IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7550244組織処理装置及び組織サンプルを処理する方法
<>
  • 特許-組織処理装置及び組織サンプルを処理する方法 図1
  • 特許-組織処理装置及び組織サンプルを処理する方法 図2
  • 特許-組織処理装置及び組織サンプルを処理する方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】組織処理装置及び組織サンプルを処理する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/36 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G01N1/36
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022573723
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 CN2020096222
(87)【国際公開番号】W WO2021253194
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】500113648
【氏名又は名称】ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ウー、チャンホン
(72)【発明者】
【氏名】ペイ、レイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ヤンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジン、チュン
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-517509(JP,A)
【文献】特許第4809791(JP,B2)
【文献】特開2019-112070(JP,A)
【文献】特開2004-196360(JP,A)
【文献】特表2005-504323(JP,A)
【文献】特開2006-039171(JP,A)
【文献】特表2007-509354(JP,A)
【文献】特許第3925664(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0243626(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0822403(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00 - 7/04
B65D 35/44 -35/54
B65D 39/00 -55/16
C12M 1/00 - 3/10
G01N 1/00 - 1/44
G01N 33/48 -33/98
G01N 35/00 -37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理される材料を受容するように構成され、かつ、開口部を有するレトルトと、
レトルトの開口部を開閉するように構成されるレトルト蓋部と、
レトルト蓋部を加熱するように、レトルト蓋部とカップル化されるヒータと、
を含み、
レトルト蓋部が外部カバー及び内部プレートを含み、外部カバー及び内部プレートによって画成されるチャンバの中にヒータが配設される、
組織処理装置。
【請求項2】
ヒータが、レトルト蓋部を加熱して、レトルト蓋部上での蒸気凝縮物の集結を防止するように構成される、請求項1に記載の組織処理装置。
【請求項3】
ヒータが、内部プレートの表面に取り付けられる加熱パッドである、請求項2に記載の組織処理装置。
【請求項4】
内部プレートが熱伝導プレートである、請求項2又は3に記載の組織処理装置。
【請求項5】
断熱層が、チャンバの内側、かつ、レトルト蓋部の外部カバーとヒータとの間に配される、請求項2~4のいずれか1項に記載の組織処理装置。
【請求項6】
レトルト蓋部がレトルトに対して枢動可能に結合される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組織処理装置。
【請求項7】
レトルト蓋部が閉じられた時に、レトルト蓋部の外周が開口部の外周に対して外延する、請求項1~6のいずれか1項に記載の組織処理装置。
【請求項8】
レトルトが開口部にフランジを有し、レトルト蓋部が閉じられた際にフランジと係合されるロック機構をレトルト蓋部が有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組織処理装置。
【請求項9】
レトルトに対して流体接続される、レトルト蓋部を開けずにレトルトの中へ流動体を導入するための又はレトルトから流動体を放出するための導管を更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組織処理装置。
