(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】抗BCMA抗体及びγ-セクレターゼ阻害剤を使用した併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240905BHJP
A61K 31/417 20060101ALI20240905BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240905BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZNA
A61K31/417
A61P35/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021560604
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 IB2020053397
(87)【国際公開番号】W WO2020208572
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-27
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513032275
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ディベロップメント、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY DEVELOPMENT LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】521444387
【氏名又は名称】スプリングワークス、セラピューティクス、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SPRINGWORKS THERAPEUTICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】スウェタジット、ビスワス
(72)【発明者】
【氏名】ベアータ、ホルコバ
(72)【発明者】
【氏名】カタリーナ、ルプタコバ
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/201051(WO,A1)
【文献】Front. Immunol.,2018年,Vol. 9, Article 1821
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性骨髄腫の治療に使用するための、ベランタマブ・マフォドチン及びニロガセスタットを含む
組合せ物。
【請求項2】
ベランタマブ・マフォドチンが0.95mg/kgで投与される、請求項
1に記載の
組合せ物。
【請求項3】
ベラ
ンタマブ・マフォドチンが1.9mg/kgで投与される、請求項
1に記載の
組合せ物。
【請求項4】
ベラ
ンタマブ・マフォドチンが2.5mg/kgで投与される、請求項
1に記載の
組合せ物。
【請求項5】
ベラ
ンタマブ・マフォドチンが3.4mg/kgで投与される、請求項
1に記載の
組合せ物。
【請求項6】
ニロガセスタットが25~220mgの用量で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項7】
ニロガセスタットが50mgで投与される、請求項
6記載の
組合せ物。
【請求項8】
ニロガセスタットが100mgで投与される、請求項
6に記載の
組合せ物。
【請求項9】
ニロガセスタットが150mgで投与される、請求項
6記載の
組合せ物。
【請求項10】
ベランタマブ・マフォドチン
が21日サイクルの1日目に投与
され、ニロガセスタット
が1日2回(BID)投与
される、請求項
1~9のいずれか
一項に記載の
組合せ物。
【請求項11】
21日サイクルの第1日にベランタマブ・マフォドチンの用量の半分
が投与
され、第8日にベランタマブ・マフォドチンの用量の残りの半分
が投与
され、21日サイクルの第1日から第7日にニロガセスタット
が1日2回(BID)投与
される、請求項
1~9のいずれか一項に記載の
組合せ物。
【請求項12】
1.7mg/kgのベランタマブ・マフォドチンの第1の用量が1日目に投与され、1.7mg/kgのベランタマブ・マフォドチンの第2の用量が8日目に投与される、請求項
11記載の
組合せ物。
【請求項13】
1.25mg/kgのベランタマブ・マフォドチンの第1の用量が1日目に投与され、1.25mg/kgのベランタマブ・マフォドチンの第2の用量が8日目に投与される、請求項
11記載の
組合せ物。
【請求項14】
0.95mg/kgのベランタマブ・マフォドチンの第1の用量
が1日目に投与
され、0.95mg/kgのベランタマブ・マフォドチンの第2の用量
が8日目に投与
される、請求項
11に記載の
組合せ物。
【請求項15】
前記
多発性骨髄腫が再発性及び/又は難治性多発性骨髄腫である、請求項1
~14のいずれか
一項に記載の
組合せ物。
【請求項16】
多発性骨髄腫の患者が、少なくとも1つの先行する癌治療
ラインを受けたことがある、請求項
1~15のいずれか一項に記載の
組合せ物。
【請求項17】
多発性骨髄腫の患者が、免疫調節薬(IMiD)、プロテアソーム阻害剤(PI)、及び抗CD38治療を含む少なくとも3つの先行する癌治療
ラインを受けたことがある、請求項
1~15のいずれか一項に記載の
組合せ物。
【請求項18】
多発性骨髄腫の治療のための医薬品の製造に使用するための、ベランタマブ・マフォドチン及びニロガセスタットを含む組合せ
物。
【請求項19】
以下を含
む、多発性骨髄腫の治療に使用するためのキット:
(i)ベランタマブ・マフォド
チン
(ii)ニロガセスタット
、及び
(iii)使用説明書。
【請求項20】
前記
組合せ物の投与により、ベランタマブ・マフォドチン単独で治療された患者と比較して
、患者の眼毒性を低減する、請求項
1~17のいずれか一項に記載の
組合せ物。
【請求項21】
前記眼毒性が、角膜上皮の変化、刺激、発赤、かすみ目、ドライアイ、羞明、又は視力の変化のうちの少なくとも1つである、請求項
20に記載の
組合せ物。
【請求項22】
前記眼毒性が、以下の方法の少なくとも1つによって測定される、請求項
20または21に記載の
組合せ物:最良矯正視力、顕在屈折の記録及び最良矯正視力を得るために使用される方法、現在の眼鏡処方(該当する場合)、眼圧測定、角膜のフルオレセイン染色及び水晶体検査を含む前眼部(スリットランプ)検査、散瞳眼底検査、
及び眼表面病変指数(OSDI)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、癌の治療に使用するための、薬学的に活性な抗原結合タンパク質(例えば、モノクローナル抗体)、及びγ-セクレターゼ阻害剤の併用療法に関する。特定の投与計画及び投与方法もまた含まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
多発性骨髄腫(MM)は難治性の悪性腫瘍であり、全癌の1%、全造血器腫瘍の10%を占める。様々な薬剤及び併用療法が評価され、多発性骨髄腫の治療に有効であることが明らかにされている(National Comprehensive Cancer Network, 2016; Moreau, San Miguel et al., 2017)。しかし、これらの患者の全てではないにしても大部分は必然的に再発する(Richardson, Barlogie et al., 2003; Richardson, Barlogie et al., 2006; Jagannath, Barlogie et al., 2008)。
【0003】
以前に治療を受けたMM患者に対して薬剤の組合せが出現しつつあるが、これらの投与計画は毒性作用によって制限される可能性がある(National Comprehensive Cancer Network, 2016)。重篤な毒性を増加させることなく既存の治療法と併用できる新たな作用機序を有する薬剤が必要である。
【0004】
