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特許7550314太陽光発電電池及び太陽光発電モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】太陽光発電電池及び太陽光発電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0236 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
H01L31/04 280
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023530005
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 CN2021131407
(87)【国際公開番号】W WO2022105821
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】202011296656.4
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522400560
【氏名又は名称】隆基緑能科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】LONGI GREEN ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呉 兆
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲チェン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 子峰
(72)【発明者】
【氏名】解 俊杰
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-054121(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0037923(US,A1)
【文献】特開2014-135343(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111146313(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/078
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池本体を含み、
前記電池本体の少なくとも1つの面は第1領域と第2領域を含み、
前記第1領域はテキスチャ構造として構成され、
前記第2領域は複数のピットとして構成され、
前記ピットは前記電池本体の表面における正投影の寸法が0.5~100μmであり、前記正投影の寸法は、前記ピットが前記電池本体の表面における正投影の直径または対角線の長さのうちいずれか一つであり、
前記電池本体の厚さ方向からの前記ピットの側壁のズレ角度が15度未満であり、
前記テキスチャ構造は、小角度入射光を反射するために用いられ、前記ピットは、大角度入射光を反射するために用いられ、小角度入射光と大角度入射光のいずれについても複数回反射され、太陽光発電電池における小角度入射光と大角度入射光の光路長が大きくなることで、入射光に対する吸収効果が高まり、前記小角度入射光は、入射角が45度未満の入射光であり、前記大角度入射光は、入射角が45度以上の入射光であり、
前記電池本体は第1電極を含み、前記第1電極の少なくとも一部は前記テキスチャ構造に設けられ、且つ、少なくとも一部の前記ピットは、前記第1電極に覆われていないことを特徴とする太陽光発電電池。
【請求項2】
前記電池本体の表面における前記ピットの正投影の寸法は1μm以上20μm以下である請求項1に記載の太陽光発電電池。
【請求項3】
前記複数のピットは前記電池本体の表面にアレイ状に分布しており、
隣接する前記ピットの間の間隔は2μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電電池。
【請求項4】
前記電池本体の表面における前記ピットの投影面積と前記電池本体の表面積との比が0.4~0.85であることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電電池。
【請求項5】
前記ピットの深さが0.1μm以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の太陽光発電電池。
【請求項6】
前記ピットは円形孔、矩形孔又は非規則形状の孔のうちのいずれか又は複数を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の太陽光発電電池。
【請求項7】
不動態化層をさらに含み、
前記不動態化層は前記テキスチャ構造と前記ピットの底面及び側壁上に設けられることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電電池。
【請求項8】
前記第1電極は第1バスバーと第1フィンガーを含み、前記第1バスバーは前記テキスチャ構造及び/又は一部の前記ピットに設けられ、前記第1フィンガーは前記テキスチャ構造に設けられることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電電池。
【請求項9】
電池本体の一方の面に分布しているピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造からなるテキスチャ構造を前記電池本体の少なくとも1つの面に製造するステップと、
前記電池本体の表面に複数のミクロンレベルのピットを製造するステップと、を含み、
前記ピットは電池本体の表面における正投影の寸法が0.5~100μmであり、前記正投影の寸法は、前記ピットが前記電池本体の表面における正投影の直径または対角線の長さのうちいずれか一つであり、
