典型的にはSに比例)およびトランスレータの軸方向の運動(メートル、典型的にはFに等しい)の積である。他のすべてが等しい場合、SおよびFを増加させると、機械の有用な作業出力が大きくなる。
【0035】
長さがCである中心コアの主な機能は、ステータボア内のトランスレータの同軸位置を提供すること、およびトランスレータの動きのためのリニアベアリングを提供することであり、このベアリングは、ステータによって生成される電気機械の負荷、すなわち、S=Bを支持するために、典型的にはステータSの全長にわたって分散配置される。同軸位置が精度よく整列されないと、結果として生じる電気機械的な負荷により、リニアベアリングの過負荷、ならびに結果として生じる摩擦および摩耗が生じる。
【0036】
この構成では、中央ベアリングの機能は、典型的には、トランスレータの内側のジャーナルがストローク全体にわたって係合したままであることを必要とし、したがって、T>S+Fである。
【0037】
任意の所与の半径方向ジオメトリについて、
(i)電気機械力は、典型的には、ステータの単位長さ当たり均一に適用される
(ii)トランスレータ質量は、典型的には、トランスレータ長に比例する。
【0038】
したがって、大きな特定の力(力/質量)が求められる用途では、T/Sを最小にすることが望ましい。T>S+Fである場合、T/S>1+F/Sが成り立ち、したがって、T/Sを最小にするためには、他の制約を受けるため、トランスレータ長さS/Fに対するステータ長さの比を最大にすることが望ましい。
【0039】
中央コアによって提供される同軸位置の精度は、(i)カンチレバーの長さの3乗と共に増加する電気機械的な負荷の作用下でのカンチレバーの曲げ、および(ii)カンチレバーの長さと共に線形的に増加する、中央コア軸とカンチレバー根元の平面との間の製造公差(真直度および垂直度を含む)に影響を受ける。
【0040】
したがって、所与の電気機械的な負荷(Sに比例)に対して、中央コアのカンチレバー長さCを半分にすると、屈曲衝撃が8倍減少し、中央コアによって提供されるトランスレータとステータの同心性の制約(concentricity constraint)に対する機械的ば公差の影響が半分になる。
【0041】
このため、他の制約のもとで有用な作業出力を最大化するために、ステータ長さに対する中心コア長さの比および機能ストローク(すなわち、C/SおよびD/Fの両方)を最小化することが望ましい。図2に示すような単一の中央コアを有するLEMでは、中央コアがステータの全長にわたってリニアベアリングを提供するためには、中央コア長さはC>F+Sである。
【0042】
したがって、C/S>F/S+1であり、C/F>1+S/Fである。
【0043】
分割中心コア(split central core)を有するLEMでは、中心コアの長さはC>F+S/2であり、したがって、C/F>1+1/2(S/F)である。
【0044】
したがって、それぞれがカンチレバーによって別々に支持される2つ以上のセクションに中央コアを設けることは、大きな特定の力(ここで、S/TおよびS/Fは共に最大化される)のために設計された機械において、以下を意味する。
(a)ステータ長の単位当たりのカンチレバーの長さ(C/S)は、2分の1とすることができる
(b)機能ストローク長(C/F)の単位長さ当たりのカンチレバーの長さは、2分の1とすることができる。
【0045】
2つの中央コアが共通の中央チャンバに対向するよう配置された実施形態において、それぞれの独立したトランスレータのストロークを組み合わせて、機能ストローク長さ(C/F)の単位当たりのカンチレバーの長さが2分の1になるように、所与のカンチレバー長さCについて、共通の作業チャンバに作用する有効な機能ストローク長さを2倍にする(F=2×F’)ことができる。
【0046】
コアセクションは、互いに反対側に設けられることが好ましく、互いに対向するように設けられてもよい。
【0047】
各コアセクションは、ハウジングの端部から軸中心方向(axial centre)に延在してもよい。
【0048】
単一のトランスレータは、両方のコアセクションにわたって移動可能とすることができる。
【0049】
トランスレータは、中央コア間で自由に往復運動するトランスレータのセクション上において内側に突出する少なくとも1つの要素を有する。少なくとも1つの突出要素は、他の要素と接続または他の要素に当接することができる力連結部(force coupling feature)を提供してもよい。一例では、力連結部は、2つのコア間に配置され、2つの中央コアセクション間でトランスレータと共に往復運動する中央の支持体とすることができる。
【0050】
力連結部は、開口部を有さない構成とすることができ、これにより各チャンバ内の圧力が力連結部の表面全体にわたって作用するように、力連結部とそれぞれの中央コアセクションの自由端との間に一対のチャンバを画定することができる。中央の支持体は、力連結部として機能し、中実の壁とすることができる。
【0051】
中央コアセクションのうちの少なくとも1つは中空であってもよい。力接続ロッド(force connecting rod)は、トランスレータの内部に接続されてもよく、中空のコアセクションを通って延在してもよい。力連結部の目的は、力接続ロッドによって力をトランスレータに与えて電流を発生させることができるように、力接続ロッドをトランスレータに接続することであり、したがって、任意の適切な形状とすることができる。
【0052】
力接続ロッドは、力連結部に連結されてもよい。
【0053】
2つのトランスレータがさらに設けられてもよく、この2つのトランスレータの第1トランスレータと第2トランスレータは、それぞれの中央コアセクション上を移動可能であり、それぞれのトランスレータとステータとの間に別個の外部磁気回路エアギャップ(exterior magnetic circuit airgap)を形成する。
