(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂付銅箔及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08L 71/12 20060101AFI20240905BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20240905BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20240905BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240905BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C08L71/12
C08L25/04
C08F299/02
B32B15/08 U
H05K1/03 630H
(21)【出願番号】P 2022581306
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2022002966
(87)【国際公開番号】W WO2022172759
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2021019760
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】大澤 和弘
(72)【発明者】
【氏名】立岡 歩
(72)【発明者】
【氏名】小川 国春
(72)【発明者】
【氏名】牧野 遥
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-196563(JP,A)
【文献】特開2001-345537(JP,A)
【文献】特開2017-157783(JP,A)
【文献】特表2018-523725(JP,A)
【文献】特開2018-168347(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181842(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104748(WO,A1)
【文献】特開2006-083364(JP,A)
【文献】特開2020-200427(JP,A)
【文献】国際公開第2021/065964(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08F283/01;290/00-290/14
C08F299/00-299/08
B32B 1/00- 43/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量30000以上のアリーレンエーテル化合物と、
熱又は紫外線により反応性を呈する反応性不飽和結合を分子中に有するスチレン系コポリマーと、
を含み、
前記スチレン系コポリマーが有する反応性不飽和結合が、シアネート基、マレイミド基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エチニル基、及びスチリル基からなる群から選択される少なくとも1種であ
り、
樹脂成分における固形分の合計量100重量部に対して、前記アリーレンエーテル化合物の含有量が10重量部以上60重量部以下であり、前記スチレン系コポリマーの含有量が5重量部以上75重量部以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
(i)前記アリーレンエーテル化合物が熱又は紫外線により反応性を呈する反応性不飽和結合を有する、又は(ii)前記樹脂組成物が、熱又は紫外線により反応性を呈する反応性不飽和結合を有する追加のアリーレンエーテル化合物をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記アリーレンエーテル化合物又は前記追加のアリーレンエーテル化合物が有する反応性不飽和結合が、シアネート基、マレイミド基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エチニル基、及びスチリル基からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記スチレン系コポリマーが、前記反応性不飽和結合として、スチリル基を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
銅箔と、前記銅箔の少なくとも一方の表面に設けられた請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む樹脂層とを備えた、樹脂付銅箔。
【請求項6】
