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特許7550210航路計画装置、航路計画方法、及びプログラム
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  • 特許-航路計画装置、航路計画方法、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】航路計画装置、航路計画方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/00 20060101AFI20240905BHJP
   G01C 21/36 20060101ALI20240905BHJP
   B63B 79/40 20200101ALI20240905BHJP
【FI】
G08G3/00 A
G01C21/36
B63B79/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022500265
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2021000480
(87)【国際公開番号】W WO2021161697
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2020021624
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(72)【発明者】
【氏名】山林 潤
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-218210(JP,A)
【文献】特開2013-217860(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101319903(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109470247(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 3/00
G01C 21/36
B63B 79/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面に海図を表示する表示部と、
前記画面内の位置を指定する操作部と、
過去の航路計画時に参照された図書に係る図書情報を位置と関連付けて記憶する記憶部と、
前記操作部が受付けたユーザの操作に応じて前記海図内にウェイポイントを設定するポイント設定部と、
設定された前記ウェイポイントを基準とする範囲内にある前記図書情報を前記記憶部から取得する図書情報取得部と、
取得された前記図書情報を前記表示部の画面に表示する表示制御部と、
を備える、航路計画装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記図書情報を前記海図内の関連付けられた位置に表示する、
請求項1に記載の航路計画装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記図書情報を参照するためのシンボルを表示するとともに、前記シンボルのうち、前記操作部が受付けたユーザの操作により選択されたシンボルについて前記図書情報を表示する、
請求項1または2に記載の航路計画装置。
【請求項4】
前記図書情報は、書籍名及びページの情報を含む、
請求項1ないし3の何れかに記載の航路計画装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、所定の類似度に応じて並べられた前記図書情報のリストを前記表示部の画面に表示する、
請求項1ないし4の何れかに記載の航路計画装置。
【請求項6】
前記類似度は、前記ウェイポイントからの距離、前記図書情報の登録日時、及び航路を航行した船舶の船情報の少なくとも1つに基づく、
請求項5に記載の航路計画装置。
【請求項7】
新たな図書情報を位置と関連付けて前記記憶部に記憶させる記憶処理部をさらに備える、
請求項1ないし6の何れかに記載の航路計画装置。
【請求項8】
ユーザの操作に応じて海図内にウェイポイントを設定し、
過去の航路計画時に参照された図書に係る図書情報を位置と関連付けて記憶する記憶部から、設定された前記ウェイポイントを基準とする範囲内にある前記図書情報を取得し、
取得された前記図書情報を表示する、
航路計画方法。
【請求項9】
海図内にウェイポイントを設定するポイント設定部、
過去の航路計画時に参照された図書に係る図書情報を位置と関連付けて記憶する記憶部から、設定された前記ウェイポイントを基準とする範囲内にある前記図書情報を取得する図書情報取得部、及び、
取得された前記図書情報を表示する表示制御部、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航路計画装置、航路計画方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザが作成した航行予定のルートを地図上に表示する表示部と、前記ルートの航行日時の入力を受け付ける日時入力部と、前記日時入力部に入力された航行日時に基づいて、航行に影響する情報であって位置及び日時に関連付けられた情報である注意情報を読み出す注意情報読出し部と、前記注意情報読出し部が読み出した前記注意情報が示す位置と、前記ルートの位置と、に基づいて少なくとも当該ルート上又はルートの近傍に位置する前記注意情報を抽出し、抽出した前記注意情報に基づいて前記ルートを検証するルート検証部と、を備える航路計画装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6076611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、航路計画時において、航海士は海図から情報を得るだけでなく、地域毎の法令や海域特有の事情を考慮するために水路誌等の紙書籍も確認しながらウェイポイントを設定するが、適切な書籍やページを探す作業に多くの時間が費やされてしまう。
