IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社瑞光の特許一覧

<>
  • 特許-シートの製造方法および加工装置 図1
  • 特許-シートの製造方法および加工装置 図2
  • 特許-シートの製造方法および加工装置 図3
  • 特許-シートの製造方法および加工装置 図4
  • 特許-シートの製造方法および加工装置 図5
  • 特許-シートの製造方法および加工装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】シートの製造方法および加工装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/06 20060101AFI20240905BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
B29C55/06
B29L7:00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022565367
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2021042960
(87)【国際公開番号】W WO2022113994
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2020194741
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】100114502
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 俊則
(72)【発明者】
【氏名】南 飛鳥
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰隆
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-072162(JP,A)
【文献】特開2013-231249(JP,A)
【文献】国際公開第2010/151398(WO,A1)
【文献】特開2007-022066(JP,A)
【文献】特開2011-184833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0040875(US,A1)
【文献】特開2011-004817(JP,A)
【文献】特表平06-503387(JP,A)
【文献】特開2005-178365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00 - 55/30
D06J 1/04
B65H 23/18 - 23/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートを搬送する搬送工程と、
前記基材シートが搬送される搬送経路を挟むように配置された一対の加工ロールを、前記加工ロールそれぞれの外周面に沿って形成された凹凸部が互いに隙間を設けて噛み合うように回転駆動して、前記基材シートが前記加工ロールの間を通るときに前記基材シートを延伸する加工工程と、
を備えるシートの製造方法であって、
前記搬送工程において、前記基材シートを、前記加工ロールの間を通る直前に一方の前記加工ロールの前記外周面に接し、かつ沿うように搬送するとともに、前記一方の加工ロールの前記外周面に達する直前に前記基材シートに作用する搬送方向の張力が、加工前の前記基材シートの搬送方向の破断荷重の10%未満になるように、前記基材シートを搬送する、シートの製造方法。
【請求項2】
前記一方の加工ロールの前記外周面の温度が10℃以上、かつ60℃以下になるように、前記一方の加工ロールを加熱する加熱工程を、さらに備える、請求項1に記載のシートの製造方法。
【請求項3】
前記搬送工程において、前記一方の加工ロールの回転中心線を中心として180°以上、かつ270°以下の範囲において、前記基材シートを前記一方の加工ロールの前記外周面に沿うように搬送する、請求項1又は2に記載のシートの製造方法。
【請求項4】
前記加工ロールの少なくとも一方を移動させて前記加工ロールの間の距離を変更できるように、前記加工ロールを支持し、
前記加工工程において、前記加工ロールの凹凸部の噛み合い量を固定又は所定範囲内に抑制する、請求項1乃至3のいずれか一つに記載のシートの製造方法。
【請求項5】
基材シートが搬送される搬送経路を挟むように配置され、それぞれの外周面に沿って形成された凹凸部が互いに隙間を設けて噛み合うように回転する一対の加工ロールを備えるシート加工装置であって、
前記基材シートが前記加工ロールの間を通る直前に一方の前記加工ロールの前記外周面に接し、かつ沿って搬送されるように構成され、
前記基材シートが前記一方の加工ロールに達するまでの前記搬送経路に沿って配置され、前記基材シートを送り出すように回転駆動される駆動ロールと、
前記基材シートが前記加工ロールの間を通るときに前記基材シートを延伸するように、かつ、前記基材シートが前記一方の加工ロールに達する直前に前記基材シートに作用する搬送方向の張力が、加工前の前記基材シートの前記搬送方向の破断荷重の10%未満になるように、前記駆動ロールと前記加工ロールとのうちいずれか一方又は両方の回転を制御する張力制御装置とを、
さらに備える、シート加工装置。
【請求項6】
前記一方の加工ロールの前記外周面の温度が10℃以上、かつ60℃以下になるように、前記一方の加工ロールを加熱するヒータを、さらに備える、請求項5に記載のシート加工装置。
