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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】防護材料および防護衣
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/10 20060101AFI20240905BHJP
   B32B 25/14 20060101ALI20240905BHJP
   D06N 7/00 20060101ALI20240905BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B32B25/10
B32B25/14
D06N7/00
A41D13/00 102
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022205721
(22)【出願日】2022-12-22
(65)【公開番号】P2024090072
(43)【公開日】2024-07-04
【審査請求日】2023-11-14
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517413605
【氏名又は名称】ニッタ化工品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 志貴
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知弘
(72)【発明者】
【氏名】上田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 道知
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-508096(JP,A)
【文献】特表2014-519426(JP,A)
【文献】米国特許第04704412(US,A)
【文献】実開昭57-034438(JP,U)
【文献】特開2017-043651(JP,A)
【文献】特開2002-054747(JP,A)
【文献】米国特許第04190685(US,A)
【文献】米国特許第08080486(US,B1)
【文献】特表2002-522661(JP,A)
【文献】特開2007-231428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0115750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 25/10
B32B 25/14
D06N 7/00
A41D 13/00
A41D 31/00
A41H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側と外側とを備える防護材料であって、
内側に位置する第1ゴム層と、
外側に位置する第2ゴム層と、
前記第1ゴム層と前記第2ゴム層との間に積層配置される補強布と、
を備え、
前記第1ゴム層及び前記第2ゴム層の少なくとも一方は、アクリロニトリルブタジエンゴムを用い、
前記アクリロニトリルブタジエンゴムは、アクリロニトリル含有量が、36wt%以上であり、
前記第1ゴム層は、前記アクリロニトリルブタジエンゴムであり、
前記第2ゴム層は、ブチルゴムである、
防護材料。
【請求項2】
内側と外側とを備える防護材料であって、
内側に位置する第1ゴム層と、
外側に位置する第2ゴム層と、
前記第1ゴム層と前記第2ゴム層との間に積層配置される補強布と、
を備え、
前記第1ゴム層及び前記第2ゴム層の少なくとも一方は、アクリロニトリルブタジエンゴムを用い、
前記アクリロニトリルブタジエンゴムは、アクリロニトリル含有量が、36wt%以上であり、
前記第1ゴム層は、ブチルゴムであり、
前記第2ゴム層は、前記アクリロニトリルブタジエンゴムである、
防護材料。
【請求項3】
内側と外側とを備える防護材料であって、
内側に位置する第1ゴム層と、
外側に位置する第2ゴム層と、
前記第1ゴム層と前記第2ゴム層との間に積層配置される補強布と、
を備え、
前記第1ゴム層及び前記第2ゴム層の少なくとも一方は、アクリロニトリルブタジエンゴムを用い、
前記アクリロニトリルブタジエンゴムは、アクリロニトリル含有量が、36wt%以上であり、
