(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】顕微鏡対物レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 21/02 20060101AFI20240905BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G02B21/02
G02B21/00
(21)【出願番号】P 2023203801
(22)【出願日】2023-12-01
【審査請求日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】202310646118.0
(32)【優先日】2023-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520128543
【氏名又は名称】エーエーシー オプティクス (チャンジョウ)カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】寺西孝亮
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-293141(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114578538(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/00 - 21/36
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡対物レンズであって、
前記顕微鏡対物レンズは、出射側から物体側へ順次に、
正の屈折力を有する第1レンズ、負の屈折力を有する第2レンズ、正の屈折力を有する第3レンズ、正の屈折力を有する第4レンズ、負の屈折力を有する第5レンズ、および正の屈折力を有する第6レンズ
から構成され、
前記第6レンズの出射面の中心曲率半径をR11とし、前記第6レンズの物体側面の中心曲率半径をR12とし、前記顕微鏡対物レンズの物体面から前記第6レンズの物体側面までの軸上距離をWDとし、前記顕微鏡対物レンズの物体面から前記第1レンズの出射面までの軸上距離をTTLとし、前記第1レンズの出射面の中心曲率半径をR1とし、前記第1レンズの屈折率をn1とし、前記顕微鏡対物レンズの焦点距離をfとし、前記第3レンズの軸上厚さをd5とし、前記第2レンズから前記第3レンズまでの軸上距離をd4とし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする顕微鏡対物レンズ。
-5.00≦R11/R12≦-1.50
0.40≦WD/TTL≦0.60
1.00≦R1/((n1-1)*f)≦4.00
2.00≦d5/d4≦6.00
【請求項2】
前記第5レンズの焦点距離をf5とし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
-0.30≦f5/f≦-0.20
【請求項3】
前記第4レンズの出射面の中心曲率半径をR7とし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
0.70≦R7/f≦2.10
【請求項4】
前記第1レンズの出射面は近軸位置で凸面であり、前記第1レンズの物体側面は近軸位置で凸面であり、
前記第1レンズの出射面の中心曲率半径をR1とし、前記第1レンズの物体側面の中心曲率半径をR2とし、前記第1レンズの軸上厚さをd1とし、前記第1レンズの焦点距離をf1とし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
0.35≦f1/f≦1.08
-0.71≦(R1+R2)/(R1-R2)≦0.97
0.02≦d1/TTL≦0.11
【請求項5】
前記第2レンズの出射面は近軸位置で凹面であり、前記第2レンズの物体側面は近軸位置で凹面であり、
