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特許7550324情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
A61M1/36 127
A61M1/36 103
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024003596
(22)【出願日】2024-01-12
【審査請求日】2024-01-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004266
【氏名又は名称】弁理士法人MSウィード
(72)【発明者】
【氏名】繁田 愼也
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-213642(JP,A)
【文献】国際公開第2013/187055(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液を浄化する血液浄化装置のプライミング時間を推定する情報処理装置であって、
前記血液浄化装置に装着される血液浄化器及び体外循環回路の種別に応じて設定された識別データを取得し、前記プライミング時間を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記識別データを入力して、前記血液浄化装置のプライミングに必要となる残時間を推定する推定部と、
前記血液浄化装置の前記プライミング時間を表示するための表示データを前記残時間に基づいて生成する制御部と、を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記血液浄化装置の本体に設けられ、前記体外循環回路内の気泡を検出する気泡検出器から受信する気泡データに基づいて前記残時間を修正する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記学習済み推定モデルから前記プライミング時間の初期表示時間を取得し、前記初期表示時間を前記残時間とする、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化器の種別データ、前記体外循環回路の種別データ、及び基本プライミング時間データを関連付けて機械学習することによって生成されている、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置のプライミングの開始から所定時間の経過後における前記体外循環回路の気泡減少量を、前記血液浄化器の種別データ、前記体外循環回路の種別データ、及び基本プライミング時間データに関連付けて機械学習することによって生成され、
前記推定部は、前記識別データとともに前記気泡データを前記学習済み推定モデルに入力する、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記血液浄化装置のプライミングの開始から所定時間の経過後の前記気泡データを前記学習済み推定モデルに入力し、
前記学習済み推定モデルは、前記気泡データに基づいて、前記所定時間の経過後における前記残時間を再出力する、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記推定部は、前記血液浄化装置のプライミングの開始から所定時間の経過後の前記気泡データを前記学習済み推定モデルに追加入力して、取得した前記初期表示時間を前記残時間とする、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置の温度データ及び圧力データを、前記血液浄化器の種別データ、前記体外循環回路の種別データ、及び基本プライミング時間データに関連付けて機械学習することによって生成され、
前記推定部は、前記識別データとともに前記温度データ及び前記圧力データを前記学習済み推定モデルに入力する、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記推定部は、前記血液浄化装置の前記プライミングが完了すると、完了したプライミングに係るデータを使用し、前記学習済み推定モデルの追加学習を行う、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項10】
患者の血液を浄化する血液浄化装置のプライミング時間を推定する情報処理方法であって、
前記血液浄化装置に装着される血液浄化器及び体外循環回路の種別に応じて設定された識別データを取得する工程と、
前記プライミング時間を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記識別データを入力して、前記血液浄化装置のプライミングに必要となる残時間を推定する工程と、
前記血液浄化装置の前記プライミング時間を表示するための表示データを前記残時間に基づいて生成する工程と、を有する情報処理方法。
【請求項11】
患者の血液を浄化する血液浄化装置のプライミング時間を推定するプログラムであって、
前記血液浄化装置に装着される血液浄化器及び体外循環回路の種別に応じて設定された識別データを取得し、
前記プライミング時間を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記識別データを入力して、前記血液浄化装置のプライミングに必要となる残時間を推定し、
前記血液浄化装置の前記プライミング時間を表示するための表示データを前記残時間に基づいて生成する、処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血液浄化装置のプライミング時間の推定に係る情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血液浄化による治療として、中空糸膜を有するダイアライザを用いた透析治療が知られている。当該透析治療においては、患者から取り出した血液を血液回路によって体外循環させつつ、血液回路に接続されたダイアライザを用いて血液浄化を行い、浄化後の血液を患者の体内に戻す処理が行われる。
【0003】
一般に、当該透析治療を行う前段階として、血液回路及びダイアライザの血液側に存在する汚れ又は気泡を除去する必要がある。このため、透析液又は生理食塩水等のプライミング液を血液回路内に充填して循環させ、血液回路及びダイアライザの血液側における洗浄及び気泡除去といったプライミングが、当該透析治療の前段階に行われている。このようなプライミングに係る時間(以下、プライミング時間とも称する)は、血液浄化装置において表示され、血液浄化装置の操作者(医師又は看護師等の医療従事者)が当該時間を把握することが可能である。
【0004】
特許文献1には、プライミングの効率化及びプライミング時間の短縮を図るための血液浄化装置が開示されている。特に、特許文献1の血液浄化装置においては、ウエット型の血液浄化手段又はドライ型の血液浄化手段のいずれかであるかが判定され、血液浄化手段の型に対応させたプライミングである液充填が行われる。
【0005】
また、特許文献2には、プライミングの完了を正確に判定するための体外循環装置が開示されている。特に、特許文献2の体外循環装置においては、プライミングの完了の判定を操作者が行わず、プライミングの動作中に、気泡が検出されない時間が所定時間以上になると、プライミングが完了したと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-36536号公報
【文献】国際公開第2013/187055号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、血液浄化装置に表示されるプライミングの完了までの時間は、標準的な血液回路及びダイアライザを想定した固定値となっている。このため、血液回路内の気泡量によってプライミングが完了したか否かの判定が行われると、血液回路及びダイアライザの種類及び状態によって気泡の抜け方が通常とは異なる場合、表示された時間と実際にプライミングが完了するまでの時間にずれが生じることがある。すなわち、血液浄化装置の操作者が、プライミングの開始段階で表示された時間を目安にして別の場所での作業を行った後に戻っても、プライミングが完了しておらず、作業の待ちが生じる問題がある。
【0008】
本開示はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、血液浄化装置のプライミング時間をより正確に推定するための情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様によれば、「患者の血液を浄化する血液浄化装置のプライミング時間を推定する情報処理装置であって、前記血液浄化装置に装着される血液浄化器及び体外循環回路の種別に応じて設定された識別データを取得し、前記プライミング時間を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記識別データを入力して、前記血液浄化装置のプライミングに必要となる残時間推定する推定部と、前記血液浄化装置の前記プライミング時間を表示するための表示データを前記残時間に基づいて生成する制御部と、を有する情報処理装置。」が提供される。
【0010】
本開示の一態様によれば、「患者の血液を浄化する血液浄化装置のプライミング時間を推定する情報処理方法であって、前記血液浄化装置に装着される血液浄化器及び体外循環回路の種別に応じて設定された識別データを取得する工程と、前記プライミング時間を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記識別データを入力して、前記血液浄化装置のプライミングに必要となる残時間推定する工程と、前記血液浄化装置の前記プライミング時間を表示するための表示データを前記残時間に基づいて生成する工程と、を有する情報処理方法。」が提供される。
【0011】
本開示の一態様によれば、「患者の血液を浄化する血液浄化装置のプライミング時間を推定するプログラムであって、前記血液浄化装置に装着される血液浄化器及び体外循環回路の種別に応じて設定された識別データを取得し、前記プライミング時間を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記識別データを入力して、前記血液浄化装置のプライミングに必要となる残時間を推定し、前記血液浄化装置の前記プライミング時間を表示するための表示データを前記残時間に基づいて生成する、処理をコンピュータに実行させるプログラム。」が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、血液浄化装置のプライミング時間をより正確に推定するための情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することができる。
【0013】
なお、上記効果は説明の便宜のための例示的なものにすぎず、本開示に係る効果は上記に限定されない。上記効果に加えて、本開示によれば、本開示中に記載されたいかなる効果を奏することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る血液浄化装置の使用状態の一例を示す概略図である。
図2】第1実施形態に係る血液浄化装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る血液浄化装置の内部配管部の構成図である。
図4】第1実施形態に係る血液浄化装置の体外循環部の構成図である。
図5】第1実施形態に係る血液浄化装置の部分構成図である。
図6】第1実施形態に係る情報処理装置の機能ブロック図である。
図7】第1実施形態に係る血液浄化装置におけるプライミング時間の推定に係るシーケンス図である。
図8】第1実施形態に係る情報処理装置に設定される学習済み推定モデルの設定の流れを示すフロー図である。
図9】第1実施形態に係る情報処理装置に設定される学習済み推定モデルの評価の流れを示す概略図である。
図10】第1実施形態に係る学習済み推定モデルの生成用の学習データを示すテーブルデータである。
図11】第1実施形態に係る学習済み推定モデルの生成用の学習データを示すグラフである。
図12】第1実施形態に係る血液浄化装置において表示される表示画面である。
図13】第1実施形態に係る血液浄化装置において表示される表示画面である。
図14】第1実施形態に係る血液浄化装置において表示される表示画面である。
図15】第1実施形態に係る血液浄化装置におけるプライミング時間の推定に係るシーケンス図である。
図16】第1実施形態に係る血液浄化装置において表示される表示画面である。
図17】第1実施形態の変形例に係る血液浄化装置の構成図である。
図18】第2実施形態に係る血液浄化システムの構成を示す概略図である。
図19】第2実施形態に係る血液浄化装置の機能ブロック図である。
図20】第2実施形態に係る情報処理装置の物理構成を示すブロック図である。
図21】第2実施形態に係る血液浄化装置の機能ブロック図である。
図22】第3実施形態に係る血液浄化装置の機能ブロック図である。
図23】第3実施形態に係るメモリに記憶されたテーブルデータである。
図24】第3実施形態に係るプライミング経過時間と回路内気泡量との関係を示すグラフである。
図25】第3実施形態に係る血液浄化装置におけるプライミング時間の推定に係るシーケンス図である。
図26】第3実施形態の変形例に係るメモリに記憶されたテーブルデータである。
図27】第3実施形態の変形例に係るプライミング経過時間と回路内気泡量との関係を示すグラフである。
図28】第3実施形態の変形例に係る血液浄化装置におけるプライミング時間の推定に係るシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示の情報処理装置及びこれを有する血液浄化装置について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、各実施形態の説明において用いる図面は、いずれも本開示に係る情報処理装置及びこれを有する血液浄化装置を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略等を行っており、各構成部分の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、各実施形態で用いる一部の数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。そして、各図面における共通する構成については、同一の参照符号が付されている。
