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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20240905BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240905BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240905BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240905BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L9/00
C08K3/36
B60C1/00 A
B60C11/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021578071
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 FR2020051191
(87)【国際公開番号】W WO2021005295
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】1907674
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ヌーリー クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォワザン フロリアンドル
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/103386(WO,A1)
【文献】特表2018-535295(JP,A)
【文献】特開2017-149931(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039003(WO,A1)
【文献】特表2016-504466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0077887(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを含むタイヤであって、前記トレッドが、下記:
-エラストマー100質量部当たり25~95質量部(phr)の、-95℃~-70℃に及ぶ範囲内のガラス転移温度を有するブタジエンとスチレンをベースとするコポリマー、5~75phrのポリブタジエンを含むエラストマーマトリックスであって、15phr未満のイソプレンエラストマーを含む前記エラストマーマトリックス、
CTAB比表面積が140~170m 2 /gに及ぶ範囲内のシリカである補強フィラー、
-25~100phrの、20℃超のガラス転移温度を有する少なくとも1種の可塑化樹脂、及び
-加硫系
をベースとするゴム組成物を含むタイヤ。
【請求項2】
前記ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーが、その構造内に、前記コポリマーにケイ素原子によって結合した少なくとも1つのアルコキシシラン基、窒素原子を含む少なくとも1つの官能基を含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーが、下記特性:
-窒素原子を含む前記官能基が三級アミンある、
-窒素原子を含む前記官能基が、脂肪族C1-C10炭化水素ベース基定義されるスペーサー基を介して前記アルコキシシラン基によって支えられている、
-前記アルコキシシラン基がメトキシシラン又はエトキシシランでありこれらは任意に部分的又は完全に加水分解されてシラノールを与えてもよい
前記ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーが、記ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーの2つの分枝に前記ケイ素原子を介して結合したアルコキシシラン基によって鎖の中間で官能化されている、
-前記ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーが、-95℃~-80℃に及ぶ範囲内のガラス転移温度を有する
の少なくとも4つを含む、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーの前記組成物中の含量が65~95phrに及ぶ範囲内であり、前記組成物中のポリブタジエンの含量が5~35phrに及ぶ範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記組成物中のイソプレンエラストマーの含量が14phr未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記組成物中の前記シリカの含量が、80~200phrに及ぶ範囲内である、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記組成物中の、20℃超のガラス転移温度を有する可塑化樹脂の含量が、50phrと100phrの間である、請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
20℃超のガラス転移温度を有する前記可塑化樹脂が、シクロペンタジエンホモポリマー又はコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエンホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、C5留分ホモポリマー又はコポリマー樹脂、C9留分ホモポリマー又はコポリマー樹脂、α-メチルスチレンホモポリマー又はコポリマー樹脂及びその混合物から成る群より選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記組成物が、10~60phrの、23℃で液体の可塑剤を含み、前記23℃で液体の可塑剤が、液状ジエンポリマー、ポリオレフィン油、ナフテン油、パラフィン油、DAE油、MES油、TDAE油、RAE油、TRAE油、SRAE油、鉱物油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤及びその混合物から成る群より選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記トレッドが、少なくとも1つの半径方向内側部分及び1つの半径方向外側部分を含み、前記組成物が前記トレッドの半径方向外側部分に存在する、請求項1~9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド、特に雪で覆われた地面を走行することができるスノートレッド、ウィンタートレッド又はオールシーズントレッドを備えたタイヤ(「スノータイヤ」、「ウィンタータイヤ」又は「オールシーズンタイヤ」と呼ばれる)に関する。既知のように、それらの側壁に記された文字M+S又はM.S.或いはM&Sによって特定されるこれらのスノータイヤは、とりわけ、泥及び新雪又はスラッシュの中で、雪で覆われていない地面の上を走行するために設計されたロードタイプのタイヤの挙動より良い挙動を確保するように意図されているトレッドデザイン及び構造を特徴とする。
【背景技術】
【0002】
ホワイトグラウンドと呼ばれる、雪で覆われた地面は、低摩擦係数を示すという特徴を有し、低いガラス転移温度Tgを有するジエンゴム組成物をベースとするトレッドを含むスノータイヤの開発につながった。しかしながら、該トレッドを含むこれらのタイヤの湿地上におけるグリップ性能は、一般的にロードタイヤ、特にそのトレッドが高いTgを有する異なる処方のゴム組成物をベースとするタイヤの性能より劣る。この問題に対処するため、出願WO2012/069565は、その組成が、少なくとも1つの官能基SiORを有するジエンエラストマーを含み、Rが水素原子又は炭化水素ベース基であり、高含量の強化無機フィラー及び特殊な可塑化系と組み合わせたトレッドを提案している。
さらに、燃費及び環境保護の必要性が優先事項になってきたので、転がり抵抗が低減したタイヤケーシングの形成に関与する種々の半完成品の製造に使用できるゴム組成物を利用することが望ましい。しかしながら、転がり抵抗の低減は、湿地においても雪で覆われた地面においてもグリップの改善と相いれないことが多い。
【0003】
さらに、スノートレッド又はウィンタートレッドは、一般的によりフレキシブルなトレッドパターンを備え、及び/又は「サマー」トレッドより柔らかいゴム組成物で構成されるので、それらの耐摩耗性は、多くの場合に結果として低いことが判明する。スノートレッド又はウィンタートレッドの耐摩耗性をできる限り維持するか、又は改善さえすることも重要である。
従って、製造業者は、転がり抵抗、雪で覆われた地面上のグリップ及び特に雪で覆われた地面上を走行することを意図したタイヤトレッドの耐摩耗性という特性の妥協をさらに改善するための解決策を常に探求している。
その研究の継続中に、出願人は、予想外にも、特殊なゴム組成物が、上記性能の妥協をさらに改善できるようにすることを発見した。
【発明の概要】
【0004】
従って、本発明の目的は、そのトレッドが下記:
-25~95phrの、-70℃未満のガラス転移温度を有するブタジエンとスチレンをベースとするコポリマー、及び5~75phrのポリブタジエンを含むエラストマーマトリックスであって、15phr未満のイソプレンエラストマーを含むエラストマーマトリックス、
-少なくとも1種の補強フィラー、
-25~100phrの、20℃超のガラス転移温度を有する少なくとも1種の可塑化樹脂、及び
-加硫系
をベースとするゴム組成物を含むタイヤである。
本文書では、別段の指示がない限り、「組成物」又は「本発明の組成物」という表現は、本発明のトレッドの組成物を表す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
I-定義
「をベースとする組成物」という表現は、用いた種々の成分のその場反応の混合物及び/又は生成物を含む組成物を意味するものと理解すべきであり、組成物の製造の種々の段階中にこれらの成分のいくつかが互いに少なくとも部分的に反応することができ、及び/又は互いに少なくとも部分的に反応するよう意図されており;従って、組成物は完全に又は部分的に架橋状態又は非架橋状態である可能性がある。
本発明の目的では、「エラストマーの百分の1質量分率」(又はphr)という表現は、「エラストマー100質量部当たりの質量部」を意味するものと理解すべきである。
本文書では、明示的に別段の定めをした場合を除き、示した全ての百分率(%)は、質量百分率(%)である。