【請求項7】
前記基材シートが前記一方の加工ロールの前記外周面に沿って、前記一方の加工ロールの回転中心線を中心として180°以上、かつ270°以下の範囲において搬送されるように構成されている、請求項5又は6に記載のシート加工装置。
【請求項8】
前記加工ロール間の距離を変更可能に、前記加工ロールを支持する加工ロール支持機構と、
前記加工ロールの少なくとも一方を移動させる加工ロール移動装置と、
前記加工ロールの凹凸部の噛み合い量を解除可能に固定又は所定範囲内に抑制する離間防止手段と、
を、さらに備える、請求項5乃至7のいずれか一つに記載のシート加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの製造方法および加工装置に関し、詳しくは、伸縮性シートを製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに延伸加工を施して伸縮性を付与する技術が種々提案されている。例えば、図6は、シート加工装置101の略図である。図6に示すように、シート加工装置101は、互いに噛み合う歯120,130が周面部に設けられ一対のロール102,103と、一対のロール102,103の前後に設けられた張力付与手段105,106とを備えている。一対のロール102,103が矢印202,203の方向に回転駆動されているときに、ロール102,103の歯120,130が互いに隙間を設けて噛み合い、この歯120,130が互いに噛み合う部分の隙間に基材シート110が供給され、基材シート110は、その流れ方向に延伸加工が施されて伸縮性が付与される。より効果的に基材シート110に伸縮性を付与するため、張力付与手段105,106は、ロール102,103による加工前後の基材シート110に張力を与する。
【0003】
張力付与手段105は、一対のロール102,103よりも上流側に配置された一組のニップロール151,152と、ニップロール151,152とロール102,103との間の搬送経路上に配置された不図示の張力検出器と、張力検出器の検出出力に基づいてニップロール151,152の周速度を制御する不図示の制御部とを備えている。
【0004】
張力付与手段106は、一対のロール102,103よりも下流側に配置された一組のニップロール161,162と、ニップロール161,162とロール102,103との間の搬送経路上に配置された不図示の張力検出器と、張力検出器の検出出力に基づいてニップロール161,162の周速度を制御する不図示の制御部とを備えている。
【0005】
張力付与手段105のニップロール151,152によって基材シート110に加える加工前張力は、加工前の基材シート110の流れ方向にその破断荷重の10%~90%、好ましくは20%~80%とする。また、張力付与手段106のニップロール161,162によって基材シート110に加える加工後張力は、加工前の基材シート110の流れ方向にその破断荷重の5%~80%、好ましくは10%~70%とする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4757139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のようにシートを加工する場合、加工前後に基材シート110に加える張力の範囲が制限されるため、基材シート110に付与できる伸縮性の大きさには限界があり、この限界を超えるより大きな伸縮性を付与することが困難である。
【0008】
かかる実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、より大きな伸縮性を基材シートに付与することができる、シートの製造方法および加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成したシートの製造方法を提供する。
【0010】
シートの製造方法は、(i)基材シートを搬送する搬送工程と、(ii)前記基材シートが搬送される搬送経路を挟むように配置された一対の加工ロールを、前記加工ロールそれぞれの外周面に沿って形成された凹凸部が互いに隙間を設けて噛み合うように回転駆動して、前記基材シートが前記加工ロールの間を通るときに前記基材シートを延伸する加工工程と、を備える。前記搬送工程において、前記基材シートを、前記加工ロールの間を通る直前に一方の前記加工ロールの前記外周面に接し、かつ沿うように搬送するとともに、前記一方の加工ロールの前記外周面に達する直前に前記基材シートに作用する搬送方向の張力が、加工前の前記基材シートの搬送方向の破断荷重の10%未満になるように、前記基材シートを搬送する。
【0011】
上記方法によれば、基材シートが一方の加工ロールの外周面に沿って搬送されるときに基材シートに作用する搬送方向の張力は、基材シートと一方の加工ロールの外周面との間の摩擦を利用して、加工ロールの間の凹凸部の噛み合い部分から搬送方向上流側に遠ざかるほど次第に小さくなるようにすることができ、基材シートが一方の加工ロールの外周面に達する直前に基材シートに作用する搬送方向の張力を小さくすることができる。また、基材シートと一方の加工ロールの外周面との間の摩擦を利用して、搬送方向と直交する幅方向の基材シートの収縮を抑制することができる。そのため、搬送方向に張力を与えた状態で直ちに噛み合い部分で延伸加工する場合に比べ、より大きな伸縮性を基材シートに付与することができる。
【0012】
一方の加工ロールの外周面に達する直前において、基材シートの搬送方向の張力が、加工前の基材シートの搬送方向の破断荷重の10%未満であると、基材シートの搬送方向の加工前張力が加工前の基材シートの搬送方向の破断荷重の10%以上である場合よりも、基材シートの幅方向の収縮を抑制でき、より一層大きな伸縮性を基材シートに付与することができる。