前記第2ゴム層の外側には、さらに、凹凸形状付与粒子が樹脂に含有された樹脂層とフッ素系の撥水撥油剤から成るフッ素被膜がこの順で積層されている、
防護材料。
【請求項4】
前記凹凸形状付与粒子の形状は、テトラポット状、針状、多角形状、または球状である請求項に記載の防護材料。
【請求項5】
前記凹凸形状付与粒子は、テトラポット型酸化亜鉛である、
請求項に記載の防護材料。
【請求項6】
前記補強布は、織物、編物、または不織布である、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の防護材料。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の防護材料を用いた防護衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有毒なガスや液体等から人体を防護するための防護材料および防護衣に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有毒なガスや液体等から人体を保護する防護材料に関する技術が、たとえば、特許第5784812号公報(特許文献1)に開示されている。このような防護材料には、材料表面の良好な耐ガス浸透性および耐液防護性が求められ、材料の表面処理に関する技術が、たとえば、特開2003-2903号公報(特許文献2)および特開2010-24279号公報(特許文献3)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5784812号公報
【文献】特開2003-2903号公報
【文献】特開2010-24279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防護材料には、人体をより確実に保護できるように、耐ガス浸透性および耐液防護性のさらなる向上が求められている。
【0005】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、ガス状及び液状有機化学物質に対して浸透抑制能があり、軽量でかつ柔軟性及びはく離強さに優れる防護材料および防護衣を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本開示の防護材料は、内側と外側とを備える防護材料であって、内側に位置する第1ゴム層と、外側に位置する第2ゴム層と、上記第1ゴム層と上記第2ゴム層との間に積層配置される補強布と、を備え、上記第1ゴム層及び上記第2ゴム層の少なくとも一方は、アクリロニトリルブタジンゴムを用い、上記アクリロニトリルブタジンゴムは、アクリロニトリル含有量が、36wt%以上である。
【0007】
[2]:[1]に記載の防護材料であって、上記第1ゴム層は、上記アクリロニトリルブタジンゴムであり、上記第2ゴム層は、ブチルゴムである。
【0008】
[3]:[1]または[2]に記載の防護材料であって、上記第2ゴム層の外側には、さらに、凹凸形状付与粒子が樹脂に含有された樹脂層とフッ素系の撥水撥油剤から成るフッ素被膜がこの順で積層されている。
【0009】
[4]:[3]に記載の防護材料であって、上記凹凸形状付与粒子の形状は、テトラポット状、針状、多角形状、または球状である。
【0010】
[5]:[3]または[4]に記載の防護材料であって、上記凹凸形状付与粒子は、テトラポット型酸化亜鉛である。
【0011】
[6]:[1]から[5]のいずれかに記載の防護材料であって、上記補強布は、織物、編物、または不織布である。
【0012】
[7]本開示の防護衣は、[1]から[6]のいずれかに記載の防護材料を用いている。
【発明の効果】
【0013】
本開示に従えば、ガス状及び液状有機化学物質に対して浸透抑制能があり、軽量でかつ柔軟性及びはく離強さに優れる防護材料および防護衣の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1の防護材料の断面構造図である。
図2】実施の形態2の防護材料の断面構造図である。
図3】実施の形態3の防護材料の断面構造図である。
図4】フッ素系の撥水撥油加工剤の固着方法を示す模式図である。
図5】テトラポッド型酸化亜鉛の形状を示す拡大図である。