さらに、表現「aとbの間」によって表される値のいずれの区間も、aより大きくb未満に及ぶ値の範囲を意味し(すなわち、限界a及びbは排除される)、一方で表現「a~b」によって表される値のいずれの区間もaからbまでに及ぶ値の範囲を意味する(すなわち、厳密な限界a及びbを含む)。本文書では、値の区間を表現「a~b」によって記述するとき、表現「aとbの間」で表される区間をもまた、好ましくは表している。
【0006】
「主」化合物に言及するとき、これは、本発明の目的では、この化合物が組成物中の同種類の化合物の中で主要であること、すなわち、同種類の化合物のうち質量で最大量を占める化合物であることを意味すると理解すべきである。従って、例えば、主エラストマーは、組成物中のエラストマーの総質量に対して最大質量を占めるエラストマーである。同様に、「主」フィラーは、組成物のフィラーのうち最大質量を占めるフィラーである。例として、1種だけのエラストマーを含む系では、本発明の目的ではこの1種だけのエラストマーが主要であり、2種のエラストマーを含む系では、主エラストマーは、エラストマーの質量の半分超を占める。好ましくは、用語「主要」は50%超、好ましくは60%、70%、80%、90%超、例えば100%存在することを意味すると理解すべきである。
本説明で言及する炭素を含む化合物は、化石又はバイオ起源のものであってよい。バイオ起源の場合、それらは部分的又は完全にバイオマス由来であるか又はバイオマス由来の再生可能な出発材料から得ることができる。特にポリマー、可塑剤、フィラー等が重要である。
エラストマーのガラス転移温度(Tg)は、示差熱量計(示差走査熱量計)を利用してASTM規格E1356-08(2014)に従って決定される。
【0007】
II-発明の説明
II-1エラストマーマトリックス
本発明によれば、タイヤトレッドの組成物のエラストマーマトリックスは、25~95phrの、-70℃未満のガラス転移温度を有するブタジエンとスチレンをベースとするコポリマー、5~75phrのポリブタジエン、及び15phr未満のイソプレンエラストマーを含む。
本発明の意味の範囲内では、「ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマー」は、1種以上のスチレン化合物と1種以上のブタジエンの共重合によって得られるいずれのコポリマーをも指す。以下のものはスチレンモノマーとして特に適している:スチレン、メチルスチレン、パラ-(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン及びクロロスチレン。1,3-ブタジエンは、ブタジエンモノマーとして特に適している。これらのエラストマーは、いずれのミクロ構造を有してもよく、使用する重合条件、特に変性剤及び/又はランダム化剤の存否並びに利用する変性剤及び/又はランダム化剤の量に左右される。エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、配列又はミクロ配列エラストマーであり得る。
【0008】
ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、有利にはブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)である。
SBRは、エマルション中(ESBR)又は溶液中(SSBR)で調製可能であることに留意されたい。ESBRであろうとSSBRであろうと、SBRは、-70℃未満のガラス転移温度に適合するいずれのミクロ構造のものであってもよい。特に、ブタジエン/スチレンコポリマーは、質量で1%と15%の間、さらに特に1%と5%の間のスチレン含量を有し、ブタジエン部分の1,2-結合含量(モル%)は4%と25%の間であってよい。有利には、ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーはSSBRである。
有利には、ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、-105℃~-70℃、好ましくは-100℃~-80℃、好ましくは-95℃と-85℃の間、さらに好ましくは-95℃と-86℃の間のガラス転移温度を有する。
【0009】
好ましくは、ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、下記特性のいずれか1つ、有利には2又は3つの組み合わせ、さらに有意には全てを示すスチレン/ブタジエンコポリマーである:
-溶液中で調製されたスチレン/ブタジエンコポリマー(SSBR)である、
-スチレン/ブタジエンコポリマーの総質量に対して、そのスチレンの質量含量が、1%と10%の間、好ましくは1%と4%の間である、
-そのブタジエン部分のビニル結合含量が、4%と25%の間、好ましくは10%と15%の間である、
-そのTgが-105℃~-70℃に及ぶ範囲、好ましくは-95℃と-86℃の間の範囲内である。
【0010】
有利にはブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、その構造内に少なくとも1つのアルコキシシラン基及び少なくとも1つの他の官能基を含み、アルコキシシラン基のケイ素原子はエラストマー鎖(複数可)に結合しており、アルコキシシラン基は、任意に部分的又は完全に加水分解されてシラノールを与えることがある。
本説明では、エラストマーの構造内にあるアルコキシシラン基という概念は、そのケイ素原子がポリマー骨格中にあり、ポリマー骨格に直接結合している基として理解される。構造内におけるこの位置にはポリマー鎖末端も含まれる。従って、末端基は、この概念に含まれる。アルコキシシラン基はペンダント基でない。
アルコキシシラン基が鎖末端に位置するきは、ジエンエラストマーは鎖末端で官能化されていると言われる。
アルコキシシラン基が主エラストマー鎖に位置するときは、ジエンエラストマーは、「鎖末端」の位置とは対照的に、鎖の中間で結合されている、或いは官能化されているが、この基は、エラストマー鎖の厳密に中央にあるわけではない。この官能基のケイ素原子が、ジエンエラストマーの主鎖の2つの分枝に結合する。
【0011】
ケイ素原子が中心位置にあり、それに少なくとも3つのエラストマー分枝が結合して、エラストマーの星状分岐構造を形成しているときは、ジエンエラストマーは星状分岐していると言われる。結果としてケイ素原子は、ジエンエラストマーの少なくとも3つの分枝で置換されている。
エラストマーが、アニオン重合のステップに起因する官能化剤とリビングエラストマーの反応によって変性されると、このエラストマーの変性エンティティが得られ、その組成は、変性反応条件、特にリビングエラストマー鎖の数に対する官能化剤の反応部位の比率に左右されることは当業者に周知であることを明記すべきである。この混合物は、鎖末端で官能化され、星状分岐され及び/又は官能化されないエンティティを含む。
有利には、ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、主エンティティとして、ジエンエラストマーを含み、このジエンエラストマーの2つの分枝にケイ素原子を介して結合したアルコキシシラン基によって鎖の中間で官能化されており、アルコキシ基は、任意に部分的又は完全に加水分解されてヒドロキシルを与えることがある。さらに特に、鎖の中間でアルコキシシラン基によって官能化されたジエンエラストマーは、ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーの70質量%に相当する。
アルコキシシラン基において、任意に部分的又は完全に加水分解されてヒドロキシルを与えることがあるアルコキシル基は、C1-C10、又はC1-C8、好ましくはC1-C4のアルキル基を含んでよく、より優先的にはアルコキシル基はメトキシ又はエトキシである。
【0012】
他の官能基は、好ましくは、N、S、O、Pから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む官能基である。これらの官能基の中で、例として、環状若しくは非環状であってよい一級、二級若しくは三級アミン、イソシアナート、イミン、シアノ、チオール、カルボキシラート、又は一級、二級若しくは三級ホスフィンに言及することができる。
ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、有利には、窒素原子を含む少なくとも1つの官能基を含む。従って、ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、有利にはその構造内に、ケイ素原子を介してエラストマーに結合した少なくとも1つのアルコキシシラン基及び窒素原子を含む官能基を含む。
窒素原子を含むこの官能基は、鎖末端に位置し、共有結合又は炭化水素ベース基を介してエラストマーに直接結合され得る。
窒素原子を含むこの官能基は、アルコキシシラン基によって支えられていてもよく、有利にはアルコキシシラン基に支えられている。窒素原子を含む官能基は、直接又はスペーサー基を介して、アルコキシシラン基のケイ素によって支えられ得る。スペーサー基は、原子、特にヘテロ原子、又は原子群であり得る。
【0013】
スペーサー基は、飽和若しくは不飽和、環状若しくは非環状、直鎖若しくは分岐鎖の二価脂肪族C1-C18炭化水素ベース基又は二価芳香族C6-C18炭化水素ベース基であってよく、1つ以上の芳香族基及び/又は1個以上のヘテロ原子を含有し得る。炭化水素ベース基は、任意に置換されていてもよい。
有利には、スペーサー基は、直鎖若しくは分岐鎖の二価脂肪族C1-C18炭化水素ベース基、より優先的には二価脂肪族C1-C10、さらに優先的にはC3-C8の炭化水素ベース基、さらに優先的には直鎖二価C3炭化水素ベース基である。
ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、エラストマー内に別の官能基(すなわち上記官能基と異なる官能基)を含んでもよいが、これは好ましくない。
ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、ブタジエンとスチレンをベースとするいくつかのコポリマーの混合物であってもよい。
【0014】
窒素原子を含む官能基を含むアルコキシシラン基は、下記式で表すことができる。
(*-)aSi(OR')bRcX
式中:
*-は、エラストマー鎖への結合を表し;
- 基Rは、置換若しくは非置換C1-C10、又はC1-C8アルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基、より優先的にはメチル及びエチルを表し;
