(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】タンク装置及び送液システム
(51)【国際特許分類】
B01J 4/00 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B01J4/00 103
(21)【出願番号】P 2024042820
(22)【出願日】2024-03-18
【審査請求日】2024-03-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315001682
【氏名又は名称】岩井ファルマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】島本 賢一
(72)【発明者】
【氏名】中川 明郎
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060072(JP,A)
【文献】特開2017-127861(JP,A)
【文献】特開2003-342945(JP,A)
【文献】特開平11-301612(JP,A)
【文献】特開2022-134302(JP,A)
【文献】特表2004-512235(JP,A)
【文献】特開昭56-074485(JP,A)
【文献】特開2016-068336(JP,A)
【文献】特表2010-519141(JP,A)
【文献】特開2014-196697(JP,A)
【文献】特開昭51-030605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/00
B65B 3/00
F04F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するタンクと、
前記タンクから下流の処理装置へ液体を供給する供給ラインと、
前記タンクに気体を供給する給気手段と、
前記タンクから気体を排出する排気手段と、を備え、
前記給気手段は、前記タンクに貯留された液体の液面より上方の空間に一定圧力で気体を供給し、
前記排気手段は、前記タンクに貯留された液体の圧力の変動を打ち消すように前記空間から気体を排出
し、
前記給気手段は、タンクに供給する気体を一定圧力に調圧する減圧弁を含み、
前記排気手段は、前記供給ラインを流通する液体の圧力を計測し、前記圧力に基づいて
前記タンクから排出される気体の量を制御する制御弁を含む
ことを特徴とするタンク装置。
【請求項2】
請求項1に記載するタンク装置において、
前記排気手段は、前記供給ラインを流通する液体の圧力を計測し、前記圧力に基づいて前記タンクから排出される気体の量を制御する
ことを特徴とするタンク装置。
【請求項3】
請求項1に記載するタンク装置において、
前記排気手段により調圧される気体の圧力の幅は、前記給気手段が供給する気体の圧力の0.5%以上5%以下である
ことを特徴とするタンク装置。
【請求項4】
請求項1に記載するタンク装置において、
前記タンクは、容量が0.5L以上50L以下である
ことを特徴とするタンク装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4の何れか一項に記載するタンク装置と、
前記タンクから一定圧力の液体が供給されることを前提として動作する処理装置と、
を備えることを特徴とする送液システム。
【請求項6】
請求項
5に記載する送液システムにおいて、
前記タンクに液体を供給する上流タンクを備え、
前記タンクは前記上流タンクの容量の0.05%以上0.1%である
ことを特徴とする送液システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに貯留した液体を一定圧力で送液するタンク装置及び送液システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンク内に液状の製品を貯留し、下流の充填機などの装置に一定圧力で液体を供給することが行われている。例えば、特許文献1には、タンクの内部に気体を供給する給気系と、内部から気体を排気する排気系とを備えた装置が開示されている。給気系と排気系にはそれぞれコントロールバルブが取り付けられており、タンクの内部の圧力が目標圧力となるようにコントロールバルブが制御されている。このような圧力制御により一定圧力で液体を下流側に供給することが可能となっている。
【0003】
タンクに液体が供給されることでタンク内の圧力は増大する。給気系は圧力が増大したらタンク内の圧力を下げるようにコントロールバルブを制御する。これによりタンク内圧力は下がるが一度で目標圧力になることは稀であり、目標圧力未満になることがある。そのため、給気系はタンク内圧力を増大させるようにコントロールバルブを制御する。このときもタンク内圧力が目標圧力にならず、それを超えることがある。このようにタンク内の圧力が目標圧力を挟んで上下動する、いわゆるハンチングが生じる。このようなハンチングは、タンクから液体が排出されてタンク内の圧力が減少した場合でも同様に生じ得る。ハンチングはそのような制御を繰り返すことで何れは収束するものであるが、短時間で抑制することが望まれている。
【0004】
また、給気系の圧力制御のみならず排気系でも圧力制御を行うと、給気系と排気系で連係を取る必要があることから、ハンチングを抑えるための制御は一層複雑となり、ハンチングが長期化する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、より簡易な制御で、ハンチングを短時間に抑え、タンクに貯留した液体を一定圧力で送液することができるタンク装置及び送液システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、液体を貯留するタンクと、前記タンクから下流の処理装置へ液体を供給する供給ラインと、前記タンクに気体を供給する給気手段と、前記タンクから気体を排出する排気手段と、を備え、前記給気手段は、前記タンクに貯留された液体の液面より上方の空間に一定圧力で気体を供給し、前記排気手段は、前記タンクに貯留された液体の圧力の変動を打ち消すように前記空間から気体を排出し、前記給気手段は、タンクに供給する気体を一定圧力に調圧する減圧弁を含み、前記排気手段は、前記供給ラインを流通する液体の圧力を計測し、前記圧力に基づいて前記タンクから排出される気体の量を制御する制御弁を含むことを特徴とするタンク装置にある。