【0054】
ステータは、2つのセクションに形成されてもよく、それら別体のステータセクションは、各中央コアに関連付けられる。
【0055】
2つのトランスレータの間に、チャンバ内の圧力が2つのトランスレータの表面に作用する中央チャンバが画定されてもよい。
【0056】
2つのトランスレータは、同じ作業シリンダ内に配置されてもよい。
【0057】
上記で定義した本発明は、以下のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0058】
2つの部品のコアを有する上記のリニア電気機械は、ハウジング内に取付けられたステータを備え、ハウジングおよびステータは作業シリンダを画定し、作業シリンダ内の中央コアが中央コアと作業シリンダとの間で円筒形のステータボアキャビティを画定し、中空トランスレータが作業シリンダ内で軸方向に可動であり、中空トランスレータはステータボアキャビティ内で延在してトランスレータとステータとの間に外部磁気回路エアギャップを形成し、中央コアとトランスレータとの間の少なくとも1つのたわみ部材(flexure
)またはベアリングが、ステータボアキャビティ内のトランスレータの同軸位置を提供し、中央コアはステータに対して軸方向に固定されている。
【0059】
ベアリングまたはたわみ部材は、流体ベアリングとすることができ、流体ベアリングは、ガスベアリングとすることができ、典型的には、作動シリンダがガスを含む場合に適している。あるいは、流体ベアリングは、流体力学的ベアリングまたは静水力学的ベアリングとすることができ、典型的には、作動シリンダが液体を含む場合に適している。本明細書では、流体ベアリングの使用に言及する場合、これは、ガスベアリング、流体力学的ベアリング、および静圧ベアリングのいずれかを意味するものとする。流体ベアリングは、トランスレータおよび中心コアの同軸位置を提供する。
【0060】
上記の構成、特に中央コアとトランスレータとの間に流体ベアリングが設けられていることで、ステータの下方にある外部流体ベアリングと係合したままにするために、トランスレータの長さをステータの下端を超えるようにする必要がなく、これによりトランスレータの質量は、電磁力を使用する場合に比べて実質的に減少する。トランスレータおよび中心コアの同軸(したがって同心)位置を提供することに加えて、流体ベアリングは、リニア電気機械ステータによって生成される任意の側面荷重に対抗するための反力を提供する。中央コア上および電気機械ステータの上端および下端内に流体ベアリングを設けることによって、ステータと流体ベアリングとの間の側面荷重力伝達路(side load force transmission path)の長さが短くなる。トランスレータによるベアリング位置への側方荷
重力の伝達は、ベアリング間のビームの曲げ、または単一のベアリングの両側へのカンチレバーの曲げをもたらす。そのような屈曲は、トランスレータと中央コアとの間の位置が非同心となったり、さらにはトランスレータとステータとの間の位置が非同心となったりする可能性があり、望ましくない。したがって、本発明の構成により、電気機械ステータの側面荷重の作用下でトランスレータの曲げを制限するのに十分なトランスレータ剛性を提供するための追加のトランスレータ質量の必要性が抑えられる。したがって、本発明によれば、リニア電気機械ステータとトランスレータとの間の同軸(したがって同心)関係を、代替の構成の場合よりも、移動質量の単位当たりの電気機械力をより大きい状態で維持することができる。
【0061】
流体ベアリングのうちの少なくとも1つは、好ましくは、中央コアに取り付けられ、中空トランスレータの内部の一部に形成されたベアリング表面上を移動する。流体ベアリングは、典型的には別体の構成要素であり、供給源からベアリングギャップ内への流体または液体ベアリング流体の流れを提供する。トランスレータ上ではなく固定中央コア上に流体ベアリングを配置することは、トランスレータの移動質量に寄与するこのコンポーネントの追加質量を回避する。ベアリングジャーナル表面は、中空トランスレータの構造上に形成されてもよく、トランスレータに別個の構成要素を追加する必要がない。したがって、この構成は、トランスレータの移動質量を最小に保ちながら、電気機械ステータによって発生された側面荷重を中央コアに伝達する流体ベアリング機能の組み込みを可能にする。
【0062】
少なくとも1つの流体ベアリングは、好ましくは、トランスレータおよびステータの同軸(したがって同心)位置ならびにそれらの間の外部磁気回路エアギャップを画定する。したがって、この構成は、トランスレータの移動質量を最小に保ちながら、中央コアおよび磁気回路エアギャップに対してトランスレータを正確に位置決めするための低摩擦流体ベアリング機能の組み込みを可能にする。
【0063】
また、ラビリンスシールを使用することも可能であり、この場合、流体の流れおよび作業チャンバと流体ベアリングとの間の圧力の差は、トランスレータ内に一連の環状チャネルを設けることによって制御される。ラビリンスシールは、ピストンエキスパンダおよびコンプレッサの適用において一般に使用される非接触シールである。本発明におけるラビリンスシールの適用によって、適用しない場合に発生する接触シールに係る摩擦を低減するとともに、流体ベアリングと作業チャンバとの間の別個の流体圧力逃し部(fluid pressure relief feature)の必要性を低減することができる。
【0064】
LEMは、トランスレータに力を印加するための、作動シリンダ内に少なくとも1つの作業チャンバおよび/または予圧チャンバをさらに有してもよい。作業チャンバおよび/または予圧チャンバは、好ましくは、ステータボアおよびベアリングギャップと同軸である。この構成によって、本発明では、LEMの構造内に作業チャンバおよび/または予圧チャンバの密接な統合を可能にし、機械の全体的なサイズを低減するのに役立つ。予圧チャンバは、高圧で供給され、トランスレータに合力(net force)を与える流体を含む。