前記銅箔の前記樹脂層側の表面における、JIS B0601-2001に準拠して測定される十点平均粗さRzjisが2.0μm以下である、請求項5に記載の樹脂付銅箔。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の樹脂付銅箔を用いて作製された、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂付銅箔及びプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は電子機器等に広く用いられている。特に、近年の電子機器等の高機能化に伴って信号の高周波化が進んでおり、高速大容量通信が可能となってきている。そのような用途の例としては、通信サーバー、車の自動運転、5G対応の携帯電話等が挙げられる。こうした高周波用途に適したプリント配線板が求められるようになっている。この高周波用プリント配線板には、高周波信号の質を劣化させずに伝送可能とするために、伝送損失の低いものが望まれる。プリント配線板は配線パターンに加工された銅箔と絶縁樹脂基材とを備えたものであるが、伝送損失は、主として銅箔に起因する導体損失と、絶縁樹脂基材に起因する誘電体損失とからなる。したがって、高周波用途に適用する樹脂層付銅箔においては、樹脂層に起因する誘電体損失を抑制することが望ましい。このためには、樹脂層には優れた誘電特性、特に低い誘電正接が求められる。
【0003】
一方、誘電特性や密着性等に優れる様々な樹脂組成物がプリント配線板等の用途に提案されている。例えば、特許文献1(国際公開第2013/105650号)には、銅箔の片面に接着剤層を備える接着剤層付銅箔が開示されており、この接着剤層は、ポリフェニレンエーテル化合物100質量部に対して、スチレンブタジエンブロック共重合体を5質量部以上65質量部以下含む樹脂組成物からなるとされている。また、特許文献2(国際公開第2016/175326号)には、1分子中にN-置換マレイミド構造含有基及びポリフェニレンエーテル誘導体(A)、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種類の熱硬化性樹脂(B)、及びスチレン系熱可塑性エラストマー(C)を含む樹脂組成物が開示されている。特許文献3(特開2011-225639号公報)は、未硬化のセミIPN型複合体と、(D)ラジカル反応開始剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物が開示されている。この未硬化のセミIPN型複合体は、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)側鎖に1,2-ビニル基を有する1,2-ブタジエン単位を分子中に40%以上含有するブタジエンポリマー及び(C)架橋剤から形成されるプレポリマーと、が相容化した未硬化のものであるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/105650号
【文献】国際公開第2016/175326号
【文献】特開2011-225639号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、誘電特性等に優れる樹脂組成物として、プライマー層(接着層)としてプリグレグ等の基材に貼り付けられるものを検討してきた。そして、この樹脂組成物の層は樹脂付銅箔の形態で提供され、この銅箔は回路形成用銅箔として使用されうる。上記用途向けの樹脂組成物には、優れた誘電特性のみならず、低粗度表面(例えば低粗度銅箔の表面)に対しても密着性に優れること、耐熱性を有すること、優れた耐水信頼性を有することといった様々な特性を有することが望まれる。とりわけ、高周波向け回路形成においては、低粗度銅箔が伝送損失の低減の観点から望まれるところ、そのような銅箔は低粗度であるが故に樹脂組成物との密着性が低くなる傾向にある。そのため、優れた誘電特性と低粗度銅箔に対する高い密着性との両立を他の諸特性を確保しながら如何にして実現するかが問題となる。
【0006】
本発明者らは、今般、重量平均分子量30000以上のアリーレンエーテル化合物と、反応性不飽和結合を分子中に有するスチレン系コポリマーとをブレンドすることで、優れた誘電特性(例えば10GHzでの低い誘電正接)、低粗度表面(例えば低粗度銅箔の表面)に対する高い密着性、耐熱性、及び優れた耐水信頼性を呈する樹脂組成物を提供できるとの知見を得た。
【0007】
したがって、本発明の目的は、優れた誘電特性、低粗度表面に対する高い密着性、耐熱性、及び優れた耐水信頼性を呈する樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
本発明の一態様によれば、重量平均分子量30000以上のアリーレンエーテル化合物と、
熱又は紫外線により反応性を呈する反応性不飽和結合を分子中に有するスチレン系コポリマーと、
を含む、樹脂組成物が提供される。
【0009】
本発明の他の一態様によれば、銅箔と、前記銅箔の少なくとも一方の表面に設けられた樹脂組成物を含む樹脂層とを備えた、樹脂付銅箔が提供される。
【0010】
