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特許7550307ホルダ、切削工具及び切削加工物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ホルダ、切削工具及び切削加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/02 20060101AFI20240905BHJP
   B23B 27/00 20060101ALI20240905BHJP
   B23C 9/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B23B29/02 A
B23B27/00 C
B23C9/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023518648
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2022017230
(87)【国際公開番号】W WO2022234755
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2021079249
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】池田 義仁
(72)【発明者】
【氏名】首藤 智仁
(72)【発明者】
【氏名】権隨 佑知
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-63002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0067787(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0375305(US,A1)
【文献】国際公開第2015/198792(WO,A1)
【文献】特表2005-516780(JP,A)
【文献】登録実用新案第3208187(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/02
B23B 27/00
B23C 9/00
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って第1端から第2端にかけて延びた棒形状のホルダであって、
前記中心軸に沿って延びた本体と、
前記本体よりも前記第1端の側に位置し、切削インサートを取り付け可能である頭部と、
前記本体及び前記頭部に当接する弾性部材と、を有し、
前記本体は、
前記第1端の側に位置して前記第2端に向かって窪んだ凹部と、
前記凹部から前記第2端に向かって延びた第1孔と、を有し、
前記頭部は、
前記第2端の側に位置して前記第2端に向かって突出し、且つ、前記凹部に嵌め合わされた凸部と、
前記凸部から前記第1端に向かって延び、且つ、前記第1孔と繋げられた第2孔と、を有し、
前記凹部は、
前記中心軸に対して直交する底面と、
内周面と、
前記内周面と前記底面とを接続し、且つ、前記底面に対して前記第1端の側に傾斜した第1つなぎ面と、を有し、
前記凸部は、
前記中心軸に対して直交する頂面と、
外周面と、
前記外周面と前記頂面とを接続し、且つ、前記頂面に対して前記第1端の側に傾斜した第2つなぎ面と、を有し、
前記弾性部材が、前記第1つなぎ面及び前記第2つなぎ面にそれぞれ当接する、ホルダ。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記底面に当接する、請求項1に記載のホルダ。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記頂面に当接する、請求項1又は2に記載のホルダ。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記内周面に当接する、請求項1又は2に記載のホルダ。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記外周面に当接する、請求項1又は2に記載のホルダ。
【請求項6】
前記中心軸に沿った断面において、前記第1つなぎ面が、前記第2つなぎ面と平行である、請求項1又は2に記載のホルダ。
【請求項7】
前記弾性部材が円環形状であって、
前記弾性部材の内径が前記第1孔の内径よりも小さく、且つ、前記弾性部材の外径が前記第1孔の内径よりも大きい、請求項1又は2に記載のホルダ。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のホルダと、
