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  • 特許-多結晶SiC成形体及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】多結晶SiC成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/42 20060101AFI20240905BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C23C16/42
H01L21/205
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023580450
(86)(22)【出願日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2023024819
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2022205441
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219576
【氏名又は名称】東海カーボン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】杉原 孝臣
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-067844(JP,A)
【文献】特開2012-240859(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115750(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/100564(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0064496(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/42
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面及び前記第1の主面に平行な第2の主面を有する略板状の多結晶SiC成形体であって、
前記多結晶SiC成形体は、
EBSD法により測定されたEBSD方位マップにおいて、
前記第1の主面に対する法線方向に沿って、
(200)面が配向する領域R200と、
(311)面が配向する領域R311と、
(111)面が配向する領域R111と、及び
(220)面が配向する領域R220と、並びに
前記第2の主面に対する法線方向に沿って、
(200)面が配向する領域R200と、
(311)面が配向する領域R311と、
(111)面が配向する領域R111と、及び
(220)面が配向する領域R220と、
を含み、
領域RXYZの面積分率=
領域RXYZの面積/(領域R111の面積+領域R200の面積+領域R220の面積+領域R311の面積)
但し、領域RXYZは、領域R111、領域R200、領域R220、領域R311、のいずれか
として、
前記第1の主面における領域R200の面積分率と前記第2の主面における領域R200の面積分率の差が10.0%以下、
及び
前記第1の主面における領域R311の面積分率と前記第2の主面における領域R311の面積分率の差が10.0%以下、
の少なくとも一方である、
多結晶SiC成形体。
【請求項2】
前記第1の主面における領域R111の面積分率と前記第2の主面における領域R111の面積分率の差が2.0%以下、
及び
前記第1の主面における領域R220の面積分率と前記第2の主面における領域R220の面積分率の差が2.0%以下、
の少なくとも一方である、
請求項1に記載の多結晶SiC成形体。
【請求項3】
BOWの絶対値が30μm以下である、請求項1又は2に記載の多結晶SiC成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶SiC成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiC成形体は、耐熱性、耐蝕性及び強度等の種々の特性に優れており、様々な用途に使用されている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、半導体製造時に使用されるエッジリング、電極板、ヒータなどのプラズマエッチング装置用部材として、SiC成形体を用いる点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-316821号公報
【文献】特開2001-220237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多結晶SiC成形体には、高い平坦性を有していることが求められる場合がある。例えば、特許文献1及び2に記載されるように、多結晶SiC成形体をプラズマエッチング用部材として使用する場合、被処理物をプラズマにより均一に処理するようにするため、プラズマエッチング装置用部材として使用される多結晶SiC成形体は、平坦な面を有していることが求められる。
【0005】