本発明の他の一態様によれば、樹脂付銅箔を用いて作製された、プリント配線板が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、重量平均で30000以上の分子量を有するアリーレンエーテル化合物と、スチレン系コポリマーとを含む。スチレン系コポリマーは、熱又は紫外線により反応性を呈する反応性不飽和結合を分子中に有する。このように、重量平均分子量30000以上のアリーレンエーテル化合物と、反応性不飽和結合を分子中に有するスチレン系コポリマーとをブレンドすることで、優れた誘電特性(例えば10GHzでの低い誘電正接)、低粗度表面(例えば低粗度銅箔の表面)に対する高い密着性、耐熱性、及び優れた耐水信頼性を呈する樹脂組成物を提供することができる。また、この樹脂組成物は、良好な加工性も有しており、例えば割れにくく、かつ、良好なタック性を呈しうるものである。
【0012】
前述のとおり、本発明者らは、誘電特性等に優れる樹脂組成物として、プライマー層(接着層)としてプリグレグ等の基材に貼り付けられるものを検討してきた。そして、この樹脂組成物の層は樹脂付銅箔の形態で提供され、この銅箔は回路形成用銅箔として使用されうる。上記用途向けの樹脂組成物には、優れた誘電特性のみならず、低粗度表面(例えば低粗度銅箔の表面)に対しても密着性に優れること、耐熱性を有すること、優れた耐水信頼性を有することといった様々な特性を有することが望まれる。とりわけ、高周波向け回路形成においては、低粗度銅箔が伝送損失の低減の観点から望まれるところ、そのような銅箔は低粗度であるが故に樹脂組成物との密着性は低くなる傾向にある。本発明の樹脂組成物は、重量平均分子量30000以上のアリーレンエーテル化合物と、反応性不飽和結合を分子中に有するスチレン系コポリマーとをブレンドしたことで強靭なものとなり、優れた誘電特性のみならず耐熱性や耐水信頼性を有しながらも、低粗度表面に対する高い密着性(高い剥離強度)を実現できる。
【0013】
具体的には、本発明の樹脂組成物は、硬化後の周波数10GHzにおける誘電正接が0.0035未満であることが好ましく、より好ましくは0.0020未満、さらに好ましくは0.0015未満である。誘電正接は低い方が好ましく、下限値は特に限定されないが、典型的には0.0001以上である。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、アリーレンエーテル化合物を含む。このアリーレンエーテル化合物の重量平均分子量は30000以上であり、好ましくは30000以上300000以下、さらに好ましくは40000以上200000以下、特に好ましくは45000以上120000以下である。重量平均分子量30000以上のアリーレンエーテル化合物は典型的にはポリアリーレンエーテルである。アリーレンエーテル化合物は、好ましくはフェニレンエーテル化合物、例えばポリフェニレンエーテルである。アリーレンエーテル化合物ないしフェニレンエーテル化合物は下記式:
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1以上3以下の炭化水素基である)
で表される骨格を分子中に含む化合物であるのが好ましい。フェニレンエーテル化合物の例としては、フェニレンエーテル化合物のスチレン誘導体、分子中に無水マレイン酸構造を含むフェニレンエーテル化合物、末端水酸基変性フェニレンエーテル化合物、末端メタクリル変性フェニレンエーテル化合物及び末端グリシジルエーテル変性フェニレンエーテル化合物が挙げられる。分子中に無水マレイン酸構造を含む重量平均分子量30000以上のアリーレンエーテル化合物の製品例としては、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製のPME-80及びPME-82が挙げられる。
【0015】
本発明のアリーレンエーテル化合物は、反応性不飽和結合を有するのが好ましい。あるいは、樹脂組成物が、反応性不飽和結合を有する追加のアリーレンエーテル化合物をさらに含むものであってもよい。この場合、追加のアリーレンエーテル化合物としては、重量平均分子量30000以上である必要が無い。すなわち、追加のアリーレンエーテル化合物は、(重量平均分子量30000以上であってもよいが)重量平均分子量30000未満のものであることができ、例えば、数平均分子量500以上10000以下でありうる。反応性不飽和結合は、熱又は紫外線により反応性を呈する不飽和結合と定義される。反応性不飽和結合の好ましい例としては、シアネート基、マレイミド基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エチニル基、スチリル基、及びそれらの組合せが挙げられる。反応性が高く、かつ、反応の制御が可能(経時変化での反応が起こりにくく、樹脂の保管が可能で、製品寿命を長く確保できる)な点で、スチリル基が特に好ましい。
【0016】
アリーレンエーテル化合物における反応性不飽和結合は、分子構造の末端に又はそれに隣接して位置するのが、高い反応性を呈する点で好ましい。例えば、分子構造の末端に不飽和結合を有する官能基の例として1,2-ビニル基が挙げられるが、1,2-ビニル基は高い反応性を呈するが故にラジカル重合に利用可能な官能基として一般的である。対して、分子骨格中に存在するエチレン性不飽和結合(分子構造の末端に位置していないビニル基)の場合、その反応性は低下する。また、例外的に、不飽和結合にベンゼン環が隣接している場合(例えばスチリル基の場合)は高い反応性を有する。したがって、反応性不飽和結合の位置は、a)分子構造の末端(主鎖か側鎖かは問わない)であってもよいし、b)分子構造の末端(主鎖か側鎖かは問わない)にベンゼン環が位置する場合、末端のベンゼン環に隣接する位置であってもよい。例えば、アリーレンエーテル化合物は、分子構造の両末端に反応性不飽和結合としてスチリル基を有していてもよい。分子両末端にスチリル基を有するアリーレンエーテル化合物の製品例としては、三菱ガス化学株式会社製のOPE-2St-1200及びOPE-2St-2200が挙げられる。