【請求項10】
ヒータに対して電気的にカップル化され、レトルト蓋部を加熱するようにヒータを制御するコントローラを更に含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組織処理装置。
【請求項11】
コントローラが、
内部に記憶される指示を有するメモリデバイスと、
前記指示を実行して、以下のいずれかの操作を実施するように構成されるプロセッサと、
ホルマリンで組織サンプルを処理すること、
アルコールで組織サンプルを処理すること、
キシレンで組織サンプルを処理すること、
パラフィンで組織サンプルを処理すること、
キシレンでレトルトを洗浄すること、
アルコールでレトルトを洗浄すること、及び
レトルトを乾燥させること、
を含む請求項10に記載の組織処理装置。
【請求項12】
組織サンプルがホルマリンで処理される時に、レトルト蓋部を加熱しないようにヒータが制御される、
請求項11に記載の組織処理装置。
【請求項13】
組織サンプルがアルコールで処理される時に、レトルト蓋部を加熱するようにヒータが制御される、
請求項11又は12に記載の組織処理装置。
【請求項14】
組織サンプルがキシレンで処理される時に、レトルト蓋部を加熱するようにヒータが制御される、
請求項11~13のいずれか1項に記載の組織処理装置。
【請求項15】
組織サンプルがパラフィンで処理される時に、レトルト蓋部を加熱するようにヒータが制御される、
請求項11~14のいずれか1項に記載の組織処理装置。
【請求項16】
レトルトがキシレンで洗浄される時に、レトルト蓋部を加熱するようにヒータが制御される、
請求項11~15のいずれか1項に記載の組織処理装置。
【請求項17】
レトルトがアルコールで洗浄される時に、レトルト蓋部を加熱するようにヒータが制御される、
請求項11~16のいずれか1項に記載の組織処理装置。
【請求項18】
レトルトが乾燥される時に、レトルト蓋部を加熱するようにヒータが制御される、
請求項11~17のいずれか1項に記載の組織処理装置。
【請求項19】
前記操作が、各操作に関して独立して予め定められた温度を設定するようにプログラム可能である、
請求項11~18のいずれか1項に記載の組織処理装置。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の組織処理装置によって組織サンプルを処理する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、組織処理の分野に、そして特に組織処理装置及び組織処理装置によって組織サンプルを処理する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
組織処理装置は、生物学的組織を処理するために使用される。そのような組織処理装置は、組織を受容するレトルト及び組織処理装置がプロトコルを実行する時にレトルトを密封するレトルト蓋部を有する。1つのプロトコルにおいて、組織はホルマリン、アルコール及びキシレンによって処理され、そしてパラフィンの中に包埋される。その後、組織は安定にすることができ、更にミクロトームによって切片化することができる。組織処理装置は、他の組織を処理するようにレトルトを洗浄するクリーニングプロトコルも実行することができる。
【0003】
組織標本の調製及びレトルトの洗浄の間に、レトルト蓋部がレトルトの内部よりも大幅に低い温度を有するように、レトルト内で使用された試薬は加熱される。試薬の蒸気(vapor/fume)は、次の、異なる試薬の中に落下し得る凝縮物として、レトルト蓋部によって収集され得る。更に、プロトコルが完了した後に一度レトルト蓋部が開けられると試薬蒸気は周辺空気の中に逃れ、作業者に対する健康被害をもたらし得る。
【0004】
WO03/029845A2は、レトルトを加熱するための加熱マット55を備えた組織サンプルを処理するための組織処理装置を開示する。
【0005】
EP1279444B1は、レトルトの頂部上に通気孔を有する蒸気取集アレンジメントを備えた、生物学的組織の標本を処理するための組織処理装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第03/029845号
【文献】欧州特許第1279444号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は、関連技術分野に存在する少なくとも1つの問題点を、少なくとも幾分かの程度解決することを目的とする。従って、組織処理装置及び組織処理装置によって組織サンプルを処理する方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの視点において本出願は実施形態(複数)において、処理される材料を受容するように構成され、かつ開口部を有するレトルトと、レトルトの開口部を開閉するように構成されるレトルト蓋部と、レトルト蓋部を加熱するように、レトルト蓋部とカップル化されるヒータと、を含む組織処理装置を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本出願の実施形態(複数)の組織処理装置では、レトルト蓋部の上での蒸気凝縮物の集結を防止して、結果的に次の異なる試薬内への試薬のキャリーオーバが少なくなるように、レトルト蓋部を加熱するために、そして、レトルトの内部の温度とレトルト蓋部の温度の間の差を少なくするためにヒータが使用される。