腫瘍細胞又は可溶性BCMA上の低いB細胞成熟抗原(BCMA)表面発現は、腫瘍細胞の表面に存在するBCMAに対する不十分な結合に起因して、治療剤の効力を制限及び防止し得る。抗体、抗体薬物結合体又はキメラ抗原受容体T細胞と標的化される腫瘍細胞上の低レベルの他の標的分子(例えば、CD19、CD20)は、これらの治療の効力を制限し、そして低レベルの標的分子を発現する癌細胞が排除を免れることを可能にすることが示されている。BCMAの場合、この分子の短い細胞外部分は、タンパク質切断に関与する膜局在細胞酵素であるガンマ-セクレターゼ(γ-セクレターゼ)の作用を介して細胞表面から切断され、除去される。この切断は、BCMAを発現する骨髄腫癌細胞のような細胞上のBCMAの密度を低下させ、ある種の自己免疫疾患(例えば、全身性エリトマトーデス)及び癌(例えば、多発骨髄腫)を有する患者の血清中の可溶性BCMA(sBCMA)のレベルの上昇につながる。
【0005】
現在、免疫療法分野において、自己免疫疾患及び癌をより効率的に治療するための代替の又は改良された組成物及び方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の概要
本発明の1つの態様において、抗BCMA抗原結合タンパク質及びγ-セクレターゼ阻害剤を含む組合せが提供される。
【0007】
本発明の別の態様において、上記組合せは、ベラタマブ・マフォドチン及びニロガセスタットを含む。
【0008】
本発明の1つの態様において、本明細書では、癌の治療に使用するための抗BCMA抗原結合タンパク質及びγ-セクレターゼ阻害剤を含む組合せが提供される。
本発明の別の態様において、抗BCMA抗原結合タンパク質及びγ-セクレターゼ阻害剤の治療上有効な用量を投与することを含む、それを必要とする対象において癌を治療する方法が本明細書中に提供される。
【0009】
本明細書において提供される本発明の別の態様において、癌を治療する際に使用するためのキットであって、以下を含むキットがある:
(i)抗BCMA抗原結合タンパク質
(ii)γ-セクレターゼ阻害剤と併用する場合の取扱い説明
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】異なる用量のγ-セクレターゼ阻害剤(ニロガセスタット)を、ベランタマブ・マフォドチン又は対照IgG-MMAFと組み合わせて処理した場合の、骨髄腫細胞株L363の生存能力を示す。
【
図2】骨髄腫細胞株L363において、ニロガセスタットと組み合わせたベランタマブ・マフォドジンのADCC活性が評価されたことを示す。
【
図3】BCMA発現細胞株におけるADC活性を示す。
【
図4】BCMA発現細胞株におけるADCC活性を示す。
【
図5】ニロガセスタットによる処理後のsBCMAレベルを示す。
【
図6】ニロガセスタットでの処理後のBCMAの細胞表面レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明の1つの態様において、本明細書では、癌又は他のB細胞媒介疾患若しくは障害を治療する際に使用するための、抗BCMA抗原結合タンパク質及びγ-セクレターゼ阻害剤を含む組合せが提供される。
【0012】
B細胞障害は、B細胞発生/免疫グロブリン産生の欠損(免疫不全)及び過剰/制御不能な増殖(リンパ腫、白血病)に分けることができる。本明細書中で使用される場合、B細胞障害は、両方のタイプの疾患を指し、B細胞障害を抗原結合タンパク質で治療するための方法が提供される。
【0013】
癌、特にB細胞媒介性又は形質細胞媒介性の疾患又は抗体媒介性の疾患又は障害の例には、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非分泌型多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)、孤立性形質細胞腫(骨、髄外)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、形質細胞白血病、原発性アミロイドーシス(AL)、H鎖病、全身性エリテマトーデス(SLE)、クロウ・フカセ症候群/骨硬化症性骨髄腫、I型及びII型クリオグロブリン血症、軽鎖沈着症、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、急性糸球体腎炎、天疱瘡及び類天疱瘡障害、及び後天性表皮水泡症;又は任意の非ホジキンリンパ腫B細胞白血病(NHL)及びホジキンリンパ腫(HL)が含まれる。
【0014】
特定の実施形態において、疾患又は障害は、多発性骨髄腫(MM)、非ホジキンリンパ腫B細胞白血病(NHL)、濾胞性リンパ腫(FL)、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群より選択される。
【0015】
本発明の一実施形態において、疾患は、多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫B細胞白血病(NHL)である。
【0016】
本発明の1つの実施形態において、疾患は多発性骨髄腫である。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、癌は、造血(又は血液学的又は血液学的又は血液関連)癌、例えば、「液体腫瘍」と称され得る血液細胞又は免疫細胞に由来する癌であり得る。1つの実施形態において、癌は、B細胞関連癌、特にBCMA発現癌である。さらなる実施形態において、癌は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病及び急性リンパ球性白血病等の白血病である。別の実施形態において、癌は、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫等のリンパ腫である。別の実施形態において、癌は、形質細胞悪性疾患、例えば、多発骨髄腫、MGUS、ALアミロイドーシス、及びワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症である。
【0018】
1つの実施形態において、癌は多発性骨髄腫である。別の実施形態において、癌は再発性及び/又は難治性多発性骨髄腫である。別の実施形態において、再発性及び/又は難治性多発性骨髄腫の患者は、多発性骨髄腫を治療するために、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ又は少なくとも4つの治療薬で以前に治療されている。
【0019】
別の実施形態では、患者は、本明細書に記載された組合せで治療される前に、0、1、2、3、又は4以上の先行する治療ラインを有していてもよい。別の実施形態では、患者は、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫であってもよく、かつ、本明細書に記載された組合せで治療される前に、0、1、2、3、又は4以上の先行する治療ラインを有していてもよい。別の実施形態では、患者は、免疫調節薬(IMiD)、プロテアソーム阻害剤(PI)及び抗CD38治療(例えば、ダラツムマブ)を含むことができる少なくとも3つの先行する治療ラインで以前に治療されていてもよい。治療ラインは、International Myeloma Workshop (IMWG)のコンセンサスパネル[Rajkumar,2011]によって定義されている。
【0020】
本明細書に提供される本発明の1つの態様において、BCMA抗原結合タンパク質は、特定の用量又は用量範囲で投与される。全体を通して、mg/kgは、患者の体重1kg当たりの治療薬(例えば、抗原結合タンパク質)のミリグラムを意味する。本明細書に提供される本発明の1つの態様において、BCMA抗原結合タンパク質は、約0.5~4.0mg/kg又は約1.0~4.0mg/kgの用量で投与される。1つの実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、約0.5~2.0mg/kg、約0.5~1.0mg/kg、約1.0~3.0mg/kg、又は約2.0~4.0mg/kg、又は約2.0~3.0mg/kgの用量で投与される。さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、約0.5~2.0mg/kg又は約2.0~3.5mg/kgの用量で投与される。さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、約0.5mg/kg、約0.95mg/kg、約1mg/kg、約1.25mg/kg、約1.7mg/kg、約1.9mg/kg、約2.5mg/kg、又は約3.4mg/kgの用量で投与される。
【0021】
別の実施形態では、BCMA抗原結合タンパク質の治療的に有効な用量は、mg/kgではなく固定用量である。固定用量を使用すると、体重に基づく用量と同様の曝露範囲が得られる可能性がある。固定用量は、投薬ミスの減少、薬物の浪費の減少、調製時間の短縮、及び投与の容易さの改善という利点を提供することができる。したがって、1つの実施形態において、BCMA抗原結合タンパク質の固定用量は、70kg又は80kgの基準体重(参加体重の中央値)に基づく。