【0013】
好ましくは、シートの製造方法は、前記一方の加工ロールの前記外周面の温度が10℃以上、かつ60℃以下になるように、好ましくは、30℃以上、かつ60℃以下になるように、前記一方の加工ロールを加熱する加熱工程を、さらに備える。
【0014】
この場合、基材シートの搬送速度が速くても、破断や傷みが生じることなく基材シートを加工できる。
【0015】
好ましくは、前記搬送工程において、前記一方の加工ロールの回転中心線を中心として180°以上、かつ270°以下の範囲において、前記基材シートを前記一方の加工ロールの前記外周面に沿うように搬送する。
【0016】
この場合、基材シートが一方の加工ロールの外周面に沿ってより長く搬送され、一方の加工ロールで基材シートを加熱する場合には、基材シートを十分に加熱でき、より大きな伸縮性を基材シートに付与することができる。
【0017】
好ましくは、前記加工ロールの少なくとも一方を移動させて前記加工ロールの間の距離を変更できるように、前記加工ロールを支持する。前記加工工程において、前記加工ロールの凹凸部の噛み合い量を固定又は所定範囲内に抑制する。
【0018】
この場合、一対の加工ロール間の間隔を広げることができるので、延伸加工を開始する前に基材シートを加工ロールの間に通して準備することが容易になる。延伸加工中に加工ロールの凹凸部の噛み合い量が固定又は一定範囲に抑制されているので、基材シートの延伸量のばらつきを抑制できる。
【0019】
また、本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成したシート加工装置を提供する。
【0020】
シート加工装置は、基材シートが搬送される搬送経路を挟むように配置され、それぞれの外周面に沿って形成された凹凸部が互いに隙間を設けて噛み合うように回転する一対の加工ロールを備える。シート加工装置は、前記基材シートが前記加工ロールの間を通る直前に一方の前記加工ロールの前記外周面に接し、かつ沿って搬送されるように構成され、(a)前記基材シートが前記一方の加工ロールに達するまでの前記搬送経路に沿って配置され、前記基材シートを送り出すように回転駆動される駆動ロールと、(b)前記基材シートが前記加工ロールの間を通るときに前記基材シートを延伸するように、かつ、前記基材シートが前記一方の加工ロールに達する直前に前記基材シートに作用する搬送方向の張力が、加工前の前記基材シートの前記搬送方向の破断荷重の10%未満になるように、前記駆動ロールと前記加工ロールとのうちいずれか一方又は両方の回転を制御する張力制御装置とを、さらに備える。
【0021】
上記構成によれば、基材シートが一方の加工ロールの外周面に沿って搬送されるときに基材シートに作用する搬送方向の張力は、基材シートと一方の加工ロールの外周面との間の摩擦を利用して、加工ロールの間の凹凸部の噛み合い部分から搬送方向上流側に遠ざかるほど次第に小さくなるようにすることができ、基材シートが一方の加工ロールの外周面に達する直前に基材シートに作用する搬送方向の張力を小さくすることができる。また、基材シートと一方の加工ロールの外周面との間の摩擦を利用して、搬送方向と直交する幅方向の基材シートの収縮を抑制することができる。そのため、搬送方向に張力を与えた状態で直ちに噛み合い部分で延伸加工する場合に比べ、より大きな伸縮性を基材シートに付与することができる。
【0022】
一方の加工ロールの外周面に達する直前において、基材シートの搬送方向の張力が加工前の基材シートの搬送方向の破断荷重の10%未満であると、基材シートの搬送方向の加工前張力が加工前の基材シートの搬送方向の破断荷重の10%以上である場合よりも、基材シートの幅方向の収縮を抑制でき、より一層大きな伸縮性を基材シートに付与することができる。
【0023】
好ましくは、シート加工装置は、前記一方の加工ロールの前記外周面の温度が10℃以上、かつ60℃以下になるように、好ましくは、30℃以上、かつ60℃以下になるように、前記一方の加工ロールを加熱するヒータを、さらに備える。
【0024】
この場合、基材シートの搬送速度が速くても、破断や傷みが生じることなく基材シートを加工できる。
【0025】
好ましくは、シート加工装置は、前記基材シートが前記一方の加工ロールの前記外周面に沿って、前記一方の加工ロールの回転中心線を中心として180°以上、かつ270°以下の範囲において搬送されるように構成されている。
【0026】
この場合、基材シートが一方の加工ロールの外周面に沿ってより長く搬送され、一方の加工ロールで基材シートを加熱する場合には、基材シートを十分に加熱でき、より大きな伸縮性を基材シートに付与することができる。
【0027】
好ましくは、シートの加工装置は、(c)前記加工ロール間の距離を変更可能に、前記加工ロールを支持する加工ロール支持機構と、(d)前記加工ロールの少なくとも一方を移動させる加工ロール移動装置と、(e)前記加工ロールの凹凸部の噛み合い量を解除可能に固定又は所定範囲内に抑制する離間防止手段とを、さらに備える。
【0028】
この場合、加工ロール間の間隔を広げることができるので、加工前に基材シートを加工ロールの間に通して準備することが容易になる。離間防止手段によって、延伸加工中の加工ロールの凹凸部の噛み合い量を固定又は一定範囲に抑制することにより、基材シートの延伸量のばらつきを抑制できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、より大きな伸縮性を基材シートに付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1はシート加工装置の略図である。(実施例1)