前記ホルダにおける前記頭部に取り付けられた切削インサートと、を有する切削工具。
【請求項9】
被削材を回転させる工程と、
回転している前記被削材に請求項8に記載の切削工具を接触させる工程と、
前記切削工具を前記被削材から離す工程と、を備えた切削加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属等の被削材を切削加工する際に用いられる切削工具のホルダ、切削工具、及び切削加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属等の被削材を切削加工する際に用いられる切削工具として、例えば特許文献1に記載の切削工具が知られている。特許文献1に記載の切削工具はホルダ及び切削インサートを有する。ホルダは、空洞を有する筒状の本体と、空洞の入り口を塞ぐ頭部と、空洞に挿入された減衰部材である錘と、頭部及び錘の間に位置するOリングとを有する。
【0003】
頭部の先端部に、切刃を有する切削インサートが取り付けられている。切刃の先端部の本体端面からの突き出し量Lを本体の直径Dに対して大きくした場合、鋼材からなる本体は剛性が低いことから、本体の径方向での振動がホルダに生じやすく、加工精度が悪くなる。ホルダの振動は、本体内に本体とは固有振動数の異なる錘を収容して本体と錘とを異なる振動数で振動させることで、減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/049167号
【発明の概要】
【0005】
本開示における限定されない一例のホルダは、心軸に沿って第1端から第2端にかけて延びた棒形状のホルダであって、前記中心軸に沿って延びた本体と、前記本体よりも前記第1端の側に位置し、切削インサートを取り付け可能である頭部と、前記本体及び前記頭部に当接する弾性部材と、を有する。前記本体は、前記第1端の側に位置して前記第2端に向かって窪んだ凹部と、前記凹部から前記第2端に向かって延びた第1孔と、を有する。前記頭部は、前記第2端の側に位置して前記第2端に向かって突出し、且つ、前記凹部に嵌め合わされた凸部と、前記凸部から前記第1端に向かって延び、且つ、前記第1孔と繋げられた第2孔と、を有する。前記凹部は、前記中心軸に対して直交する底面と、内周面と、前記内周面と前記底面とを接続し、且つ、前記底面に対して前記第1端の側に傾斜した第1つなぎ面とを、有する。前記凸部は、前記中心軸に対して直交する頂面と、外周面と、前記外周面と前記頂面とを接続し、且つ、前記頂面に対して前記第1端の側に傾斜した第2つなぎ面とを、有する。前記弾性部材が、前記第1つなぎ面及び前記第2つなぎ面にそれぞれ当接する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の限定されない実施形態における切削工具を示す斜視図である。
図2図1に示す切削工具の平面図である。
図3図2のIII-III線矢視断面図である。
図4図3の第1端面側の拡大図である。
図5図4のヘッドと蓋体との接続部の拡大図である。
図6図3の第2端面側の拡大図である。
図7】変形例1のホルダのヘッドと蓋体との接続部を示す断面図である。
図8】変形例2のホルダのヘッドと蓋体との接続部を示す断面図である。
図9】変形例3のホルダのヘッドと蓋体との接続部を示す断面図である。
図10】限定されない一例における切削加工物の製造方法の一工程を示す概略図である。
図11】限定されない一例における切削加工物の製造方法の一工程を示す概略図である。
図12】限定されない一例における切削加工物の製造方法の一工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の一例である実施形態のホルダ、切削工具、及び切削加工物の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、ホルダ及び切削工具は、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0008】
(切削工具)
図1は実施形態1に係る切削工具10を示す斜視図である。図2は切削工具10を示す平面図である。切削工具10は、図1のX軸方向に延びる丸棒状のホルダ1の本体1aの先端側にヘッド(頭部)2を取り付けた工具である。ヘッド2には、切削インサート(以下、インサートと称する)3が取り付けられている。
【0009】
切削工具10は例えば旋削工具であり、具体例としては、外径加工用の工具、内径加工用の工具、溝入れ加工用の工具、及び、突っ切り加工用の工具等が挙げられる。切削工具10は、工具側が回転する転削工具であってもよい。以下の説明では、切削工具10の、ヘッド2が位置する側を先端(第1端)側と称し、先端側とは反対側を後端(第2端)側と称する。