【0022】
本明細書中に提供される本発明の1つの態様において、γ-セクレターゼ阻害剤は、約25~220mgの用量で投与される。一実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、約50~150mgの用量で投与される。一実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、約50mg、約100mg、又は約150mgの用量で投与される。一実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、約50mg、約100mg、又は約150mgの用量で投与される。一実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、50mg、100mg、又はmgの用量で投与される。一実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、100mgの用量で投与される。一実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は150mgの用量で投与される。
【0023】
一実施形態では、抗BCMA抗原結合タンパク質は約3.4mg/kgの用量で投与され、γ-セクレターゼ阻害剤は約150mgの用量で投与される。
【0024】
一実施形態では、抗BCMA抗原結合タンパク質は約2.5mg/kgの用量で投与され、γ-セクレターゼ阻害剤は約150mgの用量で投与される。
【0025】
さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、約1.9mg/kgの用量で投与され、γ-セクレターゼ阻害剤は、約150mgの用量で投与される。
【0026】
さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、約0.95mg/kgの用量で投与され、γ-セクレターゼ阻害剤は、約150mgの用量で投与される。
【0027】
一実施形態では、抗BCMA抗原結合タンパク質は約3.4mg/kgの用量で投与され、γ-セクレターゼ阻害剤は約100mgの用量で投与される。
【0028】
一実施形態では、抗BCMA抗原結合タンパク質は約2.5mg/kgの用量で投与され、γ-セクレターゼ阻害剤は約100mgの用量で投与される。
【0029】
さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、約1.9mg/kgの用量で投与され、γ-セクレターゼ阻害剤は、約100mgの用量で投与される。
【0030】
さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、約0.95mg/kgの用量で投与され、γ-セクレターゼ阻害剤は、約100mgの用量で投与される。
【0031】
一実施形態では、抗BCMA抗原結合タンパク質は約3.4mg/kgの用量で投与され、γ-セクレターゼ阻害剤は約50mgの用量で投与される。
【0032】
一実施形態では、抗BCMA抗原結合タンパク質は約2.5mg/kgの用量で投与され、γ-セクレターゼ阻害剤は約50mgの用量で投与される。
【0033】
さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、約1.9mg/kgの用量で投与され、γ-セクレターゼ阻害剤は、約50mgの用量で投与される。
【0034】
さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、約0.95mg/kgの用量で投与され、γ-セクレターゼ阻害剤は、約50mgの用量で投与される。
【0035】
1つの実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、1日2回(BID)投与される。1つの実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、毎日投与される。さらに別の実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、「7日間投与/14日間休薬」スケジュールで投与されてもよく、ここで、γ-セクレターゼ阻害剤は、21日サイクルの1~7日目に1日2回(BID)投与され、8日目から14日目まで投与されない。
【0036】
本発明の1つの態様において、γ-セクレターゼ阻害剤は、抗BCMA抗原結合タンパク質と同時に又は連続して投与されてもよい。1つの実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、抗BCMA抗原結合タンパク質の前に投与される。例えば、1つの態様において、γ-セクレターゼ阻害剤は、抗BCMA抗原結合タンパク質の少なくとも1時間前に投与される。
【0037】
本発明の1つの態様において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、毎週投与される。さらなる態様において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、21日ごとに1回(すなわち、21日サイクルの1日目)投与される。
【0038】
さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質の用量は、最大血漿濃度を制御するように調整され、例えば、用量は分割され、そして例えば1週間間隔で投与される。1つの実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、21日サイクルの1日目(全用量の半分)及び8日目(全用量の半分)に投与される。例えば、全用量が3.4mg/kgである場合、「分割用量」投与計画は、21日サイクルの1日目の用量1.7mg/kg及び8日目の別の用量1.7mg/kgを含んでいてもよい。別の実施形態において、全用量が2.5mg/kgである場合、「分割用量」投与計画は、21日サイクルの1日目の用量1.25mg/kg及び8日目の別の用量1.25mg/kgを含んでいてもよい。別の実施形態において、全用量が1.9mg/kgである場合、「分割用量」投与計画は、21日サイクルの1日目の用量0.95mg/kg及び8日目の別の用量0.95mg/kgを含んでいてもよい。
【0039】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質の約0.95mg/kg、約1.9mg/kg、約2.5mg/kg、又は約3.4mg/kgを21日サイクルの1日目に投与する。
【0040】
一実施形態では、0.95mg/kg、1.9mg/kg、2.5mg/kg、又は3.4mg/kgの抗BCMA抗原結合タンパク質が21日サイクルの1日目に投与される。一実施形態では、0.95mg/kgの抗BCMA抗原結合タンパク質が21日サイクルの1日目に投与される。一実施形態では、1.9mg/kgの抗BCMA抗原結合タンパク質が21日サイクルの1日目に投与される。一実施形態では、2.5mg/kgの抗BCMA抗原結合タンパク質が21日サイクルの1日目に投与される。
【0041】
さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質の負荷用量は、21日サイクルの1日目に投与され、その後のサイクルにおいてより低い用量が投与される。本明細書において提供されるように、本発明によって意図される用量のいずれも、この方法で投与されてもよい。例えば、用量1は、投与される抗BCMA抗原結合タンパク質の約3.4mg/kgを含んでいてもよく、その後のサイクルは、抗BCMA抗原結合タンパク質の約2.4mg/kgの用量を使用してもよい。
【0042】
本明細書中に記載される本発明の1つの態様において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、抗BCMA抗体若しくはその断片、又はCAR-T若しくは免疫結合体である。1つの実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は抗BCMA抗体である。さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質はモノクローナル抗体である。さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質はヒト化されている。