図6】テトラポッド型酸化亜鉛の積層構造の電子顕微鏡写真である。
図7】各実施の形態の防護材料の評価結果を示す図である。
図8】ガス浸透性試験に用いる試験容器を示す概略図である。
図9】液浸透性試験法の概略図である。
図10】実施の形態4の防護衣の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示に基づいた各実施の形態の防護材料および防護衣について、以下、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。理解を容易にするために、図に示す膜厚さ、および、層厚さについては、実際の比率とは異ならせて記載している。
【0016】
明細書中、「外側」とは、防護材料の使用時において、有毒なガスや液体等に曝される側を意味し、「内側」とは、防護材料の使用時において、有毒なガスや液体等に曝されない側を意味する。したがって、この防護材料を防護衣に用いた場合には、着用者に触れる側が「内側」となる。
【0017】
[実施の形態1:防護材料1A]
図1を参照して、本実施の形態の防護材料1Aについて説明する。図1は、防護材料1Aの断面構造図である。
【0018】
本実施の形態の防護材料1Aは、内側と外側とを備え、内側に位置する第1ゴム層11と、外側に位置する第2ゴム層12と、第1ゴム層11と第2ゴム層12との間に積層配置される補強布13と、を備える。
【0019】
第1ゴム層11には、アクリロニトリルブタジンゴム(NBR)が用いられ、第2ゴム層12には、ブチルゴムが用いられている。補強布13には、糸の太さが70デシテックスのナイロンの織物が用いられている。糸の太さは、この太さには限定されない。また、材料もナイロンに限定されない。例えば、ポリエステル、綿等も用いることができる。また、織物以外でも、ニット、薄織物、不織布等を用いることもできる。
【0020】
第1ゴム層11の厚さは、約0.08mm~0.2mm程度、第2ゴム層12の厚さは、約0.08mm~0.2mm程度、補強布13に織物基布を用いた場合の厚み、約0.1mmである。なお、補強布13にニット生地を用いた場合には、補強布13の厚みは、約0.2mm~0.3mm程度となる。
【0021】
アクリロニトリルブタジンゴム(NBR)は、合成ゴムの1つであり、アクリロニトリルと1,3-ブタジエンとの共重合体である。アクリロニトリルの含有量により、厳密には定義されていないが、一般的に24wt%以下(低ニトリル)、25~30wt%(中ニトリル)、31~35wt%(中高ニトリル)、36~42wt%(高ニトリル)、および、43wt%以上(極高ニトリル)に分類される。本実施の形態のアクリロニトリルブタジンゴム(NBR)は、高ニトリル以上が好ましく、より好ましくは、極高ニトリルであるとよい。本実施の形態の防護材料1Aでは、極高ニトリルに分類されるアクリロニトリルブタジンゴム(NBR)を用いた。
【0022】
(防護材料1Aの製造方法)
防護材料1Aの製造方法としては、はじめに、第1ゴム層11と補強布13との間および第2ゴム層12と補強布13との間に接着ゴム層(図示省略)を介在させて貼り合わせて缶加硫により加硫接着を行ない、互いに一体化された第1ゴム層11と補強布13と第2ゴム層12との積層構造を得る。
【0023】
以上により、第1ゴム層11、補強布13、および、第2ゴム層12の三層構造を備える防護材料1Aが得られる。
【0024】
[実施の形態2:防護材料1B]
図2を参照して、本実施の形態の防護材料1Bについて説明する。図2は、防護材料1の断面構造図である。
【0025】
本実施の形態の防護材料1Bは、実施の形態1の防護材料1Aと比較して、第1ゴム層11と第2ゴム層12との用いられる材料は同じであるが、配置が逆転している。
【0026】
第1ゴム層11には、ブチルゴムが用いられ、第2ゴム層12には、アクリロニトリルブタジンゴム(NBR)が用いられている。補強布13には、糸の太さが70デシテックスのナイロンの織物が用いられている。糸の太さは、この太さには限定されない。また、材料もナイロンに限定されない。例えば、ポリエステル、綿等も用いることができる。また、織物以外でも、ニット、薄織物、不織布等を用いることもできる。
【0027】
