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特許7550187共役分子トラップを使用して、アッセイからビオチン干渉を取り除く方法および組成物
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  • 特許-共役分子トラップを使用して、アッセイからビオチン干渉を取り除く方法および組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】共役分子トラップを使用して、アッセイからビオチン干渉を取り除く方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/531 20060101AFI20240905BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G01N33/531 B
G01N33/53 U
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022092722
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2021531080の分割
【原出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2022120042
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】62/735,913
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ティエ・ウェイ
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-309254(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0255004(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0221343(US,A1)
【文献】特表2010-535166(JP,A)
【文献】WINEGARDNER, N.P. et al.,Utilization of Polymer Based Protein Engineering and ATRP to Modulate Substrate Size Specificity of Avidin,FASEB JOURNAL,2018年04月01日,Vol.32/No.S1,p.798.9,https://doi.org/10.1096/fasebj.2018.32.1_supplement.798.9
【文献】LIN, W. et al.,Different in vitro and in vivo behaviors between Poly(carboxybetaine methacrylate) and poly(sulfobetaine methacrylate),COLOIDS AND SURFACES B: BIOINTERFACES,2016年07月06日,Vol.146,p.888-894,https://doi.org/10.1016/j.colsurfb.2016.07.016.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者サンプル中の標的分析物を検出するためのアッセイにおける遊離ハプテンによる干渉を低減する方法であって:
患者サンプル、標的分析物を検出するための少なくとも2つのアッセイ成分、および分子トラップを組み合わせて、アッセイ溶液を形成する工程であり、少なくとも2つのアッセイ成分のうちの少なくとも1つが分析物特異的結合パートナーを含み、該少なくとも2つのアッセイ成分の第1のアッセイ成分がハプテンコンジュゲートを含み、該少なくとも2つのアッセイ成分の第2のアッセイ成分がハプテン特異的結合パートナーを含み、該第2のアッセイ成分のハプテン特異的結合パートナーが該第1のアッセイ成分のハプテンに結合し、該分子トラップが遊離ハプテンに選択的である、工程と;
該分子トラップを用いてアッセイ溶液中の遊離ハプテンを選択的に保持する工程と
を含み、
該分子トラップは、空洞を取り囲むシェルを有する分子ケージ、分子複合体、および修飾されたハプテン特異的結合パートナー(ハプテンsbp)を含む分子構造の1つまたは混合物を含み、該修飾されたハプテンsbpは、デキストランアルデヒド成分、結合した立体障害ポリマー、および該第2のアッセイ成分のハプテン特異的結合パートナーよりも遅い特異的遊離ハプテン結合オフ速度特性のうちの1つまたはそれ以上を含み、該分子複合体が、
ハプテン類似体、該ハプテン類似体よりも大きな立体障害ポリマー、および該ハプテン類似体と該立体障害ポリマーとの間に柔軟なリンカー接続を提供する連結基を含む、コンジュゲートと、
該コンジュゲートと相互接続されたハプテン特異的結合パートナー(ハプテンsbp)と
を含み、該ハプテン類似体が、遊離ハプテンよりも弱い、該コンジュゲートと相互接続されたハプテンsbpに対する特異的結合特性を有し、該柔軟なリンカー接続が該ハプテン類似体と該コンジュゲートと相互接続されたハプテンsbp上のハプテンに対する特異的結合部位との間の自由度を提供し、該立体障害ポリマーがアッセイ溶液中の該第1のアッセイ成分が該コンジュゲートと相互接続されたハプテンsbp上の該特異的結合部位に接近するのを妨げるのに十分大きい、
前記干渉を低減する方法。
【請求項2】
修飾されたハプテンsbpの特異的遊離ハプテン結合オフ速度特性は、修飾されたハプテンsbpの特異的遊離ハプテン結合オン速度特性よりも遅い、請求項1に記載の干渉を低減する方法。
【請求項3】