図2図2はシート加工装置のブロック図である。(実施例1)
図3図3はシート加工装置の要部拡大略図である。(実施例1)
図4図4はシート加工装置の要部略図である。(実施例2)
図5図5はロック機構の構造原理図である。(実施例2)
図6図6はシート製造工程の説明図である。(従来例1)
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
<実施例1> 実施例1のシート加工装置10とシートの製造法について、図1図3を参照しながら説明する。
【0033】
図1は、シート加工装置10の概略構成を示す略図である。図1に示すように、シート加工装置10は、基材シート2が搬送される搬送経路3に沿って、基材シート2の搬送方向上流側から下流側の順に、第1の駆動ロール16と、案内ロール31,32と、一対の加工ロール12,14と、案内ロール33,34と、第2の駆動ロール18と、案内ロール35,36と、圧着ロール20及びニップロール22と、案内ロール37とが配置されている。
【0034】
第1の駆動ロール16は、基材シート2を送り出すように矢印16rで示す方向に回転駆動され、第1の駆動ロール16の外周面16sに接する基材シート2を、第1の駆動ロール16の周速と同じ速度で搬送する。基材シート2は、矢印2xで示す方向に搬送され、案内ロール31,32を経て、一対の加工ロール12,14の間を通る。
【0035】
第1の駆動ロール16の周速は、加工ロール12,14の周速よりも大きくする。例えば、第1の駆動ロール16の周速は、加工ロール12,14の周速の1.5倍にする。第1の駆動ロール16が加工ロール12,14に達するまでの間において、基材シート2に作用する搬送方向の張力は、基材シート2が伸びない程度に小さくすると、基材シート2の幅は一定、例えば350mmのままである。
【0036】
一対の加工ロール12,14は、搬送経路3を挟むように配置されている。一方の加工ロール12は、その外周面12sに沿って、平歯車状ないし直歯状の複数の歯13を有する。歯13は、加工ロール12の回転中心線12xを中心に放射状に、かつ周方向に所定ピッチで配置され、それぞれの歯13は加工ロール12の回転中心線12xと平行に延在する。同様に、他方の加工ロール14は、その外周面14sに沿って、平歯車状ないし直歯状の複数の歯15を有する。歯15は、加工ロール14の回転中心線14xを中心に放射状に、かつ周方向に所定ピッチで配置され、それぞれの歯15は加工ロール14の回転中心線14xと平行に延在する。
【0037】
一対の加工ロール12,14は、歯13,15が互いに隙間を設けて噛み合うように、矢印12r,14rで示す方向に、同期しながら回転駆動される。例えば、加工ロール12,14の不図示の回転軸の軸端に、互いに噛み合う不図示の駆動用歯車が固定され、駆動歯車に第3のモータ12m(図2参照)の回転が伝達される。歯13,15は、互いに隙間を設けて噛み合う凹凸部として機能する。
【0038】
基材シート2は、加工ロール12,14の歯13,15が互いに隙間を設けて噛み合う噛み合い部分12bを通過するときに延伸加工が施され、伸縮性が付与される。このとき、基材シート2は搬送方向に引き伸ばされるので、搬送方向と直交する幅方向には収縮する。例えば、一方の加工ロール12に導入されたときの幅が350mmの場合、加工ロール12,14から排出された直後の幅が330mmになる。
【0039】
加工ロール12,14の外周面12s,14sの温度は、10℃以上、かつ、基材シート2の融点温度以下にすることが好ましく、10℃以上、かつ60℃以下にすることがより好ましく、30℃以上、かつ60℃以下にすることがより一層好ましい。そのため、少なくとも一方の加工ロール12に、好ましくは両方の加工ロール12,14に、ヒータ11h(図2参照)を設ける。例えば、ヒータ11hによって、一方の加工ロール12の外周面12sの温度が10℃以上、かつ60℃以下になるように加熱し、好ましくは、30℃以上、かつ60℃以下になるように加熱する。あるいは、両方の加工ロール12,14の外周面12s,14sの温度が10℃以上、かつ60℃以下になるように加熱し、好ましくは、30℃以上、かつ60℃以下になるように加熱する。加工前の基材シート2を加熱すると、基材シート2の搬送速度が速くても、破断や傷みが生じることなく基材シート2を加工できるので、生産効率が向上する。ヒータは、加工ロール12,14の内部に設けることが好ましいが、外部に設けてもよい。
【0040】
加工前に基材シート2を予備的に加熱する余熱ヒータを、加工ロール12,14よりも上流側に設けてもよい。
【0041】
基材シート2は、加工ロール12,14の間を通る直前に一方の加工ロール12の外周面12sに接し、かつ沿うように搬送される。すなわち、搬送経路3は、噛み合い部分12bの直前に、一方の加工ロール12の外周面12sに沿う巻き掛け部分12aを含む。
【0042】
巻き掛け部分12a及び噛み合い部分12bの範囲、すなわち、一方の加工ロール12の回転中心線12xを中心とする角度θは、180°以上、かつ270°以下にすることが好ましい。この場合、基材シート2が一方の加工ロール12の外周面12sに沿ってより長く搬送され、一方の加工ロール12で基材シート2を加熱する場合には、より大きな伸縮性を基材シート2に付与することができる。
【0043】
基材シート2は、一対の加工ロール12,14の間を通った後、案内ロール33,34を経て、第2の駆動ロール18に達する。