【0043】
本明細書中に記載される本発明の1つの態様において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号1に記載のCDRH1;配列番号2に記載のCDRH2;配列番号3に記載のCDRH3;配列番号4に記載のCDRL1;配列番号5に記載のCDRL2;及び配列番号6に記載のCDRL3に対して少なくとも90%又は95%又は99%の配列同一性を有するCDR配列を含む。
【0044】
1つの実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号1に記載のCDRH1;配列番号2に記載のCDRH2;配列番号3に記載のCDRH3;配列番号4に記載のCDRL1;配列番号5に記載のCDRL2;及び配列番号6に記載のCDRL3を含む。1つの実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号7に記載の重鎖可変領域(VH);及び配列番号8に記載の軽鎖可変領域(VL)を含む。さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号9に記載の重鎖(H)及び配列番号10に記載の軽鎖(L)を含む。
【0045】
本明細書中に記載される本発明の1つの態様において、抗BCMA抗原結合タンパク質はさらに結合される。
【0046】
1つの実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、本明細書中に記載される本発明に従う抗原結合タンパク質を含む免疫結合体であり、これには、限定されるものではないが、1以上の細胞傷害性薬剤(例えば、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素、又はそれらの断片)、又は放射性同位体(すなわち、放射性結合体)に結合体化された抗体が含まれる。さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、オーリスタチン(例えば、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)又はモノメチルオーリスタチンF(MMAF))等の毒素に結合体化される。1つの実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)に結合体化される。
【0047】
1つの実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、以下の一般構造を有する免疫結合体である:
ABP-((リンカー)n-Ctx)m
ここで、
ABPは抗原結合タンパク質であり、
リンカーは存在しないか、又はいずれかの切断可能な又は切断不可能なリンカーであり、
Ctxは、本明細書に記載される任意の細胞傷害性薬剤であり、
nは0、1、2又は3であり、
mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。
【0048】
例示的なリンカーは、6-マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロパノイル(MP)、バリン-シトルリン(val-cit)、アラニン-フェニルアラニン(ala-phe)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(SMCC)、及びN-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)を含む。
【0049】
1つの実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、MMAE又はMMAFに連結されたモノクローナル抗体を含む免疫結合体である。別の実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、以下の構造において示されるように、MCリンカーによってMMAE又はMMAFに連結されたモノクローナル抗体を含む免疫結合体である。
【化1】
【0050】
1つの実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、抗体ベランタマブである。別の実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、免疫結合体ベランタマブ・マフォドチンである。
【0051】
本発明の結合体化抗体(抗体-薬物結合体又はADC)は、強力な細胞傷害性薬剤の腫瘍細胞への特異的標的化を可能にするように設計された強力な抗癌剤であり、一方、健康な組織には害悪を与えない。腫瘍特異的抗体の使用にもかかわらず、ADCに関する新たな臨床データは、ADCが最適な治療用量に達する前に有害事象が頻繁に起こることを示している。このように、これらのADCは、前臨床腫瘍モデルにおいて非常に活性であるにもかかわらず、臨床におけるそれらの治療ウインドウは狭く、投薬計画は、前臨床モデルからのデータに基づいて常に予測できない用量制限毒性によって妨げられているようである。
【0052】
安全性プロファイルを悪化させることなく治療効果を相乗的に高めるために併用できる治療法は、特に眼毒性等の治療下で発現した有害事象の発生率及び重症度に関して、癌患者の治療において大きな進歩となるであろう。
【0053】
基本的に、最高のベネフィット・リスクプロファイルを有しながらも顕著に高い総奏効率(ORR)をもたらす用量の有効性を高めることができる薬剤との併用は、このような抗原結合タンパク質で治療された患者の管理においてパラダイムシフトをもたらすであろう。
【0054】
最適なベネフィット・リスクプロファイルを達成するための鍵は、治療の投与計画に依存する。
【0055】
本明細書中に記載される本発明の1つの態様において、例えばγ-セクレターゼ阻害剤の後の所定の時点及び制御された用量での抗BCMA抗原結合タンパク質の投与は、血漿濃度がそのピークに達する機会を可能にし、従って、抗BCMA抗原結合タンパク質の添加から最大の効果を得る。
【0056】
本明細書中に記載される本発明の1つの態様において、γ-セクレターゼ阻害剤は、以下のいずれかである:ニロガセスタット(PF-03084014);LY3039478(クレニガセスタット);CB-103;タレンフルルビル;セマガセスタット;RG-4733;EVP-0962;アバガセスタット;MK-0752;BMS-906024;又はLY450139(セマガセスタット)。
【0057】
1つの実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、以下の化学構造を有するニロガセスタット、((S)-2-(((S)-6,8-ジフルオロ-1234-テトラヒドロナフタレン-2-イル)アミノ)-N-(1-(2-メチル-1-(ネオペンチルアミノ)プロパン-2-イル)-1H-イミダゾール-4-イル)ペンタンアミド)(PF-03084014)である:
【化2】
【0058】
本発明の1つの態様において、本明細書では、多発性骨髄腫等の癌患者における眼毒性を予防及び/又は低下させるために使用される、抗BCMA抗原結合タンパク質及びγ-セクレターゼ阻害剤を含む組合せが提供される。1つの実施形態において、眼毒性は、抗BCMA抗原結合タンパク質単独(単独療法)で治療された患者と比較した場合に、予防され又は低下する。
【0059】
「予防された」とは、眼毒性の徴候、診断又は症状が発現していない患者を意味し、「軽減された」とは、眼毒性の徴候、診断又は症状の重症度又はグレードが低下した患者を意味する。
【0060】
「眼毒性」とは、眼組織への治療剤の意図しないばく露をいい、眼毒性には、角膜上皮の変化、ドライアイ、刺激感、発赤、霧視、ドライアイ、羞明、及び/又は視力の変化が含まれる。
【0061】
眼の診察は眼科医又は検眼士が行います。眼の診察には以下の1つ以上が含まれる:
1.最良矯正視力
2.明示的な屈折及び最良矯正視力を得るために使用した方法の記録
3.現在の眼鏡の処方(該当する場合)
4.眼圧測定
5.前眼部(細隙灯)検査(角膜のフルオレセイン染色及び水晶体検査を含む)
6.拡張した眼底検査、及び/又は
7.眼表面病変指数(OSDI)(これは視覚機能質問票であり、視覚の潜在的な眼の変化が機能及び健康関連の生活の質に及ぼす影響を評価する)。
【0062】
上記の方法は当業者に公知であり、実施されている。眼の検査は、治療前、治療中、及び/又は治療後に行うことができる。
【0063】