前記第2レンズの出射面の中心曲率半径をR3とし、前記第2レンズの物体側面の中心曲率半径をR4とし、前記第2レンズの焦点距離をf2とし、前記第2レンズの軸上厚さをd3とし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
-0.75≦f2/f≦-0.22
-0.56≦(R3+R4)/(R3-R4)≦0
0.01≦d3/TTL≦0.07
【請求項6】
前記第3レンズの物体側面は近軸位置で凸面であり、
前記第3レンズの出射面の中心曲率半径をR5とし、前記第3レンズの物体側面の中心曲率半径をR6とし、前記第3レンズの焦点距離をf3とし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
0.26≦f3/f≦0.94
0.43≦(R5+R6)/(R5-R6)≦1.52
0.04≦d5/TTL≦0.17
【請求項7】
前記第4レンズの出射面は近軸位置で凸面であり、前記第4レンズの物体側面は近軸位置で凸面であり、
前記第4レンズの焦点距離をf4とし、前記第4レンズの出射面の中心曲率半径をR7とし、前記第4レンズの物体側面の中心曲率半径をR8とし、前記第4レンズの軸上厚さをd7とし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
0.36≦f4/f≦1.30
0≦(R7+R8)/(R7-R8)≦0.86
0.02≦d7/TTL≦0.12
【請求項8】
前記第5レンズの出射面は近軸位置で凹面であり、前記第5レンズの物体側面は近軸位置で凹面であり、
前記第5レンズの出射面の中心曲率半径をR9とし、前記第5レンズの物体側面の中心曲率半径をR10とし、前記第5レンズの軸上厚さをd9とし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
-1.34≦(R9+R10)/(R9-R10)≦0.03
0.01≦d9/TTL≦0.15
【請求項9】
前記第6レンズの出射面は近軸位置で凸面であり、前記第6レンズの物体側面は近軸位置で凸面であり、
前記第6レンズの焦点距離をf6とし、前記第6レンズの軸上厚さをd11とし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
0.23≦f6/f≦0.81
0.03≦d11/TTL≦0.18
【請求項10】
前記第1レンズ、前記第2レンズ、前記第3レンズ、前記第4レンズ、前記第5レンズ、前記第6レンズは、いずれもガラス製である、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズ分野に関し、特に顕微鏡などの装置で使用するのに適した顕微鏡対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顕微鏡レンズの需要は高まっているが、一般的な顕微鏡レンズでは光学構造上の制約により、微視的な範囲に収差が発生する。一方、顕微鏡レンズは複数枚のレンズで構成されるため、その長さは必然的に影響を受ける。また、顕微鏡レンズの構造が長いため作動距離を短くし、拡大の倍率も作動距離の影響を受け、操作者の使用に不利である。
【0003】
技術の発展とユーザニーズの多様化に伴い、顕微鏡レンズの観察品質に対する科学研究の要求はますます高まり、優れた光学特性、低歪み、高倍率、長い作動距離の特性を有する顕微鏡レンズが切実に求められている。
【発明の概要】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、高い結像性能を得ながら、低歪み、長作動距離の要求を満たすことができる顕微鏡対物レンズを提供することである。