そこで、本発明の課題は、平坦性に優れた多結晶SiC成形体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、板状の多結晶SiC成形体において、第1の主面と第1の主面に平行な第2の主面との間における特定方位の結晶面が配向する領域の面積分率の差が、多結晶SiC成形体の平坦性に関連することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の事項により実現される。
【0007】
<1> 第1の主面及び前記第1の主面に平行な第2の主面を有する略板状の多結晶SiC成形体であって、
前記多結晶SiC成形体は、
前記第1の主面に対する法線方向に沿って、
(200)面が配向する領域R200と、
(311)面が配向する領域R311と、
(111)面が配向する領域R111と、及び
(220)面が配向する領域R220と、並びに
前記第2の主面に対する法線方向に沿って、
(200)面が配向する領域R200と、
(311)面が配向する領域R311と、
(111)面が配向する領域R111と、及び
(220)面が配向する領域R220と、
を含み、
領域RXYZの面積分率=
領域RXYZの面積/(領域R111の面積+領域R200の面積+領域R220の面積+領域R311の面積)
但し、領域RXYZは、領域R111、領域R200、領域R220、領域R311、のいずれか
として、
前記第1の主面における領域R200の面積分率と前記第2の主面における領域R200の面積分率の差が10.0%以下、
及び
前記第1の主面における領域R311の面積分率と前記第2の主面における領域R311の面積分率の差が10.0%以下、
の少なくとも一方である、
多結晶SiC成形体。
【0008】
<2> 前記第1の主面における領域R111の面積分率と前記第2の主面における領域R111の面積分率の差が2.0%以下、
及び
前記第1の主面における領域R220の面積分率と前記第2の主面における領域R220の面積分率の差が2.0%以下、
の少なくとも一方である、
<1>に記載の多結晶SiC成形体。
【0009】
<3> BOWの絶対値が30μm以下である、<1>又は<2>に記載の多結晶SiC成形体。
【0010】
<4> 基材上に、CVD法により多結晶SiC層を成膜することを含む<1>~<3>のいずれか1項に記載の多結晶SiC成形体の製造方法であって、
多結晶SiC層の成膜時に、多結晶SiC層における第2の主面と、多結晶SiC層における第1の主面との間の領域R200の面積分率の差及び領域R311の面積分率の差の少なくとも一方を10.0%以下になるように、結晶の成長を制御することを特徴とする製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、平坦性に優れた多結晶SiC成形体及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】EBDS法により測定された多結晶SiC成形体のEBSD方位マップの一例を示す。
図2】多結晶SiC成形体のEBSD方位マップの模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の本発明の詳細な説明は実施形態の例示のひとつであり、本発明は本実施形態に何ら限定して解釈されるものではない。
【0014】
本実施形態に係る多結晶SiC成形体は、第1の主面及び第1の主面に平行な第2の主面を有し、板状である。この第1の主面並びに第2の主面はCVDにおける基材の面に平行な面を示す。この多結晶SiC成形体においては、第1の主面の領域R200の面積分率と第2の主面の領域R200の面積分率においてその差が10.0%以下、及び第1の主面の領域R311の面積分率と第2の主面の領域R311の面積分率においてその差が10.0%以下、の少なくとも一方である。
【0015】
領域R200の面積分率の差は、「第1の主面における領域R200の面積分率」と「第2の主面における領域R200の面積分率」の「差」により表される。
【0016】
領域R311の面積分率の差は、「第1の主面における領域R311の面積分率」と「第2の主面における領域R311の面積分率」の「差」により表される。
【0017】
ここで、「領域の面積分率」とは、特定の結晶面の配向の程度を指す。具体的には、「領域の面積分率」とは、以下の通りである。本明細書において、「領域の面積分率」とは、EBSD(Electron backscatter diffraction)法により、同一配向として観測される領域の大きさから算出される値である。図1にEBSD法により測定された多結晶SiC成形体のEBSD方位マップの一例を示す。ここで、「同一配向」とは、同一の結晶組織であって、第1の主面または第2の主面に対する同一の配向性を有する領域である。同一配向の領域は、EBSD方位マップにおいて同一のパターンで表示される。図2に多結晶SiC成形体のEBSD方位マップの模式図を示す。
特定配向を示す領域Aの「面積分率」は、具体的に、EBSD法により観測された全領域内において、上記同一配向を示す領域Aの総面積(SA)を、観測された全配向(A、B、C、D・・・)の面積の和(SA+SB+SC+SD・・・)で除した値を指す。
SAは領域Aと同一配向として同じパターンで測定される領域の面積の総和