- 任意に部分的又は完全に加水分解されてヒドロキシルを与えることがある式-OR'のアルコキシル基中、R'は、置換若しくは非置換C1-C10、又はC1-C8アルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基、より優先的にはメチル及びエチルを表し;
- Xは、窒素ベースの官能性を含む基を表し;
- aは1又は2であり、bは1又は2であり、cは0又は1であり、但し、a+b+c=3である。
aの値は、エラストマーの構造内におけるアルコキシシラン基の位置に左右されることを当業者なら理解するであろう。aが1であるとき、基は鎖末端に位置する。aが2であるとき、基は鎖の中間に位置する。
【0015】
窒素原子を含む官能基として、アミン官能基に言及することができる。任意に保護基で保護されていてよい一級アミン、任意に保護基で保護されていてよい二級アミン、又は三級アミンが特に適している。
二級又は三級アミン官能基として、C1-C10アルキル、好ましくはC1-C4アルキル基、より優先的にはメチル又はエチル基で置換されたアミン、或いは窒素原子と、少なくとも1個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子とを含むヘテロ環を形成している環状アミンに言及することができる。例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、プロピルアミノ、ジプロピルアミノ、ブチルアミノ、ジブチルアミノ、ペンチルアミノ、ジペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ジヘキシルアミノ又はヘキサメチレンアミノ基、好ましくはジエチルアミノ及びジメチルメチルアミノ基が適している。アミンが環状であるとき、下記基も適している:モルホリン、ピペラジン、2,6-ジメチルモルホリン、2,6-ジメチルピペラジン、1-エチルピペラジン、2-メチルピペラジン、1-ベンジルピペラジン、ピペリジン、3,3-ジメチルピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、1-メチル-4-(メチルアミノ)ピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ピロリジン、2,5-ジメチルピロリジン、アゼチジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、5-ベンジルオキシインドール、3-アザスピロ[5.5]ウンデカン、3-アザビシクロ[3.2.2]ノナン、カルバゾール、ビストリメチルシリルアミン、ピロリジン及びヘキサメチレンアミン、好ましくはピロリジン基及びヘキサメチレンアミン基。
【0016】
アミン官能基は、好ましくは三級アミン官能基、好ましくはジエチルアミン又はジメチルアミンである。
有利には、下記特性:
-窒素原子を含む官能基は、三級アミン、さらに特にジエチルアミノ又はジメチルアミノ基である、
-窒素原子を含む官能基は、脂肪族C1-C10炭化水素ベース基、より優先的には脂肪族C3-C8炭化水素ベース基、さらに優先的には直鎖C3炭化水素ベース基と定義されるスペーサー基を介してアルコキシシラン基によって支えられている、
-アルコキシシラン基は、任意に部分的又は完全に水素化されてシラノールを与えることがあるメトキシシラン又はエトキシシランである、
-ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、溶液中で調製されたブタジエン/スチレンコポリマーである、
-ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、主に、ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーの2つの分枝にケイ素原子を介して結合したアルコキシシラン基によって鎖の中間で官能化されている、
-ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、-105℃~-70℃に及ぶ範囲内のガラス転移温度を有する
の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、さらに好ましくは全てが観察される。
【0017】
特に好ましくは、下記特性:
- 窒素原子を含む官能基は、三級アミン、さらに特にジエチルアミノ又はジメチルアミノ基である、
-窒素原子を含む官能基は、直鎖C3炭化水素ベース基を介してアルコキシシラン基によって支えられている、
-アルコキシシラン基は、任意に部分的又は完全に加水分解されてシラノールを与えることがあるメトキシシラン又はエトキシシランである、
-ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、溶液中で調製されたブタジエン/スチレンコポリマーである、
-ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、主に、ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーの2つの分枝にケイ素原子を介して結合したアルコキシシラン基によって鎖の中間で官能化されている、
-ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、-95℃と-86℃の間の範囲内のガラス転移温度を有する
の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、さらに好ましくは全てが観察される。
本発明のタイヤトレッドの組成物中のブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーの含量は、有利には65~95phrに及ぶ範囲内、好ましくは66と90phrの間の範囲内であり得る。
【0018】
このタイプのブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、下記プロセスによって得ることができる。
ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーの調製プロセスの第1のステップは、少なくとも1種の共役ジエンモノマーのアニオン重合又は重合開始剤の存在下での少なくとも1種の共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーの重合である。モノマーは上記のとおりである。
重合開始剤としては、いずれの既知の単官能性アニオン開始剤をも利用可能である。しかしながら、リチウム等のアルカリ金属を優先的に使用する。
炭素-リチウム結合を含む有機リチウム開始剤が特に適している。代表化合物は、脂肪族有機リチウム化合物、例えばエチルリチウム、n-ブチルリチウム(n-BuLi)、イソブチルリチウム等である。
【0019】
他の官能基が直接エラストマー鎖に結合している本発明の実施形態によれば、これは重合開始剤によって提供され得る。該開始剤は、例えば、鎖の非反応性末端にアミン基を有するリビング鎖をもたらすアミン官能基を含む重合開始剤である。
アミン官能基を含む重合開始剤としては、好ましくは有機リチウム化合物、好ましくはアルキルリチウム化合物と、非環状又は環状、好ましくは環状二級アミンとの反応生成物であるリチウムアミドに言及することができる。
開始剤を調製するために使用できる二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ(n-ブチル)アミン、ジ(sec-ブチル)アミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(n-オクチル)アミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、N-メチルベンジルアミン、ジアリルアミン、モルホリン、ピペラジン、2,6-ジメチルモルホリン、2,6-ジメチルピペラジン、1-エチルピペラジン、2-メチルピペラジン、1-ベンジルピペラジン、ピペリジン、3,3-ジメチルピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、1-メチル-4-(メチルアミノ)ピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ピロリジン、2,5-ジメチルピロリジン、アゼチジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、5-ベンジルオキシインドール、3-アザスピロ[5.5]ウンデカン、3-アザビシクロ[3.2.2]ノナン、カルバゾール、ビストリメチルシリルアミン、ピロリジン及びヘキサメチレンアミンに言及することができる。二級アミンは、それが環状であるとき、好ましくはピロリジン及びヘキサメチレンアミンから選択される。
アルキルリチウム化合物は、好ましくはエチルリチウム、n-ブチルリチウム(n-BuLi)、イソブチルリチウム等である。
【0020】
重合は、好ましくは、例えば、脂肪族又は脂環式炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン若しくはメチルシクロヘキサン、又は芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン又はキシレンであり得る不活性な炭化水素ベース溶媒の存在下で行なわれる。
エラストマーのミクロ構造は、変性剤及び/又はランダム化剤の存否並びに利用する変性剤及び/又はランダム化剤の量によって決まり得る。優先的に、ジエンエラストマーがジエン及びビニル芳香族をベースとするときは、重合ステップ中に、ポリマー鎖に沿ったビニル芳香族のランダム分布を促すような量で極性剤が使用される。
有利には、重合の結果生じたリビングジエンエラストマーは、引き続き、ケイ素原子を介してエラストマーに結合した少なくとも1つのアルコキシシラン基と、窒素原子を含む官能基とをその構造内に含むブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーを調製するため、ポリマー構造内にアルコキシシラン基を導入する能力がある官能化剤を利用して官能化される。
【0021】
第1のステップの結果として得られたリビングジエンエラストマーの変性反応は、-20℃と100℃の間の温度で、リビングポリマー鎖への付加によって又は逆に、窒素原子を含む官能基を有するか又は有しないエラストマー鎖内にケイ素原子が組み込まれている、アルコキシシラン基を形成する能力がある非重合性官能化剤の付加によって起こり得る。この官能化剤は、特にリビングエラストマーに対して反応性が高い官能基を有する官能化剤であり、これらの各官能基が直接ケイ素原子に結合している。