本発明の1つの態様において、本明細書に記載されるような本発明による、治療上有効な用量の抗BCMA抗原結合タンパク質及びγ-セクレターゼ阻害剤を投与することを含む、それを必要とする対象において癌を治療する方法が提供される。
【0064】
本発明の1つの態様において、以下を投与することを含む、それを必要とする対象において癌を治療する方法が提供される:
i)治療上有効な量の抗BCMA抗原結合タンパク質であって、配列番号1に記載のCDRH1;配列番号2に記載のCDRH2;配列番号3に記載のCDRH3;配列番号4に記載のCDRL1;配列番号5に記載のCDRL2;及び配列番号6に記載のCDRL3を含む、抗BCMA抗原結合タンパク質、及び
ii)ニロガセスタット。
【0065】
本発明の1つの態様において、以下を投与することを含む、それを必要とする対象において癌を治療する方法が提供される:
i)配列番号7に記載の重鎖可変領域(VH)と、配列番号8に記載の軽鎖可変領域(VL)とを含む、治療上有効な用量の抗BCMA抗原結合タンパク質、及び
ii)ニロガセスタット。
【0066】
本発明の1つの態様において、以下を投与することを含む、それを必要とする対象において癌を治療する方法が提供される:
i)配列番号9に記載の重鎖(H)及び配列番号10に記載の軽鎖(L)を含む、治療上有効な量の抗BCMA抗原結合タンパク質、及び
ii)ニロガセスタット。
【0067】
本発明の1つの態様において、それを必要とする被験体において癌を治療するための法が提供され、これは、ベランタマブ・マフォドチン及びニロガセスタットを投与することを含む。
【0068】
本発明の1つの態様において、0.95mg/kg、1.9mg/kg、2.5mg/kg、又は3.4mg/kgのベランタマブ・マフォドジン及び50mg、100mg、又は150mgのニロガセスタットを投与することを含む、それを必要とする対象において癌を治療する方法が提供される。
【0069】
本発明の1つの態様において、21日サイクルの1日目に0.95mg/kg、1.9mg/kg、2.5mg/kg、又は3.4mg/kgのベランタマブ・マフォドチンを投与し、50mg、100mg、又は150mgのニロガセスタットを1日2回(BID)投与することを含む、それを必要とする対象における癌を治療する方法が提供される。
【0070】
本発明の1つの態様において、0.95mg/kg、1.9mg/kg、2.5mg/kg、又は3.4mg/kgのベランタマブ・マフォドチンを投与することを含み、ここで、用量の半分は21日サイクルの1日目に投与され、用量の半分は8日目に投与され;そして50mg、100mg、又は150mgのニロガセスタットが21日サイクルの1日目から7日目に1日2回(BID)投与される、それを必要とする対象において癌を治療する方法が提供される。
【0071】
本発明の1つの態様において、21日間のサイクルの1日目に0.95mg/kg、1.9mg/kg、2.5mg/kg又は3.4mg/kgのベランタマブ・マフォドチンを投与し、50mg、100mg又は150mgのニロガセスタットを1日2回(BID)投与することを含む、それを必要とする対象における多発骨髄腫を治療する方法が提供される。
【0072】
本発明の1つの態様において、0.95mg/kg、1.9mg/kg、2.5mg/kg、又は3.4mg/kgのベランタマブ・マフォドチンを投与することを含み、ここで、用量の半分は21日サイクルの1日目に投与され、用量の半分は8日目に投与され;そして50mg、100mg、又は150mgのニロガセスタットが21日サイクルの1~7日目に1日2回(BID)投与される、それを必要とする対象における多発性骨髄腫を治療する方法が提供される。
【0073】
1つの態様において、癌の治療における使用のために、本明細書に記載される本発明による抗BCMA抗原結合タンパク質及びγ-セクレターゼ阻害剤を含む組合せが提供される。
【0074】
1つの態様において、癌の治療において使用するための、治療上有効な用量の、配列番号1に記載のCDRH1;配列番号2に記載のCDRH2;配列番号3に記載のCDRH3;配列番号4に記載のCDRL1;配列番号5に記載のCDRL2;及び配列番号6に記載のCDRL3含む抗BCMA抗原結合タンパク質;並びにニロガセスタットを含む組合せが提供される。
【0075】
1つの態様では、癌の治療において使用するための、治療上有効な用量の、配列番号7に記載の重鎖可変領域(VH);及び配列番号8に記載の軽鎖可変領域(VL)を含む抗BCMA抗原結合タンパク質、並びにニロガセスタットを含む組み合わせが提供される。
【0076】
1つの態様において、癌の治療における使用のための、治療上有効な用量の、配列番号9に記載の重鎖(H)及び配列番号10に記載の軽鎖(L)を含む抗BCMA抗原結合タンパク質;並びにニロガセスタットを含む組み合わせが提供される。
【0077】
1つの態様では、癌の治療における使用のための、ベランタマブ・マフォドチン及びニロガセスタットを含む組合せが提供される。
【0078】
1つの態様では、癌の治療における使用のための、ベランタマブ・マフォドチン及びニロガセスタットを含む組合せが提供され、ここで、ベランタマブ・マフォドチンは0.95mg/kg、1.9mg/kg、2.5mg/kg又は3.4mg/kgで投与され、ニロガセスタットは50mg、100mg又は150mgで投与される。
【0079】
1つの態様において、癌の治療における使用のための、ベランタマブ・マフォドチン及びニロガセスタットを含む組合せが提供され、ここで、ベランタマブ・マフォドチンは、21日サイクルの1日目に0.95mg/kg、1.9mg/kg、2.5mg/kg又は3.4mg/kgで投与され、ニロガセスタットは、50mg、100mg又は150mgで1日2回(BID)投与される。
【0080】
1つの態様において、癌の治療における使用のための、ベランタマブ・マフォドチン及びニロガセスタットを含む組合せが提供され、ここで、ベランタマブ・マフォドチンは、0.95mg/kg、1.9mg/kg、2.5mg/kg又は3.4mg/kgで投与され、用量の半分が21日間サイクルの1日目に投与され、用量の半分が8日目に投与され;ニロガセスタットは、50mg、100mg又は150mgで1日2回(BID)で21日間サイクルの1日目から7日目に投与される。
【0081】
1つの態様では、多発性骨髄腫の治療に使用するための、ベランタマブ・マフォドチン及びニロガセスタットを含む組合せが提供され、ここで、ベランタマブ・マフォドチンは0.95mg/kg、1.9mg/kg、2.5mg/kg、又は3.4mg/kgで投与され、ニロガセスタットは50mg、100mg、又は150mgで投与される。
【0082】
1つの態様では、多発性骨髄腫の治療に使用するためのベランタマブ・マフォドチン及びニロガセスタットを含む組合せが提供され、ここで、ベランタマブ・マフォドチンは0.95mg/kg、1.9mg/kg、2.5mg/kg又は3.4mg/kgで投与され、用量の半分は21日間サイクルの1日目に投与され、用量の半分は8日目に投与され;ニロガセスタットは50mg、100mg又は150mgで1日2回(BID)で21日間サイクルの1日目から7日目に投与される。
【0083】
1つの態様において、本明細書に記載される本発明による、抗BCMA抗原結合タンパク質及びγ-セクレターゼ阻害剤を含む、癌を治療するための医薬の製造における使用のための組合せが提供される。
【0084】
1つの態様において、以下を含む、癌を治療する際に使用するためのキットが提供される:
(i)本明細書に記載される本発明に従う抗BCMA抗原結合タンパク質;及び
(ii)本明細書に記載される本発明によるγ-セクレターゼ阻害剤と組み合わせる場合の使用説明書。
【0085】
1つの態様において、以下を含む、癌を治療する際に使用するためのキットが提供される:
(i)本明細書に記載された本発明によるγ-セクレターゼ阻害剤;及び
(ii)本明細書に記載された本発明による抗BCMA抗原結合タンパク質と組み合わせる場合の使用説明書。
【0086】
1つの態様において、以下を含む、癌を治療する際に使用するためのキットが提供される:
(i)本明細書に記載される本発明に従う抗BCMA抗原結合タンパク質;
(ii)本明細書に記載される本発明によるγ-セクレターゼ阻害剤;及び
(iii)使用説明書。
【0087】
本発明の1つの態様において、治療有効量の抗BCMA抗原結合タンパク質及びγ-セクレターゼ阻害剤を投与することを含む、多発性骨髄腫等の癌患者における眼毒性を予防する方法が提供される。
【0088】
本発明の1つの態様において、治療有効量の抗BCMA抗原結合タンパク質及びγ-セクレターゼ阻害剤を投与することを含む、多発性骨髄腫等の癌患者における眼毒性を低下させる方法が提供される。