【0005】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、顕微鏡対物レンズを提供する。前記顕微鏡対物レンズは、出射側から物体側へ順次に、正の屈折力を有する第1レンズ、負の屈折力を有する第2レンズ、正の屈折力を有する第3レンズ、正の屈折力を有する第4レンズ、負の屈折力を有する第5レンズ、および正の屈折力を有する第6レンズを備え、前記第6レンズの出射面の中心曲率半径をR11とし、前記第6レンズの物体側面の中心曲率半径をR12とし、前記顕微鏡対物レンズの物体面から前記第6レンズの物体側面までの軸上距離をWDとし、前記顕微鏡対物レンズの物体面から前記第1レンズの出射面までの軸上距離をTTLとし、前記第1レンズの出射面の中心曲率半径をR1とし、前記第1レンズの屈折率をn1とし、前記顕微鏡対物レンズの焦点距離をfとし、前記第3レンズの軸上厚さをd5とし、前記第2レンズから前記第3レンズまでの軸上距離をd4とし、次の関係式を満たす:-5.00≦R11/R12≦-1.50;0.40≦WD/TTL≦0.60;1.00≦R1/((n1-1)*f)≦4.00;2.00≦d5/d4≦6.00。
【0006】
好ましくは、前記第5レンズの焦点距離をf5とし、次の関係式を満たす:-0.30≦f5/f≦-0.20。
【0007】
好ましくは、前記第4レンズ出射面の中心曲率半径はR7であり、次の関係を満たす:0.70≦R7/f≦2.10。
【0008】
好ましくは、前記第1レンズの出射面は近軸位置で凸面であり、前記第1レンズの物体側面は近軸位置で凸面であり、前記第1レンズの出射面の中心曲率半径をR1とし、前記第1レンズの物体側面の中心曲率半径をR2とし、前記第1レンズの軸上厚さをd1とし、前記第1レンズの焦点距離をf1とし、次の関係式を満たす:0.35≦f1/f≦1.08;-0.71≦(R1+R2)/(R1-R2)≦0.97;0.02≦d1/TTL≦0.11。
【0009】
好ましくは、前記第2レンズの出射面は近軸位置で凹面であり、前記第2レンズの物体側面は近軸位置で凹面であり、前記第2レンズの出射面の中心曲率半径をR3とし、前記第2レンズの物体側面の中心曲率半径をR4とし、前記第2レンズの焦点距離をf2とし、前記第2レンズの軸上厚さをd3とし、次の関係式を満たす:-0.75≦f2/f≦-0.22;-0.56≦(R3+R4)/(R3-R4)≦0;0.01≦d3/TTL≦0.07。
【0010】
好ましくは、前記第3レンズの物体側面は近軸位置で凸面であり、前記第3レンズの出射面の中心曲率半径をR5とし、前記第3レンズの物体側面の中心曲率半径をR6とし、前記第3レンズの焦点距離をf3とし、次の関係式を満たす:0.26≦f3/f≦0.94;0.43≦(R5+R6)/(R5-R6)≦1.52;0.04≦d5/TTL≦0.17。
【0011】
好ましくは、前記第4レンズの出射面は近軸位置で凸面であり、前記第4レンズの物体側面は近軸位置で凸面であり、前記第4レンズの焦点距離をf4とし、前記第4レンズの出射面の中心曲率半径をR7とし、前記第4レンズの物体側面の中心曲率半径をR8とし、前記第4レンズの軸上厚さをd7とし、次の関係式を満たす:0.36≦f4/f≦1.30;0≦(R7+R8)/(R7-R8)≦0.86;0.02≦d7/TTL≦0.12。
【0012】
好ましくは、前記第5レンズの出射面は近軸位置で凹面であり、前記第5レンズの物体側面は近軸位置で凹面であり、前記第5レンズの出射面の中心曲率半径をR9とし、前記第5レンズの物体側面の中心曲率半径をR10とし、前記第5レンズの軸上厚さをd9とし、次の関係式を満たす:-1.34≦(R9+R10)/(R9-R10)≦0.03;0.01≦d9/TTL≦0.15。
【0013】
好ましくは、前記第6レンズの出射面は近軸位置で凸面であり、前記第6レンズの物体側面は近軸位置で凸面であり、前記第6レンズの焦点距離をf6とし、前記第6レンズの軸上厚さをd11とし、次の関係式を満たす:0.23≦f6/f≦0.81;0.03≦d11/TTL≦0.18。
【0014】
好ましくは、前記第1レンズ、前記第2レンズ、前記第3レンズ、前記第4レンズ、前記第5レンズ、前記第6レンズは、いずれもガラス製である。
【0015】
本発明の有益な効果は、本発明による顕微鏡対物レンズが優れた光学性能を有しながら、低歪み、4.7~5倍の拡大倍率、長い作動距離の特性を有し、特に光学顕微鏡対物レンズでの使用に適することである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズの構成模式図である。