【0010】
いくつかの実施形態において、レトルト蓋部が外部カバー及び内部プレートを含み、外部カバー及び内部プレートによって画成されるチャンバの中にヒータが配設される。
【0011】
いくつかの実施形態において、ヒータは、内部プレートの表面に取り付けられる加熱パッドである。
【0012】
いくつかの実施形態において、内部プレートは熱伝導プレートである。
【0013】
いくつかの実施形態において、断熱層が、チャンバの内側、かつ、レトルト蓋部の外部カバーとヒータとの間に配される。
【0014】
いくつかの実施形態において、レトルト蓋部は、レトルトに対して枢動可能に結合される。
【0015】
いくつかの実施形態において、レトルト蓋部が閉じられた際に、レトルト蓋部の外周が開口部の外周に対して外延する(外回る、内包する、取り囲む、上回る:exceeds)。
【0016】
いくつかの実施形態において、レトルトが開口部にフランジを有し、レトルト蓋部が閉じられた際にフランジと係合されるロック機構をレトルト蓋部が有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、組織処理装置は、レトルトに対して流体接続される、レトルトの中へ流動体を導入するための又はレトルトから流動体を放出するための導管を更に含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、組織処理装置は、ヒータに対して電気的にカップル化(結合)され、レトルト蓋部を加熱するようにヒータを制御するコントローラを更に含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、コントローラは、内部に記憶される指示を有するメモリデバイスと、指示を実行して、以下のいずれかの操作を実施するように構成されるプロセッサとを含む:ホルマリンで組織サンプルを処理すること、アルコールで組織サンプルを処理すること、キシレンで組織サンプルを処理すること、パラフィンで組織サンプルを処理すること、キシレンでレトルトを洗浄すること、アルコールでレトルトを洗浄すること、及びレトルトを乾燥させること。
【0020】
いくつかの実施形態において、組織サンプルがホルマリンで処理される時に、レトルト蓋部を加熱しないようにヒータが制御される。
【0021】
いくつかの実施形態において、組織サンプルがアルコールで処理される時に、レトルト蓋部を加熱するようにヒータが制御される。
【0022】
いくつかの実施形態において、組織サンプルがキシレンで処理される時に、レトルト蓋部を加熱するようにヒータが制御される。
【0023】
いくつかの実施形態において、組織サンプルがパラフィンで処理される時に、レトルト蓋部を加熱するようにヒータが制御される。
【0024】
いくつかの実施形態において、レトルトがキシレンで洗浄される時に、レトルト蓋部を加熱するようにヒータが制御される。
【0025】
いくつかの実施形態において、レトルトがアルコールで洗浄される時に、レトルト蓋部を加熱するようにヒータが制御される。
【0026】
いくつかの実施形態において、レトルトが乾燥される時に、レトルト蓋部を加熱するようにヒータが制御される。
【0027】
いくつかの実施形態において、操作は、各操作に関して独立して予め定められた温度を設定するようにプログラム可能である。
【0028】
他の視点において、本出願は実施形態(複数)において、上述のように組織処理装置によって組織サンプルを処理する方法を提供する。
【0029】
上述の一般的な記載及び以下の詳細な記載の両方は説明のためのものであり、本出願を限定するように解釈されてはならないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本出願の実施形態(複数)のこれらの及び/又は他の視点及び利点は、図面を参照しつつ以下の記載から明確になるし、より容易に分かるだろう。
図1図1は、本出願のいくつかの実施形態の組織処理装置の模式図である。
図2図2は、本出願のいくつかの他の実施形態の組織処理装置の模式図である。
図3図3は、本出願のいくつかの実施形態の組織処理装置によって実行される処理に関する加熱ステータス制御を示す図である。
【実施例
【0031】