分子複合体は、柔軟なリンカーおよびハプテン類似体コンジュゲートと相互接続されたハプテンsbpを使用して立体障害ポリマーとコンジュゲートされたハプテン類似体を含み、ハプテン類似体は、ハプテンsbpに対する遊離ハプテンと同一かまたはそれよりも弱い特異的結合特性を有し、立体障害ポリマーはアッセイ溶液中の第1のアッセイ成分がハプテンsbp上の特異的ハプテン結合部位に接近するのを妨げ、アッセイ溶液中の遊離ハプテンは好ましくは、ハプテンsbp特異的結合部位に結合する、請求項1または2に記載の干渉を低減する方法。
【請求項4】
前記分析物特異的結合パートナーが抗体、抗原、受容体、またはリガンドからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記分析物特異的結合パートナーを含まない前記アッセイ成分が標識を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記分析物特異的結合パートナーを含まない前記アッセイ成分が固相を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ハプテンがビオチンであり、前記ハプテン特異的結合パートナーがストレプトアビジンである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のアッセイ成分がビオチニル化分析物特異的結合パートナーを含み、前記第2のアッセイ成分がストレプトアビジンでコーティングされた固相を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のアッセイ成分がビオチニル化抗体を含み、前記第2のアッセイ成分がストレプトアビジンでコーティングされたセンシビーズを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ハプテンがビオチンであり、前記分子複合体のハプテン類似体が4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)および2-イミノビオチンからなる群から選択され、前記分子複合体の立体障害ポリマーがウシ血清アルブミン、デキストランアルデヒド、アミノデキストラン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタアミン、イオン的に帯電した部分、またはスルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドアセテートからなる群から選択され、前記分子複合体のハプテンsbpがストレプトアビジン、アビジン、およびトラプタビジンからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ハプテンがフルオレセインであり、前記ハプテン特異的結合パートナーが抗フルオレセイン抗体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも2つのアッセイ成分により生成されたアッセイ信号を検出することにより前記アッセイ溶液においてアッセイを行う工程をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年9月25日付で出願された、米国仮特許出願第62/735,913号の、米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張する。上記特許出願の全内容が、参照によって、明示的に本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、アッセイのための、および干渉を、特にそのようなアッセイからビオチン干渉を取り除くための、方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
最新のインビトロ臨床診断では、サンプル中の分析物の検出のために様々な方法が利用される。診断方法の1つの形態であるイムノアッセイでは、1つまたはそれ以上の特異的に結合する種が使用される。典型的な例は、2つの特異的に結合する種(抗体または抗原)が目的の分析物に結合するサンドイッチイムノアッセイ、および目的の分析物とこの分析物の類似体が特異的に結合する種への結合について競合する競合イムノアッセイである。競合イムノアッセイでは、抗原は、しばしばハプテンまたは配位子とも呼ばれる。特異的に結合する種の1つは、一般にいわゆる標識またはタグに付着し、これは、原子(例えば、放射性)、分子(例えば、酵素、蛍光、または発光化合物)または粒子(磁性またはラテックス)であり得る。この標識は、利用される標識に対応する様々な検出方法によって目的の分析物の検出を可能にする。競合アッセイでは、特異的に結合する種または分析物の類似体のいずれかが標識を運ぶことができる。他の特異的に結合する種は、共有結合または吸着によって、固体または懸濁可能な基質(「固相」)に会合することがよくある。あるいは、特異的に結合する種は、第2の結合対の第1のメンバー(例えば、ビオチン)に連結され、一方、第2の結合対の第2のメンバー(例えば、ストレプトアビジン)は、固相に付着される。これにより、特異的に結合する種が、第2の結合対相互作用(例えば、ビオチン-ストレプトアビジンなど)を介して固相に結合することが可能である。
【0004】
ビオチンおよびフルオレセインなどのハプテンは、アッセイ試薬中の抗体または他の小さな薬物分子とコンジュゲートするために使用されることが多い。固体支持体上にコーティングされた大きなタンパク質分子へのそれらの緊密な結合(例えば、ビオチンへのストレプトアビジンおよびフルオレセインへの抗FITC抗体)は、固体表面にハプテン-Abまたはハプテン-薬物を固定化する便利な方法を提供する。ビオチンとストレプトアビジンまたはアビジンとの間の結合力は生体分子に対して最も高い定数の1つを示すため、ビオチンは配位子として非常に頻繁に使用され、ストレプトアビジンはその特異的結合パートナーとして使用される。
【0005】