前記テキスチャ構造上及び前記ピット内に第1電極を製造するとともに、前記電池本体の他方の面に第2電極を製造するステップをさらに含み、
前記テキスチャ構造は、小角度入射光を反射するために用いられ、前記ピットは、大角度入射光を反射するために用いられ、小角度入射光と大角度入射光のいずれについても複数回反射され、太陽光発電電池における小角度入射光と大角度入射光の光路長が大きくなることで、入射光に対する吸収効果が高まり、前記小角度入射光は、入射角が45度未満の入射光であり、前記大角度入射光は、入射角が45度以上の入射光であり、前記第1電極の少なくとも一部は前記テキスチャ構造に設けられ、且つ、少なくとも一部の前記ピットは、前記第1電極に覆われていないことを特徴とする太陽光発電電池の製造方法。
【請求項10】
電池本体の少なくとも1つの面にテキスチャ構造を製造する前記ステップは、
前記電池本体のシリコンウエハ基板の少なくとも1つの面に前記テキスチャ構造を製造するステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電池本体の表面に複数のミクロンレベルのピットを製造する前記ステップは、
前記シリコンウエハ基板の表面に複数のピットを製造するステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記テキスチャ構造と前記ピットの側壁及び底面上に不動態化層を製造するステップをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項に記載の太陽光発電電池を含むことを特徴とする太陽光発電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は太陽電池の分野に関し、特に太陽光発電電池、その製造方法及び太陽光発電モジュールに関する。
【0002】
<関連出願の相互参照>
本願は、2020年11月18日に中国特許庁に提出された、出願番号が202011296656.4、名称が「太陽光発電電池及び太陽光発電モジュール」である中国特許出願の優先権を主張しており、そのすべての内容は引用により本願に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
伝統的なエネルギーが絶え間なく消費され、環境へマイナスの影響が与えるに伴い、太陽エネルギーは汚染がなく再生可能なエネルギーとして、その開発と利用が急速に発展を遂げており、特に高い変換効率を持つ太陽光発電電池は現在の研究の重点となっている。
【0004】
現在、テクスチャリングプロセスにより太陽光発電電池の表面にピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状のテキスチャ(テクスチャ)構造を製造することによって、太陽光発電電池の表面からの太陽光の反射を低減させ、太陽光発電電池がより多くの太陽光を吸収して光電変換することを可能にし、太陽光発電電池の変換効率を高め、このような構造は、直射光や入射角の小さい光に対しては良好な反射防止効果を有するが、入射角の大きい光の場合、太陽光発電電池の表面のピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状のテキスチャ構造を経ると、ほとんどの光は太陽光発電電池の表面から空気中に反射され、太陽光発電電池の光電変換に関与しない。従来技術では、ブラックシリコンプロセスにより、太陽光発電電の表面にナノレベルの光閉じ込み構造を製造することができ、このナノレベルの光閉じ込み構造は大角度入射光に対しては良好な光閉じ込み効果を持ち、太陽光発電電池の光電変換率を高めることができる。
【0005】
しかし、従来の手段では、ナノレベルの光閉じ込み構造は太陽光発電電池の単結晶シリコンの表面積を大きく増加させ、ナノ構造上に均一な不動態化層を形成することが困難であるため、表面での非平衡キャリアの再結合率が上昇し、太陽光発電電池の光電変換効率が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、太陽光発電電池及び太陽光発電モジュールを提供し、太陽光発電電池の変換効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様では、本開示の実施例は、前記太陽光発電電池は、
電池本体を含み、
前記電池本体の少なくとも1つの面は第1領域と第2領域を含み、
前記第1領域はテキスチャ構造として構成され、
前記第2領域は、前記電池本体の表面における投影の寸法が0.5~100μmである複数のピットとして構成され、
前記電池本体の厚さ方向からの前記ピットの側壁のズレ角度が15度未満である太陽光発電電池を提供する。
【0008】
選択的に、前記電池本体の表面における前記ピットの投影の寸法は1~20μmである。
【0009】
選択的に、前記複数のピットは前記電池本体の表面にアレイ状に分布しており、
隣接する前記ピットの間の間隔は2~200μmである。
【0010】
選択的に、前記電池本体の表面における前記ピットの投影面積と前記電池本体の表面積との比が0.4~0.85である。
【0011】
選択的に、前記ピットの深さが0.1μm以上である。
【0012】
選択的に、前記ピットは、円形孔、矩形孔又は非規則形状の孔のうちのいずれか又は複数を含む。
【0013】
選択的に、前記電池本体は第1電極を含み、
前記第1電極の少なくとも一部は前記テキスチャ構造に設けられる。
【0014】
選択的に、前記太陽光発電電池は不動態化層をさらに含み、
前記不動態化層は前記テキスチャ構造と前記ピットの底面及び側壁上に設けられる。
【0015】
選択的に、前記第1電極は第1バスバーと第1フィンガーを含み、前記第1バスバーは前記テキスチャ構造及び/又は前記ピットに設けられ、前記第1フィンガーは前記テキスチャ構造に設けられる。
【0016】
第2態様では、本開示の実施例は、上記太陽光発電電池を含む太陽光発電モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0017】