SBは領域Bと同一配向として同じパターンで測定される領域の面積の総和
SCは領域Cと同一配向として同じパターンで測定される領域の面積の総和
SDは領域Dと同一配向として同じパターンで測定される領域の面積の総和
【0018】
ここで、全領域の測定領域は100μm×100μmから500μm×500μmまでの領域で正方形並びに長方形に適宜調整される。測定領域を500μ×500μm以下の領域とすることで特定の結晶面の配向を示す領域の総画素数を大きくすることができ、測定精度が向上する。測定領域を100μm×100μm以上の領域とすることで測定領域全体の分解能を保持できることから、測定精度が向上する。
【0019】
領域Aの「面積分率の差」は第1の主面の領域Aの「面積分率」と第2の主面の領域Aの「面積分率」の差を指す。
【0020】
特定配向を示す領域の面積分率は、後述する実施例において説明される方法により、測定することができる。
【0021】
本発明者らの知見によれば、領域R200の面積分率の差、及び領域R311の面積分率の差、の少なくとも一方を10.0%以下とすることにより、SiC成形体の反りが抑制される。すなわち、平坦性が高い多結晶SiC成形体が実現される。
【0022】
多結晶SiC成形体の反りが発生する要因は種々あるが、その中の一つは多結晶SiC成形体に内在応力が存在することにより、平坦に加工した後に内在応力により多結晶SiC成形体が変形するためである。
【0023】
内在応力が発生する要因は種々あるが、発明者はその要因の一つが第一の主面の特定配向を示す領域の面積分率と第二の主面の特定配向を示す領域の面積分率が異なることにあり、その差異が大きいほど内在応力が大きいため、反りが発生することを見出した。
【0024】
多結晶SiC成形体は基材面から多結晶SiCが堆積することで厚くなっていくが、その過程において、特定配向を示す領域の面積分率が異なってくると、配向の変化に起因する圧縮応力、引っ張り応力が発生する。特定配向を示す領域の面積分率が大きく変化すればそれだけ発生する圧縮応力、引っ張り応力が大きくなり、最終的に発生する内在応力が大きくなり、ひいては発生する反りの程度が大きくなる。
【0025】
多結晶SiC成形体において、領域R111の面積分率の差が2.0%以下、及び領域R220の面積分率の差が2.0%以下、の少なくとも一方である。
【0026】
領域R111の面積分率の差は、「第1の主面における領域R111の面積分率」と「第2の主面における領域R111の面積分率」の「差」により表される。
【0027】
同様に、領域R220の面積分率の差は、「第1の主面における領域R220の面積分率」と「第2の主面における領域R220の面積分率」の「差」により表される。
【0028】
好ましくは、多結晶SiC成形体は、円盤状である。好ましくは、多結晶SiC成形体は、直径1.5~12インチ、より好ましくは直径4~9インチの円盤状である。多くの用途に使用可能な加工体が加工可能であることから、直径1.5インチ以上が好ましく、成形体全体の物性が均一となることから、直径12インチ以下が好ましい。
【0029】
好ましくは、多結晶SiC成形体の厚さは、0.10mm~7.00mmである。より好ましくは0.15mm~5.00mm、更に好ましくは0.30~3.00mmである。加工中の割れを低減できる等、取扱い易い多結晶SiC成形体を得らえることから、0.10mm以上が好ましく、クラック等の発生を防止できる点から7.00mm以下が好ましい。
【0030】
好ましくは、多結晶SiC成形体は、0.050Ωcm以下の抵抗率、好ましくは0.020Ωcm以下の抵抗率、さらに好ましくは0.005Ωcm以下の抵抗率を有する。
このような抵抗率を有していることにより、高い導電性が求められる用途において多結晶SiC成形体を好適に使用することができる。
【0031】
抵抗率は、例えば、多結晶SiC成形体中に窒素をドープすることにより、調整することができる。多結晶SiC成形体中における窒素のドープ量は、例えば200ppm(2.8×1019atoms/cm3)以上、好ましくは400ppm(5.6×1019atoms/cm3)以上、さらに好ましくは1450ppm(2.0×1020atoms/cm3)以上である。
【0032】
上述の通り、本実施形態によれば、第1の主面の領域R200の面積分率と、第2の主面の領域R200の面積分率において、その差が10.0%以下、及び、第1の主面の領域R311の面積分率と、第2の主面の領域R311の面積分率において、その差が10.0%以下、の少なくとも一方であるとされているため、多結晶SiC成形体の反りを低減することができる。
【0033】
具体的には、本実施形態によれば、多結晶SiC成形体が円盤状である場合に、絶対値が30μm以下のBOWを実現することができる。
【0034】
なお、BOWは、シリコンウエハー等の円盤状基板における平坦性を表す公知のパラメータである。以下、BOWについて説明する。
【0035】
BOWは、多結晶SiC成形体基板の主面上に設定された3点を通る平面(3点基準面という)と、多結晶SiC成形体基板の主面中心点との間の距離を表す。3点基準面を決めるために設定される3点は、主面の中心を中心とする正三角形が形成されるような位置に設定される。また、この3点は、多結晶SiC基板の外周端から直径の3%ほど内側の位置に設定される。