【
図2】
図1に示めされる顕微鏡対物レンズの軸方向収差模式図である。
【
図3】
図1に示めされる顕微鏡対物レンズの倍率収差模式図である。
【
図4】
図1に示される顕微鏡対物レンズの像面湾曲および歪みの模式図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズの構成模式図である。
【
図6】
図5に示めされる顕微鏡対物レンズの軸方向収差模式図である。
【
図7】
図5に示めされる顕微鏡対物レンズの倍率収差模式図である。
【
図8】
図5に示される顕微鏡対物レンズの像面湾曲および歪みの模式図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る顕微鏡対物レンズの構成模式図である。
【
図10】
図9に示めされる顕微鏡対物レンズの軸方向収差模式図である。
【
図11】
図9に示めされる顕微鏡対物レンズの倍率収差模式図である。
【
図12】
図9に示される顕微鏡対物レンズの像面湾曲および歪みの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態における技術的解決策を明確かつ完全に説明するが、説明した実施形態は本発明の実施形態の一部に過ぎず、実施形態の全てではないことは明らかである。本発明における実施形態に基づいて、当業者が創作的な労作を行うことなく得られる他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲に属する。
【0018】
(第1実施形態)
添付図面を参照すると、本発明は、顕微鏡対物レンズを提供する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズ10を示し、この顕微鏡対物レンズ10は、6つのレンズを備える。具体的には、前記顕微鏡対物レンズ10は、出射側から物体側へ順次に、絞りST、第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5、第6レンズL6、および物体面を備える。
【0019】
前記第6レンズL6の出射面の中心曲率半径をR11とし、前記第6レンズL6の物体側面の中心曲率半径をR12と定義し、次の関係式を満たす:-5.00≦R11/R12≦-1.50。第6レンズL6の形状を規定することにより、この範囲では出射光線のスムーズな移行に寄与し、画質向上に有利である。
【0020】
前記顕微鏡対物レンズ10の物体面から前記第6レンズL6の物体側面までの軸上距離をWDとし、すなわち、作動距離をWDとし、前記顕微鏡対物レンズの物体面から前記第1レンズの出射面までの軸上距離をTTLとし、すなわち、光学全長をTTLと定義し、次の関係式を満たす:0.40≦WD/TTL≦0.60。作動距離WDは、被観測物から物体に最も近い物体側面までの距離であり、TTLは、物体から対物レンズから最遠端レンズまでの距離である。条件式の下限値より低いと、顕微鏡対物レンズと物体との距離が狭すぎて、この対物レンズを用いた顕微鏡の操作性が悪くなる。逆に、条件式の上限値より高いと、レンズ部分の占めるスペースが不足するため、配置できるレンズの厚さが制限され、球面収差や色収差の補正が困難になる。
【0021】
前記第1レンズL1の出射面の中心曲率半径をR1とし、前記第1レンズL1の屈折率をn1とし、前記顕微鏡対物レンズ10の焦点距離をfと定義し、次の関係式を満たす:1.00≦R1/((n1-1)*f)≦4.00。この範囲内で、第1レンズの形状、材料屈折率、顕微鏡対物レンズの焦点距離の関係を合理的に制御することにより、出射光線がスムーズになるように光線の流れを制御することができる。
【0022】
前記第3レンズL3の軸上厚さをd5とし、前記第2レンズL2から第3レンズL3までの軸上距離をd4と定義し、次の関係式を満たす:2.00≦d5/d4≦6.00。第3レンズL3の厚さと第2レンズL2と第3レンズL3との間の空気間隔の比を規定することにより、条件式の範囲内でレンズの組み立てに有利である。