【0005】
また、過去の航路やウェイポイントを参照するだけでは、どのような根拠でそこに設定されているのかが不明である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、過去の航路計画時に参照された図書情報を確認することが容易な航路計画装置、航路計画方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の航路計画装置は、画面に海図を表示する表示部と、前記画面内の位置を指定する操作部と、過去の航路計画時に参照された図書に係る図書情報を位置と関連付けて記憶する記憶部と、前記操作部が受付けたユーザの操作に応じて前記海図内にウェイポイントを設定するポイント設定部と、設定された前記ウェイポイントを基準とする範囲内にある前記図書情報を前記記憶部から取得する図書情報取得部と、取得された前記図書情報を前記表示部の画面に表示する表示制御部と、を備える。
【0008】
また、本発明の他の態様の航路計画方法は、ユーザの操作に応じて海図内にウェイポイントを設定し、過去の航路計画時に参照された図書に係る図書情報を位置と関連付けて記憶する記憶部から、設定された前記ウェイポイントを基準とする範囲内にある前記図書情報を取得し、取得された前記図書情報を表示する。
【0009】
また、本発明の他の態様のプログラムは、海図内にウェイポイントを設定するポイント設定部、過去の航路計画時に参照された図書に係る図書情報を位置と関連付けて記憶する記憶部から、設定された前記ウェイポイントを基準とする範囲内にある前記図書情報を取得する図書情報取得部、及び、取得された前記図書情報を表示する表示制御部、としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、過去の航路計画時に参照された図書情報を確認することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】船舶ICTシステムの構成例を示す図である。
図2】航路計画装置の構成例を示す図である。
図3】データベースの内容例を示す図である。
図4】航路計画方法の手順例を示す図である。
図5】画面表示例を示す図である。
図6】画面表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、実施形態に係る航路計画装置1を備える船舶ICTシステム100の構成例を示すブロック図である。
【0014】
船舶ICTシステム100は、航路計画装置1の他に、例えばレーダー2、GNSS受信機3、ジャイロコンパス4、及びAIS5等を備えている。これらの機器は、例えばLAN(Local Area Network)等のネットワークNに接続されており、相互にネットワーク通信が可能である。
【0015】
航路計画装置1は、ECDIS(Electronic Chart Display and Information System)である。これに限らず、航路計画装置1は、GNSSプロッタであってもよい。航路計画装置1の具体的な構成例については後述する。
【0016】
レーダー2は、自船の周囲に存在するターゲットを検出し、ターゲットの位置及び速度ベクトルを表すターゲット追跡データ(TTデータ)を生成する。
【0017】
GNSS受信機3は、GNSS(Global Navigation Satellite System)から受信した電波に基づいて自船の位置を検出し、自船の位置を表す位置データを生成する。
【0018】
ジャイロコンパス4は、自船の船首方位を検出し、船首方位を表す方位データを生成する。これに限らず、GPSコンパス又は磁気コンパスが用いられてもよい。
【0019】
AIS(Automatic Identification System)5は、周囲の船舶及び陸上の管制にAISデータを送信するとともに、周囲の船舶及び陸上の管制からAISデータを受信する。これに限らず、VDES(VHF Data Exchange System)が用いられてもよい。
【0020】
図2は、航路計画装置1の構成例を示すブロック図である。航路計画装置1は、制御部10、記憶部17、操作部18、及び表示部19を備えている。
【0021】
制御部10は、CPU、RAM、ROM、及び入出力インターフェース等を含むコンピュータである。記憶部17は、不揮発性メモリ等の補助記憶装置である。制御部10のCPUは、記憶部17からRAMにロードされたプログラムに従って情報処理を実行する。
【0022】
プログラムは、例えば光ディスク又はメモリカード等の情報記憶媒体を介して供給されてもよいし、例えばインターネット又はLAN等の通信ネットワークを介して供給されてもよい。
【0023】
記憶部17には、プログラムの他に、海図データ21及び図書情報データベース(図書情報DB)22等も記憶されている。図書情報DB22は、外部に構築され、インターネット等の通信ネットワークを介してアクセスされてもよい。
【0024】
操作部18は、例えばトラックボール又はタッチセンサ等の、表示部19の画面内の位置を指定するポインティングデバイスである。表示部19は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の表示装置である。
【0025】
制御部10は、表示制御部11、ポイント設定部12、図書情報取得部13、及び記憶処理部14を備えている。これらの機能部は、制御部10のCPUがプログラムに従って情報処理を実行することによって実現される。これらの機能部の動作の詳細は後述する。
【0026】
図3は、図書情報DB22の内容例を示す図である。図書情報DB22は、過去の航路計画時に参照された図書に係る図書情報を位置と関連付けて記憶している。
【0027】
本実施形態では、図書情報は、過去に設定されたウェイポイントと対応している。すなわち、図書情報は、過去にウェイポイントを設定する際に参照された図書情報である。
【0028】
図書情報DB22は、「ID」、「書籍名」、「書籍番号」、「ページ」、「コメント」、「位置」、「登録日時」、及び「船情報」等のフィールドを含んでいる。