上記太陽光発電電池及び太陽光発電モジュールによれば、本願は下記の有益効果を有する。本願における太陽光発電電池の電池本体の少なくとも1つの面は第1領域と第2領域を含み、第1領域はテキスチャ構造として構成され、入射角の小さい入射光に対しては、ピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造からなるテキスチャ構造はこの小角度入射光が太陽光発電電池から反射される確率を減少させることができ、第2領域は電池本体の表面における投影の寸法が0.5~100μmである複数のピットとして構成され、また、電池本体の厚さ方向からのこのピットの側壁のズレ角度が15度未満であり、入射角の大きい入射光に対しては、太陽光発電電池の表面における複数のミクロンレベルのピットはこの大角度入射光が太陽光発電電池から反射される確率を減少させることができ、大角度入射光はミクロンレベルのピット内で複数回反射され、太陽光発電電池における光路長が大きくなり、これによって、入射光に対する太陽光発電電池の吸収効果を高めることができ、また、ナノレベルの光閉じ込み構造と比べて、ミクロンレベルのピットの構造の寸法が大きく、ミクロンレベルのピットを有する太陽光発電電池の表面積が小さく、このため、太陽光発電電池の表面に均一な不動態化層を形成し、太陽光発電電池の表面での非平衡キャリアの再結合率を低下させ、太陽光発電電池の光電変換効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、本発明の実施例の説明に必要な図面を簡単に説明するが、以下の図面は本発明のいくつかの実施例を示すものに過ぎず、範囲を制限するものとしてみなすべきではなく、当業者であれば、創造的な努力を必要とせずに、これらの図面に基づいて他の関連する図面を得ることもできることを理解すべきである。
図1】本発明の実施例における太陽光発電電池の構造模式図を示す。
図2】本発明の実施例における太陽光発電電池の上面図を示す。
図3】本発明の実施例における両面電極型太陽光発電電池の構造模式図を示す。
図4】本発明の実施例における片面電極型太陽光発電電池の構造模式図を示す。
図5】本発明の実施例における太陽光発電電池の製造方法のステップの流れ図を示す。
図6】本発明の実施例における両面電極型太陽光発電電池の製造方法のステップの流れ図を示す。
図7】本発明の実施例における片面電極型太陽光発電電池の製造方法のステップの流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施例の図面を参照して、本開示の実施例の技術的解決手段を明確かつ完全に説明するが、明らかに、説明する実施例は本開示の実施例の一部に過ぎず、すべての実施例ではない。当業者が本開示の実施例に基づいて創造的な努力を必要とせずに得る他の全ての実施例は本開示の保護範囲に属する。
【0020】
太陽光発電電池では、太陽光発電電池の表面での入射光の反射を低減させ、入射光に対する吸収効果を高め、発電量を増加させるために、通常、テクスチャリングプロセスにより表面にピラミッド状構造と逆ピラミッド状構造を有するテキスチャ構造を形成し、このようなテキスチャ構造は、垂直入射光又は入射角の小さい入射光に対しては良好な反射防止効果を有し、この小角度入射光が太陽光発電電池から反射される確率を減少させることができるが、入射角の大きい入射光に対する効果が不十分であり、すなわち、太陽光発電電池の全方向性が悪く、全方向性が悪い太陽光発電電池では、発電量を大きくするには最適光角度を設定するか、又は追跡ブラケットを使用することが必要である。最適受光角度が地理位置や時間と季節等に応じて変化するため、固定ブラケットをリアルタイムで調整して、太陽光発電電池を最適受光角度にすることが困難になる一方、追跡ブラケットは通常高コストであり、このため、太陽光発電電池の全方向性を向上させることは発電量を大きくするための簡単な手段である。
【0021】
以下、いくつかの具体的な実施例を挙げて、本開示による太陽光発電電池及び太陽光発電モジュールについて説明する。
【0022】
図1を参照すると、本開示の実施例による太陽光発電電池の構造概略図が示されており、図1に示すように、前記太陽光発電電池は電池本体10を含み、電池本体10の少なくとも1つの面は第1領域20と第2領域30とを含み、第1領域20はテキスチャ構造として構成され、第2領域30には複数のピット31が設けられているようにしてもよい。
【0023】
ここでは、テキスチャ構造を有する第1領域は電池本体の表面に分布しているピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造からなり、前記電池本体は単結晶シリコンウエハで製造されたものであってもよく、このような場合、前記テキスチャ構造はテクスチャリングプロセスにより単結晶シリコンウエハの表面上に製造された規則的又は不規則的なピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造であり、また、前記電池本体は多結晶シリコンウエハで製造されたものであってもよく、このような場合、前記テキスチャ構造はテクスチャリングプロセスにより多結晶シリコンウエハの表面上に製造された規則的又は不規則的なピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造である。
【0024】
本開示の実施例では、前記電池本体の表面は電池本体の受光面、すなわち入射光に直接接触する面であってもよい。また、入射角が45度以上の入射光は大角度入射光としてもよく、図1を参照すると、入射光Bの入射角がαであって、αが45度よりも高いと、入射光Bは大角度入射光であり、入射光Bは太陽光発電電池の表面のうちテキスチャ構造を有する第1領域20に照射されて、テキスチャ構造のピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造の反射作用により、1回反射されると、太陽光発電電池から離れた方向へ射出され、これによって、太陽光発電電池における入射光Bの光路長が小さくなり、入射光Bに対する太陽光発電電池の吸収効果が劣る。