【0044】
第2の駆動ロール18は、矢印18rで示す方向に回転駆動され、第2の駆動ロール18の外周面18sに接する基材シート2を、第2の駆動ロール18の周速と同じ速度で搬送する。
【0045】
第2の駆動ロール18の周速は、延伸された基材シート2が加工ロール12,14の間から安定した状態で引き出されるように、基材シート2の延伸倍率に応じて、加工ロール12,14の周速よりも大きくする。例えば、第2の駆動ロール18の周速は、加工ロール12,14の周速の3.2倍にする。
【0046】
この場合、基材シート2は、加工ロール12,14の歯13,15から離れると、搬送方向と直交する幅方向の収縮が拘束されなくなるので、加工ロール12,14の間から引き出されると、加工ロール12,14と第2の駆動ロール18との間において幅方向に収縮する。例えば、加工ロール12,14から排出直後の幅が330mmのとき、第2の駆動ロール18での幅が290mmになる。
【0047】
基材シート2は、圧着ロール20において、追加シート4と積層され、シート2,4が互いに接合された複合シート6が形成される。複合シート6は、矢印6xで示すように、案内ロール37を経て後工程に搬送される。
【0048】
例えば、基材シート2は、ホットメルト塗布装置40によってホットメルト接着剤が塗布された追加シート4と接着される。接着の代わりに、超音波接合等によって、基材シート2と追加シート4とが互いに接合されてもよい。
【0049】
圧着ロール20は、矢印20rで示す方向に回転駆動され、圧着ロール20の外周面20sに接する基材シート2を、圧着ロール20の周速と同じ速度で搬送する。
【0050】
圧着ロール20の周速は、第2の駆動ロール18の周速と同じでもよいし、第2の駆動ロール18の周速よりも大きくてもよい。
【0051】
後者の場合、基材シート2は、圧着ロール20によって、第2の駆動ロール18から引き出されるため、第2の駆動ロール18と圧着ロール20の間において、幅方向に収縮する。
【0052】
基材シート2に追加シート4を接合せずに、基材シート2のみの1層のシートを製造してもよい。この場合には、圧着ロール20及びニップロール22や、ホットメルト塗布装置40等は不要である。
【0053】
図2は、シート加工装置10のブロック図である。図2に示すように、シート加工装置10は、シート加工装置10全体を制御するシーケンサ等の制御部11に、第1の駆動ロール16を回転駆動する第1のモータ16mと、第2の駆動ロール18を回転駆動する第2のモータ18mと、一対の加工ロール12,14を回転駆動する第3のモータ12mと、一方の加工ロール12の外周面12sに達する直前に基材シート2に作用する搬送方向の第1の張力T1(図1参照)を検出する第1の検出器17と、加工ロール12,14の間から排出された直後に基材シート2に作用する搬送方向の第2の張力T2(図1参照)を検出する第2の検出器19と、ヒータ11hとが接続されている。
【0054】
制御部11は、第1の検出器17からの出力信号に基づいて第1の張力T1を監視し、第1の張力T1が第1の所定値未満になるように、(a)第1のモータ16mの回転数を調整して第1の駆動ロール16の回転を制御し、および/または(b)第3のモータ12mの回転数を調整して一対の加工ロール12,14の回転を制御する。この場合、制御部11と、第1の検出器17と、第1のモータ16mおよび/または第3のモータ12mとは、張力制御装置として機能する。第1の所定値は、加工前の基材シート2の搬送方向の破断荷重の10%未満にすることができる。
【0055】
また、制御部11は、第2の検出器19からの出力信号に基づいて第2の張力T2を監視し、第2の張力T2が第2の所定値を超えるように、(a)第2のモータ18mの回転数を調整して第2の駆動ロール18の回転を制御し、および/または(b)第3のモータ12mの回転数を調整して一対の加工ロール12,14の回転を制御してもよい。第2の所定値は、噛み合い部分12bで延伸された基材シート2が、加工ロール12,14の間から安定した状態で引き出される程度に大きくすればよいので、噛み合い部分12bでの延伸倍率がある程度大きい場合には、例えば、加工前の基材シート2の搬送方向の破断荷重の10%未満にすることができ、5%未満がより好ましい。
【0056】
図3は、シート加工装置10の一対の加工ロール12,14の噛み合い部分12b付近を拡大した要部略図である。図3に示すように、搬送経路3に沿って搬送されている基材シート2は、一方の加工ロール12の歯13に支持されながら矢印2xで示す方向に搬送され、噛み合い部分12bに到達すると、隣り合う歯13の間に支持されている部分が、他方の加工ロール14の歯15によって、一方の加工ロール12の内側に向かって押し下げられる、これにより、噛み合い部分12bにおいて、基材シート2には搬送方向の張力T(図示せず。加工ロール12,14の歯13,15と噛み合う位置によって大きさが異なる。)が生じる。
【0057】
噛み合い部分12bより手前の巻き掛け部分12aにおいて、基材シート2には歯13との間の摩擦力が作用する。そのため、基材シート2の搬送方向の張力は、噛み合い部分12bから離れるほど、すなわち搬送方向上流側ほど、小さくなる。
【0058】
したがって、一方の加工ロール12の外周面12sに達する直前に基材シート2に作用する搬送方向の第1の張力T1(図1参照)は、噛み合い部分12bにおいて基材シート2に作用する搬送方向の張力Tよりも小さくすることができる。そのため、第1の張力T1が、加工前の基材シート2の搬送方向の破断荷重の10%未満である加工条件で、基材シート2に延伸加工を施すことができる。