【0016】
<第1実施形態>
(血液浄化装置の構成)
まず、図1乃至図5を参照しつつ、本開示の情報処理装置を有する血液浄化装置の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る血液浄化装置の使用状態の一例を示す概略図である。図2は、本実施形態に係る血液浄化装置の電気的構成を示すブロック図である。図3は、本実施形態に係る血液浄化装置の内部配管部の構成図である。図4は、本実施形態に係る血液浄化装置の体外循環部の構成図である。図5は、本実施形態に係る血液浄化装置の部分構成図であって、プライミングに係る部分を詳細に記載したものである。
【0017】
図1に示すように、血液浄化装置1は、患者Hに対して透析治療を行うための透析装置から構成されている。具体的に、血液浄化装置1は、ベースユニット2の上に設置された本体3、本体3の上部に接続されたディスプレイ4、及び本体3の側方に設置された血液浄化器5を有している。また、血液浄化装置1の本体3には、情報処理装置6、血液浄化器5との間において透析液を循環させるための内部配管部7、及び患者Hの体液である血液を体外で循環させるための体外循環部8を有している。血液浄化装置1は、このような構成により、患者Hの血液を体外に取り出し、当該血液から不要若しくは有毒な物質又は水分を血液浄化器5において除去し、浄化された血液を患者Hに戻すことが可能となっている。
【0018】
ベースユニット2は、本体3の底部に接続した板状のベース2a、及びベース2aに設置された4つのキャスタ2bから構成されている。これにより、血液浄化装置1を容易に移動させることが可能となる。なお、キャスタ2bの数量は4つの限定されることなく、血液浄化装置1を移動可能にすることができれば、3つ又は5つ以上であってもよい。
【0019】
本体3は、略直方体状の筐体から構成されている。また、本体3の内部及び表面には、血液浄化装置1を構成する各種の構成装置及び各種の構成部品が配設されている。ここで、構成装置の一例としては、後述する複式ポンプ、除水ポンプ、脱気ポンプ、加圧ポンプ、原液ポンプ、及び血液ポンプ等のポンプ、並びに各種の検出器がある。一方、当該構成部品の一例としては、後述する電磁弁、フィルタ、各種のセンサ、血液回路、透析液回路等の部品がある。なお、本実施形態においては、当該血液回路が血液浄化装置1の外部に位置する消耗品となるため、当該血液回路のみが体外循環回路に該当する。
【0020】
図2に示すように、血液浄化装置1は、ディスプレイ4、情報処理装置6、内部配管部7、体外循環部8、通信部9、及び読取部10が、制御ライン及びデータラインを介して、互いに電気的に接続されている。これにより、血液浄化装置1においては、各種の電気部品同士の信号、データ、情報の送受信が可能となるとともに、情報処理装置6による各種の制御も可能となる。なお、以下において、データとは、信号等を処理した数値、記号、又は文字等からなるものを基本的に想定する。また、情報とは、当該データを収集又は加工したものを基本的に想定し、例えば、受信者がその後の検討材料に用いたり、受信者に活用できる内容が想定される。ただし、データ及び情報については、その内容や前後の文脈に対応させ、上記想定に合致せずに使用される場合もある。
【0021】
血液浄化装置1及び血液浄化器5を使用して治療を開始する場合、治療前に所定の準備が必要となる。具体的には、プライミング、ガスパージ、及び脱血という準備処理が必要となる。プライミングとは、体外循環部8を構成する血液回路及び血液浄化器5の血液側の洗浄、気泡除去、及びプライミング液の充填を行う処理である。また、ガスパージとは、血液浄化器5の透析液側の洗浄、気泡除去、及び液充填を行う処理である。更に、脱血とは、患者Hから血液を取り出して、当該血液回路及び血液浄化器5の血液側に充填されているプライミング液を当該血液に置換する処理である。本実施形態の情報処理装置6においては、プライミングの残時間を推定することに特徴があるため、以下においてはプライミングに係る内容を主として説明し、公知の内容と同様となる他の準備処理及び治療自体における各種の処理、並びにこれらの処理における構成装置等の動作の説明は省略する。
【0022】
本実施形態においては、血液浄化装置1の一例として血液透析装置の場合を説明しているが、これに限定されることはない。例えば、急性血液浄化用の装置、腹膜透析装置、限外濾過装置、又は血液濾過装置も、血液浄化装置1の一例となり得る。
【0023】
〔ディスプレイ〕
次に、図1及び図2に示すように、ディスプレイ4は、タッチパネル型の入力インターフェイスからなる入力部4a、及び一般的な画面型の出力インターフェイスからなる出力部4bを有している。すなわち、本実施形態におけるディスプレイ4は、入出力インターフェイスを備えるタッチパネルである。ここで、タッチパネルによる入力の検出方式は、静電容量式、又は抵抗膜式等のいなかる方式であってもよい。また、当該タッチパネルにおける操作可能となる領域及び位置は、血液浄化装置1の管理者等が自由に設定することができる。すなわち、ディスプレイ4における入力部4a及び出力部4bの配置は、適宜設定することが可能である。
【0024】
なお、ディスプレイ4から入力インターフェイスを分離してもよい。この場合には、テンキー又は文字入力キーなどの物理キーボタンを備えるキーボード、及びマウス等の入力装置が血液浄化装置1に設けられてもよい。
【0025】
〔血液浄化器〕
血液浄化器5は、血液側のポートとして血液導入口及び血液導出口をその筐体の両端に有するとともに、透析液側のポートとして透析液導入口及び透析液導出口をその筐体の側部に有している。当該血液導入口には後述する動脈側血液回路L21が接続され、当該導出口には後述する静脈側血液回路L22が接続される。また、当該透析液導入口には後述する主配管L1が接続され、当該透析液導出口には主配管L2が接続される。
【0026】
血液浄化器5は、複数の中空糸膜(図示せず)をその内部に収容しており、当該中空糸が血液を浄化するための血液浄化膜を構成している。血液浄化器5内には、当該血液浄化膜を介して患者Hの血液が流れる血液流路及び透析液が流れる透析液流路が形成されている。また、当該血液浄化膜を構成する中空糸膜には、その外周面と内周面とを貫通した微小な孔が多数形成されており、当該中空糸膜を介して血液中の不純物等が透析液内に透過し得るように構成されている。
【0027】
また、血液浄化器5の筐体の側部には、血液浄化器5の識別データを記憶したICタグ(RFIDタグ、RFタグ)が設けられている。当該識別データは、血液浄化装置1に装着された血液浄化器5がいずれの種別(タイプ)であるかを識別するためのデータであり、例えば血液浄化器5の型式であってもよい。また、当該識別データは、製造日、製造場所、又は使用期限等の付加データを含んでいてもよい。当該ICタグの種別としては、パッシブタイプ、アクティブタイプ、又はセミパッシブタイプのいずれでもよいが、識別データの読み出し頻度及び電池の必要性を考慮して、パッシブタイプが好ましい。
【0028】
なお、血液浄化器5は、上述したような構成を備えるダイアライザに限定されない。例えば、エンドトキシン吸着治療、活性炭吸着治療、又はビリルビン吸着治療等に使用される吸着型血液浄化器であってもよい。また、血液浄化器5は、ヘモダイアフィルターであってもよい。
【0029】
〔通信部〕
次に、図2に示すように、通信部9は、通信処理回路9a及びアンテナ9bから構成されている。通信部9は、通信処理回路9a及びアンテナ9bを介して、血液浄化装置1とは離間して設置された医療機関のサーバ装置、又は医療従事者(血液浄化装置1の管理者)が使用する端末装置との間で情報の送受信を行う。
【0030】
通信処理回路9aは、LTE方式に代表されるような広帯域の無線通信方式に基づいて処理を実行してもよい。また、通信処理回路9aは、IEEE802.11に代表されるような無線LAN若しくはBluetooth(登録商標)のような狭帯域の無線通信に関する方式に基づいて処理を実行してもよい。さらに、通信処理回路9aは、非接触無線通信に関する方式に基づいて処理を実行してもよい。そして、通信処理回路9aは、このような無線通信に代えて、又は加えて、有線通信が利用されてもよい。
【0031】
〔読取部〕
読取部10は、ICタグ用の一般的なリーダ装置である。本実施形態において、読取部10は、血液浄化器5に設けられたICタグ、及び後述する血液回路に設けられたICタグに記憶された識別データを読取る。具体的に、血液浄化器5及び後述する血液回路が装着されると、ICタグが読取部10による読取可能な位置に存在することになり、読取部10から送出される電波をエネルギーとして各ICタグが動作する。これにより、読取部10はICタグとの通信が可能となり、ICタグに記憶された識別データを受信することが可能になる。
【0032】
なお、通信部9にも通信機能があるため、ICタグを読取るための機能を通信部9に実装し、通信部を読取部10として機能するようにしてもよい。
【0033】
〔内部配管部〕
次に、図3に示すように、内部配管部7は、血液浄化器5の給液側に主配管L1、排液側に主配管L2が接続され、血液浄化器5をバイパスするようにバイパス配管L3、バイパス配管L4、及びバイパス配管L5が主配管L1と主配管L2との間に接続された構造を有する。また、主配管L1の供給側(上流側)から主配管L2の排出側(下流側)とを接続するように、バイパス配管L10が設けられている。更に、主配管L2の途中には、主配管L2の一部をバイパスするように、バイパス配管L11,L12が主配管L2に対して並列となるように接続されている。そして、主配管L2とバイパス配管L11とを接続するように、接続配管L13が設けられている。例えば、各配管には、塩化ビニールチューブ又はシリコンチューブ等の柔軟性を備える材料が使用される。更に、これらの各配管により、透析液回路L14が構成されている。
【0034】
図3に示すように、各配管には、ポンプ、弁、センサ、フィルタ等が配設されている。具体的に、主配管L1においては、減圧弁V1、電磁弁V2、脱気ポンプP0、脱ガスチャンバ11、複式ポンプP1、背圧弁V3、温度センサS1、フィルタF12、電磁弁V4、フィルタF2、接続ポートT1、圧力センサS2、及び電磁弁V5が、内部配管部7の給液端子側から血液浄化器5の一端に向かって順番に配設されている。ここで、主配管L1に配設された接続ポートT1には、後述するプライミングにおいて、プライミング液である透析液を体外循環部8に供給するためのプライミング液供給ラインL31が接続されている。また、主配管L1の先端(血液浄化器5との接続側)にはコネクタC1が配設されている。更に、主配管L2においては、電磁弁V6、圧力センサS3、加圧ポンプP2、脱ガスチャンバ12、複式ポンプP1、背圧弁V7、及び流量検出器13、及び電磁弁V8が、血液浄化器5の一端から内部配管部7の排液端子側に向かって順番に配置されている。そして、主配管L2の先端(血液浄化器5との接続側)にはコネクタC2が配設されている。
【0035】
バイパス配管L3は、主配管L1上のフィルタF1と、主配管L2上の圧力センサS3の下流側とを接続する位置に設けられている。ここで、バイパス配管L3には、電磁弁V9が配設されている。また、バイパス配管L4は、主配管L1上のフィルタF2と、主配管L2上の圧力センサS3の上流側(すなわち、電磁弁V6の下流側)とを接続する位置に設けられている。ここで、バイパス配管L4には、電磁弁V10が配設されている。更に、バイパス配管L5は、主配管L1上の電磁弁V5の下流側と、主配管L2上の電磁弁V6の上流側とを接続する位置に設けられている。ここで、バイパス配管L5は、主配管L1のコネクタC1と主配管L2のコネクタC1とを接続することにより形成される。すなわち、治療を行う場合には主配管L1及び主配管L2が血液浄化器5に接続されるが、内部配管部7の洗浄を行う場合等に、コネクタC1及びコネクタC2が接続されてバイパスコネクタC3がバイパス配管L5上に形成されることになる。なお、上流及び下流とは、各部材における透析液の流れに対応して定義している。
【0036】
バイパス配管L10は、主配管L1上の電磁弁V2と脱気ポンプP0との間と主配管L2上の電磁弁V8の下流側との間に脱ガスチャンバ11を経由して接続され、減圧弁V1、電磁弁V2及び脱ガスチャンバ11以外の部品をバイパスするような構成を有する。バイパス配管L11,L12は、主配管L2上の圧力センサS3と複式ポンプP1との間と、主配管L2上の複式ポンプP1と流量検出器13との間に接続され、複式ポンプP1をバイパスするような構成を有する。本実施形態においては、バイパス配管L12と比較して、バイパス配管L11が複式ポンプP1に近い位置に接続されている。また、バイパス配管L11には、背圧弁V11及び除水ポンプP3が配設されている。更に、バイパス配管L12には、電磁弁V12が配設されている。接続配管L13は、主配管L2上の脱ガスチャンバ12と、バイパス配管L11上の背圧弁V11と除水ポンプP3との間と、を接続している。
【0037】
上述した各種の弁、各種のポンプ、及び流量検出器13は、情報処理装置6から供給される制御信号に基づいて、各動作が制御される。これにより、透析液を所望の流量にて循環させ、又は各種の洗浄を行うことができる。例えば、複式ポンプP1による送液量をより正確に行うため、複式ポンプP1が吸い込み動作を行っている場合、給水圧又は加圧ポンプP2によって加圧することにより、当該吸い込み動作をサポートするような制御が行われる。すなわち、給液側の吸い込み量のサポートのために、減圧弁V1を制御して給水圧が調整され、排液側の吸い込み量のサポートのために、加圧ポンプP2が制御される。ここで、加圧ポンプP2の圧力制御には、加圧ポンプP2の圧力が所定以上になると、背圧弁V11が開弁することで実行される。一方、複式ポンプP1が吐出動作している場合、吐出圧が所定値以下になったら液が流れないように背圧弁V3,V7が閉弁し、慣性の影響をなくすことによって吐出動作をサポートするような制御が行われる。すなわち、給液側の吐出量のサポートのために、背圧弁V3が閉弁し、排液側の吐出量のサポートのために、背圧弁V7が閉弁している。