診断アッセイの安定性および再現性にとって、その結合パートナーに対する固相結合種の結合能力が、時間の経過とともに損なわれないことが重要である。これにより、信頼性が低下し、アッセイの感度が低下する可能性がある。そのような障害(不安定性として明らか)につながる可能性のある1つのメカニズムは、固相付着種の一部が周囲の媒体に浸出することである。遊離種は、標的への結合について固相付着種と競合し、通常、拡散が速いため、速度論的に大きな利点を有する。したがって、試薬中の固相付着種と競合する遊離種の量を一定に、好ましくはゼロに非常に近く維持することが有利である。これにより、安定した再現性のある方法で分析物を高感度で検出できるはずである。遊離種を排除する好ましい方法は、解離を除外する結合方法を見出すことである。共有結合は、吸着による会合とは対照的に、その結合強度が大きいため、最適な方法である可能性がある。しかしながら、多くの場合、これは様々な理由で、不可能または非実用的である。
【0006】
ビオチンはサプリメントとしての使用が見出されている。栄養補助食品としてのビオチンは、例えば、健康な髪および爪の成長を促進し、他の病状を治療することを目的としている。したがって、血清中のビオチンの量は非常に多い可能性がある。ビオチンなどの分子は、固体支持体をコーティングし、抗体またはハプテン類似体に結合するために多くの診断アッセイで使用されるので、血液中のこれらの高レベルのビオチンはアッセイ信号を妨げる可能性がある。したがって、ビオチンがサンプル溶液中に遊離型で存在する場合、ビオチンは結合部位を占有し、その結果、テストの誤った結果をもたらす可能性がある。このことは、高用量のビオチンを投与された患者の場合、極めて重大である。サンプルの30ng/mlを超える量のビオチンは、偽った結果をすでにもたらしていると考えられる。ビオチンで治療された患者の場合には、最大180ng/ml、またはさらに最大1500ng/mlの血清値および約70ng/mlの長期に持続する値が生じる場合がある。
【0007】
このような干渉を軽減するための1つの方法は、予め形成された試薬、すなわち、試薬製造中におけるストレプトアビジンでコーティングされた固体支持体を有する予め結合されたビオチン化アッセイ成分の使用に関する。ストレプトアビジンとビオチンとの間の緊密な結合および遅いオフ速度のため、ストレプトアビジンからのすでに結合しているビオチンを、入ってくる患者のサンプル中のビオチンで置き換えることは、主要な方法ではない。
【0008】
第2の方法は、固体支持体上のストレプトアビジン結合部位を増加させることであり、その結果、ビオチン化アッセイ成分に加えてサンプルのビオチン分子に利用可能な余分な結合部位が存在する。第3の方法は、上記の両方の組み合わせることである。しかし、ビオチン-ストレプトアビジンを活性なアッセイ成分として使用することを完全に避けない限り、上記のいずれもビオチン干渉の問題を真に解決するものではない。
【0009】
上記のすべての解決策に関する1つの重大な問題は、アッセイ成分が干渉防止に関与していることであり、それは、容易にアッセイ信号自体の大きさに影響を与える可能性がある。このような場合に使用されるアッセイ成分は、意図した分析物を検知するために最適条件から外される。いくつかの例が、特許文献1に提供されている。
【0010】
別の方法は、特許文献2に開示されている。それは、ビオチン結合コアおよびタンパク質、炭水化物、またはコポリマーの被覆層を有するポリマー粒子を使用して、遊離ビオチンを濾過するが、大きな分子にコンジュゲートしているビオチンを濾過しないことを開示している。
【0011】
このアプローチは、一部のアッセイ形式では有効であり得るが、粒子の導入により、アッセイ信号に干渉する可能性のある余分な吸光度が生成される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】US8252605
【文献】米国特許第5212063号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、検出方法が妨げられないように、アッセイにおいてそのような物質を軽減するための改善された方法を提供することである。したがって、試験の妨害が起こらないようにビオチンを除去する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
特許請求の範囲および/または明細書において「comprising(含む)」という用語と併せて使用される場合の「a」または「an」という用語の使用は、「1つ」を意味するが、「1つまたはそれ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つよりも多い」の意味とも矛盾しない。したがって、「a」、「an」、および「the」という用語は、文脈で明確に示されていない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「化合物(a compound)」への言及は、1つもしくはそれ以上の化合物、2つもしくはそれ以上の化合物、3つもしくはそれ以上の化合物、4つもしくはそれ以上の化合物、または大量の化合物を指すことができる。「複数」という用語は「2つそれ以上」を指す。
【0015】
「少なくとも1つ」という用語の使用は、1ならびに、限定されないが、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含む1を超える任意の数量を含むと理解される。「少なくとも1つ」という用語は、それが付けられている用語に応じて、最大100または1000もしくはそれ以上に拡張することができ;加えて、より大きな上限も満足のいく結果をもたらし得るので、100/1000の数量は、限定するものとはみなされない。さらに、「X、YおよびZの少なくとも1つ」という用語の使用は、X単独、Y単独およびZ単独、ならびにX、YおよびZの任意の組合せを含むと理解される。序数用語(すなわち、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」など)の使用は、2つ以上の項目を区別する目的のためだけであり、例えば、1つの項目の、別の項目と比較した配列もしくは順序もしくは重要性または添加の順序を含意することを意図していない。