【0017】
本発明の樹脂組成物における重量平均分子量30000以上のアリーレンエーテル化合物の含有量は、特に限定されないが、相溶性(剥離強度や耐水信頼性と関連性を有する)と誘電特性とを両立させる観点から、樹脂成分(固形分)の合計量100重量部に対して、10重量部以上60重量部以下が好ましく、より好ましくは15重量部以上55重量部以下、さらに好ましくは20重量部以上50重量部以下、特に好ましくは25重量部以上35重量部以下である。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、スチレン系コポリマーを含む。スチレン系コポリマーは水添及び非水添のいずれであってもよい。すなわち、スチレン系コポリマーは、スチレン由来の部位を含む化合物であって、スチレン以外にもオレフィン等の重合可能な不飽和基を有する化合物由来の部位を含んでもよい重合体である。スチレン系コポリマーの重合可能な不飽和基を有する化合物由来の部位にさらに二重結合が存在する場合、二重結合部は水添されているものであってもよいし、水添されていないものであってもよい。スチレン系コポリマーの例としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、メタクリル酸エステル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、アクリロニトリル-アクリル酸エステル-スチレン共重合体(AAS)、アクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合体(AES)、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン・4-メチルスチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体、及びそれらの組合せが挙げられ、好ましくは、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR)、スチレン・4-メチルスチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体、及びそれらの組合せであり、特に好ましくはスチレン・4-メチルスチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体である。スチレン系コポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは40000以上400000以下、さらに好ましくは60000以上370000以下、特に好ましくは80000以上340000以下である。
【0019】
本発明のスチレン系コポリマーは、反応性不飽和結合を分子中に有する。上述したとおり、反応性不飽和結合は、熱又は紫外線により反応性を呈する不飽和結合と定義される。反応性不飽和結合の好ましい例としては、シアネート基、マレイミド基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エチニル基、スチリル基、及びそれらの組合せが挙げられる。反応性が高く、かつ、反応の制御が可能(経時変化での反応が起こりにくく、樹脂の保管が可能で、製品寿命を長く確保できる)な点で、スチリル基が特に好ましい。
【0020】
スチレン系コポリマーにおける反応性不飽和結合は、アリーレンエーテル化合物の場合と同様、分子構造の末端に又はそれに隣接して位置するのが、高い反応性を呈する点で好ましい。例えば、分子構造の末端に不飽和結合を有する官能基の例として1,2-ビニル基が挙げられるが、1,2-ビニル基は高い反応性を呈するが故にラジカル重合に利用可能な官能基として一般的である。対して、分子骨格中に存在するエチレン性不飽和結合(分子構造の末端に位置していないビニル基)の場合、その反応性は低下する。また、例外的に、不飽和結合にベンゼン環が隣接している場合(例えばスチリル基の場合)は高い反応性を有する。したがって、反応性不飽和結合の位置は、a)分子構造の末端(主鎖か側鎖かは問わない)であってもよいし、b)分子構造の末端(主鎖か側鎖かは問わない)にベンゼン環が位置する場合、末端のベンゼン環に隣接する位置であってもよい。反応性不飽和結合を有するスチレン系コポリマーの製品例としては、株式会社クラレ製セプトン(R)V9461(スチリル基を有する)、CRAY VALLEY社製Ricon(R)100、181及び184(1,2-ビニル基を有するスチレン-ブタジエン共重合体)、株式会社ダイセル製エポフレンドAT501及びCT310(1,2-ビニル基を有するスチレンブタジエンコポリマー)が挙げられる。