アクチュエータ構成において、これは、試験対象物の重量のバランスをとるのに役立ち、および/または試験対象物が試験開始前に正しい位置にあることを保証するのに役立つ。この密接な統合はまた、作業チャンバおよび/または予圧チャンバとトランスレータとの間に負荷経路を提供する別個の機械的要素の必要性を低減し、これにより移動質量が減少する。
【0065】
剛性壁要素を使用して予圧チャンバを形成することで、エアバッグまたは機械的ばねにおいて使用されるコンプライアント材料を使用する必要がない。これにより、コンプライアント材料を使用した場合に試験対象物に適用される入力関数に影響を及ぼす可能性があ
るアクチュエータシステムの共振に関する影響を低減する。
【0066】
また、この構成により、サイズ、特にその幅がコンパクトなアクチュエータまたはLEMを提供できる。
【0067】
少なくとも1つの流体ベアリングを設けることによって、トランスレータとステータとの間に非常に低い摩擦界面が提供される。この構成は、典型的には摺動接触ベアリング(sliding contact bearing)で見られるものよりも低い機械摩擦および摩耗を提供し、転
がり要素ベアリング(rolling eLEMent bearing)の往復質量ペナルティ(reciprocating mass penalty)なしにこの利益が得られる。したがって、この構成は、システムの低い慣性により、より高い周波数の動作を可能にする。加えて、流体ベアリングは、接触シールに付随する摩擦を伴わずに、任意の作業チャンバ内の圧力を保持するための効果的な非接触圧力シールの一部を形成することができる。
【0068】
本発明は、磁気回路エアギャップに関する。本発明の目的においては、この用語は、比透磁率が空気の比透磁率に近くなるギャップを意味する。このギャップは、空気または別の流体を含んでもよいし含まなくてもよい。このような使用方法は、電気機械の分野において周知である。
【0069】
1つまたは複数のベアリングジャーナルは、トランスレータの内面および外面の一方または両方に設けることができる。
【0070】
予圧チャンバは、ばねのように作用することができ、チャンバは非ゼロばね速度(non-zero spring rate)であり、その結果、予圧力はトランスレータが移動するにつれて変化する。代替的な構成において、チャンバは、ゼロばね速度(zero spring rate)となるように配置することができる。予圧チャンバは、チャンバ内の圧力を調整するための少なくとも1つの導管を備えてもよい。この導管によって、予圧チャンバ内の圧力が一定になるように調節することができ、これによりゼロばね速度の構成が実現する。
【0071】
電気機械は、可動トランスレータに磁石を固定する可動磁石型であってもよい。可動磁石型機械は、他の電気機械型機械に比べ、単位可動質量当たりの電気機械力が高い。一実施形態では、磁束回路(flux circuit)が磁気透過性材料によって担持され、磁束がこの材料内のスロットに配置された銅コイルを流れる電流によって切断されるスロット付き機械として一般に知られる特殊型の移動磁石機械が使用される。
【0072】
代替の特殊型の移動磁石機械は、スロットレス機械(slotless machine)として一般に知られており、スロットレス機械は、スロット付き機械タイプよりも高いピーク力および低いコギング力を提供するが、効率は低い。代替の実施形態では、磁束スイッチングおよびスイッチングリラクタンス機械を含む他の確立されたリニア電気機械タイプを使用することができる。これらのタイプの機械の各々は、トランスレータ内に磁石を含まず、トランスレータが、磁性材料の劣化および結果として電気機械の性能の障害のリスクを伴うことなく、内燃およびランキンサイクル熱回収用途に関連するより高い温度で作動することが可能となる。
【0073】
端壁の可動部分の動きは、好ましくはステータボアと同軸であり、これはLEMの幅を最小化するのに役立つ。磁気回路エアギャップは、好ましくは円筒形である。
【0074】
アクチュエータでは、通常、試験対象物の取付点(mounting point)がトランスレータの上端に固定されることが好ましい。アンカーポイントは、試験対象物の取付点の代わりにあるいはこれに加えて設けることができる。アンカーポイントは、外部素子を固定、接
合、その他の方法で接続できる箇所であり、試験対象物の取付点は、特に力を被験者に伝達する目的で設けられたアンカーポイントの一種である。
【0075】
流体ベアリングは、好ましくは、トランスレータの内面上の流体ベアリングジャーナルに作用する。代替的または追加的に、流体ベアリングは、トランスレータの外面上の流体ベアリングジャーナルに作用する。
【0076】
LEMは、通常、位置または速度のうちの1つまたは複数を感知するトランスレータに接続されたエンコーダをさらに備えることができる。エンコーダには、少なくとも1つの光学的センサ、磁気的センサ、または機械的センサを使用することができる。エンコーダは、トランスレータの位置および/または速度を決定することによってアクチュエータの制御を補助する。
【0077】
少なくとも1つのベアリングギャップは、トランスレータの周りに配置された複数の軸方向に延伸する弓形の断面チャネルを含むことができる。ベアリングギャップは、円筒形であるか、または2つ以上の弓形のセクションを含む。
【0078】
LEMは、1つ以上の冷却チャネルを含むハウジング本体を含む。これらの冷却部は、ステータを流れる電流によって生成される熱を除去することによって、より高い電気機械力をトランスレータに加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