【0010】
(ヘッド)
図1図3に示すように、ヘッド2は、略円柱形状をなす取付部21と、取付部21の先端面からX軸方向に突出するように設けられ、多面体状をなす装着部22とを有する。取付部21は、軸心をホルダ1の中心軸Lに合わせた状態で、ホルダ1の先端部に取り付けられる。取付部21のホルダ1側の端面にはセレーションが設けられており、ホルダ1の後述する蓋体12の先端側の端面に形成されたセレーションと嵌め合わせると共に、ネジ(不図示)等を用いてヘッド2がホルダ1に取り付けられる。
【0011】
取付部21の先端面には、開口部を有し、該開口部からクーラントが噴出する噴出部23が設けられている。取付部21の後端側の端面の中央部には、後述する第2孔25を有する円筒状の凸部24が、蓋体12に向けて突出した状態で設けられている。第2孔25は、軸心を中心軸Lに合わせた状態で、先端側に延びる(図4参照)。第2孔25の先端部と噴出部23とは接続されている(不図示)。
【0012】
装着部22をZ軸方向から平面視した場合のY軸方向の一方の端部にはポケット22aが設けられている。ポケット22aは、インサート3の底面を載置する座面(不図示)と、インサート3の2側面が当接して拘束される拘束側面とを有する。インサート3の形状は特定の構成に限定されない。例えば、インサート3の形状は、棒形状、多角板形状または多角柱形状の構成であってもよい。本実施形態においてインサート3は、図1に示すように、菱形板状である。インサート3の菱形状の一角は切り欠かれ、切刃3aとされている。
【0013】
インサート3の材質としては、超硬合金、及びサーメット等が挙げられる。インサート3の中央部には貫通孔が設けられ、菱形の底面を座面に載置し、該貫通孔にネジを挿通して座面にネジ止めすることによってインサート3がポケット22aに固定される。
【0014】
超硬合金の組成としては、例えば、WC-Co、WC-TiC-Co及びWC-TiC-TaC-Coが挙げられる。WC-Coは、炭化タングステン(WC)にコバルト(Co)の粉末を加えて焼結して生成される。WC-TiC-Coは、WC-Coに炭化チタン(TiC)添加したものである。WC-TiC-TaC-Coは、WC-TiC-Coに炭化タンタル(TaC)を添加したものである。
【0015】
また、サーメットは、セラミック成分に金属を複合させた焼結複合材料である。具体的には、サーメットとして、炭化チタン(TiC)又は窒化チタン(TiN)等のチタン化合物を主成分としたものが挙げられる。
【0016】
(ホルダ)
図3図2のIII-III線矢視断面図である。図4図3の第1端面側の拡大図である。図5図4のヘッド2と蓋体12との接続部の拡大図である。図6は、図3の第2端面側の拡大図である。
【0017】
図3に示すように、切削工具10のホルダ1は、ステム11と、蓋体12と、第1弾性部材14と、固定部材16とを有する。ステム11と蓋体12とによりホルダ1の本体1aが構成される。ステム11の材質としては、ステンレス鋼等の鋼、鋳鉄、及びアルミニウム合金等が挙げられる。特に、これらの材質の中で鋼が用いられた場合には、ホルダ1の靱性を高めることができる。
【0018】
ステム11の外観はX軸方向に延びた丸棒状であり、ヘッド2側の第1端面11a及び後端側の第2端面11bは夫々、中央部が開口した構造であってもよい。ステム11は、内部に、第1端面11aから第2端面11bに向かい、ホルダ1の中心軸(軸心)Lに沿って(X軸方向に)延びた貫通孔11cを有する。
【0019】
貫通孔11cは、第1端面11a側に位置する大径部11dと、大径部11dに連なり、第2端面11bに向かって延びた小径部11eとから構成される。貫通孔11cは、円柱状の上述の材質からなる基材を穿孔することにより設けられている。小径部11eの内径は、大径部11dの内径より小さい。大径部11d及び小径部11eは夫々、円筒形状であり、小径部11eと比較して大径部11dは薄肉である。図2においては、大径部11dはホルダ1の略2/3の長さ、小径部11eはホルダ1の略1/3の長さであるが、大径部11dと小径部11eとの長さの比は、この場合に限定されない。
【0020】
大径部11d内に、蓋体12、錘13、第1弾性部材14、及び固定部材16が収容されている。
【0021】
蓋体12はステム11の第1端面11aから大径部11d内に圧入され、第1端面11aに形成された開口を閉塞する。蓋体12の材質としては、鋼、鋳鉄、及びアルミニウム合金等が挙げられる。図4に示すように、蓋体12は第1孔12cを有する略円筒形状をなし、大径部11d内に、軸心を中心軸Lに合わせた状態で圧入されている。
【0022】