【0025】
さらに、入射角が45度未満の入射光は小角度入射光としてもよく、図1を参照すると、入射光Cの入射角がβであって、βが45度未満であると、入射光Cは小角度入射光であり、入射光Cは太陽光発電電池の表面のうちテキスチャ構造を有する第1領域20に照射されると、テキスチャ構造のピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造の反射作用により、太陽光発電電池のテキスチャ構造内で複数回反射され、これによって、太陽光発電電池における入射光Cの光路長が長くなり、入射光Cに対する太陽光発電電池の吸収効果が良好である。
【0026】
以上より、テキスチャ構造だけを有する太陽光発電電池は、小角度入射光に対しては良好な吸収効果を有するが、大角度入射光に対する吸収効果が悪く、このため、この太陽光発電電池の全方向性が悪く、この太陽光発電電池を含む太陽光発電モジュールは航空機、自動車や建物に取り付けられる場合、太陽光発電電池に最適受光角度を付与する必要があるため、取り付け位置が制限されたり、発電量を大きくするために追跡ブラケットを必要とし、コストが高くなったりする。
【0027】
これに加えて、太陽光発電電池の電池本体の表面は第2領域をさらに含み、前記第2領域には複数のピットが設けられており、電池本体の表面における前記ピットの投影の寸法は0.5~100μmであり、すなわち、前記ピットはミクロンレベルのピットであり、また、電池本体の厚さ方向からの前記ピットの側壁のズレ角度が15度未満であり、これにより、小角度入射光がピット内に照射されて、ピット内で複数回反射されることが可能になる。
【0028】
図1を参照すると、太陽光発電電池の電池本体10の表面は複数のミクロンレベルのピット31が設けられた第2領域30をさらに含み、また、電池本体10の厚さ方向からの前記ピット31の側壁のズレ角度が0度である。
【0029】
ミクロンレベルのピット31の形状は円形孔、矩形孔又は非規則形状の孔のうちのいずれか又は複数であってもよく、前記ミクロンレベルのピット31の形状が円形孔である場合、ミクロンレベルのピット31の直径の範囲は0.5~100μmであり、前記ミクロンレベルのピット31の形状が矩形孔又は非規則形状の深孔である場合、ミクロンレベルのピット31の対角線の長さの範囲は0.5~100μmである。
【0030】
具体的には、入射光Aは入射角がαの大角度入射光であってもよく、入射光Aは太陽光発電電池の表面のミクロンレベルのピット31内に照射されると、ミクロンレベルのピット31の側壁及び底面の反射作用により、太陽光発電電池のミクロンレベルのピット31内で複数回反射され、これによって、太陽光発電電池における入射光Aの光路長が長くなり、入射光Aに対する太陽光発電電池の吸収効果が良好である。
【0031】
以上より分かるように、電池本体にテキスチャ構造とミクロンレベルのピットとが設けられている太陽光発電電池では、テキスチャ構造は小角度入射光に対しては良好な吸収効果を有する一方、ミクロンレベルのピットは小角度入射光に対する太陽光発電電池の吸収効果を高め、また、大角度入射光に対しては良好な吸収効果を有し、このため、このような太陽光発電電池は高い全方向性を持ち、この太陽光発電電池を含む太陽光発電モジュールは航空機、自動車や建物に取り付けられる場合、取り付け位置や追跡ブラケットを必要とせずに、太陽光発電電池に良好な入射光吸収効果を付与し、これによって、太陽光発電モジュールの光電変換効率を高め、発電量を増大することができる。
【0032】
さらに、電池本体の表面におけるミクロンレベルのピットの投影の寸法は0.5~100μmであり、ナノレベルの光閉じ込み構造と比べて、ミクロンレベルのピットの構造は寸法が大きいため、寸法が小さなナノレベルの光閉じ込み構造上に不動態化層を形成しにくいことを回避し、太陽光発電電池の表面に均一な不動態化層を形成することを確保し、また、ミクロンレベルのピットを有する太陽光発電電池の表面積が小さく、これによって、太陽光発電電池の比表面積を減少させ、太陽光発電電池の表面での非平衡キャリアの再結合率を低下させ、しかも、太陽光発電電池の表面でのキャリアの横方向輸送や収集に影響を与えることはなく、これらの結果として、太陽光発電電池の光電変換効率を高める。
【0033】
本開示の実施例では、太陽光発電電池は電池本体を含み、電池本体の少なくとも1つの面は第1領域と第2領域を含み、第1領域はテキスチャ構造として構成され、第2領域は電池本体の表面における投影の寸法が0.5~100μmである複数のピットとして構成され、電池本体の厚さ方向からのピットの側壁のズレ角度が15度未満である。本開示では、太陽光発電電池の電池本体の少なくとも1つの面は第1領域と第2領域を含み、第1領域はテキスチャ構造として構成され、入射角の小さい入射光に対しては、ピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造からなるテキスチャ構造はこの小角度入射光が太陽光発電電池から反射される確率を減少させることができ、第2領域は電池本体の表面における投影の寸法が0.5~100μmである複数のピットとして構成され、また、電池本体の厚さ方向からのこのピットの側壁のズレ角度が15度未満であり、入射角の大きい入射光に対しては、太陽光発電電池の表面における複数のミクロンレベルのピットはこの大角度入射光が太陽光発電電池から反射される確率を減少させることができ、大角度入射光はミクロンレベルのピット内で複数回反射され、太陽光発電電池における光路長が大きくなり、これによって、入射光に対する太陽光発電電池の吸収効果を高めることができ、また、ナノレベルの光閉じ込み構造と比べて、ミクロンレベルのピットの構造の寸法が大きく、ミクロンレベルのピットを有する太陽光発電電池の表面積が小さく、このため、太陽光発電電池の表面に均一な不動態化層を形成し、太陽光発電電池の表面での非平衡キャリアの再結合率を低下させ、太陽光発電電池の光電変換効率を高めることができる。