【0016】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すことが明示されていない限り、または代替物が相互に排他的でない限り、包括的「および/または」を意味するために用いられている。例えば、条件「AまたはB」とは、以下のいずれか1つを満足する:Aであって(Aは含まれ)Bではない(Bは含まれない)、Aではなく(Aは含まれず)Bである(Bは含まれる)、およびAとBの両方である(AとBの両方が含まれる)。
【0017】
本明細書で使用される場合、「一実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、「一部の実施形態」、「一例(one example)」、「例えば」または「一例(an example)」への任意の言及は、その実施形態に関連して記載される特定の要素、機能、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。例えば、本明細書の各所で「一部の実施形態において」または「一例(one example)」という語句が出てきても、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すのではない。さらに、1つまたはそれ以上の実施形態または例への言及は、すべて特許請求の範囲を限定するものではないとして解釈されるべきである。
【0018】
本出願を通して、「約」という用語は、ある値が、組成物/装置/デバイス、その値を決定するために用いられている方法の固有の誤差変動、または研究対象間に存在する変動を含むことを示すのに使用される。例えば、限定としてではなく、「約」という用語が利用された場合、指示された値は、そのような変動が開示された方法を実行するのに適切であるように、そして、当業者に理解されるように、指定された値から±20%、または±15%、または±12%、または±11%、または±10%、または±9%、または±8%、または±7%、または±6%、または±5%、または±4%、または±3%、または±2%、または±1%変動し得る。
【0019】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」(ならびに「comprise」および「comprises」などの「comprising」の任意の形)、「有する(having)」(ならびに「have」および「has」などの「having」の任意の形)、「含む(including)」(ならびに「includes」および「include」などの「including」の任意の形)、または「含有する(containing)」(ならびに「contains」および「contain」などの「containing」の任意の形)という単語は、包括的またはオープンエンドであり、列挙されていない追加の要素または方法工程を排除するものではない。
【0020】
本明細書で使用される「またはそれらの組合せ」という用語は、この用語に先立って列挙された項目のすべての順列および組合せを指す。例えば、「A、B、Cまたはそれらの組合せ」は:A、B、C、AB、AC、BCまたはABCの少なくとも1つ、および特定の文脈において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABも、含むことを意図している。この例に引き続いて、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの1つまたはそれ以上の項目または用語の繰り返しを含有する組合せも明示的に含まれる。当業者は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、典型的には、いかなる組合せにおいても項目または用語の数に制限がないことを理解している。
【0021】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、それに引き続いて記述される事象もしくは状況が完璧に起きるかまたはそれに引き続いて記述される事象もしくは状況がかなりの範囲または程度起きることを意味する。例えば、特定の事象または状況に関係していた場合、「実質的に」という用語は、それに引き続いて記述される事象または状況が時間の少なくとも80%、または時間の少なくとも85%、または時間の少なくとも90%、または時間の少なくとも95%起きることを意味する。「実質的に隣接した」という用語は、2つの項目が互いに100%隣接していること、または2つの項目が互いに極めて近接しているが互いに100%隣接していないこと、または2つの項目のうちの一方の一部が他方の項目に100%隣接しているわけではないが、他方の項目に極めて近接していることを意味することができる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「と会合する(associated with)」、「に結合する(coupled to)」という語句は、2つの部分が互いに直接会合/結合することおよび2つの部分が互いに間接的に会合/結合することを含む。会合/結合の非限定的な例には、例えば、1つ部分が別の部分に直接結合によりまたはスペーサー基を介してのいずれかで共有結合すること、1つの部分が別の部分に直接またはその部分に結合している特定の結合対メンバーにより非共有結合すること、例えば1つの部分を別の部分に溶解することによりまたは合成により、1つの部分を別の部分に組み込むこと、および1つの部分を別の部分にコーティングすることが含まれる。
【0023】
