(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】マルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造
(51)【国際特許分類】
F28D 15/04 20060101AFI20240905BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
F28D15/04 H
F28D15/04 J
F28D15/02 102A
F28D15/02 101H
(21)【出願番号】P 2022033027
(22)【出願日】2022-03-03
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】522085574
【氏名又は名称】尼得科超衆科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄建程
(72)【発明者】
【氏名】江文雄
(72)【発明者】
【氏名】陳▲いく▼丞
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第114111403(CN,A)
【文献】特開2005-180871(JP,A)
【文献】特開2007-003164(JP,A)
【文献】特開2021-036175(JP,A)
【文献】特開2020-076522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/04
F28D 15/02
H01L 23/427
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1板部と第2板部とを有する筐体と、前記筐体内に設けられる複合ウィックと、前記筐体内に支持する複数の支持構造とを含むベーパーチャンバー構造であって、
前記筐体は、前記第1板部と前記第2板部とが重ね合わせられてなり、第1領域と、第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に介在して連通する連通領域とを有し、前記連通領域に少なくとも1つの段差部が形成され、
前記複合ウィックは、前記筐体内に設けられ、前記第1板部内に設けられる第1ウィック及び第2ウィックと、前記第2板部内に設けられる第3ウィックと、前記連通領域を通じて前記第1領域及び前記第2領域に延びる束状ウィックとを含み、
前記束状ウィックは、前記支持構造の間隔を通って、前記第1領域から前記第2領域までに延びて前記第1板部と前記第2板部との間に挟まれ、
前記連通領域には、前記第1ウィックと前記第2ウィックとが重畳する重畳領域が形成され、前記重畳領域は、前記段差部の下流に位置している、
マルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造。
【請求項2】
前記第1ウィックは粉末焼結体であり、前記第2ウィックは編み網である、
請求項
1に記載のマルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造。
【請求項3】
前記第3ウィックは編み網である、
請求項
2に記載のマルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造。
【請求項4】
前記束状ウィックは、第1部と、第2部とを有し、
前記第1部は、前記筐体の第1領域から前記連通領域に延びて前記第2領域に位置する前記第2部に連結する、
請求項1に記載のマルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造。
【請求項5】
前記束状ウィックの前記第1部と前記第2部との間に湾曲部が形成され、
前記第2部は、前記湾曲部の湾曲方向に向けて延びている、
請求項
4に記載のマルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造。
【請求項6】
束状ウィックは繊維束である、
請求項1、請求項
4又は請求項
5のいずれか1項に記載のマルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造。
【請求項7】
前記複数の支持構造は、前記第1領域内に分布配置される複数の第1支持柱と、前記連通領域内に分布配置される複数の第2支持柱と、前記第2領域内に分布配置される複数の第3支持柱とを含む、
請求項1に記載のマルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造。
【請求項8】
各前記第1支持柱は、中実部と前記中実部の外周に被覆される焼結部とを含み、
各前記第2支持柱は、銅又はアルミニウムより構成される中実柱であり、
各前記第3支持柱は、粉末焼結で構成されている、
請求項
7に記載のマルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換要素に関し、特に、マルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のベーパーチャンバー(Vapor Chamber)では、主に上下2つの熱伝導性の高い板部材の縁溶接によって真空キャビティが形成され、そのキャビティ内部には、ウィックや作動流体等の高効率熱伝導材料を含んでいる。これにより、ベーパーチャンバーは、熱源に接触すると、熱をその大面積の板面に速やかに伝導拡散して冷却することができ、現在不可欠な放熱部材の一つとなっている。