【0038】
また、これらの弁、ポンプ、及び流量検出器13は、各構成装置若しくは構成部品、又はこれらを有する血液浄化装置1の動作状態を示す状態パラメータを情報処理装置6に対して送信することが可能である。例えば、これらの弁、ポンプ、流量検出器13は、内蔵された各種センサによって測定された状態パラメータを、情報処理装置6に対して送信してもよい。すなわち、状態パラメータとは、各種センサによって測定された測定値であってもよい。なお、各種センサが内蔵されていない場合には、各構成装置又は構成部品の近傍に配設された各種のセンサによって状態パラメータが測定され、送信されてもよい。
【0039】
同様に、上述した各種のセンサも、測定値を情報処理装置6に対して送信することが可能である。これにより、情報処理装置6は、血液浄化装置1の内部配管部7の動作状態を示す各種の状態パラメータを取得することが可能になる。
【0040】
以上のように、内部配管部7においては、透析液の循環処理、及び洗浄処理に加えて、血液浄化装置1、並びに血液浄化装置1の構成装置及び構成部品の動作状態を示す状態パラメータの取得処理が行われている。
【0041】
〔体外循環部〕
次に、図4に示すように、体外循環部8は、血液浄化器5に対する血液導入側に動脈側血液回路L21が接続され、血液浄化器5に対する血液導出側に静脈側血液回路L22が接続された構造を有する。また、動脈側血液回路L21と静脈側血液回路L22との間には、血液浄化器5をバイパスするように、液面調整回路L23が接続されている。ここで、液面調整回路L23は、血液浄化器5に対して並列に配置されたバイパスラインL24、及びバイパスラインL24に対する空気の導入又は排出を行うための開放ラインL25から構成されている。例えば、各回路には、塩化ビニールチューブ又はシリコンチューブ等の柔軟性を備える材料が使用される。なお、以下において、各血液回路のいずれかを特定しない場合、及びこれらの血液回路をまとめて説明する場合、単に体外循環回路L20と称する。
【0042】
動脈側血液回路L21には、コネクタC21、電磁弁V21、接続ポートT2、気泡検出器22、血液ポンプP21、血液濃度検出器23、及び動脈側エアトラップチャンバ24が、患者H側から血液浄化器5に向かって順番に配設されている。ここで、接続ポートT2には、後述するプライミングにおいて、プライミング液である透析液を各血液ポート内に供給するためのプライミング液供給ラインL31が接続されている。また、本実施形態において、気泡検出器22は、動脈側血液回路L21自体の途中に直接的に設けられているのではく、例えば、血液浄化装置1の本体3に対して有線コードを介して繋げられ、動脈側血液回路L21内の気泡を検出できるように、独立した構造が採用されている。なお、気泡検出器22は、動脈側血液回路L21自体の途中に直接的に設けられてもよい。
【0043】
一方、静脈側血液回路L22には、静脈側エアトラップチャンバ25、流量検出器26、圧力検出器27、気泡検出器28、電磁弁V22、及びコネクタC22が、血液浄化器5から患者Hに向かって順番に配設されている。ここで、気泡検出器28は気泡検出器22と同様に、静脈側血液回路L22自体の途中に直接的に設けられているのではく、例えば、血液浄化装置1の本体3に対して有線コードを介して繋げられ、静脈側血液回路L22内の気泡を検出できるように、独立した構造が採用されている。なお、血液浄化装置1を駆動させて患者Hの血液を浄化する場合には、コネクタC21には動脈側穿刺針(図示せず)が接続され、コネクタC22には静脈側穿刺針(図示せず)が接続され、各穿刺針が患者Hの腕に刺さることになる。
【0044】
このような構成から、動脈側血液回路L21においては、患者Hから取り出した血液の量及び濃度が検出され、静脈側血液回路L22においては、患者Hに戻す血液の量及び濃度が検出される。また、接続ポートから供給されるプライミング液が、血液浄化器5を経由して静脈側血液回路L22にまで供給される。
【0045】
液面調整回路L23のバイパスラインL24には、動脈側エアトラップチャンバ24から静脈側エアトラップチャンバ25に向かって、圧力センサS22、電磁弁V23、電磁弁V24、及び圧力センサS23が順番に配設されている。また、液面調整回路L23の開放ラインL25には、液面調整ポンプP22が配設されている。このような構成により、液面調整ポンプP22を駆動して空気の導入又は排出が可能となり、各エアトラップチャンバにおける血液面を調整することができる。なお、各エアトラップチャンバに代えて、空気層を設けない圧力検出器を配設してもよい。この場合であっても、液面調整ポンプP22を駆動して液面調整が行われる。
【0046】
上述した各電磁弁、各種のポンプ、及び各種の検出器は、情報処理装置6から供給される制御信号に基づいて、各動作が制御される。また、これらの電磁弁、ポンプ、及び検出器は、各構成装置若しくは構成部品、又はこれらを有する血液浄化装置1の動作状態を示す状態パラメータを情報処理装置6に対して送信することが可能である。例えば、これらの電磁弁、ポンプ、及び検出器は、内蔵された各種センサによって測定された状態パラメータを、情報処理装置6に対して送信してもよい。すなわち、状態パラメータとは、各種センサによって測定された測定値であってもよい。なお、各種センサが内蔵されていない場合には、各構成装置又は構成部品の近傍に配設された各種のセンサによって状態パラメータが測定され、送信されてもよい。
【0047】
同様に、上述した各圧力センサも、測定値を情報処理装置6に対して送信することが可能である。これにより、情報処理装置6は、血液浄化装置1の体外循環部8の動作状態を示す各種の状態パラメータを取得することが可能になる。
【0048】
以上のように、体外循環部8においては、血液の導入及び導出の処理、及び液面の調整処理に加えて、血液浄化装置1、並びに血液浄化装置1の構成装置及び構成部品の動作状態を示す状態パラメータの取得処理が行われている。
【0049】
また、体外循環部8を構成する体外循環回路L20の表面には、体外循環回路L20の識別データを記憶したICタグ(RFIDタグ、RFタグ)が設けられている。当該識別データは、装着された体外循環回路L20がいずれの種別(タイプ)であるかを識別するためのデータであり、例えば、体外循環回路L20の型式であってもよい。また、当該識別データには、製造日、製造場所、又は使用期限等の付加データを含んでいてもよい。当該ICタグの種別としては、パッシブタイプ、アクティブタイプ、又はセミパッシブタイプのいずれでもよいが、識別データの読み出し頻度及び電池の必要性を考慮して、パッシブタイプが好ましい。
【0050】
〔プライミング〕
図5に示すように、内部配管部7の接続ポートT1と体外循環部8の接続ポートT2は、プライミング液供給ラインL31によって接続されている。また、プライミング液供給ラインL31には、電磁弁V31が配設されている。これにより、電磁弁V31が開いている場合、内部配管部7において生成された透析液が、プライミング液供給ラインL31を介して体外循環部8に供給されることになる。
【0051】
具体的に、電磁弁V31の開弁処理を行うための制御信号(駆動信号)が情報処理装置6から電磁弁V31に供給され、血液ポンプP21を駆動するための制御信号(駆動信号)が情報処理装置6から血液ポンプP21に供給される。これにより、電磁弁V31が開き、血液ポンプP21が駆動し、内部配管部7において生成されていた透析液がプライミング液として、体外循環部8に流れ込むことになる。なお、図5において点線に示すように、血液浄化装置1の外部に設置された生理食塩水バッグ30から生食液をプライミング液として供給してもよい。この場合、生理食塩水バッグ30と電磁弁V31との間には、チャンバ31が配設されてもよい。
【0052】
その後、情報処理装置6は、気泡検出器22、流量検出器26、圧力検出器27、及び気泡検出器28において検出されたデータを受信し、検出データに基づいてプライミングが完了した否かを判定する。例えば、情報処理装置6は、血液回路から気泡が検出されず、プライミング液の流量及び圧力が所定値以上となった場合に、プライミングが完了したと判定してもよい。より具体的に、内部配管部7から体外循環部8に対して所定量のプライミング液の供給が完了すると、電磁弁V31の閉弁処理を行うための制御信号(駆動信号)が情報処理装置6から電磁弁V31に供給され、電磁弁V31が閉じてプライミング液の供給が停止する。その後、血液ポンプP21を駆動し続けることにより、体外循環部8に供給されたプライミング液を循環させ、体外循環部8の洗浄が行われる。そして、所定の時間が経過し、血液回路から気泡が検出されず、プライミング液の流量及び圧力が所定値以上になると、血液ポンプP21を停止するための制御信号(停止信号)が情報処理装置6から血液ポンプP21に供給される。これにより、血液回路内がプライミング液で充填され、洗浄も完了することになる。
【0053】
〔情報処理装置〕
次に、本実施形態に係る情報処理装置6は、図2に示すように、プロセッサ6a及びメモリ6bから構成されている。
【0054】
プロセッサ6aは、GPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)又はCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)から構成され、メモリ6bに記憶された各種プログラムに基づいて、接続された他の構成装置又は構成部品を制御する制御部として機能する。具体的には、プロセッサ6aは、血液浄化処理を実行するためのプログラム又はOSを実行するためのプログラムをメモリ6bから読み出して実行する。また、プロセッサ6aは、血液浄化装置1のプライミング時間を推定する処理を実行する。なお、プロセッサ6aは、単一のGPU又はCPUで構成されても良いが、複数のCPU又はGPUを組み合わせて構成しても良い。
【0055】
メモリ6bは、ROM、RAM、不揮発性メモリ、HDD等から構成され、記憶部として機能する。ROMは、血液浄化処理を実行するための指示命令をプログラムとして記憶する。また、ROMは、血液浄化装置1におけるプライミング時間の推定を行うために必要となる学習済み推定モデルを記憶する。また、RAMは、ROMに記憶されたプログラムがプロセッサ6aにより処理されている間、データの書き込み及び読み込みをするために用いられる。不揮発性メモリは、当該プログラムの実行によってデータの書き込み及び読み込みが実行される記憶装置であって、ここに書き込まれたデータは、当該プログラムの実行が終了した後でも保存される。
【0056】
特に、本実施形態においては、血液浄化装置1のプライミングを推定するためのプログラムが記憶されている。当該プログラムは、血液浄化装置1に装着される血液浄化器5及び体外循環回路L20の種別に応じて設定された識別データを取得する処理をコンピュータ(すなわち、血液浄化装置1の情報処理装置6)に実行させるものである。また、当該プログラムは、血液浄化装置1のプライミングに必要となる残時間を当該識別データに基づいて推定するする処理をコンピュータに実行させるものである。更に、当該プログラムは、血液浄化装置1のプライミング時間を表示するための表示データを当該残時間に基づいて生成する処理をコンピュータに実行させるものである。なお、当該プログラムによって実行される処理については、後述するものとする。
【0057】
(情報処理装置の機能構成)
次に、図6を参照しつつ、本実施形態に係る血液浄化装置1の情報処理装置6の機能的な構成を説明する。ここで、図6は、第1実施形態に係る情報処理装置6の機能ブロック図である。特に、図6においては、情報処理装置6以外にも血液浄化装置1の他の構成装置及び構成部品を記載し、各装置間における情報及びデータの流れも記載している。
【0058】
図6に示すように、情報処理装置6は、推定部51、制御部52、及び記憶部53を有する。また、推定部51は、算出部55及び学習済み推定モデル56を含む。これらの各部は、情報処理装置6のプロセッサ6a及びメモリ6b自体が機能することで実現され、又はプロセッサ6aがメモリ6bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0059】
推定部51は、血液浄化器5のICタグに記憶された識別データ、及び体外循環回路L20のICタグに記憶された識別データを、図2に示す読取部10を介して受信する。各識別データは、血液浄化器5及び体外循環回路L20の種別に応じて設定されており、各識別データに基づいて、血液浄化器5及び体外循環回路L20に係る各種のデータを把握することができる。
【0060】
また、推定部51は、気泡検出器60から気泡データを、図2に示す通信部9を介して受信する。ここで、気泡検出器60とは、図4及び図5に示す気泡検出器22,28を総称するものであり、いずれかの気泡検出器に限定するものではない。
【0061】
更に、推定部51は、図2に示す通信部9を介して圧力センサS61から圧力信号を受信する。同様に、推定部51は、図2に示す通信部9を介して温度センサS62から温度信号を受信する。ここで、圧力センサS61及び温度センサS62は、図3に示す各圧力センサ又は各温度センサを総称するものであり、いずれかの圧力センサ又は温度センサに限定されるものではない。
【0062】
そして、推定部51は、血液浄化器5の識別データ、及び体外循環回路L20の識別データを、入力部4aの操作によって入力された入力データとしても受信する。同様に、推定部51は、血液浄化装置1の使用環境に係るデータを、入力部4aの操作によって入力された入力データとしても受信する。ここで、血液浄化装置1の使用環境に係るデータは、例えば、圧力及び温度の値である。すなわち、血液浄化装置1の使用環境に係るデータは、血液浄化装置1が設置されている周囲の気温データ及び気圧データである。なお、入力データは必ず受信されるわけではなく、識別データ、並びに温度及び圧力の値を各構成部品等から受信しない場合には、血液浄化装置1の管理者による操作がなされることによって、各データを受信することになる。また、当該入力データは、他の血液浄化装置又はサーバ装置等から、通信部9を介して受信してもよい。
【0063】