【0023】
本発明に係る顕微鏡対物レンズ10の焦点距離、各レンズの焦点距離、顕微鏡対物レンズの光学全長、作動距離、軸上厚さ、開口数、各レンズのアッベ数、および中心曲率半径が上記関係式を満足すると、顕微鏡対物レンズ10を低歪み、4.7~5倍の拡大倍率、および長作動距離の設計要件を満足させることができる。
【0024】
また、第5レンズの焦点距離をf5と定義し、次の関係式を満たす:-0.30≦f5/f≦-0.20。第5レンズL5の焦点距離と顕微鏡対物レンズ10の焦点距離の比を規定することにより、条件式の範囲内において、システムのディオプトリ(Focal power)を合理的に配分することにより、顕微鏡対物レンズの像分散・歪みの補正に有利し、歪みは|Distortion|≦0.25%となり、暗角の発生を効果的に低減することができる。
【0025】
前記第4レンズL4の出射面の中心曲率半径をR7と定義し、次の関係式を満たす:0.70≦R7/f≦2.10。第4レンズL4の像側面の形状を規定することにより、条件式の範囲内で光のスムーズな移行に寄与し、この範囲で顕微鏡対物レンズの色収差を効率よく補正でき、|LC|≦0.6μmとなる。
【0026】
本実施形態では、第1レンズL1の出射面は近軸位置で凸面であり、第1レンズL1の物体側面は近軸位置で凸面である。第1レンズL1は正の屈折力を有する。他の任意の実施形態において、第1レンズL1の出射面および物体側面は、他の凹面や凸面の分布で設置されてもよい。
【0027】
第1レンズL1の焦点距離をf1と定義し、次の関係式を満たし:0.35≦f1/f≦1.08、第1レンズL1の正の屈折力を規定する。この範囲内で、顕微鏡対物レンズの光学全長を制御するのに有利である。また、好ましくは、0.56≦f1/f≦0.87を満たす。
【0028】
第1レンズL1の出射面の中心曲率半径をR1とし、第1レンズL1の物体側面の中心曲率半径をR2と定義し、次の関係式を満たす:-0.71≦(R1+R2)/(R1-R2)≦0.97。第1レンズがシステム球面収差を効率よく補正できるように、第1レンズの形状を適切に制御する。また、好ましくは、-0.44≦(R1+R2)/(R1-R2)≦0.78を満たす。
【0029】
第1レンズL1の軸上厚さをd1と定義し、次の関係式を満たす:0.02≦d1/TTL≦0.11。これにより、顕微鏡対物レンズの光学全長を制御するのに有利である。また、好ましくは、0.04≦d1/TTL≦0.09を満たす。
【0030】
本実施形態において、好ましくは、第2レンズL2の出射面は近軸位置で凹面であり、第2レンズL2の物体側面は近軸位置で凹面である。第2レンズL2は負の屈折力を有する。他の任意の実施形態では、第2レンズL2の出射面および物体側面は、他の凹面や凸面の分布で設置されてもよい。
【0031】
また、第2レンズL2の焦点距離をf2とし、次の関係式を満たす:-0.75≦f2/f≦-0.22。第2レンズL2の負のディオプトリを適正な範囲に制御することで、光学システムの収差を補正するのに有利である。また、好ましくは、-0.47≦f2/f≦-0.28を満たす。
【0032】
第2レンズL2の出射面の中心曲率半径をR3とし、第2レンズL2の物体側面の中心曲率半径をR4と定義し、次の関係式を満たす:-0.56≦(R3+R4)/(R3-R4)≦0。これにより、第2レンズL2の形状が規定され、その範囲内であれば、軸上色収差の問題を改善するのに有利である。また、好ましくは、-0.35≦(R3+R4)/(R3-R4)≦0を満たす。
【0033】
また、第2レンズL2の軸上厚さをd3とし、次の関係式を満たす:0.01≦d3/TTL≦0.07。これにより、顕微鏡対物レンズの光学全長の制御を容易にする。また、好ましくは、0.02≦d3/TTL≦0.05を満たす。
【0034】
本実施形態において、好ましくは、第3レンズL3の出射面は近軸位置で凸面であり、第3レンズL3の物体側面は近軸位置で凸面である。第3レンズL3は正の屈折力を有する。他の任意の実施形態において、第3レンズL3の出射面および物体側面は、他の凹面や凸面の分布で設置されてもよい。