本発明の一実施形態を、添付の図面を参照して記載する。
【0080】
図1】断面AA線を示すアクチュエータとして構成されたリニア電気機械(LEM)の一例である。
図2】ストローク中における図1のLEMのAA線による断面である。
図3】断面BBおよびCCを示す代替のLEMの外観図である。
図4】中央コアおよび内部流体ベアリングを示す図3のLEMを通る軸方向の断面BBを示す図である。
図5】内部流体ベアリングおよび外部流体ベアリングを示す垂直方向の断面BBを示す図である。
図6】ストロークの上端(top)または上死点(top dead center)位置を示す垂直方向の断面BBを示す図である。
図7】ストロークの下端(bottom)または下死点(bottom dead center)位置を示す垂直方向の断面BBを示す図である。
図8】磁気回路エアギャップおよびベアリングジャーナルの詳細を示す垂直方向の断面AAの拡大図である。
図9】同心の磁気回路エアギャップおよびベアリングギャップを示す軸方向の断面CCを示す図である。
図10】内部流体ベアリングの代替構成を示す軸方向の断面CCを示す図である。
図11】中央コアおよび内部ステータの代替構成を示す断面BBを示す図である。
図12】非対称のオフセットされた予圧チャンバの別の代替構成を示す軸方向の断面BBを示す図である。
図13】中央コア、内部流体ベアリング、外部流体ベアリング、トランスレータ流体ベアリングの別の代替構成を示す垂直方向の断面BBを示す図である。
図14】ラビリンスシールの実施形態の一例を示す垂直方向の断面BBの拡大図である。
図15】中央コアがトランスレータを通る代替構成を示す軸方向の断面BBを示す図である。
図16】たわみ部材の使用を示す軸方向の断面BBの拡大図である。
図17】第1の分割2セクションコア構成を示すLEMの垂直方向の断面を示す図である。
図18】第2の分割2セクションコア構成を示すLEMの垂直方向の断面を示す図である。
図19】第3の分割2セクションコア構成を示すLEMの垂直方向の断面を示す図である。
図20】第4の分割2セクションコア構成を示すLEMの垂直方向の断面を示す図である。
図21】リニア電気機械を特徴付ける5リニア次元(five linear dimensions)を示す図である。
図22】リニア電気機械を特徴付ける5リニア次元(five linear dimensions)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図1は、アクチュエータ10として作動する第1のLEMの外観図であり、アクチュエータ10は、トランスレータ(後述する)がそれに沿って移動する動作軸20と、他の断面図のための種々の平面の位置を示す。
【0082】
図2は、ハウジング本体11を有するアクチュエータ10を示す。ハウジング本体11は、単一の構成要素から形成されてもよい。あるいは、ハウジング本体11は、円筒壁および端壁を含むがこれらに限定されないいくつかの構成要素のアセンブリから形成されてもよい。ハウジング本体11は、チャンバハウジング(予圧チャンバを画定する)またはステータハウジング(ステータを画定する)を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の追加のハウジング本体を形成するいくつかの構成要素、すなわちいくつかの壁を含む。ハウジング本体11は、典型的には、円筒形の壁12と、中空の内部を画定する端壁13とから形成される。この中空の内部には、典型的には、管状リニア電気機械ステータであるステータ14が保持され、ステータは、ステータの一端16から他端17まで軸方向に延在する円筒ボア15を有する。これにより、ハウジング本体およびステータは、作業シリンダ53を画定する。中央コア34は、作動シリンダ内でステータ14に対して少なくとも軸方向に固定され、この構成では、中央コアの固定点40で端壁13に固定される。中央コア34の上端は、中空のトランスレータ18によって囲まれており、これにより、トランスレータは、中央コア34の上方および外部に摺動する。
【0083】
中央コア34およびステータは、それらの間にステータボアキャビティ51を画定する。ステータボアキャビティは、トランスレータ18がステータ14に対して軸方向に移動可能な円筒形の環状空間である。トランスレータとステータとの間には外部磁気回路エアギャップ21(図9参照)が存在する。この例示的な実施形態では、ハウジング、したがってステータは、強固に保持され、トランスレータ18は、ステータ14内で中心コア上を動く。
【0084】
単一の細長い内部流体ベアリング35が中央コアに取り付けられ、この例では、外部流体ベアリングはハウジング本体11内には提供されない。流体ベアリングは、ステータ14と実質的に同じ長さであり、これにより、電気機械によって発生されるいずれの側面荷重(side load)も、同じ軸方向位置で流体ベアリングによって加えられる対抗力によっ
て整合される。
【0085】
代替の例では、ベアリングは、図16に示す1つ以上のたわみ部材(flexure)52に
置き換えられてもよく、あるいはたわみ部材52に補助されてもよい。これは、並進運動が小さく、典型的には2mm未満である用途において特に関連することである。このよう
な用途は、乗車ダイナミクス(ride dynamics)を制御するために車両サスペンションシ
ステムなどの短い動力入力を適用するシステムを含むが、これらに限定されない。特に、一般的な頭上スペースの制約を踏まえると、サスペンションシステム、特に車両内に搭載されたサスペンションシステムに減衰力を与える任意のシステムがある。たわみ部材は、板ばね、板ばね、ダイヤフラム、または中央コアとトランスレータとの間の他の弾性または可撓性要素の形態であってよく、軸方向の穴または間隙を有していても有しなくてもよい。たわみ部材の他の例は米国特許第5522214号明細書に示されている。いずれの例においても、たわみ部材または流体ベアリングは、トランスレータの半径方向の動きを拘束し、ステータボアキャビティ内のトランスレータの同軸位置を提供する。