【0089】
定義
本明細書中に記載される「組合せ」という用語は、少なくとも2つの治療剤を指す。本明細書中で使用される場合、「治療剤」という用語は、組織、系、動物、哺乳動物、ヒト、又は他の対象において所望の効果を生じる物質を意味すると理解される。1つの実施形態において、組合せは、例えば、追加の癌治療剤等の追加の治療剤を含むことができる。1つの実施形態において、追加の癌治療剤は、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、アプレミラスト、又は他のサリドマイド類似体等の免疫調節イミド薬物(IMiD)である。
【0090】
本発明の組合せの投与は、単独の治療剤のみの個々の投与と比較した場合に、組合せが以下の改善された特性の1以上を提供し得るという点で、個々の治療剤よりも有利であり得る:i)最も活性な単独の薬剤よりも大きな抗癌作用、ii)相乗的又は高度に相乗的な抗癌作用、iii)増強された抗癌作用及び低下した副作用プロファイルを提供する投与プロトコル、iv)毒性作用プロファイルの低下、v)治療ウインドウの増大、又はvi)治療剤の一方又は両方の生物学的利用能の増大。
【0091】
本明細書に記載される組合せは、薬学的組成物の形態であり得る。「薬学的組成物」は、本明細書に記載される組合せ、及び1以上の薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、又は賦形剤を含む。キャリア、希釈剤、又は賦形剤は、処方の他の成分と適合性があり、薬学的処方が可能であり、かつそのレシピエントに有害ではないという意味で、受容可能でなければならない。1つの実施形態において、組合せ中の各治療剤は、それ自体の薬学的組成物中に個々に処方され、そして薬学的組成物の各々は、癌を治療するために投与される。この実施形態において、薬学的組成物の各々は、同一又は異なるキャリア、希釈剤、又は賦形剤を有し得る。
【0092】
本明細書に記載される組合せにおける抗BCMA抗原結合タンパク質は、癌の治療又は予防において有用である。本明細書に記載される抗BCMA抗原結合タンパク質は、ヒトBCMA(例えば、GenBank Accession Number Q02223.2のアミノ酸配列を含むヒトBCMA、又はそれに対して少なくとも90%の相同性又は少なくとも90%の同一性を有するヒトBCMAをコードする遺伝子を含む)に結合し得る。
【0093】
用語「抗原結合タンパク質」とは、本明細書中で使用される場合、ヒトBCMAに結合することができる抗体、抗体フラグメント及び他のタンパク質構築物をいう。本発明の抗原結合タンパク質は、天然の抗体又は機能的フラグメント又はそれらの等価物の構造にフォーマットされ得る本発明の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含んでいてもよい。したがって、本発明の抗原結合タンパク質は、適切な軽鎖と対合した場合に、全長抗体、(Fab’)2フラグメント、Fabフラグメント、又はそれらの等価物(例えば、scFv、2価抗体、3価抗体、又は4価抗体、TandAB抗体等)にフォーマットされた本発明のVH領域を含み得る。抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、若しくはIgG4;又はIgM;IgA、IgE若しくはIgD;又はそれらの改変された改変体であり得る。抗体重鎖の定常ドメインは、それに応じて選択され得る。軽鎖定常ドメインは、κ又はλ定常ドメインであり得る。さらに、抗原結合タンパク質は、すべてのクラスの改変(例えば、IgG二量体、Fc変異体であって、もはやFc受容体に結合せず、又はC1q結合を媒介しない)を含み得る。抗原結合タンパク質はまた、抗原結合領域及び非免疫グロブリン領域を含む、WO86/01533に記載されるタイプのキメラ抗体であり得る。
【0094】
別の態様において、抗原結合タンパク質は、dAb、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、二重特異抗体、三重特異抗体、四重特異抗体、ミニ抗体、及びミニボディーからなる群より選択される。本発明の1つの態様において、抗原結合タンパク質は、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。さらなる態様において、抗体はヒト化されている。1つの態様において、抗体はモノクローナル抗体である。キメラ抗原受容体(CAR)は、MHC-抗原ペプチド複合体に結合する必要なく、T細胞に新規な特異性を生じさせるための人工T細胞受容体として開発された。これらの合成受容体は、単一の融合分子中の柔軟なリンカーを介して1つ以上のシグナル伝達ドメインと結合する標的結合ドメインを含む。標的結合ドメインは、T細胞を病変細胞の表面上の特異的な標的に標的化するために使用され、シグナル伝達ドメインは、T細胞の活性化及び増殖のための分子機構を含む。T細胞膜を通過する柔軟なリンカー(すなわち、膜貫通ドメインを形成する)は、CARの標的結合ドメインの細胞膜ディスプレイを可能にする。CARは、リンパ腫及び固形腫瘍を含む様々な悪性腫瘍由来の腫瘍細胞の表面に発現される抗原に対してT細胞をリダイレクトすることに成功している(Jena et al.(2010)Blood,116(7):1035-44)。
【0095】
1つの実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)エフェクター機能が増強された抗体である。本明細書中で使用される「エフェクター機能」という用語は、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)、補体依存性細胞傷害活性(CDC)媒介性応答、Fc媒介性食作用、及びFcRn受容体を介する抗体リサイクルの1つ以上を指すことを意味する。
【0096】
「γ-セクレターゼ」は、複数のサブユニットからなる膜内在性プロテアーゼ複合体であり、1回通過膜貫通タンパク質を膜貫通ドメイン内で切断する。γ-セクレターゼ複合体は、ノッチ、CD44、カドヘリン、及びエフリンB2を含む種々の基質のプロセシング、並びにアミロイド前駆体タンパク質のアルツハイマー病に関与するアミロイドβペプチドへの切断において役割を果たす。γ-セクレターゼ複合体は、B細胞成熟抗原(BCMA)を切断することも知られている。例示的なγ-セクレターゼ阻害剤(GSI)には、小分子、ペプチド模倣化合物又はγ-セクレターゼ特異的結合タンパク質が含まれる。GSIは、阻害されていないγ-セクレターゼと比較してγ-セクレターゼ切断活性が低下する場合、γ-セクレターゼ複合体タンパク質のいずれか1以上を標的とすることができる。特定の実施形態において、γ-セクレターゼ活性は少なくとも約80%低下する。γ-セクレターゼ活性を測定するためのアッセイは、当技術分野において公知である(例えば、Laurent et al.,2015参照)。例えば、可溶性BCMAのレベルは、γ-セクレターゼ活性の代替的な尺度であり得る。γ-セクレターゼ阻害剤ニロガセスタットは、Cmax(Tmax)値の出現時間の中央値が1時間から2.5時間である急速な吸収を有する。ニロガセスタットは、癌患者においては、22.6時間から38.6時間の範囲の最終半減期でゆっくりと排泄される。ニロガセスタット曝露は、一般に、20mgから330mg BID(1日2回投与)の間で用量比例的に増加する。反復BID投与の後、定常状態は8日目までに達成され、蓄積比の中央値は1.18から2.84の範囲であった。
【0097】
「CDR」は、抗原結合タンパク質の相補性決定領域アミノ酸配列として定義される。これらは、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の超可変領域である。免疫グロブリンの可変部分には、3つの重鎖及び3つの軽鎖CDR(又はCDR領域)が存在する。したがって、本明細書で使用する「CDR」とは、3つの重鎖CDRすべて、3つの軽鎖CDRすべて、重鎖及び軽鎖CDRすべて、又は少なくとも2つのCDRをいう。用語「VH」及び「VL」は、本明細書において、それぞれ抗原結合タンパク質の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を指すために使用される。
【0098】
