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▶ レイテック オプティカル (ジョウシュウ) カンパニーリミテッドの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】顕微鏡対物レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/02 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G02B21/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023204976
(22)【出願日】2023-12-04
【審査請求日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】202310675058.5
(32)【優先日】2023-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520358209
【氏名又は名称】レイテック オプティカル (ジョウシュウ) カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】郭占利
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208224587(CN,U)
【文献】特開平04-009814(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113534429(CN,A)
【文献】特開平03-189608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡対物レンズであって、前記顕微鏡対物レンズは、射出側から物体側に向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、負の屈折力を有する第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズからなり
前記第1レンズの軸上厚みがd1であり、前記第1レンズから第2レンズまでの軸上距離がd2であり、前記第2レンズの軸上厚みがd3であり、前記第1レンズと前記第2レンズの合成焦点距離がf12であり、前記第4レンズ射出面の中心曲率半径がR7であり、前記第4レンズ物体側の中心曲率半径がR8であり、前記第4レンズの焦点距離がf4であり、前記顕微鏡対物レンズの焦点距離がfであり、前記顕微鏡対物レンズの物体面から前記第4レンズの物体側までの軸上距離がWDであり、前記顕微鏡対物レンズの物体面から前記第1レンズの射出面までの軸上距離がTTLであり、次の関係式を満たす、ことを特徴とする顕微鏡対物レンズ。
5.00≦f12/(d1+d2+d3)≦8.00
-4.00≦R7/R8≦-1.50
0.38≦f4/f≦0.53
0.20≦WD/TTL≦0.40
【請求項2】
前記第3レンズ射出面の中心曲率半径をR5とし、前記第3レンズ物体側の中心曲率半径をR6とし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
-0.30≦R5/R6≦-0.20
【請求項3】
開口数をNAとし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
0.045≦NA≦0.065
【請求項4】
前記第1レンズの射出面が近軸位置において凸面であり、前記第1レンズの物体側が近軸位置において凸面であり、前記第1レンズ射出面の中心曲率半径をR1とし、前記第1レンズ物体側の中心曲率半径をR2とし、前記第1レンズの焦点距離をf1とし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
0.12≦f1/f≦0.42
-0.14≦(R1+R2)/(R1-R2)≦0.01
0.01≦d1/TTL≦0.07
【請求項5】
前記第2レンズの射出面が近軸位置において凹面であり、前記第2レンズの物体側が近軸位置において凸面であり、前記第2レンズ射出面の中心曲率半径をR3とし、前記第2レンズ物体側の中心曲率半径をR4とし、前記第2レンズの焦点距離をf2とし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
-1.55≦f2/f≦-0.36
-6.85≦(R3+R4)/(R3-R4)≦-1.87
0.01≦d3/TTL≦0.07
【請求項6】