第1ゴム層11の厚さは、約0.08mm~0.2mm程度、第2ゴム層12の厚さは、約0.08mm~0.2mm程度、補強布13に織物基布を用いた場合の厚み、約0.1mmである。なお、補強布13にニット生地を用いた場合には、補強布13の厚みは、約0.2mm~0.3mm程度となる。
【0028】
(防護材料1Bの製造方法)
防護材料1Bの製造方法としては、実施の形態1の防護材料1Aと同様に、第1ゴム層11と補強布13との間および第2ゴム層12と補強布13との間に接着ゴム層(図示省略)を介在させて貼り合わせて缶加硫により加硫接着を行ない、互いに一体化された第1ゴム層11と補強布13と第2ゴム層12との積層構造を得る。
【0029】
以上により、第1ゴム層11、補強布13、および、第2ゴム層12の三層構造を備える防護材料1Bが得られる。
【0030】
[実施の形態3:防護材料1C]
図3を参照して、本実施の形態の防護材料1Cについて説明する。図3は、防護材料1Cの断面構造図である。
【0031】
本実施の形態の防護材料1Cの基本的構成は、実施の形態1と同様に、内側に位置する第1ゴム層11と、外側に位置する第2ゴム層12と、第1ゴム層11と第2ゴム層12との間に積層配置される補強布13と、を備える。さらに、上記第2ゴム層12の外側には、樹脂層14およびフッ素被膜15がこの順で積層されている。樹脂層14には、凹凸形状付与粒子が樹脂に含有され、フッ素被膜15には、フッ素系の撥水撥油剤から成る被膜が用いられている。
【0032】
第1ゴム層11には、アクリロニトリルブタジンゴム(NBR)が用いられ、第2ゴム層12には、ブチルゴムが用いられている。補強布13には、糸の太さが70デシテックスのナイロンの織物が用いられている。糸の太さは、この太さには限定されない。また、材料もナイロンに限定されない。例えば、ポリエステル、綿等も用いることができる。また、織物以外でも、ニット、薄織物、不織布等を用いることもできる。
【0033】
第1ゴム層11の厚さは、約0.08mm~0.2mm程度、第2ゴム層12の厚さは、約0.08mm~0.2mm程度、補強布13に織物基布を用いた場合の厚み、約0.1mmである。なお、補強布13にニット生地を用いた場合には、補強布13の厚みは、約0.2mm~0.3mm程度となる。
【0034】
フッ素被膜15には、フッ素系の撥水撥油剤が用いられている。フッ素系の撥水撥油剤としては、例えば、特許第5784812号公報に開示される撥水撥油剤加工剤を用いるとよい。具体的なフッ素系撥水撥油加工剤の一例としては、下記式(1)で表されるフルオロアルキル基を有するα-クロロアクリレート(A)から誘導される繰り返し単位、およびフルオロアルキル基を有さず、炭素数6以上の炭化水素基を有する非フッ素単量体(B)から誘導される繰り返し単位を含む含フッ素重合体を用いるとよい。
【0035】
CH=C(-Cl)-C(=O)-X-Y-Rf・・・式(1)[式中、Xは-O-又は-NH-であり、Yは直接結合又は二価の有機基であり、Rfは炭素数が1~20のフルオロアルキル基である。]
(防護材料1Cの製造方法)
防護材料1Cの製造方法としては、第1ゴム層11、補強布13、および、第2ゴム層12の三層構造を得るまでの工程は、実施の形態1の防護材料1Aと同じである。
【0036】
図4を参照して、フッ素系撥水撥油加工剤の固着方法について説明する。第2ゴム層12の表面に、見かけ濃度が7%のフッ素系撥水撥油加工剤を、20cc/mを滴下する。その後、へらLを用いて、樹脂層14の表面にフッ素系撥水撥油加工剤を均一に引き延ばす。その後、加熱処理(たとえば、170度、5分)を施し、フッ素被膜15を完成させる。
【0037】
樹脂層14には、第2ゴム層12と同種であるのが好ましい。凹凸形状付与粒子が含まれる。本明細書において、凹凸形状付与粒子とは、ゴム層の表面に凹凸形状を与えることのできる材料のことを示している。凹凸形状付与粒子の形状としては、例えば、テトラポット状、針状、球状、多角形状等が挙げられる。原料としては、アルミナ、チタン酸カリウム、ウォラストナイト、酸化亜鉛、ホウ酸アルミニウム等の無機酸化物;クロム、銅、鉄、ニッケル等の金属;炭化ケイ素、黒鉛、窒化ケイ素等の無機酸化物及び金属以外の無機物を挙げることができる。具体例としては、テトラポット型酸化亜鉛、球状シリカ等である。
【0038】