【0036】
より具体的には、BOW値は、トロペル社製FlatMaster200より、測定することができる。
【0037】
(製造方法)
続いて、本実施形態に係る多結晶SiC成形体の製造方法について、一例を挙げて説明する。
【0038】
本実施形態に係る多結晶SiC成形体は、例えば、基材上に、CVD法により多結晶SiC層を成膜することにより、得ることができる。
【0039】
具体的には、まず、CVD炉内に、基材として黒鉛基板等を配置する。
【0040】
そして、キャリアガス、SiCの供給源となる原料ガス、及び窒素含有ガスを混合し、混合ガスをCVD炉に供給する。これにより、基材上に多結晶SiC層が成膜される。また、窒素含有ガス由来の窒素が、多結晶SiC層にドープされる。
【0041】
成膜後、得られた多結晶SiC層を基材から分離する。更に、多結晶SiC層を研削する。これにより、多結晶SiC成形体が得られる。
【0042】
ここで、多結晶SiC層の成膜時には、多結晶SiC層における基材側の面(例えば第2の主面)と、多結晶SiC層におる成長面(例えば第1の主面)との間の領域R200の面積分率の差及び領域R311の面積分率の差の少なくとも一方を10.0%以下になるように、結晶の成長が制御される。
【0043】
具体的には、成膜温度を好ましくは1100℃~1900℃、より好ましくは1200℃~1600℃の範囲内の温度で形成し、滞留時間を20秒から45秒、基材とガスノズルの位置関係を基材平面に対するガス噴射角度を5°から55°、窒素分圧を10.0%から60%に制御することにより、領域R200の面積分率の差、及び領域R311の面積分率の差、の少なくとも一方を10.0%以下にできる。
【0044】
成膜時に使用されるキャリアガスとしては、特に限定されるものでは無いが、例えば、水素ガス等を用いることができる。
【0045】
原料ガスとしては、Si及びCの供給源を含むガスであれば特に限定されるものでは無い。例えば、分子内にSi及びCを含有するガスや、分子内にSiを含有するガスと炭化水素ガスとの混合ガス、等を用いることができる。
【0046】
原料ガスとしては、例えば、1成分系の場合は、トリクロロメチルシラン、トリクロロフェニルシラン、ジクロロメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、及びクロロトリメチルシラン等を挙げることができる。また2成分系の場合は、トリクロロシラン、及びモノシラン等のシラン含有ガスと、炭化水素ガスとの混合物等を挙げる事ができる。
【0047】
成膜後、得られた多結晶SiC成形体層を基材から分離した、成形直後の多結晶SiC成形体の成長面側には凹凸が発生しており、また、基材面側には分離した基材の一部が付着している。これらの残存は反りに影響を与えることから、多結晶SiC成形体の成長面側及び基材面側を適宜研削して凹凸並びに残留基材部分を除去する。成長面側の研削量並びに基材面側の研削量は凹凸の程度、残留基材部分の程度、研削前の多結晶SiC成形体の厚み、研削後に必要となる多結晶SiC成形体の厚み等から20μm以上で適宜調整される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、領域R200の面積分率の差、及び領域R311の面積分率の差、の少なくとも一方を10.0%以下になるように制御されるため、多結晶SiC成形体の反りを低減することができる。具体的には、多結晶SiC成形体が円盤状である場合に、絶対値が30μm以下のBOWを実現することができる。
【0049】
本実施形態に係る多結晶SiC成形体は、平坦性が求められる用途に好適に使用される。例えば、そのような用途として、単結晶SiC層を支持するための支持基板が挙げられる。あるいは、多結晶SiC成形体は、半導体製造時に使用されるプラズマエッチング装置用部材として好適に使用される。そのようなプラズマエッチング装置用部材として、エッジリング、電極板及びヒータ等が挙げられる。また、多結晶SiC成形体は、半導体製造時に半導体熱処理装置用部材として使用されるダミーウェハとしても用いることができる。
【実施例
【0050】
以下、本発明についてより詳しく説明するため、本発明者らによって行われた実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるべきものでは無い。
【0051】
(実施例1)
CVD炉内に、直径160mm、厚さ5mmの黒鉛基板を設置した。CVD炉に、トリクロロメチルシラン(原料ガス)、水素(キャリアガス)、及び窒素ガスを導入し、1400℃にて10時間、黒鉛基板上に多結晶SiC膜を成膜した。
成膜条件を表1に示す。
【0052】
ガス滞留時間は、35(秒)であった。尚、ガス滞留時間は、下記式により算出した。
(式1):ガス滞留時間(秒)=(炉内容積/ガス流量)×((20+273)/(反応温度+273))×60
成膜後、黒鉛基板をCVD炉から取り出し、外周加工及び分割加工を行った。更に、黒鉛基材を除去し、直径150mm、厚さ0.6mmの多結晶SiC成形体を得た。更に、平面研削加工にて、第1の主面並びに第2の主面を研削加工し、直径150mm、厚さ0.4mmの多結晶SiC成形体を得た。これを、実施例1に係る多結晶SiC成形体として得た。
【0053】