【0021】
スチレン系コポリマーは、変性スチレンブタジエンを有するのが好ましい。あるいは、樹脂組成物が、変性スチレンブタジエンを有する追加のスチレン系コポリマーをさらに含むものであってもよい。この場合、追加のスチレン系コポリマーとしては、反応性不飽和結合を有する必要が無いこと以外は、上記同様のスチレン系コポリマーを用いることができる。すなわち、追加のスチレン系コポリマーは、(反応性不飽和結合を有するものであってもよいが)反応性不飽和結合を有しないものであることができる。変性スチレンブタジエンは、種々の官能基を導入して化学変性されたスチレンブタジエンであればよく、例えばアミン変性、ピリジン変性、カルボキシ変性等が挙げられるが、好ましくはアミン変性である。変性スチレンブタジエンを有するスチレン系コポリマーの例としては、水添スチレンブタジエンブロック共重合体であって、アミン変性品である旭化成株式会社製タフテック(R)MP10が挙げられる。また、変性していないスチレン系コポリマーの例としては、スチレンブタジエンブロック共重合体であるJSR株式会社製TR2003が挙げられる。
【0022】
本発明の樹脂組成物における反応性不飽和結合を有するスチレン系コポリマーの含有量は、特に限定されないが、相溶性と誘電特性とを両立させる観点から樹脂成分(固形分)の合計量100重量部に対して、5重量部以上75重量部以下が好ましく、より好ましくは10重量部以上65重量部以下、さらに好ましくは15重量部以上55重量部以下、特に好ましくは20重量部以上43重量部以下である。
【0023】
本発明の樹脂組成物における重量平均分子量30000以上のアリーレンエーテル化合物と、反応性不飽和結合を分子中に有するスチレン系コポリマーの含有比は特に限定されないが、密着性、相溶性及び誘電特性のバランスを取る観点から、重量平均分子量30000以上のアリーレンエーテル化合物の含有量をP、反応性不飽和結合を分子中に有するスチレン系コポリマーの含有量をSとした時に、SをPで割って得られる重量比(S/P比)が0.2以上2.0以下であることが好ましく、より好ましくは0.4以上1.8以下、さらに好ましくは0.6以上1.7以下、特に好ましくは1.0以上1.5以下である。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、樹脂やポリマーに一般的に添加されるような添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例としては、反応開始剤、反応促進剤、難燃剤、シランカップリング剤、分散剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、無機フィラーを更に含んでいてもよい。無機フィラーの例としては、シリカ、タルク、アルミナ、窒化ホウ素(BN)等が挙げられる。無機フィラーは、樹脂組成物中に分散可能であれば特に限定されるものではないが、分散性及び誘電特性の観点からシリカが好ましい。無機フィラーの平均粒径D50は、好ましくは0.1μm以上3.0μm以下、より好ましくは0.3μm以上2.0μm以下である。このような範囲内の平均粒径D50であると、界面(すなわち比表面積)が少なくなることで誘電特性への悪影響を低減できるとともに、層間絶縁性の向上や、樹脂層中に粗大粒子が無くなることになる等、電子材料として好ましい諸特性をもたらす。無機フィラーは粉砕粒子、球状粒子、コアシェル粒子、中空粒子等、いかなる形態であってもよい。無機フィラーの含有量は、任意の量であってよく特に限定されないが、フィラー分散の容易性、樹脂組成物の流動性等の観点から、上述した樹脂成分(固形分)の合計量100重量部に対して、0重量部以上150重量部以下が好ましく、より好ましくは10重量部以上130重量部以下、さらに好ましくは20重量部以上100重量部以下、特に好ましくは30重量部以上80重量部以下である。ここで、樹脂成分(固形分)の合計量100重量部には、ポリマーや樹脂のみならず、反応開始剤等、樹脂の一部を構成することになる添加剤の重量も算入されるものとし、無機フィラーは算入されないものとする。
【0026】
樹脂付銅箔
本発明の樹脂組成物は樹脂付銅箔の樹脂として用いられるのが好ましい。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、銅箔と、銅箔の少なくとも一方の面に設けられた樹脂組成物からなる樹脂層とを含む、樹脂付銅箔が提供される。典型的には、樹脂組成物は樹脂層の形態であって、樹脂組成物を、銅箔に乾燥後の樹脂層の厚さが所定の値となるようにグラビアコート方式を用いて塗工し乾燥させ、樹脂付銅箔を得る。この塗工の方式については任意であるが、グラビアコート方式の他、ダイコート方式、ナイフコート方式等を採用することができる。その他、ドクターブレードやバーコータ等を使用して塗工することも可能である。
【0027】