図5に示すように、テトラポッド型酸化亜鉛の結晶体Rは、護岸用の「テトラポッド(登録商標)」型の形状を有している。具体的には、結晶体Rは、亜鉛金属の蒸気と酸素が反応して正八角形状の各部の交互の4面から六方晶ZnOのC軸方向に成長した針状結晶体である。一つの針状の結晶の長さは、1~50μmであり,好ましくは5~30μm,より好ましくは8~20μmである。図6に示すように、テトラポッド型酸化亜鉛の積層構造においては、複数の結晶体Rが重なりあって積層されることで、樹脂層14は、表円に凹凸が表れる、多孔質状の層構造材料となる。
【0039】
樹脂層14は第2ゴム層12と同種のゴム,樹脂にテトラポッド型酸化亜鉛が分散された構造をもつ。テトラポッド型酸化亜鉛は,全固形分(ゴム,樹脂+テトラポッド型酸化亜鉛)に対し,30%~70%(好ましくは40~60%)配合する。そうすると、樹脂層14は脆くなるが,加熱加硫することで同種の第2ゴム層12と樹脂層14の間で架橋構造が形成され強固に結合し樹脂層14の膜強度が向上する。たとえば、酸化亜鉛からなるテトラポッド状単結晶体粉末(株式会社アムテック製「パナテトラWZ-0501」、平均繊維長(針状部分):約10μm)を用いることができる。
【0040】
その結果、樹脂層14の表面に積層されるフッ素被膜15は、図4に示す固着方法を用いて形成されるが、樹脂層14に対しては、フッ素系撥水撥油加工剤が含浸することで、フッ素被膜15の樹脂層14に対する結合性が良好となる。また、フッ素被膜15の外側には、樹脂層14の表面に現れる凹凸が、フッ素被膜15の表面にも反映し、フッ素被膜15の表面にも微細な凹凸が現れる。この凹凸は、後に説明する防護材料1Cの耐ガス浸透性および耐液防護性の評価結果に対して良好な結果もたらす。
【0041】
[防護材料1A~防護材料1Cの評価結果]
次に、図7から図9を参照して、防護材料1A~防護材料1Cの評価結果について説明する。図7は、防護材料1A~防護材料1Cの評価結果を示す図、図8は、ガス浸透性試験に用いる試験容器を示す概略図、図9は、液浸透性試験法の概略図である。
【0042】
評価対象として、耐ガス浸透性(5hr最大浸透濃度/ppm)をガス浸透性試験を用いて評価し、耐液防護性を液浸透性試験法を用いて評価した。図8を参照して、ガス浸透性試験は、上方セル(150cc)105および下方セル(150cc)100で、実施の形態の試験品108を挟み込む。試験品108の上面には、試験液107を滴下した。試験液107として擬剤を用いた。試験品108を挟み込んだ上方セル(150cc)105および下方セル(150cc)100は、パラフィンシール109により密閉した。その後、サンプリング口106を用いて、ガスの透過性を評価した。
【0043】
図9を参照して、液浸透性試験法は、ガラスプレート150上に濾紙140を置き、更にその上へ、実施の形態の試験品130を置く。さらにその上に液状化学物質120(赤色染料を溶解したフタル酸ジプロピル)を20μL滴下した。その後、その上に底面積1cmの錘を所定荷重110(1kgf/cm)を置き、6時間後の濾紙の着色により液の浸透有無を判定した。
【0044】
比較例1の場合の防護材料として、内側および外側のブチルゴムを用いたゴム層を配置し、内側および外側のゴム層の間に補強布を積層配置した。比較例2の場合の防護材料として、防護材料1Aと同じ構成で、アクリロニトリルブタジンゴム(NBR)として、34wt%(中高ニトリル)を用いた。
【0045】
補強布13には、糸の太さが70デシテックスのナイロンの織物が用いられている。糸の太さは、この太さには限定されない。また、材料もナイロンに限定されない。例えば、ポリエステル、綿等も用いることができる。また、織物以外でも、ニット、薄織物、不織布等を用いることもできる。第1ゴム層11の厚さは、約0.08mm~0.1mm程度、第2ゴム層12の厚さは、約0.08mm~0.1mm程度、補強布13に織物基布を用いた場合の厚み、約0.1mmである。なお、補強布13にニット生地を用いた場合には、補強布13の厚みは、約0.2mm~0.3mm程度となる。
【0046】
比較例1,2の防護材料では、いずれも耐ガス浸透性は240ppmと不合格であった。
【0047】
実施の形態1の防護材料1Aでは、比較例の防護材料に比べ厚みが小さいにも関わらず、耐ガス浸透性は、50ppmと、優良な合格結果が得られた。
【0048】