【0034】
選択的に、電池本体の表面における前記ピットの投影の寸法は1~20μmであり、これによって、電池本体の表面の第2領域に設けられるピットの大きさが均一かつ適切に確保される。
【0035】
選択的に、図2を参照すると、本開示の実施例による太陽光発電電池の上面図が示されており、図2に示すように、複数のミクロンレベルのピット31は前記電池本体の表面にアレイ状に分布しており、隣接するミクロンレベルのピット31の間の間隔は2~200μmであるようにしてもよく、これによって、隣接するミクロンレベルのピット31の間における第1領域20のテキスチャ構造に太陽光発電電池の他の構造を設けて、太陽光発電電池の機能を実現することができる。
【0036】
選択的に、前記ピットは円形孔、矩形孔又は非規則形状の孔のうちのいずれか又は複数を含むようにしてもよく、これによって、入射光はミクロンレベルのピットの底面及び側壁に照射されると、ミクロンレベルのピット内で複数回反射することができ、図2を参照すると、前記ミクロンレベルのピット31は円形孔である。
【0037】
選択的に、前記ピットの深さが0.1μm以上であり、電池本体の表面におけるミクロンレベルのピットの投影面積と電池本体の表面積との比が0.4~0.85であるようにしてもよい。
【0038】
本開示の実施例では、ミクロンレベルのピットの深さ及び前記の比は太陽光発電電池を含む太陽光発電モジュールの具体的な適用場面に応じて決定されてもよく、具体的には、大角度入射光の割合が大きい適用場面では、電池本体の表面における前記ピットの投影の寸法、又は前記ピットの数を増加することによって、電池本体の表面におけるピットの投影面積と電池本体の表面積との比を大きくし、大角度入射光に対する太陽光発電電池の吸収効果を高めることができ、大角度入射光の割合が小さい適用場面では、電池本体の表面における前記ピットの投影の寸法、又は前記ピットの数を減少させることによって、電池本体の表面におけるピットの投影面積と電池本体の表面積との比を小さくし、すなわち、入射光に対する太陽光発電電池の吸収効果を良好なものとすることができる。
【0039】
また、大角度入射光の入射角が大きい場合、深さが小さなミクロンレベルのピットでも、入射光はミクロンレベルのピット内で複数回反射することができ、このため、ミクロンレベルのピットの深さを小さくすることができ、大角度入射光の入射角が小さい場合、深さが大きなミクロンレベルのピットでなければ、入射光はミクロンレベルのピット内で複数回反射することができず、よって、ミクロンレベルのピットの深さを増大する必要がある。
【0040】
選択的に、電池本体は第1電極を含み、第1電極の少なくとも一部はテキスチャ構造に設けられ、すなわち、第1電極は全体としてミクロンレベルのピットに設けられてはいけないようにしてもよく、これによって、ミクロンレベルのピットに対する第1電極の充填を減少させ、大角度反射光に対するミクロンレベルのピットの光閉じ込み機能に影響を与えることを回避できる。
【0041】
選択的に、太陽光発電電池は不動態化層をさらに含み、不動態化層はテキスチャ構造とピットの底面及び側壁上に設けられるようにしてもよく、ナノレベルの光閉じ込み構造と比べて、ミクロンレベルのピットの構造の寸法が大きく、ミクロンレベルのピットを有する太陽光発電電池の表面積が小さく、このため、太陽光発電電池の表面に均一な不動態化層を形成し、太陽光発電電池の表面を不動態化することができる。
【0042】
選択的に、本開示の実施例における太陽光発電電池は両面電極を有する太陽光発電電池、例えば裏面不動態型電池(PERC:Passivated Emitterand Rear Cell)であってもよく、図3を参照すると、本開示の実施例による両面電極付き太陽光発電電池の構造概略図が示されており、図3に示すように、電池本体はシリコンウエハ基板11と、シリコンウエハ基板11の一方の面に設けられる第1電極13及び第1機能層12と、シリコンウエハ基板11の他方の面に設けられる第2機能層14及び第2電極15と、を含む。
【0043】
このうち、第1機能層12は第1領域20のテキスチャ構造上及び第2領域30におけるピット31の底面と側壁上に設けられ、第1機能層12は第1肉抜き構造を有し、第1電極13は第1肉抜き構造の位置にあり、第2機能層14はシリコンウエハ基板11の他方の面に設けられ、第2機能層14は第2肉抜き構造を有し、第2電極15は第2肉抜き構造の位置にある。
【0044】
具体的には、前記シリコンウエハ基板はn型結晶性シリコンウエハを用いて製造されたn型シリコンウエハ基板であってもよく、前記第1機能層は多層構造であってもよく、例えば、前記第1機能層は厚さが2nmの酸化ケイ素と厚さが70nmの窒化ケイ素を含んでもよく、これらはそれぞれ太陽光発電電池の一方の面に対する表面不動態化及び反射防止の機能を発揮する。前記第2機能層も多層構造であってもよく、例えば、前記第2機能層は厚さが2nmの酸化ケイ素、厚さが15nmの酸化アルミニウム及び厚さが50nmの窒化ケイ素を有してもよく、これによって、太陽光発電電池の他方の面に対する表面不動態化及び反射防止の機能を発揮する。
【0045】
さらに、シリコンウエハ基板の一方の面に第1電極が設けられ、シリコンウエハ基板の他方の面に第2電極が設けられ、このように、両面電極を有する太陽光発電電池が製造される。具体的には、マスクを利用して第1機能層上に第1肉抜き構造を製造し、第1電極を前記第1肉抜き構造の位置に配置することで、第1電極をテキスチャ構造上又はピット内に配置してもよいし、マスクを利用して第2機能層上に第2肉抜き構造を製造し、第2電極を前記第2肉抜き構造の位置に配置することで、第2電極をシリコンウエハ基板の他方の面に配置してもよい。
【0046】
選択的に、図3を参照すると、第1電極13は第1バスバー131と第1フィンガー132を含み、第1バスバー131は第1領域20のテキスチャ構造及び/又は第2領域30におけるピット31に設けられ、第1フィンガー132はテキスチャ構造に設けられるようにしてもよい。