【0035】
また、第3レンズL3の焦点距離をf3と定義し、次の関係式を満たす:0.26≦f3/f≦0.94。第3レンズL3の正のディオプトリを適正な範囲に制御することで、光学システムの収差を補正するのに有利である。また、好ましくは、0.41≦f3/f≦0.76を満たす。
【0036】
また、第3レンズL3の出射面の中心曲率半径をR5とし、第3レンズL3の物体側面の中心曲率半径をR6と定義し、次の関係式を満たす:0.43≦(R5+R6)/(R5-R6)≦1.52。これにより、第3レンズL3の形状を効果的に制御することができ、第3レンズL3の成形に寄与し、第3レンズL3の表面曲率が過度に大きくなることによる成形不良や応力の発生を回避することができる。また、好ましくは、0.69≦(R5+R6)/(R5-R6)≦1.22を満たす。
【0037】
第3レンズL3の軸上厚さをd5と定義し、次の関係式を満たす:0.04≦d5/TTL≦0.17。これにより、顕微鏡対物レンズの光学全長の制御が容易になる。また、好ましくは、0.06≦d5/TTL≦0.13を満たす。
【0038】
本実施形態では、第4レンズL4の出射面は近軸位置で凸面であり、第4レンズL4の物体側面は近軸位置で凸面である。第4レンズL4は正の屈折力を有する。他の任意の実施形態において、第4レンズL4の出射面および物体側面は、他の凹面や凸面の分布で設置されてもよい。
【0039】
第4レンズL4の焦点距離をf4と定義し、次の関係式を満たす:0.36≦f4/f≦1.30。ディオプトリの合理的な配分により、システムがより良好な結像品質と低感度を有する。また、好ましくは、0.58≦f4/f≦1.04を満たす。
【0040】
また、第4レンズL4の出射面の中心曲率半径をR7とし、第4レンズL4の物体側面の中心曲率半径をR8と定義し、次の関係式を満たす:0≦(R7+R8)/(R7-R8)≦0.86。これにより、第4レンズL4の形状が規定され、この範囲内であれば、軸外画角の収差などの問題を補正するのに有利である。また、好ましくは、0≦(R7+R8)/(R7-R8)≦0.69を満たす。
【0041】
また、第4レンズL4の軸上厚さをd7と定義し、次の関係式を満たす:0.02≦d7/TTL≦0.12。これにより、第4レンズL4の軸上厚さと顕微鏡対物レンズ10の光学全長TTLの比が規定され、顕微鏡対物レンズの光学全長を制御するのに有利である。好ましくは、0.04≦d7/TTL≦0.10を満たす。
【0042】
本実施形態において、好ましくは、第5レンズL5の出射面は近軸位置で凹面であり、第5レンズL5の物体側面は近軸位置で凹面である。第5レンズL5は負の屈折力を有する。他の任意の実施形態において、第5レンズL5の出射面および物体側面は、他の凹面や凸面の分布で設置されてもよい。
【0043】
第5レンズL5の出射面の中心曲率半径をR9とし、第5レンズL5の物体側面の中心曲率半径をR10と定義し、次の関係式を満たす:-1.34≦(R9+R10)/(R9-R10)≦0.03。これにより、第5レンズL5の形状が規定され、この範囲内であれば、軸外画角の収差などの問題を補正するのに有利である。また、好ましくは、-0.84≦(R9+R10)/(R9-R10)≦0.02を満たす。
【0044】
第5レンズL5の軸上厚さをd9と定義し、次の関係式を満たす:0.01≦d9/TTL≦0.15。これにより、顕微鏡対物レンズの光学全長の制御が容易になる。また、好ましくは、0.02≦d9/TTL≦0.12を満たす。
【0045】
本実施形態では、第6レンズL6の出射面は近軸位置で凸面であり、第6レンズL6の物体側面は近軸位置で凸面である。第6レンズL6は正の屈折力を有する。他の任意の実施形態では、第6レンズL6の出射面および物体側面は、他の凹面や凸面の分布で設置されてもよい。
【0046】
第6レンズL6の焦点距離をf6とし、次の関係式を満たす:0.23≦f6/f≦0.81。ディオプトリの合理的な配分により、システムがより良好な結像品質と低感度を有する。また、好ましくは、0.37≦f6/f≦0.65を満たす。
【0047】