【0059】
噛み合い部分12bにおいて、基材シート2が、一方の加工ロール12の隣り合う歯13に支持された部分の中間位置を、他方の加工ロール14の歯15によって押し下げられることにより、基材シート2に摩擦力が生じる。この摩擦力によって、噛み合い部分12bを通過した直後の基材シート2の搬送方向の張力T2(図1参照)は、噛み合い部分12bにおいて基材シート2に作用する搬送方向の張力Tよりも小さくなる。
【0060】
また、基材シート2は、巻き掛け部分12aにおいて一方の加工ロール12の外周面12sに沿って搬送されるとき、一方の加工ロール12の外周面12sとの間の摩擦力によって、搬送方向と直交する幅方向の収縮が抑制されるので、基材シート2は、噛み合い部分12bにおいて、基材シート2の搬送方向の張力Tが破断荷重を越えても破断しない。そのため、噛み合い部分12bにおいて基材シート2に作用する張力Tが、加工前の基材シート2の搬送方向の破断荷重の90%を超える加工条件で、基材シート2に破断や傷みが生じたりすることなく、基材シート2に延伸加工を施すことができる。
【0061】
以上のように、基材シート2を一方の加工ロール12に巻き掛けると、加工前後に基材シート2に作用する張力が、従来公知の制限範囲(破断荷重の10%~90%等)から外れても、基材シート2に延伸加工を施すことが可能である。したがって、より大きな伸縮性を基材シート2に付与することができる。
【0062】
<実験例> 実施例1のシート加工装置10を用いて、伸縮性が付与されたシートを製造した実験例について説明する。
【0063】
加工ロール12,14を35℃~55℃に加熱しながら、幅350mmのポリオレフィン系伸縮不織布の基材シート2を、ロール12,14,16,18の周速を組み合わせた種々の条件で加工した。加工中に、第1の駆動ロール16と一方の加工ロール12との間で、基材シート2の搬送方向の張力を計測した。また、加工後の基材シート2の延伸倍率を調べた。
【0064】
その結果、張力が0.3N~7.5Nのとき、基材シート2の延伸倍率は1.8~2.8倍であった。
【0065】
また、加工前の基材シート2から引張試験用の試験片(幅25mm、長さ100mm)を作製し、ロードセル速度300mm/minで引張試験を行ったところ、破断荷重は23.2N(3枚の試験片の平均値)であった。これから換算すると、加工前の幅350mmの基材シート2の搬送方向の破断荷重は、(23.2N/25mm)×350mm=325Nである。
【0066】
したがって、一方の加工ロール12の外周面12sに達する直前に幅350mmの基材シート2に作用する搬送方向の張力(0.3N~7.5N)は、加工前の基材シート2の搬送方向の破断荷重(325N)の0.09%~2.3%となり、10%未満であった。
【0067】
つまり、一方の加工ロール12に達する直前に基材シート2に作用する搬送方向の張力が、従来公知の張力の制限範囲(破断荷重の10%~90%)を外れても、基材シート2に延伸加工を施すことができ、従来公知の張力の制限範囲内の場合に比べ、より大きな伸縮性を基材シート2に付与することができた。
【0068】
次に、実施例1のシートの製造方法を総括する。
【0069】
シートの製造方法は、(i)基材シート2を搬送する搬送工程と、(ii)前記基材シート2が搬送される搬送経路3を挟むように配置された一対の加工ロール12,14を、前記加工ロール12,14それぞれの外周面12s,14sに沿って形成された凹凸部13,15が互いに隙間を設けて噛み合うように回転駆動して、前記基材シート2が前記加工ロール12,14の間を通るときに前記基材シート2を延伸する加工工程と、を備える。前記搬送工程において、前記基材シート2を、前記加工ロール12,14の間を通る直前に一方の前記加工ロール12の前記外周面12sに接し、かつ沿うように搬送するとともに、前記一方の加工ロール12の前記外周面12sに達する直前に前記基材シート2に作用する搬送方向の張力が、加工前の前記基材シート2の搬送方向の破断荷重の10%未満になるように、前記基材シートを搬送する。
【0070】
上記方法によれば、基材シート2が一方の加工ロール12の外周面12sに沿って搬送されるときに基材シート2に作用する搬送方向の張力は、基材シート2と一方の加工ロール12の外周面12sとの間の摩擦を利用して、加工ロール12,14の間の凹凸部13,15の噛み合い部分から搬送方向上流側に遠ざかるほど次第に小さくなるようにすることができ、基材シート2が一方の加工ロール12の外周面12sに達する直前に基材シート2に作用する搬送方向の張力を小さくすることができる。また、基材シート2と一方の加工ロール12の外周面12sとの間の摩擦を利用して、搬送方向と直交する幅方向の基材シート2の収縮を抑制することができる。そのため、搬送方向に張力を与えた状態で直ちに噛み合い部分で延伸加工する場合に比べ、より大きな伸縮性を基材シートに付与することができる。
【0071】
一方の加工ロール12の外周面12sに達する直前において、基材シート2の搬送方向の張力が、加工前の基材シート2の搬送方向の破断荷重の10%未満であると、基材シート2の搬送方向の加工前張力が加工前の基材シート2の搬送方向の破断荷重の10%以上である場合よりも、基材シート2の幅方向の収縮を抑制でき、より一層大きな伸縮性を基材シートに付与することができる。
【0072】
好ましくは、シートの製造方法は、前記一方の加工ロール12の前記外周面12sの温度が10℃以上、かつ60℃以下になるように、好ましくは、30℃以上、かつ60℃以下になるように、前記一方の加工ロール12を加熱する加熱工程を、さらに備える。
【0073】