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、上記態様に記載するタンク装置と、前記タンクから一定圧力の液体が供給されることを前提として動作する処理装置と、を備えることを特徴とする送液システムにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より簡易な制御で、ハンチングを短時間に抑え、タンクに貯留した液体を一定圧力で送液することができるタンク装置及び送液システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】タンク装置を含む送液システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本実施形態に係るタンク装置を備えた送液システムの概略構成図である。本実施形態の送液システム1は、調合タンク2と、タンク装置10と、充填機3とを備えている。本実施形態の送液システム1は、液体の一例として液状の医薬品(以下、薬液)を製造するプラントの一部である。
【0012】
調合タンク2は、薬液の原料や、水などの溶媒等が供給され、それらを調合するタンクである。調合タンク2とタンク20とは第1ライン4で接続されており、薬液が調合タンク2からタンク20へ供給される。第1ライン4には第1開閉弁5が設けられており、薬液の送液及び停止を切り替えられるようになっている。調合タンク2は、タンク20に液体を供給する上流タンクの一例である。
【0013】
充填機3は、タンク20から薬液が送られ、図示しない容器に薬液を充填する装置である。充填機3とタンク20とは第2ライン6(供給ライン)で接続されており、薬液がタンク20から充填機3へ供給される。第2ライン6には第2開閉弁7が設けられており、薬液の送液及び停止を切り替えられるようになっている。また、充填機3は、タンク20から一定圧力で薬液が供給されることを前提として充填処理を行う。送液システム1では、容器に薬液を正確に充填するために充填機3に供給される薬液の圧力(以下、入口圧力)が設定されている。この入口圧力を測定するための圧力計8が第2ライン6に設けられている。
【0014】
タンク装置10は、タンク20と、給気手段30と、排気手段40と、を備えている。
【0015】
タンク20は、調合タンク2から供給された薬液を貯留するタンクである。タンク20は一般的なものであり、特に図示しないが薬液の温度を保持するためのジャケットや、薬液の温度や液面などを計測するセンサー類が取り付けられていてもよい。タンク20は、薬液の液面より上方の空間Sがあり、空間Sの気体の圧力を調整することで薬液の圧力が調整される。
【0016】
給気手段30は、タンク20の空間Sに気体を供給する装置群である。具体的には、給気手段30は、給気ライン31と、第1フィルター装置32と、給気装置33とを備える。給気ライン31は、給気装置33とタンク20とを接続する管路である。第1フィルター装置32は、給気ライン31を流通する気体中の異物を除去する装置である。給気装置33は、一定圧力で気体を供給する装置であれば特に限定はないが、例えば、空気を圧縮するポンプや圧縮された空気を保持するタンクなどの気体の供給源と、その空気を一定圧力にする減圧弁と、から構成されている。
【0017】
給気装置33から供給された気体は、給気ライン31を通り、第1フィルター装置32によって異物が除去されてタンク20に供給される。給気装置33が供給する気体の圧力は、タンク20に貯留された薬液に掛けるべき目標の圧力と同等以上とする。なお、本実施形態では給気手段30は第1フィルター装置32を備えているが、上述した供給源が清澄な空気を供給するものであれば必須としなくてもよい。
【0018】
排気手段40は、タンク20の空間Sから気体を排出する装置群である。具体的には、排気手段40は、排気ライン41と、第2フィルター装置42と、制御弁43と、チャッキ弁44と、を備える。排気ライン41は、タンク20の空間Sを外部へ排出する接続する管路である。第2フィルター装置42は、外部の空気(外気)に含まれる異物を除去する装置であり、外気から空間Sに異物が混入することを防いでいる。制御弁43は、空間Sの圧力変動を打ち消すように、タンク20の空間Sから気体を排出する。排気手段40による排気の動作については後述する。チャッキ弁44は、排気ライン41から外部への一方向に気体を排出させる弁である。
【0019】
また、送液システム1は、図示しない制御装置を備えている。制御装置は送液システム1の動作を制御する装置であり、その動作の一つとしてタンク20から充填機3に供給される薬液の圧力制御がある。この圧力制御は次のように行われる。
【0020】
給気手段30による気体の供給は、空間Sに供給される気体の圧力が一定圧力となるようにする。この圧力制御は、減圧弁を手動で調整するようにしてもよいし、減圧弁の代わりに制御弁を設け、その制御弁を制御装置が制御することで給気手段30による気体の圧力を制御するようにしてもよい。給気手段30による気体の圧力は、上述したようにタンク20に貯留された薬液に掛けるべき目標の圧力と同等以上とする。
【0021】