(実施例2~6及び比較例1~2)
表1の記載に従って条件を変更したことを除いて、実施例1に記載された方法に従ってSiC成形体を得た。
【0054】
(抵抗率の測定)
4探針法によって、多結晶SiC成形体の体積抵抗率を測定した。測定装置として「ロレスタ-GP MCT-T610」(三菱ケミカルアナリテック株式会社)を使用した。
具体的に、測定装置のプローブを多結晶SiC成形体の第1面に接触させて、体積抵抗率を測定した。結果を表2に示す。
【0055】
(窒素濃度の測定)
二次イオン質量分析法によって、多結晶SiC成形体中の窒素濃度を測定した。測定装置として「SIMS-4000」(ATOMIKA)を使用した。結果を表2に示す。
【0056】
(面積分率の差の測定)
得られた実施例1~6及び比較例1~2に係る多結晶SiC成形体について、以下の方法により、領域R200の面積分率の差、領域R311の面積分率の差、領域R111の面積分率の差、領域R220の面積分率の差を測定した。尚、各結晶面領域の面積分率の差は、「第1の主面の各結晶面領域の面積分率」と「第2の主面の各結晶領域の面積分率」の「差」により計算した。結果を表3に示す。
【0057】
(各結晶面領域の面積分率の測定)
(株)TSLソリューションズ社製 DigiViewにより、実施例1~6及び比較例1~2で得られた多結晶SiC成形体の主面法線方向±15°方向(以下ND方向という。)についてEBSD方位マップを測定した。
【0058】
EBSD方位マップのうち、3C型結晶構造SiCの(111)面がND方向に沿って配向している領域R111の面積をS(111)として抽出した。同様に(200)面の領域R200の面積、(220)面の領域R220の面積又は(311)面の領域R311の面積についても、S(200)、S(220)、S(311)として抽出した。抽出結果に基づき、以下の計算により測定領域300μm×300μmにおける各結晶面領域の面積分率を求めた。
各結晶面領域の面積分率=
各結晶面領域の面積/(S(111)+S(200)+S(220)+S(311))
EBSD方位マップの測定条件は、下記の通りとした。
前処理: 機械研磨、カーボン蒸着
装置: FE-SEM (株)日立ハイテク社製 SU-70
EBSD (株)TSLソリューションズ社製 DigiView
測定条件: 電圧: 20kV
傾斜角: 70°
測定領域: 300μm×300μm
測定間隔: 0.35μm
評価対象結晶系:3C型SiC(空間群 216)
【0059】
(BOWの測定)
BOWは、多結晶SiC基板の主面上に設定された3点を通る平面(3点基準面という)と、多結晶SiC基板の主面中心点との間の距離を表す。3点基準面を決めるために設定される3点は、主面の中心を中心とする正三角形が形成されるような位置に設定される。また、この3点は、多結晶SiC基板の外周端から直径の3%ほど内側の位置に設定される。
【0060】
より具体的には、BOW値は、トロペル社製FlatMaster200より、測定することができる。測定で得られたBOW値の絶対値を表3に示す。
【0061】
尚、表3の、(111)/Total、(200)/Total、(220)/Total及び(311)/Totalは、それぞれ、領域R111の面積分率の差、領域R200の面積分率の差、領域R220の面積分率の率差及び領域R311の面積分率の差を表す。
【0062】
表3に示されるように、領域R200の面積分率の差と領域R311の面積分率の差とBOWとの間には、明確な相関関係が見られた。領域R200の面積分率の差及びR311の面積分率の差の少なくとも一方が10.0%以下の範囲内にある場合に、絶対値が30μm以下という小さいBOWが得られた。
【0063】
その一方で、領域R111の面積分率の差及び領域R220の面積分率の差については、いずれか一方が2.0%以下の範囲内にある場合に、絶対値が30μm以下という小さいBOWが得られた。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0067】
半導体製造時に使用されるエッジリング、電極板、ヒータなどのプラズマエッチング装置用部材として、平坦性に優れた多結晶SiC成形体を提供できる。
【要約】
第1の主面及び平行な第2の主面を有する略板状の多結晶SiC成形体であって、多結晶SiC成形体は、第1の主面に対する法線方向に沿って、(200)面、(311)面、(111)面、(220)面がそれぞれ配向する領域R200、領域R311、領域R111、領域R220と、第2の主面に対する法線方向に沿って、(200)面、(311)面、(111)面、(220)面がそれぞれ配向する領域R200、領域R311、領域R111、領域R220と、を含み、領域RXYZの面積分率=領域RXYZの面積/(領域R111の面積+領域R200の面積+領域R220の面積+領域R311の面積)但し、領域RXYZは、領域R111、領域R200、領域R220、領域R311、のいずれかとして、第1の主面における領域R200の面積分率と第2の主面における領域R200の面積分率の差が10.0%以下、及び第1の主面における領域R311の面積分率と第2の主面における領域R311の面積分率の差が10.0%以下、の少なくとも一方である、平坦性に優れた多結晶SiC成形体及びその製造方法を提供する。
図1
図2