【0086】
チャンバハウジング28は予圧チャンバ29を画定する。この例では、チャンバハウジングは、ハウジング本体内にあり、端壁13によって保持されている。しかしながら、チャンバハウジングは端壁を形成することができ、ハウジング本体11内に必ずしも存在する必要はない。予圧チャンバへの開口部30は、トランスレータの端部19aによって閉じられる。このようにして、トランスレータの摺動運動は、予圧チャンバの容積を変化させる。また、予圧チャンバは、少なくとも1つの導管47aを備え、導管47aを通して加圧流体を供給し、トランスレータに必要な力を供給することができる。チャンバ29は、典型的には、高圧で供給される気体(液体も可能である)であり、試験対象物の重量のバランスをとるため、および/または試験対象物が試験開始前に正しい位置にあることを保証するためにトランスレータ18に特定の力を印加する流体を含む。代替的または追加的に、等価な予圧チャンバ機能は、中央コア34の上端とトランスレータ18との間に形成されたチャンバ50によって行われてもよい。
【0087】
円筒形のステータボア15内のトランスレータ18の摺動運動は、予圧チャンバ29の容積を変化させ、シリンダ内で移動するピストンと同じ効果を生み出す。予圧チャンバ29内の作業流体は、圧縮性ガスであることが好ましいが、この流体は、トランスレータ18の動きによって導管47aを通って変位する油圧流体などの非圧縮性液体であってもよい。この構成は、並進運動および関連するガス容積変化がコンプライアント材料の変化する形状に適応し、コンプライアンス材料が共振または減衰などの望ましくないシステム挙動をもたらし得るエアバッグタイプの予荷重力システムと比べて、試験対象物の入力信号品質の改善をもたらす。
【0088】
ここで説明するいずれの例においても、予圧チャンバは、円筒形の壁であってもよいしそうでなくてもよい側壁29a、典型的に端壁13またはハウジング12の内面によって形成され、側壁29a、トランスレータ18、および中央コア34の外面によっても固定される第1の端壁29bによって形成される。したがって、チャンバ29は概して環状である。予圧チャンバは完全に閉鎖された容積ではなく、導管47aに加えて、他の小さな間隙がトランスレータ18、中央コア34およびチャンバハウジング28の間に存在する。予圧チャンバ容積の定義のため、任意のそのような間隙は、表面29a、29bおよび19aの一体部分と考えられる。1つまたは複数のシール、例えばポリマーガスシールが、このようなギャップを通して予圧チャンバからの加圧流体の著しい漏出を防止するために、この例または他の任意の例において設けることができる。
【0089】
予圧チャンバ29の容積は、トランスレータの移動によって変化する。第1の端壁29bはまた、トランスレータと共に予圧チャンバの容積を変化させることができる可動要素を有してもよい。そのような構成は、より複雑な制御が必要になるため好ましくない。代替的または追加的に、第2の端壁の可動部分として作用するために、さらなる壁要素がトランスレータ18に取り付けられてもよい。このようにして、トランスレータ自体が予圧チャンバの一部を画定するのではなく、トランスレータと共に移動可能である追加の要素が画定されてもよい。予圧チャンバは、軸20に沿って均一な断面を有することができる
【0090】
トランスレータ18の上端部19bは、アクチュエータ10の上端部から延在し、アンカーポイント33が設けられる。アンカーポイントは、試験対象物のために使用される。アンカーポイントは、試験対象物がそれ自体の重量下で定位置に位置決めおよび保持される平板または他の表面、例えば、タイヤ上に載置された車両であって、各タイヤが試験アクチュエータと接触して位置決めされる表面とすることができる。あるいは、アンカーポイントは、トランスレータを試験対象物または入力が加えられる外部システムの一部に固定するための1つまたは複数の固定手段を含むことができる。これは、トランスレータの端部を貫通する1つ以上の穴を含むことができる。
【0091】
好ましい実施形態では、エンコーダ本体32が中央コアに配置され、中空トランスレータ18の上端の内側部分に取り付けられたエンコーダスケール31がアクチュエータ内に留まることを可能にする。この例では、エンコーダは位置エンコーダであり、エンコーダスケールはシャフトであるが、エンコーダスケールは平面でもよく、エンコーダの種類として速度エンコーダでもよい。エンコーダ本体32は、中央コア34の上端内に配置されるが、他の適切な場所に配置されてもよく、トランスレータの位置および/または速度に関する情報を提供し、アクチュエータの制御を保証する。
【0092】
図3は、リニア電気機械(linear electrical machine;LEM)60の外観図であり
、LEM60は動作軸20を備えるジェネレータとして動作し、動作軸20に沿ってトランスレータ(後述する)が移動する。図3は、他の断面図における平面BBおよび平面CCの位置も示す。以下の図において、同等の構成要素については、図1および図2と同一の符号を付す。
【0093】
図4は、LEM60の断面図を示す。LEM60は、上端、すなわち予圧チャンバ29の反対側の端部に作業チャンバ42が追加され、試験対象物の装着ポイント33が除外され、作業チャンバ42への流体連通および作業チャンバ42からの流体連通を可能にする導管47bが追加されている点以外は、アクチュエータ10と同じである。作業チャンバは、内燃機関の燃焼室、高圧ガスまたは二相混合物を膨張させて電力を生成するための膨張チャンバ、電力を使用してガスまたは二相混合物を加圧するための圧縮チャンバ、または油圧流体または他の液体を受け入れるおよび変位させるための油圧チャンバとすることができる。作業チャンバは、トランスレータ18に作用して運動を発生させることができ、この運動は、ステータ14のコイルに電流を誘導する。