第6レンズL6の軸上厚さをd11と定義し、次の関係式を満たす:0.03≦d11/TTL≦0.18。これにより、第6レンズL6の軸上厚さと顕微鏡対物レンズ10の光学全長TTLの比が規定され、顕微鏡対物レンズの光学全長を制御するのに有利である。また、好ましくは、0.05≦d11/TTL≦0.15を満たす。
【0048】
本実施形態では、顕微鏡対物レンズ10の光学全長TTLは95mm以下である。
【0049】
本実施形態では、顕微鏡対物レンズ10の視野角は6.40°以上である。
【0050】
本実施形態では、顕微鏡対物レンズ10の像高は2.40mm以上である。
【0051】
本実施形態では、前記第1レンズ、前記第2レンズ、前記第3レンズ、前記第4レンズ、前記第5レンズ、および前記第6レンズは、いずれもガラス製である。
【0052】
以下、本発明の顕微鏡対物レンズ10を実施例により説明する。なお、焦点距離、軸上距離、中心曲率半径、軸上厚さ位置の単位はmmである。
【0053】
TTL:光学全長(第1レンズL1の出射面から物体面までの軸上距離)、単位はmmである;
【0054】
表1は、本発明の第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズ10の設計データを示す表である。
【0055】
【0056】
ここで、各符号の意味は以下のとおりである。
【0057】
ST:絞り;
R:光学面の中心における曲率半径;
R1:第1レンズL1の出射面の中心曲率半径;
R2:第1レンズL1の物体側面の中心曲率半径;
R3:第2レンズL2の出射面の中心曲率半径;
R4:第2レンズL2の物体側面の中心曲率半径;
R5:第3レンズL3の出射面の中心曲率半径;
R6:第3レンズL3の物体側面の中心曲率半径;
R7:第4レンズL4の出射面の中心曲率半径;
R8:第4レンズL4の物体側面の中心曲率半径;
R9:第5レンズL5の出射面の中心曲率半径;
R10:第5レンズL5の物体側面の中心曲率半径;
R11:第6レンズL6の出射面の中心曲率半径;
R12:第6レンズL6の物体側面の中心曲率半径;
d:レンズの軸上厚さ、レンズ間の軸上距離;
dST:絞りSTから第1レンズの出射面までの軸上距離;
d1:第1レンズL1の軸上厚さ;
d2:第1レンズL1の物体側面から第2レンズL2の出射面までの軸上距離;
d3:第2レンズL2の軸上厚さ;
d4:第2レンズL2の物体側面から第3レンズL3の出射面までの軸上距離;
d5:第3レンズL3の軸上厚さ;
d6:第3レンズL3の物体側面から第4レンズL4の出射面までの軸上距離;
d7:第4レンズL4の軸上厚さ;
d8:第4レンズL4の物体側面から第5レンズL5の出射面までの軸上距離;
d9:第5レンズL5の軸上厚さ;
d10:第5レンズL5の物体側面から第6レンズL6までの軸上距離;
d11:第6レンズL6の軸上厚さ;
d12:第6レンズL6の物体側面から物体面までの軸上距離;
Nd:d線の屈折率;
n1:第1レンズL1のd線の屈折率;
n2:第2レンズL2のd線の屈折率;
n3:第3レンズL3のd線の屈折率;
n4:第4レンズL4のd線の屈折率;
n5:第5レンズL5のd線の屈折率;
n6:第6レンズL6のd線の屈折率;
vd:アッベ数;
v1:第1レンズL1のアッベ数;
v2:第2レンズL2のアッベ数;
v3:第3レンズL3のアッベ数;
v4:第4レンズL4のアッベ数;
v5:第5レンズL5のアッベ数;
v6:第6レンズL6のアッベ数。
【0058】
図2および
図3は、波長486nm、588nm、656nmの光が第1実施形態の顕微鏡対物レンズ10を通過した後の軸方向収差および倍率色収差を示す模式図である。
図4は、波長588nmの光が第1実施形態の顕微鏡対物レンズ10を通過した後の像面湾曲および歪みを示す模式図である。
図4における像面湾曲Sは弧矢方向の像面湾曲であり、Tは子午方向の像面湾曲である。
【0059】
後に現れる表4には、各実施例1、2、3における各種の数値と条件式で規定されたパラメータに対応する値が示めされる。
【0060】
表4に示されるように、第1実施形態は各条件式を満足する。