本出願の実施形態(複数)は、以下に詳細に記載され、例(複数)が図面に示される。図面を参照しつつ本願に記載の実施形態(複数)は説明のためのものであり、本出願を一般的に理解するために使用される。実施形態(複数)は本出願を限定すると解釈されるべきではない。
【0032】
本出願において使用される用語は、具体的な実施形態(複数)を説明するためのものに過ぎず、本出願を限定すると解釈されるべきではないことが説明されるべきである。本出願の実施形態(複数)及び特許請求の範囲において使用される単数形の「a」、「an」及び「the」は、他に文脈において明確に指示されない限り、複数形も含むことを意味する。本出願において使用される、用語「及び/又は」は、いずれか1つ及び関連列挙されるアイテムの1つ以上の可能な組み合わせの全てを含むとも理解される。
【0033】
明細書において、他に特定又は限定されない限り、相対的な用語「内部(inner)」、「外部(outer)」、「上(up)」及びその派生形などは、その際に記載されるように又は議論の下で図面に示されるように、方向を言及すると理解されるべきである。これらの相対的な用語は説明の便宜のためのものであり、本出願が特定の向きで構築又は操作される必要はない。
【0034】
本出願において、他に特定又は限定されない限り、第1の特徴が第2の特徴の「上(on)」又は「下(below)」である構造は、第1の特徴が第2の特徴と直接的に当接する実施形態を含み得るし、第1の特徴及び第2の特徴が互いに直接的には当接(contact)しないがそれらの間に形成された更なる特徴を介して接(contact)する実施形態も含み得る。更に、第2の特徴の「上(on)」、「上側(above)」又は「頂(on top of)」に在する第1の特徴は、第1の特徴が第2の特徴のすぐ又は斜めに 「上」、「上側」又は「頂」である実施形態を含み得るし、あるいは、第1の特徴が単に第2の特徴の高さよりも高く位置することを意味する。その一方で、 第2の特徴の「下(below)」、「下側(under)」又は「底(on bottom of)」に在する第1の特徴は、第1の特徴が第2の特徴のすぐ又は斜めに「下(below)」、「下側(under)」又は「底(on bottom of)」である実施形態を含み得るし、あるいは、第1の特徴が単に第2の特徴の高さよりも低く位置することを意味する。
【0035】
本出願の記載において、他に特定又は限定されない限り、用語「マウント(mounted)」、「接続(connected)」、「カップル化(coupled)」、「固定(fixed)」及びその派生形は、広義的に使用され、力学的(メカニカル)な又は電気的なマウント、接続及びカップリング(結合)などを含み、2つの要素の装置内部でのマウント、接続及びカップリングでもあり得るし、更に直接的及び間接的なマウント、接続及びカップリングでもあり得る。これらは、当業者には本出願の詳細な実施形態に従って理解可能である。
【0036】
本出願の実施形態(複数)において提供される組織処理装置及び組織処理装置によって組織サンプルを処理する方法が、図面を参照して以下に記載される。なお、下記記載において各構成要素に付された図面参照符号は本発明の理解を助ける目的で付されたものであり、本発明を限定するものではない。
【0037】
図1は本出願のいくつかの実施形態の組織処理装置の模式図であり、図2は本出願のいくつかの他の実施形態の組織処理装置の模式図である。
【0038】
いくつかの実施形態において、組織処理装置は、レトルト蓋部1、レトルト2及びヒータ(図1には示されない)を含む。 レトルト2は、処理される材料、すなわち組織サンプルを受容するように構成され、かつ、開口部を有する。レトルト蓋部1は、レトルト2の開口部を開閉するように構成される。具体的には、レトルト蓋部1は、レトルト2に対して結合され、開口部を塞ぐ下げ位置(lowered position)とレトルト2の内部へのアクセスを許容する上げ位置(raised position)との間で移動可能である。一実施形態において、レトルト蓋部1は、レトルト2に対して枢動可能に結合される。例えば、レトルト2に対してレトルト蓋部1を結合するために、ヒンジが使用され得る。ヒータは、レトルト蓋部1を加熱するように、レトルト蓋部1に対してカップル化される。具体的には、ヒータは、レトルト蓋部1に含まれ得るし、又はレトルト蓋部1に対して外部から取り付けられ得る。
【0039】
図2に示すように、ヒータは加熱パッド3であり得る。レトルト蓋部1は外部カバー4及び内部プレート5を含み、そして加熱パッド3は外部カバー4及び内部プレート5によって画成されるチャンバ内に配置される。更に、加熱パッド3は、内部プレート5の表面上に、すなわち上方指向面(an upwardly facing surface)に取り付けられる。具体的には、内部プレート5は、熱伝導材料で製造される熱伝導プレートである。例えば、内部プレート5は、ステンレス鋼製である。他の実施形態において、内部プレート5は、組織サンプルを処理するための流動体による腐食から内部プレート5を保護するための保護コーティングによってカバーされ得る。