【0094】
図4の作業チャンバ42は、円筒形のステータボア15の直径と同じ直径を有するものとして示されている。代替の実施形態では、作業チャンバは、円筒形のステータボア15に対してより小さいまたはより大きい直径とすることができ、この場合、作動シリンダ53およびトランスレータ18は、階段状に構成することができ、それぞれが、典型的には、ステータボア15と同じ直径を有するセクションと、作業チャンバ42と同じ直径を有する別のセクションとを有する。
【0095】
以下の図はすべてLEM60を示すが、作業チャンバに固有のもの以外の、本明細書に開示される特徴のいずれかが、図1および図2のアクチュエータに等しく適用可能である。例えば、流体ベアリング構成のいずれかを、アクチュエータ10において、LEM60と同じように容易に利用することができる。
【0096】
予圧チャンバ29は、制御された力をトランスレータ18に与え、作業チャンバ内の作業流体によってトランスレータに与えられる任意の力に対抗またはバランスを取るように作用することを目的として設けられる。予圧チャンバ29のこの機能は、その「上死点位
置」(すなわち、作業チャンバ42内での移動の最も高い位置)から離れるトランスレータの下方向のストロークの間にジェネレータとして動作する場合に、電気機械によって回収されなかったトランスレータのエネルギーを蓄積することである。トランスレータがその下死点位置に到達した後、予圧チャンバが下死点から離れる上方向のストロークの間にトランスレータに力を与える結果として達成される、トランスレータ18へのこのエネルギーの戻りによって、リニア電気機械が、上死点に戻る戻りストロークにおいて、ジェネレータとして動作し続けることが可能となる。予圧チャンバ29内の流体の圧力は、予圧チャンバ導管47aによって制御されてもよく、これにより、予圧チャンバの容積がトランスレータ18の動きとともに変化することに応じて、予圧作業流体(preload working fluid)を予圧チャンバへおよび予圧チャンバから移動させることが可能になる。予圧チ
ャンバ29は、作業チャンバ42(例えば、ランキンサイクルのガスエキスパンダ用途におけるランキンサイクル流体)で使用される流体と同じ流体で充填されてもよい。あるいは、予圧チャンバ29は、気体、液体、または二相混合物であってもよいし、用途の要件に従って選択された別の流体で充填されてもよい。気体が予圧チャンバ流体として使用される場合、予圧チャンバはバウンスチャンバ(bounce chamber)として動作することが可能で有り、このバウンスチャンバでは、予圧チャンバ容積が減少するにつれて作業流体ガスの圧力が上昇し、その結果、図7に示す「下死点」のトランスレータ位置またはその周りにおいてピーク予圧チャンバ力が生じる。予圧チャンバのこのバウンスチャンバ機能は、トランスレータがストロークの最下点において停止および方向を変更するのにかかる時間を短縮し、それによって、作業チャンバおよび予圧チャンバを利用するフリーピストンエンジン、ガスエキスパンダ、または他のデバイスの動作周波数および出力密度を増加させるのに役立つ。
【0097】
図5は、内部流体ベアリング35aと外部流体ベアリング22aの両方が設けられた別のベアリング構成を示す。必要に応じて、複数の外部流体ベアリングまたは内部流体ベアリングを設けることができる。図6および図7は、流体ベアリング構成に関係なく、図6のストロークまたは「上死点」位置の最上点と、図7のストロークまたは「下死点」位置の最下点との間の中空トランスレータ18の動きを示す。図6のストロークの最上点では、トランスレータ18の下端はステータ14の下端に実質的に隣接しており、この位置では、予圧チャンバ29の容積は最大になり、作業チャンバ42の容積は最小になる。この構成において内部流体ベアリング35があることで、外部流体ベアリングとの係合を維持するために、内部流体ベアリング35がない場合にステータ17の下端の下方に必要とされるような、ステータ17の下端を超える追加のトランスレータの長さは必要なく、これにより、両方の場合で同じ電磁力に必要なトランスレータ18の質量が実質的に減少する。図7のストロークの下端において、トランスレータ18の上端は、上部流体ベアリング22aの高さよりもわずかに上にあるが、実際には、その上端は、流体ベアリング22aの上端からさらに突出するか、またはそれと同じ高さになる。
【0098】
内部ベアリングギャップ37および磁気回路エアギャップ21の詳細を、図8および図9に示す。また、図8は、トランスレータ上の外部ジャーナル23の位置も示す。これは、任意の外部流体ベアリング22aが作用する面である。内部ジャーナル表面36も示されており、内部流体ベアリング35が作用する面である。ジャーナル表面は、典型的には、トランスレータ上の適切な位置に機械加工され、トランスレータに接合するための追加の要素を必要としないので、対応する流体ベアリングが使用されない限り、典型的には、ジャーナル表面は提供されない。
【0099】
トランスレータは、流体ベアリング35の外面とトランスレータの内面上の1つ以上のジャーナル36との間に内部ベアリングギャップ37を画定する流体ベアリング35によって同軸位置に保持される。1つまたは複数の外部流体ベアリング22aが設けられる場合、任意の外部流体ベアリング22aの内面とトランスレータの外面との間のベアリング