排気手段40による気体の排気は、空間Sの圧力変動を打ち消すようにタンク20から気体を排出する。具体的には、制御装置は、圧力計8により圧力(以下、測定圧力)を読み取り、この測定圧力が目標圧力となるように制御弁43の開度を調節する。制御装置は、測定圧力が目標圧力を上回るならば制御弁43の開度を上げる。一方、測定圧力が目標圧力を下回るならば制御弁43の開度を下げる。このような制御は、公知の制御手法、例えばPID制御により実現することができる。
【0022】
調合タンク2からタンク20へ薬液が送液されたり、タンク20から薬液が排出されることに伴って薬液の圧力変動が生じ得る。しかしながら、上述したように給気手段30及び排気手段40による気体の給排気が制御されることでタンク20の薬液の圧力変動が打ち消され、タンク20から充填機3へ一定圧力に制御された薬液を送液することができる。
【0023】
また、空間Sの給排気の制御においては、給気手段30により供給される気体の圧力は一定であり、排気手段40により排気される気体の圧力のみが変動する。このように給気と排気の経路を分け、排気の圧力のみを制御するようにしたのでハンチングが生じにくく、生じたとしても短時間で収束させることができる。つまり、給気手段30では目標圧力になるよう給気の圧力を上下動させることが無いので、その分ハンチングが生じにくい。さらに、給気手段30と排気手段40の双方で圧力制御をすると、一方の圧力制御の影響が他方に及ぶことになり、制御は複雑化するし、ハンチングを抑えることも難しくなる。特に、排気手段40により調圧される気体の圧力の幅を微圧とする場合に本発明は有用である。微圧とは、給気手段30が供給する気体の圧力の0.5%以上5%以下である。従来技術のように給気系と排気系の両方で圧力制御をしようとすると給気系と排気系で連係する必要があるので非常に困難な制御が伴う。また給気系のみで圧力制御すると、目標圧力が高圧であるほど微圧な幅で調整することは困難であり、目標圧力から±10%以上変動してしまうこともあり得る。しかしながら、本発明では給気手段30では一定圧力の給気のみを行い排気手段40で微圧の範囲で排気の制御を行う。これにより、目標圧力は高圧であっても液体の圧力の変動幅を目標圧力から微圧の範囲内に抑えることができる。
【0024】
このように本実施形態の送液システム1及びタンク装置10によれば、送液される薬液の圧力を一定にしてタンク装置10から充填機3へ送液することができる。また、薬液の圧力制御については、給気手段30による給気の圧力を一定とし、排気手段40による排気の圧力制御(制御弁43の開度)を行う。これにより、タンク20に貯留された薬液の圧力がハンチングすることを抑制し、ハンチングが生じたとしても短時間で収束させることができる。
【0025】
また、送液システム1及びタンク装置10は、目標圧力として充填機3の直前の入口圧力とした。つまり、タンク20の空間Sにおける気体の圧力や、タンク20に貯留された薬液の圧力ではなく、第2ライン6における薬液の圧力が目標圧力となるようにした。これにより、より確実に、目標圧力の薬液を充填機3に送液することができる。第2ライン6の形状、経路、途中に設けられたバルブなどの装置によって薬液の圧力は変動しうるが、充填機3の手前の入口圧力を目標圧力とすれば、そのような形状等による圧力の影響を無視することができるからである。
【0026】
本発明の送液システム1では比較的小型のタンク20であっても採用することができる。換言すれば、小型のタンク20を採用しても短時間でハンチングを抑制して一定圧力の薬液を充填機3に供給することができる。本発明でいう小型のタンク20とは、容量が0.5L以上50L以下である。または、タンク20に薬液を供給する調合タンク2の容量の0.05%以上0.1%以下である。小型のタンク20は、大型のタンクと比較して、タンク20内の薬液に掛かる圧力が排気手段40による排気制御に対して短時間で追従する。それゆえ、短時間でタンク20内の薬液に掛かる圧力を短時間で目標圧力にすることができる。また、タンク20は、液体が流入又は流出することでタンク20に貯留されている液体の自重が変動するので、下流の入口圧力に影響を及ぼしうる。しかしながら、タンク20の容量が小型であれば液体も少量となり自重の変動をほとんど無視することができる。このため、入口圧力を目標圧力とする制御を容易にすることができる。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0028】
例えば、タンク装置10へ送液する装置は調合タンク2に限定されない。また、タンク装置10から送液される対象は充填機3に限定されない。一定の圧力で薬液を供給される任意の処理装置であればよい。
【0029】
例えば、第2ライン6の薬液の入口圧力を目標圧力となるように排気手段40の排気を制御したが、これに限定されない。例えば、第2ライン6の形状等による圧力変動が無視できるのであれば、空間Sの気体の圧力が目標圧力となるようにしてもよい。また、液体は薬液に限らず、任意の液体について本発明を適用することができる。
【0030】
また、本実施形態では、充填機3を例示したがこれに限定されず、一定圧力で液体が供給されることを前提に処理を行う処理装置について本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0031】
S…空間、1…送液システム、2…調合タンク、3…充填機、10…タンク装置、20…タンク、30…給気手段、40…排気手段
【要約】
【課題】より簡易な制御で、ハンチングを短時間に抑え、タンクに貯留した液体を一定圧力で送液することができるタンク装置及び送液システムを提供する。
【解決手段】薬液を貯留するタンク20と、タンク20から下流の充填機3へ液体を供給する第2ライン6と、タンク20に気体を供給する給気手段30と、タンク20から気体を排出する排気手段40と、を備え、給気手段30は、タンク20に貯留された薬液の液面より上方の空間Sに一定圧力で気体を供給し、排気手段40は、タンク20に貯留された液体の圧力の変動を打ち消すように空間Sから気体を排出する。
【選択図】
図1