蓋体12は、鍔部12aと、凹部12bと、第1孔12cと、突起部12dとを有する。鍔部12aは、蓋体12の先端側の外周部に径方向の外側に突出するように設けられている。鍔部12aが第1端面11aに突き当たることで、蓋体12がステム11の内部に入り込むことが規制されている。蓋体12のヘッド2に対向する端面にはセレーションが設けられている。
【0023】
図4及び図5に示すように、凹部12bは、蓋体12のヘッド2に対向する端面の中央部から後端側に向かって丸孔状に設けられている。凹部12bには、ヘッド2の凸部24が挿入される。凹部12bは、中心軸Lに対して直交する底面12eと、内周面12fと、底面12eと内周面12fとを斜めにつなぐ第1つなぎ面12gとを有する。即ち、第1つなぎ面12gは、底面12e(Z方向)に対し、先端側に傾斜している。第1つなぎ面12gの底面12eに対する傾斜角度は、例えば20度~60度である。図5に示す断面における第1つなぎ面12gのZ方向の寸法であるW1は、例えば第1孔12cの直径の0.05倍~0.3倍である。
【0024】
突起部12dは、蓋体12の後端側の端面から後端に向かって突出するように設けられ、中心軸Lを軸心とする円筒形状をなす。第1孔12cは、軸心を中心軸Lに合わせた状態で、凹部12bの底面12eから後端側に向かって延び、突起部12dを貫通する。図4に示すように、第1孔12cは、後端側が先端側より大径であってもよい。
【0025】
図5に示すように、ヘッド2の凸部24は、中心軸Lに対して直交する頂面24aと、外周面24bと、頂面24aと外周面24bと斜めにつなぐ第2つなぎ面24cとを有する。即ち、第2つなぎ面24cは、頂面24a(Z方向)に対し、先端側に傾斜している。第2つなぎ面24cの頂面24aに対する傾斜角度は、例えば20度~60度である。図5に示す断面における第2つなぎ面24cのZ方向の寸法であるW2は、例えば第2孔25の直径の0.1倍~0.4倍である。
【0026】
凹部12bと凸部24との間に、リング状の第2弾性部材15が介在する。第2弾性部材15は例えば円環形状のOリング、又はバネであり、材質としては、NBR(acrylonitrile butadiene rubber)、AU(polyester urethane rubber)等のゴム、合成樹脂等が挙げられる。凸部24は第2弾性部材15を介し凹部12bに固定される。第2弾性部材15の内径は第1孔12cの内径より小さく、第2弾性部材15の外径は第1孔12cの内径より大きい。
【0027】
第2弾性部材15が、蓋体12の凹部12bの底面12e、第1つなぎ面12g、及び内周面12fと、ヘッド2の凸部24の頂面24a、及び第2つなぎ面24cとの間で押しつぶされることにより、その反発力で凸部24が凹部12bに固定される。特に、本実施形態においては、第2弾性部材15が傾斜している第1つなぎ面12g及び第2つなぎ面24cによって挟まれており、第1つなぎ面12g及び第2つなぎ面24cに密着する。これにより、中心軸Lに沿った方向及び中心軸Lに直交する方向のいずれにおいても第2弾性部材15の位置ずれが生じにくい。ヘッド2は、ホルダ1の本体1aに対する位置ずれが、加工時においても低減されている。
【0028】
図3に戻ると、錘13は、ホルダ1の径方向に沿って生じるホルダ1の振動を低減するためにステム11に収容されている。錘13は減衰部材である。錘13は、第3孔13cを有する略円筒形状をなし、大径部11d内に、軸心を中心軸Lに合わせた状態で、蓋体12に隣接するように配置されている。錘13は、大径部11d内に、大径部11dの内周面との間にわずかに隙間を有する状態で収容されている。錘13の材質としては、ハイス(高速度鋼:high-speed steel)、超硬合金、及びサーメット等の高剛性材が挙げられる。
【0029】
錘13は、凹部13aと、凹部13bと、第3孔13cとを有する。凹部13aは、錘13の先端側の端面の中央部に丸穴状に設けられている。凹部13bは、錘13の後端側の端面の中央部に丸穴状に設けられている。第3孔13cは、凹部13aと凹部13bとを連通するように設けられている。
【0030】
第3孔13cには、内部をクーラントが通流する通流管19が挿入されている。通流管19の材質としては、例えば、金属及び樹脂が挙げられる。金属としては、例えば、銅、鋼、ステンレス及びアルミニウム等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピエン、ポリスチレン及びポリ塩化ビニル等が挙げられる。クーラントとしては、例えば油性型、不活性極圧型、及び活性極圧型の切削油等の不水溶性油剤、エマルジョン型、ソリューブル型、及びソリューション型の切削油等の水溶性油剤が挙げられる。