推定部51の算出部55は、圧力センサS61及び温度センサS62から受信した各種の電気信号に基づいて、血液浄化装置1の使用環境を算出する。具体的に、算出部55は、受信した電気信号に基づいて、血液浄化装置1が設置されている使用環境(温度、気圧)を算出し、算出データとして出力する。ここで、内部配管部7に透析液が充填されていない場合には、内部配管部7の内部が大気解放されているため、測定される温度及び圧力が血液浄化装置1の使用環境に係るものと合致し、内部配管部7に透析液が充填されていない状態(すなわち、治療前の段階)において、圧力センサS61及び温度センサS62による測定が行われる。なお、血液浄化装置1の本体3に圧力センサ及び温度センサを別途設置することにより、血液浄化装置1の動作状態にかかわらず、血液浄化装置1の使用環境に係るデータを測定できるようにしてもよい。
【0064】
推定部51は、通信部9又は読取部10を介して受信した各受信データ、及び算出部55によって算出された算出データを記憶するために、各データを記憶部53に送信する。記憶部53は、受信した各データをメモリ6bに記憶する。
【0065】
そして、推定部51は、学習済み推定モデル56を用いてプライミング時間を推定するために、通信部9又は読取部10を介して受信した各受信データ、及び算出部55によって算出された算出データを学習済み推定モデル56に入力する。学習済み推定モデル56は、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を用い、入力されたデータからプライミング時間を推定し、推定結果であるプライミング完了までの残時間を出力する。なお、学習済み推定モデル56及び出力データである残時間については、モデル設定を含めて後述する。推定部51は、学習済み推定モデル56の出力データである残時間を取得すると、当該残時間を制御部52に送信する。
【0066】
制御部52は、血液浄化装置1のプライミング時間(プライミング完了までの時間)を、血液浄化装置1の管理者が把握可能に表示するために、推定した残時間に基づいて表示データを生成する。また、制御部52は、表示指示となる制御信号を生成し、当該表示データとともに当該表示指示を出力部4bに送信する。
【0067】
出力部4bは、血液浄化装置1のプライミング時間をディスプレイ4を介して表示し、血液浄化装置1の管理者にプライミング完了までの時間を告知する。当該管理者は、表示されたプライミング時間を確認することにより、プライミング完了までに必要となる時間を把握し、表示された時間に合わせて別の作業を実施することが可能になる。
【0068】
(血液浄化装置における処理)
次に、本実施形態に係る血液浄化装置1のプライミング時間を推定及び表示するまでに、血液浄化装置1において実行される処理を、図7乃至図16を参照しつつ説明する。ここで、図7及び図15は、本実施形態に係る血液浄化装置1におけるプライミング時間の推定に係るシーケンス図である。図8は、本実施形態に係る情報処理装置6に設定される学習済み推定モデル56の設定の流れを示すフロー図である。図9は、本実施形態に係る情報処理装置6に設定される学習済み推定モデル56の評価の流れを示す概略図である。図10は、本実施形態に係る学習済み推定モデル56の生成用の学習データを示すテーブルデータである。図11は、本実施形態に係る学習済み推定モデル56の生成用の学習データを示すグラフである。図12図13図14、及び図16は、本実施形態に係る血液浄化装置1において表示される表示画面である。
【0069】
先ず、図7に示すように、情報処理装置6において、初期設定が行われる(S111)。ここで、初期設定とは、血液浄化装置1のプライミング時間を人工知能(AI:Artificial Intelligence)を用いて推定するために必要となる準備処理のことである。すなわち、初期設定により、学習済み推定モデル56が生成され、情報処理装置6に学習済み推定モデル56が実装される。
【0070】
具体的には、図8に示すように、情報処理装置6のプロセッサ6aは、学習済み推定モデル56を生成するための学習データを取得する(S201)。ここで、学習データの一例として、図9に示すように、血液浄化器5の種別データ、体外循環回路L20の種別データ、基本プライミング時間データ、気泡減少量データ、及び使用環境データが利用されてもよい。これらのデータは、入力部4aを介して血液浄化装置1の管理者によって入力されてもよく、通信部9を介して受信してもよい。
【0071】
血液浄化器5の種別データは、例えば、血液浄化器の型式であってもよい。また、血液浄化器5の種別データは、当該型式のみならず、血液浄化器5の特徴となる材料、構造、寸法、規格、膜面積、容量、限外濾過率(UFR:Ultrafiltration rate)、湿式/乾式(Wet or Dry)、使用条件等のデータを含んでもよい。また、体外循環回路L20の種別データは、例えば、体外循環回路L20の型式であってもよい。また、体外循環回路L20の種別データは、当該型式のみならず、体外循環回路L20の特徴となる材料、構造、寸法、規格、容量、使用条件等のデータを含んでもよい。なお、種別データは上述した識別データと同一のデータあってもよく、型式に付加される他のデータが異なっていてもよい。また、種別データと識別データとは、使用される場面が異なっており、種別データは機械学習用のデータを想定し、識別データは実際に装着された装置等を識別するためのデータを想定する。
【0072】
基本プライミング時間データは、血液浄化器5の種別と体外循環回路L20の種別によって設定されたデータである。基本プライミング時間データは、例えば、図10に示すように、血液浄化器5の種別と体外循環回路L20の種別が決まると、プライミングに必要な初期設定時間が一意的に決まるデータである。ここで、初期設定時間とは、プライミングを開始する際の残時間のことであり、プライミングが開始された際に最初に表示される時間のことである。基本プライミング時間データは、血液浄化器5及び体外循環回路L20の使用実績によって決定されており、換言すると過去のプライミング実績に係る時間データでもある。
【0073】
気泡減少量データは、プライミングを開始してから体外循環回路L20内の気泡がどのように減少しているかを示すデータである。気泡減少量データは、例えば、図11に示すように、プライミングが進むにつれて、どのように回路内気泡量が減少していくかを示すデータである。特に、図11においては、横軸がプライミング経過時間であり、縦軸が回路内気泡量であり、血液浄化器5及び体外循環回路L20の種別の組み合わせで決定される5つのパターンに対応した、グラフC1~C5が示されている。ここで、グラフC1~C5は、体外循環回路L20の識別データが「a1」である場合において、血液浄化器5が「b1」、「b2」、「b3」、「b4」、及び「b5」である場合に対応しているものとする。そして、各グラフの回路内気泡量がゼロとなるプライミング経過時間h1~h5が、図10のテーブルデータと一致している。換言すると、図10の初期設定時間は、図11における回路内気泡量がゼロとなるプライミング経過時間に該当する。なお、気泡減少量データは、グラフデータそのものではなく、グラフC1~C5に対応した数値データであってもよい。
【0074】
使用環境データは、血液浄化装置1の設置環境に係るデータである。具体的には、血液浄化装置1が使用された際の気温及び気圧のデータである。また、血液浄化装置1が設置されている都道府県、市町村、又は地域に係るデータであってもよく、当該データを組合わせたものであってもよい。ここで、気泡減少量が血液浄化装置1の設置環境に依存する場合があるため、使用環境データは上述した基本プライミング時間データ及び気泡減少量データに紐づいていることが好ましい。
【0075】
以上のように、本実施形態においては、学習済み推定モデルを生成するために、血液浄化器5の種別データ、体外循環回路L20の種別データ、基本プライミング時間データ、気泡減少量データ、及び使用環境データが関連付けられて利用される。ただし、これらのデータをすべて関連付けすることが好ましいものの、一部のデータを除外したり、更に追加のデータを加える等を行ってもよく、データ間の関連付けについては後述する機械学習に応じて適宜変更してもよい。
【0076】
次に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、取得した学習データにアノテーション処理を行う(S202)。具体的なアノテーション処理としては、取得された学習データに注釈等を付し、教師データを生成する。例えば、情報処理装置6のプロセッサ6aは、血液浄化器5及び体外循環回路L20によって決定される組合せごとに、標準的な気温及び気圧に基づく初期設定時間にタグ付けを行い、血液浄化器5及び体外循環回路L20によって決定される組合せごとに、標準的な初期設定時間が紐づけられた正解データを生成する。
【0077】
次に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、取得した学習データ及びアノテーション処理された教師データを用いて機械学習を行う(S203)。当該機械学習は、一例として、ニューロンを組み合わせて構成されたニューラルネットワークに学習データ及び教師データを与え、ニューラルネットワークの出力が教師データのうちの正解データと同じになるように、各ニューロンのパラメータを調整しながら学習を繰り返すことにより行われる。なお、上記機械学習は一例にすぎず、スコアリングを用いた機械学習を行ってもよい。
【0078】
次に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、機械学習によって生成した学習済み推定モデル56の評価を行う(S204)。ここで、情報処理装置6のプロセッサ6aは、機械学習に使用した学習データとは異なる評価データを使用し、当該モデル評価を実行する。例えば、図9に示すように、情報処理装置6のプロセッサ6aは、血液浄化器5の識別データ、体外循環回路L20の識別データ、所定時間における気泡減少量、温度データ、及び圧力データを入力する。ここで、気泡減少量に係る所定時間とは、例えば、プライミング開始から1分であってもよく、一般的なプライミング時間(13分程度)の半分の時間であってもよい。その後、情報処理装置6のプロセッサ6aは、学習済み推定モデル56から出力されるプライミングの残時間が、正しい結果であるかを評価する。具体的な評価方法として、情報処理装置6のプロセッサ6aは、評価データに対応した実際のプライミングの残時間(上記所定時間をゼロとしたプライミングの完了までの時間)と、推定された残時間が一致するか否かを判定する。ここで、実際のプライミングの残時間とは、気泡減少量に係る所定時間のタイミングをゼロとした、当該所定時間からプライミングの完了までの経過時間のことである。なお、実際のメンテナンス情報と推定データが一致しない場合には、学習データの取得からやり直し、再度の機械学習が実施されることになる。
【0079】
次に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、評価データに対応した実際のプライミングの残時間と、推定された残時間が一致した場合、生成した学習済み推定モデル56を実装する(S205)。具体的に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、生成した学習済み推定モデル56をメモリ6bに記憶させる。これにより、情報処理装置6において学習済み推定モデル56を有する推定部51が機能することになる。
【0080】
図7に戻り、初期設定(S111)が完了した後、血液浄化装置1に対する血液浄化器5の装着準備が行われる(S112)。血液浄化器5が血液浄化装置1に実際に装着され、血液浄化器5と血液浄化装置1との距離が所定距離内になると、血液浄化装置1の読取部10から送出される電波をエネルギーとして、血液浄化器5のICタグが動作する。これにより、血液浄化装置1の読取部10は血液浄化器5のICタグとの通信が可能となり、ICタグに記憶された識別データが血液浄化装置1の読取部10によって読取られる。すなわち、ICタグに記憶された血液浄化器5の識別データが、血液浄化器5から情報処理装置6に送信される(T111)。
【0081】
また、初期設定(S111)が完了した後、血液浄化装置1の体外循環部8における体外循環回路L20の装着準備が行われる(S113)。体外循環回路L20が血液浄化装置1に実際に装着され、体外循環回路L20と血液浄化装置1との距離が所定距離内となると、血液浄化装置1の読取部10から送出される電波をエネルギーとして、体外循環回路L20のICタグが動作する。これにより、血液浄化装置1の読取部10は体外循環回路L20のICタグとの通信が可能となり、ICタグに記憶された識別データが血液浄化装置1の読取部10によって読取られる。すなわち、ICタグに記憶された体外循環回路L20の識別データが、体外循環部8から情報処理装置6に送信される(T112)。
【0082】
更に、初期設定(S111)が完了した後、内部配管部7における温度及び圧力の測定が実施される(S114)。ここで、当該温度及び圧力の測定時には、内部配管部7においては透析液が充填されておらず、大気開放状態における温度及び圧力が測定される。すなわち、血液浄化装置1の使用環境における気温及び気圧が測定される。そして、体外循環部8において測定された測定信号は、情報処理装置6に送信される(T113)。
【0083】
なお、識別データ及び測定信号の取得については、S112~S114、及びT111~T113のフローに限定されず、他の装置から通信部9を介して各識別データ及び測定信号を受信してもよく、又は入力部4aを介して各識別データ及び測定信号が入力されてもよい。例えば、当該入力の場合については、体重、治療時間、除水量等と同様に、治療条件を設定可能とするソフトウエアによる入力によって実現されてもよい。
【0084】
次に、情報処理装置6において、受信した測定信号の算出処理が行われる(S115)。具体的に、情報処理装置6の算出部55は、測定信号である温度及び圧力の電気信号に基づいて、血液浄化装置1の使用環境を算出する。具体的に、算出部55は、受信した電気信号に基づいて、血液浄化装置1が設置されている使用環境(温度、気圧)を算出し、算出データとして出力する。
【0085】
次に、情報処理装置6において、受信した識別データ及び算出した使用環境に係る算出データの記憶処理が行われる(S116)。具体的に、情報処理装置6の推定部51が記憶部53に対して、これらの受信データ及び算出データを送信し、記憶部53が各データをメモリ6bに記憶する。