【0029】
「ID」は、図書情報を識別するための識別子である。すなわち、「ID」は、過去に設定されたウェイポイントの識別子でもある。
【0030】
「書籍名」、「書籍番号」及び「ページ」は、過去の航路計画時に参照された図書の書籍名、書籍番号及びページを表す。「コメント」は、図書を参照したユーザによって入力された文字列を表す。
【0031】
「位置」は、図書情報の位置、すなわち過去に設定されたウェイポイントの位置を表す。図書情報の位置は、例えば緯度・経度の位置座標で表される。
【0032】
「登録日時」は、図書情報の登録日時を表す。「船情報」は、航路を使用した船舶の情報であり、例えば船舶の大きさを表す区分や航路使用時の喫水等の情報を含んでいる。
【0033】
本実施形態では、図書情報は、「書籍名」、「書籍番号」、「ページ」、及び「コメント」を含むが、これに限らず、例えば過去の航路計画時に参照された図書のページの画像等を含んでもよい。
【0034】
図4は、航路計画装置1において実現される、実施形態に係る航路計画方法の手順例を示すフロー図である。航路計画装置1の制御部10は、同図に示す情報処理をプログラムに従って実行する。図5及び図6は、画面表示例を示す図である。
【0035】
まず、制御部10は、記憶部17に記憶された海図データ21に基づいて、表示部19の画面に海図NCを表示する(S11;表示制御部11としての処理)。
【0036】
次に、制御部10は、操作部18が受付けたユーザの操作に応じて、海図NC内にウェイポイントWPを設定する(S12;ポイント設定部12としての処理)。
【0037】
図5に示すように、表示部19の画面には、操作部18と連動するポインタARが表示され、海図NC内の指定された位置にウェイポイントWPが設定される。また、表示部19の画面には、ウェイポイントWPを辿るルートRTも表示される。
【0038】
図NC内にウェイポイントWPが設定されると(S12:YES)、制御部10は、ウェイポイントWPを基準とする範囲内にある図書情報を図書情報DB22から抽出する(S13;図書情報取得部13としての処理)。
【0039】
具体的には、制御部10は、図書情報DB22に記憶された各図書情報の位置を参照して、各図書情報がウェイポイントWPを基準とする範囲に含まれるか否か判定し、範囲に含まれると判定された図書情報を抽出する。
【0040】
例えば、ウェイポイントWPを中心とする所定半径の円形状の範囲に含まれる図書情報が抽出される。
【0041】
次に、制御部10は、抽出された各図書情報についてウェイポイントWPとの類似度を算出する(S14)。類似度は、ウェイポイントWPからの距離、図書情報の登録日時、
及び船情報(区分や喫水等)の少なくとも1つに基づく。
【0042】
例えば、類似度は、ウェイポイントWPに係る位置x、設定日時t、船情報a等と、図書情報に係る位置x、設定日時t、船情報a等とを用いて、ユークリッド距離の2乗により下記の関数fで表される。
この関数fの値が小さいほど類似度が高くなる。
【0043】
次に、制御部10は、抽出された図書情報を参照するためのシンボル及びリストを、表示部19の画面に表示する(S15;表示制御部としての処理)。
【0044】
図6に示すように、表示部19の画面には、図書情報が存在することを表す過去ウェイポイントシンボルPWが表示される。過去ウェイポイントシンボルPWは、図書情報に関連付けられた海図NC内の位置に配置される。
【0045】
さらに、表示部19の画面には、図書情報のリストLSTも表示される。リストLSTでは、図書情報の項目が上述の類似度が高い順に並べられる。リストLSTに含まれる図書情報の項目も、図書情報を参照するためのシンボルとなる。
【0046】
次に、制御部10は、表示部19の画面に表示された図書情報を参照するためのシンボルのうち、操作部18が受付けたユーザの操作により選択されたシンボルについて図書情報を表示する(S16,S17;表示制御部としての処理)。
【0047】
図6に示すように、過去ウェイポイントシンボルPWにポインタARが合わせられたときに、書籍名、書籍番号、ページ、及びコメント等の図書情報が記述された吹き出しBDが表示される。また、リストLSTに含まれる図書情報の項目にポインタARが合わせられたときに、吹き出しBDが表示されてもよい。
【0048】
以上に説明した実施形態によれば、ウェイポイントが設定されると、その付近で過去に参照された図書情報がユーザに提示されるので、過去に参照された図書情報の確認が容易となる。また、リストでは、図書情報が類似度に応じて並べられているので、ユーザは類似度が上位の図書情報から効率的に確認することが可能となる。
【0049】
なお、制御部10は、ウェイポイントの設定時に新たに参照された図書情報を図書情報DB22に新たに記憶させる処理を行ってもよい(記憶処理部14としての処理)。
【0050】
例えば、制御部10は、ウェイポイントの設定時に表示部19の画面に図書情報の入力欄を表示することでユーザに図書情報の入力を促し、入力欄に入力された図書情報をウェイポイントの位置と関連付けて図書情報DB22に登録する。これに限らず、制御部10は、ユーザにより撮影された書籍の表紙やページ等の画像を取得し、取得した画像から書籍名やページ等を抽出してもよい。
【0051】
図書情報DB22は、複数の船舶のそれぞれで作成されたデータベースが統合されたものであってもよい。これによれば、図書情報が一元的に管理され、様々な船舶で参照された図書情報を確認することが容易となる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0053】
1 海図表示装置、10 制御部、11 表示制御部、12 ポイント設定部、13 図書情報取得部、14 記憶処理部、17 記憶部、18 操作部、19 表示部、2 レーダー、3 GNSS受信機、4 ジャイロコンパス、5 AIS、100 船舶ICTシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6