前記第3レンズの射出面が近軸位置において凹面であり、前記第3レンズの物体側が近軸位置において凹面であり、前記第3レンズの焦点距離をf3とし、前記第3レンズの軸上厚みをd5とし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
-0.42≦f3/f≦-0.12
0.02≦d5/TTL≦0.26
【請求項7】
前記第4レンズの射出面が近軸位置において凸面であり、前記第4レンズの物体側が近軸位置において凸面であり、前記第4レンズの軸上厚みをd7とし、次の関係式を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
0.02≦d7/TTL≦0.31
【請求項8】
前記第1レンズ、前記第2レンズ、前記第3レンズ、および前記第4レンズは、ガラスで構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズの技術分野に属し、特に、顕微鏡装置に適用する顕微鏡対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顕微鏡レンズの需要は高まっている。一般的な顕微鏡レンズは、光学構造上の制約により、微小領域内で歪曲収差が発生する場合がある。複数のレンズを使用すると、レンズの全長が長くなる傾向がある。顕微鏡レンズは長いほど、作動距離が短くなり、倍率は作動距離の影響を受けるため、使用には適しない。
【0003】
技術の発展と需要の多様化に伴い、特に、科学研究において、顕微鏡レンズの結像品質への要求は高まっている。優れた光学特性、低歪み、広い視野での画像が歪まない性能を備えた顕微鏡レンズが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、高い結像性能が得られるとともに、低歪曲収差、広い視野での画像が歪まないという要件を満たすことができる、顕微鏡対物レンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するために、本発明は、顕微鏡対物レンズであって、前記顕微鏡対物レンズは、射出側から物体側に向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、負の屈折力を有する第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズを備え、前記第1レンズの軸上厚みがd1であり、前記第1レンズから第2レンズまでの軸上距離がd2であり、前記第2レンズの軸上厚みがd3であり、前記第1レンズと前記第2レンズの合成焦点距離がf12であり、前記第4レンズ射出面の中心曲率半径がR7であり、前記第4レンズ物体側の中心曲率半径がR8であり、前記第4レンズの焦点距離がf4であり、前記顕微鏡対物レンズの焦点距離がfであり、前記顕微鏡対物レンズの物体面から前記第4レンズの物体側までの軸上距離がWDであり、前記顕微鏡対物レンズの物体面から前記第1レンズの射出面までの軸上距離がTTLであり、5.00≦f12/(d1+d2+d3)≦8.00、-4.00≦R7/R8≦-1.50、0.38≦f4/f≦0.53、0.20≦WD/TTL≦0.40の条件を満たす、顕微鏡対物レンズを提供する。
【0006】
好ましくは、前記第3レンズ射出面の中心曲率半径をR5とし、前記第3レンズ物体側の中心曲率半径をR6とし、-0.30≦R5/R6≦-0.20の条件を満たす。
【0007】
好ましくは、開口数をNAとし、0.045≦NA≦0.065の条件を満たす。
【0008】
好ましくは、前記第1レンズの射出面が近軸位置において凸面であり、前記第1レンズの物体側が近軸位置において凸面であり、前記第1レンズ射出面の中心曲率半径をR1とし、前記第1レンズ物体側の中心曲率半径をR2とし、前記第1レンズの焦点距離をf1とし、0.12≦f1/f≦0.42、-0.14≦(R1+R2)/(R1-R2)≦0.01、0.01≦d1/TTL≦0.07の条件を満たす。
【0009】
好ましくは、前記第2レンズの射出面が近軸位置において凹面であり、前記第2レンズの物体側が近軸位置において凸面であり、前記第2レンズ射出面の中心曲率半径をR3とし、前記第2レンズ物体側の中心曲率半径をR4とし、前記第2レンズの焦点距離をf2とし、-1.55≦f2/f≦-0.36、-6.85≦(R3+R4)/(R3-R4)≦-1.87、0.01≦d3/TTL≦0.07の条件を満たす。
【0010】
好ましくは、前記第3レンズの射出面が近軸位置において凹面であり、前記第3レンズの物体側が近軸位置において凹面であり、前記第3レンズの焦点距離をf3とし、前記第3レンズの軸上厚みをd5とし、-0.42≦f3/f≦-0.12、0.02≦d5/TTL≦0.26の条件を満たす。