ギャップおよび磁気回路エアギャップ21は連続的である。任意のベアリングギャップおよび任意の磁気回路エアギャップの相対的なサイズは、トランスレータ、ステータおよび流体ベアリングのサイズに依存する。ベアリングギャップは、典型的には、磁気回路エアギャップより小さいため、磁気回路エアギャップの厚さは、流体ベアリングの高い半径方向剛性によって効果的に制御される。
【0100】
流体ベアリング(内部または外部)は一般に、多孔質構造を有する環状要素であるが、ガスまたは他の流体が圧力下で供給されてベアリングギャップに荷重支持機能を提供する。いずれかの流体ベアリングは、図10に示すような形態とすることができ、流体ベアリングは、ベアリングが作動するジャーナル表面の周り(外側ベアリング用)または内側(内側ベアリング用)に離間した複数の流体ベアリングシュー44から形成される。図には2つのベアリングシュー44を示すが、3つまたは4つのベアリングシューを用いることもでき、実際には、アクチュエータのサイズおよびベアリングシューが受ける荷重に応じて、さらに多くの数を用いることも可能である。ベアリングシューは、好ましくは、トランスレータに均一な荷重を与え、ステータに対するトランスレータの同軸の位置決めを維持するように、均等に離間される。流体ベアリングは、炭素などの一般的な多孔質材料から形成される。あるいは、流体ベアリングの多孔性は、1つまたは複数の固体ベアリングまたはベアリングシューの構成要素内に機械加工された別個の穴のアレイを通して提供することもできる。
【0101】
図11は、代わりに、内部流体ベアリング(外部流体ベアリングはある場合とない場合の両方を含む)が、2つ以上の流体ベアリングによって形成されることを示す。この例では、内部流体ベアリングが、上部の内部流体ベアリング35aおよび下部の内部流体ベアリング35bに置き換えられ、ステータの上部に外部の流体ベアリング22aも示されている。
【0102】
この場合、内部流体ベアリングを分割することで、トランスレータの移動質量の単位当たりの電気機械力をより大きい力で提供するために中央コア34に取り付けられた内部ステータ38を含むことによって、その間の軸方向空間を利用することができる。これにより、作業チャンバに作用するアクチュエータまたはLEM装置の動的パフォーマンスが著しく増大する。内部ステータ38は、多くの異なる構成、例えば、上部の内部流体ベアリングと下部の外部流体ベアリング(あるいはそれら内部と外部の逆の組み合わせ)で使用することができ、図11に示される特定の構成には限定されない。
【0103】
図12は、予圧チャンバ29が均一な形状である必要はなく、予圧チャンバ自体がアクチュエータの残りの部分と同軸である必要もないことを示す。予圧チャンバ29に対する非対称オフセットは、上記の各図の構成のいずれにおいても利用することができ、これにより予圧チャンバは、不均一な断面および/または非円筒形の側壁を有することができる
【0104】
図13は、別の内部流体ベアリング25がトランスレータ18自体に設けられる別の代替構成を示す。トランスレータベアリング25は、トランスレータに取り付けられ、トランスレータと共に移動可能である。別のベアリングジャーナル表面48が作業チャンバ42の内面に形成され、ジャーナル表面48とトランスレータベアリング25との間にベアリングギャップが形成される。
【0105】
図14は、作業チャンバ42と流体ベアリング35との間の流体の流れおよび圧力の差がトランスレータ内に一連の環状チャネル46aを設けることによって制御されるラビリ
ンスシール46を示す。本発明におけるラビリンスシールの使用により、ラビリンスシールを使用しない場合における接触シールに係る摩擦を排除し、流体ベアリングと作業チャ
ンバとの間の別個のベントの必要性を排除する。
【0106】
図15は、中央コア34がトランスレータ18全体を通って延在し、トランスレータが中空管であり、両端が閉鎖されない、さらなる変形例を示す。中央コアは、LEM内でその半径方向の位置および軸方向を維持するために、両端の固定点40がハウジングに固定される。トランスレータは、使用時に中央コアを上下に摺動する。この構成により、中央コアの固定がより確実に行え、この構成を用いない場合にトランスレータ19とステータ14とが非同心となる可能性をもたらす、中央コアのカンチレバー曲げ(cantilever bending)の程度を低減する。この構成により、作業チャンバ42と予圧チャンバ29とのサイズおよび断面積を同じにすることができ、予圧チャンバ29が代替的に第2の作業チャンバとして機能することができる。加えて、この構成により、ピストンに作用する作業チャンバ42の面積が小さくなり、高圧の作業流体を用いる用途に有利である。このような構成では、トランスレータの端部で作業チャンバ圧力によって加わる力は、この構成を採用しない場合に、リニア電気機械および予圧チャンバの容量を超えて単一ストロークの過程で作業チャンバによって与えられる仕事を吸収することがある。この変形例では、上記のベアリング構成のいずれの構成も利用することができる。
【0107】
図17は、LEM60における最も単純な分割コア構成を示す。このLEM60は、図15に示すLEM10の実施形態と同様の多数の構成要素を含み、これらの構成要素には同一の符号を付す。
【0108】
図17では、下部中央コアセクション61および上部中央コアセクション62が設けられている。各コアセクション61、62は、ハウジング11のそれぞれの端部に片持ち式に取り付けられ、コアセクションは互いに対向する。これにより、各中央コアセクションは、ハウジング11のそれぞれの端部に隣接する端部61a、62aにおいて(軸方向に、横方向に、および回転方向に対して)固定され、他方の端部61b、62bは自由であることを意味する。各コアセクション61、62は、中空トランスレータ18の内側部分に作用する、それ自体は外部に位置するベアリング65、66を備える。ベアリングは、典型的には、この例では単一のステータであるステータ14のセクションに隣接して配置される。