【0086】
次に、血液浄化装置1の管理者による、ディスプレイ4におけるボタン操作が実施される(S117)。具体的に、図12に示すように、ディスプレイ4の出力部4bには、表示部61~63、ボタン71~74が表示されている。表示部61には静脈圧及び透析液圧の数値が表示され、表示部62には除水量、除水量設定、及び除水速度が表示され、表示部63には確認用の治療条件が表示される。また、ボタン71はガスパージ開始用のボタンであり、ボタン72は膜加温の開始用のボタンであり、ボタン73はプライミング開始用のボタンであり、ボタン74は脱血開始用のボタンである。そして、上述したボタン操作とは、当該管理者によるプライミングを開始するための操作であり、ボタン73を押下する操作である。
【0087】
ボタン73を押下すると、図13に示すように、プライミングに係る確認内容を表示する表示部64がポップアップする。また、表示部64には、プライミングの開始を要求するためのボタン75が含まれている。ここで、表示部64には、プライミング開始前に実施すべき事項として、血液回路が装着されていることを確認するべき旨が表示されている。このため、血液浄化装置1の管理者は、当該表示を確認の上、ボタン75を押下し、プライミングの開始を要求することになる。そして、当該ボタン75が押下されることにより、情報処理装置6に対して、プライミング開始の制御要求である開始指示が送信される(T114)。
【0088】
次に、情報処理装置6において、開始指示が受信されると、プロセッサ6aがメモリ6bに記憶されたプライミング用のプログラムを実行し、内部配管部7及び体外循環部8の各構成装置及び構成部品を制御する。これにより、透析液がプライミング液として内部配管部7から体外循環部8に供給され、血液浄化器5及び体外循環部8へのプライミング液の充填が開始される(S118)。
【0089】
次に、プライミング液の充填が開始されると、体外循環部8において、気泡検出が行われる(S119)。具体的に、体外循環部8の気泡検出器22,28によって、体外循環回路L20内の気泡が検出される。そして、体外循環部8の気泡検出器22,28は、情報処理装置6に対して、検出結果である気泡データを送信する(T115)。なお、図7においては、説明の便宜上のため、気泡検出及び気泡データの送信が1つのみ表示されているが、実際には気泡が検出されなくなるまで(すなわち、プライミングが完了するまで)、当該検出及びデータ送信が継続的に行われる。ここで、S119が実行されるまでの経過時間は、図11に示すような、プライミングが開始された状態から約1分程度の比較的に短時間であり、所定時間Aまでの時間が想定されている。
【0090】
次に、情報処理装置6において、受信した気泡データの記憶処理が行われる(S120)。具体的に、情報処理装置6の推定部51が記憶部53に対して、受信した気泡データを送信し、記憶部53が当該気泡データをメモリ6bに記憶する。なお、気泡検出及び気泡データは継続的に行われるため、当該記憶処理も気泡データを受信するたびに継続して行われることになる。
【0091】
次に、情報処理装置6においては、受信した各識別データ及び気泡データ、並びに算出した算出データを使用して、血液浄化装置1のプライミング時間である、当該プライミングが完了するまでの残時間を推定する(S121)。ここで、残時間とは、プライミングが開始された状態において初めて表示される残時間であるため、初期表示時間に該当する。具体的に、情報処理装置6の推定部51は、受信した各識別データ及び気泡データ、並びに算出した算出データを学習済み推定モデル56に入力する。学習済み推定モデル56は、入力されたデータに基づいて推定処理を行い、推定結果である残時間(推定データ)を出力する。これにより、推定部51は、血液浄化装置1のプライミング時間であって、初期に表示するための初期の残時間を取得し、当該残時間が学習済み推定モデル56から出力される工程が完了する。
【0092】
次に、情報処理装置6においては、血液浄化装置1の管理者に対して、血液浄化装置1のプライミングの残時間を報知するための表示データの生成処理が行われる(S122)。具体的に、情報処理装置6の推定部51は、取得した残時間を制御部52に送信する。制御部52は、取得した残時間に基づいて、プライミング時間を出力部4bによって表示するための表示データ及び当該表示データを表示させるための制御信号を生成する。これにより、血液浄化装置1のプライミング時間を表示するための表示データを、推定した残時間に基づいて生成する工程が完了する。
【0093】
次に、情報処理装置6からディスプレイ4に対して、表示データ及び制御信号の送信処理が行われる(T116)。具体的に、情報処理装置6の制御部52は、ディスプレイ4の出力部4bにおいて表示させる表示データとともに、表示指示である制御信号を出力部4bに送信する。その後、ディスプレイ4においては、受信した表示データに基づいたプライミング時間が出力部4bから表示される(S123)。
【0094】
ここで、図14は、出力部4bによって出力される画像の一例を示す。図14に示すように、出力部4bの表示部63には、プライミングの残時間が表示される。具体的に、表示部63の内部には、プライミングの残時間である数字が表示される表示部81が設けられている。また、表示部81の下方には、プライミング時間の進行状況を把握するための進行状況バー82が設けられている。プライミングが進むにつれ、表示部81の数字が小さくなり、進行状況バー82における空欄が徐々に減っていくことになる。
【0095】
そして、表示部81における残時間の減少は、次のプライミング時間の推定処理が行われるまでは、通常の時間の経過と同様に減少することになる。すなわち、図14に示すように、表示部81において残時間が13分と表示されると、次のプライミング時間の推定までは通常の時間経過に合わせて、残時間が12分、11分と徐々に減少することになる。なお、表示部81における残時間の減少については、情報処理装置6の制御部52が時計機能を使用して処理してもよい。すなわち、制御部52は、表示データ及び制御信号を継続的又は定期的にディスプレイ4に送信してもよい。
【0096】
その後、図15に示すように、プライミング液の充填が開始されてから、上述したS119、T115、S120と同様に、体外循環部8における気泡検出(S124)、情報処理装置6への気泡データの送信(T117)、及び情報処理装置6におけるデータ記憶(S125)が継続的に実行される。そして、所定時間が経過すると、プライミング時間である残時間の再度の推定が行われ、プライミング時間の修正が行われる(S126)。ここで、所定時間とは、例えば、3分毎などの定期的なタイミング、又は初期表示された残時間の半分が経過したタイミングであってもよい。また、所定時間とは、気泡の減少量に応じて設定されてもよく、例えば、気泡が初期段階から1割、2割等の減少が確認されたタイミングとしてもよい。なお、本実施形態においては、図11におけるグラフC3に対応したプライミング経過時間h3の約1/2の時間が経過したタイミング(所定時間B)を想定する。
【0097】
具体的には、S121と同様であり、情報処理装置6の推定部51は、受信した各識別データ及び気泡データ、並びに算出した算出データを学習済み推定モデル56に入力する。学習済み推定モデル56は、入力されたデータに基づいて推定処理を行い、推定結果である残時間(推定データ)を出力する。これにより、推定部51は、血液浄化装置1のプライミング時間であって、所定時間の経過における残時間を取得し、当該残時間を修正後のプライミング時間として学習済み推定モデル56から再出力する工程が完了する。
【0098】
例えば、図11に示すように、プライミングの初期段階ではグラフC3に対応した「13分」が表示されていたものの、所定時間Bが経過した際の気泡減少量が考慮された再度の推定処理により、グラフC1に該当すると判定されたとする。この場合には、初期表示時間をh1とし、所定時間Bの経過を考慮した残時間が算出されることに対応した推定処理が、学習済み推定モデル56によって行われることになる。
【0099】
次に、情報処理装置6においては、血液浄化装置1の管理者に対して、血液浄化装置1のプライミングの残時間を報知するための表示データの生成処理が行われる(S127)。具体的に、情報処理装置6の推定部51は、取得した残時間を制御部52に送信する。制御部52は、取得した残時間に基づいて、プライミング時間を出力部4bによって表示するための表示データ及び当該表示データを表示させるための制御信号を生成する。これにより、血液浄化装置1のプライミング時間を表示するための表示データを、推定した残時間に基づいて生成する工程が完了する。
【0100】
ここで、制御部52は、出力部4bにおいて実際に表示している残時間と、新たに推定した修正後の残時間に差異がなければ、上述した生成処理は行わず、ディスプレイ4に対する上述した表示データ及び制御信号の継続的な送信を行うだけでもよい。また、制御部52は、制御部52は、出力部4bにおいて実際に表示している残時間に対して、新たに推定した修正後の残時間が閾値を超えて大きい場合、異常報知のためのデータを表示データに含めてもよい。すなわち、上述した残時間の再推定により、プライミングが進んでいないと判定できるような残時間を推定した場合には、制御部52は異常報知を行うための処理を行ってもよい。
【0101】
次に、情報処理装置6からディスプレイ4に対して、表示データ及び制御信号の送信処理が行われる(T118)。具体的に、情報処理装置6の制御部52は、ディスプレイ4の出力部4bにおいて表示させる表示データとともに、表示指示である制御信号を出力部4bに送信する。その後、ディスプレイ4においては、受信した表示データに基づいたプライミング時間が出力部4bから表示される(S128)。
【0102】
ここで、図16は、所定時間経過において出力部4bによって出力される画像の一例を示す。図16に示すように、出力部4bの表示部81には、プライミングの残時間として1分が表示される。また、進行状況バー82においても、空欄部分の大半が黒色となり、プライミングの完了が近いことを確認することができる。なお、上記の再度の推定において、図11におけるグラフC3からグラフC1への修正と判断されていることから、
プライミングの進行に伴って表示部81の数字が例えば8分と表示されていた残時間が、大幅に減少して1分と表示されることになる。
【0103】
次に、体外循環部8において気泡が検出されなくなると、プライミング液の充填が完了する(S129)。具体的には、情報処理装置6において、プロセッサ6aから内部配管部7及び体外循環部8の各構成装置及び構成部品に対して制御信号が供給され、プライミング液の供給に係る各部品の動作が停止し、体外循環部8におけるプライミング液の循環が開始される。そして、体外循環部8において設定された量のプライミング液が流れると、プロセッサ6aがメモリ6bに記憶されたプライミング用のプログラムを終了し、プライミング完了する。
【0104】
次に、プライミングが完了すると、情報処理装置6においては、学習済み推定モデル56のための追加学習の処理が行われる(S130)。具体的には、完了したプライミングに係るデータを使用し、再度の機械学習が行われる。例えば、T111及びT112において受信した識別データを種別データとし、S115において算出した算出データを温度及び圧力等の使用環境データとし、T115及びT117において受信した気泡データを気泡減少量データとして、学習データを取得する。その後は、図8のS202、S203と同様の処理が実行され、生成された新たなモデルが学習済み推定モデル56として再実装(すなわち、更新)される。
【0105】
(第1実施形態の変形例)
上記実施形態においては、学習済み推定モデル56の生成のために、教師データを用いた教師あり学習が行われていたが、これに限定されない。例えば、一般的な教師なし学習、又は強化学習を利用して、学習済み推定モデル56を生成してもよい。すなわち、血液浄化装置1のプライミング時間が推定できれば、機械学習の方式は限定されない。当然のことながら、機械学習の方式が異なれば、学習データが異なるため、学習済み推定モデル56を生成するための学習データについても、血液浄化器5の種別データ、体外循環回路L20の種別データ、基本プライミング時間データ、気泡減少量データ、及び使用環境データに限定されることはなく、血液浄化装置1に係る種々のデータを利用することが可能である。例えば、プライミング液である透析液が内部配管部7から供給されず、他の装置又は部材から供給される場合には、当該プライミング液の供給方法や環境条件等を機械学習されてもよい。
【0106】
上記実施形態においては、体外循環回路L20に対してICタグを設けていたが、動脈側血液回路L21と静脈側血液回路L22とに対して別々にICタグを設けてもよい。この場合、動脈側血液回路L21及び静脈側血液回路L22の種別データを機械学習させ、学習済み推定モデル56が生成されてもよい。そして、推定部51は、動脈側血液回路L21及び静脈側血液回路L22の識別データを学習済み推定モデル56に入力し、プライミングの残時間を推定させてもよい。
【0107】
上記実施形態においては、複式ポンプP1を使用して透析液を導入及び導出を行えるような配管構成が採用されていたが、例えば、複式ポンプP1に代えて、2つのダイアフラムポンプを使用してもよい。このような場合の一例を、図17を参照しつつ変形例として説明する。ここで、図17は本実施形態の変形例に係る血液浄化装置31の構成図である。なお、血液浄化装置1と同一の装置及び部品については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0108】
図17に示すように、変形例に係る血液浄化装置41は、血液浄化器5に対して透析液を導入出するための内部配管部47、及び血液浄化器5に対して血液を導入出するための体外循環部48を有している。なお、内部配管部47及び内部配管部7は機能的に同一であり、その構成部材等が異なっている。同様に、体外循環部48及び体外循環部8は機能的に同一であり、その構成部材等が異なっている。
【0109】