【0011】
好ましくは、前記第4レンズの射出面が近軸位置において凸面であり、前記第4レンズの物体側が近軸位置において凸面であり、前記第4レンズの軸上厚みをd7とし、0.02≦d7/TTL≦0.31の条件を満たす。
【0012】
好ましくは、前記第1レンズ、前記第2レンズ、前記第3レンズ、および前記第4レンズは、ガラスで構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有利な効果は以下のとおりである。本発明の顕微鏡対物レンズは、優れた光学特性を備え、且つ歪曲収差が低く、広い視野での画像が歪まず、2倍の拡大倍率を実現でき、光学顕微鏡対物レンズに適している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態における顕微鏡対物レンズの構造模式図である。
図2図1に示す顕微鏡対物レンズの軸上収差の模式図である。
図3図1に示す顕微鏡対物レンズの倍率色収差の模式図である。
図4図1に示す顕微鏡対物レンズの像面湾曲および歪曲収差(歪み)の模式図である。
図5】本発明の第2実施形態における顕微鏡対物レンズの構造模式図である。
図6図5に示す顕微鏡対物レンズの軸上収差の模式図である。
図7図5に示す顕微鏡対物レンズの倍率色収差の模式図である。
図8図5に示す顕微鏡対物レンズの像面湾曲および歪曲収差(歪み)の模式図である。
図9】本発明の第3実施形態における顕微鏡対物レンズの構造模式図である。
図10図9に示す顕微鏡対物レンズの軸上収差の模式図である。
図11図9に示す顕微鏡対物レンズの倍率色収差の模式図である。
図12図9に示す顕微鏡対物レンズの像面湾曲および歪曲収差(歪み)の模式図である。
図13】本発明の第4実施形態における顕微鏡対物レンズの構造模式図である。
図14図13に示す顕微鏡対物レンズの軸上収差の模式図である。
図15図13に示す顕微鏡対物レンズの倍率色収差の模式図である。
図16図13に示す顕微鏡対物レンズの像面湾曲および歪曲収差(歪み)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態における技術的解決策は、以下に明確かつ完全に説明されるが、説明される実施形態は、本発明のすべての実施形態ではなく、一部の実施形態にすぎないことは明らかである。また、本明細書の実施形態に基づいて、創造的な努力なしに当業者によって得られる他のすべての実施形態は、本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【0016】
(第1実施形態)
図面を参照すると、本発明は、顕微鏡対物レンズを提供している。図1は、本発明の第1実施形態における顕微鏡対物レンズ10を示しており、前記顕微鏡対物レンズ10は、6つのレンズを備える。具体的には、前記顕微鏡対物レンズ10は、射出側から物体側に向かって順に、絞り部ST、第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、および物体面を備えている。
【0017】
前記第1レンズL1の軸上厚みをd1とし、前記第1レンズL1から第2レンズL2までの軸上距離をd2とし、前記第2レンズL2の軸上厚みをd3とし、前記第1レンズL1と前記第2レンズL2との合成焦点距離をf12とし、関係式5.00≦f12/(d1+d2+d3)≦8.00の条件を満たす。第1レンズ群(第1レンズL1と第2レンズL2とからなるもの)焦点距離と厚みとの比率範囲を当該範囲にすることによって、第1レンズ群が、物体側端の軸外収差を補正するように十分な強い正の屈折力を持たせる同時に、適度な厚みを維持することができる。
【0018】
前記第4レンズL4の射出面の中心曲率半径をR7、前記第4レンズL4の物体側の中心曲率半径をR8とし、-4.00≦R7/R8≦-1.50の条件を満たす。物体側の1番目のレンズ(すなわち、第4レンズL4)の形状は、この範囲内であれば、顕微鏡対物レンズ10に入射する光の偏向量を効果的に制御し、色収差を、色収差|LC|≦0.8μmに、効果的に低減することができる。
【0019】
前記第4レンズL4の焦点距離をf4、前記顕微鏡対物レンズ10の焦点距離をfとし、0.38≦f4/f≦0.53の条件を満たすことができる。物体側の1番目のレンズ(すなわち、第4レンズL4)の焦点距離と顕微鏡対物レンズ10の焦点距離との比は、この範囲内であれば、顕微鏡対物レンズ10に入射する光の偏向量が効果的に制御され、顕微鏡対物レンズの歪曲収差を、歪曲収差|Distortion|≦0.16%に、効果的に制御し、広い視野での画像が歪まないことを確保することができる。