この官能化剤は、下記式に相当する。
(OR')dSi(R)cX
式中:
-任意に部分的又は完全に加水分解性であり得る式-OR'のアルコキシル基において、R'は、置換又は非置換C1-C10、又はC1-C8アルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基、より優先的にはメチル及びエチルであり;
-Rは、置換若しくは非置換C1-C10、又はC1-C8アルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基、より優先的にはメチル及びエチルであり;
-Xは、窒素原子を含む官能基を含む基を表し;
-dは2又は3であり、cは0又は1であり、但し、d+c=3である。
【0022】
窒素原子を含む官能基は上記定義どおりである。
窒素原子を含む官能基は、保護されているか若しくは保護されていない一級アミン、保護されているか若しくは保護されていない二級アミン、又は三級アミンであり得る。そこで、トリアルキルシリル基であり得、該アルキル基が1~4個の炭素原子を有するアルキル基、又はC1-C10、好ましくはC1-C4アルキル基、より優先的にはメチル又はエチル基である2つの同一若しくは異なる基で窒素原子が置換されることがあり、或いは後で、窒素原子の2つの置換基が、窒素原子及び少なくとも1個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子を含むヘテロ環を形成する。
【0023】
官能化剤としては、例えば、(N,N-ジアルキルアミノアルキル)トリアルコキシシラン、(N-アルキルアミノアルキル)トリアルコキシシランに言及することができ、その二級アミン官能基はトリアルキルシリル基、及び(アミノアルキル)トリアルコキシシラによって保護され、その一級アミン官能基は、2つのトリアルキルシリル基によって保護され、アミン官能基をトリアルコキシシラン基に結合できるようにする二価の炭化水素ベース基は、優先的には脂肪族C1-C10、さらに特に上述した直鎖C2若しくはC3スペーサー基である。
官能化剤は、(3-N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-N,N-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-N,N-ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-N,N-ジエチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-N,N-ジプロピルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-N,N-ジプロピルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-N,N-ジブチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-N,N-ジブチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-N,N-ジペンチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-N,N-ジペンチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-N,N-ジヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-N,N-ジヘキシルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-ヘキサメチレンアミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-ヘキサメチレンアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-モルホリノプロピル)トリメトキシシラン、(3-モルホリノプロピル)トリエトキシシラン、(3-ピペリジノプロピル)トリメトキシシラン又は(3-ピペリジノプロピル)トリエトキシシランから選択され得る。より優先的には、官能化剤は(3-N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシランである。
【0024】
官能化剤は、(3-N,N-メチルトリメチルシリルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-N,N-メチルトリメチルシリルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-N,N-エチルトリメチルシリルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-N,N-エチルトリメチルシリルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-N,N-プロピルトリメチルシリルアミノプロピル)トリメトキシシラン又は(3-N,N-プロピルトリメチルシリルアミノプロピル)トリエトキシシランから選択可能である。より優先的には、官能化剤は(3-N,N-メチルトリメチルシリルアミノプロピル)トリメトキシシランである。
官能化剤は、(3-N,N-ビストリメチルシリルアミノプロピル)トリメトキシシラン及び(3-N,N-ビストリメチルシリルアミノプロピル)トリエトキシシランから選択可能である。より優先的には、官能化剤は(3-N,N-ビストリメチルシリルアミノプロピル)トリメトキシシランである。
官能化剤は、有利には(N,N-ジアルキルアミノアルキル)トリアルコキシシランから選択され;ここではさらに特に官能化剤は(3-N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシランである。
【0025】
エラストマーが、官能化剤と、アニオン重合ステップの結果生じるリビングエラストマーの反応によって変性されると、このエラストマーの変性エンティティの混合物が得られ、その組成は、特に、リビングエラストマー鎖の数に対する官能化剤の反応性部位の比率によって決まることは、当業者に既知であることを明記すべきである。
この混合物は、鎖末端で官能化され、結合され、星状分岐され、及び/又は官能化されないエンティティを含み得る。
官能化剤の、重合開始剤の金属に対するモル比は、基本的にブタジエンとスチレンをベースとする所望のコポリマーのタイプによって決まる。従って、0.40~0.75、又は0.45~0.65、又は0.45~0.55の範囲の比で、変性エラストマー内で結合エンティティが形成されるのが都合よく、アルコキシシラン基は、鎖の中間に位置している。同様に、0.15~0.40、又は0.20~0.35、又は0.30~0.35の範囲の比で、星状分岐(3分枝)エンティティが変性エンティティ内に主に形成される。0.75以上、又は1超の比で、鎖末端にて官能化されたエンティティが主に形成される。
有利には、官能化剤と重合開始剤との間のモル比は、0.35~0.65、優先的には0.40~0.60、さらに優先的には0.45~0.55まで変動する。
【0026】
従って、ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーは、主エンティティとして、ケイ素原子を介してジエンエラストマーの2つの分枝に結合したアルコキシシラン基によって鎖の中間で官能化されたジエンエラストマーを含むことができる。さらに特に、アルコキシシラン基によって鎖の中間で官能化されたジエンエラストマーは、ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーの70質量%に相当する。
有利には、アルコキシシラン基は、任意に部分的又は完全に加水分解されてヒドロキシルことがあるアルコキシ基を含む。
これとは別に、アルコキシシラン基は、上述したように窒素原子を含む官能基を有するのが有利である。この官能基は、好ましくは上述したように三級アミン官能基、特に、好ましくは上述したようにスペーサー基を介してケイ素原子に結合したジエチルアミノ又はジメチルアミノ、特に二価の直鎖C2若しくはC3炭化水素ベース基である。
【0027】
官能化剤が保護された官能基を有するとき、この官能基の脱保護ステップによって合成プロセスを続けることができる。このステップは、変性反応後に行なわれ、当業者に周知である。
合成プロセスは、文書EP 2 266 819 A1に記載のように、酸性、塩基性又は中性化合物の添加による加水分解性アルコキシル官能基の加水分解ステップを含むこともある。加水分解性官能基は、次にヒドロキシル官能基に変換される。
ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーの合成プロセスは、それ自体既知の方法で、ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーの回収ステップによって継続可能である。これらのステップは、特に前のステップから得られたエラストマーを回収するためのストリッピングステップを含むことができる。
これらのストリッピングステップは、ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーの加水分解性官能基の全て又はいくつかを加水分解するという効果を有し得る。結果として、有利には、これらの官能基の少なくとも50モル%~70モル%を加水分解することができる。
【0028】
本発明によれば、本発明のタイヤトレッドの組成物のエラストマーマトリックスは、5~75phrのポリブタジエンを含む。
用語「ポリブタジエン」(「BR」と略記)は、1種以上のポリブタジエンを指し得ることが分かるであろう。ポリブタエンは、当業者に既知の適切な触媒を用いて溶液重合プロセスで1,3-ブタジエンモノマーを重合(典型的に単独重合)することによって製造される周知ゴムである。ブタジエンモノマー中に存在する2つの二重結合のため、結果として生じるポリブタジエンは、3つの異なる形態、すなわちcis-1,4-ポリブタジエン、trans-1,4-ポリブタジエン及びビニル-1,2-ポリブタジエンを構成し得る。cis-1,4-エラストマー及びtrans-1,4-エラストマーは、一端と他端が結合するモノマーによって形成され、一方、ビニル-1,2-エラストマーは、モノマーの末端間で結合するモノマーによって形成される。
【0029】
触媒の選択及びプロセスの温度は、ポリブタジエンのcis-1,4-結合の含量を制御するために一般的に用いられる変量として知られている。