内部配管部47は、血液浄化器5の給液側に主配管L41、排液側に主配管L42が接続された構造を有する。主配管L41においては、減圧弁V1、電磁弁V2、透析液調整部91、ダイアフラムポンプP41、電磁弁V41、及びコネクタC1が、内部配管部47の給液端子側から血液浄化器5の一端に向かって順番に配設されている。また、主配管L42においては、電磁弁V42、ダイアフラムポンプP42、及び流量検出器13が、血液浄化器5の一端から内部配管部47の排液端子側に向かって順番に配置されている。内部配管部47においては、2つのダイアフラムポンプP41,P42の流量を調整することにより、除水を行うことが可能になっている。このため、内部配管部47には除水ポンプP3が配設されていない。
【0110】
体外循環部48は、血液浄化器5に対する血液導入側に動脈側血液回路L43が接続され、血液浄化器5に対する血液導出側に静脈側血液回路L43が接続された構造を有する。動脈側血液回路L43には、コネクタC21、動脈側クランプCL41、及び血液ポンプP21が、患者H側から血液浄化器5に向かって順番に配設されている。また、静脈側血液回路L44には、静脈側エアトラップチャンバ25、流量検出器26、気泡検出器28、静脈側クランプCL42、及びコネクタC22が、血液浄化器5から患者Hに向かって順番に配設されている。更に、動脈側クランプCL41と血液ポンプP21との間には、プライミング液を供給するための供給配管L45が接続されている。そして、供給配管L45には供給側クランプCL43が配設されており、供給配管L45は貯留バッグ92に接続されている。貯留バック92には、プライミング液としての生理食塩水が貯留されている。
【0111】
図17に示すように、内部配管部47と体外循環部48とは、連通配管L51によって接続されている。具体的に、連通配管L51の一端(内部配管部47側)は、内部配管部47の電磁弁V42とダイアフラムポンプP42との間に接続され、他端(体外循環部48側)は、静脈側エアトラップチャンバ25に接続されている。また、連通配管L51には電磁弁V43が、内部配管部47の構成部品として配設されている。
【0112】
また、上述実施形態における血液浄化装置1においては、複式ポンプP1を使用して透析液の導入出を行う複式ポンプ方式が採用されていたが、これに限定されない。例えば、1枚のダイアフラムによって2室に仕切ったチャンバを2つ設置し、透析液量と排液量を等量に制御し、除水ポンプによって除水を制御するようなダブルチャンバ方式が採用されてもよい。
【0113】
当該ダブルチャンバ方式を採用した一例として、内部配管部においては、血液浄化器に対して透析液を導入するための供給側の配管に、減圧弁、第1電磁弁、供給側ダイアフラムポンプ、流量調整弁、流量計、濃度センサ、温度センサ、及び第2電磁弁が、供給液側から順番に配設されている。また、血液浄化器に対して透析液を導出するための排出側の配管に、第3電磁弁、透析液圧センサ、濾液ポンプ、排出側ダイアフラムポンプが、血液浄化器側から順番に配設されている。更に、当該排出側の配管から分岐された他の配管には、除水ポンプ及び陰圧循環ポンプが配設されている。
【0114】
当該ダブルチャンバ方式を採用した他の例として、内部配管部においては、血液浄化器に対して透析液を導入するための供給側の配管に、2種類の薬液を血液浄化器に向けて導入するためのポンプが設けられている。また、当該供給側の配管において、ダイアフラムポンプの導入口のそれぞれの近傍に、バランシングチャンババルブが設けられている。一方、血液浄化器に対して透析液を導出するための排出側の配管に、バランシングチャンババルブ、透析液フィルタ、保持バルブ、除水ポンプ、及び排出弁が配設されている。また、当該排出側の配管から分岐して設けられた循環用の配管には、熱交換器、バランシングチャンババルブ、フローポンプ、空気分離ポンプ、負荷圧弁、再循環バルブが配設されている。
【0115】
更に、例えば、閉塞したビスカスチャンバチャンバ内を2枚のダイアフラムによって3室に仕切り、中央のビスカス室の容量を変化させ、透析液室と排液室に容量の差を発生させて除水を制御するようなビスカスチャンバ方式が採用されてもよい。すなわち、ビスカスチャンバ方式においては、除水ポンプが使用されない。
【0116】
当該ビスカスチャンバ方式を採用する場合、内部配管部においては、3室に仕切られたビスカスチャンバのビスカス室がビスカスポンプを介して接続されており、ビスカスオイル(シリコンオイル)の導入出が可能になっている。また、一方のビスカスチャンバから血液浄化器に向けて設けられた配管には、三方電磁弁、二方電磁弁、温度センサ、圧力センサが配設されている。更に、血液浄化器から他方のビスカスチャンバに向け設けられた配管には、液圧ポンプ、及びリリーフバルブが配設されている。
【0117】
(第1実施形態の作用効果)
本実施形態においては、血液浄化器5及び体外循環回路L20の種別データ、基本プライミング時間データ、気泡減少量データ、及び使用環境データを関連付けて機械学習することによって生成された学習済み推定モデル56に対して、血液浄化器5及び体外循環回路L20の識別データ、温度及び圧力のデータ、及び気泡データが入力されると、学習済み推定モデル56が血液浄化装置1のプライミング時間を推定する。特に、本実施形態において、学習済み推定モデル56は、プライミングに必要となる残時間を複数回推定する。このため、プライミングの経過状況に対応した残時間が更新され、より正確な残時間が報知されることになる。また、学習済み推定モデル56は、上述した各種のデータを関連付けて機械学習することによって生成されているため、より高精度なプライミング時間の推定が可能になる。
【0118】
<第2実施形態>
第1実施形態においては、プライミング時間の推定を血液浄化装置1において行っていたが、複数の血液浄化装置1を管理するサーバ装置において、推定処理を行うようにしてもよい。このような場合を第2実施形態として、図18乃至図21を参照しつつ説明する。ここで、図18は、本実施形態に係る血液浄化システムの構成を示す概略図である。図19は、本実施形態に係る血液浄化装置の機能ブロック図である。図20は、本実施形態に係る情報処理装置の物理構成を示すブロック図である。図21は、本実施形態に係る血液浄化装置の機能ブロック図である。なお、第1実施形態と異なる部分を基本的に説明し、同一内容についてはその説明を省略し、図面における符号も同一符号を付すこととする。
【0119】
先ず、図18に示すように、本実施形態に係る血液浄化システム300は、複数の血液浄化装置1、及びサーバ装置400、及び携帯端末装置500を有している。また、2台の血液浄化装置1、サーバ装置400、及び携帯端末装置500は、インターネット等のネットワーク600によって、互いに通信可能に接続されている。なお、ネットワーク600は、無線、有線、又はこれらの組み合わせによって構成されてもよい。
【0120】
血液浄化システム300において、血液浄化装置1のそれぞれは、装置内で取得される各種のデータをネットワーク600を介してサーバ装置400又は携帯端末装置500に送信する。また、サーバ装置400は、血液浄化装置1から受信した各種のデータを処理し、当該処理結果を血液浄化装置1又は携帯端末装置500に送信する。更に、携帯端末装置500は、受信した各種のデータを処理し、血液浄化装置1又はサーバ装置に送信することも可能である。
【0121】
本実施形態の血液浄化装置1の構成は、第1実施形態の構成と基本的に同一である。異なる部分としては、血液浄化装置1のプライミング時間である残時間(推定データ)の取得、及び当該残時間に基づく制御に係る処理が行われないため、血液浄化装置1は当該処理に係る構成及び機能を有しないことになる。なお、図18においては、血液浄化装置1は2台しか記載されていないが、血液浄化装置1の台数はこれに限られず、血液浄化システム300は、血液浄化装置1を3台以上、有していてもよい。また、血液浄化装置1は、同種の装置に限定されず、種類やバージョンが互いに異なる装置であってもよい。
【0122】
サーバ装置400は、医療機関内に設置され、医療機関内の各種のデータを管理し、医療機関内における各種のデータ処理を行うコンピュータである。なお、サーバ装置400の設置場所は医療機関に限定されず、医療機関外であってもよい。また、図18において、サーバ装置400は単一のものとして記載されているが、後述するサーバ装置400の各種の構成及び処理を複数の他のサーバ装置やクラウドサーバ装置に分配することも可能である。
【0123】
携帯端末装置500は、スマートフォンに代表される無線通信可能な装置であってよいが、これに限定されない。例えば、携帯端末装置500としては、フィーチャーフォン、携帯情報端末、PDA、ラップトップパソコン、デスクトップパソコンなどであってもよい。なお、図18においては、携帯端末装置500は1台しか記載されていないが、携帯端末装置500の台数はこれに限られず、血液浄化システム300は、携帯端末装置500を2台以上、有していてもよい。
【0124】
次に、図19を参照しつつ、本実施形態に係る血液浄化装置1の機能的な構成を説明する。特に、図19においては、第1実施形態と同一の装置、部品、構成については、同一符号を付している。
【0125】
図19に示すように、情報処理装置6はデータ取得部150を有しており、データ取得部150の機能は情報処理装置6のプロセッサ6aがメモリ6bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。データ取得部150は、第1実施形態の推定部51と同様に、血液浄化器5及び体外循環回路L20から識別データ、気泡検出器60から気泡データ、圧力センサS61から圧力信号、温度センサS62から温度信号、入力部4aから入力データを受信する。また、データ取得部150は、第1実施形態の算出部55と同様に、圧力センサS61及び温度センサS62から受信した各種の電気信号に基づいて、血液浄化装置1の使用環境(算出データ)を算出する。
【0126】
その後、データ取得部150は、受信した各受信データ及び算出した各算出データを1つの取得データとして、通信部9を介して血液浄化装置1の外部へ送信する。ここで、データ取得部150は、複数の血液浄化装置1から特定の血液浄化装置1を識別するための識別データを付加してもよい。本実施形態において、データ取得部150は、当該動作データをサーバ装置400に送信する。
【0127】
また、通信部9は、プライミングの残時間を表示するための表示データを外部から受信する。本実施形態において、通信部9は、当該表示データをサーバ装置400から受信する。通信部9は、受信した表示データを制御部52に送信する。制御部52及び出力部4bについての機能は、第1実施形態と同様であり、受信した表示データに基づいた表示のための各種処理を行う。
【0128】
次に、図20及び図21を参照しつつ、本実施形態に係るサーバ装置400の構成を説明する。先ず、図20に示すように、サーバ装置400は、入力部404a、出力部404b、情報処理装置406、及び通信部409を有している。また、情報処理装置406は、プロセッサ406a及びメモリ406bから構成されている。更に、通信部409は、通信処理回路409a及びアンテナ409bから構成されている。
【0129】
情報処理装置406のプロセッサ406aは、GPU又はCPUから構成され、メモリ406bに記憶された各種プログラムに基づいて、各種の演算及び制御を行う制御部として機能する。なお、プロセッサ406aは、単一のGPU又はCPUで構成されても良いが、複数のCPU又はGPUを組み合わせて構成しても良い。
【0130】
メモリ406bは、ROM、RAM、不揮発性メモリ、HDD等から構成され、記憶部として機能する。ROMは、血液浄化装置1のプライミング時間の推定を行うために必要となる学習済み推定モデルを記憶する。また、RAMは、ROMに記憶されたプログラムがプロセッサ406aにより処理されている間、データの書き込み及び読み込みをするために用いられる。不揮発性メモリは、当該プログラムの実行によってデータの書き込み及び読み込みが実行される記憶装置であって、ここに書き込まれたデータは、当該プログラムの実行が終了した後でも保存される。
【0131】
特に、本実施形態においては、患者の血液を浄化する血液浄化装置1のプライミング時間を推定するプログラムが記憶されている。当該プログラムは、血液浄化装置1のプライミング時間を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに、各血液浄化装置1から受信する取得データ(識別データ、気泡データ、算出データ)を入力して、血液浄化装置1のプライミングに必要となる残時間である推定データを取得する処理をコンピュータに実行させるものである。更に、当該プログラムは、血液浄化装置1のプライミング時間を表示するための表示データを当該残時間に基づいて生成する処理をコンピュータに実行させるものである。なお、当該プログラムによって実行される処理については、後述するものとする。
【0132】
また、メモリ406bには、複数の血液浄化装置1の管理を可能とするために、血液浄化装置1のそれぞれを識別するためのデータが記憶されている。
【0133】
通信部409は、通信処理回路409a及びアンテナ409bを介して、サーバ装置400とは離間して設置された血液浄化装置1、又は携帯端末装置500との間で情報の送受信を行う。
【0134】
通信処理回路409aは、LTE方式に代表されるような広帯域の無線通信方式に基づいて処理を実行してもよい。また、通信処理回路409aは、IEEE802.11に代表されるような無線LAN若しくはBluetooth(登録商標)のような狭帯域の無線通信に関する方式に基づいて処理を実行してもよい。さらに、通信処理回路409aは、非接触無線通信に関する方式に基づいて処理を実行してもよい。そして、通信処理回路409aは、このような無線通信に代えて、又は加えて、有線通信が利用されてもよい。
【0135】
次に、図21に示すように、情報処理装置406は、推定部451、制御部452、及び記憶部453を有する。また、推定部451は、学習済み推定モデル456を含む。これらの各部は、情報処理装置406のプロセッサ406a及びメモリ406b自体が機能することで実現され、又はプロセッサ406aがメモリ406bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0136】
推定部451は、受信した取得データを学習済み推定モデル456に入力を行い、血液浄化装置1のプライミング時間である残時間を取得する。ここで、当該残時間については、プライミングの完了までに必要となる時間である。