本明細書において、「類似体」および「誘導体」という用語は、交換可能に用いられ、所与の化合物と同一の基本的な炭素骨格およびその構造における炭素官能性を含むが、それらに対する1つまたはそれ以上の置換を含有することもできる物質を指す。本明細書で使用される「置換」という用語は、化合物上の少なくとも1つの置換基の残基Rでの置き換えを指すと理解される。ある特定の非限定的な実施形態において、Rとしては、H、ヒドロキシ、チオール、フッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物から選択されるハロゲン化物、以下の1つから選択されるC1~C4化合物:直鎖状の、分枝鎖状の、または環状の、場合により置換されているアルキル、および直鎖状の、分枝鎖状の、または環状のアルケニルを挙げることができ、ここで場合による置換基は、1つまたはそれ以上のアルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリ
ールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、場合により置換されているヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキルから選択され、それらのそれぞれは、場合により置換されており、ここで場合による置換基は、1つまたはそれ以上のアルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、場合により置換されているヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキル、フェニル、シアノ、ヒドロキシ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、-NH(アルキル)、-NH(シクロアルキル)、カルボキシおよび-C(O)-アルキルから選択される。
【0024】
本明細書で使用される「サンプル」という用語は、本開示に従って利用することができる任意のタイプの生物学的サンプルを含むと理解される。利用することができる流体の生学的サンプルの例としては、全血またはその任意の部分(すなわち、血漿または血清)、尿、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、それらの組合せなどを挙げられるが、これに限定されない。
【0025】
本明細書において「ビオチン特異的結合パートナー」または「標的分析物特異的結合パートナー」という用語で特に(限定としてではないが)使用される「特異的結合パートナー」または「sbp」という用語は、それぞれビオチンまたは標的分析物と特異的に会合することが可能な任意の分子を指すと理解される。例えば、限定としてではないが、結合パートナーは、抗体、受容体、配位子、アプタマー、分子インプリントポリマー(すなわち、無機マトリックス)、それらの組合せまたは誘導体、およびそれぞれビオチンまたは標的分析物への特異的結合が可能な他の任意の分子であってよい。
【0026】
「抗体」という用語は、本明細書で最も広い意味で使用され、例えば、完全なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、分析物の結合の所望の生物学的活性を示す抗体フラグメントおよびそれらのコンジュゲート(これらに限定されないが、Fab、Fab‘、F(ab‘)2、Fv、scFv、Fd、ダイアボディ、一本鎖抗体、ならびに完全な抗体の可変領域の少なくとも一部を保持する他の抗体フラグメントおよびそのコンジュゲートなど)、抗体代替タンパク質またはペプチド(すなわち、操作された結合タンパク質/ペプチド)、ならびにそれらの組合せまたは誘導体を指す。抗体には、任意のタイプまたはクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgDおよびIgA)または、サブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)のものがある。
【0027】
本明細書で使用される「ハプテン」という用語は、抗体などの(限定としてではないが)標的分析物特異的結合パートナーによって認識することが可能な小さなタンパク質性または非タンパク質抗原決定基(または「エピトープ」)を指す。本明細書で使用される「ポリハプテン」という用語は、それに付着した複数のエピトープ/抗原決定基を含む合成分子を指すと理解される。
【0028】
「分析物」は、抗体などの(限定としてではないが)分析物特異的結合パートナーによって認識することが可能な高分子である。分析物およびハプテンの両方は、分析物特異的結合パートナー(すなわち、抗体)に結合する抗原またはハプテンの領域である、少なくとも1つの抗原決定基または「エピトープ」を含む。通常、ハプテンのエピトープは分子全体である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】様々なシクロデキストリントラップの概略図である。
図2】アビジンおよびストレプトアビジンのアミノ酸構造の概略図である。
図3】可能な変異についてのマレイミド化学反応の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一実施形態において、アッセイ信号を生成するアッセイ成分の関与なしに、ハプテントラップを試薬製剤に添加して干渉するハプテンを除去する。
【0031】
ハプテントラップは、可溶性か固体のケージであってよい。トラップに細孔がある場合は、遊離ビオチンのみが細孔に入ることができるが、ビオチン抗体などの大きな分子が入ることができない細孔サイズを有する必要がある。あるいは、またはさらに、ハプテンがケージに引き寄せられるように、トラップを帯電させることができる。ケージの内部は、水素結合、疎水性相互作用、または特異的結合パートナーなどの分子インプリントのいずれかによって、干渉するハプテン分子(ビオチンまたはフルオレセイン)を捕捉することができる必要がある。
【0032】
したがって、分子ケージは、干渉するハプテン分子を捕捉するが、ハプテン-Abコンジュゲートは捕捉せずに、ハプテンのアッセイ成分内の結合パートナーへの接近しやすさを効果的に低減させる。
【0033】