本明細書全体を通して、可変ドメイン配列及び全長抗体配列中のアミノ酸残基は、Kabatの番号付け規則に従って番号付けされる。同様に、実施例において使用される用語「CDR」、「CDRL1」、「CDRL2」、「CDRL3」、「CDRH1」、「CDRH2」、「CDRH3」は、Kabatの番号付け規則に従う(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed., U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health(1991)参照)。CDR配列には別の番号付け規則があり、例えば、Chothia et al. (1989) Nature342: 877-883に記載されているものがある。CDR配列に対する他の番号付け規則は、「AbM」法(University of Bath)及び「contact」法(University College London)を含めて、当業者に利用可能である。
【0099】
配列表
配列番号1-CDRH1
NYWMH
【0100】
配列番号2:CDRH2
ATYRGHSDTYYNQKFKG
【0101】
配列番号3:CDRH3
GAIYDGYDVLDN
【0102】
配列番号4:CDRL1
SASQDISNYLN
【0103】
配列番号5:CDRL2
YTSNLHS
【0104】
配列番号6:CDRL3
QQYRKLPWT
【0105】
配列番号7:重鎖可変領域
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSNYWMHWVRQAPGQGLEWMGATYRGHSDTYYNQKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGAIYDGYDVLDNWGQGTLVTVSS
【0106】
配列番号8:軽鎖可変領域
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSNLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYRKLPWTFGQGTKLEIKR
【0107】
配列番号9:重鎖領域
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSNYWMHWVRQAPGQGLEWMGATYRGHSDTYYNQKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGAIYDGYDVLDNWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0108】
配列番号10:軽鎖領域
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSNLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYRKLPWTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【実施例】
【0109】
実施例
併用の根拠
γ-セクレターゼは、膜貫通領域内の1回膜貫通型タンパク質に対してプロテアーゼ活性を有する膜内在性タンパク質複合体である(Wolfe, 2010)。γ-セクレターゼの基質の1つは、BCMAであり、これは、ベランタマブ・マフォドチン及びベランタマブの標的である。BCMAは、γ-セクレターゼが切断される前又は後のいずれにおいても、BCMAの細胞外ドメインの放出のためのさらなるタンパク質分解ステップを必要としないという点で、γ-セクレターゼの基質の中ではまれである。この切断は、BCMAの可溶性形態(「sBCMA」)をもたらす。γ-セクレターゼは、sBCMAの産生に関与する唯一の酵素であり、γ-セクレターゼの阻害は、sBCMAを減少させ、形質細胞上のBCMAの細胞表面レベルをin vitro及びin vivoの両方で増加させる。多発性骨髄腫に関連して、sBCMAのレベルは、多発性骨髄腫患者において上昇し、骨髄中の形質細胞のパーセンテージと相関する(Sanchez, 2018)。さらに、sBCMAは、多発性骨髄腫患者において見られる免疫不全と関連している。
【0110】
γ―セクレターゼ阻害剤は、多発性骨髄腫細胞によるBCMAの細胞表面発現の増大と、内在化の増強により、ベランタマブ・マフォドチン及びベランタマブの作用のメカニズムを増強する可能性があるだろう。BCMAの細胞表面発現の増加は、細胞表面へのベランタマブ・マフォドチン及びベランタマブの結合量を増加させ、FcγR相互作用及び免疫細胞の動員を増加させることにより、ベランタマブ・マフォドチン及びベランタマブのADCC機構を増強する可能性がある。さらに、BCMAの遊離を阻害することにより、結合したベランタマブ・マフォドチン及びベランタマブの内在化を増強し、多発性骨髄腫細胞へのcys-mcMMAF毒素の送達を増強する可能性がある。
【0111】
前臨床試験において、様々なレベルのBCMA発現を有する多発性骨髄腫及びリンパ腫細胞株のパネルを用いて、ADC及びADCC活性を測定するように設計されたアッセイにおいて、広範な相乗効果が、ニロガセスタット、並びにベランタマブ・マフォドジン及びベランタマブの併用治療によって観察された。
【0112】
実施例1
図1に示す実施例では、骨髄腫細胞株L363を4つの異なる濃度のニロガセスタット(PF-03084014)で24時間前処理した後、さらに72時間、用量範囲のベランタマブ・マフォドチン又は対照で処理し、細胞生存率を測定した。ベランタマブ、ニロガセスタット単独、結合イソタイプ抗体(IgG-MMAF)又はIgG-MMAFとニロガセスタットの組合せは細胞生存率に影響を及ぼさなかった。しかしながら、ニロガセスタットとベランタマブ・マフォドチンの組合せでは、ベランタマブと比較して最大1000倍のEC50の変化が観察された。
【0113】
実施例2
図2に示す実施例では、ニロガセスタットと組み合わされる、ベランタマブ・マフォドチンのADCC活性が評価された。L363細胞を様々な濃度のニロガセスタットで24時間前処理し、ベランタマブに暴露し、操作したJurkat細胞株を使用して、FcγR結合を評価した。FcγR結合に対するEC50は、ニロガセスタットとベランタマブの併用により、ベランタマブ単独よりも10倍増強された。類似の対数倍率変化は、明白なベランタマブ・マフォドチンの活性とともに、19の追加の多発骨髄腫及びリンパ腫の細胞株におけるニロガセスタットとベランタマブ・マフォドチンとの組み合わせにより観察された。したがって、前臨床試験のデータは、γ-セクレターゼ阻害によるベランタマブ・マフォドチン活性の増強の機構的根拠を支持する。
【0114】
他のγ-セクレターゼ阻害薬でも同様の結果が観察されたが、ニロガセスタットは、これまで評価された他のγ-セクレターゼ阻害薬よりも安全プロファイルが優れているようである。安全プロファイルが改善されれば、他の多くのGSIとは対照的に、ニロガセスタットの毎日の投与が可能になる可能性がある。さらに、ニロガセスタットの毎日の投与は、薬物のよる一貫した曝露によるBCMA切断を継続的に防止することにより、標的範囲を改善する可能性がある。具体的には、用量制限性下痢及び肝酵素上昇の発生率は、RO4929097又はMK-0752等の他のγ-セクレターゼ阻害薬と比較してそれほど高くはないようである(Messersmith, 2015)。さらに、他のγ-セクレターゼ阻害薬(例えば、セマガセスタット)とは異なり、二次原発悪性腫瘍(SPM)又はニロガセスタットの治療による治療下での感染症のいずれの発生率も上昇しないようである(Messersmith, 2015)(Henley, 2014)。γ-セクレターゼ阻害薬は薬理学的にも機能的にも多様であるため(Ran, 2017)、異なるγ-セクレターゼ阻害薬間のこれらの対照的な知見は、標的結合親和性及び特定の臓器幹細胞区画への薬剤浸透に関係するのかもしれない。
【0115】
実施例3
この予言的な実施例では、ベランタマブ・マフォドチンとニロガセスタットの相乗作用が臨床で研究される:
第1群:連続BIDスケジュールで投与される最大3つの異なる用量のニロガセスタットと併用して、最大5つの別々の用量コホートにおいて、2つの用量(すなわち、1.9mg/kg及び2.5mg/kg)のベランタマブ・マフォドチンを評価する。
【0116】
第1群の主な目的は、50mg、100mg又は150mg BID ニロガセスタットと併用した場合に1.9mg/kgの用量のベランタマブ・マフォドチンが、一般的な対照群で使用されたベランタマブ・マフォドチン単独療法の用量と少なくとも同等の全奏効率(「ORR」)を有するという確証を得ることである。
【0117】