【0047】
具体的には、太陽光発電電池では、第1フィンガーは主として、太陽光発電電池による電流を集電し、電流を第1バスバーに輸送する役割を果たし、これによって、複数の太陽光発電電池は第1バスバーを介して当該複数の太陽光発電電池による電流を集電してジャンクションボックスに輸送し、外部機器に電気エネルギーを供給する。第1フィンガーは数が大きく幅が小さいため、図2を参照すると、第1フィンガー132は隣接するピット31の間のテキスチャ構造に設けられてもよく、一方、第1バスバーは数が少なく幅が大きいため、第1バスバー131はピット31内、隣接するピット31の間のテキスチャ構造上、又はピット31内とテキスチャ構造上の両方に設けられてもよく、これによって、太陽光発電電池の構造がよりコンパクトになり、太陽光発電電池の光電変換効率が高まる。
【0048】
選択的に、本開示の実施例における太陽光発電電池は片面電極を有する太陽光発電電池、例えばトンネル酸化物パッシベーションコンタクトセル(TOPCon)、ポリシリコン酸化物パッシベーションコンタクトセル(POLO)、インターデジタイテッドバックコンタクト(IBC)、シリコンヘテロジャンクションセル(SHJ)であってもよく、図4を参照すると、本開示の実施例による片面電極型太陽光発電電池の構造概略図が示されており、図4に示すように、電池本体は、シリコンウエハ基板11と、シリコンウエハ基板11の一方の面に設けられる第1不動態化層17及び第3機能層18と、シリコンウエハ基板11の他方の面に設けられる第2不動態化層19、第4機能層110、第3電極16及び第4電極120と、を含んでもよい。
【0049】
ここでは、第1領域20のテキスチャ構造はシリコンウエハ基板11の一方の面に設けられ、ピット31の底面は前記シリコンウエハ基板内に設けられ、第1不動態化層17はテキスチャ構造とピット31の底面及び側壁上に設けられ、第3機能層18は第1不動態化層17のシリコンウエハ基板11から離れた面に設けられ、第2不動態化層19はシリコンウエハ基板11の他方の面に設けられ、第4機能層110は第2不動態化層19のシリコンウエハ基板11から離れた面に設けられ、第4機能層110は第3肉抜き構造を有し、第3電極16と第4電極120は第3肉抜き構造の位置に間隔をあけて設けられる。
【0050】
具体的には、前記シリコンウエハ基板はn型結晶性シリコンウエハを用いて製造されたn型シリコンウエハ基板であってもよく、前記第1不動態化層は非晶質シリコン又は酸化ケイ素であってもよく、これによって、太陽光発電電池の一方の面に対する表面不動態化機能を発揮する。第3機能層は多層構造、例えば、全厚さが70nmの多層窒化ケイ素構造であってもよく、これによって、太陽光発電電池の一方の面に対する表面場不動態化及び反射防止の機能を発揮する。第2不動態化層は非晶質シリコン又は酸化ケイ素であってもよく、これによって、太陽光発電電池の他方の面に対する表面不動態化機能を発揮する。第4機能層は太陽光発電電池の他方の面に対する表面場不動態化及び反射防止の機能を発揮することができる。
【0051】
さらに、シリコンウエハ基板の他方の面に第3電極及び第4電極が設けられ、このように、片面電極を有する太陽光発電電池が製造される。具体的には、マスクを利用して第4機能層上に第3肉抜き構造を製造し、第3電極及び第4電極を第3肉抜き構造の位置に間隔をあけて設けるようにしてもよい。
【0052】
選択的に、図4を参照すると、第3電極16と第2不動態化層19との間に第1収集層162及び第1輸送層161が設けられており、第1収集層162は第2不動態化層19のシリコンウエハ基板11から離れた面に設けられ、第1輸送層161は第1収集層162の第2不動態化層19から離れた面に設けられ、第4電極120と第2不動態化層19との間に第2収集層122及び第2輸送層121が設けられており、第2収集層122は第2不動態化層19のシリコンウエハ基板11から離れた面に設けられ、第2輸送層121は第2収集層122の第2不動態化層19から離れた面に設けられる。
【0053】
具体的には、シリコンウエハ基板としてn型結晶性シリコンウエハが使用される場合、第1収集層はn型ドープ非晶質シリコンからなる多数キャリア収集領域であってもよく、第2収集層はp型ドープ非晶質シリコンからなる少数キャリア収集領域であってもよく、第1収集層と第2収集層はシリコンウエハ基板の他方の面における第2不動態化層の表面に間隔をあけて配列され、このような場合、第1輸送層は前記第1収集層に対応するキャリア輸送層、すなわち多数キャリア輸送層であり、第3電極は片面電極を有する太陽光発電電池の多数キャリア側電極であり、第2輸送層は前記第2収集層に対応するキャリア輸送層、すなわち少数キャリア輸送層であり、第4電極は片面電極を有する太陽光発電電池の少数キャリア側電極である。
【0054】
本開示はまた上記の太陽光発電電池の製造方法を提供し、図5を参照すると、本開示の実施例による太陽光発電電池の製造方法のステップの流れ図が示されており、該方法はステップ101とステップ102を含んでもよい。
【0055】
ステップ101:電池本体の一方の面に分布しているピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造からなるテキスチャ構造を前記電池本体の少なくとも1つの面に製造する。
【0056】
このステップでは、テクスチャリングプロセスにより、電池本体にピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造からなるテキスチャ構造を製造してもよい。
【0057】