前述のとおり、本発明の樹脂組成物は、優れた誘電特性(例えば10GHzでの低い誘電正接)、低粗度表面(例えば低粗度銅箔の表面)に対する高い密着性、耐熱性、及び優れた耐水信頼性を呈する。したがって、樹脂付銅箔にはそのような樹脂組成物によってもたらされる各種利点を有する。例えば、樹脂付銅箔は、樹脂層が硬化された状態において、JIS C 6481-1996に準拠して測定される、樹脂層及び銅箔間の剥離強度(すなわち常態剥離強度)の下限値が、好ましくは0.8kgf/cm以上、より好ましくは1.0kgf/cm以上、特に好ましくは1.2kgf/cm以上である。ピール強度は高い方が良く、その上限値は特に限定されないが、典型的には2.0kgf/cm以下である。
【0028】
樹脂層の厚さは、特に限定されないが、ピール強度を確保するためには厚い方が好ましく、積層基板の厚さは薄い方が好ましいため、適切な厚さが存在する。樹脂層の厚さは、好ましくは1μm以上50μm以下、より好ましくは1.5μm以上30μm以下、特に好ましくは2μm以上20μm以下、最も好ましくは2.5μm以上10μm以下である。これらの範囲内であることにより、上述した本発明の諸特性をより効果的に実現でき、樹脂組成物の塗布により樹脂層の形成がしやすい。
【0029】
銅箔は、電解製箔又は圧延製箔されたままの金属箔(いわゆる生箔)であってもよいし、少なくともいずれか一方の面に表面処理が施された表面処理箔の形態であってもよい。表面処理は、金属箔の表面において何らかの性質(例えば防錆性、耐湿性、耐薬品性、耐酸性、耐熱性、及び基板との密着性)を向上ないし付与するために行われる各種の表面処理でありうる。表面処理は金属箔の片面に行われてもよいし、金属箔の両面に行われてもよい。銅箔に対して行われる表面処理の例としては、防錆処理、シラン処理、粗化処理、バリア形成処理等が挙げられる。
【0030】
銅箔の樹脂層側の表面における、JIS B0601-2001に準拠して測定される十点平均粗さRzjisが2.0μm以下であるのが好ましく、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下、特に好ましくは0.7μm以下、最も好ましくは0.5μm以下である。このような範囲内であると、高周波用途における伝送損失を望ましく低減できる。すなわち、高周波になるほど顕著に現れる銅箔の表皮効果によって増大しうる銅箔に起因する導体損失を低減して、伝送損失の更なる低減を実現することができる。銅箔の樹脂層側の表面における十点平均粗さRzjisの下限値は特に限定されないが、樹脂層との密着性向上及び耐熱性の観点からRzjisは0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上である。
【0031】
銅箔の厚さは特に限定されないが、0.1μm以上100μm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.5μm以上70μm以下、さらに好ましくは1μm以上50μm以下、特に好ましくは1.5μm以上30μm以下、最も好ましくは2μm以上20μm以下である。これらの範囲内の厚さであると、微細な回路形成が可能との利点がある。もっとも、銅箔の厚さが例えば10μm以下となる場合などは、本発明の樹脂付銅箔は、ハンドリング性向上のために剥離層及びキャリアを備えたキャリア付銅箔の銅箔表面に樹脂層を形成したものであってもよい。
【0032】
プリグレグ等の基材は、樹脂層との密着性を確保する観点から、分子中に反応性不飽和結合を有する樹脂を含むことが好ましく、また、樹脂層との相溶性の観点から、ポリフェニレンエーテル樹脂を含むことが好ましい。分子中に反応性不飽和結合を有する樹脂を含むこと、及びポリフェニレンエーテル樹脂を含むことの双方を満たす基材の市販例としては、パナソニック株式会社製のMEGTRON6シリーズ、MEGTRON7シリーズ、MEGTRON8シリーズ等が挙げられる。ここに例示したような低誘電率かつ低誘電正接の基材は、従来樹脂層ひいては低粗度銅箔との密着性の確保が難しかったが、本発明の樹脂組成物を用いることにより、十分な密着性を確保することができる。したがって、本発明の好ましい態様によれば、基材(例えばプリプレグ)と、該基材の片面又は両面に設けられる本発明の樹脂組成物を含む樹脂層(又は本発明の樹脂付銅箔)とを備えた積層体が提供される。
【0033】
プリント配線板
本発明の樹脂組成物ないし樹脂付銅箔はプリント配線板の作製に用いられるのが好ましい。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、上記樹脂付銅箔を備えたプリント配線板、又は上記樹脂付銅箔を用いて作製されたプリント配線板が提供される。この場合、上記樹脂付銅箔の樹脂層は硬化されている。本態様によるプリント配線板は、絶縁樹脂層と、銅層とがこの順に積層された層構成を含んでなる。プリント配線板は公知の層構成が採用可能である。プリント配線板に関する具体例としては、プリプレグの片面又は両面に本発明の樹脂付銅箔を接着させ硬化した積層体とした上で回路形成した片面又は両面プリント配線板や、これらを多層化した多層プリント配線板等が挙げられる。また、他の具体例としては、樹脂フィルム上に本発明の樹脂付銅箔を形成して回路を形成するフレキシブルプリント配線板、COF、TABテープ、ビルドアップ多層配線板、半導体集積回路上へ樹脂付銅箔の積層と回路形成を交互に繰りかえすダイレクト・ビルドアップ・オン・ウェハー等が挙げられる。特に、本発明の樹脂付銅箔は、ネットワーク機器における高周波デジタル通信用のプリント配線板用の絶縁層及び導体層として好ましく適用可能である。そのようなネットワーク機器の例としては、(i)基地局内サーバー、ルーター等、(ii)企業内ネットワーク、(iii)高速携帯通信の基幹システム等が挙げられる。