有利には、ポリブタジエンは、90%超、より優先的には95%超の含量(モル%)のcis-1,4-結合を有する。
このタイプのポリブタジエンは、例えば文書JP 60/23406 A及びWO 03/097708 A1に記載のプロセスに従って当業者に周知の方法でネオジム触媒を用いて生成可能である。このタイプのポリブタジエンは、商業的に入手することもでき、例えばLanxessによってBuna(登録商標)CB 22が販売されている。
有利には、ポリブタジエンのガラス転移温度は、-110℃~-80℃、好ましくは-108℃~-100℃に及ぶ範囲内である。
有利には、本発明のタイヤトレッドの組成物中のポリブタジエンの含量は5~35phrに及ぶ範囲内、好ましくは10phrと34phrの間の範囲内である。
従って、本発明によれば、本発明のタイヤトレッドのエラストマーマトリックスは、有利には65~95phrの、ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマー及び5~35phrのポリブタジエン、好ましくは66~90phrの、ブタジエンとスチレンをベースとするコポリマー及び10~34phrのポリブタジエンを含む。
【0030】
本発明によれば、本発明のタイヤトレッドの組成物のエラストマーマトリックスは、15phr未満のイソプレンエラストマーを含む。
用語「イソプレンエラストマー」は、既知のように、イソプレンホモポリマー又はコポリマー、言い換えれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物から成る群より選択されるジエンエラストマーを意味すると理解されている。イソプレンコポリマーの中で、特にイソブテン/イソプレン(ブチルゴム-IIR)、イソプレン/スチレン(SIR)、イソプレン/ブタジエン(BIR)又はイソプレン/ブタジエン/スチレン(SBIR)コポリマーに言及することになる。このイソプレンエラストマーは、好ましくは天然ゴム又は合成cis-1,4-ポリイソプレンであり;これらの合成ポリイソプレンの中で、90%超、さらに優先的には98%超の含量(モル%)のcis-1,4-結合を有するポリイソプレンを利用するのが好ましい。
本発明のタイヤトレッドの組成物中のイソプレンエラストマーの含量は、優先的には、14phr未満、好ましくは10phr未満、好ましくは5phr未満、好ましくは4phr未満である。
特に有利には、本発明のタイヤトレッドの組成物は、イソプレンエラストマーを含まない。従って、有利には、タイヤトレッドの組成物中のブタジエンとスチレンをベースとするコポリマー及びポリブタジエンの総含量は100phrである。
【0031】
II-2 補強フィラー
本発明のタイヤトレッドの組成物は、そのタイヤの製造に使用できるゴム組成物を補強するその能力で知られている補強フィラーをさらに含む。
補強フィラーは、カーボンブラック、補強無機フィラー又はその混合物を含むことがある。
有利には、補強フィラーは主に補強無機フィラー、好ましくはシリカを含む。
本発明のタイヤトレッドの組成物中の補強無機フィラー、好ましくはシリカの含量は、80~200phr、好ましくは90~180phr、好ましくは100~160phrに及ぶ範囲内であり得る。
さらに、本発明のタイヤトレッドの組成物中のカーボンブラックの含量は、0~40phr、好ましくは1~20phr、好ましくは2~10phrに及ぶ範囲内であり得る。
【0032】
本発明の状況で使用可能なブラックは、タイヤ又はそれらのトレッドに通常用いられるいずれのブラック(「タイヤグレード」ブラック)であってもよい。後者の中で、さらに特に100、200及び300シリーズの補強カーボンブラック、又は500、600若しくは700シリーズのブラック(ASTMグレード)、例えばN115、N134、N234、N326、N330、N339、N347、N375、N550、N683及びN772ブラックに言及することになる。これらのカーボンブラックは、市販されているように、単独状態で使用可能であり、或いはいずれの他の形態でも、例えば、使用するゴム添加剤のいくつかに適した担体として使用可能である。カーボンブラックは、例えば、ジエンエラストマー、特にイソプレンエラストマー中に、マスターバッチの形態で、既に組み込まれている可能性がある(例えば、出願WO97/36724又はWO99/16600参照)。
カーボンブラック以外の有機フィラーの例として、出願WO2006/069792、WO2006/069793、WO2008/003434及びWO2008/003435に記載されているような、官能化ポリビニル有機フィラーに言及することができる。
【0033】
カーボンブラックのBET比表面積は、規格D6556-10[多点(最小5点)法-ガス:窒素-相対圧力P/P0範囲:0.1~ 0.3]に従って測定される。
本発明の状況で使用可能な補強無機フィラー、好ましくはシリカは、当業者に既知のいずれのシリカであってもよく、特に両方とも450m2/g未満、好ましくは30~400m2/gであるBET表面積及びCTAB比表面積を示すいずれの沈降シリカ又はヒュームドシリカであってもよい。
補強無機フィラー、好ましくはシリカのBET比表面積は、既知の方法で、米国化学会誌、第60巻、1938年2月号、309ページに記載のブルナウアー-エメット-テラー法を利用するガス吸着によって、より詳細には、1996年12月の仏国規格NF ISO 9277(多点(5点)容積法-ガス:窒素-脱気:160℃で1時間-相対圧力p/p0範囲:0.05~0.17)に従って決定される。シリカのCTAB比表面積は、1987年11月の仏国規格NF T 45-007(方法B)に従って決定される。
【0034】
好ましくは、補強無機フィラー、好ましくはシリカは200m2/g未満のBET比表面積及び/又は220m2/g未満のCTAB比表面積、好ましくは125~200m2/gに及ぶ範囲内のBET比表面積及び/又は140~170m2/gに及ぶ範囲内のCTAB比表面積を示す。
本発明の状況で使用可能な補強無機フィラー、好ましくはシリカとしては、例えば、高分散性沈降シリカ(「HDS」と呼ばれる) Ultrasil 7000及びUltrasil 7005(Evonikから)、Zeosil 1165MP、1135MP及び1115MPシリカ(Rhodiaから)、Hi-Sil EZ150Gシリカ(PPGから)、Zeopol 8715、8745及び8755シリカ(Huberから)又は出願WO 03/16837に記載の高い比表面積を有するシリカに言及することになる。
【0035】
補強無機フィラーをジエンエラストマーに結合させるため、周知の方法で、満足のいく結合を与えることを意図した少なくとも二官能性カップリング剤(又は結合剤)、無機フィラー(その粒子の表面)とジエンエラストマーとの間の化学的及び/又は物理的性質を利用してよい。特に、少なくとも二官能性であるオルガノシラン又はポリオルガノシロキサンを利用すことになる。用語「二官能性」は、無機フィラーと相互作用する能力がある第1の官能基及びジエンエラストマーと相互作用する能力がある第2の官能基を有する化合物を意味すると理解される。例えば、このタイプの二官能性化合物は、ケイ素原子を含む第1の官能基を含み、前記第1の官能基は、無機フィラーのヒドロキシル基と相互作用することができ、かつ硫黄原子を含む第2の官能基を含み、前記第2の官能基はジエンエラストマーと相互作用することができる。
優先的に、オルガノシランは、オルガノシランポリスルフィド(対称性又は非対称性)、例えばビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPTと略記され、商品名Si69でEvonik社により販売)、又はビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(TESPDと略記され、商品名Si75でEvonik社により販売)、ポリオルガノシロキサン、メルカプトシラン、ブロックメルカプトシラン、例えばS-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)オクタンチオアート(Momentive社により商品名NXTシランで販売)から成る群より選択される。より優先的には、オルガノシランは、オルガノシランポリスルフィドである。
【0036】
II-3 加硫系
加硫系は、優先的に分子硫黄及び/又は少なくとも1種の硫黄供与剤を含む。優先的には、少なくとも1種の加硫促進剤も存在し、かつ任意に、優先的に、種々の既知の加硫促進剤、例えば酸化亜鉛、ステアリン酸又は同等化合物、例えばステアリン酸塩、及び遷移金属の塩、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)、又は既知の加硫遅延剤を利用してもよい。
硫黄は、0.5phrと12phrの間、特に1phrと10phrの間の優先的含量で使用される。加硫促進剤は、0.5phrと10phrの間、より優先的には0.5と5.0phrの間の優先的含量で使用される。
促進剤として、硫黄の存在下でジエンエラストマーの加硫の促進剤として作用する能力があるいずれの化合物をも利用してよく、特にチアゾールタイプの促進剤、及びまたそれらの誘導体、又はスルフェンアミド、チウラム、ジチオカルバマート、ジチオホスファート、チオ尿素及びキサンタートタイプの促進剤を利用してよい。該促進剤の例として、特に下記化合物に言及することができる:2-メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(MBTSと略記)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DCBS)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンイミド(TBSI)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)及びこれらの化合物の混合物。
【0037】
II-4 可塑化系
本発明のタイヤトレッドのゴム組成物は、25~100phrの、「高Tg」として知られる(本文書では表現の単純化のため「可塑化樹脂」とも称する)20℃超のガラス転移温度を有する少なくとも1種の可塑化樹脂をさらに含む。
II-4.1 可塑化樹脂
「樹脂」という名称は、本特許出願では、当業者に既知の定義によって、油等の液状可塑化化合物とは対照的に、周囲温度(23℃)で固体である化合物のために確保される。