【0020】
前記顕微鏡対物レンズ10の物体面から前記第4レンズL4の物体側までの軸上距離をWDとし(すなわち、動作距離をWDとする)、前記顕微鏡対物レンズ10の物体面から前記第1レンズL1の射出面までの軸上距離をTTLとし(すなわち、光学全長をTTLとする)、0.20≦WD/TTL≦0.40の条件を満たす。動作距離WDは、観察対象物(物体)から、当該観察対象物から最も近い物体側面まで距離であり、TTLは、対象物(物体)から最も遠い対物レンズまでの距離である。動作距離およびシステム全長(光学全長)の比は、この関係式の範囲内であれば、顕微鏡対物レンズと物体との間に適切な距離が確保され、顕微鏡対物レンズの良好な操作性(動作性能)を向上させる同時に、収差を補正するために、レンズ部に適度な背ペースを持たせてレンズを構成することができる。
【0021】
上記の関係式の条件を満たすことにより、顕微鏡対物レンズ10は、低歪曲収差、広い視野での画像が歪まないこと、および2倍の拡大倍率という設計要件を満たしながら、良好な光学性能を有することができる。
【0022】
前記第3レンズ射出面の中心曲率半径をR5、前記第3レンズ物体側の中心曲率半径をR6とし、-0.30≦R5/R6≦-0.20の条件を満たす。物体側の2番目のレンズ(すなわち、第3レンズL3)の形状は、この範囲内であれば、光の屈折角を効果的に小さくし、システム全体の感度を低下させることができる。
【0023】
開口数をNAとし、0.045≦NA≦0.065の条件を満たす。
【0024】
本実施形態において、近軸位置において第1レンズL1の射出面が凸面であり、近軸位置において第1レンズL1の物体側が凸面である。第1レンズL1は正の屈折力を有する。他の任意の実施形態では、第1レンズL1の射出面および物体側は他の凹面または凸面に設けられても良い。
【0025】
第1レンズL1焦点距離をf1とし、0.12≦f1/f≦0.42の条件を満たす。第1レンズL1の正の屈折力は、この範囲内であれば、第1レンズL1が適切な正の屈折力を有する。なお、前記関係は、好ましくは、0.19≦f1/f≦0.34である。
【0026】
第1レンズL1射出面の中心曲率半径をR1、第1レンズL1物体側の中心曲率半径をR2とし、-0.14≦(R1+R2)/(R1-R2)≦0.01の条件を満たす。第1レンズの形状を合理的に制御し、第1レンズがシステムの球面収差を効果的に補正できる。なお、この関係は、好ましくは、-0.09≦(R1+R2)/(R1-R2)≦0.01である。
【0027】
第1レンズL1の軸上厚みをd1とし、0.01≦d1/TTL≦0.07の条件を満たす。これによって、光学全長を合理的に制御することができる。なお、この関係は、好ましくは、0.02≦d1/TTL≦0.05である。
【0028】
本実施形態において、好ましくは、第2レンズL2の射出面が近軸位置において凹面であり、第2レンズL2の物体側が近軸位置において凸面である。第2レンズL2は負の屈折力を有する。他の任意の実施形態では、第2レンズL2の射出面および物体側は他の凹面または凸面に設けられても良い。
【0029】
第2レンズL2焦点距離をf2とし、-1.55≦f2/f≦-0.36を満たす。第2レンズL2の負のディオプトリ(Focal power)を合理な(適切な)範囲に制御することによって、光学システムの収差を効果的に補正するのに有利である。なお、この範囲は、好ましくは、-0.97≦f2/f≦-0.46である。
【0030】
第2レンズL2射出面の中心曲率半径をR3とし、第2レンズL2物体側の中心曲率半径をR4とし、-6.85≦(R3+R4)/(R3-R4)≦-1.87を満たす。第2レンズL2の形状は、この範囲内であれば、軸上色収差を補正するのに有利である。なお、この範囲は、好ましくは、-4.28≦(R3+R4)/(R3-R4)≦-2.34である。
【0031】
第2レンズL2の軸上厚みをd3とし、0.01≦d3/TTL≦0.07を満たす。これによって、光学全長を合理的に制御することができる。なお、この範囲は、好ましくは、0.02≦d3/TTL≦0.06である。
【0032】
本実施形態において、好ましくは、第3レンズL3の射出面が近軸位置において凹面であり、第3レンズL3の物体側が近軸位置において凹面である。第3レンズL3が負の屈折力を有する。他の任意の実施形態では、第3レンズL3の射出面および物体側面は、他の凹面または凸面に設けられても良い。
【0033】
第3レンズL3の焦点距離をf3とし、-0.42≦f3/f≦-0.12を満たす。第3レンズL3の負のディオプトリ(Focal power)を合理な(適切な)範囲に制御することによって、光学システムの収差を効果的に補正するのに有利である。なお、この範囲は、好ましくは、-0.26≦f3/f≦-0.16である。