このように、実施の形態1の防護材料1Aは、各比較例の評価よりも耐ガス浸透性の点で極めて優れていることがわかる。その結果、防護材料1Aの外側に有害なガスや液体等が接したとしても、防護材料1Aの内側への有害なガスや液体等の浸透を抑制する事が可能となる。
【0049】
実施の形態2の防護材料1Bでは、各比較例の防護材料に比べ厚みが小さいにも関わらず、耐ガス浸透性は、20ppmと、優良な合格結果が得られた。
【0050】
このように、実施の形態2の防護材料1Bは、各比較例の評価よりも耐ガス浸透性の点で極めて優れていることがわかる。その結果、防護材料1Bの外側に有害なガスや液体等が接したとしても、防護材料1Bの内側への有害なガスや液体等の浸透を抑制する事が可能となる。
【0051】
実施の形態3の防護材料1Cでは、各比較例の防護材料に比べ厚みが小さいにも関わらず、耐ガス浸透性は、40ppmと、優良な合格結果が得られた。
【0052】
このように、実施の形態3の防護材料1Cは、各比較例の評価よりも耐ガス浸透性の点で極めて優れていることがわかる。その結果、防護材料1Cの外側に有害なガスや液体等が接したとしても、防護材料1Cの内側への有害なガスや液体等の浸透を抑制する事が可能となる。
【0053】
他方、比較例1においては、アクリロニトリルブタジンゴム(NBR)を用いることなく、補強布の表側および裏側にブチルゴムを用いた層を配置した。その結果、耐ガス浸透性は、評価が低く、240ppmであった。比較例2においても、34wt%(中高ニトリル)のアクリロニトリルブタジンゴム(NBR)を用いた。その結果、耐ガス浸透性は、評価が低く、240ppmであった。
【0054】
[実施の形態4:防護衣100]
図10を参照して、本実施の形態における防護衣100の構成について説明する。図10は、防護衣100の構成を示す正面図である。この防護衣100は、上記各実施の形態で説明した防護材料1A、防護材料1Bまたは、防護材料1Cを用いて製造したものである。
【0055】
一例として、防護材料1Cを用いる場合、この防護衣100の具体的な防護材料の製造方法としては、まず、布帛の両面にゴムシートを積層する(ステップ1)。次に、外側のゴム表面に凹凸形状付与粒子を含む凹凸コーティングを実施し乾燥させる(ステップ2)。次に、加熱加硫を行なう(ステップ3)。次に、撥水撥油加工(図2に示す固着方法又は浸漬)を施す(ステップ4)。
【0056】
ここで、ステップ2の概要は、以下の通りである。コーティング方法としては、キスコート(グラビアコート)、ナイフコート等が挙げられる。コーティング配合としては、ゴム:ZnO:溶媒(トルエン、酢酸エチル等)の比が、10:10:90~25:25:50で混合される。
【0057】
乾燥条件は、室温乾燥~170℃程度である。布帛には、織物、編物、不織布等を用いることができる。両面のゴムシートのゴムは、同じ種類でも異なる種類であってもよい。
【0058】
防護材料1A、防護材料1Bまたは、防護材料1Cを用いて製造した防護衣100は、表面(外側)に有害なガスや液体等が接したとしても、有害なガスや液体等の防護衣100の通過を阻止することができる。
【0059】
このように、防護衣100は、耐ガス浸透性および耐液防護性が向上し、防護機能がより強化されているため、着用した作業者を確実に保護できる。よって、防護衣100を着用した作業者は、精神的に安心して作業を行え、例えば、汚染内外領域への迅速な偵察、救命活動を行なうことが可能となる。
【0060】
なお、防護衣100として、上衣、下衣、および、頭巾を有する防護衣を一例にしたが、本開示における防護材料は、有害なガスや液体等に汚染される領域に出入り際に着用される衣服等に広く適用することが可能である。
【0061】
上記では、防護材料を防護衣に適用した例を示したが、本発明の防護材料は、他にも、例えば、防護手袋、防護靴下、防護フード、防護カバー、フィルター、防護天幕、寝袋等、さらに、これらアイテムを収納する収納袋、に適用することができる。また、防護性を有する容器、装置などのパッキン、ガスケットなどのシール材としても用いることができる。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1A,1B,1C 防護材料、11 第1ゴム層、12 第2ゴム層、13 補強布。
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