【0040】
更に、断熱層6が、チャンバの内側、かつ、レトルト蓋部1の外部カバー4と加熱パッド3との間に配置される。具体的には、断熱層6は、レトルト蓋部1の外部カバー4の高い温度に起因して作業者がやけどを負うことを防止するとともに熱放散を回避するために、加熱パッド3上に配置される。断熱層6は、ゴム及びプラスチックなどの任意の適切な絶縁材料で製造され得る。
【0041】
更に、レトルト蓋部1が閉じられた時に、レトルト蓋部1の外周は開口部の外周に対して外延する(exceed)。言い換えると、レトルト蓋部1が閉じられた時に、レトルト蓋部1の外周は開口部の外周を越えて(外側に)延在する。図2に示すように、レトルト2は開口部にフランジを有し、レトルト蓋部1が閉じられた際に(レトルトの開口部の)フランジと係合されるロック機構をレトルト蓋部1が有する。
【0042】
組織を含むバスケットを組織処理装置のレトルト2の中に置いた後に、組織はホルマリン、アルコール、キシレン及びパラフィンで処理され得る。組織を取り出した後に、レトルト2はキシレン及びアルコールで洗浄され得るし、更に乾燥され得る。このケースにおいて、使用されるバスケットは、レトルト2内に置かれて、一緒に洗浄され得る。流動体は、レトルト2に対して流体接続される導管(単数又は複数)によってレトルト2内へ導入されるか又はレトルト2から放出される。流動体は、レトルト内へ流れ込む前に加熱され得る。あるいは、流動体は、レトルトの中に配置されたヒータによって加熱され得る。
【0043】
更に、組織処理装置は、本発明の技術分野において知られているレベルセンサ、温度センサ、攪拌機構、バルブ及びポンプなどの他の構成要素を含み得る。
【0044】
本出願の実施形態(複数)の組織処理装置では、レトルト蓋部1とレトルト2の内部との間の温度差がより小さくなってレトルト蓋部1上での蒸気凝縮物の集結を防止するように、レトルト蓋部1を加熱するためにヒータ3が備えられ、結果として次の異なる試薬の中への試薬残渣のキャリーオーバー(持ち越し)が少なくなる。さらに、高い温度までレトルト蓋部1を加熱する必要が無いことがある。例えば、組織はレトルト2内において60℃で処理され得るし、レトルト蓋部1は60℃と同等又は60℃未満の温度、例えば45℃まで加熱され得る。レトルト蓋部1の加熱は穏やかなものであり、処理される組織の品質に対してネガティブに影響を与えることがない。更に、レトルト2内の試薬残渣が少なくなるため、試薬の蒸気レベルも低減する。
【0045】
いくつかの実施形態において、組織処理装置は、ヒータに対して電気的にカップル化(結合)され、レトルト蓋部を加熱するようにヒータを制御するコントローラを更に含む。コントローラは、内部に記憶される指示を有するメモリデバイスと、プロセッサとを含む。プロセッサは、ホルマリンで組織サンプルを処理すること、アルコールで組織サンプルを処理すること、キシレンで組織サンプルを処理すること、パラフィンで組織サンプルを処理すること、キシレンでレトルトを洗浄すること、アルコールでレトルトを洗浄すること、及びレトルトを乾燥させること、のいずれかの操作を、指示を実行して実施するように構成される。組織処理装置のコントローラでは、操作/ステップは、蒸気(例えば、ホルマリン及びキシレン)レベルを更に低減させるように、各操作/ステップに関して独立して予め定められた温度を設定するようにプログラム可能である。
【0046】
図3は、本出願のいくつかの実施形態の組織処理装置によって実行される処理(例えば、プロトコル又はステップ)に関する加熱ステータス制御を示す図である。
【0047】
図3に示すように、ヒータは、組織サンプルがホルマリンで処理される時にはレトルト蓋部を加熱しないように制御される。つまりホルマリンステップの加熱ステータスはオフ(OFF)である。ホルマリンは作業者に対して健康被害を生じ得るため、このステップではヒータはレトルト蓋部を加熱せずにホルマリン蒸気レベルを低減するように制御され得る。更に、図3に示すように、ヒータは、組織サンプルがアルコールで処理される時にはレトルト蓋部を加熱するように制御される。すなわちアルコールステップの加熱ステータスはオン(ON)である。更に、ヒータは、組織サンプルがキシレンで処理される時にはレトルト蓋部を加熱するように制御される。すなわち、キシレンステップの加熱ステータスはオン(ON)である。更に、ヒータは、組織サンプルがパラフィンで処理される時にはレトルト蓋部を加熱するように制御される。すなわち、パラフィンステップの加熱ステータスはオン(ON)である。更に、ヒータは、レトルトがキシレンで洗浄される時にはレトルト蓋部を加熱するように制御される。すなわち、キシレンでの洗浄ステップの加熱ステータスはオン(ON)である。更に、ヒータは、レトルトがアルコールで洗浄される時にはレトルト蓋部を加熱するように制御される。すなわち、アルコールでの洗浄ステップの加熱ステータスはオン(ON)である。更に、ヒータは、レトルトが乾燥される時にはレトルト蓋部を加熱しないように制御される。すなわち、乾燥ステップの加熱ステータスはオフ(OFF)である。レトルトを洗浄した後に、コントローラは、レトルト蓋部の加熱を停止してエネルギーをセーブしてレトルト蓋部の冷却を許容するように、ヒータを制御することができる。更に、コントローラは、各ステップ、操作又はプロトコルに関して独立して予め定められた温度までレトルト蓋部を加熱するように、ヒータを制御することができる。