【0034】
第3レンズL3の軸上厚みをd5とし、0.02≦d5/TTL≦0.26の条件を満たす。これによって、光学全長を合理的に制御することができる。この範囲は、好ましくは、0.02≦d5/TTL≦0.21である。
【0035】
本実施形態において、第4レンズL4の射出面が近軸位置において凸面であり、第4レンズL4の物体側が近軸位置において凸面である。第4レンズL4が正の屈折力を有する。他の任意の実施形態では、第4レンズL4の射出面および物体側面は、他の凹面または凸面に設けられても良い。
【0036】
第4レンズL4の軸上厚みをd7とし、0.02≦d7/TTL≦0.31の条件を満たす。第4レンズL4の軸上厚みと顕微鏡対物レンズ10の光学全長TTLとの比を制御することによって、超薄型の実現に役立つことができる。なお、その範囲は、好ましくは、0.03≦d7/TTL≦0.25である。
【0037】
本実施形態において、顕微鏡対物レンズ10の光学全長TTL(第1レンズL1の射出面から物体面の軸上距離まで)が92.493mmである。
【0038】
本実施形態において、顕微鏡対物レンズ10の視野角が6.86°である。
【0039】
本実施形態において、顕微鏡対物レンズ10の像高が6.000mmである。
【0040】
本実施形態において、前記第1レンズ、前記第2レンズ、前記第3レンズ、および前記第4レンズはガラスで構成される。
【0041】
以下、本発明の顕微鏡対物レンズ10について実施例を挙げて説明する。各実施例に使用される記号は以下の通りである。焦点距離、軸上距離、中心曲率半径、軸上厚みの位置の単位は、mmである。
【0042】
表1は、本発明の第1実施形態の顕微鏡対物レンズ10の設計データを示している。


この表において、各記号の意味は以下のとおりである。
ST:絞り部。
R:光学面の中心における中心曲率半径。
R1:第1レンズL1の射出面の中心曲率半径。
R2:第1レンズL1の物体側の中心曲率半径。
R3:第2レンズL2の射出面の中心曲率半径。
R4:第2レンズL2の物体側の中心曲率半径。
R5:第3レンズL3の射出面の中心曲率半径。
R6:第3レンズL3の物体側の中心曲率半径。
R7:第4レンズL4の射出面の中心曲率半径。
R8:第4レンズL4の物体側の中心曲率半径。
d:レンズの軸上厚み、レンズ間の軸上距離。
dST:絞り部STから第1レンズ射出面までの軸上距離。
d1:第1レンズL1の軸上厚み。
d2:第1レンズL1の物体側から第2レンズL2の射出面までの軸上距離。
d3:第2レンズL2の軸上厚み。
d4:第2レンズL2の物体側から第3レンズL3の射出面までの軸上距離。
d5:第3レンズL3の軸上厚み。
d6:第3レンズL3の物体側から第4レンズL4の射出面までの軸上距離。
d7:第4レンズL4の軸上厚み。
d8:第4レンズL4の物体側から物体面までの軸上距離。
Nd:d線の屈折率。
n1:第1レンズL1のd線の屈折率。
n2:第2レンズL2のd線の屈折率。
n3:第3レンズL3のd線の屈折率。
n4:第4レンズL4のd線の屈折率。
vd:アッベ数。
v1:第1レンズL1のアッベ数。
v2:第2レンズL2のアッベ数。
v3:第3レンズL3のアッベ数。
v4:第4レンズL4のアッベ数。
【0043】
図2および図3は、波長436nm、486nm、588nm、656nmの光が第1実施形態の顕微鏡対物レンズ10を通過した後の軸上(軸向)収差および倍率色収差を示す模式図である。図4は、波長588nmの光が第1実施形態の顕微鏡対物レンズ10を通過した後の像面湾曲および歪曲収差の模式図である。図4の像面湾曲Sは、サジタル方向の像面湾曲であり、Tは、タンジェンシャル方向の像面湾曲である。
【0044】
後述する表5に示されている各実施例一、二、三、四のいける各種数値と条件式で規定するパラメータとの対応値を示している。
【0045】
表5に示すように、第1実施形態は、各条件式を満たす。
【0046】
本実施形態において、前記顕微鏡対物レンズの入射瞳径ENPDは11.000mmであり、全視野像高IHは6.000mmであり、対角線方向の視野角FOVが6.86°であり、開口数NAが0.055mmであり、拡大倍率が2であり、軸上、軸外の色収差が良好に補正されており、且つ優れた光学特性を備えている。
【0047】
(第2実施形態)
第2実施形態は、基本的に第1実施形態と同様であり、記号の意味は第1実施形態と同様であり、当該第2実施形態における顕微鏡対物レンズ20の構造は、図5に示されており、以下、相違点のみを説明する。
【0048】