【0109】
2つのコアセクション61、62は同軸であり、図15に示す方法と同様の方法で、トランスレータは、ベアリング65、66上およびそれに沿って摺動することで、作業シリンダの全長に沿って自由に動くことができる。したがって、この場合では固定容積を有する中央チャンバ67は、トランスレータおよび2つの中央コアセクションの自由端61a、62aによって画定される。トランスレータ18は、ハウジング11の下部および上部と共に、下部チャンバ63および上部チャンバ64を画定する。これらのチャンバの一方または両方は、動作チャンバ、すなわち、動作を誘発してステータのコイルに電流を発生させるように力が生み出され(例えば、炭化水素の燃焼などによって)トランスレータに加えられるチャンバとすることができる。
【0110】
図17の例では、トランスレータ18は、単純な中空の薄壁管であり、ベアリング65、66のそれぞれの少なくとも一部によって常時支持されている。したがって、中央コアを2つのセクションに分割することによって、図17の構成では、トランスレータが、適切で正確な位置合わせを維持するのに役立つように2つの軸方向位置で支持されながら、作業シリンダの全長に沿って動くことができる。図15に示すLEM10の実施形態と比較すると、LEM60のより短い中央コアセクションが協働して、各コアセクションのカンチレバー取り付けに対する曲げ衝撃や機械的公差の影響を低減しつつ、作業シリンダの全長にわたって必要な支持を提供する。これにより、この例や図18図20に示す他の例では、円筒形のハウジング壁12および円筒形のステータボア15によって画定される
共通の作業シリンダが、2つの片持ち式に取り付けられた中央コアを有する。
【0111】
図18図17の構成に若干の変更を加えた構成を示し、トランスレータが、2つの中央コアセクション間でトランスレータと共に往復運動するトランスレータの幅全体に延びる力連結部として作用する中央支持体70を備える。最も単純な形態では、中央支持体は、例えばトランスレータ壁の内向きの湾曲によって、トランスレータを補強し、トランスレータの中心部分のあらゆる変形を低減するように作用する接続ロッドや接続ビームとすることができる。
【0112】
図18に示される例では、中央支持体70は、中実の壁の形態であり、これによりトランスレータの内部を上部部分71と下部部分72とに分割する。各トランスレータ部分は、それぞれの中央コアセクションおよびベアリング上を摺動し、中央支持体の表面、トランスレータの半径方向外壁、およびそれぞれの中央コアセクション62、61の端面の間に、それぞれのチャンバ73、74を画定する。これらのチャンバ73、74の一方または両方は、動作チャンバ、すなわち、動作を誘発してステータのコイルに電流を発生させるように力が生み出され(例えば、炭化水素の燃焼などによって)トランスレータに加えられるチャンバとすることができる。チャンバ29の一方または両方は、予圧チャンバまたはバウンスチャンバとすることができる。
【0113】
2つのセクションの中央コアの使用の別の例を、図19に示す。この例では、上部中央コア62は中空であり、それによって、中央支持体70を介して力接続ロッド80をトランスレータに接続することができる。この変形例では、中央支持体70は、トランスレータを横切って延びるロッドまたはビーム、図18のような中実壁を含む多くの異なる形態をとることができ、または単に、力接続ロッド80が取り付けられるトランスレータ18の内面から延びる1つ以上の突起とすることができる。
【0114】
力連結部を介してトランスレータに接続される力接続ロッドは、電流がステータ14内に生成されるように、トランスレータ18に力を与えるために使用されてもよい。代替的な構成では、ステータ14内の電流の流れはトランスレータの動作を引き起こし、これは次に力接続ロッドの動作を誘発し、これによりLEMから有用な仕事を伝達することができる。チャンバ29は、バウンスチャンバおよび/または予圧チャンバであってもよい。
【0115】
下部中央コア61も中空として、力接続ロッドを設けない構成として示しているが、各中央コアがそれぞれ力接続ロッドを有する構成とすることも可能である。
【0116】
図20は、2つのトランスレータ90、91が設けられたさらに別の例を示す。各トランスレータ90、91は、それぞれの中央コア61、62、およびベアリング65、66上を、それらに沿って移動し、それぞれのステータ14を通過する。ステータ14は、この例では2つの部分として示されているが、原理的には、両方のコアにわたって延びる単一のステータとすることができる。2つの部分に分かれたステータは、上記のいずれの例においても使用することができる。各トランスレータ90、91は、それぞれの外側端面90’、91’を有し、これらは、作動シリンダの壁と共に中央の作業チャンバ42を画定する。したがって、この作業チャンバは、両端面90’、91’に同時にかつ同じように作用し、これにより各トランスレータ90、91を同時に駆動することができる。
【0117】
図20の作業チャンバ42は、円筒形のステータボア15の直径と同じ直径を有するものとして示されている。代替の実施形態では、作業チャンバの直径は、円筒形のステータボア15に対してより小さいまたはより大きい直径とすることができ、この場合、作動シリンダ53およびトランスレータ90、91は、階段状に構成することができ、それぞれが、典型的には、ステータボア15と同じ直径を有するセクションと、作業チャンバ42
と同じ直径を有する別のセクションとを有する。
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
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図22