【0003】
実際の応用において、ベーパーチャンバーは、使用場面に応じて周辺部品に合わせるため、その板部材の幾何形状を変えたり、その板面を互いに同一の水平面にならないように複数の断面にしたりする必要がある。その結果、板面の面積を有効に利用することができる。
【0004】
しかし、ベーパーチャンバーの内部は、作動流体の還流によって熱交換サイクルを維持する必要がある。そのため、ベーパーチャンバーの外形を変更する場合、特に段差型に変更する場合、その外形の変更に合わせて板部体の内部を薄くすることは、作動流体の還流効率に影響を与える可能性が高い。
【0005】
これに鑑み、本発明者は、上記の従来技術の欠陥に対し、鋭意研究を重ねると共に学理の運用を組み合わせ、上記問題点を解決することに努めた結果、本発明者の改良の目標となった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、マルチウィックの組み合わせを用いて、特に作動流体の輸送上の主流として束状ウィックを用いて、ベーパーチャンバー内の作動流体の還流効果を維持する、マルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るマルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造は、第1板部と第2板部とを有する筐体と、前記筐体内に設けられる複合ウィックと、前記筐体内に支持する複数の支持構造とを含む。前記筐体は、前記第1板部と前記第2板部とが重ね合わせられてなり、第1領域と、第2領域と、前記第1領域と前記第2領域とを連通する連通領域とを有し、前記連通領域に少なくとも1つの段差部が設けられ、前記複合ウィックは、前記筐体内に設けられ、前記第1板部内に設けられる第1ウィック及び第2ウィックと、前記第2板部内に設けられる第3ウィックと、前記連通領域を通じて前記第1領域及び前記第2領域に延びる束状ウィックとを含み、前記束状ウィックは、前記支持構造の間隔を通って、前記第1領域から前記第2領域までに延びて前記第1板部と前記第2板部との間に挟まれ、前記連通領域には、前記第1ウィックと前記第2ウィックとが重畳する重畳領域が形成され、前記重畳領域は、前記段差部の下流に位置している。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るマルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造によれば、ベーパーチャンバー内の作動流体の還流効果を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の詳細な説明及び技術内容について、図面を参照しながら以下に説明するが、図面は参照及び説明のためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0011】
図1は、本発明の概略分解斜視図である。本発明に係るマルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造は、筐体1と、筐体1内に設けられる複合ウィック2と、複数の支持構造3とを含む。
【0012】
上記筐体1は、第1板部10と第2板部11とを含み、第1板部10と第2板部11とが重ね合わせられてなり、第1領域100/110と、第2領域101/111と、第1領域と第2領域との間に介在して連通する連通領域102/112とを有している。また、
図4に示すように、上記連通領域102/112には、少なくとも1つの段差部103/113が形成されて、第1領域100/110と第2領域101/111とに段差を生じさせる。即ち、第1領域100/110と第2領域101/111とが異なる水平位置にある(同一の水平位置にない)。上記段差部103/113は、幅方向に連通領域102/112から第2領域101/111に向かうにつれて徐々に広くなっていてもよい(
図1~
図3に示す)。
【0013】
図1に示すように、上記複合ウィック2は、上記筐体1の内壁に設けられ、上記筐体1の第1板部10内に貼り付ける第1ウィック20及び第2ウィック21と、上記筐体1の第2板部11内に貼り付ける第3ウィック23と、上記筐体1の連通領域102/112を通じて第1領域100/110及び第2領域101/111に延びる束状ウィック24とを含む。
図2に示すように、上記第1板部10内のウィックは、第1領域100内に敷設する上記第1ウィック20、及び第2領域101内に敷設する上記第2ウィック21より構成され、第1ウィック20及び第2ウィック21は、それぞれ連通領域102に向けて延びて、上記連通領域102に第1ウィック20と第2ウィック21とが重畳する重畳領域Oが形成されている。上記第1ウィック20は、粉末焼結体であり、上記第2ウィック21は、編み網であり、上記重畳領域Oは、粉末焼結体と編み網とが混合して形成されている。
【0014】
上述したように、