【実施例】
【0034】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0035】
例1~12
(1)樹脂ワニスの調製
まず、樹脂ワニス用原料成分として、以下に示されるアリーレンエーテル化合物、スチレン系コポリマー、添加剤及び無機フィラーを用意した。
<アリーレンエーテル化合物>
‐OPE-2St-1200(三菱ガス化学株式会社製、分子両末端にスチリル基を有するフェニレンエーテル化合物、数平均分子量約1200)
‐OPE-2St-2200(三菱ガス化学株式会社製、分子両末端にスチリル基を有するフェニレンエーテル化合物、数平均分子量約2200)
‐PME-82(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、分子中に無水マレイン酸構造を含むフェニレンエーテル化合物、重量平均分子量約56000)
<スチレン系コポリマー>
‐セプトン(R)V9461(株式会社クラレ製、スチリル基を有する水添スチレン・4-メチルスチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体、重量平均分子量約296000)
‐エポフレンド AT501(株式会社ダイセル製、1,2-ビニル基を有するエポキシ化スチレン系コポリマー、重量平均分子量約94000)
‐TR2003(JSR株式会社製、スチレンブタジエンブロック共重合体、重量平均分子量約95700)
‐タフテック(R)MP10(旭化成株式会社製、水添スチレンブタジエンブロック共重合体、アミン変性品、重量平均分子量約60000)
<添加剤(反応開始剤)>
‐パーブチルP(日油株式会社製、過酸化物)
<無機フィラー>
‐SC4050-MOT(株式会社アドマテックス製、シリカスラリー、平均粒径D50:1.0μm、表面ビニルシラン処理)
【0036】
なお、上述したアリーレンエーテル化合物及びスチレン系コポリマーの数平均分子量及び重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)法を用いて以下の条件で測定して得られた値である。上記の各分子量はポリスチレン基準の相対値である。
・検出器:示差屈折率検出器RI(東ソー株式会社製、RI-8020、感度32)
・カラム:TSKgel GMHHR-M、2本(7.8mm×30cm、東ソー株式会社製)
・溶媒:クロロホルム
・流速:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・注入量:0.2mL
・標準試料:東ソー株式会社製、単分散ポリスチレン
・データ処理:株式会社東レリサーチセンター製、GPCデータ処理システム
【0037】
表1に示される配合比(重量比)で上記原料成分を丸型フラスコに測り取り、原料成分濃度が13重量%又は17重量%となるように混合溶媒を加えた。この混合溶媒は、樹脂ワニス中の有機溶媒の比率が85重量%のトルエン、及び15重量%のメチルエチルケトンとなるような混合比率で加えた。原料成分と混合溶媒を入れた丸型フラスコに、マントルヒーター、撹拌羽及び還流冷却管付フラスコ蓋を設置し、撹拌をしながら60℃まで昇温した後、60℃で2時間撹拌を継続して原料成分を溶解ないし分散させた。撹拌後得られた樹脂ワニスを放冷した。こうして、原料成分濃度が13重量%の樹脂ワニスと、原料成分濃度が17重量%の樹脂ワニスとをそれぞれ得た。
【0038】
(2)電解銅箔の作製
電解銅箔を以下の方法で作製した。硫酸銅溶液中で、陰極にチタン製の回転電極(表面粗さRa:0.20μm)、陽極に寸法安定性陽極(DSA)を用い、溶液温度45℃、電流密度55A/dm2で電解し、原箔としての電解銅箔を作製した。この硫酸銅溶液の組成は、銅濃度80g/L、フリー硫酸濃度140g/L、ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド濃度30mg/L、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体濃度50mg/L、塩素濃度40mg/Lとした。原箔の電解液面側の表面に、粒子状突起を形成させた。粒子状突起の形成は、硫酸銅溶液(銅濃度:13g/L、フリー硫酸濃度55g/L、9-フェニルアクリジン濃度140mg/L、塩素濃度:35mg/L)中で、溶液温度30℃、電流密度50A/dm2の条件で電解することにより行った。
【0039】
こうして得られた原箔の電解液面側に対して、以下に示される条件で、亜鉛-ニッケル被膜形成、クロメート層形成、及びシラン層形成を順次行った。
<亜鉛-ニッケル被膜形成>
・ピロリン酸カリウム濃度:80g/L
・亜鉛濃度:0.2g/L
・ニッケル濃度:2g/L
・液温:40℃