具体的には、テキスチャ構造は電池本体の一方の面に連続的に分布しているピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造からなり、前記電池本体は単結晶シリコンウエハを用いて製造されたものであってもよく、このような場合、前記テキスチャ構造はテクスチャリングプロセスにより単結晶シリコンウエハの一方の面に製造された規則的なピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造であり、また、前記電池本体は多結晶シリコンウエハを用いて製造されたものであってもよく、このような場合、前記テキスチャ構造はテクスチャリングプロセスにより多結晶シリコンウエハの一方の面に製造された不規則的なピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造である。
【0058】
ステップ102:前記電池本体の表面に複数のミクロンレベルのピットを製造する。
【0059】
このステップでは、上記のステップで製造されたテキスチャ構造を有する電池本体の表面にフォトレジストを塗布し、所望のパターンを有するマスクを用いて光を照射した後に、遮られていない位置にあるフォトレジストを洗浄除去することにより、対応する穴構造を形成し、さらに深掘反応性イオンエッチングプロセスにより、上記の穴位置でエッチングして複数のピットを形成するようにしてもよく、また、電池本体の表面における前記ピットの投影の寸法は0.5~100μmであり、電池本体の厚さ方向からのピットの側壁のズレ角度は15度未満である。
【0060】
図6を参照すると、本開示の実施例による両面電極型太陽光発電電池の製造方法のステップの流れ図が示されており、該方法はステップ201~ステップ204を含んでもよい。
【0061】
ステップ201:前記電池本体のシリコンウエハ基板の少なくとも1つの面に前記テキスチャ構造を製造する。
【0062】
このステップでは、前記シリコンウエハ基板はn型結晶性シリコンウエハを用いて製造されたn型シリコンウエハ基板であってもよく、前記シリコンウエハ基板の厚さは150μmであってもよいが、前記シリコンウエハ基板は厚さが10~50μmの極薄結晶性シリコンウエハ、又は厚さが50~100μmの中等厚結晶性シリコンウエハであってもよいし、前記シリコンウエハ基板は単結晶であってもよく、多結晶であってもよい。
【0063】
さらに、テクスチャリングプロセスにより、前記シリコンウエハ基板の少なくとも1つの面にピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造からなるテキスチャ構造を製造してもよい。
【0064】
ステップ202:前記シリコンウエハ基板の表面に複数のピットを製造する。
【0065】
このステップでは、上記のステップで製造されたテキスチャ構造を有するシリコンウエハ基板の表面にフォトレジストを塗布し、所望のパターンを有するマスクを用いて光を照射した後に、遮られていない位置にあるフォトレジストを洗浄除去することにより、対応する穴構造を形成し、さらに深掘反応性イオンエッチングプロセスにより、上記の穴位置でエッチングして複数のピットを形成するようにしてもよく、また、電池本体の表面における前記ピットの投影の寸法は0.5~100μmであり、電池本体の厚さ方向からのピットの側壁のズレ角度は15度未満である。
【0066】
具体的には、前記ピットは、平均孔径が5μmであり得る円形孔状構造であってもよく、隣接するピットの間隔が15μm、深さが0.5μmである。
【0067】
さらに、テキスチャ構造を有するシリコンウエハ基板の一方の面に複数のピットを製造した後に、テキスチャ構造の表面とピットの側壁及び底面上に層状のPN接合構造層を拡散により製造することによって、キャリア分離能力を実現してもよい。
【0068】
ステップ203:前記テキスチャ構造と前記ピットの側壁及び底面上に不動態化層を製造する。
【0069】
このステップでは、テキスチャ構造とピットの側壁及び底面上に不動態化層を成膜してもよく、例えば、前記不動態化層は厚さが2nmの酸化ケイ素を含んでもよく、これによって、太陽光発電電池の一方の面に対する表面不動態化機能を発揮する。
【0070】
さらに、前記不動態化層上に厚さが70nmの窒化ケイ素を製造してもよく、これによって、太陽光発電電池の一方の面に対する反射防止機能を発揮し、厚さが2nmの酸化ケイ素及び厚さが70nmの窒化ケイ素により多層構造を有する第1機能層が形成される。
【0071】
ステップ204:前記テキスチャ構造上及び前記ピット内に第1電極を製造するとともに、前記シリコンウエハ基板の他方の面に第2電極を製造する。
【0072】
このステップでは、テキスチャ構造上及びピット内に第1電極を製造してもよい。
【0073】
具体的には、マスクを利用して第1機能層に第1肉抜き構造を製造し、第1電極を第1肉抜き構造の位置に配置することで、第1電極をテキスチャ構造上又はピット内に配置してもよい。
【0074】
さらに、シリコンウエハ基板の他方の面上に第2機能層を成膜してもよく、前記第2機能層は多層構造であってもよく、例えば、前記第2機能層は厚さが2nmの酸化ケイ素、厚さが15nmの酸化アルミニウム及び厚さが50nmの窒化ケイ素を含んでもよく、これによって、太陽光発電電池の他方の面に対する表面不動態化及び反射防止の機能を発揮する。
【0075】
さらに、前記シリコンウエハ基板の他方の面に第2電極を製造し、具体的には、マスクを利用して第2機能層に第2肉抜き構造を製造し、第2電極を第2肉抜き構造の位置に配置することで、第2電極をシリコンウエハ基板の他方の面に配置するようにしてもよい。
【0076】
選択的に、図7を参照すると、本開示の実施例による片面電極型太陽光発電電池の製造方法のステップの流れ図が示されており、該方法は、ステップ301~ステップ305を含んでもよい。
【0077】
ステップ301:前記電池本体のシリコンウエハ基板の少なくとも1つの面に前記テキスチャ構造を製造する。
【0078】
このステップでは、前記シリコンウエハ基板はn型結晶性シリコンウエハを用いて製造されたn型シリコンウエハ基板であってもよく、前記シリコンウエハ基板の厚さは100μmであってもよい。
【0079】
さらに、テクスチャリングプロセスにより、前記シリコンウエハ基板の少なくとも1つの面に、連続的に分布しているピラミッド状及び/又は逆ピラミッド状構造からなるテキスチャ構造を製造してもよい。