ベランタマブ・マフォドチン(1.9mg/kg)及びニロガセスタット(100mg BID)の開始用量における安全プロファイルが許容可能と判断される場合にのみ、第1群の2回目及び3回目の投与コホートを並行して開始することができる。
【0118】
開始用量(コホート1)の全体的な安全性プロファイルが好ましくないと判断された場合には、ニロガセスタットを50mg BIDに減量し、ベランタマブ・マフォドチンの用量を1.9mg/kgに変更しない(即ち、用量コホート1)。このような用量レベルでの本剤の薬力学的活性(すなわち、γ-セクレターゼ阻害)は低いと考えられるため、ニロガセスタットの用量強度を50mg BID未満までさらに低下させることは許されない。
【0119】
2.5mg/kg用量のベランタマブ・マフォドチンを単回点滴静注したときに許容できない安全性プロファイルが得られた場合には、Q3W投与スケジュールの第1日及び第8日に2.5mg/kgの「メザニン」用量レベルを1.25mg/kgの2回に等分した用量として投与することにより、1サイクルの曝露量(AUC)をQ3W投与と比較して同じに維持しながら最大濃度を約25%低下させることができ、ベランタマブ・マフォドチンのベネフィット/リスクにプラスの影響を与える可能性がある。
【0120】
第1群の最大評価可能用量は、ベランタマブ・マフォドチン2.5mg/kg及びニロガセスタット150mg BID(コホート4)である。コホート3の(即ち、ベランタマブ・マフォドチン2.5mg/kg及びニロガセスタット100mg BID)全体的な安全性プロファイルが許容可能であると判断された場合にのみ、コホート4を開始する。疑義を回避するため、頭字語BIDは1日2回投与を指す。
【0121】
第1群の用量レベル
第2及び第3の投与レベルは同時に開始することができる
【表1】
【0122】
第2群:これは任意のグループであり、第1群の主要目的(上述)が達成され、1.9mg/kgのベランタマブ・マフォドチンと50mg、100mg又は150mg BIDのニロガセスタットにおける併用投与の全体的なベネフィット・リスクプロファイルが許容可能と判断された場合にのみ開始される。
【0123】
第2群の主な目的は、1.9mg/kg未満のベランタマブ・マフォドチンの単回投与を特定することであり、ニロガセスタットでは50mg、100mg又は150mg BIDと併用した場合に、一般的な対照群におけるベランタマブ・マフォドチン単独投与よりも高いORRが得られる。
【0124】
第2群では、ニロガセスタットの特定の用量を1回投与した場合に、1.9mg/kg未満のベランタマブ・マフォドチンの用量レベルでの1つ以上の個別の用量コホートを評価することができる。これらのより低い用量は、薬物動態(「PK」)、試験治療下で発現した有害事象(「TEAE」)及びORRの所見に基づいて選択されて評価される。
【0125】
第3群:これは任意のグループであり、3.4mg/kgが一般的な対照群におけるベランタマブ・マフォドチン単独療法用量である場合にのみ開始され、2.5mg/kgのベランタマブ・マフォドチンを1日目に単回点滴静注として、又は1日目及び8日目に2回の等分割投与として投与した場合の安全性/耐用性は良好である。
【0126】
第3群の主な目的は、3.4mg/kgのベランタマブ・マフォドチンの用量は、特定の用量のニロガセスタットと併用した場合に、第1日及び第8日に1.7mg/kgで2回に等分して投与した場合(ありえるCmaxに起因する毒性のリスクを低下させるため)、ORRは一般的な対照群よりも高くなるが、全体的な安全プロファイルはプラットフォーム試験内で3.4mg/kgのベランタマブ・マフォドチン単独療法よりも著しく悪化することはないことを示すことである。
【0127】
ニロガセスタットに関連するグレード3の毒性が治療開始から7日以上経過しても重複する可能性がある場合には、「7日間投与/14日間休薬」の投与スケジュールでニロガセスタットを1日2回投与することが可能で、これは特に、薬力学的に活性のあるニロガセスタットの血漿中濃度が速やかに(通常は治療開始から48時間以内に)達成され、ニロガセスタット人の定常状態の血漿中濃度が8日目までに1日2回投与スケジュールで達成されるためである。
【0128】
実施例4
より低い開始用量である0.95mg/kgのベランタマブ・マフォドチンが、この予言的な副次的研究のために選択された。1.9mg/kg未満の用量で治療された被験者は少数であったが(例:0.48mg/kgでn=3、0.96mg/kgでn=4)、FTIH試験データのBayesian logistic regression modelling(BLRM)に基づくと、1.9mg/kg未満の用量でのベランタマブ・マフォドチンの単独投与の臨床活性は低いと予測される。開始用量0.95mg/kgではそれ自体の効果は限定的であると予想されるが、ニロガセスタットはベランタマブ・マフォドチンの効果を増強すると予想される。このより低い開始用量は、ベランタマブ・マフォドチン単独療法試験において使用されるより高い用量と比較して、改善された安全性プロファイルを有することが期待され、例えば、角膜毒性事象は2.5mg/kg及び3.4mg/kgの高用量と比較してグレード2の事象の発生率が低く、血液学的反応の予測レベルが高いことと関連しているようである。
【0129】
3つのコホートに0.95mg/kgのベランタマブ・マフォドチンが投与されるが、ニロガセスタットの用量は異なる:
・ニロガセスタット50mg BIDとの併用で0.95mg/kgのベランタマブ・マフォドチン
・ニロガセスタット100mg BIDとの併用で0.95mg/kgのベランタマブ・マフォドチン
・ニロガセスタット150mg BIDとの併用で0.95mg/kgのベランタマブ・マフォドチン
【0130】
ニロガセスタットは間欠的に、例えば7日間投与/14日間休薬又は継続的に投与する。臨床試験の結果は、最大のリスク・ベネフィットを得るために必要な最適な用法・用量を支持するデータを提供するであろう。
【0131】
実施例5:ADC活性
ベランタマブ・マフォドチンが抗体依存性細胞傷害アッセイにおいてGSIとの組合せ相乗効果を示すか否かを決定するために、BCMAを発現する多発性骨髄腫及びリンパ腫癌細胞株を3日間の細胞増殖アッセイで試験した。384ウェルプレートに細胞を播いた後、ニロガセスタットに2.5μM、0.25μM、0.025μM及び0.0025μMの固定濃度でベランタマブ・マフォドチンを投与した。プレートを一晩インキュベートした後、それぞれの固定濃度のニロガセスタットに対して9.9μg/mlから0.00025μg/mlまでの10点用量滴定で投与した。3日間のインキュベーション後、PromegaのCell-titer Gloを用いて細胞生存率を分析し、Graphpadソフトウェアを用いて分析した。代表的なデータを
図3に示す。この結果は、ニロガセスタットと併用したベランタマブ・マフォドチンの効力が3対数倍までシフトすることを示している。
【0132】
実施例6:ADCC活性
PromegaのJurkat ADCCアッセイを用いて、ベランタマブ、MMAF-非結合形態のベランタマブ・マフォドチンのADCC活性を、ニロガセスタットと組み合わせて試験した。BCMAを発現する多発性骨髄腫及びリンパ腫癌細胞株を、10:1の比率(Jurkatエフェクター細胞:癌細胞)で1536ウェルフォーマットで平板培養した。その直後に、細胞に2.5μM、0.25μM、0.025μM及び0.0025μMの固定濃度のニロガセスタットを投与した。次に、ベランタマブを9.9μg/mlから0.00025μg/mlまでの各固定濃度にわたって滴定した。プレートを24時間インキュベートし、Promega Bio-gloを添加することによってADCC活性について評価した。データをGraphpadソフトウェアを用いて分析した。ADCC活性についての代表的なデータを
図4に示す。
【0133】
実施例7:sBCMAレベル
可溶性BCMAは、R&D human sBCMA Elisa kitを用いて、2.5μM、0.25μM、0.025μM及び0.0025μMの固定濃度でニロガセスタットで処理した後、BCMA発現細胞株の3日齢細胞培養上清中に検出された。我々は、ニロガセスタットで処理した後、用量依存的にsBCMAの損失を検出した(
図5)。
【0134】
実施例8:BCMAレベルの細胞表面検出
BCMA発現細胞株において2.5μM、0.25μM、0.025μM及び0.0025μMの固定濃度のニロガセスタットで3日間処理した後、フローサイトメトリーによってBCMA細胞表面レベルを調べた。BCMAレベルをアイソタイプ対照と比較した。細胞表面BCMAの増加が用量依存的に検出された。細胞表面BCMAレベルの代表的なデータを
図6に示す。
【配列表】