【0137】
本実施形態に係る学習済み推定モデル456は、第1実施形態に係る学習済み推定モデル56と同一であり、同様の学習データ及び機械学習によって生成される。このため、その詳細な説明は省略する。
【0138】
その後、推定部451は、学習済み推定モデル456の出力結果である残時間を取得すると、当該残時間を制御部452に送信する。制御部452は、残時間に基づいて、プライミング時間として表示するための表示データを生成し、当該表示データを通信部409に送信する。また、制御部452は、推定したプライミング時間からプライミングが正常に行われていないと判断した場合に、異常報知のためのデータを当該表示データに追加してもよい。
【0139】
通信部409は、取得データを送信してきた血液浄化装置1に対して、受信した表示データを送信する。また、通信部409は、受信した表示データを携帯端末装置500にも送信する。これにより、血液浄化装置1の管理者は、血液浄化装置1のディスプレイ4、又は自身が操作する携帯端末装置500に表示される、血液浄化装置1のプライミング時間を確認することが可能になる。
【0140】
(第2実施形態の変形例)
なお、上述した実施形態においては、サーバ装置400においてプライミング時間の推定が行われていたが、これに限定されない。例えば、携帯端末装置500の情報処理装置に学習済み推定モデルを実装し、推定処理を実行するようにしてもよい。
【0141】
また、上述した実施形態において、血液浄化装置1の構成が第1実施形態と同一としていたが、これに限定されない。例えば、血液浄化システム300に含まれる血液浄化装置としては、透析液を生成することがないタイプであってもよい。この場合、血液浄化システム300は、透析液を調整するための装置を有することになる。透析液を調整するための装置としては、例えば、透析用水作成装置、RO水及び2種類の透析剤を混ぜる溶解装置、並びに透析液の濃度調整を行って各血液浄化装置に供給する透析液供給装置がある。
【0142】
(第2実施形態の作用効果)
本実施形態においては、血液浄化器5及び体外循環回路L20の種別データ、基本プライミング時間データ、気泡減少量データ、及び使用環境データを関連付けて機械学習することによって生成された学習済み推定モデル456に対して、血液浄化器5及び体外循環回路L20の識別データ、温度及び圧力のデータ、及び気泡データを含む取得データが入力されると、学習済み推定モデル456が血液浄化装置1のプライミング時間を推定する。特に、本実施形態において、学習済み推定モデル456は、プライミングに必要となる残時間を複数回推定する。このため、プライミングの経過状況に対応した残時間が更新され、より正確な残時間が報知されることになる。また、学習済み推定モデル456は、上述した各種のデータを関連付けて機械学習することによって生成されているため、より高精度なプライミング時間の推定が可能になる。
【0143】
また、本実施形態においては、血液浄化装置1とは異なる装置において、推定処理が行われ、当該推定処理の結果が一元管理されることになる。このため、複数の血液浄化装置1のプライミング時間に係るデータを一元管理することができ、医療機関に設置される複数の血液浄化装置1のプライミング時間の把握及び管理、並びに血液浄化装置1の保守及び点検をより行いやすくすることが可能になる。
【0144】
<第3実施形態>
第1実施形態においては、AIを用いた学習済み推定モデル56によってプライミング時間が推定されていたが、AIを用いずに、テーブルデータが使用され、プライミング時間が推定されてもよい。このような場合を第3実施形態として、図22乃至図25、及び図10を参照しつつ説明する。ここで、図22は、本実施形態に係る血液浄化装置の機能ブロック図である。図23は、本実施形態に係るメモリに記憶されたテーブルデータである。図24は、本実施形態に係るプライミング経過時間と回路内気泡量との関係を示すグラフである。図25は、本実施形態に係る血液浄化装置におけるプライミング時間の推定に係るシーケンス図である。なお、第1実施形態と異なる部分を基本的に説明し、同一内容についてはその説明を省略し、図面における符号も同一符号を付すこととする。
【0145】
図22に示すように、情報処理装置6は推定部251を有しており、推定部251の機能は情報処理装置6のプロセッサ6aがメモリ6bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。推定部251は、第1実施形態の推定部51と同様に、血液浄化器5及び体外循環回路L20から識別データ、気泡検出器60から気泡データ、及び入力部4aから入力データを受信する。
【0146】
推定部251は、通信部9又は読取部10を介して受信した各受信データを記憶するために、各データを記憶部253に送信する。また、推定部251は、プライミング時間を推定するために、記憶部253に記憶されたテーブルデータを受信し、テーブルデータと受信データに含まれる識別データとの照合によってプライミング時間の初期表示時間を抽出し、当該初期表示時間を残時間とする推定処理を行う。更に、推定部251は、血液浄化装置1のプライミングの開始から所定時間の経過後における体外循環回路L20の気泡減少量に対応して初期表示時間を修正し、修正後の初期表示時間から当該所定時間を減じて残時間とする推定処理を行う。なお、当該推定に係るテーブルデータ及び推定処理の詳細は後述する。そして、推定部251は、第1実施形態と同様に、推定した残時間を制御部52に送信する。
【0147】
記憶部253は、受信した各データをメモリ6bに記憶する。また、記憶部253は、後述するテーブルデータを記憶しており、推定部251からの要求に応じて、当該テーブルデータを推定部251に送信する。記憶部253は、当該テーブルデータの1つとして、第1実施形態の図10に示したテーブルデータを記憶する。すなわち、記憶部253は、血液浄化器5の種別と体外循環回路L20の種別とによって一意的に決まる初期設定時間のデータを有する。
【0148】
また、記憶部253は、図23に示すような、プライミング時間の初期設定時間を修正するためのテーブルデータを有する。図23においては、図10において決定される各初期設定時間に対して、所定時間経過後の回路内気泡の減少量に応じて当該初期設定時間を修正するための時間が一意的に決定されている。当該テーブルデータは、例えば、図24に示すグラフに対応している。図24においては、横軸をプライミング経過時間とし、縦軸を回路内気泡量として、グラフC11~C15が表示されている。ここで、グラフC13は、図10における体外循環回路L20の種別がa1であり、血液浄化器の種別がb3の場合に該当するため、回路内気泡量がゼロになるプライミング経過時間がh3になっている。
【0149】
また、図24において、グラフC11、C12は、グラフC13を基準としてプライミング時間を減少させたものであり、グラフC14、C15は、グラフC13を基準としてプライミング時間を増加させたものである。更に、グラフC11、C12、C14、C15は、グラフC13を回路内気泡量に対応させて修正したものである。そして、グラフC11、C12、C14、C15は、回路内気泡量がゼロになるプライミング経過時間が、H311、H312、H314、H315となっている。
【0150】
図24に示すように、プライミング経過時間h3の約1/3が経過した所定時間Cにおける回路内気泡の減少量について、グラフC11がd1、グラフC12がd2、グラフC13がd3、グラフC14がd4、グラフC15がd5であったとする。これらの減少量d1~d5は、図23における回路内気泡量の減少量と一致している。そして、初期設定時間(プライミング経過時間)h3の列において、減少量がd1の場合に初期設定時間の修正時間がH311となり、減少量がd2の場合に初期設定時間の修正時間がH312となり、減少量がd4の場合に初期設定時間の修正時間がH314となり、減少量がd5の場合に初期設定時間の修正時間がH315となる。一方、減少量がd3の場合には、初期設定時間の修正は不要であり、修正時間はh3のままである。
【0151】
次に、図25を参照しつつ第3実施形態に係るプライミング時間の推定に係る流れを説明する。なお、第1実施形態と対応する同一処理については、同じ符号を付し、基本的にその詳細な説明を省略する。
【0152】
先ず、図25に示すように、血液浄化装置1に対する血液浄化器5の装着準備が行われ(S112)、ICタグに記憶された血液浄化器5の識別データが、血液浄化器5から情報処理装置6に送信される(T111)。また、血液浄化装置1の体外循環部8における体外循環回路L20の装着準備が行われ(S113)、ICタグに記憶されたL20の識別データが、体外循環部8から情報処理装置6に送信される(T112)。
【0153】
次に、情報処理装置6において、受信した識別データの記憶処理が行われる(S210)。具体的に、情報処理装置6の推定部51が記憶部53に対して、これらの受信データである識別データを送信し、記憶部53が当該識別データをメモリ6bに記憶する。
【0154】
次に、情報処理装置6においては、メモリ6bに記憶されたテーブルデータが参照され、受信した各識別データを用いて、プライミング時間が推定さる(S211)。具体的に、情報処理装置6の推定部251は、血液浄化器5及び体外循環回路L20の種別に対応してプライミングの初期設定時間が設定されているテーブルデータ(図10参照)と、受信した識別データとの照合によってプライミング時間の初期表示時間を抽出し、初期表示時間をプライミングに必要な残時間とする。その後、情報処理装置6においては、血液浄化装置1の管理者に対して、血液浄化装置1のプライミングの残時間を報知するための表示データの生成処理が行われる(S122)。
【0155】
次に、ディスプレイ4におけるボタン操作が実施される(S117)。そして、当該ボタン操作により、情報処理装置6に対して、プライミング開始の制御要求である開始指示が送信される(T114)。その後、情報処理装置6において、開始指示が受信されると、プロセッサ6aがメモリ6bに記憶されたプライミング用のプログラムを実行し、内部配管部7及び体外循環部8の各構成装置及び構成部品を制御する。これにより、透析液がプライミング液として内部配管部7から体外循環部8に供給され、血液浄化器5及び体外循環部8へのプライミング液の充填が開始される(S118)。
【0156】
次に、情報処理装置6からディスプレイ4に対して、表示データ及び制御信号の送信処理が行われる(T116)。その後、ディスプレイ4においては、受信した表示データに基づいたプライミング時間が出力部4bから表示される(S123)。
【0157】
次に、体外循環部8における気泡検出(S124)、情報処理装置6への気泡データの送信(T117)、及び情報処理装置6におけるデータ記憶(S125)が継続的に実行される。そして、所定時間が経過すると、プライミング時間である残時間の再度の推定が行われ、プライミング時間の修正が行われる(S212)。具体的に、推定部251は、図23に示すテーブルデータを参照し、血液浄化装置1のプライミングの開始から所定時間の経過後における体外循環回路L20の気泡減少量に対応して初期表示時間を修正する。そして、推定部251は、修正後の当該初期表示時間から当該所定時間を減じることにより、修正後の残時間として推定を完了する。なお、本実施形態においては、図24におけるグラフC3に対応したプライミング経過時間h3の約1/3の時間が経過したタイミング(所定時間C)を想定しているが、別途設定された任意の時間であってもよい。
【0158】
次に、情報処理装置6においては、血液浄化装置1の管理者に対して、血液浄化装置1のプライミングの残時間を報知するための表示データの生成処理が行われる(S127)。その後、情報処理装置6からディスプレイ4に対して、表示データ及び制御信号の送信処理が行われる(T118)。そして、ディスプレイ4においては、受信した表示データに基づいたプライミング時間が出力部4bから表示される(S128)。
【0159】
(第3実施形態の変形例)
上述した実施形態においては、プライミングの残時間を一度表示した後であって、プライミングがある程度進んだ段階において、回路内気泡の減少量に応じて残時間を修正する再推定を行っていたが、回路内気泡の減少量に応じて、初期表示時間を補正してもよい。以下において、この場合を第3実施形態の変形例として、図26乃至図28を参照しつつ説明する。
【0160】
先ず、記憶部253は、図10に示したテーブルデータ、図23に示したテーブルデータに加えて、図26に示すテーブルデータを記憶する。図26に示すテーブルデータは、プライミング時間の初期設定時間を補正するための補正時間が設定されたデータである。図26においては、図10において決定される各初期設定時間に対して、所定時間経過後の回路内気泡の減少量に応じて当該初期設定時間を補正するための時間が一意的に決定されている。当該テーブルデータは、例えば、図27に示すグラフに対応している。図27においては、横軸をプライミング経過時間とし、縦軸を回路内気泡量としてグラフC13、C21、C22、C24、C25が表示されている。ここで、グラフC13は、図10における体外循環回路L20の種別がa1であり、血液浄化器の種別がb3の場合に該当し、回路内気泡量がゼロになるプライミング経過時間がh3になっている。
【0161】
また、図27において、グラフC21、C22は、グラフC13を基準としてプライミング時間を減少させたものであり、グラフC24、C25は、グラフC13を基準としてプライミング時間を増加させたものである。更に、グラフC21、C22、C24、C25は、グラフC13を回路内気泡量に対応させて修正したものである。ここで、グラフC21は、回路内気泡量がゼロになるプライミング経過時間が、グラフC13と比較してt2だけ減少している。同様に、グラフC22は、回路内気泡量がゼロになるプライミング経過時間が、グラフC13と比較してt1だけ減少している。一方、グラフC24は、回路内気泡量がゼロになるプライミング経過時間が、グラフC13と比較してt1だけ増加している。同様に、グラフC25は、回路内気泡量がゼロになるプライミング経過時間が、グラフC13と比較してt2だけ増加している。
【0162】