【0048】
一実施形態において、組織処理装置のレトルト蓋部は、単一のプロトコルが完了するまで開かなくすることができる。単一プロトコルは、図3に示すいずれかのステップ/操作を含み得る。例えば、ある(単一)プロトコルは、ホルマリン、アルコール、キシレン及びパラフィンで組織サンプルを処理するステップ(複数)を含み得る。他の例に関して、ある(単一)プロトコルは、キシレン及びアルコールでレトルトを洗浄するステップ及び乾燥ステップを含み得る。
【0049】
図3に示すように、本出願は組織処理装置のレトルト蓋部を加熱する制御方法も提供する。組織処理装置は、例えばコントローラによって、組織サンプルがホルマリンで処理される時にはレトルト蓋部を加熱しないように制御される。更に、組織処理装置は、組織サンプルがアルコールで処理される時にはレトルト蓋部を加熱するように制御される。更に、組織処理装置は、組織サンプルがキシレンで処理される時にはレトルト蓋部を加熱するように制御される。更に、組織処理装置は、組織サンプルがパラフィンで処理される時にはレトルト蓋部を加熱するように制御される。更に、組織処理装置は、レトルトがキシレンで洗浄される時にはレトルト蓋部を加熱するように制御される。更に、組織処理装置は、レトルトがアルコールで洗浄される時にはレトルト蓋部を加熱するようにされる。更に、組織処理装置は、レトルトが乾燥される時にはレトルト蓋部を加熱しないように制御される。
【0050】
上述の組織処理装置によって組織サンプルを処理する方法では、特に各ステップ/操作に関して独立して予め定められた温度まで、レトルト蓋部を加熱するようにヒータを制御することによって、レトルト蓋部上での蒸気凝縮物の集結を防止するように、レトルト蓋部とレトルトの内部の間の温度差が少なくなり、そのため残渣が劇的に減り、かつ予想外の蒸気の逃れが最小化する。更に、組織処理装置のレトルト蓋部の加熱についての制御方法では、ホルマリン蒸気レベルを更に減らすことができる。
【0051】
更に、コントローラのプロセッサはパーソナルコンピュータプロセッサであり得る。コントローラは、組織を処理するためのいくつかの再定義プロトコル(又はステップ)を、半導体メモリデバイスを例として含むメモリデバイス(非揮発性メモリ、メディア及びメモリデバイスの全ての形態を含む)内に有し得る。例えば、EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリデバイス;磁気ディスク、例えば、内部ハードディスク又はリムーバルディスク;光磁気ディスク;及びCD-ROM及びDVD-ROMディスクなど。プロセッサ及びメモリは、専用目的の論理回路に追加又は組み込まれ得る。コンピュータプログラム/指示の実行に適したプロセッサは、一般的な及び専用目的のマイクロプロセッサの両方、任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1以上のプロセッサを例として含む。一般的には、プロセッサは、リードオンリーメモリ又はランダムアクセスメモリ、あるいはそれらの両方から指示及びデータを受け取る。
【0052】
本明細書の全体に渡る「(一)実施形態」、「いくつかの実施形態」、「(一)実施例」、「具体的な例」又は「いくつかの例」についての言及は、実施形態又は例と紐づけられて記載される特定の特徴(feature)、構造、材料又は特性(characteristic)が本出願の少なくとも1つの実施形態又は例に含まれることを意味する。つまり、本明細書の全体に渡る様々な箇所での上記フレーズの出現は、本出願の同一の実施形態又は例を必ずしも意味しない。更に、特定の特徴、構造、材料又は特性は、1以上の実施形態又は例において任意の適切な様式で組み合わせられ得る。更に、明細書中に記載された異なる実施形態又は例、及び実施形態又は例の特徴は、矛盾(conflicting)の無いように、当業者によって組み合わせられ得る。
【0053】
説明的な実施形態が示されかつ記載されているが、上記の実施形態が本出願を限定するとは解釈されず、変更(changes)、置換(alternatives)、変形(modifications)が本出願の趣旨、原則及び範疇から逸脱すること無くなされ得ると、当業者には分かるだろう。
【符号の説明】
【0054】
1 :レトルト蓋部
2 :レトルト
3 :加熱パッド、ヒータ
4 :外部カバー
5 :内部プレート
6 :断熱層
図1
図2
図3