この場合、基材シート2の搬送速度が速くても、破断や傷みが生じることなく基材シート2を加工できる。
【0074】
好ましくは、前記搬送工程において、前記一方の加工ロール12の回転中心線12xを中心として180°以上、かつ270°以下の範囲において、前記基材シート2を前記一方の加工ロール12の前記外周面12sに沿うように搬送する。
【0075】
この場合、基材シート2が一方の加工ロール12の外周面12sに沿ってより長く搬送され、一方の加工ロール12で基材シート2を加熱する場合には、基材シート2を十分に加熱でき、より大きな伸縮性を基材シート2に付与することができる。
【0076】
<変形例1> 基材シート2の張力を検出する検出器17,19(図2参照)を備えない構成も可能である。例えば、基材シート2の加工前張力や加工後張力を所定値に設定でき、基材シートを所望の延伸倍率で加工できるモータ12m,14m,16mの運転条件が予め分かっている場合、運転中に検出器17,19で基材シート2の張力を検出しなくても、モータ12m,14m,16mの回転数や負荷トルク等を制御しながら、基材シート2の加工前張力や加工後張力が所定値になり、基材シートが所望の延伸倍率で加工されるようにすることができる。
【0077】
<実施例2> 加工ロール12,14間の間隔を広げることができるように構成した実施例2のシート加工装置10aとシートの製造方法について、図4及び図5を参照しながら説明する。実施例2のシート加工装置10aは、実施例1のシート加工装置10と略同じ構成である。以下では、実施例1のシート加工装置10との相違点を中心に説明し、実施例1のシート加工装置10と同じ構成部分には同じ符号を用いる。
【0078】
図4は、シート加工装置10aの要部構成を示す略図である。図4(a)は、加工ロール12,14の回転中心線12x,14xの方向に見た略図である。図4(b)は、図4(a)の線B-Bに沿って見た略図である。図4に示すように、シート加工装置10aは、加工ロール支持機構11p,11qとエアシリンダ50を備える。
【0079】
加工ロール支持機構11p,11qは、加工ロール12,14間の距離を変更可能に、加工ロール12,14を支持する。詳しくは、一方の加工ロール12の軸部12p,12qを回転自在に支持する軸受部13p,13qが、シート加工装置10aの本体フレーム10kに固定されている。他方の加工ロール14の軸部14p,14qを回転自在に支持する軸受部15p,15qは、矢印50a,50bで示す方向に移動自在に、本体フレーム10kに支持されている。
【0080】
エアシリンダ50は、ロッド52が下向きになるように、本体フレーム10kに固定されている。エアシリンダ50のロッド52に、他方の加工ロール14の軸受部15p,15qが結合されている。エアシリンダ50のロッド52が縮むと、他方の加工ロール14が、図4において実線で示した位置から、矢印50bで示す方向に上昇する。エアシリンダ50は、加工ロール12,14の少なくとも一方14を移動させる加工ロール移動装置51である。
【0081】
基材シートを延伸加工するとき、図4に示したようにエアシリンダ50のロッド52が突出して伸びた状態になり、加工ロール12,14それぞれの歯13,15が、前述した図3と同様に互いに隙間を設けて噛み合う。例えば、ロッド52が突出すると、加工ロール14の軸受部15p,15qが本体フレーム10kの不図示の所定箇所に当接して移動が阻止され、加工ロール12,14間の距離が所定値に保持される。これにより、延伸加工中の基材シートの押し込み量を所定値に設定することができる。
【0082】
延伸加工中の基材シートの押し込み量は、加工ロール12,14の歯13,15の噛み合い量で定義することができる。この場合、延伸加工中の基材シートの押し込み量、すなわち、加工ロール12,14の歯13,15の噛み合い量をD、加工ロール12,14の外周面12s,14s(図1参照)の半径をR1,R2、加工ロール12,14の回転中心線12x,14x間の距離をLとすると、次の式1によって、延伸加工中の基材シートの押し込み量Dと、加工ロール12,14の歯13,15の噛み合い量Dとが定義される。
D=R1+R2-L (式1)
【0083】
図4において矢印50bで示す方向に、エアシリンダ50のロッド52が縮むと、他方の加工ロール14は、図4において実線で示した位置から矢印50bで示す方向に上昇し、一方の加工ロール12から離れる。これにより、加工ロール12,14の歯13,15の噛み合いが解除され、加工ロール12,14間に間隔が形成され、加工前に基材シートを加工ロール12,14の間に通す等の準備作業が容易になる。
【0084】
エアシリンダ50に一般的なエアシリンダを用いた場合、ロッド52を突出させる突出力に打ち勝つ反力が作用するとロッド52が後退する。不織布等の基材シートの目付、幅、搬送速度等の違いによっては、基材シートの抵抗力(反力)がロッド52の突出力に打ち勝ち、加工ロール12,14の回転中心線12x,14x間の距離Lが広がって基材シートの押し込み量Dが変わり、基材シートの延伸量にばらつきが生じることがある。
【0085】
このような基材シートの延伸量にばらつきを抑制するため、エアシリンダ50には、図5に示すロック機構60を設ける。
【0086】
図5は、ロック機構60の構造原理図である。図5(a)はロック解除状態を示し、図5(b)はロック状態を示す。図5に示すように、ロック機構60は、リリースピストン62にテーパリング64が固定され、リリースピストン62及びテーパリング64は、ブレーキスプリング66によって矢印60aで示す方向に付勢されている。テーパリング64は、円筒状の外周面と、矢印60aで示す方向に内径が増加する円錐状の内周面とを有する筒状の部材である。テーパリング64の内側には、鋼球70がボールリテーナ72によって回転自在に保持されている。鋼球70とロッド52との間に、ブレーキシューホルダ74とブレーキシュー76が配置されている。