【0031】
図6に示すように、貫通孔11cの大径部11d内において、錘13の後端側に、固定部材16が配置されている。固定部材16は、第1弾性部材14を介して、錘13を大径部11dの内周面に対して固定する。固定部材16は、通流管19が挿入される空洞部を有する略円筒形状をなし、軸心を中心軸Lに合わせた状態で大径部11d内に配置されている。
【0032】
固定部材16の材質としては、例えば、金属及び樹脂が挙げられる。金属としては、例えば、鋼、鋳鉄、及びアルミニウム合金等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピエン、ポリスチレン及びポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0033】
固定部材16は、突起部16aと、凹溝16bとを有する。突起部16aは固定部材16の、錘13と対向する端面の中央部から、錘13に向かって突出するように設けられ、円筒形状をなす。凹溝16bは、大径部11dの内周面に対向する、固定部材16の外周面に周方向に一巡して設けられている。
【0034】
固定部材16の凹溝16bに、第1弾性部材14が嵌められている。第1弾性部材14は例えばOリングであり、第2弾性部材15と同様の材質を有していてもよい。
【0035】
図4に戻ると、錘13の凹部13aの内側には、リング状の第3弾性部材17を外嵌めした状態で、蓋体12の突起部12dが挿入されている。また、図6に示すように、凹部13bの内側には、リング状の第4弾性部材18を外嵌めした状態で、固定部材16の突起部16aが挿入されている。
【0036】
第3弾性部材17及び第4弾性部材18は、第2弾性部材15と同様の材質を有していてもよい。第3弾性部材17が蓋体12の突起部12dの外周面と、錘13の凹部13aの内周面との間で押しつぶされることにより、その反発力で錘13の先端側が蓋体12に固定される(図4参照)。
【0037】
第4弾性部材18が固定部材16の突起部16aの外周面と錘13の凹部13bの内周面との間で押しつぶされることにより、錘13の後端側が固定部材16に固定される(図6参照)。その結果、蓋体12、錘13、及び固定部材16が一体化される。図4に示すように、通流管19の先端部は第1孔12c内に進入し、第1孔12cと第3孔13cとは接続されている。
【0038】
第1弾性部材14は、貫通孔11cの大径部11dの内周面と接触し、押しつぶされたことによる反発力により、固定部材16と一体化された錘13を大径部11dの内周面に対して固定する。即ち、錘13は、ステム11に圧入されることでステム11に固定された蓋体12と、第1弾性部材14を介してステム11に固定された固定部材16とに両端部を保持されることで、ステム11に対して固定されている。
【0039】
図3に示すように、ステム11の第2端面11bの開口の直径は、小径部11eの直径と略一致する。該開口からクーラントが小径部11eに注入される。該開口は栓20により閉塞される。注入されたクーラントは通流管19を通って、加工時に、ヘッド2の噴出部23から噴出する。
【0040】
通流管19の内部空間は、蓋体12の第1孔12c及び第2孔25を介して噴出部23と連通している。小径部11eに注入されたクーラントは、通流管19を介し凸部24内の第2孔25を流れ、加工時に、噴出部23から被削材に向けて噴出される。
【0041】
上述したように、第1つなぎ面12g及び第2つなぎ24cによりホルダ1の本体1aに対するヘッド2の位置ずれが生じにくく、第1孔12c及び第2孔25の接続性が良好である。第1孔12c及び第2孔25にクーラントを流す場合において、第1孔12c及び第2孔25がつながる箇所において液漏れが生じにくい。
【0042】
(変形例1)
図7は、変形例1のホルダ1のヘッド2と蓋体12との接続部を示す断面図である。変形例1の蓋体12の凹部12bは、図5に示す構成に加えて、底面12eと第1孔12cとの間に、先端側から後端側に向けて傾斜した第3つなぎ面12hをさらに有する。変形例1においては、第2弾性部材15は、押しつぶされたときに、第3つなぎ面12hにも食い込み、中心軸Lに沿った方向及び中心軸Lに直交する方向の両方において第2弾性部材15の位置ずれがより低減される。
【0043】
(変形例2)
図8は、変形例2のホルダ1のヘッド2と蓋体12との接続部を示す断面図である。変形例2の第2弾性部材15の外径は、図5の第2弾性部材15の外径より大きくしている。従って、第2弾性部材15は、凸部24の外周面24bにも当接しており、第2弾性部材15の位置ずれがより低減されている。
【0044】
(変形例3)