図27に示すように、プライミング経過時間h3の約1/10が経過した所定時間D(例えば、1分)における回路内気泡の減少量について、グラフC21がD1、グラフC22がD2、グラフC13がD3、グラフC24がD4、グラフC25がD5であったとする。これらの減少量D1~D5は、図26における回路内気泡の減少量に一致している。そして、初期設定時間h3の列において、減少量がD1の場合に初期設定時間の補正時間がマイナスt2となり、減少量がD2の場合に初期設定時間の補正時間がマイナスt1となり、減少量がD4の場合に初期設定時間の補正時間がプラスt1となり、減少量がD5の場合に初期設定時間の補正時間がプラスt2となる。一方、減少量がD3の場合には、初期設定時間の補正は不要であり、補正時間はゼロである。
【0163】
推定部251は、プライミング開始後の所定時間(例えば1分間)で減少した気泡量に係る気泡データ及び上記テーブルデータを参照し、出力部4bにおいて表示されていない初期段階の残時間を補正する。すなわち、推定部251は、血液浄化装置1のプライミングの開始から所定時間の経過後における体外循環回路L20の気泡減少量に対応して、当該初期表示時間を補正し、補正後の初期表示時間を残時間とする処理を行う。
【0164】
次に、図28を参照しつつ第3実施形態の変形例に係るプライミング時間の推定に係る流れを説明する。なお、第1実施形態と対応する同一処理については、同じ符号を付し、基本的にその詳細な説明を省略する。
【0165】
図28に示すように、透析液がプライミング液として内部配管部7から体外循環部8に供給され、血液浄化器5及び体外循環部8へのプライミング液の充填が開始されると(S118)、体外循環部8において、気泡検出が行われる(S119)。そして、体外循環部8の気泡検出器22,28は、情報処理装置6に対して、検出結果である気泡データを送信する(T115)。
【0166】
次に、情報処理装置6において、受信した気泡データの記憶処理が行われる(S120)。その後、情報処理装置6においては、受信した気泡データに基づいて、S211において推定したプライミング時間の補正が行われる(S261)。具体的に、推定部251は、受信した気泡データ及び図26に示すテーブルデータを参照し、気泡データに対応した補正時間をテーブルデータから抽出する。そして、推定部251は、S211において推定した初期表示時間から当該補正時間を加算又は減算し、補正後の初期表示時間を残時間として推定する。
【0167】
次に、情報処理装置6においては、血液浄化装置1の管理者に対して、血液浄化装置1のプライミングの残時間を報知するための表示データの生成処理が行われる(S122)。その後、情報処理装置6からディスプレイ4に対して、表示データ及び制御信号の送信処理が行われる(T116)。そして、ディスプレイ4においては、受信した表示データに基づいたプライミング時間が出力部4bから表示される(S123)。
【0168】
第3実施形態においては、第1実施形態をベースとして、テーブルデータが使用され、プライミング時間が推定されていたが、第2実施形態をベースとして、テーブルデータが使用され、プライミング時間が推定されてもよい。
【0169】
(第3実施形態の作用効果)
本実施形態においては、学習済み推定モデルを使用することなく、プライミング時間の推定が行われている。このため、機械学習による学習済み推定モデルの生成などの時間や費用が不要となり、プライミング時間の推定処理を行う構成をより低コストにて実現することができる。
【0170】
上述した各実施形態においては、透析治療において代表的な血液透析(HD:Hemodialysis)の治療を行う血液浄化装置1が想定されていたが、プライミング工程が存在する種々の血液浄化装置においても、各実施形態の処理を適応することが可能である。例えば、持続緩徐式血液濾過療法(CRRT:Continuous Renal Replacement Therapy)、血漿交換療法、吸着式血液浄化療法、血球成分除去療法、血漿浄化法(二重濾過法又は血漿吸着法)の治療が可能な血液浄化装置に対しても、各実施形態の処理を適応することが可能である。
【0171】
また、各実施形態において、血液浄化装置1の外部に位置する動脈側血液回路L21及び静脈側血液回路L22から体外循環回路L20が構成される場合を説明したが、体外循環回路L20は2つの血液回路に限定されない。例えば、在宅透析用の装置においては、血液回路に加えて、透析回路も血液浄化装置の外部に配置されれば、当該透析回路も体外循環回路に含まれることになる。ただし、在宅透析用の装置であっても、血液回路のみから体外循環回路が構成されることもある。また、上述したような急性血液浄化用の装置においては、血液回路以外にも、消耗品に該当する透析回路、補充液回路、及び排液回路も体外循環回路に含まれることになる。更に、慢性血液透析用の装置においては、血液回路のみによって体外循環回路が構成されることになる。すなわち、血液浄化装置の種類に応じて、体外循環回路を構成する回路が異なるが、当該血液浄化装置の外部に設けられる消耗品の回路から体外循環回路が構成されている。
【0172】
また、上述した各実施形態においては、体外循環回路の一例である血液回路の種別に応じて設定された識別データを用いてプライミング時間が推定されていたが、体外循環回路の他の一例である透析液回路の種別に応じて設定された識別データを用いてプライミング時間が推定されてもよく、両回路の種別に応じて設定された識別データを用いてプライミング時間が推定されてもよい。このように、透析液回路の種別を活用する場合には、当然のことながら、血液回路の場合と同様に、透析液回路の種別等の各種のデータが、ICタグを用いた方法、他の装置からの受信、又はディスプレイからの入力等の各種の方法によって取得される。
【0173】
<本開示の実施態様>
本開示の第1の実施の態様は、患者の血液を浄化する血液浄化装置のプライミング時間を推定する情報処理装置であって、前記血液浄化装置に装着される血液浄化器及び体外循環回路の種別に応じて設定された識別データを取得し、前記血液浄化装置のプライミングに必要となる残時間を前記識別データに基づいて推定する推定部と、前記血液浄化装置の前記プライミング時間を表示するための表示データを前記残時間に基づいて生成する制御部と、を有する情報処理装置である。
【0174】
このように、血液浄化器及び体外循環回路の種別に応じて設定された識別データを用いて、血液浄化器及び体外循環回路の種別に対応させた残時間が推定されるため、血液浄化装置の設定に対応したより正確なプライミング時間の推定が可能になる。
【0175】
本開示の第2の実施の態様は、第1の実施の態様において、前記推定部は、前記血液浄化装置の本体に設けられ、前記体外循環回路内の気泡を検出する気泡検出器から受信する気泡データに基づいて前記残時間を修正することである。これにより、血液浄化器及び体外循環回路の種別のみならず、実際の気泡の減少量に応じた残時間の推定が可能となり、プライミング時間の推定の精度がより向上することになる。
【0176】
本開示の第3の実施の態様は、第1又は第2の実施の態様において、前記推定部は、前記プライミング時間を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記識別データを入力して、前記プライミング時間の初期表示時間を取得し、前記初期表示時間を前記残時間とすることである。これにより、学習済み推定モデルによる推定精度を高めることができ、信頼度のより高い残時間を出力することができる。
【0177】
本開示の第4の実施の態様は、第3の実施の態様において、前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化器の種別データ、前記体外循環回路の種別データ、及び基本プライミング時間データを関連付けて機械学習することによって生成されていることである。これにより、学習済み推定モデルの学習精度を高めることができ、信頼度のより高い残時間を出力することができる。
【0178】
本開示の第5の実施の態様は、第4の実施の態様において、前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置のプライミングの開始から所定時間の経過後における前記体外循環回路の気泡減少量を、前記血液浄化器の種別データ、前記体外循環回路の種別データ、及び基本プライミング時間データに関連付けて機械学習することによって生成され、前記推定部は、前記識別データとともに前記気泡データを前記学習済み推定モデルに入力することである。これにより、学習済み推定モデルの学習精度を高めることができ、信頼度のより高い残時間を出力することができる。
【0179】
本開示の第6の実施の態様は、第5の実施の態様において、前記推定部は、前記血液浄化装置のプライミングの開始から所定時間の経過後の前記気泡データを前記学習済み推定モデルに入力し、前記学習済み推定モデルは、前記気泡データに基づいて、前記所定時間の経過後における前記残時間を再出力することである。これにより、プライミングの進行状況に対応した残時間を推定することができ、信頼度のより高い残時間を出力することができる。
【0180】
本開示の第7の実施の態様は、第5又は第6の実施の態様において、前記推定部は、前記血液浄化装置のプライミングの開始から所定時間の経過後の前記気泡データを前記学習済み推定モデルに追加入力して、取得した前記初期表示時間を前記残時間とすることである。これにより、プライミングの初期状況を考慮し、信頼度のより高い残時間を出力することができる。
【0181】
本開示の第8の実施の態様は、第4乃至第7のいずれかの実施の態様において、前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置の温度データ及び圧力データを、前記血液浄化器の種別データ、前記体外循環回路の種別データ、及び基本プライミング時間データに関連付けて機械学習することによって生成され、前記推定部は、前記識別データとともに前記温度データ及び前記圧力データを前記学習済み推定モデルに入力することである。これにより、学習済み推定モデルの学習精度を高めることができ、信頼度のより高い残時間を出力することができる。
【0182】
本開示の第9の実施の態様は、第4乃至第8のいずれかの実施の態様において、前記推定部は、前記血液浄化装置の前記プライミングが完了すると、完了したプライミングに係るデータを使用し、前記学習済み推定モデルの追加学習を行うことである。これにより、学習済み推定モデルの学習精度を高めることができ、信頼度のより高い残時間を出力することができる。
【0183】
本開示の第10の実施の態様は、第1又は第2の実施の態様において、前記推定部は、前記血液浄化器及び前記体外循環回路の種別に対応して前記プライミング時間が設定されているテーブルデータと前記識別データとの照合によって前記プライミング時間の初期表示時間を抽出し、前記初期表示時間を前記残時間とすることである。これにより、学習済み推定モデルを使用することなく、プライミング時間を推定することが可能となり、プライミング時間の推定を行うために必要となる準備費用の削減が可能となる。
【0184】
本開示の第11の実施の態様は、第10の実施の態様において、前記推定部は、前記血液浄化装置のプライミングの開始から所定時間の経過後における前記体外循環回路の気泡減少量に対応して前記初期表示時間を修正し、前記所定時間を修正後の前記初期表示時間から減じて前記残時間とすることである。これにより、プライミングの進行状況に対応した残時間を推定することができ、信頼度のより高い残時間を出力することができる。
【0185】
本開示の第12の実施の態様は、第10又は第11の実施の態様において、前記推定部は、前記血液浄化装置のプライミングの開始から所定時間の経過後における前記血液回路の気泡減少量に対応して前記初期表示時間を補正し、補正後の前記初期表示時間を前記残時間とすることである。これにより、プライミングの初期状況を考慮し、信頼度のより高い残時間を推定することができる。
【0186】
本開示の第13の実施の態様は、患者の血液を浄化する血液浄化装置のプライミング時間を推定する情報処理方法であって、前記血液浄化装置に装着される血液浄化器及び体外循環回路の種別に応じて設定された識別データを取得する工程と、前記血液浄化装置のプライミングに必要となる残時間を前記識別データに基づいて推定する工程と、前記血液浄化装置の前記プライミング時間を表示するための表示データを前記残時間に基づいて生成する工程と、を有する情報処理方法である。このように、血液浄化器及び体外循環回路の種別に応じて設定された識別データを用いて、血液浄化器及び体外循環回路の種別に対応させた残時間が推定されるため、血液浄化装置の設定に対応したより正確なプライミング時間の推定が可能になる。
【0187】
本開示の第14の実施の態様は、患者の血液を浄化する血液浄化装置のプライミング時間を推定するプログラムであって、前記血液浄化装置に装着される血液浄化器及び体外循環回路の種別に応じて設定された識別データを取得し、前記血液浄化装置のプライミングに必要となる残時間を前記識別データに基づいて推定し、前記血液浄化装置の前記プライミング時間を表示するための表示データを前記残時間に基づいて生成する、処理をコンピュータに実行させるプログラムである。このように、血液浄化器及び体外循環回路の種別に応じて設定された識別データを用いて、血液浄化器及び体外循環回路の種別に対応させた残時間が推定されるため、血液浄化装置の設定に対応したより正確なプライミング時間の推定が可能になる。
【符号の説明】
【0188】
1 血液浄化装置
4 ディスプレイ
4a 入力部
4b 出力部
5 血液浄化器
6 情報処理装置
6a プロセッサ
6b メモリ
7 内部配管部
8 体外循環部
9 通信部
51 推定部
52 制御部
53 記憶部
55 算出部
56 学習済み推定モデル

【要約】
【課題】
血液浄化装置のプライミング時間をより正確に推定すること。
【解決手段】
患者の血液を浄化する血液浄化装置のプライミング時間を推定する情報処理装置であって、前記血液浄化装置に装着される血液浄化器及び体外循環回路の種別に応じて設定された識別データを取得し、前記血液浄化装置のプライミングに必要となる残時間を前記識別データに基づいて推定する推定部と、前記血液浄化装置の前記プライミング時間を表示するための表示データを前記残時間に基づいて生成する制御部と、を有すること。
【選択図】 図7

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28