可塑化樹脂は、当業者に周知のポリマーであり、基本的に炭素と水素をベースとするが、他のタイプの原子を含むことがあり、これは特にポリマーマトリックス中の可塑化剤又は粘着付与剤として使用可能である。それらは一般的に、それらが意図されるポリマー組成物と共に用いられる含量で、真の希釈剤として作用するように、本質的に混和性(すなわち、相溶性)である。それらは、例えば、R. Mildenberg, M. Zander及びG. Collinによる表題“Hydrocarbon Resins”の研究(New York, VCH, 1997, ISBN 3-527-28617-9)に記載され、その第5章は、特にタイヤトゴム分野におけるそれらの応用に向けられている(5.5. "Rubber Tires and Mechanical Goods")。それらは、脂肪族、脂環式、芳香族、水素化芳香族、又は脂肪族/芳香族タイプであってよく、すなわち脂肪族及び/又は芳香族モノマーをベースとする。それらは天然又は合成であってよく、石油をベースとしてもしなくてもよい(石油をベースとする場合、それらは石油樹脂という名称でも知られる)。それらのTgは、好ましくは20℃より高い(一般的に30℃と95℃の間)。
【0038】
既知のように、これらの可塑化剤は、加熱されると軟化し、結果として塑造され得るという意味で熱可塑性樹脂と記述することもできる。それらを軟化点によって定義してもよい。可塑化樹脂の軟化点は、一般的にそのTg値より約50℃~60℃高い。軟化点は、ISO規格4625(環球法)に従って測定される。マクロ構造(Mw、Mn及びPDI)は、以下に示すようにサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定される。
備忘録として、SEC分析は、例えば、多孔質ゲルを充填したカラムを通してそれらのサイズに応じて溶液中のマクロ分子を分離することにあり;分子は、それらの流体力学的体積によって分離され、最もかさ高い分子が最初に溶出される。分析すべきサンプルを前もって適切な溶媒、テトラヒドロフランに1g/リットルの濃度で簡単に溶解させる。次に装置への注入前に0.45μmの空隙率を有するフィルターを通して溶液を濾過する。使用装置は、例えば、下記条件に従うWaters Allianceクロマトグラフラインである:
-溶出溶媒はテトラヒドロフランであり;
-温度35℃;
-濃度1g/リットル;
-流速:1ml/分;
-注入量:100μl;
-ポリスチレン標準物質によるMoore較正;
-直列で3つの「Waters」カラムセット(Styragel HR4E、Styragel HR1及びStyragel HR 0.5);
-オペレーティングソフトウェア(例えばWaters Millennium)を備えることがある示差屈折計(例えばWATERS 2410)による検出。
【0039】
Moore較正は、低PDI(1.2未満)を有する一連の市販のポリスチレン標準物質を用いて、分析すべき質量範囲を網羅する既知のモル質量で行なわれる。重量平均モル質量(Mw)、数平均モル質量(Mn)及び多分散指数(PDI=Mw/Mn)も記録データ(モル質量の重量分布曲線)から推定される。
従って本出願に示す全てのモル質量値は、ポリスチレン標準物質を用いて作成された較正曲線に関するものである。
本発明の優先的実施形態によれば、可塑化樹脂は、下記特性の少なくともいずれか1つ、好ましくは2又は3つ、さらに優先的には全てを示す:
- 25℃超(特に30℃と100℃の間)、より優先的には30℃超(特に30℃と95℃の間)のTg;
- 50℃超(特に50℃と150℃の間)の軟化点;
- 300g/モルと2000g/モルの間、優先的には400g/モルと1500g/モルの間の数平均モル質量(Mn);
-3未満、優先的には2未満(備忘録として:PDI=Mw/Mn、Mwは重量平均モル質量)の多分散指数(PDI)。
【0040】
上記優先的な高Tg可塑化樹脂は当業者に周知であり、商業的に入手可能であり、例えば下記については販売されている:
- ポリリモネン樹脂:DRTにより商品名Dercolyte L120で(Mn=625g/モル;Mw=1010g/モル;PDI=1.6;Tg=72℃)又はArizonaにより商品名Sylvagum TR7125Cで(Mn=630g/モル;Mw=950g/モル;PDI=1.5;Tg=70℃);
- C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、特にC5留分/スチレン又はC5留分/C9留分コポリマー樹脂:Neville Chemical Companyにより商品名Super Nevtac 78、Super Nevtac 85及びSuper Nevtac 99で、Goodyear Chemicalsより商品名Wingtack Extraで、Kolonにより商品名Hikorez T1095及びHikorez T1100で又はExxonより商品名Escorez 2101及びEscorez 1273で;
- リモネン/スチレンコポリマー樹脂:DRTにより商品名Dercolyte TS 105でDRTから又はArizona Chemical Companyにより商品名ZT115LT及びZT5100で。
【0041】
本発明によれば、20℃超のガラス転移温度を有する可塑化樹脂は、シクロペンタジエン(CPDと略記)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPDと略記)ホモポリマー若しくはコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー若しくはコポリマー樹脂、C5留分ホモポリマー若しくはコポリマー樹脂、C9留分ホモポリマー若しくはコポリマー樹脂、α-メチルスチレンホモポリマー若しくはコポリマー樹脂及びその混合物を含むか又はそれらから成る群より選択可能である。好ましくは、可塑化樹脂は、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、(D)CPD/C5留分コポリマー樹脂、(D)CPD/C9留分コポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂及びその混合物を含むか又はそれらから成る群より選択可能である。
【0042】
本明細書では用語「テルペン」は、既知のように、α-ピネン、β-ピネン及びリモネンモノマーを総称し;既知のように、3つの可能な異性体の形態、すなわちL-リモネン(左旋性エナンチオマー)、D-リモネン(右旋性エナンチオマー)又は左旋性エナンチオマーと右旋性エナンチオマーのラセミ体であるジペンテンで存在する化合物リモネンモノマーを利用するのが好ましい。ビニル芳香族モノマーとして適しているのは、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ-(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン又はC9留分から(又はさらに一般的にはC8~C10留分から)生じる任意のビニル芳香族モノマーである。
さらに特に、(D)CPDホモポリマー樹脂、(D)CPD/スチレンコポリマー樹脂、ポリリモネン樹脂、リモネン/スチレンコポリマー樹脂、リモネン/D(CPD)コポリマー樹脂、C5留分/スチレンコポリマー樹脂、C5留分/C9留分コポリマー樹脂及びこれらの樹脂の混合物から成る群より選択される可塑化樹脂に言及することができる。
【0043】
全ての上記可塑化樹脂は当業者に周知であり、商業的に入手可能であり、例えばポリリモネン樹脂についてはDRTにより商品名Dercolyteで、Neville Chemical Companyにより商品名Super Nevtacで、Kolonにより商品名Hikorezで又はC5留分/スチレン樹脂若しくはC5留分/C9留分樹脂についてはExxon Mobilにより商品名Escorezで、或いはStruktolにより商品名40 MS又は40 NS(芳香族及び/又は脂肪族樹脂の混合物)で販売されている。
有利には、本発明のトレッドの組成物中の20℃超のガラス転移温度を有する可塑化樹脂の含量は、50phrと100phrの間、好ましくは55phrと90phrの間である。
同様に有利には、20℃超のガラス転移温度を有する可塑化樹脂の総含量は25~100phrに及ぶ範囲内、好ましくは50phrと100phrの間、好ましくは55phrと90phrの間の範囲内である。
【0044】
II-4.2 23℃で液体である可塑剤
これは本発明の実施に必須というわけではないが、本発明のタイヤトレッドのゴム組成物の可塑化系は、「低Tg」と呼ばれる、すなわち定義により-20℃未満、好ましくは-40℃未満のTgを有する23℃で液体の可塑剤を含むことができる。本発明によれば、組成物は、任意に0~60phrの、23℃で液体の可塑剤を含むことができる。
23℃で液体の可塑剤を使用するとき、本発明のトレッドの組成物中のその含量は、10~60phr、好ましくは15~40phrに及ぶ範囲内であり得る。好ましくは、23℃で液体の可塑剤の総含量は、0~60phr、好ましくは10~60phr、好ましくは15~40phrに及ぶ範囲内である。
芳香族性であれ非芳香族性であれ、ジエンエラストマーに関してその可塑化特性で知られている23℃で液体のいずれの可塑剤(又はエクステンダー油)をも使用することができる。周囲温度(23℃)で、多かれ少なかれ粘性であるこれらの可塑剤又はこれらの油は、特に周囲温度で本来的に固体である可塑化樹脂とは対照的に、液体(すなわち、備忘録として、最終的にそれらの容器の形状になる能力を有する物質)である。
【0045】
液状ジエンポリマー、ポリオレフィン油、ナフタレン油、パラフィン油、DAE油、MES(Medium Extracted Solvates)油、TDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)油、RAE(Residual Aromatic Extracts)油、TRAE(Treated Residual Aromatic Extracts)油、SRAE(Safety Residual Aromatic Extracts)油、鉱物油、植物油、エーテル系可塑剤、エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤及び23℃で液体のこれらの可塑剤の混合物を含むか又はそれらから成る群より選択される23℃で液体の可塑剤が特に適している。
例えば、23℃で液体の可塑剤は、好ましくは非芳香族である石油であり得る。液状可塑剤は、それが、IP 346法に従ってDMSO中の抽出物で決定される、可塑剤の総質量に対して、3質量%未満の多環式芳香族化合物の含量を示すときに非芳香族と記述される。
23℃で液体の可塑剤は、オレフィン若しくはジエンの重合から生じる液状ポリマー、例えばポリブテン、ポリジエン、特にポリブタジエン、ポリイソプレン(名称LIRでも知られる)又はブタジエンとイソプレンのコポリマー、又はブタジエンとスチレン若しくはイソプレンとスチレンのコポリマー、又はこれらの液状ポリマーの混合物でもあり得る。該液状ポリマーの数平均モル質量は、好ましくは500g/モル~50000g/モル、好ましくは1000g/モル~10000g/モルに及ぶ範囲内である。例として、SartomerからのRicon製品に言及することができる。