図3に示すように、上記第3ウィック23は、第2板部11内に敷設されている。即ち、第2板部11内の第1領域110、第2領域111及び連通領域112は、全て第3ウィック23より構成されている。また、上記第3ウィック23は、編み網である。
【0015】
図1及び
図3を再び参照すると、上記複数の支持構造3は、上記筐体1の第1板部10と第2板部11との間を支持し、上記筐体1の第1領域100/110内に分布配置される複数の第1支持柱30と、上記筐体1の連通領域102/112内に分布配置される複数の第2支持柱31と、上記筐体1の第2領域101/111内に分布配置される複数の第3支持柱32とを含む。ここで、各第1支持柱30は、中実部300と中実部300の外周に被覆される焼結部301とを含み、各第2支持柱31は、銅又はアルミニウムなどの材質より構成される中実柱であり、各第3支持柱32は、粉末焼結で構成されている。また、長尺状の束状ウィック24は、各支持構造3の間隔を通って筐体1の第1領域100/110から、連通領域102/112を通じて第2領域101/111に延びて、第1板部10と第2板部11との間に挟まれる。この束状ウィック24は、繊維束である。
【0016】
図1及び
図4に示すように、上記束状ウィック24は、第1部240と、第1部240から離れた第2部241とを有している。ここで、第1部240は、直線状を呈してもよく、筐体1の第1領域100/110から連通領域102/112に延びて第2領域101/111に位置する第2部241に連結している。なお、筐体1の形状に応じて第2部241の延伸方向を調整してもよい。例えば、第1部240と第2部241との間に湾曲部242が形成されて、第2部241は、湾曲部242の湾曲方向に向けて延びている。また、筐体1の連通領域102/112には、上記段差部103/113を有しているため、束状ウィック24にも、上記段差部103/113を通過する傾斜部243を有している。
図5に示すように、連通領域102/112上の重畳領域Oは、段差部103/113又は傾斜部243の下流に位置している。
【0017】
また、上記筐体の第2領域101/111は、延伸領域104/114をさらに連通してもよい。上記延伸領域104/114は、ベーパーチャンバーが実際の形状に応じて決められてもよく、上記束状ウィック24の第2部241は、上記延伸領域104/114に向けて延びてもよい。ここで、上記延伸領域104は、第1板部10において、延びる第2ウィック21によって貼り付けられ、第2板部11において、延びる第3ウィック23によって貼り付けられ、その中の支持構造3は、複数の第3支持柱32である。
【0018】
それで、本発明に係るマルチウィックを備えたベーパーチャンバー構造によれば、上記筐体1の段差部103/113により、筐体1の第1領域100/110及び第2領域101/111をそれぞれ厚さ又は高さが異なる発熱源に貼り付けることができるとともに、上記束状ウィック24により、第1領域100/110と第2領域101/111と間の作動流体の還流効率を維持することができる。また、上記連通領域102/112には、段差部103/113(又は束状ウィック24の傾斜部243)の下流に第1ウィック20と第2ウィック21とが重畳する重畳領域Oが形成されている。これにより、束状ウィック24に応じて作動流体を第1領域100/110に快速に還流させることに有利である。
【0019】
また、本発明に係る複数の支持構造3において、第1領域100/110、連通領域102/112及び第2領域101/111にそれぞれ複数の第1支持柱30、複数の第2支持柱31及び複数の第3支持柱32が配置されている。ここで、第1支持柱30は、中実部300と中実部300の外周に被覆される焼結部301とを含むことにより、良好な支持性及び還流機能の一部を有している。また、第2支持柱31は、段差部103/113に位置し、中実柱で安定に支持機能を提供する。さらに、第3支持柱32は、還流効率を考慮して粉末焼結で形成されている。このようにして、支持構造3は、ベーパーチャンバーの各部位に応じて最適化の支持性や還流の機能を兼ねる。
【0020】
要約すると、本発明は、従来技術の欠点を解決するという期待した使用目的を積極的に果たし得ることができ、新規性及び進歩性を大いに有し、発明の特許申請の要件と完全に一致しているため、本発明を出願する。本願を慎重に審査し、発明者の権利を保護するために特許を付与して頂きたい。
【0021】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、上記変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれている。
【符号の説明】
【0022】
1 筐体
10 第1板部
100 第1領域
101 第2領域
102 連通領域
103 段差部
104 延伸領域
11 第2板部
110 第1領域
111 第2領域
112 連通領域
113 段差部
114 延伸領域
2 複合ウィック
20 第1ウィック
21 第2ウィック
23 第3ウィック
24 束状ウィック
240 第1部
241 第2部
242 湾曲部
243 傾斜部
3 支持構造
30 第1支持柱
300 中実部
301 焼結部
31 第2支持柱
32 第3支持柱
O 重畳領域