【0080】
ステップ302:前記シリコンウエハ基板の表面に複数のピットを製造する。
【0081】
このステップでは、上記のステップで製造されたテキスチャ構造を有するシリコンウエハ基板の一方の面に、レーザーアブレーションプロセスにより、所定の深さを有する深孔を形成し、レーザーアブレーションプロセス後に深孔を化学的に研磨して、滑らかな側壁と底面を形成することによって、複数のピットを製造してもよく、また、電池本体の表面における前記ピットの投影の寸法は0.5~100μmであり、電池本体の厚さ方向からのピットの側壁のズレ角度は15度未満である。
【0082】
具体的には、前記ピットは、平均孔径が2μmであり得る円形孔状構造であってもよく、隣接するピットの間隔が5μm、深さが1μmである。
【0083】
ステップ303:前記テキスチャ構造と前記ピットの側壁及び底面上に第1不動態化層を製造し、前記第1不動態化層上に第3機能層を製造する。
【0084】
このステップでは、テキスチャ構造とピットの側壁及び底面上に第1不動態化層を製造してもよく、前記第1不動態化層は非晶質シリコン又は酸化ケイ素であってもよく、これによって、太陽光発電電池の一方の面に対する表面不動態化機能を発揮する。
【0085】
さらに、第1不動態化層上に第3機能層を製造してもよく、前記第3機能層は多層構造、例えば、全厚さが70nmの多層窒化ケイ素構造であってもよく、これによって、太陽光発電電池の一方の面に対する表面場不動態化及び反射防止の機能を発揮する。
【0086】
ステップ304:前記シリコンウエハ基板の他方の面上に第2不動態化層を製造し、前記第2不動態化層上に第4機能層を製造する。
【0087】
このステップでは、シリコンウエハ基板の他方の面上に第2不動態化層を製造してもよく、前記第2不動態化層は非晶質シリコン又は酸化ケイ素であってもよく、これによって、太陽光発電電池の他方の面に対する表面不動態化機能を発揮する。
【0088】
さらに、第2不動態化層上に第4機能層を製造してもよく、前記第4機能層は太陽光発電電池の他方の面に対する表面場不動態化及び反射防止の機能を発揮することができる。
【0089】
ステップ305:前記シリコンウエハ基板の他方の面に第3電極及び第4電極を製造する。
【0090】
このステップでは、シリコンウエハ基板の他方の面に第3電極及び第4電極が設けられてもよく、これによって、片面電極を有する太陽光発電電池が製造される。具体的には、マスクを利用して第4機能層に第3肉抜き構造を製造し、第3電極と第4電極を第3肉抜き構造の位置に間隔をあけて配置してもよい。
【0091】
本開示の実施例では、第3電極と第2不動態化層との間に第1収集層及び第1輸送層が設けられ、第1収集層は第2不動態化層のシリコンウエハ基板から離れた面に設けられ、第1輸送層は第1収集層の第2不動態化層から離れた面に設けられ、第4電極と第2不動態化層との間に第2収集層及び第2輸送層が設けられており、第2収集層は第2不動態化層のシリコンウエハ基板から離れた面に設けられ、第2輸送層は第2収集層の第2不動態化層から離れた面に設けられるようにしてもよい。
【0092】
具体的には、シリコンウエハ基板としてn型結晶性シリコンウエハが使用される場合、第1収集層はn型ドープ非晶質シリコンからなる多数キャリア収集領域であってもよく、第2収集層はp型ドープ非晶質シリコンからなる少数キャリア収集領域であってもよく、第1収集層と第2収集層はシリコンウエハ基板の他方の面における第2不動態化層の表面に間隔をあけて配置され、第2不動態化層における第1収集層と第2収集層の投影の面積の比が5%~45%であってもよく、また、第1収集層と第2収集層との間に電気的に分離するための隙間が設けられており、このような場合、第1輸送層は前記第1収集層に対応するキャリア輸送層、すなわち多数キャリア輸送層であり、第3電極は片面電極的を有する太陽光発電電池の多数キャリア側電極であり、第2輸送層は前記第2収集層に対応するキャリア輸送層、すなわち少数キャリア輸送層であり、第4電極は片面電極を有する太陽光発電電池の少数キャリア側電極であり、さらに、前記第1収集層及び第2収集層はさらにドープ多結晶シリコン材料を使用してもよい。
【0093】
なお、方法の実施例は、説明の便宜上、一連の動作の組み合わせとして説明されるが、本開示の実施例によれば、いくつかのステップが他の順序で行われてもよく、又は同時に行われてもよいので、本開示の実施例は、説明された動作の順序に限定されないことを当業者には認識される。次に、本明細書に記載された実施例はいずれも好ましい実施例であり、関連する動作の全てが本開示の実施例に必須であるとは限らないことも当業者には認識される。
【0094】
さらに、本開示はまた、上記の太陽光発電電池からなる太陽光発電モジュールを提供する。
【0095】
なお、本明細書では、「含む」、「包含する」等の用語、又はその他の任意の変形は、非排他的包含をカバーすることを意図しており、それにより、一連の要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置は、それらの要素だけでなく、明示的にリストされていない他の要素も含むか、又はそのようなプロセス、方法、物品、又は装置に固有の要素も含む。これ以上の制限がない場合、「1つの……を含む」という文によって限定される要素は、当該要素を含むプロセス、方法、物品又は装置にさらにほかの同一の要素が存在することを排除するものではない。
【0096】
以上では、本開示の実施例は図面を参照して説明されたが、本開示は上記の特定実施形態に限定されるものではなく、上記の特定実施形態は例示的なものに過ぎず、限定的なものではなく、当業者は本開示に基づいて本開示の趣旨及び請求項により保護される範囲を逸脱することなく、多くの形態を実施することもでき、このような形態はすべて本開示により保護される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7