【0087】
図5(a)において矢印60pで示すように、開放ポート78に圧縮空気が供給されると、リリースピストン62及びテーパリング64は、ブレーキスプリング66のスプリング力に抗して矢印60bで示す方向に移動し、ロッド52のロックが解除された状態となる。このとき、符号Aで示すように、ボールリテーナ72はハウジング68に当接する。
【0088】
図5(b)において矢印60qで示すように、開放ポート78から空気が排気されると、リリースピストン62及びテーパリング64は、ブレーキスプリング66によって矢印60aで示す方向に付勢されて移動する。ブレーキスプリング66のスプリング力は、テーパリング64のくさび効果により拡大されて鋼球70に伝わり、ブレーキシューホルダ74とブレーキシュー76に作用する。これにより、ロッド52は大きな力で締め付けられてロックされる。
【0089】
ロック機構60は、加工ロール12,14の凹凸部13,15の噛み合い量Dを解除可能に固定する離間防止手段である。基材シートの延伸加工中に、ロック機構60を用いて基材シートの押し込み量Dを固定できるので、基材シートの目付、幅、搬送速度等の違いによる基材シートの延伸量のばらつきを抑制できる。
【0090】
エアシリンダ50にロック機構60を設ける代わりに、図4に示すように加工ロール保持装置80を設けてもよい。
【0091】
加工ロール保持装置80は、延伸加工中の基材シートの押し込み量Dを検出するための検出装置82と、エアシリンダ50を制御する制御装置84とを含む。例えば、検出装置82は、他方の加工ロール14の位置、他方の加工ロール14の軸受部15p,15qの位置、又はエアシリンダ50のロッド52の突出長さを検出するセンサ等である。
【0092】
制御装置84は、検出装置82からの検出信号83に基づいて、延伸加工中の基材シートの押し込み量Dを算出し、押し込み量Dを監視しながら、押し込み量Dが一定範囲に保たれるようにエアシリンダ50を制御する。例えば、制御装置84は、延伸加工中の基材シートの押し込み量Dが所定値を下回ったとき、他方の加工ロール14の歯15が延伸加工開始時の基材シートの押し込み量まで基材シートを再び押し込むようにする制御信号85を、エアシリンダ50に送出する。
【0093】
加工ロール保持装置80は、加工ロール12,14の凹凸部13,15の噛み合い量Dを解除可能に所定範囲内に抑制する離間防止手段である。基材シートの延伸加工中に、加工ロール保持装置80を用いて基材シートの押し込み量を略一定に保持できるので、基材シートの目付、幅、搬送速度等の違いによる基材シートの延伸量のばらつきを抑制できる。
【0094】
なお、離間防止手段は、エアシリンダ50の代りに、他方の加工ロール14の軸受部15p,15qそのものの位置を、固定又は所定範囲内に抑制するように構成してもよい。
【0095】
また、加工ロール支持機構11p,11qが一対の加工ロール12,14の両方を移動可能に支持し、加工ロール移動装置が一対の加工ロール12,14の両方を移動させ、離間防止手段が加工ロール12,14の凹凸部13,15の噛み合い量Dを解除可能に固定又は所定範囲内に抑制するように構成してもよい。
【0096】
実施例2のシートの製造方法は、実施例1のシートの製造方法に、以下の特徴を追加する。すなわち、前記加工ロール12,14の少なくとも一方14を移動させて前記加工ロール12,14の間の距離を変更できるように、前記加工ロール12,14を支持する。前記加工工程において、前記加工ロール12,14の凹凸部13,15の噛み合い量Dを固定又は所定範囲内に抑制する。
【0097】
この場合、一対の加工ロール12,14間の間隔を広げることができるので、延伸加工を開始する前に基材シート2を加工ロール12,14の間に通して準備することが容易になる。延伸加工中に加工ロール12,14の凹凸部13,15の噛み合い量が固定又は一定範囲に抑制されているので、基材シート2の延伸量のばらつきを抑制できる。
【0098】
<まとめ> 以上に説明したように、基材シート2が加工ロール12,14の間を通るときに基材シート2に作用する搬送方向の張力は、基材シート2と一方の加工ロール12の外周面12sとの間の摩擦を利用して、より大きくすることができるので、より大きな伸縮性を基材シート2に付与することができる。
【0099】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0100】
例えば、一対の加工ロール12,14の凹凸部は、平歯車状ないし直歯状に限らず、はすば歯車状、千鳥状の凹凸部など、種々の態様とすることができる。
【符号の説明】
【0101】
2 基材シート
3 搬送経路
10,10a シート加工装置
11 制御部(張力制御装置)
11h ヒータ
11p,11q 加工ロール支持機構
12 加工ロール
12m 第3のモータ(張力制御装置)
12s 外周面
13 歯(凹凸部)
14 加工ロール
14s 外周面
15 歯(凹凸部)
16 第1の駆動ロール
16m 第1のモータ(張力制御装置)
18 第2の駆動ロール
18m 第2のモータ
19 第2の検出器
50 エアシリンダ
51 加工ロール移動装置
60 ロック機構(離間防止手段)
80 加工ロール保持装置(離間防止手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6