【0061】
本実施形態において、前記顕微鏡対物レンズ10の入瞳直径ENDPが11.320mmであり、全視野像高IHが2.400mmであり、対角線方向の視野角FOVが6.88°であり、開口数NAが0.14mmであり、作動距離が長く、軸上・軸外色収差が十分に補正され、優れた光学特性を有する。
【0062】
(第2実施形態)
第2実施形態は、基本的に第1実施形態と同様であり、符号は第1実施形態と同じ意味を有する。この第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズ20の構成形態は、
図5をご参照ください。以下、相違点のみを列挙する。
【0063】
表2は、本発明の第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズ20の設計データを示す表である。
【0064】
【0065】
図6および
図7は、波長435nm、588nm、656nmの光が第2実施形態の顕微鏡対物レンズ20を通過した後の倍率収差および軸方向収差を示す模式図である。
図8は、波長588nmの光が第2実施形態の顕微鏡対物レンズ20を通過した後の像面湾曲および歪みを示す模式図である。
図8における像面湾曲Sは弧矢方向の像面湾曲であり、Tは子午方向の像面湾曲である。
【0066】
表4に示されるように、第2実施形態は各条件式を満足する。
【0067】
本実施形態において、前記顕微鏡対物レンズの入瞳直径が10.700mmであり、全視野像高が2.400mmであり、対角線方向の視野角が6.52°であり、開口数NAが0.13mmであり、作動距離が長く、軸上・軸外色収差が十分に補正され、優れた光学特性を有する。
【0068】
(第3実施態様)
第3実施形態は、基本的に第1実施形態と同様であり、符号は第1実施形態と同じ意味を有する。第3実施形態では、第3レンズL3の出射面は近軸位置で凹面である。この第3実施形態に係る顕微鏡対物レンズ30の構成形態は、
図9をご参照ください。以下、相違点のみを列挙する。
【0069】
表3は、本発明の第3実施形態に係る顕微鏡対物レンズ30の設計データを示す表である。
【0070】
【0071】
図10および
図11は、波長435nm、588nm、656nmの光が第3実施形態の顕微鏡対物レンズ30を通過した後の倍率収差および軸方向収差を示す模式図である。
図12は、波長588nmの光が第3実施形態の顕微鏡対物レンズ30を通過した後の像面湾曲および歪みを示す模式図である。
図12における像面湾曲Sは弧矢方向の像面湾曲であり、Tは子午方向の像面湾曲である。
【0072】
表4に示されるように、第3実施形態は各条件式を満足する。
【0073】
本実施形態において、前記顕微鏡対物レンズの入瞳直径が10.240mmであり、全視野像高が2.400mmであり、対角線方向の視野角が6.48°であり、作動距離が長く、開口数NAが0.120mmであり、軸上・軸外色収差が十分に補正され、優れた光学特性を有する。
【0074】
【0075】
上記の各実施形態は、本発明を実現するための具体的な実施形態であり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、実用化において形態および細部において様々な変更を加えることが可能であることは、当業者には理解され得る。
【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、光学レンズ分野に関し、特に顕微鏡などの装置で使用するのに適した顕微鏡対物レンズに関する。
【解決手段】前記顕微鏡対物レンズは、出射側から物体側へ順次に、正の屈折力を有する第1レンズ、負の屈折力を有する第2レンズ、正の屈折力を有する第3レンズ、正の屈折力を有する第4レンズ、負の屈折力を有する第5レンズ、および正の屈折力を有する第6レンズを備え、次の関係式を満たす:-5.00≦R11/R12≦-1.50;0.40≦WD/TTL≦0.60;1.00≦R1/((n1-1)*f)≦4.00;2.00≦d5/d4≦6.00。
【選択図】
図1