【0046】
23℃で液体の可塑剤が植物油であるとき、それは、例えば、亜麻仁油、紅花油、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、菜種油、ヒマシ油、桐油、パイン油、ヒマワリ油、パーム油、オリーブ油、ヤシ油、ピーナッツ油、グレープシードオイル及びこれらの油の混合物を含むか又はそれらから成る群より選択される油であり得る。植物油は、優先的にオレイン酸に富む。すなわち、それが由来する脂肪酸(又は数種が存在する場合、混合脂肪酸)が少なくとも60%に等しい質量分率、さらに優先的には少なくとも70%に等しい質量分率のオレイン酸を含む。有利には、植物油として、それが由来する混合脂肪酸が60%以上、好ましくは70%以上の質量分率、また、本発明の特に有利な実施形態によれば、80%以上の質量分率のオレイン酸を含むようなヒマワリ油を利用する。
本発明の別の特定実施形態によれば、液状可塑剤は、カルボン酸トリエステル、リン酸トリエステル、スルホン酸トリエステル及びこれらのトリエステルの混合物から成る群より選択されるトリエステルである。
【0047】
リン酸エステル系可塑剤の例として、12個と30個の間の炭素原子を含むもの、例えばリン酸トリオクチルに言及することができる。特にカルボン酸エステル系可塑剤の例として、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、フタル酸エステル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸エステル、アジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、セバシン酸エステル、グリセロールトリエステル及びこれらの化合物の混合物から成る群より選択される化合物に言及することができる。上記トリエステルの中で、好ましくは主に(50質量%超、さらに好ましくは80質量%について)不飽和C18脂肪酸、すなわちオレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びこれらの酸の混合物から成る群より選択される脂肪酸で構成されるグリセロールトリエステルに特に言及することができる。グリセロールトリエステルが好ましい。より優先的には、合成起源のものであれ天然起源のもの(この場合、例えば、ヒマワリ油又はナタネ植物油の)であれ、使用脂肪酸は、50質量%超について、さらに優先的には、80質量%について、オレイン酸で構成される。高含量のオレイン酸を有する該トリエステル(トリオレイン酸エステル)は周知であり;それらは、タイヤトレッド中の可塑剤として、例えば、出願WO 02/088238に記載されている。
【0048】
23℃で液体の可塑剤がエーテル可塑剤であるとき、それは、例えば、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールであり得る。
好ましくは、23℃で液体の可塑剤は、MES油、TDAE油、ナフテン油、植物油及び23℃で液体のこれらの可塑剤の混合物を含むか又はそれらから成る群より選択される。さらに好ましくは、23℃で液体の可塑剤は、植物油、好ましくはヒマワリ油である。
同様に有利には、本発明のタイヤトレッドの組成物は液状ポリマーを含まない。
有利には、本発明のタイヤトレッドの組成物は、10~60phr、好ましくは15~40phrの植物油、好ましくはヒマワリ油を含む。
【0049】
II-3.3 20℃で粘性の可塑化樹脂
これは本発明の実施に必須ではないが、本発明のタイヤトレッドのゴム組成物の可塑化系は、「低Tg」と呼ばれる、すなわち定義により-40℃~-20℃に及ぶ範囲内のTgを有する20℃で粘性の可塑化樹脂を含むことができる。本発明によれば、組成物は、任意に、23℃で液体の可塑剤の全て若しくは一部に加えて又は代えて、0~140phrの、20℃で粘性の可塑化樹脂を含むことができる。
好ましくは、20℃で粘性の可塑化樹脂は、下記特性の少なくとも1つ、好ましくは2又は3つ、好ましくは全てを示す:
- -40℃と0℃の間、より優先的には-30℃と0℃の間、さらに優先的には-20℃と0℃の間のTg;
- 800g/モル未満、好ましくは600g/モル未満、より優先的には400g/モル未満の数平均分子量(Mn);
- 0℃~50℃、優先的には0℃~40℃、より優先的には10℃~40℃、好ましくは10℃~30℃に及ぶ範囲内の軟化点;
- 3未満、より優先的には2未満の多分散指数(PDI)(備忘録として:PDI=Mw/Mn、Mwは重量平均分子量である)。
【0050】
20℃で粘性の上記優先的可塑化樹脂は当業者に周知かつ商業的に入手可能であり、例えば、下記については販売されている:
- 脂肪族樹脂:Cray Valleyにより商品名Wingtack 10で(Mn=480g/モル;Mw=595g/モル;PDI=1.2;SP=10℃;Tg=-28℃);
- クマロン/インデン樹脂:Rutgers Chemicalsにより商品名Novares C30で(Mn=295g/モル;Mw=378g/モル;PDI=1.28;SP=25℃;Tg=-19℃);
- C9留分樹脂:Rutgers Chemicalsにより商品名Novares TT30で(Mn=329g/モル;Mw=434g/モル;PDI=1.32;SP=25℃;Tg=-12℃)。
20℃で粘性の可塑化樹脂を使用するとき、本発明のトレッドの組成物中のその含量は、20~120phr、好ましくは40~90phrに及ぶ範囲内であってよい。
非常に有利には、23℃で液体の可塑剤と20℃で粘性の可塑化樹脂の総含量は0~50phr、好ましくは10~45phr、好ましくは15~30phrに及ぶ範囲内である。
【0051】
II-5 他の可能な添加剤
本発明のタイヤトレッドのゴム組成物は、任意に、タイヤ用エラストマー組成物に慣用される通常の添加剤、例えば可塑剤(例えば可塑化油及び/又は可塑化樹脂)、顔料、保護剤、例えば耐オゾンワックス、化学的オゾン亀裂防止剤、酸化防止剤、抗疲労剤、補強樹脂の全て又はいくつかを含んでもよい(例えば出願WO 02/10269に記載のように)。
【0052】
II-6 ゴム組成物の調製
本発明の組成物は、適切なミキサーで、当業者に周知の下記2つの連続的調製段階を利用して製造可能である。
- 単一の熱化学的ステップで行なうことができ、その間に全ての必要成分、特にエラストマーマトリックス、任意的なフィラー及び任意的な他の種々の添加剤が加硫系を除いて適切なミキサー、例えば標準的な(例えば「バンバリー」型の)内部ミキサーに導入される第1の熱化学的作業又は混練段階(「非生産」段階)。任意的なフィラーのエラストマーへの組み入れは、熱化学的に混練しながら1回又は数回に分けて行なってよい。非生産段階は、110℃と200℃の間、好ましくは130℃と185℃の間の最高温度までの高温で、通常は2分と10分の間の時間行なうことができる;
- 第1の非生産段階中に得られた混合物をより低い温度、典型的に120℃未満、例えば40℃と100℃の間の温度まで混合物を冷却した後、外部ミキサー、例えばオープンミル内で行なわれる第2の機械的作業段階(「生産」段階)。次に加硫系が組み込まれ、この組み合わされた混合物が次に数分間、例えば5分と15分の間混合される。
該段階は、例えば、特許出願EP-A-0501227、EP-A-0735088、EP-A-0810258、WO 00/05300又はWO 00/05301に記載されている。
【0053】
このようにして得られた最終組成物は、引き続き、特に実験室特徴づけのため、例えばシート又はプラークの形態でカレンダー加工され、或いはまた、例えば、乗用車のタイヤトレッドとして使用できるゴム半完成(又はプロファイルド(profiled))エレメントの形態で押し出される。これらの製品は、引き続き当業者に既知に技術に従って、タイヤの製造に使用可能である。
本組成物は、未加硫状態(加硫前)又は硬化状態(加硫後)のどちらであってもよく、タイヤに使用できる半完成品であってよい。
本組成物の加硫は、当業者に既知の方法で、例えば、130℃と200℃の間の温度で、加圧下で行なうことができる。
【0054】
II-7 トレッド及びタイヤ
タイヤトレッドは、既知の方法で、乗用車に配備するつもりであろうと他の車両に配備するつもりであろうと、タイヤが転がっているときに地面と接触するよう意図されたトレッド表面を含む。トレッドには、縦方向又は円周方向、横方向又は斜め方向でさえの種々の主溝で区切られた特定のトレッドパターンエレメント又は基本ブロックを含むトレッドパターンが設けられ、基本ブロックはさらに種々の掘り込み又はより薄いストリップを含むことができる。溝は、湿地上を走行中に排水することを意図したチャネルを形成し、これらの溝の壁が、屈曲方向に応じて、トレッドパターンエレメントの前縁及び後縁を画定する。
タイヤは、回転軸の周囲に回転対称を示す形状を有するので、タイヤの形状は通常、タイヤの回転軸を含む子午面に描かれる。所与の子午面について、半径方向、軸方向及び円周方向は、それぞれ、タイヤの回転軸に垂直な方向、タイヤの回転軸に平行な方向及び子午面に垂直な方向を意味する。慣例により、それぞれ表現「半径方向内側」及び「半径方向外側」は、タイヤのそれぞれ「回転軸により近い」及び「回転軸からより遠い」ことを意味する。それぞれ「軸方向内側」及び「軸方向外側」は、それぞれタイヤの「赤道面により近い」及び「赤道面からより遠い」ことを意味すると理解され、タイヤの赤道面は、タイヤのトレッド表面の中間を通過し、タイヤの回転軸に垂直な平面である。
【0055】
本発明によれば、トレッドは1種かつ同一の組成物で構成され得る。それはまた有利には、いくつかの部分(又は層)、例えば半径方向に重なった2つの部分(又は層)を含んでよい。言い換えれば、該部分(又は層)は、少なくとも実質的に、互いにのみならず、接平面(又は縦断面)に平行であり、この平面は、半径方向に直角であると定義される。
従って、本発明の組成物は、本発明のトレッド全体に存在し得る。
好ましくは、トレッドは、少なくとも1つの半径方向内側部分及び1つの半径方向外側部分を含み、本発明の組成物は、有利には、本発明のタイヤトレッドの半径方向外側部分に存在する。この状況では、トレッドの半径方向内側部分は、好ましくは本発明の組成物と異なる組成物から形成される。本トレッドは、互いに異なるが両方とも本発明の2種の組成物を含むこともあり、一方はドレッドの半径方向外側部分に存在し、他方は半径方向内側部分に存在する。
【0056】
好ましくは、本発明のタイヤトレッドは、