分子ケージの例は、シクロデキストリンである。シクロデキストリンは、ハプテンコンジュゲートをよりよく排除するために化学的に修飾することができる。他の例は、アプタマー、アビジン、ストレプトアビジンまたは抗FITC抗体の固体(浮力)支持体または可溶性複合体でコーティングされた内面を有する固体(浮力)支持体または可溶性複合体を合成することを含み得る。この固体支持体または複合体は、標的ハプテンのみがケージに入ることができるが、大きなビオチン化抗体が入ることができないように、分子サイズ排除が十分に小さい必要がある。図1を参照のこと。
【0034】
したがって、本発明は、アッセイにおける遊離ハプテン干渉を低減するための分子トラップであり、分子トラップは:アッセイ溶液において、コンジュゲートされないまたは遊離のハプテンを選択的に捕捉し保持する特性を有する空洞を取り囲むシェルを含む分子ケージを含む。分子ケージのシェルは、シクロデキストリンシェルおよびハプテンの分子インプリント特異的結合パートナーシェルからなる群から選択することができる。特定の実施形態において、シェルの特性は、遊離ハプテンに対して選択的な透過性を有するか、もしくはハプテンのアッセイコンジュゲートなどの比較的大きなアッセイ成分に対する選択的な抑止力であり、またはシェルは両方の特性の組合せであってもよい。
【0035】
一部の実施形態において、分子ケージは、シェル上のコーティングをさらに含み、コーティングは、遊離ハプテンに対して選択的に透過性であり、アッセイ溶液中に存在する比較的大きなアッセイ成分に対して不透過性である。比較的大きなアッセイ成分としては、ハプテンのアッセイコンジュゲート、ハプテンのアッセイ特異的結合パートナー(sbp)、sbpのアッセイコンジュゲート、および約1000ダルトン超の分子量またはより好ましくは約2000ダルトン超の分子量の他のアッセイ分子を挙げることができる。一部の実施形態において、コーティングは、ウシ血清アルブミン、デキストランアルデヒド、アミノデキストラン、およびイオン的に帯電した部分のうちの1つまたはそれ以上を含む。
【0036】
一部の実施形態において、分子ケージの空洞特性は、遊離ハプテンとの選択的相互作用を有する部分と、遊離ハプテンを選択的に受け取り、保持し、かつアッセイ溶液中に存在する約1000ダルトン超の分子量、またはより好ましくは約2000ダルトン超の分子
量のアッセイ分子を優先的に排除するのに役立つ空洞サイズ寸法との、一方または両方を含む。空洞は、受け取った遊離ハプテンを選択的に保持する内部特異的結合部分を含むことができる。空洞特性は、遊離ハプテンを選択的に受け取り、かつアッセイ溶液中に存在する約1000ダルトン超の分子量のアッセイ分子を優先的に排除するためにサイズが制限された空洞開口部と、水素結合、ファンデルワールス力、極性結合、親水性相互作用、疎水性相互作用、イオン引力、ロックアンドキー相互作用の1つまたはそれ以上を含む遊離ハプテンとの内部空洞相互作用との、一方または両方を含むことができる。
【0037】
典型的には、アッセイ溶液中の遊離ハプテンは、アッセイ溶液中に存在するハプテンのアッセイコンジュゲートの分子量の約10分の1であり、分子ケージの空洞特性は、分子量排除限界が遊離ハプテンの分子量より大きい空洞開口部と、遊離ハプテンとの選択的相互作用を有する内部空洞部分とを含む。
【0038】
シェルは、アルファ-シクロデキストリン、ベータ-シクロデキストリンおよびガンマ-シクロデキストリンからなる群から選択されるシクロデキストリンを有するシクロデキストリンシェルであってよい。
【0039】
遊離ハプテンは、遊離ビオチンおよび遊離フルオレセインからなる群から選択することができる。分子インプリント特異的結合パートナーシェルのビオチンへの特異的結合パートナーは、ストレプトアビジン、アビジン、およびトラプタビジンのうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。遊離ハプテンが遊離フルオレセインである場合、分子インプリント特異的結合パートナーシェルのフルオレセインへの特異的結合パートナーは、抗フルオレセイン抗体を含む。
【0040】
別の実施形態において、ハプテントラップが試薬製剤に添加されて、アッセイ信号を生成するアッセイ成分の関与なしに、および真のアッセイ信号に干渉する可能性のある余分な吸光度を生成することなしに、その結合パートナーからの干渉するハプテンを最小化する。
【0041】
トラップには次の特徴がある:
a)粒子または固相剤ではなく、水溶液に可溶な分子構造である。
b)遊離ハプテンにのみ結合するが、ハプテン-Abコンジュゲートなどの大きな分子には結合しないようにする必要がある。
a)およびb)で説明されている機能は、分子ハプテントラップを構成するのに十分である。
あるいは、以下の機能も分子ハプテントラップに十分であるとみなされる:
c)結合のオフ速度が遅いため、結合したハプテンは実際に所定の位置に閉じ込められる。この機能の利点は、捕捉された(または閉じ込められたビオチン)が容易に解離せず、ハプテン結合パートナーを生成するアッセイ信号を求めてコンジュゲートハプテンと競合しないことである。
d)コンジュゲートハプテンがアッセイ信号生成ハプテン結合パートナーに優先的に結合するように、結合のオン速度を遅くする必要がある。
分子ハプテントラップは、機能a)とb)、または機能c)とd)のいずれかを単独で、または組み合わせて十分に機能する。
【0042】
ビオチン-アビジン(またはストレプトアビジン)を例にとると、アビジンまたはストレプトアビジンは、共有結合を介してデキサルまたは他のスペーサー分子で化学的に修飾されて、遊離ビオチンのみを透過するが、ビオチン化抗体のビオチン部分は透過しない表面層を形成することができる。トラプタビジンは、ビオチン結合のオン速度が1/2、オフ速度が1/10の分子であり、ビオチンを含有するサンプルとプレインキュベートする
ことで、優れたビオチントラップになる。LOCI PCTアッセイの1つの提案されたアッセイ例は、次の通りである:
1)ビオチンを含有するサンプルを、可溶性分子ビオチントラップを含むキャプチャーAbコーティングケミビーズ試薬(例えば、デキサルで修飾されたストレプトアビジンもしくはトラプタビジンまたは非修飾トラプタビジン)とインキュベートする。サンプル中の遊離ビオチンはビオチントラップに結合する。
2)ビオチン化抗体を、続いてストレプトアビジンでコーティングされたセンシビーズを添加する。工程1)でネイティブ(非修飾)トラプタビジンを使用する場合は、ビオチン化抗体の添加直後にストレプトアビジンでコーティングしたセンシビーズを添加する必要がある。これは、ビオチン化抗体が、ビオチン結合に関してストレプトアビジンよりもオン速度が遅いトラプタビジンではなく、センシビーズにコーティングされたストレプトアビジンに優先的に結合することを確実にするためである。コンジュゲートビオチンに結合しない、表面を修飾されたトラプタビジンを使用する場合、結合した、サンプルからの遊離ビオチン分子は、トラプタビジン分子に閉じ込められているため、ストレプトアビジンセンシビーズへの結合についてビオチン化抗体と競合しない。
【0043】
医療診断の分野では、多くの異なる形態のアッセイ技術が利用されている。商業的に使用されているアッセイの一例は、発光酸素チャネリングアッセイ(LOCI(登録商標))技術である。例えば、LOCI(登録商標)の高度な化学発光アッセイは、米国特許第5,340,716号(Ullmanら)に記載されており、その全内容は、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。現在利用可能なLOCI(登録商標)技術は感度が高く、いくつかの試薬を使用している。特に、LOCI(登録商標)アッセイでは、これらの試薬のうちの2つ(「センシビーズ」および「ケミビーズ」と呼ばれる)が、センシビーズとケミビーズが互いに極めて近接して信号を達成するように他の特異的結合パートナーアッセイ試薬によって保持される必要がある。ある特定の波長の光に曝露されると、センシビーズは一重項酸素を放出し、2つのビーズが極めて近接している場合、一重項酸素はケミビーズに転送され;これにより化学反応が起こり、その結果、ケミビーズが異なる波長で測定することができる光を発する。
【0044】
本開示に従って利用することができる化学発光化合物および光増感剤の特定の非限定的な例は、米国特許第5,340,716号(Ullmanら)に記載されており、その全内容は、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
【0045】
したがって、本発明は、アッセイにおける遊離ハプテン干渉を低減するための分子トラップを含み、分子トラップは:
遊離ハプテンに選択的に結合するためにアッセイ溶液に可溶な分子構造を含み、分子構造は、遊離ハプテンに対し修飾された特異的結合パートナー(sbp)を含む。修飾されたsbpは、デキストランアルデヒド成分、結合した立体障害ポリマー、および他の遊離ハプテン特異的結合パートナー(sbp)アッセイ試薬よりも遅い特異的遊離ハプテン結合オフ速度特性の1つまたはそれ以上を含む。
【0046】
そのような分子構造は、コーティングをさらに含むことができ、コーティングは、遊離ハプテンのための選択的透過性材料の1つまたはそれ以上、アッセイ溶液中の遊離ハプテンを引き付け他のアッセイ分子をはね返す一方または両方に対するイオン電荷、およびアッセイ溶液中の遊離ハプテンの選択的保持と他のアッセイ分子の立体反発の一方または両方を促進する極性を含む。
【0047】
コーティングは、ウシ血清アルブミンなどのタンパク質またはペプチド、デキストランアルデヒドまたはアミノデキストランなどのポリマー、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタアミンなどの化合物、イオン的に帯電した部分、疎水性部分(スルホ-N-ヒド
ロキシスクシンイミドアセテート)などを含むことができる。修飾されたsbpの特異的遊離ハプテン結合オフ速度特性は、修飾されたsbpの特異的遊離ハプテン結合オン速度特性よりも遅い。
【0048】
一部の実施形態において、遊離ハプテンは遊離ビオチンであり、修飾されたsbpは、アッセイ溶液中の他の遊離ハプテンsbpよりも遅い特異的遊離ハプテン結合オフ速度を有するトラプタビジンであり、アッセイ溶液中の他の遊離ハプテンsbpは、ストレプトアビジンおよびアビジンから選択される。
【0049】
修飾されたsbpは、デキストランアルデヒド成分と、アッセイ溶液中のアッセイ成分およびアッセイコンジュゲートとの結合を選択的に妨害し、遊離ハプテンよりも比較的大きい立体障害ポリマーとの、一方または両方を含み得る。
【0050】
一部の実施形態において、アッセイ溶液中の遊離ハプテンは、遊離ビオチンおよび遊離フルオレセインからなる群から選択され、ここで、遊離ビオチンに対する修飾されたsbpは、修飾されたストレプトアビジン、修飾されたアビジン、およびトラプタビジンのうちの1つであり、ここで、遊離フルオレセインに対する修飾されたsbpは、修飾された抗フルオレセインである。
【0051】
修飾されたsbpは、遊離ハプテンの特異的結合部位に隣接する修飾されたsbpのアミノ酸にコンジュゲートした立体障害ポリマーを含む遺伝子操作されたsbpであってよく、立体障害ポリマーは、遊離ハプテンに対応するハプテン-アッセイコンジュゲートの特異的結合を妨げる。
【0052】
立体障害ポリマーは、アミノデキストランおよびウシ血清アルブミンからなる群から選択される。
【0053】
ハプテン-アッセイコンジュゲートは、ハプテン-抗体コンジュゲート、ハプテン-抗原コンジュゲート、ハプテン-標識酵素コンジュゲート、ハプテン-試験中分析物コンジュゲート、ハプテン-標識コンジュゲート、およびハプテン-受容体コンジュゲートのうちの1つまたはそれ以上からなる群から選択される。
【0054】