図9は、変形例2のホルダ1のヘッド2と蓋体12との接続部を示す断面図である。変形例3の第1つなぎ面12gは第2つなぎ面24cと平行である。変形例3においては、第2弾性部材15は、歪むことなく、第1つなぎ面12gと第2つなぎ面24cとに挟まれ、中心軸Lに沿った方向及び中心軸Lに直交する方向の両方において位置ずれがより低減される。
【0045】
(切削加工物の製造方法)
次に、実施形態の切削加工物の製造方法について図面を用いて説明する。図10は、限定されない一例における切削加工物103の製造方法の一工程を示す概略図である。図11は、限定されない一例における切削加工物103の製造方法の一工程を示す概略図である。図12は、限定されない一例における切削加工物103の製造方法の一工程を示す概略図である。
【0046】
切削加工物103は、被削材101を切削加工することによって作製される。実施形態においては、切削加工として外径加工を例示する。実施形態における切削加工物103の製造方法は、以下の工程を含む。すなわち、
(1)被削材101を回転させる工程と、
(2)回転している被削材101に上記の実施形態に代表される切削工具10を接触させる工程と、
(3)切削工具10を被削材101から離す工程と、
を含む。
【0047】
より具体的には、まず、図10に示すように、被削材101を軸Dの周りでD1方向に回転させる。また、切削工具10をD2方向に動かすことによって、被削材101に切削工具10を相対的に近付ける。次に、図11に示すように、切削工具10における切刃3aを被削材101に接触させて、被削材101を切削する。
【0048】
このとき、切削工具10をD3方向に動かしながら被削材101を切削することによって外径加工を行うことができる。そして、図12に示すように、切削工具10をD4方向に動かすことによって、切削工具10を被削材101から相対的に遠ざける。
【0049】
図10においては、軸Dを固定するとともに被削材101を回転させた状態で切削工具10を近付けている。また、図11においては、回転している被削材101にインサート3の切刃3aを接触させることによって被削材101を切削している。また、図12においては、被削材101を回転させた状態で切削工具10を遠ざけている。
【0050】
上述したように、本実施形態においては、ヘッド2のホルダ1の本体1aに対する位置ずれが低減されているので、加工精度が良好である。加工時に、クーラントがヘッド2と蓋体12との接続部から漏れることもない。
【0051】
実施形態の製造方法における切削加工では、切削工具10を動かすことによって、切削工具10を被削材101に接触させている。さらに、切削工具10を動かすことによって、切削工具10を被削材101から離している。しかしながら、実施形態の製造方法は、この場合に限定されない。
【0052】
例えば、(1)の工程において、被削材101を切削工具10に近付けてもよい。(3)の工程において、被削材101を切削工具10から遠ざけてもよい。切削加工を継続する場合には、切削工具10を回転させた状態を保持して、被削材101の異なる箇所にインサート3を接触させる工程を繰り返せばよい。
【0053】
被削材101の材質の代表例としては、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、鋳鉄及び非鉄金属等が挙げられる。
【0054】
以上、本開示に係る発明について、諸図面及び実施形態に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。
【0055】
つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、上記した実施形態においては、切削工具10のホルダ1が丸棒状である場合につき説明しているが、ホルダ1は角棒状であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 ホルダ
1a 本体
11 ステム
12 蓋体
12b 凹部
12c 第1孔
12d 突起部
12e 底面
12f 内周面
12g 第1つなぎ面
12h 第3つなぎ面
13 錘
14 第1弾性部材
15 第2弾性部材
17 第3弾性部材
18 第4弾性部材
16 固定部材
2 ヘッド(頭部)
21 取付部
22 装着部
22a ポケット
24 凸部
24a 頂面
24b 外周面
24c 第2つなぎ面
25 第2孔
3 インサート
3a 切刃
10 切削工具
図1
図2
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図10
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図12