- 第1の部分と、第1の部分に対して半径方向外側の第2の部分との半径方向の重なりによって形成されている軸方向幅Lを有し、
- 第1の部分は単層C1によって形成され、
- 層C1は、タイヤの赤道面(XZ)で測定され、トレッドの軸方向幅Lの少なくとも80%にわたって実質的に一定である半径方向厚さE1を有し、かつ本発明の組成物とは異なる組成物で形成され、
- 第2の部分は単層C2によって形成され、
- 層C2は、タイヤの赤道面(XZ)で測定され、トレッドの軸方向幅Lの少なくとも80%にわたって実質的に一定である半径方向厚さE2を有し、かつ本発明のゴム組成物C2で形成されている。
【0057】
トレッドの半径方向外側部分は、定義によれば、タイヤが新しいとき又はトレッドの半径方向外側部分がほとんどすり減っていないときに地面と接触する。他方、トレッドの半径方向内側部分は、トレッドの半径方向外側部分の摩耗後に地面と接触するよう意図されている。従って当業者は、本発明のトレッドの半径方向内側部分の半径方向の最も外側部分が、タイヤトレッドの摩耗表示線より上にあるのが有利であることを容易に理解する。
有利には、タイヤの第2の部分の半径方向厚さE2は4~8mm、好ましくは4.5~7.5mmに及ぶ範囲内である。
さらに、タイヤの第1の部分の半径方向厚さE1は1~5mm、好ましくは1.5~4.5mmに及ぶ範囲内である。
本発明は、特に乗用車、SUV(「スポーツ用多目的車」)及びバンタイプ、特に乗用車及びSUVタイプに装備することを意図したタイヤに関する。
本発明は、未加硫状態(すなわち、硬化前)と硬化状態(すなわち、加硫後)の両方のタイヤに関する。
【実施例
【0058】
III-実施例
III-1 使用した測定及び試験
動力学的特性:
動的特性G*及びtan(δ)Maxは、ASTM規格D5992-96に従って粘度分析計(Metravib VA4000)で測定する。tan(δ)Maxの測定のためにはASTM規格D1349-09に従って標準温度条件(23℃)下又は0℃で、或いはG*の測定のためには-20℃で、10Hzの周波数で単純交互正弦せん断応力(simple alternating sinusoidal shear stress)を施した加硫済み組成物(厚さ2mm及び断面積79mm2を有する円筒状試験片)のサンプルの応答を記録する。歪み振幅掃引を0.1%から50%まで(外方向サイクル)、その後50%から0.1%まで(戻りサイクル)行なう。戻りサイクルについて、観察されたtanδの最大値(tan(δ)max)及び0.1%歪みでの値と50%歪みでの値との間の(Payne効果)複素モジュラスの差(ΔG*)を示す。
【0059】
使用した結果は、0℃及び23℃での損失係数tan(δ)Max、及び-20℃での複素動的せん断モジュラスG*である。
0℃でのtan(δ)Maxについての結果はベース100で表し、コントロールに値100を割り当てる。100より大きい結果は性能の改善を意味し、すなわち検討中の実施例の組成物が、該組成物を含むトレッドの湿地上でのより良いグリップを反映している。
23℃でのtan(δ)Max及び-20℃でのG*についての結果はベース100で表し、コントロールに値100を割り当てる。100未満の結果は、性能の改善を意味し、すなわち検討中の実施例の組成物が、該組成物を含むトレッドの雪で覆われた地面上でのそれぞれより良い転がり抵抗及びより良いグリップを反映している。
【0060】
耐摩耗性
標準化研磨紙上の40メートルの直線的移動後のサンプルの体積減少を決定することにある2010年11月のNF ISO規格4649に従って、摩耗による体積減少を決定することによって得られる耐摩耗性を測定する。
さらに詳細には、摩耗による体積減少は、2010年11月のNF ISO規格4649(方法B)の指示に従って、5N(N=ニュートン)の接触圧力下で40mのコースにわたって回転ドラムの表面に付着されたP60粗さの研磨シートの作用を円筒状試験片に施す摩耗試験機を用いて決定する。サンプルの質量減少を測定し、試験片を構成する材料の密度(ρ)に応じて体積減少を計算する。試験片を構成する材料の密度(ρ)は、材料の各成分の質量分率及びそれらのそれぞれの密度(ρ)に基づいて従来の方法で得られる。
結果をベース100で示す。コントロール組成物に割り当てた任意の値100は、種々の試験組成物の物質体積減少の比較を可能にする。試験した組成物についてベース100で表される値を下記演算に従って計算する:(コントロール組成物の物質体積減少の測定値/試験組成物の物質体積減少の測定値)×100。この方法では、100より大きい結果は、体積減少の低減、ひいては耐摩耗性の改善を意味することになり、耐摩耗性能の改善に相当する。逆に、100未満の結果は、体積減少の増加、ひいては耐摩耗性の低下を意味することになり、耐摩耗性能の低減に相当する。
【0061】
III-2 組成物の調製
下記実施例では、上記ポイントII-6に記載どおりにゴム組成物を作製した。特に、「非生産」段階は、0.4リットルのミキサーで3.5分間、毎分50回転の平均ブレード速度で、160℃という最大降下温度に達するまで行なった。「生産」段階は、オープンミルで23℃にて5分間行なった。
【0062】
III-3 ゴム組成物に関する試験
以下に示す実施例の目標は、本発明の6つの組成物(C1~C6)の、雪で覆われた地面上のグリップ、耐摩耗性、転がり抵抗及び湿地上でのグリップの間の性能の妥協を7つのコントロール組成物(T1~T7)と比較することである。
試験処方は全てその性質及び含量を下表1に示すエラストマーマトリックス、120phrの「HDS」型Zeosil 1165 MP(Rhodiaから)、シリカをエラストマーに結合するための薬剤として9.6phrのTESPT液状シラン(Si69、Degussaから)、4phrのASTM N234グレードのカーボンブラック(Cabotから)、12phrのLubrirob Tod 1880グリセロールトリオレイン酸エステル(85質量%のオレイン酸を有するヒマワリ油)(Novanceから)、2phrの耐オゾンワックス(VARAZON 4959、Sasol Waxから)、3phrの酸化防止剤(N-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-パラフェニレンジアミン、Santoflex 6-PPD、Flexsysから)、3phrのステアリン酸(Pristerene 4931、Uniqemaから)、2phrのPerkacit DPGジフェニルグアニジン(Flexsysから)、1.4phrの硫黄、加硫促進剤として1.6phrのN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Santocure CBS、Flexsysから)、及び1.5phrの工業グレードの酸化亜鉛(Umicore)を含有する。これらの処方の特性をも下表1及び2に示す。
表1に示す試験は、雪で覆われた地面上のグリップ、耐摩耗性及び転がり抵抗という特性へのエラストマーマトリックスの効果、特に-70℃未満のガラス転移温度を有するブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーの効果を実証するという目的を有する。
【0063】
【表1】
【0064】
(1)SBR1:3%のスチレン単位及び13%のブタジエン部の1,2-単位を有し、かつエラストマー鎖の中間にアミノアルコキシシラン官能基を有する(Tg=-88℃)
(2)0.5%の1,2-単位及び97%のcis-1,4-単位を有するポリブタジエン(Tg=-108℃)
(3)SBR2:15.5%のスチレン単位及び24%のブタジエン部の1,2-単位を有し、かつエラストマー鎖の末端にシラノール官能基を有するSBR(Sn星状分岐型)(Tg=-65℃)
(4)SBR3:25%のスチレン及び24%のブタジエン部の1,2-単位を有し、かつエラストマー鎖の中間にアミノアルコキシシラン官能基を有するSBR(Tg=-65℃)
(5)SBR4:26%のスチレン単位及び24%のブタジエン部の1,2-単位を有し、かつエラストマー鎖の末端にシラノール官能基を有するSBR(Sn星状分岐型)(Tg=-48℃)
(6)SBR5:25%のスチレン単位及び58%のブタジエン部の1,2-単位を有し、かつエラストマー鎖の末端にシラノール官能基を有するSBR(Sn星状分岐型)(Tg=-24℃)
(7)SBR6:26.5%のスチレン単位及び24%のブタジエン部の1,2-単位を有し、かつ官能化されていないSBR(3-トリス(ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト星状分岐型)(Tg=-48℃)
(8)ExxonMobil社からのC5/C9樹脂「ECR-373樹脂」(Tg=44℃)
【0065】
これらの結果は、ポリブタジエンとのブレンドとして本発明のブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーを使用すると、転がり抵抗に大き過ぎる損害をもたらすことなく、雪で覆われた地面上のグリップ及び耐摩耗性を改善できることを示す。しかしながら、本発明のブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーを本発明に従わないブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーに置き換えると、体系的に、耐摩耗性、雪で覆われた地面上のブリップ力、及び潜在的に転がり抵抗に関する性能の損失をもたらす。
表2に示す試験は、-70℃未満のガラス転移温度を有するブタジエンとスチレンをベースとするコポリマーの含量、及び可塑化樹脂の含量が、雪で覆われた地面上のグリップ、湿地上のグリップ、耐摩耗性及び転がり抵抗という特性に及ぼす効果を実証するという目的を有する。
【0066】
【表2】
【0067】
これらの結果は、本発明の組成物の全てが、雪で覆われた地面上のグリップ、耐摩耗性、転がり抵抗及び湿地上のグリップに関する性能の妥協を改善できるようにすることを示す。65phr未満の含量で本発明のブタジエンとスチレンをベースとするコポリマー(C4及びC5)を使用すると、転がり抵抗の損害に対して、雪で覆われた地面上のグリップ及び耐摩耗性のさらなる改善をもたらすことが分かる。さらに、50phr未満の含量で20℃超のTgを有する可塑化樹脂(C7)を使用すると、湿地上のグリップの損害に対して、雪で覆われた地面上のグリップ及び耐摩耗性のさらなる改善をもたらす。65phr超の本発明のブタジエンとスチレンをベースとするコポリマー及び50phr超の、20℃より高いTgを有する可塑化樹脂(C1、C2及びC3)を含有する組成物は、雪で覆われた地面上のグリップ、耐摩耗性、転がり抵抗及び湿地上のグリップという特性間の最良の全体的な妥協を示す。