水性反応混合物に可溶な分子レベルでハプテントラップを作成すると、ハプテントラップ粒子よりもはるかに幅広い用途が可能になるはずである。トラプタビジン様分子によって与えられるビオチンロックインメカニズムは、遊離ビオチンがハプテントラップから解離し、結合するセンシビーズを求めてビオチン化抗体と競合する可能性を大幅に低減させる。第3に、トラプタビジンへの結合がより遅いことにより、ネイティブ(非修飾)トラプタビジンが使用される場合、ビオチン化抗体がセンシビーズに優先的に結合することができることである。
【0055】
さらに別の実施形態において、ハプテントラップは、遺伝子操作されたハプテン結合タンパク質(遊離ハプテントラップ)である。遺伝子操作されたハプテントラップが試薬製剤に追加されて、アッセイ信号を生成するアッセイ成分の関与なしに、またアッセイ信号に干渉する可能性のある余分な吸光度を生成することなしに、干渉する遊離ハプテンをその結合パートナーから奪取する。ハプテントラップの製造には以下が含まれる:
a)部位特異的変異誘発は、ビオチン結合部位の近くのアミノ酸残基を変化させ、結合部位の近くの別のタンパク質またはポリマーのコンジュゲーションを可能にして、結合部位に入るためにはより小さな遊離ハプテンではなく大きなビオチン化抗体に立体障害をもたらす。
b)他の遺伝子工学技術はa)と同様の変異を生み出す。
c)遺伝子操作されたストレプトアビジンは依然として遊離ビオチンに高い親和性で結合している。
d)タンパク質(BSAなど)またはポリマーを、改変されたストレプトアビジンにコンジュゲートさせて、遊離ビオチントラップの作成を完了する。
e)部位特異的変異誘発によって遺伝子操作され、1つのアミノ酸残基を現在の配列にない固有のアミノ酸に変更する。例えば、{37-{37、{35-{36、または{33-{34(図2を参照)の間の接続部のアミノ酸残基をメチオニン(MetまたはM)に変更する。変異は結合部位の近くにあるため、SMCC(マレイミド化学反応)および/または他のポリマーを使用してタンパク質をコンジュゲートさせると、ビオチン化抗体試薬に立体障害が生じる(図3を参照)。
【0056】
したがって、本発明は、アッセイにおける遊離ハプテン干渉を低減するための分子トラップを含み、分子トラップは、分子複合体において遊離ハプテン競合的特異的結合を選択的に提供するためのアッセイ溶液に可溶な分子複合体を含む。分子複合体は、ハプテン類似体、ハプテン類似体よりも比較的大きい立体障害ポリマー、およびハプテン類似体と立体障害ポリマーとの間に柔軟なリンカー接続を提供するための連結基を含むコンジュゲートと;さらに、コンジュゲートと相互接続された抗ハプテン特異的結合パートナー(sbp)と、を含む。ハプテン類似体は、遊離ハプテンよりも抗ハプテンsbpへの特異的結合特性が弱く、柔軟なリンカー接続はハプテン類似体とハプテンの抗ハプテンsbp上の特異的結合部位との間の自由度を提供し、立体障害ポリマーはアッセイ溶液中のハプテン-アッセイコンジュゲートが特異的結合部位に接近するのを妨げる。
【0057】
上記の分子トラップにおいて、ハプテンはビオチンであってよく、ハプテン類似体は4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)および2-イミノビオチンの群から選択され、抗ハプテンsbpはストレプトアビジン、アビジンおよびトラプタビジンから選択される。
【0058】
遊離ハプテンと比較してハプテン類似体のより弱い特異的結合特性は、pH依存性特異的結合を含んでもよい。分子トラップの立体障害ポリマーは、ウシ血清アルブミンなどのタンパク質もしくはペプチド、デキストランアルデヒドもしくはアミノデキストランなどのポリマー、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタアミンなどの化合物、イオン的に帯電した部分、またはスルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドアセテートなどの疎水性部分から選択することができる。
【0059】
本発明は、アッセイにおける遊離ハプテンによる干渉を低減する方法であって:
アッセイ成分、ならびに試験中の分析物および過剰の遊離ハプテンを有する患者のサンプルを組み合わせて、アッセイ溶液を形成する工程であり、アッセイ成分は、ハプテンおよび比較的大きな抗ハプテンを含む特異的結合対、ハプテンおよび抗ハプテンのそれぞれのアッセイコンジュゲート、ならびに遊離ハプテンに選択的な分子トラップを含む、工程と;
分子トラップを用いてアッセイ溶液中の遊離ハプテンを選択的に保持する工程と
を含み、
ここで、分子トラップは、空洞を取り囲むシェルを有する分子ケージ、分子複合体、および修飾された抗ハプテン特異的結合パートナー(sbp)を含む分子構造の1つまたは混合物を含み、修飾された抗ハプテンsbpは、デキストランアルデヒド成分、結合した立体障害ポリマー、および他の抗ハプテン特異的結合パートナー(sbp)アッセイ成分よりも遅い特異的遊離ハプテン結合オフ速度特性のうちの1つまたはそれ以上を含む、
方法を含む。
【0060】
このような方法において、修飾された抗ハプテンsbpの特異的遊離ハプテン結合オフ
速度特性は、修飾された抗ハプテンsbpの特異的遊離ハプテン結合オン速度特性よりも遅い。
【0061】
さらに、そのような方法において、分子複合体は、柔軟なリンカーおよびハプテン類似体コンジュゲートと相互接続された抗ハプテンsbpを使用して立体障害ポリマーとコンジュゲートされたハプテン類似体であってよく、ハプテン類似体は、抗ハプテンsbpに対する遊離ハプテンと同一かまたはそれよりも弱い特異的結合特性を有し、立体障害ポリマーはアッセイ溶液中のハプテン-アッセイコンジュゲートが抗ハプテンsbp上の特異的ハプテン結合部位に接近するのを妨げ、アッセイ溶液中の遊離ハプテンは好ましくは、抗ハプテンsbp特異的結合部位に結合する。
【0062】
そのような方法において、ハプテンのアッセイコンジュゲートおよび抗ハプテンのアッセイコンジュゲートは、抗体、抗原、試験中の分析物、標識、標識酵素、受容体、からなるアッセイ成分の群およびこの群の2つ以上の組合せから個別に選択される。
図1
図2
図3