表2は、本発明の第2実施形態における顕微鏡対物レンズ20の設計データを示している。


図6および図7は、波長436nm、486nm、588nm、656nmの光が第2実施形態における顕微鏡対物レンズ20を通過した後の倍率色収差および軸上収差を示す模式図である。図8は、波長588nmの光が第2実施形態における顕微鏡対物レンズ20を通過した後の像面湾曲および歪曲収差を示す模式図であり、図8の像面湾曲Sは、サジタル方向の像面湾曲であり、Tは、タンジェンシャル方向の像面湾曲である。
【0049】
表4に示すように、第2実施形態は各条件式を満たしている。
【0050】
本実施形態において、前記顕微鏡対物レンズの入射瞳径が11.000mmであり、全視野像高が6.000mmであり、対角線方向の視野角が5.73°であり、開口数NAが0.046mmであり、動作距離は長く、軸上、軸外の色収差が十分に補正されており、且つ優れた光学特性を備えている。
【0051】
(第3実施形態)
第3実施形態は、基本的に、第1実施形態と同様であり、記号の意味は第1実施形態と同様であり、当該第3実施形態における顕微鏡対物レンズ30の構造は、図9に示されており、以下、相違点のみを説明する。
【0052】
表3は、本発明の第3実施形態における顕微鏡対物レンズ30の設計データを示している。


図10および図11は、波長436nm、486nm、588nm、656nmの光が第3実施形態における顕微鏡対物レンズ30を通過した後の倍率色収差および軸上収差を示す模式図である。図12は、波長588nmの光が第3実施形態における顕微鏡対物レンズ30を通過した後の像面湾曲および歪曲収差を示す模式図である。図12の像面湾曲Sは、サジタル方向の像面湾曲であり、Tは、タンジェンシャル方向の像面湾曲である。
【0053】
表5に示すように、第3実施形態は各条件式を示している。
【0054】
本実施形態において、前記顕微鏡対物レンズの入射瞳径が11.000mmであり、全視野像高が6.000mmであり、対角線方向の視野角が5.93°であり、動作距離は長く、開口数NAが0.048mmであり、軸上、軸外の色収差が十分に補正されており、且つ優れた光学特性を備えている。
【0055】
(第4実施形態)
第4実施形態は、基本的に、第1実施形態と同様であり、記号の意味は第1実施形態と同様であり、当該第4実施形態における顕微鏡対物レンズ40の構造は、図13に示されており、以下、相違点のみを説明する。
【0056】
表4は、本発明の第4実施形態における顕微鏡対物レンズ40の設計データを示している。


図14および図15は、波長436nm、486nm、588nm、656nmの光が第4実施形態における顕微鏡対物レンズ40を通過した後の倍率色収差および軸上収差を示す模式図である。図16は、波長588nmの光が第4実施形態における顕微鏡対物レンズ40を通過した後の像面湾曲および歪曲収差を示す模式図である。図16の像面湾曲Sは、サジタル方向の像面湾曲であり、Tは、タンジェンシャル方向の像面湾曲である。
【0057】
表5に示すように、第4実施形態は各条件式を示している。
【0058】
本実施形態において、前記顕微鏡対物レンズの入射瞳径が11.000mmであり、全視野像高が6.000mmであり、対角線方向の視野角が7.97°であり、動作距離は長く、開口数NAが0.064mmであり、軸上、軸外の色収差が十分に補正されており、且つ優れた光学特性を備えている。

【0059】
上述の実施形態は本発明の特定の実施例であり、実際の応用においては、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者にとっては、様々な変更を加えることができる。
【要約】      (修正有)
【課題】高い結像性能が得られるとともに、低歪曲収差、広い視野での画像が歪まないという要件を満たすことができる、顕微鏡対物レンズを提供すること。
【解決手段】本発明は、光学レンズの技術分野に属し、特に、顕微鏡装置に適用する顕微鏡対物レンズに関する。前記顕微鏡対物レンズは、射出側から物体側に向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、負の屈折力を有する第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズとを備える。また、以下の関係式を満たす。5.00≦f12/(d1+d2+d3)≦8.00。-4.00≦R7/R8≦-1.50。0.38≦f4/f≦0.53。0.20≦WD/TTL≦0.40。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16