・電流密度:0.5A/dm2
<クロメート層形成>
・クロム酸濃度:1g/L、pH11
・溶液温度:25℃
・電流密度:1A/dm2
<シラン層形成>
・シランカップリング剤:3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3g/Lの水溶液)
・液処理方法:シャワー処理
【0040】
この電解銅箔の表面処理面は、十点平均粗さRzjisが0.5μm(JIS B0601-2001準拠)であり、粒子状突起は、走査型電子顕微鏡画像による平均粒子径が100nmであり、粒子密度は205個/μm2であった。表面処理面も含む電解銅箔の合計厚さは18μmであった。
【0041】
(3)樹脂フィルムの作製
得られた原料成分濃度が17重量%の樹脂ワニスを離型フィルム(AGC株式会社製「アフレックス(R)」)の表面にコンマ塗工機を用いて、乾燥後の樹脂の厚さが20μmとなるように塗布し、150℃で3分間オーブンにて乾燥させ、B-stage樹脂を得た。得られたB-stage樹脂から上記離型フィルムを剥がし、B-stage樹脂のみを2枚積層させ、200℃、90分間、20kgf/cm2の条件下で真空プレス成形を施して、厚さ40μmの樹脂フィルムを得た。
【0042】
(4)片面積層基板の作製
得られた原料成分濃度が13重量%の樹脂ワニスを上記電解銅箔の表面にグラビア塗工機を用いて、乾燥後の樹脂の厚さが4μmとなるように塗布し、150℃、2分間オーブンにて乾燥させて、樹脂付銅箔を得た。複数枚のプリプレグ(パナソニック株式会社製、MEGTRON7シリーズ「R-5680」)を重ねて0.2mmの厚さとし、その上に、上記樹脂付銅箔を、樹脂がプリプレグに当接するように積層し、190℃、90分間、30kgf/cm2の条件下で真空プレス成形を施して片面積層基板を得た。
【0043】
(5)各種評価
作製した樹脂フィルム及び片面積層基板について以下の評価を行った。なお、技術水準を鑑みて各評価基準は、評価A:特に優れている、評価B:優れている、評価C:実用上使用可能、評価D:使用不可能、を意味するものとした。
【0044】
<評価1:剥離強度>
片面積層基板に配線幅10mm、配線厚さ18μmの銅配線をサブトラクティブ工法により形成し、JIS C 6481-1996に準拠して剥離強度を常温(例えば25℃)で測定した。測定は5回実施し、その平均値を剥離強度の値とし、以下の基準に従い評価した。なお、ここで測定される剥離強度は、プリプレグ/樹脂間の界面剥離、樹脂の凝集破壊、樹脂層内の相界面剥離、及び樹脂/銅箔間の界面剥離の4つの剥離モードが反映された値であり、その値が高いほどプリプレグ等の基材への密着性、樹脂層の強度、及び低粗度箔への樹脂の密着性に優れることを意味している。以下の基準に当てはめた結果は表1に示されるとおりであった。
‐評価A:1.2kgf/cm以上
‐評価B:1.0kgf/cm以上でかつ1.2kgf/cm未満
‐評価C:0.8kgf/cm以上でかつ1.0kgf/cm未満
‐評価D:0.8kgf/cm未満
【0045】
<評価2:耐熱性>
片面積層基板を5cm×5cmのサイズの試験片に切り出し、288℃のはんだ浴に10分間浮かべて膨れの発生有無を観察した。試験片は4枚作製し評価した。以下の基準に当てはめた結果は表1に示されるとおりであった。
‐評価A:全ての試験片で膨れの発生が無い
‐評価C:試験片の1枚以上に直径5mm未満の膨れが1か所以上3か所未満発生
‐評価D:試験片の1枚以上に直径5mm未満の膨れが3か所以上発生、又は
試験片の1枚以上に直径5mm以上の膨れが1か所以上発生
【0046】
<評価3:耐水信頼性>
片面積層基板を5cm×6cmのサイズの試験片に切り出し、その一端の1cm×5cmの銅をエッチング除去して持ち手とし、試験片1枚あたり5cm×5cmの銅面積を有する試験片を4枚作製した。試験片の持ち手を冶具に挟み、沸騰した水に沈めて3時間煮沸処理をした。煮沸処理の後、試験片の水滴を拭き取り、260℃のはんだ浴に20秒ディッピング処理し、取り出した試験片の膨れの発生有無を観察した。試験片は4枚作製し評価した。以下の基準に当てはめた結果は表1に示されるとおりであった。
‐評価A:全ての試験片で膨れの発生が無い
‐評価C:試験片の1枚以上に直径5mm未満の膨れが1か所以上3か所未満発生
‐評価D:試験片の1枚以上に直径5mm未満の膨れが3か所以上発生、又は
試験片の1枚以上に直径5mm以上の膨れが1か所以上発生
【0047】
<評価4:誘電正接>
樹脂フィルムについて、摂動式空洞共振器法により、10GHzにおける誘電正接を測定した。この測定は、樹脂フィルムを共振器のサンプルサイズに合わせて切断した後、測定装置(KEYCOM製共振器及びKEYSIGHT製ネットワークアナライザー)を用い、JIS R 1641に準拠して行った。測定された誘電正接を以下の基準で格付け評価した。結果は表1に示されるとおりであった。
‐評価A:10GHzにおける誘電正接が0.0015未満
‐評価B:10GHzにおける誘電正接が0.0015以上0.0020未満
‐評価C:10GHzにおける誘電正接が0.0020以上0.0040未満
‐評価D:10GHzにおける誘電正接が0.0040以上
【0048】